特許第6499498号(P6499498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6499498高アスペクト比X線ターゲットおよびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6499498
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】高アスペクト比X線ターゲットおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/08 20060101AFI20190401BHJP
   H05G 1/00 20060101ALI20190401BHJP
   H05G 1/70 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   H01J35/08 C
   H05G1/00 E
   H05G1/70 A
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2015-85117(P2015-85117)
(22)【出願日】2015年4月17日
(65)【公開番号】特開2015-207559(P2015-207559A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2018年4月17日
(31)【優先権主張番号】61/981,330
(32)【優先日】2014年4月18日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/645,689
(32)【優先日】2015年3月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501419107
【氏名又は名称】エフ・イ−・アイ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】エヌ・ウィリアム・パーカー
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ダブリュー・ウトロート
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス・フランツ・タームス・クワクマン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ジー・ミラー
【審査官】 南川 泰裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−038742(JP,A)
【文献】 特表2012−522332(JP,A)
【文献】 特開2010−147017(JP,A)
【文献】 特表2009−534669(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/011701(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 35/04−35/12
G01N 23/00−23/2276
H05G 1/00−1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟X線生成材料から作られた基板と、
硬X線生成材料から作られ、1つまたは複数のグリッドまたはアレイとして配列された複数の高アスペクト比構造体
を備え、
前記1つまたは複数のグリッドまたはアレイのうちの1つのグリッドまたはアレイ内の前記高アスペクト比構造体が、アダマール行列構造体の異なる要素として配列された
X線ターゲット。
【請求項2】
前記高アスペクト比構造体のうちの1つが、前記基板の縁から外へ片持ち梁式に突き出た、請求項1に記載のX線ターゲット。
【請求項3】
前記複数の高アスペクト比構造体が、複数の直交アダマール行列構造体において直交アダマール行列構造体の異なる要素として配列される、請求項1または2に記載のX線ターゲット。
【請求項4】
前記アダマール行列構造体のそれぞれの中の前記少なくとも2つの高アスペクト比構造体が、異なる硬X線生成材料から作られており、前記異なる硬X線生成材料から作られた前記少なくとも2つの高アスペクト比構造体の空間分布が、前記アダマール行列構造体のそれぞれの中で同じである、請求項1から3のいずれか一項に記載のX線ターゲット。
【請求項5】
前記複数の高アスペクト比構造体が、複数組の直交アダマール行列構造体を形成するように配列されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のX線ターゲット。
【請求項6】
前記直交アダマール行列構造体の組の少なくとも2つが、異なる硬X線生成材料から作られた高アスペクト比構造体を含む、請求項5に記載のX線ターゲット。
【請求項7】
前記直交アダマール行列構造体の組の少なくとも2つが、異なる断面積を有する高アスペクト比構造体を含む、請求項5または6に記載のX線ターゲット。
【請求項8】
前記直交アダマール行列構造体の組の少なくとも1つの中で、それぞれの直交アダマール行列構造体の少なくとも2つの前記高アスペクト比構造体が、異なる硬X線生成材料から作られており、前記異なる硬X線生成材料から作られた前記少なくとも2つの高アスペクト比構造体の空間分布が、前記直交アダマール行列構造体のそれぞれの中で同じである、請求項5から7のいずれか一項に記載のX線ターゲット。
【請求項9】
前記直交アダマール行列構造体の組の少なくとも1つの中のそれぞれの直交アダマール行列構造体が、異なる断面積を有する少なくとも2つの高アスペクト比構造体を含む、請求項5から8のいずれか一項に記載のX線ターゲット。
【請求項10】
前記複数の高アスペクト比構造体が、前記基板の薄くされた部分に埋め込まれており、または前記基板の薄くされた部分上に形成されている、請求項1から9のいずれか一項に記載のX線ターゲット。
【請求項11】
試料のX線画像を生成する方法であって、
複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの上に電子ビームを逐次的に集束させることであって、直交アダマール行列構造体がそれぞれ、画素化されたグリッドのパターン内の異なる画素位置に配列された複数の高アスペクト比構造体から作られており、高アスペクト比構造体がそれぞれ、硬X線生成材料から作られていることと、
前記直交アダマール行列構造体のそれぞれの上に前記電子ビームを逐次的に集束させることによって生成されたX線を前記試料に照射することと、
前記試料を透過した前記X線を逐次的に検出することと、検出された前記X線を、アダマール変換された複数のX線画像として記録することと、
1つまたは複数のX線画像を生成するために、前記アダマール変換された複数のX線画像に1つまたは複数の逆アダマール変換を適用することであって、前記1つまたは複数のX線画像がそれぞれ、前記直交アダマール行列構造体を構成する高アスペクト比構造体の前記画素化されたグリッド内の異なる画素に対応する逆アダマール変換から生成されることと、
前記試料のX線画像を生成するために、前記1つまたは複数のX線画像を結合することと
を含む方法。
【請求項12】
前記直交アダマール行列構造体が、同じ前記X線ターゲット上の異なる位置に配置される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記直交アダマール行列構造体のそれぞれの上に前記電子ビームを逐次的に集束させる前に、前記X線ターゲット上におけるそれぞれの前記直交アダマール行列構造体の位置を決定することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記1つまたは複数の逆アダマール変換を適用することが、前記X線ターゲット上の異なる位置に配置されている前記直交アダマール行列構造体に起因するそれぞれの前記アダマール変換されたX線画像内の相対視差を補正することを含む、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記X線画像を結合することが、それぞれの前記直交アダマール行列構造体内の異なる画素位置に配置されている前記高アスペクト比構造体に起因するそれぞれの前記X線画像内の相対視差を補正することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
それぞれの直交アダマール行列の中の少なくとも2つの高アスペクト比構造体が、異なる硬X線生成材料を含み、前記異なる硬X線生成材料を含む前記少なくとも2つの高アスペクト比構造体の空間分布が、前記直交アダマール行列構造体のそれぞれの中で同じである、請求項11から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記1つまたは複数のX線画像を結合することが、同じ前記硬X線生成材料から作られた高アスペクト比構造体を有する前記直交アダマール行列構造体内の画素に対応するX線画像を結合することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
1つまたは複数のX線画像を生成するために、前記アダマール変換された複数のX線画像に1つまたは複数の逆アダマール変換を適用することが、前記アダマール変換された複数のX線画像を、アダマール符号に基づいて加算または減算することを含む、請求項11から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の直交アダマール行列構造体が、第1の硬X線生成材料から作られた複数の高アスペクト比構造体から作られており、前記方法が、
第2の複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの上に前記電子ビームを逐次的に集束させることであって、前記第2の複数の直交アダマール行列構造体がそれぞれ、第2の硬X線生成材料から作られた複数の高アスペクト比構造体から作られていることと、
前記第2の複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの上に前記電子ビームを逐次的に集束させることによって生成されたX線を前記試料に照射することと、
前記試料を透過した前記X線を逐次的に検出することと、検出された前記X線を、アダマール変換された第2の複数のX線画像として記録することと、
前記第2の硬X線生成材料に対する1つまたは複数のX線画像を生成するために、前記アダマール変換された第2の複数のX線画像に1つまたは複数の逆アダマール変換を適用することであって、前記第2の硬X線生成材料に対する前記1つまたは複数のX線画像がそれぞれ、異なる画素に対応する逆アダマール変換から生成されることと、
前記第2の硬X線生成材料に対する前記試料のX線画像を生成するために、前記第2の硬X線生成材料に対する前記1つまたは複数のX線画像を結合することと
をさらに含む、請求項11から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の直交アダマール行列構造体が、第1の断面積を有する複数の高アスペクト比構造体から作られており、前記方法が、
第2の複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの上に前記電子ビームを逐次的に集束させることであり、前記第2の複数の直交アダマール行列構造体がそれぞれ、第2の断面積を有する複数の高アスペクト比構造体から作られていることと、
前記第2の複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの上に前記電子ビームを逐次的に集束させることによって生成された前記X線を前記試料に照射することと、
前記試料を透過した前記X線を逐次的に検出することと、検出された前記X線を、アダマール変換された第2の複数のX線画像として記録することと、
1つまたは複数のより高分解能のX線画像を生成するために、前記アダマール変換された第2の複数のX線画像に1つまたは複数の逆アダマール変換を適用することであって、前記1つまたは複数のより高分解能のX線画像がそれぞれ、異なる画素に対応する逆アダマール変換から生成されることと、
前記試料のより高分解能のX線画像を生成するために、前記1つまたは複数のより高分解能のX線画像を結合することと
をさらに含む、請求項11から19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年4月18日に出願された、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許仮出願第61/981,330号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、X線トモグラフィ・システム(x−ray tomography system)などのX線ターゲット(x−ray target)を含む画像化システムの分解能とスループットの両方を増大させるように設計されたX線ターゲットであって、低分解能走査と高分解能走査を交互に実施するための厚薄両方のX線ターゲット、アダマール(Hadamard)パターンが形成された、画像多重化および分解能向上のためのターゲット、ならびに異なる硬X線(hard x−ray)生成材料でできた、エネルギー依存画像化のためのターゲットを含むX線ターゲットに関する。
【背景技術】
【0003】
