(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
式(1)の化合物が、次のβ−ジケトン類:2,4−ペンタンジオン(acac);2,4−ヘキサンジオン;2,4−ヘプタンジオン;3,5−ヘプタンジオン;3−エチル−2,4−ペンタンジオン;5−メチル−2,4−ヘキサンジオン;2,4−オクタンジオン;3,5−オクタンジオン;5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオン;6−メチル−2,4−ヘプタンジオン;2,2−ジメチル−3,5−ノナンジオン;2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン;2−アセチルシクロヘキサノン(Cy−acac);2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン(TMHD);1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオン(F−acac);ベンゾイルアセトン;ジベンゾイルメタン;3−メチル−2,4−ペンタジオン;3−アセチル−2−ペンタノン;3−アセチル−2−ヘキサノン;3−アセチル−2−ヘプタノン;3−アセチル−5−メチル−2−ヘキサノン;ベンゾイルステアロイルメタン;ベンゾイルパルミトイルメタン;オクタノイルベンゾイルメタン;4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン;4,4’−ジメトキシジベンゾイルメタン及び4,4’−ジ−t−ブチルジベンゾイルメタンより成る群から選択される、請求項4に記載の組成物X。
前記オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bが同一の又は異なるケイ素原子に直接結合した少なくとも3個の水素原子を1分子当たりに含む、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物X。
前記オルガノポリシロキサンA及び前記オルガノヒドロゲノポリシロキサンBの割合が、オルガノヒドロゲノポリシロキサンB中のケイ素に結合した水素原子対オルガノポリシロキサンA中のケイ素に結合したアルケニル基のモル比が0.2〜20の範囲となるようなものであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物X。
【発明を実施するための形態】
【0015】
用語「架橋したシリコーン材料」とは、不飽和結合を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン及びヒドロゲノシリル単位(≡SiH)を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンを含む組成物を架橋/硬化させることによって得られる任意のシリコーン系物質を意味する。架橋したシリコーン材料は、例えばエラストマー、ゲル又はフォームであることができる。
【0016】
特に有利な態様に従えば、ケイ素原子に結合したC
2〜C
6アルケニル基を1分子当たり少なくとも2個含むオルガノポリシロキサンAは、以下のものを含む:
(i)次式:
【化5】
(ここで、
aは1又は2であり、bは0、1又は2であり、a+bは1、2又は3であり;
記号Wは同一であっても異なっていてもよく、直鎖状又は分岐鎖状のC
2〜C
6アルケニル基を表し、
記号Zは同一であっても異なっていてもよく、1〜30個の炭素原子を有する一価の炭化水素系基、好ましくは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基及び6〜12個の炭素原子を有するアリール基より成る群から選択される基、さらにより一層好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニル基より成る群から選択される基を表す)
を有する少なくとも2個の同一であっても異なっていてもよいシロキシル単位(A.1)、及び
(ii)随意としての、次式:
【化6】
(ここで、
aは0、1、2又は3であり、
記号Z
1は同一であっても異なっていてもよく、1〜30個の炭素原子を有する一価の炭化水素系基、好ましくは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基及び6〜12個の炭素原子を有するアリール基より成る群から選択される基、さらにより一層好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニル基より成る群から選択される基を表す)
