特許第6500110号(P6500110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6500110
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】電気遮断器用の連結要素
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/666 20060101AFI20190401BHJP
   H01H 33/662 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   H01H33/666 L
   H01H33/662 J
【請求項の数】18
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-536297(P2017-536297)
(86)(22)【出願日】2015年12月29日
(65)【公表番号】特表2018-501625(P2018-501625A)
(43)【公表日】2018年1月18日
(86)【国際出願番号】EP2015081332
(87)【国際公開番号】WO2016110430
(87)【国際公開日】20160714
【審査請求日】2018年3月5日
(31)【優先権主張番号】102015200135.0
(32)【優先日】2015年1月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】バッハマイアー、ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】ゲデッケ、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】フォンツ、トマス
(72)【発明者】
【氏名】ツェルス、ヴォルフガング
【審査官】 太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−098974(JP,A)
【文献】 特開2006−236603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/60−33/68
H01H 3/00− 7/16
H01H 33/28−33/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気遮断器用の連結要素であって、第2接触子(2)を備えた電気接点を開閉するための第1接触子(1)を含んでいる連結要素(10)において、
前記連結要素(10)が1本の細長い巻き付け体(3)を含み、この巻き付け体の縦軸の長手方向に2つの対向する端部(301、302)が備えられており、その1つの端部に前記第1接触子(1)が配置されており;
前記連結要素(10)が1つの回転体(4)を含み、この回転体を貫通して前記巻き付け体(3)が延びており、前記回転体(4)は駆動装置と連結すべく設けられていて、この駆動装置により回転運動を実行することができ、前記回転体(4)は2つの側部(404、405)を有し、その一方の側部は前記巻き付け体(3)の一端部(301)を、他方の側部は他端部(302)を向いており;
前記回転体(4)が前記巻き付け体(3)で回転可能に支承され、かつ、前記巻き付け体(3)が直線的に案内されることにより、前記巻き付け体(3)はその縦軸を中心にして回転はできないが、その縦方向において前記回転体(4)に対して相対的に変位することができ;
前記回転体(4)の一方の側部または両方の側部(404、405)にそれぞれ若干数のワイヤー(6、6´)が前記回転体(4)と前記巻き付け体(3)との間に次のように、すなわち、前記回転体(4)の両反対方向の回転運動により前記巻き付け体(3)上で前記1本または複数のワイヤー(6、6´)の巻き上げ及び巻き戻しが生じ、これにより、前記巻き付け体(3)がその縦方向に前記回転体(4)に対して相対的に動かされ、その結果、前記第1接触子(1)と前記第2接触子(2)との電気接点が開閉される、ように配置されている連結要素。
【請求項2】
前記回転体(4)が円盤体であり、その両側部(404、405)が円形であり、前記巻き付け体(3)が前記円盤体(4)の中心を貫通して延びている、請求項1に記載の連結要素。
【請求項3】
前記円盤体が単一の、または、前記巻き付け体(3)の縦方向に互いに並んで配置されている複数の円盤(401、402)を含んでいる、請求項2に記載の連結要素。
