特許第6499654号(P6499654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6499654シリコン基板上に堆積されたマスクの選択的エッチング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6499654
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】シリコン基板上に堆積されたマスクの選択的エッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20190401BHJP
【FI】
   H01L21/302 104H
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-531998(P2016-531998)
(86)(22)【出願日】2014年11月19日
(65)【公表番号】特表2016-537816(P2016-537816A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】FR2014052965
(87)【国際公開番号】WO2015075380
(87)【国際公開日】20150528
【審査請求日】2017年9月26日
(31)【優先権主張番号】13/61394
(32)【優先日】2013年11月20日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポスム ニコラ
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−053344(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0237060(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0045230(US,A1)
【文献】 特開平11−220134(JP,A)
【文献】 特開平05−275326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/461
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板(100)上に堆積された炭素材料マスク(8)の選択的エッチング方法において、以下の工程、つまり、
(a)炭素材料のマスク(8)に覆われた第1の部分(1)と、ドープされた第2の部分(2)とを備え、前記マスク(8)は、イオン種が注入された表面層(9)及び注入イオン種を含まない下層(11)とを含む、シリコン基板を準備する工程
(b)前記表面層(9)及び前記第2の部分(2)をSiCl及びClプラズマに曝露させて、シリコン塩化物SiCl層(12)を前記第2の部分(2)に堆積させると共に、前記表面層(9)をエッチングする工程
(c)前記下層(11)をエッチングして、前記第1の部分(1)を露出させる工程
(d)前記シリコン塩化物SiCl層(12)をエッチングして、前記第2の部分(2)を露出させる工程
を含む、選択的エッチング方法。
【請求項2】
請求項1の選択的エッチング方法において、
前記炭素材料マスク(8)は、エポキシ樹脂のような炭素樹脂又はスピン塗布カーボンからなり、且つ、前記シリコン基板(100)は、シリコン、シリコン窒化物、シリコン酸化物、SiC、SiGe又は他のものでも良いシリコン含有材料からなる、選択的エッチング方法。
【請求項3】
請求項1又は2の選択的エッチング方法において、
前記工程(b)は、前記表面層(9)を部分的にエッチングすることを含み、
前記工程(b)は、更に、残存する前記表面層(9)の一部を、CF又はプラズマであっても良いフッ素プラズマによりエッチングする工程(b1)を更に含む、選択的エッチング方法。
【請求項4】
請求項3の選択的エッチング方法において、
前記工程(b1)の前記フッ素プラズマは、更に酸素を含む、選択的エッチング方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つの選択的エッチング方法において、
前記工程(b)にて用いる前記プラズマは、流量が20から200cm/分の間のSiClと、流量が20cm/分未満のClとを用いる、選択的エッチング方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つの選択的エッチング方法において、