を有する1個以上のシロキシル単位。
【0017】
有利には、基Z及びZ
1は、メチル及びフェニル基より成る群から選択され、Wは次のリスト:ビニル、プロペニル、3−ブテニル、5−ヘキセニル、9−デセニル、10−ウンデセニル、5,9−デカジエニル及び6,11−ドデカジエニル:から選択され、好ましくはWはビニルである。
【0018】
これらのオルガノポリシロキサンは、線状、分岐状又は環状構造を有することができる。それらの重合度は、好ましくは2〜5000の範囲である。
【0019】
線状ポリマーである場合、それらは、シロキシル単位W
2SiO
2/2、WZSiO
2/2及びZ
12SiO
2/2より成る群から選択されるシロキシル単位「D」、並びにシロキシル単位W
3SiO
1/2、WZ
2SiO
1/2、W
2ZSiO
1/2及びZ
13SiO
1/2より成る群から選択されるシロキシル単位「M」から本質的に構成される。記号W、Z及びZ
1は上記の通りである。
【0020】
末端単位「M」の例としては、トリメチルシロキシ、ジメチルフェニルシロキシ、ジメチルビニルシロキシ、ジメチルヘキセニルシロキシ基を挙げることができる。
【0021】
単位「D」の例としては、ジメチルシロキシ、メチルフェニルシロキシ、メチルビニルシロキシ、メチルブテニルシロキシ、メチルヘキセニルシロキシ、メチルデセニルシロキシ、メチルデカジエニルシロキシ基を挙げることができる。
【0022】
前記オルガノポリシロキサンAは、25℃において約10〜100000mPa・s、一般的に25℃において約10〜70000mPa・sの動的粘度を有するオイル、又は25℃において約1000000mPa・s又はそれ以上の分子質量を有するガムであることができる。
【0023】
本明細書において言うすべての粘度は、25℃における「ニュートン」動的粘度、即ち、ブルックフィールド粘度計を測定される粘度が速度勾配に依存しないものとなるのに充分低い剪断速度勾配で用いて周知の態様で測定した動的粘度に該当する。
【0024】
環状オルガノポリシロキサンの場合、それらは次式:W
2SiO
2/2、Z
2SiO
2/2又はWZSiO
2/2:を有するシロキシル単位「D」(これはジアルキルシロキシ、アルキルアリールシロキシ、アルキルビニルシロキシ又はアルキルシロキシタイプのものであることができる)から構成される。かかるシロキシル単位の例は、すでに上で挙げてある。前記環状オルガノポリシロキサンAは、25℃において約10〜5000mPa・sの粘度を有する。
【0025】
好ましい実施形態に従えば、本発明に従う組成物Xは、ケイ素原子に結合したC
2〜C
6アルケニル基を1分子当たり少なくとも2個含む第2のオルガノポリシロキサン化合物であってオルガノポリシロキサン化合物Aとは異なるものを含み、この第2のオルガノポリシロキサン化合物は好ましくはジビニルテトラメチルシロキサン(DVTMS)である。
【0026】
好ましくは、オルガノポリシロキサン化合物Aは0.001〜30%の範囲、好ましくは0.01〜10%の範囲のSi−ビニル単位質量含有率を有する。
【0027】
好ましい実施形態に従えば、オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bは、同一の又は異なるケイ素原子に結合した少なくとも2個の水素原子を1分子当たりに含有するオルガノポリシロキサン、好ましくは同一の又は異なるケイ素原子に直接結合した少なくとも3個の水素原子を1分子当たりに含有するオルガノポリシロキサンである。
【0028】
有利には、オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bは、以下のものを含むオルガノポリシロキサンである:
(i)次式:
【化7】
(ここで、
dは1又は2であり、eは0、1又は2であり、d+eは1、2又は3であり、
記号Z
3は同一であっても異なっていてもよく、1〜30個の炭素原子を有する一価の炭化水素系基、好ましくは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基及び6〜12個の炭素原子を有するアリール基より成る群から選択される基、さらにより一層好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニル基より成る群から選択される基を表す)
を有する少なくとも2個のシロキシル単位、好ましくは少なくとも3個のシロキシル単位、及び
(ii)随意としての次式:
【化8】
(ここで、
cは0、1、2又は3であり、
記号Z