【請求項4】
前記回転体(4)の一方の側部または両方の側部(404、405)に対して、それぞれの側部(404、405)に配置されている前記1本または複数のワイヤー(6、6´)の一端が前記回転体(4)で、他端が前記巻き付け体(3)でそれぞれ固定されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の連結要素。
【請求項5】
前記回転体(4)の一方の側部または両方の側部(404、405)に対して、それぞれの側部(404、405)に配置されている前記複数のワイヤー(6、6´)が、前記回転体(4)のそれぞれの側部(404、404)を上から見て、前記巻き付け体(3)を中心にして対称に位置決めされている、請求項1から4のいずれか1項に記載の連結要素。
【請求項6】
前記回転体(4)の一方の側部または両方の側部(404、405)に対して、それぞれの側部(404、405)に配置されている前記複数のワイヤー(6、6´)が1対または多数対のワイヤー(6、6´)を含み、それぞれの対の複数のワイヤー(6、6´)が、前記回転体(4)のそれぞれの側部(404、404)を上から見て、前記巻き付け体(3)の縦軸を中心にして180°ずれて配置されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の連結要素。
【請求項7】
前記回転体(4)の両方の側部(404、405)で、前記複数のワイヤー(6、6´)が次のように、すなわち、前記回転体(4)が一方の方向に回転運動するとき、前記複数のワイヤー(6、6´)は一方の側部(404、405)で巻き上げられ、他方の側部(404、405)で巻き戻され、前記回転体(4)が他の方向に回転運動するとき、前記複数のワイヤー(6、6´)は前記一方の側部(404、405)で巻き戻され、前記他方の側部(404、405)で巻き上げられるように、配置されている、請求項1から6のいずれか1項に記載の連結要素。
【請求項8】
前記巻き付け体(3)が円形の断面を有している、請求項1から7のいずれか1項に記載の連結要素。
【請求項9】
前記巻き付け体(3)が円筒形の棒である、請求項8に記載の連結要素。
【請求項10】
前記巻き付け体(3)が前記回転体(4)の一方の側部または両方の側部(404、405)でそれぞれ、その太さがその縦方向に沿って変化するように形成されている、請求項1から9のいずれか1項に記載の連結要素。
【請求項11】
前記巻き付け体(3)が前記回転体(4)の一方の側部または両方の側部(404、405)でそれぞれ、その太さがその縦方向に沿って、連続的に増加または減少するように形成されている、請求項10に記載の連結要素。
【請求項12】
前記巻き付け体(3)の太さが、前記第1接触子(1)が配置されている前記巻き付け体の端部(301)に面している前記回転体(4)の側部(404)では、巻き付け体(3)の縦方向においてこの端部に向かって増加している、請求項10に記載の連結要素。
【請求項13】
前記巻き付け体(3)の太さが、前記回転体(4)の他の側部(405)では、巻き付け体(3)の縦方向において前記巻き付け体(3)の他の端部(302)に向かって減少している、請求項12に記載の連結要素。
【請求項14】
前記巻き付け体(3)の太さが、前記第1接触子(1)が配置されている前記巻き付け体の端部(301)に面している前記回転体(4)の側部(404)では、巻き付け体(3)の縦方向においてこの端部に向かって減少している、請求項10に記載の連結要素。
【請求項15】
前記巻き付け体(3)の太さが、前記回転体(4)の他の側部(405)では、巻き付け体(3)の縦方向において前記巻き付け体(3)の他の端部(302)に向かって増加している、請求項14に記載の連結要素。
【請求項16】
前記第1接触子(1)が前記巻き付け体(3)の前記端部(301)において、前記巻き付け体(3)と直接に結合されているか、または、その間の弾性要素を介して結合されている、請求項1から15のいずれか1項に記載の連結要素。
【請求項17】
前記複数のワイヤーの少なくとも一部が、前記回転体(4)の一方の側部または両方の側部(404、405)で、弾性要素(5)を含んでいる、または、弾性を有するように形成されている、請求項1から16のいずれか1項に記載の連結要素。
【請求項18】