前記工程(b)にて用いる前記プラズマは、電力300W未満に設定されたエッチング装置内において得られる、選択的エッチング方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つの選択的エッチング方法において、
前記工程(b)は、前記シリコン基板(100)に対し、100Vから200Vの間のバイアス電圧を印加するように設定されたエッチング装置内において行う、選択的エッチング方法。
【請求項8】
請求項7の選択的エッチング方法において、
前記工程(b)は、パルスのバイアス電圧を用い、具体的にはその周波数を100Hzから5kHzの間とし且つデューティ比を20から90%の間とする、選択的エッチング方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つの選択的エッチング方法において、
前記工程(c)は、窒素及び水素の混合プラズマにより実行される、選択的エッチング方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1つの選択的エッチング方法において、
前記工程(b)、前記工程(c)及び/又は前記工程(b1)は、エッチング装置の同じ筐体内で行い、前記エッチング装置は、容量結合型又は誘導結合型のエッチング装置である、選択的エッチング方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1つの選択的エッチング方法において、
前記工程(d)は、ウェット手段によって行う、選択的エッチング方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1つの選択的エッチング方法において、
前記工程(a)は、
前記シリコン基板(100)の前記第1の部分(1)に前記マスク(8)を形成する工程(a1)と、
前記シリコン基板(100)の前記第2の部分(2)にイオン種を注入すると共に、前記マスク(8)にイオン種を注入して前記表面層を形成する工程(a1)とを含む、選択的エッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に堆積されたマスクの選択的エッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板のような基板上に集積回路を作製するためには、基板にイオン種を局所的にドーズさせて、N又はPトランジスタを形成する注入の工程が必要である。この注入の前に、基板のうちの注入が行われてはならない範囲を、一般に樹脂からなるマスクを形成することにより保護する。トランジスタ形成のためのN型又はP型の注入がされた後には、非注入範囲を保護する樹脂の頂部も同時に注入を受けている。装置の製造を完了するには、マスクを除去する必要がある。しかしながら、従来の除去工程であるドライ又はウェット法は、樹脂が先に注入を受けていると、効果的ではない。実際、注入を受けたマスクは表面殻を形成し、表面殻は、マスクに覆われていない部分の基板に損傷を与えない条件で正確に除去することが非常に難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、マスクを2工程で除去することが知られている。第1の工程は表面殻を除去することを含み、その後の第2の工程は下部の注入を受けていない樹脂を除去することを含む。しかし、第1の工程には強力なエッチング剤を用いる必要があるので、基板、特に注入を受けたソース及びドレインのシリコンに損傷を与え、消耗させてしまい、結果として装置の性能を劣化させるおそれがある。
【0004】
Kurt K. Christensonらによる発表、“注入を受けたフォトレジストの全ウェット除去”('AΙΙ Wet stripping Of Implanted Photoresist', 8th International Symposium on Ultra Clean Processing of Semiconductor Surfaces UCPSS, 2006) にて説明された解決策は、ピラニア溶液と呼ばれる化学溶液を用いるものであり、これは、HSOとHとの混合物である。この方法の欠点は、注入を受けた樹脂に対する当該化学溶液の反応が比較的遅いこと、及び、当該化学溶液が酸化物SiOに対して反応性を有し、シリコン基板に損傷を与える重大なリスクが示唆されることである。
【0005】
