(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6499557
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】オーステナイト系ステンレス鋼板の溶接方法
(51)【国際特許分類】
B23K 9/23 20060101AFI20190401BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20190401BHJP
C22C 38/58 20060101ALI20190401BHJP
B23K 9/02 20060101ALI20190401BHJP
B23K 31/00 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
B23K9/23 B
C22C38/00 302Z
C22C38/58
B23K9/02 S
B23K31/00 B
B23K31/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-176734(P2015-176734)
(22)【出願日】2015年9月8日
(65)【公開番号】特開2017-51968(P2017-51968A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】714003416
【氏名又は名称】日新製鋼株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390010227
【氏名又は名称】株式会社三五
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】藤村 佳幸
(72)【発明者】
【氏名】今川 一成
(72)【発明者】
【氏名】山本 修
(72)【発明者】
【氏名】奥 学
(72)【発明者】
【氏名】早川 雄
(72)【発明者】
【氏名】志知 弘章
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 良英
【審査官】
竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−104882(JP,A)
【文献】
特開2006−159262(JP,A)
【文献】
特開2004−131843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/23
B23K 9/02
B23K 31/00
C22C 38/00
C22C 38/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C:0.08質量%以下、Si:1.5質量%以上4.0質量%以下、Mn:2.0質量%以下、P:0.04質量%以下、S:0.01質量%以下、Cr:16.0質量%以上22.0質量%以下、Ni:10.0質量%以上14.0質量%以下、および、N:0.08質量%以下を含有するとともに、NbおよびTiの少なくとも1種を合計1.0質量%以下含有し、残部がFeおよび不可避的不純物にて構成された板厚0.6mm以上1.0mm以下のオーステナイト系ステンレス鋼板を重ねてアーク溶接にて重ね部を溶接し、
溶接裏面において溶接時に温度が最高となる部位である溶着裏面部を、110℃/秒以上の冷却速度で1200℃から900℃まで冷却する
ことを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼板の溶接方法。
【請求項2】
オーステナイト系ステンレス鋼板は、Al、ZrおよびVのうちの少なくとも1種を合計1.0質量%以下含有する
ことを特徴とする請求項1記載のオーステナイト系ステンレス鋼板の溶接方法。
【請求項3】
オーステナイト系ステンレス鋼板は、MoおよびCuの少なくとも1種を合計4.0質量%以下含有する
ことを特徴とする請求項1または2記載のオーステナイト系ステンレス鋼板の溶接方法。
【請求項4】
オーステナイト系ステンレス鋼板は、Bを0.01質量%以下含有する
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載のオーステナイト系ステンレス鋼板の溶接方法。
【請求項5】
重ね部を溶接する際の溶接継手部の重ね代の長さを2.5mm以上とする
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載のオーステナイト系ステンレス鋼板の溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼板を重ねて溶接するためのオーステナイト系ステンレス鋼板の溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の観点から排気ガスの規制が厳しくなり、燃費やエンジンの燃焼効率をより向上させるため、排気ガス温度を上昇させる傾向にある。
【0003】
また、エンジン始動の際の排気ガス浄化性能の効率化を目的として、内管と外管とを備え、これら内管と外管との間に空隙が設けられた二重構造エキゾーストマニホールドが搭載されることがある(例えば、特許文献1ないし3参照。)。