その内部で第1接触子(1)の第2接触子(2)との電気接点が開閉される電気遮断器であって、電気接点を開閉するための請求項1から17のいずれか1項に記載された連結要素(10)を含んでいる電気遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気遮断器、特に真空遮断バルブ用の連結要素に関する。
【背景技術】
【0002】
電気遮断器は低電圧、中電圧および高電圧領域で電気接点を開閉するために使用される。その場合、しばしば、複数の電気接触子が真空中に配置されているが故に高い耐電圧特性が得られる真空遮断バルブが多用されている。電気遮断器を簡単かつコンパクトに構成することが求められている。しかし、この目的に対して、接触子を電気遮断器内部で動かすための複雑な運動機構の存在が妨げになっている。
【0003】
従来技術から、電気遮断器内で、特に真空遮断バルブ内で、接点を作動することができる様々なバリエーションが知られている。例えば特許文献1には、バルブと同じハウジング内での磁気駆動装置の使用が記載されている。古いシステム(例えば、ABB社のVM1システム)が駆動装置と真空遮断バルブ間の梃子伝動を有しているのに対し、新しい研究(例えば、特許文献2又は特許文献3)は直接駆動装置、すなわち、アクチュエータと真空遮断バルブ間の直接的な、したがって、コンパクトな結合を提案している。
【0004】
同様な配置がいわゆる「再閉路器(Recloser)」で用いられており、ここでは真空遮断バルブが同様に磁気駆動装置を用いた直接駆動装置を介して駆動される(特許文献4又は特許文献5をも参照されたい)。
【0005】
最後に、特許文献6では、真空遮断バルブと駆動装置が統合されている構成が記載されているが、駆動装置は遮断バルブの真空領域内には収納されていない。さらに、この駆動装置が中電圧電位に保たれており、このことによって、駆動装置と遮断バルブ間の電気絶縁を省くことができる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第2312606B1号明細書
【特許文献2】中国実用新案公告第201788887U号明細書
【特許文献3】中国実用新案公告第202159623U号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0580285A2号明細書
【特許文献5】中国実用新案公告第2350863Y号明細書
【特許文献6】独国特許第10238950B4号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、遮断器の駆動装置の回転運動を簡単かつフレキシブルに接触子の直線運動に変換することのできる電気遮断器用の連結要素を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の特徴を有する連結要素により解決される。本発明の好適な実施形態は、付属する従属請求項、以下の明細書、および、図面に示されている。
【0009】
本発明による連結要素は電気遮断器、これは好適な形態では真空遮断バルブである、のために設けられたものである。しかし、この連結要素は、低電圧、中電圧および高電圧領域における他の電気遮断器においても使用することができる。この連結要素は、第2接触子を備えた電気接点を開閉するための第1接触子を含んでいる。
【0010】
本発明による連結要素では、1本の細長い巻き付け体が設けられており、その縦軸の長手方向に2つの対向する端部が備えられており、その1つの端部に第1接触子が配置されている。この連結要素は、さらに、1つの回転体を含み、この回転体を貫通して前記巻き付け体が延びており、この回転体は駆動装置と連結すべく設けられていて、この駆動装置により回転運動を実行することができる。この回転体は2つの側部を有し、その一方は前記巻き付け体の一端部、他方は前記巻き付け体の他端部を向いている。この回転体は巻き付け体に回転可能に支承されており、かつ、この巻き付け体は直線状に案内されているので、この巻き付け体はその縦軸を中心にして回転はできないが、その縦方向において回転体に対して相対的に変位することができる。
【0011】