2は同一であっても異なっていてもよく、1〜30個の炭素原子を有する一価の炭化水素系基、好ましくは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基及び6〜12個の炭素原子を有するアリール基より成る群から選択される基、さらにより一層好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニル基より成る群から選択される基を表す)
を有する1種以上のシロキシル単位。
【0029】
オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bは、専ら式(B.1)のシロキシル単位から構成されていてもよく、式(B.2)の単位を含んでいてもよい。これは線状、分岐状又は環状構造を有することができる。重合度は、好ましくは2以上である。より一般的にはこれは5000未満である。
【0030】
式(B.1)のシロキシル単位の例は、特に以下の単位である:H(CH
3)
2SiO
1/2、HCH
3SiO
2/2及びH(C
6H
5)SiO
2/2。
【0031】
線状ポリマーの場合、これらは特に以下のものから構成される:
・次式Z
22SiO
2/2又はZ
3HSiO
2/2を有する単位から選択されるシロキシル単位「D」、及び
・次式Z
23SiO
1/2又はZ
32HSiO
1/2を有する単位から選択されるシロキシル単位「M」。
【0032】
これらの線状オルガノポリシロキサンは、25℃において約1〜100000mPa・s、一般的に25℃において約10〜5000mPa・sの動的粘度を有するオイル、又は25℃において約1000000mPa・s以上の分子質量を有するガムであることができる。
【0033】
環状オルガノポリシロキサンの場合、これらは次式Z
22SiO
2/2及びZ
3HSiO
2/2を有するシロキシル単位「D」(これはジアルキルシロキシ又はアルキルアリールシロキシタイプのものであることができる)から又は専ら単位Z
3HSiO
2/2から構成される。これらはその場合に約1〜5000mPa・sの粘度を有する。
【0034】
線状オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bの例には、ヒドロゲノジメチルシリル末端基を有するジメチルポリシロキサン、トリメチルシリル末端基を有するジメチルヒドロゲノメチルポリシロキサン、ヒドロゲノジメチルシリル末端基を有するジメチルヒドロゲノメチルポリシロキサン、トリメチルシリル末端基を有するヒドロゲノメチルポリシロキサン、及び環状ヒドロゲノメチルポリシロキサンがある。
【0035】
オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bとしては、一般式(B.3)に相当するオリゴマー及びポリマーが特に好ましい。
【化9】
[ここで、
x及びyは0〜200の範囲の整数であり、
記号R
1は同一であっても異なっていてもよく、互いに独立して、
・1〜8個の炭素原子を有し且つ随意に1個以上のハロゲン(好ましくはフッ素)で置換された直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基(好ましくはメチル、エチル、プロピル、オクチル及び3,3,3−トリフルオロプロピル)、
・5〜8個の環炭素原子を有するシクロアルキル基、
・6〜12個の炭素原子を有するアリール基、又は
・5〜14個の炭素原子を有するアルキル部分及び6〜12個の炭素原子を有するアリール部分を有するアラルキル基
を表す。]
【0036】
オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bとしては、次の化合物が本発明にとって特に好適である。
【化10】
(ここで、a、b、c、d及びeは以下のように定義される:
・式S1のポリマーにおいては、0≦a≦150、好ましくは0≦a≦100、より特定的には0≦a≦20、且つ1≦b≦90、好ましくは10≦b≦80、より特定的には30≦b≦70、
・式S2のポリマーにおいては、0≦c≦15、
・式S3のポリマーにおいては、5≦d≦200、好ましくは20≦d≦100、且つ2≦e≦90、好ましくは10≦e≦70。)
【0037】
特に、本発明において用いるのに適したオルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bは、式S1においてaが0である化合物である。
【0038】
好ましくは、オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bは、0.2〜91%の範囲、好ましくは0.2〜50%の範囲のSiH単位質量含有率を有する。
【0039】