これに代える方法は、CF/Oプラズマエッチング工程と、それに続く、高温にてマイクロ波で生成されたN/Oプラズマエッチング工程とを含むドライエッチングを行うことである。ここでも、最初のエッチングの間にマスクに覆われていない部分のシリコン基板が受ける損傷は、N又はPにドープされたシリコン範囲の損傷を正確に制御できないほどである。
【0006】
本発明の目的は、これらの欠点を克服し、シリコン基板上に堆積された炭素材料マスクの選択的エッチング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の方法は、以下の工程、つまり、
(a)炭素材料のマスクに覆われた第1の部分と、ドープされた第2の部分とを備え、マスクはイオン種が注入された表面層及び注入イオン種を含まない下層とを含む、シリコン基板を準備する。
(b)表面層及び第2の部分をSiCl及びClプラズマに曝露させて、シリコン塩化物SiCl層を第2の部分に堆積させると共に、表面層をエッチングする。
(c)下層をエッチングして、第1の部分を露出させる。
(d)シリコン塩化物SiCl層をエッチングして、第2の部分を露出させる。
【0008】
を含む。
【0009】
この工程により、制御された形でマスクを除去することができ、この際、シリコン基板、特にドープされた範囲に損傷を与えるのを避けることができる。実際、注入を受けたマスク表面層のエッチングは、シリコン塩化物SiCl層をシリコン基板上に堆積するのと同時に行うことができる。特に、SiCl及びClを組み合わせたプラズマを用いた場合にこれが可能である。このシリコン塩化物SiCl層は、シリコン基板の保護層として確実に機能する。一旦、注入を受けた表面層が除去されれば、マスクの下層の除去は、シリコン基板を保護するシリコン塩化物SiCl層よりも下層をより早く攻撃するエッチングにより行っても良い。その後、シリコン塩化物SiCl層が消失する前に、マスク全体を除去することもできる。その後、シリコン塩化物SiCl層は、シリコン基板に対して選択的に除去され、部品の製造が完了する。
【0010】
本文献において、基板の第1の部分は連続している必要は無く、つまり非連続であり表面全体に分布していても良いものと理解される。これは、基板の第2の部分に関しても同様である。
【0011】
更に、シリコン基板の第2の部分は、電気機器の前駆物を含んでいても良い。
【0012】
更に、本文献の工程(b)において、表面層の少なくとも一部が除去されても良いと理解される。
【0013】
1つの可能性として、工程(b)は、20から120℃、望ましくは60℃程度の温度で行われる。
【0014】
典型的には、炭素材料マスクは、炭素樹脂、例えばエポキシ樹脂、又はSoC(Spin on Carbon、スピン塗布カーボン)からなり、且つ、シリコン基板はシリコン、シリコン窒化物、シリコン酸化物、SiC、SiGe又は更に他のシリコンを含む材料からなる。その上このようなマスクは安価である。また、炭素材料層を堆積することで容易に形成可能であり、その後、シリコン基板の第2の部分を露出させるパターンを形成して、イオン種の注入により局所的なドーピングを行うことができる。
【0015】
1つの可能性としては、工程(b)は、表面層を部分的にエッチングすることを含み、また、工程(b)と工程(c)との間において、残存する表面層の一部をフッ素プラズマエッチングする工程(b1)を含み、特に、これにはCF又はプラズマを用いる。言い換えると、工程(b)は、表面層を部分的にエッチングした後に行う工程(b1)を備える。この後、工程(b1)の最後にマスクの下層を露出させて、工程(c)を行っても良い。
【0016】
更に、工程(b)における堆積により、シリコン塩化物SiCl層が、その後のマスクをエッチングする全工程の間シリコン基板を保護するために必要な厚さになった後には、表面層のエッチング条件を変更しても良い。フッ素プラズマによって、注入を受けた表面層のエッチングを加速する一方、シリコン塩化物SiCl層の一部の除去を開始させることができ、この際に高いエッチング選択性を示す。
【0017】
1つの可能性として、工程(b1)のフッ素プラズマエッチングは、更に酸素を用いても良い。酸素に曝露される条件下では、シリコン塩化物SiClは、保護層の少なくとも数nmについて自然酸化し、特に、Y<XとしてSiOClになる。表面層を完全に除去した後、下層のエッチング工程(c)を行っても良い。
【0018】