本発明による巻き付け体において、回転体の一方の側部または両方の側部にそれぞれ、弾性を有する若干数のワイヤー(すなわち、少なくとも1本のワイヤー)があり、特に、複数のワイヤーの大多数が回転体と巻き付け体の間で次のように、すなわち、回転体の両反対方向の回転運動により巻き付け体上で1本または複数のワイヤーの巻き上げ及び巻き戻しが生じ、これにより、巻き付け体はその縦方向に回転体に対して相対的に動かされ、その結果、第1接触子と第2接触子との電気接点が開閉されるように配置されているか引張られている。
【0012】
本発明による連結要素は、駆動装置により生じた回転運動を簡単かつ効果的な方法で接触子の開閉運動に転換する。その表面で複数のワイヤーが巻き上げられないし巻き戻される巻き付け体の適切な形態により、第1接触子の力学的な運動を所望の諸条件にフレキシブルに合わせることができる。
【0013】
好適な1つの代案において、この回転体は円盤状であり、その両側部が円形であり、巻き付け体が好適にはこの円盤体の中心を貫通して延びている。これにより、連結要素のコンパクトな構造が得られる。この円盤体は本発明による一実施形態では、単に1枚の円盤を含むが、場合によっては多数の円盤を含むこともでき、これら複数の円盤は巻き付け体の縦方向に互いに並んで、および、場合によっては、互いに間隔を置いて配置されている。
【0014】
本発明による連結要素の、別の、特に好適な形態では、回転体の一方の側部または両方の側部に対して、それぞれの側部に配置された1本または複数のワイヤーの一端が回転体に、特に回転体の縁に、他端が巻き付け体に固定されており、この場合、巻き付け体での固定は好適には巻き付け体の、回転体のそれぞれの側部が向いている端部で行われる。この形態によれば、回転体の回転運動の巻き付け体の直線運動への効果的な転換が達成される。ここで、および以下においても、それぞれの側部という概念は、若干数のワイヤーが1つの側部のみに設けられている場合には、ただ1つの側部のみを含む。
【0015】
本発明による連結要素の他の形態においては、回転体の一方の側部又は両方の側部に対して、それぞれの側部に配置された複数のワイヤーが、回転体のそれぞれの側部を上から見て、巻き付け体を中心にして対称的に位置決めされている。これにより、回転運動の直線運動への均等な転換が得られる。対称的とは、隣接するワイヤー間の角度が上から見てそれぞれの側部において同じ大きさであることを意味する。
【0016】
他の代案では、回転体の一方の側部または両方の側部に対して、それぞれの側部に配置されている複数のワイヤーが1対または複数対のワイヤーを含み、各対の複数のワイヤーは、回転体のそれぞれの側部を上から見て、巻き付け体の縦軸を中心として180°ずれて配置されている。これにより、連結要素の簡単な構成が得られる。
【0017】
他の、特に好適な実施形態では、回転体の両方の側部で、複数のワイヤーが次のように、すなわち、回転体が一方の方向に回転運動するとき、これらのワイヤーは一方の側部で巻き上げられ、他方の側部で巻き戻され、回転体が他の方向に回転運動するとき、これらのワイヤーは前記一方の側部で巻き戻され、前記他方の側部で巻き上げられるように、配置されている。これにより、接点の開閉のための力学的な運動が簡単な方法で得られる。
【0018】
この巻き付け体は必要に応じて連結要素に様々な形態で構成することができる。通常、この巻き付け体は円形の断面を有している。この巻き付け体は、例えば、一定の円形の断面を有する円筒形の棒とすることができ、これによって、第1接触子の一定速度の運動が得られる。しかし、この円形断面の直径は巻き付け体の縦軸に沿って一定である必要はない。
【0019】
第1接触子の力学的な運動を変化させるために、本発明の別の代案では、回転体の1つの側部または両側部においてそれぞれ、巻き付け体は次のように、すなわち、その太さ、および、場合により円形の断面のその直径が、その縦軸に沿って(少なくとも部分的に)変化するように、特に、連続的に増加または減少するように、形成されている。
【0020】
上述した実施形態の一形態では、第1接触子が配置されている巻き付け体の端部に面している回転体の側部で、巻き付け体の太さは、その縦方向においてこの端部に向かって増加している。これにより、だんだん速くなる伝動経緯が得られ、この場合、第1接触子は第2接触子との間隔が小さくなるにしたがってより速く動くので、電気接点はより速く開閉される。この代案により、第1接触子と第2接触子との間の電気的なフラッシュオーバーを避けることができる。この代案では好適に、回転体の反対側部では、巻き付け体の太さはその縦方向において巻き付け体の他端部に向けて減少している。特に、一方の側部における巻き付け体の形態は、他の側部における巻き付け体の形態と同じである。これにより、回転体の両側部においてワイヤーの同様の巻き上げ及び巻き戻しが行われ、その結果、ワイヤーのたるみを避けることができる。