本発明の範疇において、オルガノポリシロキサンA及びオルガノヒドロゲノポリシロキサンBの割合は、オルガノヒドロゲノポリシロキサンB中のケイ素に結合した水素原子(Si−H)対オルガノポリシロキサンA中のケイ素に結合したアルケニル基(Si−CH=CH
2)のモル比が0.2〜20の範囲、好ましくは0.5〜15の範囲、より一層好ましくは0.5〜10の範囲、さらにより一層好ましくは0.5〜5の範囲となるようなものとする。
【0040】
好ましい実施形態に従えば、オルガノポリシロキサンA及び/又はオルガノヒドロゲノポリシロキサンBは、架橋を促進するために窒素(N
2)又はアルゴン(Ar)の不活性雰囲気下において脱ガスすることができる。
【0041】
本発明に従う組成物は、次式に相当する錯体である少なくとも1種の触媒Cを使用する。
[Fe(L
1)
2]
(ここで、
記号Feは酸化状態IIの鉄を表し、
記号L
1は同一であっても異なっていてもよく、β−ジカルボニラトアニオン又はβ−ジカルボニル化合物のエノラートアニオンであるリガンドを表す。)
【0042】
本発明の創意に富んだ性状の少なくとも一部は、触媒Cの構造の賢明且つ有利な選択によるものである。
【0043】
本発明の別の好ましい実施形態に従えば、リガンドL
1は、式(1):
R
1COCHR
2COR
3 (1)
[ここで、
R
1及びR
3は同一であっても異なっていてもよく、直鎖状、環状若しくは分岐鎖状のC
1〜C
30炭化水素系基、6〜12個の炭素原子を有するアリール又は基−OR
4(ここで、R
4は直鎖状、環状又は分岐鎖状のC
1〜C
30炭化水素系基を表す)を表し、
R
2は水素原子又は炭化水素系基、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、
R
1とR
2とが一緒になってC
5〜C
6環を形成してもよく、
R
2とR
4とが一緒になってC
5〜C
6環を形成してもよい]
の化合物から誘導されるアニオンである。
【0044】
有利には、式(1)の化合物は、β−ジケトン類:2,4−ペンタンジオン(acac);2,4−ヘキサンジオン;2,4−ヘプタンジオン;3,5−ヘプタンジオン;3−エチル−2,4−ペンタンジオン;5−メチル−2,4−ヘキサンジオン;2,4−オクタンジオン;3,5−オクタンジオン;5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオン;6−メチル−2,4−ヘプタンジオン;2,2−ジメチル−3,5−ノナンジオン;2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン;2−アセチルシクロヘキサノン(Cy−acac);2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン(TMHD);1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオン(F−acac);ベンゾイルアセトン;ジベンゾイルメタン;3−メチル−2,4−ペンタジオン;3−アセチル−2−ペンタノン;3−アセチル−2−ヘキサノン;3−アセチル−2−ヘプタノン;3−アセチル−5−メチル−2−ヘキサノン;ベンゾイルステアロイルメタン;ベンゾイルパルミトイルメタン;オクタノイルベンゾイルメタン;4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン;4,4’−ジメトキシジベンゾイルメタン及び4,4’−ジ−t−ブチルジベンゾイルメタンよりなる群から選択され、好ましくはβ−ジケトン類の2,4−ペンタンジオン(acac)及び2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン(TMHD)から選択される。
【0045】
本発明の別の好ましい実施形態に従えば、β−ジカルボニラトリガンドL
1は、次の化合物:アセチル酢酸のメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、t−ブチル、イソペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル、1−メチルヘプチル、n−ノニル、n−デシル及びn−ドデシルエステル:から誘導されるアニオンより成る群から選択されるβ−ケトエステラートアニオン又は仏国特許第1435882A号に記載されたものから選択される。
【0046】
特に好ましい実施形態に従えば、触媒Cは、錯体[Fe(acac)
2]及び[Fe(TMHD)