工程(b)で用いられるプラズマは、流量が20から200cm/分の間、好ましくは80から120cm/分の間のSiClと、流量が20cm/分未満、好ましくは5から15cm/分の間のClとを用いるのが良い。これらの条件により、表面層をエッチングすると共にシリコン塩化物SiCl層の堆積を促進し、且つ、シリコン基板におけるシリコンのエッチングを避けることができる。
【0019】
シリコン基板がシリコン系であり、マスクが炭素樹脂系であり、イオン種がヒ素の誘導物であって樹脂に60nmの深さに注入されている場合、SiClの流量は95cm/分程度であり、Clの流量は10cm/分程度であることが好ましい。
【0020】
工程(b)にて用いるプラズマは、供給する電力が300W未満に設定されたエッチング装置内において得るのが望ましい。この後、シリコン塩化物層の堆積が、マスクの表面層上にも行われる。
【0021】
炭素樹脂の場合、エッチング装置のソースに用いられる電力は250W程度未満であることがより好ましい。
【0022】
理想的には、工程(b)は、100から200Vの間のバイアス電圧、望ましくは120Vから150Vの間のバイアス電圧を印加するように設定されたエッチング装置内で行われる。これらの条件は、イオンのエネルギーを理想的に制御して、シリコン塩化物層の堆積を促進し且つ表面層のエッチングを加速する。
【0023】
上記の例において、より望ましくは、バイアス電圧を130V程度とする。
【0024】
典型的には、エッチング装置はシリコン基板に対し、100Hzから5kHzの間の周波数、且つ、20から90%の間のデューティ比でパルスのバイアス電圧を印加するように設定される。この条件により、直流バイアスを印加する場合に比べてエッチングの選択性が向上する。
【0025】
1つの構成では、工程(c)は、窒素及び水素の混合プラズマ、特に、マイクロ波帯から選ばれた周波数により生成されたプラズマによって行われる。このエッチング条件により、堆積されたシリコン塩化物層と下層との非常に良好なエッチングの選択性が得られる。更に、マイクロ波装置中において基板を移動させ、基板が空気に曝露される間に、空気中の酸素がシリコン塩化物を自然酸化させることが観測される。特に、当該層を小さな厚さだけ酸化させる。
【0026】
1つの可能性としては、工程(b)を、特に希HF溶液を用いたウェットエッチングにより行う。このエッチングによると、シリコン基板を消耗又は損傷すること無く効果的にシリコン塩化物を除去することができる。また、この工程により、シリコン塩化物の一部は自然酸化され、続いて、酸化されていないシリコン塩化物としてエッチングされると思われる。
【0027】
工程(b)、工程(c)及び工程(b1)は、エッチング装置の同じ筐体内で行い、エッチング装置は、容量結合プラズマ型又は誘導結合プラズマ型のエッチング装置とするのが良い。これにより、マスクの選択的除去のために、1つの反応装置から他の反応装置に基板を移すことが不要となり、基板を損傷するリスクを低減できるので有利である。
【0028】
1つの構成では、工程(a)は、先にシリコン基板の第1の部分にマスクを形成する工程(a1)と、その後、シリコン基板の第2の部分にイオン種を注入すると共にマスクにイオン種を注入して表面層を形成する工程(a2)とを含む。
【0029】
イオン種の注入工程により、基板のうちマスクに覆われていない第2の部分にドープを行い、特定のN型又はP型のトランジスタを形成することができる。第1の部分を覆うマスクが、基板の第1の部分の代わりに注入されたイオン種を受け取るので、第1の部分はイオン種が注入されないままになる。従って、基板の第1の部分の電気的特性は変化しない。
【0030】
本発明の他の面、目的及び利点は、非限定的な例として添付の図面を参照して示される下記実施形態の説明を読むことでより良く現れてくる。可読性を向上するために、図は、各要素に関して必ずしも寸法通りに示されてはいない。更に、実施形態は、トランジスタの製造に関して示されている。簡素化のために、以下の説明では、異なる実施形態における同一、類似又は同等の要素は同じ符号を有している。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明の一実施形態における工程(a)のマスクによって覆われた基板を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態におけるエッチング工程(b)中の基板を模式的に示す断面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態におけるエッチング工程(b1)を実行し終えたときの基板を模式的に示す断面図である。