X線トモグラフィ・システムは、試料を破壊したりまたは切断したりする必要なしに試料の内部構造の画像を提供することができる。このシステムによって生成されたX線を試料に通し、そのX線をX線検出器によって検出して、試料の断面からの吸収画像を得る。このX線検出器は2次元検出器とすることができ、その場合には複数の断面画像を同時に得ることができる。試料ならびに/またはX線源および検出器を一定量ずつ回転させ、異なる角度から追加の横断画像を得る。そのようにして得た複数の断面画像を数学的に操作して、試料の内部の画像を再構成するための試料情報を得る。
【0004】
X線トモグラフィ・システムの2つの重要なパラメータは、システムの分解能およびシステムのスループットである。分解能は、そのシステムがどのくらい小さな特徴部分(feature)を画像化することができるのかを表し、スループットは、そのシステムがどのくらい速く画像を取得することができるのかを表す。スループットは、試料を透過するX線の流速(flux)を増大させることによって増大させることができるが、これをすると通常は分解能が低下する。したがって、X線トモグラフィ・システムの設計はしばしばスループットと分解能の間の妥協の産物である。いくつかの高分解能システムが学術文献に記載されているが、それらのシステムは通常、望ましくないほどに長い画像取得時間を必要とする。
【0005】
市販のX線トモグラフィ・システムでは通常、ターゲットに向かって電子の高エネルギー・ビームを導くことによってX線を発生させる。それらの電子が停止すると、電子は、制動放射(bremsstrahlung)として知られているX線を生成する。このX線は、連続した周波数スペクトルに沿った周波数を有する。加えて、一部の電子は、ターゲット原子の内殻の電子に衝突し、それらの電子を追い出す。追い出されたこれらの電子によって生み出された空孔は続いて、ターゲット原子の外殻の電子によって満たされ、それらの外殻電子は、特性X線を自発的に放出することによってエネルギー準位を低下させる。この特性X線のエネルギーは、内殻電子と外殻電子のエネルギー準位の差によって決まる。これらの両方のタイプのX線がX線画像化に寄与しうるが、通常は特性X線の流速の方が制動放射の流速よりもはるかに大きく、そのため、X線吸収画像に対する寄与は通常、特性X線すなわち硬X線の方が大きい。
【0006】
X線集束光学部品を持たないX線トモグラフィ・システムの分解能は、その大部分が、そのシステムのX線源の有効サイズによって決まる。電子ビームを使用してX線を発生させるシステムでは、X線源の有効サイズが、その中でビーム電子がターゲットと相互作用し、ターゲット内で停止する体積によって決まる。この相互作用体積は、その大部分が、ターゲット材料の密度および原子番号ならびに電子ビームの直径およびエネルギーによって決まり、通常は涙滴形である。
【0007】
典型的なX線トモグラフィ・システム用のX線源100を図1に示す。この源は、電子ビーム105およびターゲット120からなる。このターゲットは通常、原子番号の小さい低密度の基板140(例えばケイ素)上に原子番号の大きい高密度の薄い金属膜130(例えばタングステン)を付着させることによって作られる。このターゲットは通常、電子ビーム105に対して約45度の角度150に傾けられる。電子ビーム105のエネルギーを増大させると、X線ターゲット120内の相互作用体積が(例えば小さな相互作用体積160からより大きな相互作用体積170に)増大し、それによってターゲット内で生成されるX線の流速およびX線トモグラフィ・システムのスループットが増大する。しかしながら、電子ビーム・エネルギーを増大させると、X線ターゲットの有効源サイズも(例えば小さな有効源サイズ165からより大きな有効源サイズ175に)増大し、それによってX線トモグラフィ・システムの分解能が低下する。
【0008】
いくつかのX線トモグラフィ・システムでは、ターゲット内で生成されたX線をX線光学部品を使用して集束させ、それによって有効源サイズを低減させる。しかしながら、X線光学部品は入来X線の流速の一部を吸収し、また、通常は限られた焦点深度を有する。その結果、X線ビームの焦点面内にはないが試料の画像には寄与する試料の部分が分解能を低下させる傾向があり、それによって、X線ビームを集束させることによって得られた分解能の利得を少なくとも部分的に打ち消す。さらに、X線光学部品は、追加のシステム費用およびシステムの複雑さを追加する。追加される複雑さには、光学システムを適正に整列させる必要性が含まれる。
【0009】
独立型のX線トモグラフィ・システムは比較的に高価であり、価格は百万ドルを超える。それよりもはるかに安価な選択肢は、走査電子顕微鏡(SEM)に金属ターゲット、回転試料ステージおよびX線検出器を追加するものである。SEMの電子ビームを金属ターゲット上に集束させてX線を発生させることができ、このX線は続いて、試料ステージ上に装着された試料を透過して、吸収画像を得るためのX線検出器に到達する。この吸収画像は通常、X線源(ターゲット)とX線検出器の間に試料が配置される投影モードで取得される。電子ビームによって生成されるX線流速は、ビーム・エネルギーおよびビーム電流に依存する。大部分のSEMの集束カラムは主として2次電子画像を形成することを目的として設計されているため、電子ビーム電流は通常75nA未満に制限されており、ビーム・エネルギーは通常30keVに制限されている。したがって、典型的なSEMの電子ビームによって結果的に生成されるX線流速は比較的に小さく、これらのシステムは、比較的に長い画像取得時間を必要とし、限られた分解能を有する。
【0010】
Sasov他、「New type of x−ray source for lens−less laboratory nano−CT with 50nm resolution」、Developments in X−ray Tomography VII、Proc.of SPIE、第7804巻は、相互作用体積を低減させ、したがってX線ターゲットの有効源サイズを低減させる1つの方法を記載している。Sasovは、金属線の毛髪状の先端をターゲットとして使用する。この先端の軸は検出器の方向を指し、これによってX線が発生する深さは増大するが、幅はあまり増大せず、それにより有効源サイズが増大することなくX線流速が増大する。しかしながら、小径の棒形のターゲットから発生するX線流速はこれまで通り比較的に小さく、そのため、画像取得時間も長いままであろう。Sasov他は画像取得時間について言及していない。SasovのX線源には、ヒート・シンクがないという欠点もある。X線を発生させるのに使用する電子のエネルギーおよび/または流速が増大したときに、Sasovの源は、それによって発生する余分の熱を放散させる機構を欠く。
【0011】
Cazaux他、「Recent developments in X−ray projection microscopy and X−ray microtomography applied to materials science」、Journal de Physique IV、Colloque C7、supplement au Journal de Physique 111、第3巻、1993年11月、2099〜2104ページは、電子ビームがターゲットに衝突し、生成されたX線がターゲットを透過し、真空室を出、試料および検出器に向かって進むシステムを記載している。Cazauxのシステムはさらに、この入来X線ビームを発生させるターゲットを数秒のうちに変更することを可能にし、それによって同じ試験体の異なる画像を異なる特性X線で得ることを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許仮出願第61/981,330号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Sasov他、「New type of x−ray source for lens−less laboratory nano−CT with 50nm resolution」、Developments in X−ray Tomography VII、Proc.of SPIE、第7804巻
【非特許文献2】Cazaux他、「Recent developments in X−ray projection microscopy and X−ray microtomography applied to materials science」、Journal de Physique IV、Colloque C7、supplement au Journal de Physique 111、第3巻、1993年11月、2099〜2104ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、画像化システムの分解能とスループットの両方を増大させることができるX線ターゲットおよびその使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本明細書では、軟X線(soft x−ray)生成材料から作られた基板と、硬X線生成材料から作られた高アスペクト比構造体であり、基板に埋め込まれまたは基板上に形成された高アスペクト比構造体とを含むX線ターゲットが開示される。この高アスペクト比構造体は、1つまたは複数のグリッド(grid)またはアレイ(array)として配列された複数の高アスペクト比構造体を含み、1つまたは複数のグリッドまたはアレイのうちの1つのグリッドまたはアレイ内の高アスペクト比構造体は、アダマール行列構造体を形成するように配列されている。
【0016】
本明細書ではさらに、試料のX線画像を生成する方法であって、複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの上に電子ビームを逐次的に集束させることであって、直交アダマール行列構造体がそれぞれ、画素化されたグリッドのパターン内の異なる画素位置に配列された複数の高アスペクト比構造体から作られており、高アスペクト比構造体がそれぞれ、硬X線生成材料から作られていることと、複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの上に電子ビームを逐次的に集束させることによって生成されたX線を試料に照射することと、試料を透過したX線を逐次的に検出することと、検出されたX線を、アダマール変換された複数のX線画像として記録することと、1つまたは複数のX線画像を生成するために、アダマール変換された複数のX線画像に1つまたは複数の逆アダマール変換を適用することであって、1つまたは複数のX線画像がそれぞれ、直交アダマール行列構造体を構成する高アスペクト比構造体の画素化されたグリッド内の異なる画素に対応する逆アダマール変換から生成されることと、試料のX線画像を生成するために、1つまたは複数のX線画像を結合することとを含む方法が開示される。
【0017】
本明細書ではさらに、非一時的媒体上に組み込まれたコンピュータ・プログラム製品が開示される。このコンピュータ・プログラム製品は、複数の直交アダマール行列構造体のうちのそれぞれの直交アダマール行列構造体上に電子ビームを逐次的に集束させることであって、直交アダマール行列構造体がそれぞれ、画素化されたグリッドのパターン内の異なる画素位置に配列された複数の高アスペクト比構造体から作られており、高アスペクト比構造体がそれぞれ、硬X線生成材料から作られていることと、複数の直交アダマール行列構造体によって生成され、試料を透過したX線を逐次的に検出することと、検出されたX線を、アダマール変換された複数のX線画像として記録することと、1つまたは複数のX線画像を生成するために、アダマール変換された複数のX線画像に1つまたは複数の逆アダマール変換を適用することであって、1つまたは複数のX線画像がそれぞれ、直交アダマール行列構造体を構成する高アスペクト比構造体の画素化されたグリッド内の異なる画素に対応する逆アダマール変換から生成されることと、試料のX線画像を生成するために、1つまたは複数のX線画像を結合することとを、プログラム可能な処理装置に実行させるように機能可能な命令を含む。
【0018】
本明細書ではさらに、試料のX線画像を生成する方法であって、試料を画像化するために、集束電子ビームで試料をラスタ走査することと、X線ターゲットを画像化し、X線ターゲット上に位置しまたはX線ターゲットに埋め込まれた複数の硬X線生成構造体の位置を決定するために、集束電子ビームでX線ターゲットをラスタ走査することと、X線の流速を発生させるために、1つまたは複数の硬X線生成構造体に電子ビームを照射することと、試料を透過したX線をX線検出器のところで検出することと、検出されたX線による試料のX線画像を記録することとを含む方法が開示される。
【0019】
本明細書ではさらに、平面X線ターゲットと、試料ホルダと、平面X線検出器とを含むX線投影システムが開示される。平面X線検出器の平面は、平面X線ターゲットの平面に対して実質的に平行である。平面X線ターゲット、試料ホルダおよび平面X線検出器は、X線ターゲットの平面に対して実質的に垂直な軸に沿って実質的に整列している。
【0020】
以上では、以下の本発明の詳細な説明をより十分に理解できるように、本発明の特徴および技術上の利点をかなり大まかに概説した。以下では、本発明の追加の特徴および利点を説明する。開示される着想および特定の実施形態を、本発明の目的と同じ目的を達成するために他の構造体を変更しまたは設計するためのベースとして容易に利用することができることを当業者は理解すべきである。さらに、このような等価の構造体は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を逸脱しないことを当業者は理解すべきである。
【0021】
