【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、マスクを2工程で除去することが知られている。第1の工程は表面殻を除去することを含み、その後の第2の工程は下部の注入を受けていない樹脂を除去することを含む。しかし、第1の工程には強力なエッチング剤を用いる必要があるので、基板、特に注入を受けたソース及びドレインのシリコンに損傷を与え、消耗させてしまい、結果として装置の性能を劣化させるおそれがある。
【0004】
Kurt K. Christensonらによる発表、“注入を受けたフォトレジストの全ウェット除去”('AΙΙ Wet stripping Of Implanted Photoresist', 8th International Symposium on Ultra Clean Processing of Semiconductor Surfaces UCPSS, 2006) にて説明された解決策は、ピラニア溶液と呼ばれる化学溶液を用いるものであり、これは、H
2SO
4とH
2O
2との混合物である。この方法の欠点は、注入を受けた樹脂に対する当該化学溶液の反応が比較的遅いこと、及び、当該化学溶液が酸化物SiO
2に対して反応性を有し、シリコン基板に損傷を与える重大なリスクが示唆されることである。
【0005】
これに代える方法は、CF
4/O
2プラズマエッチング工程と、それに続く、高温にてマイクロ波で生成されたN
2/O
2プラズマエッチング工程とを含むドライエッチングを行うことである。ここでも、最初のエッチングの間にマスクに覆われていない部分のシリコン基板が受ける損傷は、N又はPにドープされたシリコン範囲の損傷を正確に制御できないほどである。
【0006】
本発明の目的は、これらの欠点を克服し、シリコン基板上に堆積された炭素材料マスクの選択的エッチング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の方法は、以下の工程、つまり、
(a)炭素材料のマスクに覆われた第1の部分と、ドープされた第2の部分とを備え、マスクはイオン種が注入された表面層及び注入イオン種を含まない下層とを含む、シリコン基板を準備する。
(b)表面層及び第2の部分をSiCl
4及びCl
2プラズマに曝露させて、シリコン塩化物SiCl
X層を第2の部分に堆積させると共に、表面層をエッチングする。
(c)下層をエッチングして、第1の部分を露出させる。
(d)シリコン塩化物SiCl
X層をエッチングして、第2の部分を露出させる。
【0008】
を含む。
【0009】
この工程により、制御された形でマスクを除去することができ、この際、シリコン基板、特にドープされた範囲に損傷を与えるのを避けることができる。実際、注入を受けたマスク表面層のエッチングは、シリコン塩化物SiCl
X層をシリコン基板上に堆積するのと同時に行うことができる。特に、SiCl
4及びCl
2を組み合わせたプラズマを用いた場合にこれが可能である。このシリコン塩化物SiCl
X層は、シリコン基板の保護層として確実に機能する。一旦、注入を受けた表面層が除去されれば、マスクの下層の除去は、シリコン基板を保護するシリコン塩化物SiCl
X層よりも下層をより早く攻撃するエッチングにより行っても良い。その後、シリコン塩化物SiCl
X層が消失する前に、マスク全体を除去することもできる。その後、シリコン塩化物SiCl
X層は、シリコン基板に対して選択的に除去され、部品の製造が完了する。
【0010】
本文献において、基板の第1の部分は連続している必要は無く、つまり非連続であり表面全体に分布していても良いものと理解される。これは、基板の第2の部分に関しても同様である。
【0011】
更に、シリコン基板の第2の部分は、電気機器の前駆物を含んでいても良い。
【0012】
更に、本文献の工程(b)において、表面層の少なくとも一部が除去されても良いと理解される。
【0013】
1つの可能性として、工程(b)は、20から120℃、望ましくは60℃程度の温度で行われる。
【0014】
典型的には、炭素材料マスクは、炭素樹脂、例えばエポキシ樹脂、又はSoC(Spin on Carbon、スピン塗布カーボン)からなり、且つ、シリコン基板はシリコン、シリコン窒化物、シリコン酸化物、SiC、SiGe又は更に他のシリコンを含む材料からなる。その上このようなマスクは安価である。また、炭素材料層を堆積することで容易に形成可能であり、その後、シリコン基板の第2の部分を露出させるパターンを形成して、イオン種の注入により局所的なドーピングを行うことができる。
【0015】
1つの可能性としては、工程(b)は、表面層を部分的にエッチングすることを含み、また、工程(b)と工程(c)との間において、残存する表面層の一部をフッ素プラズマエッチングする工程(b1)を含み、特に、これにはCF
4又は
SF
6プラズマを用いる。言い換えると、工程(b)は、表面層を部分的にエッチングした後に行う工程(b1)を備える。この後、工程(b1)の最後にマスクの下層を露出させて、工程(c)を行っても良い。
