特許第6500145号(P6500145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6500145振動杭打抜機および杭の打込み・引抜き工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6500145
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】振動杭打抜機および杭の打込み・引抜き工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 11/00 20060101AFI20190401BHJP
   E02D 7/18 20060101ALI20190401BHJP
   E02D 13/00 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   E02D11/00
   E02D7/18
   E02D13/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-70579(P2018-70579)
(22)【出願日】2018年4月2日
(62)【分割の表示】特願2015-230802(P2015-230802)の分割
【原出願日】2015年11月26日
(65)【公開番号】特開2018-105120(P2018-105120A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2018年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002122
【氏名又は名称】調和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 典子
(74)【代理人】
【識別番号】100146950
【弁理士】
【氏名又は名称】南 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】中城 延浩
(72)【発明者】
【氏名】溝次 佳
(72)【発明者】
【氏名】加藤 努
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勇吉
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−83016(JP,A)
【文献】 特開2014−201971(JP,A)
【文献】 特開2012−136910(JP,A)
【文献】 特開平9−323068(JP,A)
【文献】 特開2012−162905(JP,A)
【文献】 特開2014−55476(JP,A)
【文献】 米国特許第5355964(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00〜 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧モータである主モータを含み、当該主モータによって駆動される起振機と、
前記起振機の下端に取り付けられており、把持対象物を把持する杭把持装置と、
オイルタンクと、
前記主モータに前記オイルタンクのオイルを圧送する主ポンプと、
前記杭把持装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する把持装置用ポンプと、
前記主ポンプを駆動する発動機と、
前記把持装置用ポンプを駆動する第1の小型動力源と、
前記杭把持装置が前記把持対象物を把持しており、かつ前記把持対象物の打込みおよび引き抜きをしていないとき、前記第1の小型動力源により前記把持装置用ポンプを駆動し、かつ前記発動機を停止し、一方、前記杭把持装置が前記把持対象物を把持しており、かつ前記把持対象物の打込みまたは引き抜きをしているとき、前記第1の小型動力源により前記把持装置用ポンプを駆動し、かつ前記発動機により前記主ポンプを駆動する制御部と、
を備えることを特徴とする振動杭打抜機。
【請求項2】
油圧モータである主モータと、予冷または暖機および潤滑を行う強制潤滑装置と、負荷に応じて振動力を変化させる変換装置とを含み、前記主モータによって駆動される起振機と、
前記起振機の下端に取り付けられており、把持対象物を把持する杭把持装置と、
オイルタンクと、
前記主モータに前記オイルタンクのオイルを圧送する主ポンプと、
前記杭把持装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する把持装置用ポンプと、
前記強制潤滑装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する強制潤滑装置用ポンプと、