次に、本発明および本発明の利点のより完全な理解のため、添付図面に関して書かれた以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】典型的なX線トモグラフィ・システム用のX線源を示す図である。
図2】本開示の一実施形態に基づくX線トモグラフィ・システムを示す図である。
図3A】電子ビーム・ターゲット内の本開示の実施形態に基づく高アスペクト比X線生成構造体を示す図である。
図3B】電子ビーム・ターゲット内の本開示の実施形態に基づく高アスペクト比X線生成構造体を示す図である。
図4】電子ビーム・ターゲット上に構築された、高アスペクト比X線生成構造体の複数のグリッドからの、本開示の一実施形態に基づく複数のアダマール行列を示す図である。
図5】電子ビーム・ターゲット上に構築された、高アスペクト比X線生成構造体の1つのグリッドからの、本開示の一実施形態に基づく特定のアダマール行列を示す図である。
図6】試料のアダマール変換された画像に逆アダマール変換を適用することによって試料の正規画像(normal image)を得る、本開示の一実施形態に基づく方法を示す図である。
図7】模擬試料と、さまざまな仮想X線ターゲットを用いて撮影した模擬試料の画像とを示す図である。
図8】X線トモグラフィ・システムで使用する、本開示の一実施形態に基づく例示的な電子ビーム・ターゲットを示す図である。
図9】異なる材料によって生成された特性X線に対して異なる感度を有する構造体から作られた模擬試料と、パターンが形成された、異なる材料から作られたX線ターゲットを用いて撮影した模擬試料の画像とを示す、本開示の一実施形態に基づく図である。
図10】試料のX線トモグラフィ・データを集める本開示の一実施形態に基づく方法を示す流れ図である。
図11】本開示の一実施形態に基づくSEMミニカラムの等角断面図である。
図12図11のSEMミニカラムの主レンズの拡大断面図である。
図13】本開示の一実施形態に基づく電子ビーム・ターゲット内のX線生成構造体を示す図である。
図14】本開示の一実施形態に基づく電子ビーム・ターゲット内のX線生成構造体を示す図である。
図15】本開示の一実施形態に基づく電子ビーム・ターゲット内のX線生成構造体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のさまざまな実施形態は、X線トモグラフィ・システムなどのX線ターゲットを含む画像化システムの分解能とスループットの両方を増大させるように設計されたX線ターゲットであって、低分解能走査と高分解能走査を交互に実施するための厚薄両方のX線ターゲット、アダマール・パターンが形成された、画像多重化および分解能向上のためのターゲット、ならびに異なる硬X線生成材料でできた、エネルギー依存画像化のためのターゲットを含むX線ターゲットを提供する。
【0024】
図2は、平面ターゲット210、試料220および平面検出器230を含むX線トモグラフィ・システム200の一実施形態を開示する。この実施形態では、ターゲット210の平面と検出器230の平面が概ね平行であり、ターゲット210、試料220および検出器230の中心が概ね、ターゲット210および検出器230の平面に対して垂直な軸250の上にある。X線トモグラフィ・システム200は、光学カラム260を有するSEMすなわち走査電子顕微鏡を含み、光学カラム260の軸270は、ターゲット210、試料220および検出器230の軸250に対して、集束電子ビーム280を用いた試料220およびターゲット210の選択的画像化、ならびにより幅の広い電子ビーム290を用いたターゲット210またはターゲット210の一部への照射を可能にする向きに向けられる。
【0025】
X線生成ターゲット210は、あるパターンに配列されたいくつかの独立したX線生成構造体212を有するように設計することができ、このパターンは、N×Mのグリッドまたは行列とすることができる。NおよびMは整数である。ターゲット210が、X線生成構造体212を有する複数のグリッドを含んでもよい。これについては後にさらに説明する。ターゲット210は、半導体製造において使用されている、付着、リソグラフィおよびエッチングを含むさまざまな技法を使用して製造することができ、その最も単純な形態(すなわち単一のX線生成構造体212)では、透過電子顕微鏡(TEM)用薄片の標準調製技法を使用して製造することもできる。SEMカラム260は、集束電子ビーム280を使用してターゲット210を画像化して、ターゲット210の向き、およびターゲット210が含むX線生成構造体212またはX線生成構造体212のグリッドの位置を決定することができる。続いて、単一の構造体212だけに集束電子ビーム280が照射されるような態様で、それぞれのX線生成構造体212に集束電子ビーム280を別々に照射することができる。あるいは、所与のグリッド内の全てのX線生成構造体212に電子ビームが照射されるような態様で、X線生成構造体212のそれぞれのグリッドに、幅の広い電子ビーム290を別々に照射することもできる。
【0026】
ターゲット210内のX線生成構造体212またはX線生成構造体212のグリッドへの照射は、ターゲット210の真後ろにある第2のSEMカラム(図示せず)から照射することを含め、任意の角度から実施することができるが、構造体212内で生成され試料220に照射されるX線は、ターゲット−試料−検出器軸250に対して概ね平行な方向にターゲット210を出る。したがって、ターゲット210は、X線流速を増大させ、同時に、軸250の方向の断面を小さく維持するために、軸250の方向に細長い。
【0027】
具体的には、X線生成構造体212は、ターゲット基板上に置かれまたはターゲット基板内に埋め込まれた高アスペクト比(>2)のピラー(pillar)またはポスト(post)として作られる。X線生成構造体212は、50nm未満の直径および100nm超の長さを有するように構築することができる。試料220に照射する目的には、概ね縦方向に(すなわちターゲット−試料−検出器軸250に沿って)放出されたX線だけが使用されるため、高アスペクト比構造体212のこの小さな直径が、ターゲット210の有効源サイズを決定する。高アスペクト比構造体212に電子ビームが照射されたときのX線生成には構造体212の全長が寄与するため、構造体212の長さは、X線流速を部分的に決定する。
【0028】
図2に示した1つの実施形態では、試料220および検出器230とは反対の方向を向くような態様で、X線生成構造体212が、ターゲット210上またはターゲット210内に位置する。この実施形態では、X線生成構造体212と試料220の間にあるターゲット基板の部分214をエッチングによって除去することによって、ターゲット210からのX線流速を増大させることができる。代替実施形態(図示せず)では、試料220および検出器230にじかに面するような態様で、X線生成構造体212を、ターゲット210上またはターゲット210内に配置することができる。この実施形態では、部分214をエッチングによって除去しても利点はなく、この余分の基板材料は、X線生成構造体212に電子ビームが照射されたときにX線生成構造体212によって生成される熱を放散させるのに役立ちうる。
【0029】
図3Aおよび3Bに示されているように、異なる方法を使用して、ターゲット210にX線生成構造体212を形成することができる。図3Aに示されたターゲット構造体212Aを製作するのに使用する第1の方法によれば、Siなどの原子番号の小さい材料の基板上に、原子番号の大きい金属(例えばW)の薄膜を付着させる。この金属表面にフォトレジスト層をスピン・コーティングし、従来の光リソグラフィまたは従来の電子ビーム・リソグラフィを使用してフォトレジスト層をパターニングし、現像する。ディープ(deep)反応性イオン・エッチングなどの異方性エッチングによって金属層をエッチングすることによりそのパターンをその下の金属層に転写し、それによって、基板上に、高アスペクト比金属ポストまたはカラム(column)のパターンを形成する。金属ポストまたはピラーの上に残っている現像されたフォトレジストを剥離し、ターゲット210を、一段高くなったX線生成構造体212Aのパターンとして残す。任意選択で、(例えばCVDまたは他の適当なプロセスを使用して)酸化膜を付着させて金属ピラーまたはポスト間の空間を埋めることができ、また、化学機械研磨によってターゲットの表面を滑らかにすることもできる。
【0030】
図3Bに示されたターゲット構造体212Bを製作するのに使用する第2の方法によれば、原子番号の小さい基板(例えばSi)上にフォトレジスト層をスピン・コーティングし、上と同じようにしてパターニングし、現像する。異方性エッチングによって基板をエッチングすることによりそのパターンを基板に転写して、高アスペクト比のウェル(well)またはボア(bore)のパターンを基板内に形成する。続いて、CVD、PVD、電気化学めっきなどの従来の付着技法を使用して、それらのボアを、原子番号の大きい硬X線生成材料(例えばW)で埋める。任意選択で、X線生成材料の付着の前に、ボアの壁を、バリア層または金属でコーティングして、基板内へのX線生成材料の拡散を防ぐことができる。最後に、現像されたフォトレジストを剥離し、化学機械研磨によって構造体全体を滑らかにすることができる。ターゲット210の最終的な構造は、原子番号の小さい基板(例えばSi)に、原子番号の大きい材料(例えばW)の高アスペクト比ポストまたはカラムからなるX線生成構造体212Bのパターンが埋め込まれたものになる。
【0031】
ターゲット210内に異なるいくつかのパターンを形成することができる。そのような1つのパターンは、グリッドまたはN×M行列の形態のパターンとすることができ、グリッド内の異なる画素またはセルは異なるX線生成特性を有することができる。例えば、異なる画素が、異なるX線生成材料(例えば、W、Au、PbまたはV)を含むことができ、それによって、異なる特性周波数を有するX線を生成することができる。異なる画素が、異なるサイズのX線生成構造体212を含むこともできる。例えば、一部の構造体212が、他の構造体よりも大きな直径または断面積を有することができる。長さが固定されたX線生成構造体212について言えば、より大きな断面積を有するX線生成構造体212はより大きなX線流速を生成し、したがって、X線トモグラフィ・システム200のスループットを増大させる。このようなより大きな断面積を有する構造体212またはそのような構造体のグリッドを使用して、試料220の低分解能画像をすばやく生成することができる。続いて、より小さな断面積の構造体212またはそのような構造体のグリッド上に幅の広い電子ビーム190を集束させることによって、試料220または試料220の一部のより高分解能の画像を生成することができる。
【0032】
ターゲット210内に形成することができる別のパターンが、全く同じX線生成構造体212のグリッドまたはアレイである。このようなパターンは、X線生成構造体212に電子ビームが照射されたときにX線生成構造体内で発生した熱を分散させるのに役立つことがある。例えば、所与の手順が、X線生成構造体212にt秒間照射することを要求し、それによってX線生成構造体212にQジュールのエネルギーが蓄積される場合、全く同じN個の複数のX線生成構造体212にそれぞれt/N秒間照射することによってこの同じ手順を実施することができ、それによってそれぞれのX線生成構造体212にはQ/Nジュールのエネルギーだけが蓄積する。これらの全く同じ複数のX線生成構造体212に電子ビームを逐次的に照射する間に、それぞれのX線生成構造体はその最大熱負荷を伝達し、放散させることができるため、このようにして全く同じ複数のX線生成構造体212に逐次的に照射することにより、系全体の熱流束を増大させることができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、ターゲット210内のX線生成構造体212を、アダマール行列構造体または複数の直交アダマール行列構造体を形成するように配列することができる。2×2、4×4、8×8または同様の寸法の行列として配列することができるこのようなターゲットでは、ターゲット画素のおよそ半分が、硬X線生成材料(例えばW)のポストまたはピラーとして形成される。残りの画素は、硬X線生成材料が基板内に埋め込まれるときには軟X線(soft x−ray)生成基板(例えばSi)のポストもしくはピラーとして形成することができ、または、硬X線生成材料が基板上に置かれるときには真空そのものから形成することができる。本明細書で使用されるとき、硬X線生成材料は、5〜10keVよりも大きなエネルギーを有する特性X線を生成する材料を意味し、軟X線生成材料は、5〜10keVよりも小さなエネルギーを有する特性X線を生成する材料を意味する。
【0034】
リソグラフィによってパターニングされた図3Aおよび3Bに示されたX線ターゲットには、Sasovに記載された針ターゲットにはないいくつかの潜在的な利点がある。1つの利点は、大きなターゲット面積にターゲットがリソグラフィによってパターニングされるため、ターゲット構造体全体に、図8に示されているようなさまざまなサイズおよびさまざまなターゲット材料の非常に多くのターゲットを構成することができることである。これは、Sasovの文献の図7に示された(単一の材料からなる)単一の針状ターゲットとは異なる。加えて、Sasovの針状ターゲットは、SEMの真空中に延出する自立型の構造体であるため、ヒート・シンク能力は最小限である。さらに、Sasovの針の正確な寸法は予測できない可能性が高く、針に対するアブレーション効果または汚染効果のため、X線源の寿命の間におそらくは変化する。
【0035】