2]から選択される。上記の式中、「acac」は化合物2,4−ペンタンジオンから誘導されるアニオンを意味し、「TMHD」は化合物2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンから誘導されるアニオンを意味するものとする。
【0047】
触媒Cは特に、本発明に従う組成物X中に、オルガノポリシロキサン化合物A中のケイ素原子に結合したC
2〜C
6アルケニル基のモル数に対して鉄0.001〜10モル%の範囲の含有率で存在させることができ、好ましくは0.01〜7%、より一層好ましくは0.1〜5%の範囲の含有率で存在させることができる。
【0048】
本発明に従う組成物Xは、好ましくは、白金、パラジウム、ルテニウム又はロジウム系触媒フリーである。触媒C以外の触媒が「フリー」とは、本発明に従う組成物Xが触媒C以外の触媒を組成物の総重量に対して0.1重量%未満、好ましくは0.01重量%未満、より一層好ましくは0.001重量%未満しか含まないことを意味する。
【0049】
組成物Xは、有利には、少なくとも1種の接着促進剤Dを含むことができる。
【0050】
限定ではないが、接着促進剤Dは、以下のものを含むと考えることができる。
(D.1)1分子当たり少なくとも1個のC
2〜C
6アルケニル基を含む少なくとも1種のアルコキシル化オルガノシラン、又は
(D.2)少なくとも1個のエポキシ基を含む少なくとも1種の有機ケイ素化合物、又は
(D.3)少なくとも1種の金属Mのキレート及び/又は一般式:M(OJ)
nの金属アルコキシド(ここで、nはMの原子価であり、Jは直鎖状又は分岐鎖状C
1〜C
8アルキルであり、MはTi、Zr、Ge、Li、Mn、Fe、Al及びMg又はそれらの混合物より成る群から選択される)。
【0051】
本発明の好ましい実施形態に従えば、接着促進剤Dのアルコキシル化オルガノシラン(D.1)は、下記の一般式を有する物質から選択される。
【化11】
[式中、
R
1、R
2及びR
3は水素化された基又は同一の若しくは異なる炭化水素系基であって、水素原子、直鎖状若しくは分岐鎖状C
1〜C
4アルキル又はフェニル(随意に1個以上のC
1〜C
3アルキルで置換されたもの)を表し、
Uは直鎖状又は分岐鎖状C
1〜C
4アルキレンであり、
Wは原子価結合であり、
R
4及びR
5は同一の若しくは異なる基であって、直鎖状又は分岐鎖状C
1〜C
4アルキルを表し、
x’は0又は1であり、
xは0〜2である。]
【0052】
限定ではないが、ビニリデントリメトキシシランが特に好適な化合物(D.1)であると考えられる。
【0053】
有機ケイ素化合物(D.2)は、本発明に従えば、以下のa)及びb)から選択することが考えられる。
a)次の一般式:
【化12】
[式中、
R
6は直鎖状又は分岐鎖状C
1〜C
4アルキル基であり、
R
7は直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であり、
yは0、1又は3であり、
Xは次式:
【化13】
(ここで、
E及びDは同一の又は異なる基であって、直鎖状又は分岐鎖状C
1〜C
4アルキルから選択され、
zは0又は1であり、
R
8、R
9、R
10は同一の又は異なる基であって、水素原子又は直鎖状若しくは分岐鎖状C
1〜C
4アルキルを表し、
また、R
8及びR
9又はR
10がエポキシを有する2個の炭素と一緒になって五員〜七員アルキル環を構成することもできる)
で定義される]
に相当する物質(D.2a)、又は
b)以下のもの:
(i)次式:
【化14】
[式中、
Xは式(D.2a)について上で定義した通りの基であり、
Gは触媒の活性に対して好ましくない作用がない一価炭化水素系基であって、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基(随意に1個以上のハロゲン原子で置換されたもの)及び6〜12個の炭素原子を有するアリール基から選択され、
pは1又は2であり、
qは0、1又は2であり、
p+qは1、2又は3である]
を有する少なくとも1種のシロキシル単位、及び
(ii)随意としての、次式:
【化15】
(式中、Gは上記と同じ意味を持ち、
rは0、1、2又は3である)
を有する少なくとも1種のシロキシル単位
を含むエポキシ官能性ポリジオルガノシロキサンから成る物質(D.2b)。
【0054】
接着促進剤Dの最後の化合物(D.3)に関しては、好ましい物質は、(D.3)のキレート及び/又はアルコキシドの金属MがTi、Zr、Ge、Li又はMnから選択されるものである。より特定的にはチタンが好ましいということが指摘されるべきだ。これを例えばブトキシタイプのアルコキシ基と組み合わせてもよい。
【0055】
接着促進剤Dは、
・(D.1)単独、
・(D.2)単独、
・(D.1)+(D.2)