前記変換装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する変換装置用ポンプと、
前記主ポンプと、前記強制潤滑装置用ポンプと、前記変換装置用ポンプとを駆動する発動機と、
前記把持装置用ポンプを駆動する第1の小型動力源と、
前記杭把持装置が前記把持対象物を把持しており、かつ前記把持対象物の打込みおよび引き抜きをしていないとき、前記第1の小型動力源により前記把持装置用ポンプを駆動し、かつ前記発動機を停止し、一方、前記杭把持装置が前記把持対象物を把持しており、かつ前記把持対象物の打込みまたは引き抜きをしているとき、前記第1の小型動力源により前記把持装置用ポンプを駆動し、かつ前記発動機により前記主ポンプを駆動する制御部と、
を備えることを特徴とする振動杭打抜機。
【請求項3】
油圧モータである主モータと、予冷または暖機および潤滑を行う強制潤滑装置と、負荷に応じて振動力を変化させる変換装置とを含み、前記主モータによって駆動される起振機と、
前記起振機の下端に取り付けられており、把持対象物を把持する杭把持装置と、
オイルタンクと、
前記主モータに前記オイルタンクのオイルを圧送する主ポンプと、
前記杭把持装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する把持装置用ポンプと、
前記強制潤滑装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する強制潤滑装置用ポンプと、
前記変換装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する変換装置用ポンプと、
前記主ポンプを駆動する発動機と、
前記把持装置用ポンプを駆動する第1の小型動力源と、
前記強制潤滑装置用ポンプと、前記変換装置用ポンプとを駆動する第2の小型動力源と、
前記杭把持装置が前記把持対象物を把持しており、かつ前記把持対象物の打込みおよび引き抜きをしていないとき、前記第1の小型動力源により前記把持装置用ポンプを駆動し、かつ前記発動機を停止し、一方、前記杭把持装置が前記把持対象物を把持しており、かつ前記把持対象物の打込みまたは引き抜きをしているとき、前記第1の小型動力源により前記把持装置用ポンプを駆動し、かつ前記発動機により前記主ポンプを駆動する制御部と、
を備えることを特徴とする振動杭打抜機。
【請求項4】
油圧モータである主モータと、予冷または暖機および潤滑を行う強制潤滑装置と、負荷に応じて振動力を変化させる変換装置とを含み、前記主モータによって駆動される起振機と、
前記起振機の下端に取り付けられており、把持対象物を把持する杭把持装置と、
オイルタンクと、
前記主モータに前記オイルタンクのオイルを圧送する主ポンプと、
前記杭把持装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する把持装置用ポンプと、
前記強制潤滑装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する強制潤滑装置用ポンプと、
前記変換装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する変換装置用ポンプと、
前記主ポンプを駆動する発動機と、
前記把持装置用ポンプを駆動する第1の小型動力源と、
前記強制潤滑装置用ポンプを駆動する第2の小型動力源と、
前記変換装置用ポンプを駆動する第3の小型動力源と、
前記杭把持装置が前記把持対象物を把持しており、かつ前記把持対象物の打込みおよび引き抜きをしていないとき、前記第1の小型動力源により前記把持装置用ポンプを駆動し、かつ前記発動機を停止し、一方、前記杭把持装置が前記把持対象物を把持しており、かつ前記把持対象物の打込みまたは引き抜きをしているとき、前記第1の小型動力源により前記把持装置用ポンプを駆動し、かつ前記発動機により前記主ポンプを駆動する制御部と、
を備えることを特徴とする振動杭打抜機。
【請求項5】
油圧モータである主モータと、予冷または暖機および潤滑を行う強制潤滑装置と、負荷に応じて振動力を変化させる変換装置とを含み、前記主モータによって駆動される起振機と、
前記起振機の下端に取り付けられており、把持対象物を把持する杭把持装置と、
オイルタンクと、
前記主モータに前記オイルタンクのオイルを圧送する主ポンプと、
前記杭把持装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する把持装置用ポンプと、
前記強制潤滑装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する強制潤滑装置用ポンプと、
前記変換装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する変換装置用ポンプと、