図4に示されているように、それぞれが硬X線生成構造体212(黒)または軟X線生成構造体212(白)の4×4アレイからなる16個の直交アダマール行列401〜416を、ターゲット210上の別々にターゲットとすることが可能(targetable)なグリッド421〜436として構築することができる。いくつかの実施形態では、それぞれがN×Nの寸法を有する(すなわちそれぞれがX線生成構造体212のN×Nグリッドからなる)合計N2個の別々にターゲットとすることが可能なアダマール行列構造体を、ターゲット210上に構築することができる。これらのアダマール行列は、N2個のそれぞれのアダマール行列からの対応する画素が長さN2のアダマール符号を生成するように、ターゲット210上に構築することができる。したがって、ターゲット210上に構築されたN2個の直交アダマール行列の組は、合計N2個(1画素につき1つ)の直交アダマール符号を生成することができる。それぞれの符号の長さはN2である。本明細書で使用されるとき、用語アダマール行列およびアダマール符号は、長さがそれぞれN2であるN2個の直交符号からなる一組の直交符号に対応するN2個の行列からなる一組の行列を指すために使用され、m番目の行列の画素値は、これらのN2個の直交符号のm番目の値から得られ、それらの行列および符号が、アダマール行列およびアダマール符号の数学的に厳密な定義に合致するかどうかは問わない。
【0036】
下の表1および2に、4つの2×2アダマール行列構造体のグリッドまたは16個の4×4アダマール行列構造体のグリッドをターゲット210上に構築するのに使用することができるアダマール符号のリストを開示する。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
図5は、電子ビーム・ターゲット上に構築された、高アスペクト比X線生成構造体のグリッドからの特定のアダマール行列を示す図である。示されたこの特定のアダマール行列は、図4に示したグリッド436のアダマール行列416である。これは、表2の16番目の列の記載から構築することができる。示されているとおり、アダマール行列構造体416の最初の行(R1)は、列C1〜C4の対応するそれぞれの記載1、−1、−1および1を含む。ここで、アダマール行列構造体416の1つの画素に対する記載1は、その画素に対応するターゲット210上の位置に構築されたX線生成構造体212が、硬X線生成材料(例えばW)から作られていることを示す。同様に、アダマール行列構造体416の1つの画素に対する記載−1は、硬X線生成材料が基板に埋め込まれているときには、その画素に対応するターゲット210上の位置に構築されたX線生成構造体212が軟X線生成材料(例えばSi)から作られていることを示し、または、硬X線生成材料が基板上に置かれているときには、その画素に対応するターゲット210上の位置に構築されたX線生成構造体212が真空であることを示す。表2を再び参照すると、アダマール行列構造体416の2番目の行(R2)は、列C1〜C4の対応するそれぞれの記載−1、1、1および−1を含み、アダマール行列構造体416の3番目の列(R3)は、列C1〜C4の対応するそれぞれの記載−1、1、1および−1を含み、アダマール行列構造体416の4番目の列(R4)は、列C1〜C4の対応するそれぞれの記載1、−1、−1および1を含む。
【0040】
前述のとおり、X線トモグラフィ・システム200は、集束電子ビーム280を使用してターゲット210を画像化して、ターゲット210の向き、および、アダマール行列401〜416の形態で構築されたX線生成構造体212のグリッド421〜436を含む、ターゲット210が含むX線生成構造体212の位置を決定することができる。続いて、X線トモグラフィ・システム200は、図4に示されているように、幅の広い電子ビーム290を使用して、アダマール行列構造体401〜416のうちの任意の1つのアダマール行列構造体の中の全てのX線生成構造体212に別々に照射することができる。したがって、X線トモグラフィ・システム200は、ターゲット210上に構築された16個のそれぞれのアダマール行列構造体401〜416に逐次的に照射して、試料220のアダマール変換された16個の画像を集めることができる。
【0041】
アダマール変換された16個の全ての画像を得た後、表2に示したアダマール符号H1からH16を使用してそれらの画像に逆アダマール変換を適用し、それによって試料の16個の正規画像を得ることができる。アダマール符号H1からH16はそれぞれ、アダマール行列401〜416内の異なる画素に対応するため、試料の16個の正規画像はそれぞれ、異なる画素位置からとられた画像に対応する。16個の正規画像を得た後、それらの正規画像を結合して試料の全体画像を得ることができる。このようにすると、所与のサイズのターゲット構造体(例えば200nmのアダマール行列構造体)に幅の広い電子ビーム290を照射し、その間に、その所与のサイズの数分の1(例えば4×4アダマール行列構造体に関しては50nm)の有効サイズを有するターゲット構造体に対応する分解能を有する試料画像を得ることができる。これによって、X線トモグラフィ・システム200のスループットを低減させることなく、より高分解能の試料画像を得ることができる。
【0042】
図6は、試料のアダマール変換された画像に逆アダマール変換を適用することによって試料の正規画像を得る方法を示す図である。具体的には、図6は、アダマール行列構造体401〜416によって生成されたX線を試料に照射することにより逐次的に得た画像に逆アダマール変換を適用することによって、アダマール行列401の最初の行の3番目の列の画素の位置から見た試料210の正規画像を得る方法を示している。
【0043】
所与の画素に対する逆アダマール変換は本質的に、その画素に対するアダマール符号を使用して、試料のアダマール変換された画像を加算または減算することに等しい。表2に示されているように、最初の行の3番目の列の画素に対するアダマール符号はH3である。したがって、この画素から見た試料の正規画像は、それぞれのアダマール行列構造体401〜416からその試料に対して得られた画像に、アダマール符号H3を適用することによって得ることができる。これは、アダマール行列構造体410〜416から得られた画像を、H3シーケンス、すなわち+1(401)+1(402)−1(403)−1(404)+1(405)+1(406)−1(407)−1(408)+1(409)+1(410)−1(411)−1(412)+1(413)+1(414)−1(415)−1(416)に従って加算することに等しい。すなわち、最初の行の3番目の列の画素に対する正規画像は、アダマール行列構造体401、402、405、406、409、410、413および414から得られた画像を加算し、アダマール行列構造体403、404、407、408、411、412、415および416から得られた画像を減算することによって得られる。関連するアダマール符号に従って画像を加算する前に、それぞれのアダマール行列構造体401〜416がターゲット210内の異なる位置に構築されているために導入される相対視差(relative parallax)を補正するため、画像を調整することができる。次いで、同じ手順を適用して、残りの15個の画素から見た試料の正規画像を得ることができる。すなわち、画素ごとに、アダマール行列構造体401〜41に照射することによって得た試料の画像を、その画素に対する適切なアダマール符号を使用して加算する。
【0044】
図7は、模擬試料と、さまざまな仮想X線ターゲットを用いて撮影した模擬試料の画像とを示す図である。模擬試料710は、100×100グリッドとして配列された10,000個の画素を含み、固体を表すために、それぞれの画素には均一な5%のX線吸収を割り当てた。サイズが50nmから数百nmの範囲にある特徴部分701〜705などさまざまな特徴部分を模擬試料710に追加し、5%から100%の間の範囲のX線吸収を与えた。模擬試料710ではX線吸収が大きい特徴部分ほど暗く見える。続いて、パターンが形成されていない200nmターゲット(画像720)、パターンが形成されていない50nmターゲット(画像730)、および画素サイズがそれぞれ50nmである16個の200nmの4×4アダマール行列のパターンが形成されたターゲット(逆アダマール変換を適用し、得られた画像を結合した後の画像740)を使用して、模擬試料710を画像化した。画像720から730では、模擬試料710内の全ての特徴部分701〜705を見ることができる。画像720(パターンが形成されていない200nmターゲット)の分解能は、画像730(パターンが形成されていない50nmターゲット)の分解能に比べて明らかに低い。対照的に、画像740(200nmのアダマール行列のパターンが形成されたターゲット)の分解能は、画像730(パターンが形成されていない50nmターゲット)の分解能とほぼ同じである。200nmのアダマール行列のパターンが形成されたターゲットからのX線流速は、パターンが形成されていない50nmターゲットからのX線流速の約8倍であった。これは、アダマール行列ターゲット構造体内の16個の画素のうちのおよそ半分に照射されるためである。したがって、画像730(パターンが形成されていない50nmターゲット)の取得時間は、画像740(200nmのアダマール行列のパターンが形成されたターゲット)の取得時間の約8倍である。
【0045】
図8は、X線トモグラフィ・システムで使用する例示的な電子ビーム・ターゲットを示す図である。図2に示したターゲット210として使用することができるターゲット800は、いくつかの属性を有する複数の構造体を含む。X線トモグラフィ・システム200は、集束電子ビーム280を使用して、それらのそれぞれの構造体を別々に画像化し、それぞれの構造体の位置を決定することができ、集束電子ビーム280または幅の広い電子ビーム290をそれぞれの構造体に別々に照射して、試料220を画像化するためのX線を生成することができる。
【0046】
ターゲット800内に示された構造体の1つの属性は、構造体を構成する硬X線生成材料である。適当な材料には特に、タングステン(W)、金(Au)、バナジウム(V)、銅(Cu)および鉛(Pb)を含めることができる。異なる材料から作られた構造体を使用して、それらの異なる材料によって生成される異なる特性X線に対して感度を有する、試料220中の異なる構成要素または構造体を画像化することができる。
【0047】
ターゲット800内に示された構造体の第2の属性は、構造体が、図2に示された高アスペクト比硬X線生成構造体212を含むパターンを形成しているか否かである。ある構造体820はパターンを形成していない。構造体820は単純に、軟X線生成基板(例えばSi)上に付着させた薄い金属層から作られている。図1に示されているように、パターンが形成されていない構造体820の有効源サイズは、構造体820が生成するX線流速に関係している。対照的に、構造体830および840のようなターゲット800内の別の構造体には、高アスペクト比硬X線生成構造体212を含むパターンが形成されている。パターンが形成された構造体830および840の有効源サイズは構造体の断面積だけに依存し、構造体が生成するX線流速とは無関係である。
【0048】
ターゲット800内に示された構造体の第3の属性は、構造体が含む、パターンが形成されたX線生成構造体212の特性サイズまたは有効断面積である。例えば、構造体830は、断面積の小さいX線生成構造体212、例えば50nmよりも小さい特性サイズを有するX線生成構造体212を含むことができる。このような構造体830を使用して、試料220の高分解能画像を形成することができる。対照的に、構造体840は、断面積の大きいX線生成構造体212、例えば100nmよりも大きい特性幅を有するX線生成構造体212を含むことができる。例えば、構造体841は、300nmの特性幅を有する1つまたは複数のX線生成構造体212を含み、構造体842は、200nmの特性幅を有する1つまたは複数のX線生成構造体212を含み、構造体843は、100nmの特性幅を有する1つまたは複数のX線生成構造体212を含む。このような構造体840を使用して、試料220の低分解能画像を迅速に取得することができる。
【0049】
ターゲット800内に示された構造体の第4の属性は、構造体が含むX線生成構造体212によってパターンが形成されている場合のパターンの性質である。例えば、パターンが形成された低分解能構造体845、846および848は、アダマール行列のグリッドを形成するようにパターンが形成されたX線生成構造体212を含むことができる。したがって、構造体845内のX線生成構造体212は例えば、図4に示したアダマール行列401〜416などの16個の4×4アダマール行列のグリッドを形成するようにパターンが形成されており、構造体846内のX線生成構造体212は例えば、64個の8×8アダマール行列のグリッド(図示せず)を形成するようにパターンが形成されており、構造体848内のX線生成構造体212は例えば、4つの2×2アダマール行列のグリッド(図示せず)を形成するようにパターンが形成されている。
【0050】
ターゲット800上のターゲット構造体の多くは、1種類の硬X線生成材料(例えばW)から作ることができる。しかしながら、それらの構造体のうちの一部の構造体を2種類以上の材料から作ることもできる。このことは特に、アダマール行列を形成するために構造体がパターン形成されるときに有用なことがある。例えば、アダマール行列の画素を形成するためにX線生成構造体212をパターン形成する場合には、異なる画素(すなわちX線生成構造体212)を異なる材料から作ることができる。一組のアダマール行列内の対応する画素が、同じ材料(例えば最初の列はAu、2番目の列はPb、3番目の列はW、4番目の列はV)を使用して作られている場合には、試料の別々の画像を得ることができ、それらの画像は、異なる材料によって生成された異なる特性X線に対する試料または試料内の構造体の感度を示す。これは、上で説明したように、アダマール行列を用いて撮影された試料の画像の逆アダマール変換が本質的に、それらの画像を、1画素ごとに非多重化するためである。したがって、Au、Pb、WおよびVから作られた画素に対応する逆アダマール変換された画像を別々に得、それらの画像を結合することができる。