【0021】
他の代案では、第1接触子が配置されている巻き付け体の端部に面している回転体の側部で、巻き付け体の太さは、その縦方向においてこの端部に向かって減少している。これにより、だんだん遅くなる伝動経緯が得られ、この場合、第1接触子と第2接触子との間隔が小さくなるにしたがって第1接触子の動きはより遅くなる。この実施形態では好適に、巻き付け体の太さは、回転体の他の側部では巻き付け体の縦方向において巻き付け体の他端部に向けて増加している。特に、一方の側部における巻き付け体の形態は、他の側部における巻き付け体の形態と同じである。これによっても、回転体の両側部においてワイヤーの同様の巻き上げ及び巻き戻しが行われ、その結果、ワイヤーのたるみを防ぐことができる。
【0022】
本発明による連結要素の一実施形態では、第1接触子は巻き付け体の一端部においてこの巻き付け体と直接に結合されている。しかし、この結合はその間の弾性的な要素を介して間接的に行うこともでき、これにより、接点を閉じる際の運動エネルギーが蓄えられる。
【0023】
本発明による連結要素の他の代案では、ワイヤーの少なくとも一部が、回転体の一方の側部または両側部で、弾性要素を有している。同様に、これに相応するワイヤーを場合によっては弾性を有するように構成することができる。この代案により、ワイヤーの予張力が得られ、その結果、巻き付け体の両側部での巻き上げ速度の違いに対抗することができる。
【0024】
本発明による連結要素と並んで、本発明は、その内部で第1接触子の第2接触子との電気接点を開閉することができる電気遮断器、特に真空遮断バルブに関し、この場合、この遮断器はその電気接点を開閉するための、本発明による連結要素、ないし、本発明による連結要素の1つまたは多数の好適な代案を含んでいる。
【0025】
本発明の実施例を添付図に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明による連結要素の実施例の模式的構成が示されている。
図2】本発明による連結要素の実施例の模式的構成で、図1とは異なる時点での動作状態が示されている。
図3】本発明による連結要素の実施例の模式的構成で、図1および図2とは異なる時点での動作状態が示されている。
図4】本発明による連結要素の代案
図5】本発明による連結要素の代案
図6】本発明による連結要素の代案
図7】本発明による連結要素の代案
【0027】
以下に本発明を、真空バルブ内で接点を開閉するための連結要素に基づき説明する。しかし、本発明による連結要素は電気接点を開閉するために他の遮断器においても使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1から図3は本発明による連結要素10の第1案を示している。この連結要素により、円盤状の接触子1および2から成る接点系が作動され、この場合、このために接触子1が接触子2に対して相対的に動かされる。両方の接触子1および2の接触により、電流回路が閉じられ、後述する導電性の巻き付け体3、ならびに、接触子1および2から成る接点系を介して電流が流れる。この電流は、両方の接触子1および2が互いに離れることにより接点系が開くことによって、再び遮断することができる。
【0029】
接触子1は、以下において巻き付け棒とも呼ぶ、巻き付け体3の下端部301に固定されている。この巻き付け体3はその縦軸に沿って直線的に変位可能に案内されており、回転することはできない。この巻き付け体に回転体4が回転可能に支承されている、すなわち、この回転体は巻き付け体上で回転可能である。この回転体は互いに間隔を置いた2つの円盤401および402を有し、これらの円盤の間にリング状の軸受403があり、この軸受を介して回転体4が巻き付け体3に取り付けられている。巻き付け体3は円盤401および402の対応している中心の孔を越えて軸受403を貫通している。
【0030】
図1の連結要素は次の点で優れている。すなわち、図示されていない駆動装置(例えば、ばね又は外部の原動機)により生じる回転体4の回転運動が、弾性を有する複数のワイヤー6、6´を使用することにより、接触子1の直線運動に転換される。この場合、円盤402の上側部405に2本の向かい合った弾性ワイヤー6が設けられており、これらのワイヤーは互いに180°ずれて、1端が円盤402の縁と、他端が巻き付け体3の上端部302と結合されている。同様に、円盤401の下側部404に2本の弾性ワイヤー6´が設けられており、これらも互いに180°ずれており、1端が円盤401の縁に、他端が巻き付け体3の下端部301に固定されている。