前記主ポンプを駆動する発動機と、
前記把持装置用ポンプと、強制潤滑装置用ポンプと、前記変換装置用ポンプとを駆動する第1の小型動力源と、
前記杭把持装置が前記把持対象物を把持しており、かつ前記把持対象物の打込みおよび引き抜きをしていないとき、前記第1の小型動力源により前記把持装置用ポンプを駆動し、かつ前記発動機を停止し、一方、前記杭把持装置が前記把持対象物を把持しており、かつ前記把持対象物の打込みまたは引き抜きをしているとき、前記第1の小型動力源により前記把持装置用ポンプを駆動し、かつ前記発動機により前記主ポンプを駆動する制御部と、
を備えることを特徴とする振動杭打抜機。
【請求項6】
油圧モータである主モータを含み、当該主モータによって駆動される起振機と、
前記起振機の下端に取り付けられており、把持対象物を把持する杭把持装置と、
オイルタンクと、
前記主モータに前記オイルタンクのオイルを圧送する主ポンプと、
前記杭把持装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する把持装置用ポンプと、
前記主ポンプを駆動する発動機と、
前記把持装置用ポンプを駆動する第1の小型動力源と、
を有する振動杭打抜機を用いる把持対象物の打込み・引抜き工法であって、
前記第1の小型動力源を起動するステップと、
前記第1の小型動力源によって駆動される杭把持装置が前記把持対象物を把持するステップと、
前記発動機を起動するステップと、
前記第1の小型動力源によって駆動される杭把持装置が前記把持対象物を把持しているときに、前記発動機によって駆動される主ポンプが前記起振機を駆動し、前記起振機を用いて前記把持対象物の打込みまたは引き抜きを行うステップと、
前記第1の小型動力源によって駆動される前記杭把持装置が前記把持対象物を把持しており、かつ前記把持対象物の打込みおよび引き抜きをしていないときに、前記発動機を停止するステップと、
を備えることを特徴とする把持対象物の打込み・引抜き工法。
【請求項7】
油圧モータである主モータと、予冷または暖機および潤滑を行う強制潤滑装置と、負荷に応じて振動力を変化させる変換装置とを含み、前記主モータによって駆動される起振機と、
前記起振機の下端に取り付けられており、把持対象物を把持する杭把持装置と、
オイルタンクと、
前記主モータに前記オイルタンクのオイルを圧送する主ポンプと、
前記杭把持装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する把持装置用ポンプと、
前記強制潤滑装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する強制潤滑装置用ポンプと、
前記変換装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する変換装置用ポンプと、
前記主ポンプを駆動する発動機と、
前記把持装置用ポンプを駆動する第1の小型動力源と、
前記強制潤滑装置用ポンプと、前記変換装置用ポンプとを駆動する第2の小型動力源と、
を有する振動杭打抜機を用いる把持対象物の打込み・引抜き工法であって、
前記第1の小型動力源を起動するステップと、
前記第2の小型動力源を起動するステップと、
前記強制潤滑装置が前記起振機の予冷または暖機および潤滑を行うステップと、
前記第1の小型動力源によって駆動される杭把持装置が前記把持対象物を把持するステップと、
前記発動機を起動するステップと、
前記第1の小型動力源によって駆動される杭把持装置が前記把持対象物を把持しているときに、前記発動機によって駆動される主ポンプが前記起振機を駆動し、前記起振機を用いて前記把持対象物の打込みまたは引き抜きを行うステップと、
前記第1の小型動力源によって駆動される前記杭把持装置が前記把持対象物を把持しており、かつ前記把持対象物の打込みおよび引き抜きをしていないときに、前記発動機を停止するステップと、
を備えることを特徴とする把持対象物の打込み・引抜き工法。
【請求項8】
油圧モータである主モータと、予冷または暖機および潤滑を行う強制潤滑装置と、負荷に応じて振動力を変化させる変換装置とを含み、前記主モータによって駆動される起振機と、
前記起振機の下端に取り付けられており、把持対象物を把持する杭把持装置と、
オイルタンクと、
前記主モータに前記オイルタンクのオイルを圧送する主ポンプと、
前記杭把持装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する把持装置用ポンプと、
前記強制潤滑装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する強制潤滑装置用ポンプと、
前記変換装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する変換装置用ポンプと、