【0051】
図9は、異なる材料によって生成された特性X線に対して異なる感度を有する構造体から作られた模擬試料と、パターンが形成された、異なる材料から作られたX線ターゲットを用いて撮影した模擬試料の画像とを示す図である。模擬試料910は、100×100グリッドとして配列された10,000個の画素を含み、固体を表すために、それぞれの画素には均一な5%のX線吸収を割り当てた。特徴部分912などのさまざまな特徴部分を模擬試料910に追加し、W、Au、VおよびPbによって生成された特性X線に対する異なるX線吸収ならびに感度を与える。続いて、16個の200nmの4×4アダマール行列を含むようにパターン形成された模擬ターゲットからのX線を用いて、模擬試料910を画像化した。所与のアダマール行列内の16個の画素のうちの4つの画素は、Wの特性X線の放出をシミュレートし、4つの画素はAuの特性X線の放出をシミュレートし、4つの画素はVの特性X線の放出をシミュレートし、4つの画素はPbの特性X線の放出をシミュレートした。残りのアダマール行列内の対応する画素も同じW、Au、VおよびPbの特性X線の放出をシミュレートした。得られたX線吸収画像を逆アダマール変換して、それらのアダマール行列内の16個のそれぞれの画素に対する別々の画像を得た。W、Au、VおよびPb特性X線の放出をシミュレートする画素に対応する逆アダマール変換された画像を別々に結合して、模擬Wターゲットから得られた画像920、模擬Auターゲットから作られた画像930、模擬Vターゲットから作られた画像940、および模擬Pbターゲットから作られた画像950を得た。
【0052】
画像920〜950に示されているように、これらの異なる画像では、W、Au、VおよびPbの特性X線に対する異なる特徴部分の感度に応じて、異なる特徴部分を見ることができる。模擬試料910中の特徴部分912は、X線生成材料の異なる特性X線に対して特徴部分912の異なる部分が感度を有するように形成したものである。その結果、画像920は、Wの特性X線に対して感度を有する特徴部分912の一部912Aを示し、画像930は、Auの特性X線に対して感度を有する特徴部分912の一部912Bを示し、画像940は、Vの特性X線に対して感度を有する特徴部分912の一部912Cを示し、画像950は、Pbの特性X線に対して感度を有する特徴部分912の一部912Dを示す。
【0053】
特徴部分913などの模擬試料910内のいくつかの特徴部分は、全ての材料の特性X線に対して等しい感度を有しており、したがって、それらの特徴部分は、全ての画像920〜950内において全く同じように現れる。対照的に、別の特徴部分には、特定の材料の特性X線に対する感度だけが与えられており、したがって、それらの特徴部分は、その特定の材料に対応する画像にしか現れない。したがって、Wの特性X線に対してのみ感度を有する特徴部分921は、Wに対応する画像920だけに現れ、Auの特性X線に対してのみ感度を有する特徴部分931は、Auに対応する画像930だけに現れ、Vの特性X線に対してのみ感度を有する特徴部分941は、Vに対応する画像940だけに現れ、Pbの特性X線に対してのみ感度を有する特徴部分951は、Pbに対応する画像950だけに現れる。
【0054】
図10は、試料のX線トモグラフィ・データを集める方法を示す流れ図である。この方法は、図2に示したX線トモグラフィ・システム200によって実行することができる。走査を開始する前に、集束電子ビーム280によってターゲット210および試料220を画像化して、ターゲット210内のターゲット構造体212またはターゲット構造体212のグリッドを識別し、それらの位置を決定することができる。次いで、走査タイプを選択することによって走査を開始する1001。可能な走査タイプは、従来の走査1010、分解能が向上する走査1020またはスループットが向上する走査1030である。
【0055】
従来の走査では、その最初の試料角度まで試料220を回転させる1011。次に、パターンが形成されていない従来のターゲット上に幅の広い電子ビーム290を所定の時間集束させてX線の流速を発生させ、試料に照射する1012。例えば、幅の広い電子ビーム290は、図8に示したパターンが形成されていないターゲット構造体820のうちの任意の1つの上に集束させることができ、選択する特定のターゲット構造体820は、そのターゲット構造体820を構成する材料(例えばV)が生成する特性X線に対する試料の感度に応じて決定することができる。試料を透過したX線をX線検出器230によって集め、X線吸収画像を記録する1013。次の試料角度まで試料220を回転させ1014、所望の全ての試料角度に対するX線吸収画像が記録されるまでこのプロセスを繰り返し、所望の全ての試料角度に対するX線吸収画像が記録された時点で、トモグラフィ変換を実行して、記録した吸収画像から試料220の断面画像を生み出すことができる。
【0056】
分解能が向上する走査1020でもやはり、その最初の試料角度まで試料を回転させる1021。次に、複数の直交アダマール行列構造体のうちの第1の直交アダマール行列構造体を構成するX線生成構造体212のパターンが形成されたターゲット上に幅の広い電子ビーム290を所定の時間集束させて、パターンが形成されたX線流速を発生させ、試料に照射する1022。このアダマール行列構造体は任意の寸法N×Nを有することができ、所定の時間は、従来の走査1010で使用する時間の1/N2とすることができる。例えば、幅の広い電子ビーム290は、アダマール行列としてパターンが形成された図8に示した構造体830のうちの任意の1つの上に集束させることができる。選択する特定のアダマール行列構造体は、その構造体を作るのに使用した材料が生成する特性X線に対する試料の感度、および所望の分解能に応じて決定することができる。より良好な分解能を達成する目的には、寸法の小さなアダマール行列構造体(例えば2×2)よりも、寸法の大きなアダマール行列構造体(例えば4×4)を選択することができる。加えて、アダマール行列を形成するのに使用する構造体212の断面積または特性幅をより小さくすることができる。
【0057】
試料を透過したX線をX線検出器230によって集め、試料のアダマール変換された吸収画像を記録する1023。次いで、照射している電子ビーム290を、残りのアダマール行列構造体に(例えば図4に示されているように)順次移動させ、それぞれの上に、所定の時間集束させ、これによって生成されたX線パターンを使用して試料220に照射する。このビームは幅の広いビームとすることができる。試料を透過したX線をX線検出器230によって集め、それによって、アダマール変換された複数の吸収画像を記録する1024。これらのアダマール変換された複数の吸収画像を複数の逆アダマール変換を使用して逆変換し、逆変換されたそれらの画像を結合して、この最初の角度における試料の吸収画像を得る1025。次いで、次の試料角度まで試料220を回転させ1026、所望の全ての試料角度に対する吸収画像が得られるまでこのプロセスを繰り返し、所望の全ての試料角度に対する吸収画像が得られた時点で、トモグラフィ変換を実行して、それらの吸収画像から試料220の断面画像を生み出すことができる。
【0058】
スループットが向上する走査1030でもやはり、その最初の試料角度まで試料を回転させ1031、複数の直交アダマール行列構造体のうちの第1の直交アダマール行列構造体を構成するX線生成構造体212のパターンが形成されたターゲット上に幅の広い電子ビーム290を所定の時間集束させる1032。上記の走査と同様に、このアダマール行列構造体は任意の寸法N×Nを有することができるが、スループットが向上する走査では、所定の時間を、従来の走査1010で使用する時間の1/N2よりも短くすることができる。例えば、幅の広い電子ビーム290は、アダマール行列としてパターンが形成された図8に示した構造体840のうちの任意の1つの上に集束させることができる。上記の走査と同様に、選択する特定のアダマール行列構造体は、その構造体を作るのに使用した材料が生成する特性X線に対する試料の感度、および所望の分解能に応じて決定することができる。スループットをより高くする目的には、寸法の大きなアダマール行列(例えば4×4)よりも、寸法の小さなアダマール行列(例えば2×2)を選択することができる。加えて、アダマール行列を形成するのに使用する構造体212の断面積または特性幅をより大きくすることができる。
【0059】
試料を透過したX線をX線検出器230によって集め、試料のアダマール変換された吸収画像を記録する1033。次いで、幅の広い電子ビーム290を、残りのアダマール行列ターゲット構造体に(例えば図4に示されているように)順次移動させ、それぞれの上に、所定の時間集束させ、これによって生成されたX線パターンを使用して試料220に照射する。試料を透過したX線をX線検出器230によって集め、それによって、アダマール変換された複数の吸収画像を記録する1034。これらのアダマール変換された複数の吸収画像を複数の逆アダマール変換を使用して逆変換し、逆変換されたそれらの画像を結合して、この最初の角度における試料の吸収画像を得る1035。次の試料角度まで試料220を回転させ1036、所望の全ての試料角度に対する吸収スペクトルが得られるまで、このプロセスを、この試料角度および後続の試料角度で繰り返し、その時点で、トモグラフィ変換を実行して、それらの吸収画像から試料220の断面画像を生み出すことができる。
【0060】
最大60keVのエネルギー、少なくとも30nAの電流、10nmよりも小さい直径および1.0mmよりも大きい視野(field−of−view)(FoV)を有するビームを生成するSEMミニカラム(図11)が開発された。この特定のビーム直径およびビーム電流は、SEMミニカラムのビーム画定絞り(beam−defining aperture)(BDA)によって決定される。より大きなBDAまたはより小さなBDAを使用することによって分解能と電流の間のさまざまなトレードオフを達成することができる。単一の固定されたBDAを有するようにこのSEMミニカラムを構成することができ、あるいは、選択可能な複数の分解能/電流設定をSEMミニカラムが有することを可能にする可動式のBDAアセンブリを有するようにこのSEMミニカラムを構成することもできる。図11に示したSEMミニカラムを、図2に示したSEMカラム260として使用することができるが、別のSEMカラムまたはミニカラムをSEMカラム260として使用することもできる。そのため、例えば、異なる材料から作られた1つもしくは複数の高アスペクト比構造体に照射するプロセス、または異なる断面積を有する1つもしくは複数の高アスペクト比構造体に照射するプロセス、または複数のアダマール行列などの異なるパターンもしくはシーケンスで配列された1つもしくは複数の高アスペクト比構造体に照射するプロセスなど、上で論じたプロセスの多くを、1つまたは複数の標準SEMカラムまたはミニカラムを使用することによって実行することができ、上で論じたプロセスの多くは、図11に示されたSEMミニカラムの使用を必要としない。
【0061】
図2に示したSEMカラム260として使用するときには、図11に示したSEMミニカラムを、集束電子ビーム280(幅<10nm)を発生させるSEMモードで動作させて、試料220とX線ターゲット210の両方の高分解能画像を、後方散乱電子(back−scattered electron)(BSE)画像化によって得ることができる。このSEMミニカラムを、視野全体わたって照射することができる幅の広い電子ビーム290(幅>200nm)を発生させるNanoCTモードで動作させて、複数のX線生成ターゲット構造体212のうちの任意の1つに別々に照射することもできる。SEMモードでターゲット210または試料220を画像化するため、1次ビーム(約60keV)からのかなりのエネルギー損失(約47keV)までの後方散乱電子(BSE)を効率的に集めるようにBSE検出器が構成される。BSE検出器を半径によって区分して、後方散乱電子のエネルギー分布を測定することができ、方位(azimuth)によって区分して、ターゲット210または試料220に関する形状情報を捕捉することができる。
【0062】
図11は、SEMミニカラムの等角断面図を示す。SEMミニカラム1100は、標準ショットキー(Schottky)電子源1110からなる。放出された電子は、ガン・レンズ1120によって高エネルギー(例えば60keV)に加速され、ほぼ平行なビームになる。この高エネルギー・ビームは、軸を外れる(off−axis)ようにビームを偏向させるビーム・ブランカ(beam blanker)1125に入る。ビーム・ブランカ1125は、平行平板電極または四重極電極からなることができる。続いて、通常は一対の静電八重極からなる一対のビーム偏向器1130、1135がビームを主レンズ1140に導く。主レンズ1140は、3つの電極、すなわち負の高電圧(例えば−52kV)にある中心集束電極1146と、接地された2つの外側電極1142、1148とを含み、試料1150上にビームを集束させる。電子−電子相互作用に起因する試料位置におけるビームの広幅化を最小限に抑えるため、SEMミニカラム1100はできるだけ短くしておく。加えて、ビームの交差は通常使用されない。一実施形態では、ショットキー放出器1110から試料1150までのSEMミニカラム1100の長さが150mmである。安定した高電圧動作のため、レンズと偏向電極の間の全ての電場が10kV/mm未満に保たれる。