から成ることができ、
また、2つの好ましい態様に従えば、
・(D.1)+(D.3)、
・(D.2)+(D.3)
から成ることができ、
最後に、最も好ましい態様に従えば、
(D.1)+(D.2)+(D.3)
から成ることができる。
【0056】
本発明に従えば、接着促進剤を構成するための有利な組合せは、以下のものである:
・ビニルトリメトキシシラン(VTMO)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)及びチタン酸ブチル。
【0057】
量的関係においては、(D.1)、(D.2)及び(D.3)の間の重量割合は、これら3種の合計に対する重量百分率で表して、以下の通りとすることができる。
・(D.1)≧10、好ましくは15〜70の範囲、さらにより一層好ましくは25〜65の範囲、
・(D.2)≦90、好ましくは70〜15の範囲、さらにより一層好ましくは65〜25の範囲、
・(D.3)≧1、好ましくは5〜25の範囲、さらにより一層好ましくは8〜18の範囲
[(D.1)、(D.2)及び(D.3)のこれらの割合の合計は100%とする]。
【0058】
より一層良好な接着特性のためには、(D.2):(D.1)の重量比を2:1〜0.5:1の範囲とするのが好ましく、1:1の比が特に好ましい。
【0059】
有利には、接着促進剤Dは、組成物Xの全成分の総重量に対して0.1〜10重量%の割合、好ましくは0.5〜5重量%の割合、より一層好ましくは1〜3重量%の割合で存在させる。
【0060】
特定的実施形態に従えば、本発明に従う組成物Xは、少なくとも1種のフィラーEをもまた含む。
【0061】
本発明に従う組成物中に随意に含有されるフィラーEは、好ましくは無機物である。これらは特にケイ質のものであることができる。ケイ質材料である場合、それらは補強用又は半補強用フィラーとしての働きをすることができる。補強用ケイ質フィラーは、コロイドシリカ、ヒュームド及び沈降シリカ粉体、又はそれらの混合物から選択される。これらの粉体は、一般的に0.1μm未満の平均粒子寸法及び30m
2/g超、好ましくは30〜350m
2/gの範囲のBET比表面積を有する。また、ケイ藻土や石英粉末のような半補強用ケイ質フィラーを用いることもできる。非ケイ質無機材料に関しては、これらは半補強用又は増量用無機フィラーとして含ませることができる。単独で又は混合物として用いることができるこれらの非ケイ質フィラーの例には、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化アルミニウム、水和アルミナ、膨張バーミキュライト、非膨張バーミキュライト、炭酸カルシウム(随意に脂肪酸で表面処理されたもの)、酸化亜鉛、マイカ、タルク、酸化鉄、硫酸バリウム及び消石灰がある。これらのフィラーは、一般的に0.001〜300μmの範囲の粒子寸法及び100m
2/g未満のBET表面積を有する。実施に当たっては、用いられるフィラーは石英とシリカとの混合物であるが、これに限定されるわけではない。フィラーは、任意の好適な物質で処理されたものであることができる。重量に関しては、組成物の全成分に対して1〜50重量%の範囲、好ましくは1〜40重量%の範囲の量のフィラーを用いるのが好ましい。
【0062】
本発明に従う組成物Xはまた、1種以上の慣用の機能性添加剤を含むこともできる。慣用の機能性添加剤の類としては、以下のものを挙げることができる。
・シリコーン樹脂、
・接着性調整剤、
・粘稠度強化用添加剤、
・顔料、及び
・耐熱、耐油又は耐火用添加剤、例えば金属酸化物。
【0063】
シリコーン樹脂は、よく知られていて商品として入手可能な分岐状オルガノポリシロキサンオリゴマー又はポリマーである。これらはそれらの構造中に式R
3SiO
1/2(M単位)、R
2SiO
2/
2(D単位)、RSiO
3/2(T単位)及びSiO
4/2(Q単位)のものから選択される少なくとも2個の異なる単位を有し、これらの単位の内の少なくとも1個はT又はQ単位である。
【0064】
基Rは同一であっても異なっていてもよく、直鎖状若しくは分岐鎖状C
1〜C
6アルキル、ヒドロキシル、フェニル又は3,3,3−トリフルオロプロピル基から選択される。アルキル基の例としては、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル及びn−ヘキシル基を挙げることができる。
【0065】
分岐状オルガノポリシロキサンオリゴマー又はポリマーの例としては、MQ樹脂、MDQ樹脂、TD樹脂及びMDT樹脂(M、D及び/又はT単位がヒドロキシル官能基を有することができる)を挙げることができる。使用するのに特に好適な樹脂の例としては、ヒドロキシル化MDQ樹脂であってヒドロキシル基の重量含有率が0.2〜10重量%の範囲であるものを挙げることができる。