図4図4は、本発明の一実施形態におけるエッチング工程(c)を実行し終えたときの基板を模式的に示す断面図である。
図5図5は、本発明の一実施形態におけるエッチング工程(d)を実行し終えたときの基板を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1(工程(a))に示すように、シリコン基板100は、第1の部分1がマスク8に覆われ、且つ、第2の部分2にはイオン種が注入されている。シリコン基板100はシリコンからなる基板であるが、どのようなシリコン系の材料、例えばシリコン窒化物、シリコン酸化物、SiC又はSiGe等からなっていても良い。イオン種はヒ素であるが、シリコン基板100に適応するどのようなイオン種を用いても良い。イオン種は、例えば、ドーズ量5×1015at/cm、エネルギー12keV、及び角度20度にて注入され、これによりイオン種はゲートの下方にも注入されている。図示されたシリコン基板100の第2の部分2は、例として、第1のMOSトランジスタ200を有し、ドープされた範囲3がソース及びドレインを構成している。トランジスタ200は、ゲート酸化膜4と、ハードマスク6及び水平スペーサ7に保護されたゲート5とを備え、ソース及びドレイン3を絶縁している。本発明の範囲を離れない他の例として、基板100の第1の部分は、第2のトランジスタ300を備え、これはマスク8によってイオン種の注入対象とならないように保護されている。この第2のトランジスタは、ゲート酸化膜4と、ハードマスク6及び水平スペーサ7に保護されたゲート5とを備える。本文献において、第1のMOSトランジスタ200に代えて、製造のためにシリコン基板100にイオン種を注入することを要する他のどのような電気的デバイスが備えられていても良いことが理解される。同様に、第2のトランジスタ300に代えて、注入から保護されるべきどのような他のデバイスが備えられていても良い。
【0033】
シリコン基板100は、特に、第1の部分にマスク8を形成(工程(a1))し、ドーピング用イオン種の注入を実施(工程(a2))した後に得られる。本発明によるこのマスク8は、炭素樹脂のような炭素材料からなるが、イオン種の注入に対するマスクとして機能するのであれば、どのような他の材料からなっていても良い。第1の部分1において、イオン種はマスク8に注入され、イオン種を含有する表面層9が形成される。この表面層9によってマスク8の深い側である下層11が規定され、下層11は注入されたイオン種を全く含まないか又は僅かしか含まない。シリコン基板100の第2の部分において、イオン種はシリコン基板100に注入される。これにより、基板に対する局所的なドーピングが可能となり、後の構成のための特性を得ることができる。図示した例では、このドーピングにより、第1のトランジスタ200におけるソース及びドレイン3を形成する。
【0034】
図2に示すように(工程(b))、マスク8の表面層9は、SiCl及びClプラズマにより部分的にエッチングされる。同時に、シリコン塩化物(SiCl)層12がシリコン基板100の第2の部分に堆積される。トランジスタ200を含む具体例では、スペーサ7及びハードマスク6も、シリコン塩化物層12に覆われる。プラズマに対する曝露の条件は、考慮している材料及び厚さによって様々である。SiClの流量は20から200cm/分の間であり、好ましくは80から120cm/分の間である。Clの流量は、20cm/分未満に設定され、好ましくは5から15cm/分の間である。上記に説明された具体的なシリコン基板及び炭素樹脂の場合、SiCl及びClの流量は、順に、約95cm/分及び約10cm/分に設定する。この工程の継続時間は15秒から2分程度の間で様々である。例えば、プラズマを30秒間適用すると、堆積されたSiCl層の厚さは約5nmとなり、この厚さは継続時間に対して線形に増加する。同様に、表面層9のエッチングされる厚さは時間に対して線形に増加する。例えば、30秒間で3nmエッチングされる。
【0035】
更に、誘導又は容量結合プラズマ型のエッチング装置は、ソース電力を300W未満、望ましくは250W程度で動作するように設定する。また、反応装置の電源はバイアス電圧を100から200Vの間、望ましくは120から150Vの間で動作するように設定する。上記に説明した具体例の場合、バイアス電圧は130V程度とする。
【0036】
使用するバイアス電圧は連続又はパルスであり、後者の場合、得られる結果を改善し、且つ、シリコン基板100に対する損傷を軽減できる。
【0037】