【0063】
SEMミニカラム1100は、軸上の(on−axis)ビーム直径が5.9nm(FWHM)である60keVのビームを生成することができる。ビームがその視野を走査するときには、軸外れの(off−axis)ビーム直径を最小化するために、いくつかの軸外れビーム収差が動的に補正される。上偏向器1130と下偏向器1135の強度の比を調整して、ビームが主レンズ1140に入るときのビームの角度および半径方向の位置を制御することによって、ビームの半径方向のぼやけ(ブラーリング(blurring))につながるコマ収差(coma)が補正される。主レンズ1140の集束電極1146上の電圧を変化させることによって、ビームの円形のぼやけにつながる場の湾曲が補正される。ビームを偏向させるのに使用する垂直二重極励起に加えて四重極静電励起を八重極偏向電極1130、1135に追加することによって、試料平面の上方および下方の2つのビーム「焦点」の形成につながる非点収差が補正される。偏向電極1130、1135に印加する通常は直線的に変化する電圧に、3次関数的に変化する小さな成分を追加することによって、試料上の誤った場所にビームが着地することにつながる歪みが補正される。
【0064】
これらの動的補正は、軸上のビーム輪郭を、200μmを超えて軸から外れるまで維持することができる。500μmの軸外れで、ビーム輪郭は、偏向軸に対して平行な方向にいくぶん細長くなり、600μmの軸外れで、ビーム輪郭はいくぶん洋ナシ形になる。しかしながら、600μmの軸外れであっても、取得される画像に対するビーム輪郭の影響は最小限であり、したがって、SEMミニカラム1100は、使用可能なかなり大きな視野を有する。
【0065】
図12は、SEMミニカラムの主レンズの拡大断面図を示す。図12に示されているように、主レンズ1150の第3の電極1148にBSE検出器1155が組み込まれている。1次ビームによる衝撃によって試料1150から放出された後方散乱電子(BSE)は、試料表面から上方へ、2πステラジアンの立体角全体にわたって出現する。試料表面に対して小さな角度(例えば<約55°)で試料を出たBSEは、接地された第3の電極1148の底面に当たり、検出されない。試料表面に対して大きな角度(例えば>約80°)で試料を出たBSEは、第3の電極1148および集束電極1146の穴を通り抜け、接地された第1の電極1142の底面に当たり、やはり検出されない。約55°から約80°の範囲内の角度で試料を出たBSEは、示されているように、第3の電極1148の穴を通り抜け、集束電極1146と第3の電極1148の間の電場によって半径方向に偏向する。
【0066】
試料内でかなりの量のエネルギーを失ったBSEはより大きく偏向し、BSE検出器1155の主レンズ1140の光軸により近い位置に当たる。試料中で最小限のエネルギーしか失われなかったBSEはより小さく偏向し、示されているように、BSE検出器の光軸からより遠い位置に当たる。半径によって区分されたBSE検出器1155を使用することによって、BSEの着地位置のこれらの差は、BSEエネルギー分布の測定および分析、ならびに試料の組成を与える元素分析を可能にする。さらに、方位によって区分されたBSE検出器は、BSE散乱角の方位成分の分布の測定および分析を可能にするであろう。BSE散乱角の方位成分は、主レンズ1140の方位対称性のため、試料1150とBSE検出器1155の間のBSE軌道全体にわたって一定であり続ける。このような分布の分析は、BSE散乱角の分布に影響を及ぼす、試料に関する形状情報を提供することができる。
【0067】
図13は、本開示の一実施形態に基づく電子ビーム・ターゲット1300内のX線生成構造体1306を示す。構造体1306は、基板1302の表面1304に作られている。X線を発生させるためには、示されているように、電子ビーム1308を構造体1306上に導く。その結果、X線は、4πステラジアンの全体に(すなわち全方向へ)放出される。X線1310は、全体のX線放出のうち試料(図示せず)に向かって導かれる部分を表す。構造体1306の寸法1314および1316は、構造体1306の右下に位置する試料から見た、X線1310の方向に沿った有効源サイズを決定する。構造体1306の寸法1312は、構造体1306に向かってeビーム1308が導かれたときに発生する全X線流速1310を決定する。eビーム1308の面積は、eビーム1308の源(図示せず)から見たときの構造体1306の面積(寸法1314×寸法1312)よりも大きいが、源サイズはeビームの面積によっては決定されず、試料から「見た」ときの構造体1306の面積(寸法1314×寸法1316)だけによって決定される。
【0068】
図14は、本開示の一実施形態に基づく電子ビーム・ターゲット1400内のX線生成構造体1406を示す。構造体1406は、基板1402の表面1404よりも下に作られている。構造体1406のこのパターン形成は、半導体産業で使用されているよく知られた「ダマシン(Damascene)」法を使用して達成することができる。X線を発生させるためには、示されているように、電子ビーム1408を構造体1406上に導く。その結果、X線は、4πステラジアンの全体に(すなわち全方向へ)放出される。X線1410は、全体のX線放出のうち試料(図示せず)に向かって導かれる部分を表す。構造体1406の寸法1414および1416は、構造体1406の右下に位置する試料から見た、X線1410の方向に沿った有効源サイズを決定する。構造体1406の寸法1412は、構造体1406に向かってeビーム1408が導かれたときに発生する全X線流速1410を決定する。eビーム1408の面積は、eビーム1408の源(図示せず)から見たときの構造体1406の面積(寸法1414×寸法1412)よりも大きいが、源サイズはeビームの面積によっては決定されず、試料から「見た」ときの構造体1406の面積(寸法1414×寸法1416)だけによって決定される。
【0069】
図15は、本開示の一実施形態に基づく電子ビーム・ターゲット1500内のX線生成構造体1506を示す。構造体1506は、表面1504に対して平行に基板1502から外へ向かって片持ち梁式に突き出た構造体として作られている。構造体1506のこのパターン形成は、集束イオン・ビーム・ミリング法または他の3次元パターニング法を使用して達成することができる。X線を発生させるためには、示されているように、電子ビーム1508を構造体1506上に導く。その結果、X線は、4πステラジアンの全体に(すなわち全方向へ)放出される。X線1510は、全体のX線放出のうち試料(図示せず)に向かって導かれる部分を表す。構造体1506の寸法1514および1516は、構造体1506の右下に位置する試料から見た、X線1510の方向に沿った有効源サイズを決定する。構造体1506の寸法1512は、構造体1506に向かってeビーム1508が導かれたときに発生する全X線流速1510を決定する。eビーム1508の面積は、eビーム1508の源(図示せず)から見たときの構造体1506の面積(寸法1514×寸法1512)よりも大きいが、源サイズはeビームの面積によっては決定されず、試料から「見た」ときの構造体1506の面積(寸法1514×寸法1516)だけによって決定される。
【0070】
以下に、本開示に基づく追加の実施形態を列挙する。
【0071】
軟X線生成材料から作られた基板と、硬X線生成材料から作られた高アスペクト比構造体とを含むX線ターゲットである、第1の実施形態。硬X線生成材料は、基板に埋め込まれており、または基板上に形成されており、または基板の縁から外へ片持ち梁式に突き出ており、またはこれらの任意の組合せである。高アスペクト比構造体は、1つまたは複数のグリッドまたはアレイとして配列された複数の高アスペクト比構造体を含み、1つまたは複数のグリッドまたはアレイのうちの1つの中の高アスペクト比構造体は、アダマール行列構造体を形成するように配列されている。
【0072】
高アスペクト比構造体が、異なる断面積を有する少なくとも2つの高アスペクト比構造体を含む第1の実施形態のX線ターゲットである、第2の実施形態。
【0073】
高アスペクト比構造体が、異なる硬X線生成材料から作られた少なくとも2つの高アスペクト比構造体を含む第1から第2のいずれかの実施形態のX線ターゲットである、第3の実施形態。
【0074】
高アスペクト比構造体が、1つまたは複数のグリッドまたはアレイとして配列された複数の高アスペクト比構造体を含む第1から第3のいずれかの実施形態のX線ターゲットである、第4の実施形態。
【0075】
1つまたは複数のグリッドまたはアレイが、1つまたは複数の不規則なグリッドまたはアレイを含む第4の実施形態のX線ターゲットである、第5の実施形態。
【0076】
1つまたは複数のグリッドまたはアレイ内の高アスペクト比構造体が、アダマール行列構造体を形成するように配列された第4の実施形態のX線ターゲットである、第6の実施形態。
【0077】
1つまたは複数のグリッドまたはアレイ内の複数の高アスペクト比構造体が、複数のアダマール行列構造体を形成するように配列されており、複数のアダマール行列構造体がそれぞれ、一組の直交アダマール行列構造体の構成要素である第4の実施形態のX線ターゲットである、第7の実施形態。
【0078】
複数のアダマール行列構造体のそれぞれの中の少なくとも2つの高アスペクト比構造体が、異なる硬X線生成材料から作られており、異なる硬X線生成材料から作られた少なくとも2つの高アスペクト比構造体の空間分布が、複数のアダマール行列構造体のそれぞれの中で同じである第7の実施形態のX線ターゲットである、第8の実施形態。
【0079】
1つまたは複数のグリッドまたはアレイ内の複数の高アスペクト比構造体が、複数組の直交アダマール行列構造体を形成するように配列されており、直交アダマール行列構造体の複数の組のうちのそれぞれの組が、複数の直交アダマール行列構造体を含む第4の実施形態のX線ターゲットである、第9の実施形態。
【0080】
直交アダマール行列構造体の複数の組のうちの少なくとも2つの組の中の複数の直交アダマール行列構造体が、異なる硬X線生成材料から作られた高アスペクト比構造体から作られた第9の実施形態のX線ターゲットである、第10の実施形態。
【0081】
直交アダマール行列構造体の複数の組のうちの少なくとも2つの組の中の複数の直交アダマール行列構造体が、異なる断面積を有する高アスペクト比構造体から作られた第9の実施形態のX線ターゲットである、第11の実施形態。
【0082】
直交アダマール行列構造体の複数の組のうちの少なくとも1つの組の中の複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの中の少なくとも2つの高アスペクト比構造体が、異なる硬X線生成材料から作られており、異なる硬X線生成材料から作られた少なくとも2つの高アスペクト比構造体の空間分布が、直交アダマール行列構造体の複数の組のうちの少なくとも1つの組の中の複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの中で同じである第9の実施形態のX線ターゲットである、第12の実施形態。
【0083】
直交アダマール行列構造体の複数の組のうちの少なくとも1つの組の中の複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの中の少なくとも2つの高アスペクト比構造体が、異なる断面積を有する高アスペクト比構造体から作られた第9の実施形態のX線ターゲットである、第13の実施形態。
【0084】
高アスペクト比構造体が、基板の薄くされた部分に埋め込まれており、または基板の薄くされた部分上に形成されている第1から第13のいずれかの実施形態のX線ターゲットである、第14の実施形態。
【0085】
試料のX線画像を生成する方法であって、
複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの上に電子ビームを逐次的に集束させることであって、直交アダマール行列構造体がそれぞれ、画素化されたグリッドのパターン内の異なる画素位置に配列された複数の高アスペクト比構造体から作られており、高アスペクト比構造体がそれぞれ、硬X線生成材料から作られていることと、
複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの上に電子ビームを逐次的に集束させることによって生成されたX線を試料に照射することと、
試料を透過したX線を逐次的に検出することと、検出されたX線を、アダマール変換された複数のX線画像として記録することと、
1つまたは複数のX線画像を生成するために、アダマール変換された複数のX線画像に1つまたは複数の逆アダマール変換を適用することであって、1つまたは複数のX線画像がそれぞれ、直交アダマール行列構造体を構成する高アスペクト比構造体の画素化されたグリッド内の異なる画素に対応する逆アダマール変換から生成されることと、
試料のX線画像を生成するために、1つまたは複数のX線画像を結合することと
を含む方法である、第15の実施形態。
【0086】
直交アダマール行列構造体がそれぞれ、同じX線ターゲット上の異なる位置に位置する第15の実施形態の方法である、第16の実施形態。
【0087】