【0066】
本発明に従う組成物Xは特に次のようにして得ることができる。まず最初に触媒Cを反応媒体中に導入し、次いで撹拌しながらオルガノポリシロキサンAを加える。最後にオルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bを導入し、混合物の温度を架橋温度に達するまで上昇させる。混合物の粘度が上昇したせいで撹拌が停止するまで、混合物を架橋温度に保つ。
【0067】
本発明の主題はまた、上で定義した組成物Xを70〜200℃、好ましくは80〜150℃、より一層好ましくは80〜130℃の範囲の温度に加熱することから成る、シリコーン組成物を架橋させるための方法にもある。
【0068】
本発明の主題はまた、
・ケイ素原子に結合したC
2〜C
6アルケニル基を1分子当たり少なくとも2個含む少なくとも1種のオルガノポリシロキサン化合物A、
・同一の又は異なるケイ素原子に結合した少なくとも2個の水素原子を1分子当たりに含む少なくとも1種のオルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物B、
・次式:
[Fe(L
1)
2]
(ここで、
記号Feは酸化状態IIの鉄を表し、
記号L
1は同一であっても異なっていてもよく、β−ジカルボニラトアニオン又はβ−ジカルボニル化合物のエノラートアニオンであるリガンドを表す)
に相当する錯体である少なくとも1種の触媒C、
・随意としての1種以上の接着促進剤D、及び
・随意としての1種以上のフィラーE
を含む架橋性組成物Xを70〜200℃、好ましくは80〜150℃、より一層好ましくは80〜130℃の範囲の温度に加熱することによって得られる架橋したシリコーン材料Yにもある。
【0069】
本発明に従う組成物は、空気感受性ではないという利点を有し、従って不活性ではない雰囲気下(特に空気中)で使用して特に架橋させることができる。
【実施例】
【0070】
以下、非限定的実施例で本発明をさらに詳細に説明する。
【0071】
例:M
viD
70M
viとMD’
50Mとの架橋のための鉄系触媒
【0072】
I)成分
【0073】
1)式M
viD
70M
viのオルガノポリシロキサンA(オイル100g当たりケイ素結合ビニル基0.038モル)(ここで、Viはビニルであり;M
viは(CH
3)
2ViSiO
1/2であり;Dは(CH
3)
2SiO
2/2である)
【0074】
2)式MD’
50MのオルガノヒドロゲノポリシロキサンB(オイル100g当たりのケイ素結合水素原子1.58モル)(ここで、Mは(CH
3)
3SiO
1/
2であり;D’は(CH
3)HSiO
2/2である)
【0075】
3)触媒(A)及び(B)
【化16】
【0076】
触媒(A)及び(B)は、当業者によく知られた合成によって得られる。
【化17】
【0077】
acac又はTHMD化合物(供給元:Strem)は、第1段階において1当量のBu−Li(供給元:Sigma-Aldrich)を用いて低温(−78℃)において脱プロトンされる。得られた塩をジエチルエーテルから再結晶する。得られる脱プロトンされたリガンド(リチウム塩)を、室温においてTHF中に溶解させた塩化鉄(FeCl
2)に加える(12時間)。デカンテーションし、濾過し、濃縮した後に、錯体をTHFから再結晶する。
【0078】
錯体[Fe(acac)
2]は、橙がかった茶色固体の形にある。
【0079】
錯体[Fe(THMD)
2]は、鮮やかな赤色のべとついた固体の形にある。
【0080】
II)配合物及び結果:
【0081】
試験される各配合物について、触媒を計量して室温においてガラスフラスコ中に導入する。次いでオイルM
viD
70M
vi5gを導入し、次いでオイルMD’
50M0.6gを導入する。所望の反応温度に加熱される油浴中でフラスコを撹拌する。オルガノヒドロゲノポリシロキサン(MD’
50M)中のケイ素に結合した水素原子(Si−H)対オルガノポリシロキサン(dvtms)中のケイ素に結合したアルケニル基(この場合はビニル)(Si−CH=CH
2)のモル比に相当する比Rは、4:1である。架橋の開始を測定する。架橋の開始とは、媒体中の粘度が上昇したことによって撹拌が停止した時と定義する。
【0082】
【表1】
(1)dvtms中のケイ素結合ビニル基(Si−CH=CH
2)のモル数に対する鉄のモル%として表される
【0083】
結果は、触媒が2個の−ジカルボニルリガンドを有するFe(II)錯体である本発明に従う配合物1及び2が6時間〜24時間の間に架橋することを示している。