1つの可能性として、工程(b)による塩素ガスエッチングは、注入を受けた表面層9が完全に除去されるまで行う。
【0038】
他の可能性としては、表面層9のエッチングを2つの工程にて行う。つまり、工程(b)にて堆積されるシリコン塩化物SiCl層12が下層を保護するために十分な厚さになったとき、まだ表面層9の残りの部分が存在する。この後、エッチング用プラズマを調整して表面層9の除去を加速する(図3、工程(b1))。エッチング装置の筐体を変更することなくフッ素プラズマを用いる。適用するフッ素プラズマは、CF又はSF/Arから選んでも良い。例えば、フッ素プラズマは、流量500cm/分のArに対して流量50cm/分のCFを用い、圧力10mTorrで且つ電力1200Wにおいて得られるものであっても良い。このような条件下で且つ前記の例の場合、シリコン塩化物SiCl層12のエッチング速度は38nm/分であり、マスク8のエッチング速度は150nm/分である。
【0039】
流量500cm/分のArに対して流量35cm/分のCFであり、圧力10mTorrで且つ電力1200Wの場合、シリコン塩化物SiCl層12のエッチング速度は56nm/分程度であり、マスク8のエッチング速度は120nm/分である。
【0040】
表面層9の残留部分についてのエッチング(工程(b1))を加速し、シリコン塩化物に対するエッチング選択性を向上するためには、先に用いている化学物質に例えば流量200cm/分で酸素を追加しても良い。この酸素は、Y<XとしてSiOClを形成することにより、シリコン塩化物SiCl層12を少なくとも部分的に自然酸化する。
SF/Arプラズマを用いたこのような条件下では、シリコン塩化物SiCl層12のエッチング速度は、酸化されるか否かに関わらず、33nm/分程度である。また、マスク8のエッチング速度は407nm/分程度である。CF/Ar系プラズマ及び酸素を用いる場合、シリコン塩化物層12のエッチング速度は、酸化されるか否かに関わらず、17nm/分程度に低下する。マスク8のエッチング速度は、およそ560nm/分に達する(図示していない)。
【0041】
図4に示すように、その後、本方法の工程(c)によるエッチングは、注入を受けていない部分のマスク8に相当する下層11を除去するように実施される。このエッチングは、望ましくは、工程(b)、及び行った場合には工程(b1)、によるエッチングに用いたのと同じエッチング筐体中で実施する。次に、マイクロ波により生成したN/Hプラズマを下層11に適用する。この化学種は、下層11と、第2の部分のシリコン塩化物層12とに対して非常に高いエッチング選択性を有しており、これはシリコン塩化物層12が酸化されるか否かに関わらない。この曝露により、下層11を完全に除去する一方、シリコン塩化物層12は部分的にエッチングされるようにすることができる。典型的には、連続のバイアス電圧を用いた場合、シリコン塩化物層12は、プラズマ工程15秒以内で1nm以上エッチングされる。この一方、周波数500Hzで且つデューティ比50%のパルスでバイアス電圧を用いると、下層11が完全に除去される間に、シリコン塩化物層12は除去されず、これはシリコン塩化物層12が酸化されるか否かに関わらない。典型的には、パルスのバイアス電圧は周波数が100Hzから5kHzの間であると共に、デューティ比が20から90%の間であり、これによりエッチングの選択性が向上する。
【0042】
最後に、図5に示すように、シリコン塩化物層12をHF希酸の存在下でウェットエッチングする。仮に、反応装置を変更したとき、又は、工程(b1)による酸素を含むフッ素プラズマによって、シリコン塩化物が少なくとも部分的にも酸化されていなかった場合、シリコン塩化物は、フッ化水素HFの水溶液によるエッチング行うために基板を空気中に置いた際に酸化される。シリコン塩化物層12の残っている厚さと、望ましいエッチング時間とによって、HF溶液は、濃度が0.1%から1%のHF酸の中から選ばれる。
【0043】
以上の通り、シリコン基板100上におけるドーパントを注入した後のマスク8について、効果的、迅速且つ正確な選択的エッチングの方法を提供することによって、本発明は、従来の技術水準に決定的な進歩をもたらす。この結果から、シリコン基板100の第2の部分におけるドープされた範囲3を正確に保護することができ、この後に形成される装置は信頼性が高く且つ向上された性能を示す。
【0044】
本発明が上記に例示説明した実施形態に限られず、あらゆる技術的な等価物及び説明した変形例とそれらの組み合わせを含むことは言うまでも無い。
図1
図2
図3
図4
図5