複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの上に電子ビームを逐次的に集束させる前に、X線ターゲット上における複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの位置を決定することをさらに含む第16の実施形態の方法である、第17の実施形態。
【0088】
1つまたは複数の逆アダマール変換を適用することが、直交アダマール行列構造体のX線ターゲット上での異なる位置に起因するそれぞれのアダマール変換されたX線画像内の相対視差を補正することを含む第16の実施形態の方法である、第18の実施形態。
【0089】
X線画像を結合することが、それぞれの直交アダマール行列構造体内の高アスペクト比構造体の異なる画素位置に起因するそれぞれのX線画像内の相対視差を補正することを含む第18の実施形態の方法である、第19の実施形態。
【0090】
複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの中の少なくとも2つの高アスペクト比構造体が、異なる硬X線生成材料から作られており、異なる硬X線生成材料から作られた少なくとも2つの高アスペクト比構造体の空間分布が、複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの中で同じである第15から第19のいずれかの実施形態の方法である、第20の実施形態。
【0091】
1つまたは複数のX線画像を結合することが、同じ硬X線生成材料から作られた高アスペクト比構造体を有する直交アダマール行列構造体内の画素に対応するX線画像を結合することを含む第20の実施形態の方法である、第21の実施形態。
【0092】
1つまたは複数のX線画像を生成するために、アダマール変換された複数のX線画像に1つまたは複数の逆アダマール変換を適用することが、アダマール変換された複数のX線画像を、アダマール符号に基づいて加算または減算することを含む第15から第21のいずれかの実施形態の方法である、第22の実施形態。
【0093】
複数の直交アダマール行列構造体が、第1の硬X線生成材料から作られた複数の高アスペクト比構造体から作られており、方法が、
第2の複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの上に電子ビームを逐次的に集束させることであって、第2の複数の直交アダマール行列構造体がそれぞれ、第2の硬X線生成材料から作られた複数の高アスペクト比構造体から作られていることと、
第2の複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの上に電子ビームを逐次的に集束させることによって生成されたX線を試料に照射することと、
試料を透過したX線を逐次的に検出することと、検出されたX線を、アダマール変換された第2の複数のX線画像として記録することと、
第2の硬X線生成材料に対する1つまたは複数のX線画像を生成するために、アダマール変換された第2の複数のX線画像に1つまたは複数の逆アダマール変換を適用することであって、第2の硬X線生成材料に対する1つまたは複数のX線画像がそれぞれ、異なる画素に対応する逆アダマール変換から生成されることと、
第2の材料に対する試料のX線画像を生成するために、第2の硬X線生成材料に対する1つまたは複数のX線画像を結合することと
をさらに含む第15から第22のいずれかの実施形態の方法である、第23の実施形態。
【0094】
複数の直交アダマール行列構造体が、第1の断面積を有する複数の高アスペクト比構造体から作られており、方法が、
第2の複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの上に電子ビームを集束させることであって、第2の複数の直交アダマール行列構造体がそれぞれ、第2の断面積を有する複数の高アスペクト比構造体から作られていることと、
第2の複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの上に電子ビームを逐次的に集束させることによって生成されたX線を試料に照射することと、
試料を透過したX線を逐次的に検出することと、検出されたX線を、アダマール変換された第2の複数のX線画像として記録することと、
1つまたは複数のより高分解能のX線画像を生成するために、アダマール変換された第2の複数のX線画像に1つまたは複数の逆アダマール変換を適用することであって、1つまたは複数のより高分解能のX線画像がそれぞれ、異なる画素に対応する逆アダマール変換から生成されることと、
試料のより高分解能のX線画像を生成するために、1つまたは複数のより高分解能のX線画像を結合することと
をさらに含む第15から第23のいずれかの実施形態の方法である、第24の実施形態。
【0095】
非一時的媒体上に組み込まれたコンピュータ・プログラム製品であって、
複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの上に電子ビームを逐次的に集束させることであって、直交アダマール行列構造体がそれぞれ、画素化されたグリッドのパターン内の異なる画素位置に配列された複数の高アスペクト比構造体から作られており、高アスペクト比構造体がそれぞれ、硬X線生成材料から作られていることと、
複数の直交アダマール行列構造体によって生成され、試料を透過したX線を逐次的に検出することと、検出されたX線を、アダマール変換された複数のX線画像として記録することと、
1つまたは複数のX線画像を生成するために、アダマール変換された複数のX線画像に1つまたは複数の逆アダマール変換を適用することであって、1つまたは複数のX線画像がそれぞれ、直交アダマール行列構造体を構成する高アスペクト比構造体の画素化されたグリッド内の異なる画素に対応する逆アダマール変換から生成されることと、
試料のX線画像を生成するために、1つまたは複数のX線画像を結合することと
を、プログラム可能な処理装置に実行させるように機能可能な命令を含むコンピュータ・プログラム製品である、第25の実施形態。
【0096】
直交アダマール行列構造体がそれぞれ、同じX線ターゲット上の異なる位置に位置する、第25の実施形態のコンピュータ・プログラム製品である、第26の実施形態。
【0097】
複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの上に電子ビームを逐次的に集束させる前に、X線ターゲット上における複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの位置を決定することを、プログラム可能な処理装置に実行させるように機能可能な命令をさらに含む第26の実施形態のコンピュータ・プログラム製品である、第27の実施形態。
【0098】
1つまたは複数の逆アダマール変換を適用する命令が、直交アダマール行列構造体のX線ターゲット上での異なる位置に起因するそれぞれのアダマール変換されたX線画像内の相対視差を補正する命令を含む第26の実施形態のコンピュータ・プログラム製品である、第28の実施形態。
【0099】
X線画像を結合する命令が、それぞれの直交アダマール行列構造体内の高アスペクト比構造体の異なる画素位置に起因するそれぞれのX線画像内の相対視差を補正する命令を含む第28の実施形態のコンピュータ・プログラム製品である、第29の実施形態。
【0100】
複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの中の少なくとも2つの高アスペクト比構造体が、異なる硬X線生成材料から作られており、異なる硬X線生成材料から作られた少なくとも2つの高アスペクト比構造体の空間分布が、複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの中で同じである第25から第29のいずれかの実施形態のコンピュータ・プログラム製品である、第30の実施形態。
【0101】
1つまたは複数のX線画像を結合する命令が、同じ硬X線生成材料から作られた高アスペクト比構造体を有する直交アダマール行列構造体内の画素に対応するX線画像を結合する命令を含む第30の実施形態のコンピュータ・プログラム製品である、第31の実施形態。
【0102】
1つまたは複数のX線画像を生成するために、アダマール変換された複数のX線画像に1つまたは複数の逆アダマール変換を適用する命令が、アダマール変換された複数のX線画像を、アダマール符号に基づいて加算または減算する命令を含む第25から第31のいずれかの実施形態のコンピュータ・プログラム製品である、第32の実施形態。
【0103】
複数の直交アダマール行列構造体が、第1の硬X線生成材料から作られた複数の高アスペクト比構造体から作られており、コンピュータ・プログラム製品が、
第2の複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの上に電子ビームを逐次的に集束させることであって、第2の複数の直交アダマール行列構造体がそれぞれ、第2の硬X線生成材料から作られた複数の高アスペクト比構造体から作られていることと、
第2の複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれによって生成され、試料を透過したX線を逐次的に検出することと、検出されたX線を、アダマール変換された複数のX線画像として記録することと、
第2の硬X線生成材料に対する1つまたは複数のX線画像を生成するために、アダマール変換された第2の複数のX線画像に1つまたは複数の逆アダマール変換を適用することであって、第2の硬X線生成材料に対する1つまたは複数のX線画像がそれぞれ、異なる画素に対応する逆アダマール変換から生成されることと、
第2の硬X線生成材料に対する試料のX線画像を生成するために、第2の硬X線生成材料に対する1つまたは複数のX線画像を結合することと
を、プログラム可能な処理装置に実行させるように機能可能な命令をさらに含む第25から第32のいずれかの実施形態のコンピュータ・プログラム製品である、第33の実施形態。
【0104】
複数の直交アダマール行列構造体が、第1の断面積を有する複数の高アスペクト比構造体から作られており、コンピュータ・プログラム製品が、
第2の複数の直交アダマール行列構造体のそれぞれの上に電子ビームを逐次的に集束させることであって、第2の複数の直交アダマール行列構造体がそれぞれ、第2の断面積を有する複数の高アスペクト比構造体から作られていることと、
第2の複数の直交アダマール行列構造体によって生成され、試料を透過したX線を逐次的に検出することと、検出されたX線を、アダマール変換された複数のX線画像として記録することと、
1つまたは複数のより高分解能のX線画像を生成するために、アダマール変換された第2の複数のX線画像に1つまたは複数の逆アダマール変換を適用することであって、1つまたは複数のより高分解能のX線画像がそれぞれ、異なる画素に対応する逆アダマール変換から生成されることと、
試料のより高分解能のX線画像を生成するために、1つまたは複数のより高分解能のX線画像を結合することと
を、プログラム可能な処理装置に実行させるように機能可能な命令をさらに含む第25から第33のいずれかの実施形態のコンピュータ・プログラム製品である、第34の実施形態。
【0105】
試料のX線画像を生成する方法であって、
試料を画像化するために、集束電子ビームで試料をラスタ走査することと、
X線ターゲットを画像化し、X線ターゲット上に位置しまたはX線ターゲットに埋め込まれた複数の硬X線生成構造体の位置を決定するために、集束電子ビームでX線ターゲットをラスタ走査することと、
X線の流速を発生させるために、複数の硬X線生成構造体のうちの1つまたは複数に電子ビームを照射することと、
試料を透過したX線をX線検出器のところで検出することと、
検出されたX線による試料のX線画像を記録することと
を含む方法である、第35の実施形態。
【0106】
複数の硬X線生成構造体のうちの1つまたは複数に電子ビームを照射することが、複数の硬X線生成構造体のうちの1つに集束電子ビームを照射することを含む第35の実施形態の方法である、第36の実施形態。
【0107】
複数の硬X線生成構造体のうちの1つまたは複数に電子ビームを照射することが、全く同じ複数の硬X線生成構造体に集束電子ビームを逐次的に照射することを含む第35から第36のいずれかの実施形態の方法である、第37の実施形態。
【0108】
複数の硬X線生成構造体のうちの1つまたは複数に電子ビームを照射することが、複数の硬X線生成構造体に幅の広い電子ビームを同時に照射することを含む第35から第37のいずれかの実施形態の方法である、第38の実施形態。
【0109】
複数の硬X線生成構造体のうちの少なくとも2つが異なる面積を有し、複数の硬X線生成構造体のうちの1つに集束電子ビームを照射することが、第1の面積を有する硬X線生成構造体に照射することを含む第36の実施形態の方法である、第39の実施形態。
【0110】
第2の面積を有する硬X線生成構造体に照射することと、試料を透過したX線をX線検出器のところで検出することと、検出されたX線による試料の第2のX線画像を記録することとをさらに含む第39の実施形態の方法である、第40の実施形態。
【0111】
第2の面積が第1の面積よりも小さく、第2のX線吸収画像がより大きな分解能を有する第40の実施形態の方法である、第41の実施形態。
【0112】
複数の硬X線生成構造体のうちの少なくとも2つが異なる材料から作られており、複数の硬X線生成構造体のうちの1つに集束電子ビームを照射することが、第1の材料から作られた硬X線生成構造体に照射することを含む第36の実施形態の方法である、第42の実施形態。
【0113】