【0004】
この種の二重構造エキゾーストマニホールドでは、内管が単構造エキゾーストマニホールドより薄肉化される傾向にある。
【0005】
そのため、通常、単構造エキゾーストマニホールドには熱膨張係数の小さいフェライト系ステンレス鋼が用いられるが、二重構造エキゾーストマニホールドの内管には、フェライト系ステンレス鋼より加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−93654号公報
【特許文献2】特開平8−334017号公報
【特許文献3】特開平8−334018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
二重構造エキゾーストマニホールドの内管および外管は、プレス成形された管部品を重ね合わせてMIG溶接等のアーク溶接による隅肉溶接にて製造されることが多い。
【0008】
しかしながら、二重構造エキゾーストマニホールドの内管は、通常の単構造エキゾーストマニホールドより薄肉であるため、溶接における入熱量の制御が非常に難しく、特に溶接継手部にて、高温割れや延性低下割れ等の溶接欠陥が発生しやすいという問題がある。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、溶接欠陥が発生しにくいオーステナイト系ステンレス鋼板の溶接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載されたオーステナイト系ステンレス鋼板の溶接方法は、C:0.08質量%以下、Si:1.5質量%以上4.0質量%以下、Mn:2.0質量%以下、P:0.04質量%以下、S:0.01質量%以下、Cr:16.0質量%以上22.0質量%以下、Ni:10.0質量%以上14.0質量%以下、および、N:0.08質量%以下を含有するとともに、NbおよびTiの少なくとも1種を合計1.0質量%以下含有し、残部がFeおよび不可避的不純物にて構成された板厚0.6mm以上1.0mm以下のオーステナイト系ステンレス鋼板を重ねてアーク溶接にて重ね部を溶接し、溶接裏面において溶接時に温度が最高となる部位である溶着裏面部を、110℃/秒以上の冷却速度で1200℃から900℃まで冷却するものである。
【0011】
請求項2に記載されたオーステナイト系ステンレス鋼板の溶接方法は、請求項1記載のオーステナイト系ステンレス鋼板の溶接方法において、オーステナイト系ステンレス鋼板は、Al、ZrおよびVのうちの少なくとも1種を合計1.0質量%以下含有するものである。
【0012】
請求項3に記載されたオーステナイト系ステンレス鋼板の溶接方法は、請求項1または2記載のオーステナイト系ステンレス鋼板の溶接方法において、オーステナイト系ステンレス鋼板は、MoおよびCuの少なくとも1種を合計4.0質量%以下含有するものである。
【0013】
請求項4に記載されたオーステナイト系ステンレス鋼板の溶接方法は、請求項1ないし3いずれか一記載のオーステナイト系ステンレス鋼板の溶接方法において、オーステナイト系ステンレス鋼板は、Bを0.01質量%以下含有するものである。
【0014】
請求項5に記載されたオーステナイト系ステンレス鋼板の溶接方法は、請求項1ないし4いずれか一記載のオーステナイト系ステンレス鋼板の溶接方法において、重ね部を溶接する際の溶接継手部の重ね代の長さを2.5mm以上とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、溶接裏面において溶接時に温度が最高となる部位である溶着裏面部を、110℃/秒以上の冷却速度で1200℃から900℃まで冷却するため、溶接の際に発生した熱を移動でき、溶接欠陥の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る溶接継手部を模式的に示す断面図である。
【
図2】同上溶接継手部の変形例を模式的に示す断面図である。
【
図3】本実施例および比較例における冷却速度と割れ発生率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態の構成について詳細に説明する。
【0018】
二重構造エキゾーストマニホールドは、外管と、この外管より内側に間隙を介して配置された内管とを備える。これら外管および内管は、それぞれ
図1に示す溶接継手部1にて、溶接ワイヤ等の溶接棒を用いMIG溶接されて、外管と内管との間に中空の断熱層が配置された状態で固定されている。
【0019】
また、このように溶接することにより、溶接継手部1は、管母材部2と、管母材部3と、これら管母材部2,3が溶着している溶着部4と、管母材部2,3と溶着部4との境界であるボンド部5とを有する構成となる。なお、
図1の破線は溶着前の管母材部2,3のセット状態を示す。
【0020】
内管は、外管より薄肉であり、溶接における入熱量の制御が非常に難しいため、例えば高温割れや延性低下割れ等の溶接欠陥が発生しにくいようにすることが重要である。
【0021】
そこで、内管には、フェライト系ステンレス鋼より加工性に優れる板厚0.6mm以上1.0mm以下のオーステナイト系ステンレス鋼板が用いられている。また、内管のオーステナイト系ステンレス鋼は、具体的に下記の通り成分設計されている。
【0022】