【0031】
前記駆動装置により生じた回転体4の回転運動によって、巻き付け棒3上にワイヤー6および6´の巻き上げ、ないし、巻き戻しが生じ、これにより、巻き付け棒の直線的な案内に基づき、その縦方向の動き、すなわち、接触子1および2の開ないし閉が行われる。図1には、両方の接触子1および2が遮断位置にある状態が示されている。この状態では、両方のワイヤー6´は巻き付け体3の下部に巻き上げられているので、これらのワイヤーの自由長は短くなっており、接触子1は接触子2と最大離間距離を有する上側の位置に配置されている。このとき、回転体4の上側部405の弾性ワイヤー6は巻き戻された状態となっている。
【0032】
つぎに、両方の接触子1および2が遮断位置から接触位置へ移行する際には、駆動装置により回転体4の回転運動が矢印Rで示された方法に行われる(図2参照)。その結果、ワイヤー6´は巻き戻され、これとは反対にワイヤー6は巻き上げられる。これにより巻き付け棒3に下向きの力が働くので、図2から判るように、接触子1は接触子2に近づく。図3の表示では、回転体のこの回転が、両方の接触子1および2の間で閉状態が生じる接触位置に到達するまで進行している。
【0033】
図3の閉じられた接点から出発して、示された方向Rとは逆方向に回転体を回転することによって、この接点を再び開くことができ、この場合、ワイヤー6´は巻き付け棒に再度巻き上げられ、これとは逆にワイヤー6は巻き付け体から巻き戻され、このことにより上向きの力が生じる。最終的に、再び図1の遮断状態が得られる。好適な1つの代案では、この連結要素は適切な(解除可能な)ロックメカニズムにより、閉位置においても開位置においてもロックすることができる。
【0034】
図1図3の実施形態に示されたワイヤーの配置は必要に応じて変化させることができる。例えば、伝達される力が2本だけのワイヤーの許容引っ張り負荷を超える場合には、回転体のそれぞれの側部に場合によっては3本以上のワイヤーを備えることができる。図1図3の実施形態においてもそうなっているように、回転体の上側部でも下側部でも複数のワイヤーを対称的に配置すると有効である。というのは、これによって力を上方向にも下方向にも適切に伝達することができるからである。
【0035】
しかし、1方向にのみ力の伝達を可能にすべく、例えば、他の方向へは巻き付け体の運動のためには重力で充分であることにより、ワイヤーを回転体4の一方の側部にのみ設けることもできる。例えば、図1図3における上から下への鉛直方向が重力の方向と一致していることから出発して、場合によっては、ワイヤー6´だけを設けることができる。このワイヤー6´は図3の状態から出発して、回転方向Rとは逆方向の回転により接点を開く作用を引き起こし、これとは逆に接点を閉じることは重力によってのみ引き起こされる。
【0036】
図4から図7は本発明による連結要素の代案を示している。同一ないし互いに対応している部品には図1から図3の実施形態において記されたものと同じ符号が付されている。図4から図7の構成および機能性は図1から図3の連結要素と極めてよく対応しているので、図4から図7の連結要素については最早詳細には説明せず、これらの連結要素の図1から図3の連結要素との違いについてのみ説明する。
【0037】
図4の連結要素は本質的に図1から図3の連結要素と同じであり、ここでは巻き付け体3として相対的により細い巻き付け棒が使用され、その結果、回転体4の1回転当たりより少ないワイヤーが巻き戻され、ないし、巻き上げられることになり、このことによって、巻き付け体のより低速の運動、すなわち、接触子1のより低速の開閉が生じる。
【0038】
図4とは異なり、図5の連結要素の巻き付け体は、本質的により太い円筒状の棒として形成されている。その結果、回転体4の回転により1巻き当たりより多くのワイヤーが巻き戻され、ないし、巻き上げられることになり、このことによって、接触子1と2のより高速な相対運動、すなわち、より高速の開動作ないし閉動作が達成される。
【0039】