第2の材料から作られた硬X線生成構造体に照射することと、試料を透過したX線をX線検出器のところで検出することと、試料の第2のX線画像を記録することとをさらに含む第42の実施形態の方法である、第43の実施形態。
【0114】
第1の複数の硬X線生成構造体が第1の面積を有し、第2の複数の硬X線生成構造体が第2の面積を有し、複数の硬X線生成構造体に幅の広い電子ビームを照射することが、第1の面積を有する第1の複数の硬X線生成構造体に照射することを含む第38の実施形態の方法である、第44の実施形態。
【0115】
第2の面積を有する第2の複数の硬X線生成構造体に照射することと、試料を透過したX線をX線検出器のところで検出することと、試料の第2のX線画像を記録することとをさらに含む第44の実施形態の方法である、第45の実施形態。
【0116】
第2の面積が第1の面積より小さく、第2のX線吸収画像がより大きな分解能を有する第45の実施形態の方法である、第46の実施形態。
【0117】
第1の複数の硬X線生成構造体が第1の材料から作られており、第2の複数の硬X線生成構造体が第2の材料から作られており、複数の硬X線生成構造体に幅の広い電子ビームを照射することが、第1の材料から作られた第1の複数の硬X線生成構造体に照射することを含む第38の実施形態の方法である、第47の実施形態。
【0118】
第2の材料から作られた第2の複数の硬X線生成構造体に照射することと、試料を透過したX線をX線検出器のところで検出することと、試料の第2のX線画像を記録することとをさらに含む第47の実施形態の方法である、第48の実施形態。
【0119】
第1の複数の硬X線生成構造体および第2の複数の硬X線生成構造体がそれぞれ、アダマール行列構造体を形成するようにパターン化された第44の実施形態の方法である、第49の実施形態。
【0120】
第1の複数の硬X線生成構造体および第2の複数の硬X線生成構造体がそれぞれ、アダマール行列構造体を形成するようにパターン化された第47の実施形態の方法である、第50の実施形態。
【0121】
平面X線ターゲットと、試料ホルダと、平面X線検出器とを含み、平面X線検出器の平面が、平面X線ターゲットの平面に対して実質的に平行であり、平面X線ターゲット、試料ホルダおよび平面X線検出器が、X線ターゲットの平面に対して実質的に垂直な軸に沿って実質的に整列したX線投影システムである、第51の実施形態。
【0122】
平面X線ターゲットと平面X線検出器の間にあって、軟X線を除去するフィルタをさらに含む第51の実施形態のX線投影システムである、第52の実施形態。
【0123】
平面X線検出器が、軟X線よりも硬X線に対してより高い感度を有する第51から第52のいずれかの実施形態のX線投影システムである、第53の実施形態。
【0124】
平面X線ターゲット、試料ホルダおよび平面X線検出器の軸に対して傾いた光軸を有する走査電子顕微鏡(SEM)カラムをさらに含む第51から第53のいずれかの実施形態のX線投影システムである、第54の実施形態。
【0125】
SEMカラムが、試料およびX線ターゲットの少なくとも一部分に集束電子ビームを照射するように構成された第54の実施形態のX線投影システムである、第55の実施形態。
【0126】
SEMカラムが、X線ターゲットの少なくとも一部分に幅の広い電子ビームを照射するように構成された第54の実施形態のX線投影システムである、第56の実施形態。
【0127】
SEMカラムが、電子ビームの通過を許すように穴があけられた第1、第2および第3の電極を含む主レンズを含み、第1および第3の電極が実質的に接地されており、第2の電極が、グランド電位に対して負の大きな電位を有する第54の実施形態のX線投影システムである、第57の実施形態。
【0128】
第2の電極と第3の電極の間に設置された穴のあいた後方散乱電子(BSE)検出器をさらに含み、後方散乱電子(BSE)検出器が実質的に接地されている第57の実施形態のX線投影システムである、第58の実施形態。
【0129】
BSE検出器が半径によって区分された第58の実施形態のX線投影システムである、第59の実施形態。
【0130】
BSE検出器が方位によって区分された第58の実施形態のX線投影システムである、第60の実施形態。
【0131】
電子ビームが偏向して軸外れになるときに、第2の電極の電位を変化させて、場の湾曲による収差を補正する第57の実施形態のX線投影システムである、第61の実施形態。
【0132】
SEMカラムが、電子ビームを偏向させて主レンズ内へ導く一対の八重極電極を含む第57の実施形態のX線投影システムである、第62の実施形態。
【0133】
一対の八重極電極の相対強度が、コマ収差を補正するように設定された第62の実施形態のX線投影システムである、第63の実施形態。
【0134】
非点収差を補正するために、一対の八重極電極に四重極静電励起が追加された第62の実施形態のX線投影システムである、第64の実施形態。
【0135】
歪みを補正するために、一対の八重極電極に、3次関数的に変化する静電励起が追加された第62の実施形態のX線投影システムである、第65の実施形態。
【0136】
平面X線ターゲット、試料ホルダおよび平面X線検出器の軸と実質的に整列した光軸を有する走査電子顕微鏡(SEM)カラムをさらに含む第51から第65のいずれかの実施形態のX線投影システムである、第66の実施形態。
【0137】
平面X線ターゲットが、硬X線生成材料から作られた高アスペクト比構造体を備える第51から第66のいずれかの実施形態のX線投影システムである、第67の実施形態。
【0138】
高アスペクト比構造体が、基板の薄くされた部分に埋め込まれており、または基板の薄くされた部分上に形成されている第51から第67のいずれかの実施形態のX線投影システムである、第68の実施形態。
【0139】
本発明の好ましい方法または装置は多くの新規の態様を有する。本発明は、異なる目的を有する異なる方法または装置として実施することができるため、全ての実施形態に全ての態様が存在する必要はない。さらに、記載された実施形態の態様の多くは別々に特許を受けることができる。本発明は幅広い適用可能性を有し、上記の例において説明し示した多くの利点を提供することができる。本発明の実施形態は、具体的な用途によって大きく異なる。全ての実施形態が、これらの全ての利点を提供するわけではなく、全ての実施形態が、本発明によって達成可能な全ての目的を達成するわけでもない。
【0140】
本発明の実施形態は、コンピュータ・ハードウェアもしくはハードウェアとソフトウェアの組合せによって、またはコンピュータ可読の非一時的記憶装置に記憶されたコンピュータ命令によって実現することができることを認識すべきである。本発明の方法は、標準プログラミング技法を使用した、本明細書に記載された方法および図に基づくコンピュータ・プログラムとして実現することができる。ここで言うコンピュータ・プログラムには、コンピュータ・プログラムを含むように構成されたコンピュータ可読の非一時的記憶媒体が含まれ、そのように構成された記憶媒体は、コンピュータを、事前に決定された特定の方式で動作させる。コンピュータ・システムと通信するため、それぞれのプログラムは、高水準手続き型プログラミング言語またはオブジェクト指向プログラミング言語で実現することができる。しかしながら、所望ならば、それらのプログラムを、アセンブラ言語または機械語で実現することもできる。いずれにせよ、その言語は、コンパイルまたは解釈される言語とすることができる。さらに、そのプログラムは、そのプログラムを実行するようにプログラムされた専用集積回路上で実行することができる。
【0141】
さらに、方法論は、限定はされないが、荷電粒子ツールもしくは他の画像化装置とは別個の、荷電粒子ツールもしくは他の画像化装置と一体の、または荷電粒子ツールもしくは他の画像化装置と通信するパーソナル・コンピュータ、ミニコンピュータ、メインフレーム、ワークステーション、ネットワーク化されたコンピューティング環境または分散コンピューティング環境、コンピュータ・プラットホームなどを含む、任意のタイプのコンピューティング・プラットホームで実現することができる。本発明の諸態様は、取外し可能であるか、またはコンピューティング・プラットホームと一体であるかを問わない、ハード・ディスク、光学式読取りおよび/もしくは書込み記憶媒体、RAM、ROMなどの非一時的記憶媒体上または非一時的記憶装置上に記憶された機械可読コードであって、プログラム可能なコンピュータが、本明細書に記載された手順を実行するために、その記憶媒体または記憶装置を読んだときに、そのコンピュータを構成し、動作させるために、そのコンピュータが読むことができるように記憶された機械可読コードとして実現することができる。さらに、機械可読コードまたは機械可読コードの一部を、有線または無線ネットワークを介して伝送することができる。本明細書に記載された発明は、マイクロプロセッサまたは他のデータ処理装置と連携して上述の諸ステップを実現する命令またはプログラムを含む、これらのさまざまなタイプのコンピュータ可読の非一時的記憶媒体、およびその他のさまざまなタイプのコンピュータ可読の非一時的記憶媒体を含む。本発明はさらに、本明細書に記載された方法および技法に従ってプログラムされたコンピュータを含む。
【0142】
入力データに対してコンピュータ・プログラムを適用して、本明細書に記載された機能を実行し、それによって入力データを変換して出力データを生成することができる。この出力情報は、表示モニタなどの1つまたは複数の出力装置に出力される。本発明の好ましい実施形態では、変換されたデータが物理的な実在する物体を表し、これには、その物理的な実在する物体の特定の視覚的描写を表示画面上に生成することが含まれる。
【0143】
以上の議論および特許請求の範囲では、用語「含む(including)」および「備える(comprising)」が、オープン・エンド(open−ended)型の用語として使用されており、したがって、これらの用語は、「...を含むが、それらだけに限定されない(including,but not limited to...)」ことを意味すると解釈すべきである。ある用語が本明細書で特に定義されていない場合、その用語は、その通常の一般的な意味で使用されることが意図されている。添付図面は、本発明の理解を助けることが意図されており、特記しない限り、一定の比率では描かれていない。本発明を実施するのに適した粒子ビーム・システムは例えば、本出願の譲受人であるFEI Companyから市販されている。
【0144】
本発明および本発明の利点を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された実施形態に、さまざまな変更、置換および改変を加えることができることを理解すべきである。さらに、本出願の範囲が、本明細書に記載されたプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法およびステップの特定の実施形態に限定されることは意図されていない。
【0145】
例えば、本明細書に開示された方法および装置は、X線トモグラフィ・システム内で使用するものとして記載されているが、それらの方法および装置は一般に、任意のタイプのX線投影画像化システムで使用することができる。さらに、X線吸収画像を得ることに加えて、開示された方法および装置を使用して、位相コントラスト画像、回折コントラスト画像など、他のタイプの試料コントラスト画像を得ることもできる。小さな構造体を含む試料を画像化するときには、位相コントラスト画像および回折コントラスト画像の方が有用であることがある。SEMミニカラム1100(図11)をSEMカラム260(図2)として使用することができるが、SEMカラム260は、従来の任意のSEMカラムまたはミニカラムとすることができる。さらに、単一のSEMカラム260を使用してターゲット210および試料220を画像化する代わりに、別々のSEMカラムを使用してそれぞれを画像化することもできる。複数の高アスペクト比構造体はN×Mグリッドを形成することが好ましいと記載したが、このグリッドは、1次元または2次元のグリッドとすることができる。さらに、グリッドの要素は、規則的な繰返しパターンとして現れることが好ましいことがあるが、グリッドの要素は、不規則なパターンとしてまたは非繰返しパターンとして現れてもよい。図2に示したX線検出器230は、高アスペクト比構造体212によって生成された硬X線に対しては高い感度を有し、構造体212によって生成された軟X線および/またはその表面もしくはその内部に構造体212が作られた基板によって生成された軟X線に対しては低い感度を有するように構築することができる。あるいは、X線ターゲット210とX線検出器230の間に、軟X線を除去するフィルタ(図示せず)を置くこともできる。
【0146】
当業者なら本発明の開示から容易に理解するように、本明細書に記載された対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行し、または実質的に同じ結果を達成する既存のまたは今後開発されるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを、本発明に従って利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、その範囲内に、このようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを含むことが意図されている。
【符号の説明】
【0147】
200 X線トモグラフィ・システム
210 平面ターゲット
212 X線生成構造体
220 試料
230 平面検出器
260 光学カラム
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15