【0016】
更に、工程(b)における堆積により、シリコン塩化物SiCl
X層が、その後のマスクをエッチングする全工程の間シリコン基板を保護するために必要な厚さになった後には、表面層のエッチング条件を変更しても良い。フッ素プラズマによって、注入を受けた表面層のエッチングを加速する一方、シリコン塩化物SiCl
X層の一部の除去を開始させることができ、この際に高いエッチング選択性を示す。
【0017】
1つの可能性として、工程(b1)のフッ素プラズマエッチングは、更に酸素を用いても良い。酸素に曝露される条件下では、シリコン塩化物SiCl
Xは、保護層の少なくとも数nmについて自然酸化し、特に、Y<XとしてSiO
ZCl
Yになる。表面層を完全に除去した後、下層のエッチング工程(c)を行っても良い。
【0018】
工程(b)で用いられるプラズマは、流量が20から200cm
3/分の間、好ましくは80から120cm
3/分の間のSiCl
4と、流量が20cm
3/分未満、好ましくは5から15cm
3/分の間のCl
2とを用いるのが良い。これらの条件により、表面層をエッチングすると共にシリコン塩化物SiCl
X層の堆積を促進し、且つ、シリコン基板におけるシリコンのエッチングを避けることができる。
【0019】
シリコン基板がシリコン系であり、マスクが炭素樹脂系であり、イオン種がヒ素の誘導物であって樹脂に60nmの深さに注入されている場合、SiCl
4の流量は95cm
3/分程度であり、Cl
2の流量は10cm
3/分程度であることが好ましい。
【0020】
工程(b)にて用いるプラズマは、供給する電力が300W未満に設定されたエッチング装置内において得るのが望ましい。この後、シリコン塩化物層の堆積が、マスクの表面層上にも行われる。
【0021】
炭素樹脂の場合、エッチング装置のソースに用いられる電力は250W程度未満であることがより好ましい。
【0022】
理想的には、工程(b)は、100から200Vの間のバイアス電圧、望ましくは120Vから150Vの間のバイアス電圧を印加するように設定されたエッチング装置内で行われる。これらの条件は、イオンのエネルギーを理想的に制御して、シリコン塩化物層の堆積を促進し且つ表面層のエッチングを加速する。
【0023】
上記の例において、より望ましくは、バイアス電圧を130V程度とする。
【0024】
典型的には、エッチング装置はシリコン基板に対し、100Hzから5kHzの間の周波数、且つ、20から90%の間のデューティ比でパルスのバイアス電圧を印加するように設定される。この条件により、直流バイアスを印加する場合に比べてエッチングの選択性が向上する。
【0025】
1つの構成では、工程(c)は、窒素及び水素の混合プラズマ、特に、マイクロ波帯から選ばれた周波数により生成されたプラズマによって行われる。このエッチング条件により、堆積されたシリコン塩化物層と下層との非常に良好なエッチングの選択性が得られる。更に、マイクロ波装置中において基板を移動させ、基板が空気に曝露される間に、空気中の酸素がシリコン塩化物を自然酸化させることが観測される。特に、当該層を小さな厚さだけ酸化させる。
【0026】
1つの可能性としては、工程(b)を、特に希HF溶液を用いたウェットエッチングにより行う。このエッチングによると、シリコン基板を消耗又は損傷すること無く効果的にシリコン塩化物を除去することができる。また、この工程により、シリコン塩化物の一部は自然酸化され、続いて、酸化されていないシリコン塩化物としてエッチングされると思われる。
【0027】
工程(b)、工程(c)及び工程(b1)は、エッチング装置の同じ筐体内で行い、エッチング装置は、容量結合プラズマ型又は誘導結合プラズマ型のエッチング装置とするのが良い。これにより、マスクの選択的除去のために、1つの反応装置から他の反応装置に基板を移すことが不要となり、基板を損傷するリスクを低減できるので有利である。
【0028】
1つの構成では、工程(a)は、先にシリコン基板の第1の部分にマスクを形成する工程(a1)と、その後、シリコン基板の第2の部分にイオン種を注入すると共にマスクにイオン種を注入して表面層を形成する工程(a2)とを含む。
【0029】
イオン種の注入工程により、基板のうちマスクに覆われていない第2の部分にドープを行い、特定のN型又はP型のトランジスタを形成することができる。第1の部分を覆うマスクが、基板の第1の部分の代わりに注入されたイオン種を受け取るので、第1の部分はイオン種が注入されないままになる。従って、基板の第1の部分の電気的特性は変化しない。
【0030】
本発明の他の面、目的及び利点は、非限定的な例として添付の図面を参照して示される下記実施形態の説明を読むことでより良く現れてくる。可読性を向上するために、図は、各要素に関して必ずしも寸法通りに示されてはいない。更に、実施形態は、トランジスタの製造に関して示されている。簡素化のために、以下の説明では、異なる実施形態における同一、類似又は同等の要素は同じ符号を有している。