内管の母材成分(オーステナイト系ステンレス鋼)は、0.08質量%以下のC(炭素)、1.5質量%以上4.0質量%以下のSi(ケイ素)、2.0質量%以下のMn(マンガン)、0.04質量%以下のP(リン)、0.01質量%以下のS(硫黄)、16.0質量%以上22.0質量%以下のCr(クロム)、10.0質量%以上14.0質量%以下のNi(ニッケル)、および、0.08質量%以下のN(窒素)を含有するとともに、Nb(ニオブ)およびTi(チタン)の少なくとも1種を合計1.0質量%以下含有し、残部がFe(鉄)および不可避的不純物にて構成されている。
【0023】
なお、オーステナイト系ステンレス鋼は、必要に応じて、Al(アルミニウム)、Zr(ジルコニウム)およびV(バナジウム)のうちの少なくとも1種を合計1.0質量%以下含有する構成にしてもよい。
【0024】
また、オーステナイト系ステンレス鋼は、必要に応じて、Mo(モリブデン)およびCu(銅)の少なくとも1種を合計4.0質量%以下含有する構成にしてもよい。
【0025】
さらに、オーステナイト系ステンレス鋼は、必要に応じて、0.01質量%以下のB(ホウ素)を含有する構成にしてもよい。
【0026】
Cは、オーステナイト系ステンレス鋼の高温強度の向上に有効であるが、0.08質量%を超えて過剰に含有させると、使用中にCr炭化物を形成して靭性が劣化する可能性があるとともに、耐高温酸化性の向上に有効な固溶Cr量が減少する可能性がある。したがって、Cの含有量は、0.08質量%以下(無添加を含まず。)とする。
【0027】
Siは、高温酸化特性の向上に非常に有効であり、母材において1.5質量%以上含有させることにより、850〜900℃の温度域でSi濃化被膜をCr酸化物の内側に形成させ、耐スケール剥離性の向上に寄与する。一方、Siを、母材において4.0質量%を超えて過剰に含有させると、σ脆化感受性を高め、使用中にσ脆化を誘発する可能性がある。したがって、Siの含有量は、1.5質量%以上4.0質量%以下とし、好ましくは3.0質量%以上4.0質量%以下とする。
【0028】
Mnは、オーステナイト相安定化元素であり、主としてδ相バランスを調整する作用を奏するが、2.0質量%を超えて過剰に含有させると、耐高温酸化性の低下を招いてしまう可能性がある。したがって、Mnの含有量は2.0質量%以下(無添加を含まず。)とする。
【0029】
Pは、0.04質量%を超えて含有させるとオーステナイト系ステンレス鋼の熱間加工性を低下させる可能性があるため、可能な限り含有量を低減することが好ましい。したがって、Pの含有量は0.04質量%以下とする。
【0030】
Sは、Pと同様に0.01質量%を超えて含有させるとオーステナイト系ステンレス鋼の熱間加工性を低下させる可能性があるため、可能な限り含有量を低減することが好ましい。したがって、Sの含有量は0.01質量%以下とする。
【0031】
Crは、高温でのスケール生成を抑制し、高温酸化特性の向上に有効な元素であり、このような作用を奏するには16.0質量%以上含有させる必要がある。一方、Crを22.0質量%を超えて過剰に含有させると、σ脆化を誘発する可能性がある。したがって、Crの含有量は16.0質量%以上22.0質量%以下とする。
【0032】
Niは、オーステナイト相安定化元素であり、主としてδ相バランスを調整するために含有させるが、このような作用を奏するには、10.0質量%以上含有させる必要がある。一方、Niを過剰に含有させると、コストの上昇を招くことから、Niの含有量の上限は14.0質量%とする。したがって、Niの含有量は10.0質量%以上14.0質量%以下とする。
【0033】
Nは、固溶強化により高温強度を向上させる元素であるが、0.08質量%を超えて過剰に含有させると、Cr窒化物の形成により、靭性を低下させる可能性がある。したがって、Nの含有量は、0.08質量%以下(無添加を含まず。)とする。
【0034】
NbおよびTiは、CやNと結合し高温強度を向上させる元素であるが、過剰に含有させると、低融点化につながる可能性がある。したがって、高温強度を向上する目的でNbおよびTiを含有させる場合は、NbおよびTiのうちの少なくとも1種を合計1.0質量%以下で含有させる。
【0035】
Alは、強力なフェライト生成元素であり、δ相の安定化に有効である。また、ZrおよびVは、CやNと結合し高温強度を向上させる元素である。しかしながら、Al、ZrおよびVは、過剰に含有させると、低融点化につながる可能性がある。したがって、高温強度を向上する目的でAl、ZrおよびVを含有させる場合は、Al、ZrおよびVのうちの少なくとも1種を合計1.0質量%以下で含有させることが好ましい。
【0036】
Moは、フェライト生成元素であり、高温強度の向上に有効であるが、過剰に含有させるとσ脆化を招き、靭性が低下する可能性がある。また、Cuは、オーステナイト生成元素であり、高温強度の向上に有用であるが、過剰に含有させると耐高温酸化性の低下を招く可能性がある。したがって、高温強度の向上を目的としてMoおよびCuを含有させる場合は、MoおよびCuのうちの少なくとも1種を合計4.0質量%以下で含有させることが好ましい。
【0037】