前記主ポンプを駆動する発動機と、
前記把持装置用ポンプを駆動する第1の小型動力源と、
前記強制潤滑装置用ポンプを駆動する第2の小型動力源と、
前記変換装置用ポンプを駆動する第3の小型動力源と、
を有する振動杭打抜機を用いる把持対象物の打込み・引抜き工法であって、
前記第1の小型動力源を起動するステップと、
前記第2の小型動力源を起動するステップと、
前記強制潤滑装置が前記起振機の予冷または暖機および潤滑を行うステップと、
前記第1の小型動力源によって駆動される杭把持装置が前記把持対象物を把持するステップと、
前記発動機を起動するステップと、
前記第1の小型動力源によって駆動される杭把持装置が前記把持対象物を把持しているときに、前記発動機によって駆動される主ポンプが前記起振機を駆動し、前記起振機を用いて前記把持対象物の打込みまたは引き抜きを行うステップと、
前記第1の小型動力源によって駆動される前記杭把持装置が前記把持対象物を把持しており、かつ前記把持対象物の打込みおよび引き抜きをしていないときに、前記発動機を停止するステップと、
を備えることを特徴とする把持対象物の打込み・引抜き工法。
【請求項9】
油圧モータである主モータと、予冷または暖機および潤滑を行う強制潤滑装置と、負荷に応じて振動力を変化させる変換装置とを含み、前記主モータによって駆動される起振機と、
前記起振機の下端に取り付けられており、把持対象物を把持する杭把持装置と、
オイルタンクと、
前記主モータに前記オイルタンクのオイルを圧送する主ポンプと、
前記杭把持装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する把持装置用ポンプと、
前記強制潤滑装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する強制潤滑装置用ポンプと、
前記変換装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する変換装置用ポンプと、
前記主ポンプを駆動する発動機と、
前記把持装置用ポンプと、強制潤滑装置用ポンプと、前記変換装置用ポンプとを駆動する第1の小型動力源と、
を有する振動杭打抜機を用いる把持対象物の打込み・引抜き工法であって、
前記第1の小型動力源を起動するステップと、
前記強制潤滑装置が前記起振機の予冷または暖機および潤滑を行うステップと、
前記第1の小型動力源によって駆動される杭把持装置が前記把持対象物を把持するステップと、
前記発動機を起動するステップと、
前記第1の小型動力源によって駆動される杭把持装置が前記把持対象物を把持しているときに、前記発動機によって駆動される主ポンプが前記起振機を駆動し、前記起振機を用いて前記把持対象物の打込みまたは引き抜きを行うステップと、
前記第1の小型動力源によって駆動される前記杭把持装置が前記把持対象物を把持しており、かつ前記把持対象物の打込みおよび引き抜きをしていないときに、前記発動機を停止するステップと、
を備えることを特徴とする把持対象物の打込み・引抜き工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動力(起振力)により杭や矢板を土中に打ち込む、または土中から杭や矢板を引き抜く振動杭打抜機および杭の打込み・引抜き工法に関する。
【背景技術】
【0002】
振動杭打抜機(バイブロハンマと称されることもある。)は、起振機(振動発生装置)と杭把持装置を有する。振動杭打抜機を利用して杭や矢板(以下、杭等という。)を土中に打ち込む、または土中から杭等を引き抜く場合、杭把持装置によって杭等を把持した後に、起振機を作動させてその振動力を杭等に伝達し、杭等を打込む、または杭等を引き抜く。
【0003】
起振機が油圧式の場合、動力源は発動機(例えば、ディーゼルエンジン)であり、発動機に主モータ用の主ポンプが一体で装着されている。主ポンプは主モータにオイルを圧送し、起振機は主モータによって駆動される。
振動杭打抜機は、主ポンプの他に3つの補助油圧ポンプを有する。3つの補助油圧ポンプとは、把持装置用ポンプと強制潤滑装置用ポンプと変換装置用ポンプである。把持装置用ポンプは、杭把持装置にオイルを圧送する。オイルを圧送されるとき、杭把持装置は杭を把持し、その把持圧力を維持する。強制潤滑装置用ポンプは、強制潤滑装置にオイルを圧送する。オイルを圧送されるとき、強制潤滑装置は起振機本体の回転部分(軸受、歯車、偏心重錘等)の予冷と潤滑を行う。変換装置用ポンプは、変換装置にオイルを圧送する。オイルを圧送されるとき、変換装置は、例えば偏心重錘の相対角度を制御して負荷に応じて振動力を変化させる(例えば、特許文献1参照。)。
3つの補助油圧ポンプも、主モータ用の主ポンプと同一の発動機によって駆動される。
【0004】
杭等の打込みまたは引き抜きをしていないときに発動機が定格出力の状態であると、発動機の燃料が無駄に消費される。