図6は、回転体4の側部404の巻き付け体の下部がフラスコの首の形状で接触子1に向かって直径が小さくなるように形成されている、巻き付け体3の形態を示している。これにより、だんだん低速になる伝動経緯が得られる、すなわち、巻き付け体3の直線運動が下方へ進めば進むほど、その動きは遅くなる。これにより、接触子1を接触子2へ徐々に載置することができる。
【0040】
図6とは逆に図7の巻き付け体3の下部は逆方向に向いたフラスコの首として形成されている、すなわち、この巻き付け体の直径は回転体4の側部404から接触子1に向けて大きくなっている。この代案により、だんだん速くなる伝動経緯が得られ、この場合、接触子1と2が閉じる前に、ワイヤー6´のより速い巻き戻しにより、接触子1の運動の著しい加速が得られる。この実施形態は次の場合に、すなわち、接触子1の運動は遮断位置からゆっくり始動することが望ましいが、それと同時に、両接触子がほゞ閉じられた状態では閉速度を高める必要がある場合に、使用される。本発明のこの代案は真空遮断バルブにおける接触子への利用に非常に適している。
【0041】
図6および図7の代案では、さらに、上部ワイヤー6にばねコンポーネント5が取り付けられている。場合によっては、これらのばねコンポーネントは付加的にワイヤー6´にも設けることができる。これらのばねコンポーネントを用いて、ワイヤーの予張力を精密に調整することができる。巻き付け体の対向する両側部におけるワイヤー6と6´の、場合によって生じる巻き上げ速度の差は、これらのばねコンポーネントで吸収することができ、結果的にこれらワイヤーの予張力が僅かに変わるだけとなる。さらに、これらのばねコンポーネントは、かなり広いストロークを有するように設計することができ、それにより、その予張力を長い運転時間にわたっても安定に維持することができる。場合によっては、ばねコンポーネントの代わりに、ワイヤー自身を弾性があるように形成することも可能である。
【0042】
図6および図7の実施形態では、巻き付け体の上部が依然として円筒形に作られている。図6および図7における実施形態では、巻き付け体の上部は下部と同様に作られる。換言すれば、図6および図7による実施形態においては、巻き付け体の上部は(接点を閉じる際に軸受403に入り込む部分まで)、下部と同様にフラスコの首の形状に形成されており、この場合、フラスコの首の太さは、図6では巻き付け体の上端部302に向かって大きくなり、図7では巻き付け体の上端部302に向かって小さくなる。
【0043】
これにより、巻き上げ時ないし巻き戻し時のワイヤーのたるみが避けられる。例えば、巻き付け体の上部のワイヤーがより低速で巻き上げられるときには、巻き付け体の下部の対応するワイヤーもより低速で巻き戻され、その結果、たるまない、ということが達成される。逆に、上述した代案により、以下のことが生じるのを避けることができる。すなわち、巻き付け体の上部のワイヤーが、巻き付け体の下部の対応するワイヤーが巻き戻されるよりも速く巻き上げられ、その結果、この運動がブロックされるに至る、ことが避けられる。
【0044】
本発明の(図示されていない)別の代案では、伝動力学のさらなる適合、例えば、非常に特殊な電気接点物理学ないしアーク物理学への適合、を達成するために、巻き付け体のより複雑な形態も可能である。
【0045】
上述した本発明の諸実施形態は一連のメリットを有している。巻き付け体でのワイヤーの巻き上げないし巻き戻しによる、回転運動の直線運動への転換によって、所望の梃子比率を簡単に固定することができ、巻き付け体のこの形態により問題なく広範囲で調整することができる。特に、巻き付け体の形状を徐々に速くする形状、および、徐々に遅くする形状にすることができるので、接触子の最終状態での速度を目的に合わせて調節することができる。有利な代案では、使用されるワイヤーがさらにばね要素で、すなわち、弾性を有するように形成されており、これによって、ワイヤーの安定かつ長寿命の予張力が得られ、巻き付け体の上部と下部との間で場合によって生じる作動差のバランスをとることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 接触子
2 接触子
3 巻き付け体(巻付け棒)
301 巻き付け体の下端部
302 巻き付け体の上端部
4 回転体
401 円盤
402 円盤
403 軸受
404 円盤の下側部
405 円盤の上側部
6、6´ ワイヤー
10 連結要素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7