Bは、溶接継手部の粒界強度を向上させて耐熱性の向上に有効であるが、多量に含有させると熱間加工性が低下してしまう可能性がある。したがって、耐熱性の向上を目的としてBを含有させる場合のBの含有量は、0.01質量%以下が好ましい。
【0038】
次に、上記オーステナイト系ステンレス鋼板を溶接する際の溶接方法について説明する。
【0039】
内管を溶接する際には、内管の一部同士を重ね合わせた状態にて、MIG溶接を行う。
【0040】
なお、MIG溶接における溶接条件、溶接心線の種類およびシールドガスの流量等は、適宜設定選択可能である。シールドガスの種類については、アルゴンや窒素等の不活性ガスを用い、溶接部での酸化物の巻き込み防止の観点から不活性ガス中の酸素濃度は5.0体積%以下とすることが好ましい。
【0041】
MIG溶接における溶接高温割れ等の溶接欠陥の発生を防止するには、溶接後に冷却することにより、溶接の際に発生した熱を早期に他の部位へ伝達させ熱移動させることが重要である。
【0042】
溶接後に素早く熱移動させて効果的に溶接欠陥の発生を防止するためには、溶接継手部1において、溶接を施した面とは反対側の溶接裏面6の冷却速度を制限することが有効である。
【0043】
具体的には、溶接後に溶接裏面6において温度が最高となる部位である溶着裏面部7を、110℃/秒以上の冷却速度で1200℃から900℃まで冷却する。
【0044】
溶接後の冷却速度を上昇させ、冷却速度を110℃/秒以上にする方法としては、例えば、溶接での入熱そのものを製品の性質上許容される範囲で低減する方法、熱伝達を促進するために溶接裏面6にCu等の当て板を取り付ける方法、バックシールドガスの流量を調整する方法、および、シールドガスを溶接裏面6へ直接吹き付ける方法等にて適宜実施可能である。
【0045】
ここで、溶接の際に最も熱移動しにくいのは、鋼板同士が重なった重ね部8である。そこで、重ね部8の体積を大きくして熱伝導(熱移動)を促進させるため、重ね部8の重ね代Wの長さを2.5mm以上にする構成が好ましく、重ね代Wの長さが4.0mm以上であるとより好ましい。
【0046】
そして、上記オーステナイト系ステンレス鋼板の溶接方法によれば、溶接裏面6において溶接時に温度が最高となる部位である溶着裏面部7を1200℃から900℃まで冷却する際の冷却速度を110℃/秒以上とするため、溶接欠陥が発生しやすい溶接裏面6において溶接の際に発生した熱を早期に他の部位へ移動できる。そのため、溶接欠陥の原因となる溶接の際に発生した熱による影響を抑制でき、高温割れやHAZ部(熱影響部)の延性低下割れ等の溶接欠陥の発生を防止できる。
【0047】
また、重ね部8を溶接する際の重ね代Wの長さを2.5mm以上にすることにより、重ね部8の体積を大きくして熱伝導(熱移動)を促進でき、冷却速度を上昇できるため、溶接欠陥の発生を効果的に防止できる。さらに、重ね代Wの長さを4.0mm以上にすると、溶接欠陥の発生をより効果的に防止できる。
【0048】
なお、上記オーステナイト系ステンレス鋼板の溶接方法では、アーク溶接としてMIG溶接法を用いているが、例えば、TIG溶接法、MAG溶接法および被覆アーク溶接法等も適用可能である。
【0049】
また、上記オーステナイト系ステンレス鋼板の溶接方法では、重ね部8を隅肉溶接しているが、例えば
図2に示す変形例のように、重ね部8の中央部付近を溶接してもよい。
【0050】
さらに、上記オーステナイト系ステンレス鋼板の溶接方法は、オーステナイト系ステンレス鋼板同士を溶接する場合、および、オーステナイト系ステンレス鋼板を他の材料と溶接する場合のいずれにも適用可能である。
【実施例】
【0051】
以下、本実施例および比較例について説明する。
【0052】
表1に示す成分のオーステナイト系ステンレス鋼を溶製し、板厚0.8mmの冷延焼鈍板とした。また、各冷延焼鈍板から100×200mmの板状の供試材を切り出した。
【0053】
【表1】
【0054】
各鋼種の供試材を2枚重ね合わせて、電流120A、電圧14.4V、溶接心線308(φ1.2mm)、シールドガスAr+5体積%O
2、および、シールドガス流量10L/分の条件でMIG溶接を施した後、バックシールドガスとしてArを溶接裏面へ直接吹き付けて溶着裏面部を冷却した。なお、冷却速度は、バックシールドガスの流量を調整することでコントロールした。
【0055】
各鋼種で5つの検体を作製し評価数を5として、溶着裏面部に割れが発生していたものを割れ判定とし割れの発生率を算出した。
【0056】
各鋼種における重ね代、溶着裏面部を1200℃から900℃まで冷却する際の冷却速度、および、割れ発生率を表2に示し、冷却速度と割れ発生率との関係を
図3に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
表2および
図3に示すように、溶着裏面部を1200℃から900℃まで冷却する際の冷却速度が110℃/秒以上の本実施例である鋼種No.1ないし鋼種No.10のいずれも溶着裏面部に割れが発生しておらず、溶接性に優れていた。
【0059】
一方、溶着裏面部を1200℃から900℃まで冷却する際の冷却速度が110℃/秒未満の比較例である鋼種No.11ないし鋼種No.15のいずれも溶接割れが発生しており、溶接性が不十分であった。
【符号の説明】
【0060】
1 溶接継手部
6 溶接裏面
7 溶着裏面部
8 重ね部
W 重ね代