そこで、特許文献1は、主モータの負荷率の変化と計測されたN値の変化とに応じて偏心重錘の相対的角度を制御して振動力を変化させる振動杭打抜機を開示する。特許文献1に記載の振動杭打抜機は、発動機を常時定格出力で運転しなくてもよいため、発動機の燃料消費量を大幅に低減することができる。
【0005】
また、特許文献2は、杭把持装置が杭を把持しておりかつ発動機が規定回転数で回転しているときに杭の打込みまたは引抜き開始の指示がないまま所定の時間が経過した場合、発動機の回転数を省燃料回転数へと低下させる(アイドリング制御する)振動杭打抜機を開示する。
特許文献2は、更に、把持装置用ポンプの送り側にアキュムレータが設けられており、杭把持装置が杭を把持しておりかつ発動機が規定回転数で回転しているときに杭の打込みまたは引抜き開始の指示がないまま所定の時間が経過した場合、発動機を停止状態とし(アイドリングストップ制御し)、アキュムレータから杭把持装置にオイルを供給して杭把持装置の圧力低下を防ぐ振動杭打抜機を開示する。
【0006】
また、特許文献3は、補助の電気モータと補助の把持装置用油圧ポンプとを備え、杭等の打込みまたは引き抜きをしていないとき、発動機を停止し(アイドリングストップ制御し)、補助の電気モータと補助の把持装置用油圧ポンプにより杭把持装置にオイルを圧送する振動杭打抜機を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−201971号公報
【特許文献2】特開2014−55476号公報
【特許文献3】特開2012−162905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3に記載の振動杭打抜機では、杭等の打込みまたは引き抜きをしていないときに杭把持装置に杭を把持させるために、補助の電気モータと補助の把持装置用油圧ポンプが必要である。
また、特許文献2に記載の振動杭打抜機では、発動機の停止時に杭把持装置にオイルを供給するためにアキュムレータを動作させることが必要である。
【0009】
本発明の目的は、補助の電気モータと補助の把持装置用油圧ポンプが無くても、またアキュムレータを動作させなくてもアイドリングストップ制御することができる振動杭打抜機および杭の打込み・引抜き工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の振動杭打抜機は、
油圧モータである主モータを含み、当該主モータによって駆動される起振機と、
杭を把持する杭把持装置と、
オイルタンクと、
前記主モータに前記オイルタンクのオイルを圧送する主ポンプと、
前記杭把持装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する把持装置用ポンプと、
前記主ポンプを駆動する発動機と、
前記把持装置用ポンプを駆動する第1の小型動力源と、
を備え、
前記杭把持装置が把持対象物を把持しており、かつ当該把持対象物の打込みおよび引き抜きをしていないとき、前記第1の小型動力源により前記把持装置用ポンプを駆動し、かつ前記発動機を停止し、
前記杭把持装置が把持対象物を把持しており、かつ当該把持対象物の打込みまたは引き抜きをしているとき、前記第1の小型動力源により前記把持装置用ポンプを駆動し、かつ前記発動機により前記主ポンプを駆動する、
ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の振動杭打抜機は、
油圧モータである主モータと、予冷または暖機および潤滑を行う強制潤滑装置と、負荷に応じて振動力を変化させる変換装置とを含み、前記主モータによって駆動される起振機と、
杭を把持する杭把持装置と、
オイルタンクと、
前記主モータに前記オイルタンクのオイルを圧送する主ポンプと、
前記杭把持装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する把持装置用ポンプと、
前記強制潤滑装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する強制潤滑装置用ポンプと、
前記変換装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する変換装置用ポンプと、
前記主ポンプと、前記強制潤滑装置用ポンプと、前記変換装置用ポンプとを駆動する発動機と、
前記把持装置用ポンプを駆動する第1の小型動力源と、
を備え、
前記杭把持装置が把持対象物を把持しており、かつ当該把持対象物の打込みおよび引き抜きをしていないとき、前記第1の小型動力源により前記把持装置用ポンプを駆動し、かつ前記発動機を停止し、
前記杭把持装置が把持対象物を把持しており、かつ当該把持対象物の打込みまたは引き抜きをしているとき、前記第1の小型動力源により前記把持装置用ポンプを駆動し、かつ前記発動機により前記主ポンプを駆動する、
ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の振動杭打抜機は、
油圧モータである主モータと、予冷または暖機および潤滑を行う強制潤滑装置と、負荷に応じて振動力を変化させる変換装置とを含み、前記主モータによって駆動される起振機と、
杭を把持する杭把持装置と、
オイルタンクと、
前記主モータに前記オイルタンクのオイルを圧送する主ポンプと、
前記杭把持装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する把持装置用ポンプと、
前記強制潤滑装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する強制潤滑装置用ポンプと、
前記変換装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する変換装置用ポンプと、
前記主ポンプを駆動する発動機と、
前記把持装置用ポンプを駆動する第1の小型動力源と、
前記強制潤滑装置用ポンプと、前記変換装置用ポンプとを駆動する第2の小型動力源と、
を備え、
前記杭把持装置が把持対象物を把持しており、かつ当該把持対象物の打込みおよび引き抜きをしていないとき、前記第1の小型動力源により前記把持装置用ポンプを駆動し、かつ前記発動機を停止し、
前記杭把持装置が把持対象物を把持しており、かつ当該把持対象物の打込みまたは引き抜きをしているとき、前記第1の小型動力源により前記把持装置用ポンプを駆動し、かつ前記発動機により前記主ポンプを駆動する、
ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の振動杭打抜機は、
油圧モータである主モータと、予冷または暖機および潤滑を行う強制潤滑装置と、負荷に応じて振動力を変化させる変換装置とを含み、前記主モータによって駆動される起振機と、
杭を把持する杭把持装置と、
オイルタンクと、
前記主モータに前記オイルタンクのオイルを圧送する主ポンプと、
前記杭把持装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する把持装置用ポンプと、
前記強制潤滑装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する強制潤滑装置用ポンプと、
前記変換装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する変換装置用ポンプと、
前記主ポンプを駆動する発動機と、
前記把持装置用ポンプを駆動する第1の小型動力源と、
前記強制潤滑装置用ポンプを駆動する第2の小型動力源と、
前記変換装置用ポンプを駆動する第3の小型動力源と、
を備え、
前記杭把持装置が把持対象物を把持しており、かつ当該把持対象物の打込みおよび引き抜きをしていないとき、前記第1の小型動力源により前記把持装置用ポンプを駆動し、かつ前記発動機を停止し、
前記杭把持装置が把持対象物を把持しており、かつ当該把持対象物の打込みまたは引き抜きをしているとき、前記第1の小型動力源により前記把持装置用ポンプを駆動し、かつ前記発動機により前記主ポンプを駆動する、
ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の振動杭打抜機は、
油圧モータである主モータと、予冷または暖機および潤滑を行う強制潤滑装置と、負荷に応じて振動力を変化させる変換装置とを含み、前記主モータによって駆動される起振機と、
杭を把持する杭把持装置と、
オイルタンクと、
前記主モータに前記オイルタンクのオイルを圧送する主ポンプと、
前記杭把持装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する把持装置用ポンプと、
前記強制潤滑装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する強制潤滑装置用ポンプと、
前記変換装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する変換装置用ポンプと、
前記主ポンプを駆動する発動機と、
前記把持装置用ポンプと、強制潤滑装置用ポンプと、前記変換装置用ポンプとを駆動する第1の小型動力源と、
を備え、
前記杭把持装置が把持対象物を把持しており、かつ当該把持対象物の打込みおよび引き抜きをしていないとき、前記第1の小型動力源により前記把持装置用ポンプを駆動し、かつ前記発動機を停止し、
前記杭把持装置が把持対象物を把持しており、かつ当該把持対象物の打込みまたは引き抜きをしているとき、前記第1の小型動力源により前記把持装置用ポンプを駆動し、かつ前記発動機により前記主ポンプを駆動する、
ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の杭の打込み・引抜き工法は、
油圧モータである主モータを含み、当該主モータによって駆動される起振機と、
杭を把持する杭把持装置と、
オイルタンクと、
前記主モータに前記オイルタンクのオイルを圧送する主ポンプと、
前記杭把持装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する把持装置用ポンプと、
前記主ポンプを駆動する発動機と、
前記把持装置用ポンプを駆動する第1の小型動力源と、
を有する振動杭打抜機を用いる杭の打込み・引抜き工法であって、
前記第1の小型動力源を起動するステップと、
前記杭把持装置が把持対象物を把持するステップと、
前記発動機を起動するステップと、
前記把持対象物の打込みまたは引き抜きを行うステップと、
前記杭把持装置が前記把持対象物を把持しており、かつ前記把持対象物の打込みおよび引き抜きをしていないときに、前記発動機を停止するステップと、
を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の杭の打込み・引抜き工法は、
油圧モータである主モータと、予冷または暖機および潤滑を行う強制潤滑装置と、負荷に応じて振動力を変化させる変換装置とを含み、前記主モータによって駆動される起振機と、
杭を把持する杭把持装置と、
オイルタンクと、
前記主モータに前記オイルタンクのオイルを圧送する主ポンプと、
前記杭把持装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する把持装置用ポンプと、
前記強制潤滑装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する強制潤滑装置用ポンプと、
前記変換装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する変換装置用ポンプと、
前記主ポンプを駆動する発動機と、
前記把持装置用ポンプを駆動する第1の小型動力源と、
前記強制潤滑装置用ポンプと、前記変換装置用ポンプとを駆動する第2の小型動力源と、
を有する振動杭打抜機を用いる杭の打込み・引抜き工法であって、
前記第1の小型動力源を起動するステップと、
前記第2の小型動力源を起動するステップと、
前記強制潤滑装置が前記起振機の予冷または暖機および潤滑を行うステップと、
前記杭把持装置が把持対象物を把持するステップと、
前記発動機を起動するステップと、
前記把持対象物の打込みまたは引き抜きを行うステップと、
前記杭把持装置が前記把持対象物を把持しており、かつ前記把持対象物の打込みおよび引き抜きをしていないときに、前記発動機を停止するステップと、
を備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の杭の打込み・引抜き工法は、
油圧モータである主モータと、予冷または暖機および潤滑を行う強制潤滑装置と、負荷に応じて振動力を変化させる変換装置とを含み、前記主モータによって駆動される起振機と、
杭を把持する杭把持装置と、
オイルタンクと、
前記主モータに前記オイルタンクのオイルを圧送する主ポンプと、
前記杭把持装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する把持装置用ポンプと、
前記強制潤滑装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する強制潤滑装置用ポンプと、
前記変換装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する変換装置用ポンプと、
前記主ポンプを駆動する発動機と、
前記把持装置用ポンプを駆動する第1の小型動力源と、
前記強制潤滑装置用ポンプを駆動する第2の小型動力源と、
前記変換装置用ポンプを駆動する第3の小型動力源と、
を有する振動杭打抜機を用いる杭の打込み・引抜き工法であって、
前記第1の小型動力源を起動するステップと、
前記第2の小型動力源を起動するステップと、
前記強制潤滑装置が前記起振機の予冷または暖機および潤滑を行うステップと、
前記杭把持装置が把持対象物を把持するステップと、
前記発動機を起動するステップと、
前記把持対象物の打込みまたは引き抜きを行うステップと、
前記杭把持装置が前記把持対象物を把持しており、かつ前記把持対象物の打込みおよび引き抜きをしていないときに、前記発動機を停止するステップと、
を備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の杭の打込み・引抜き工法は、
油圧モータである主モータと、予冷または暖機および潤滑を行う強制潤滑装置と、負荷に応じて振動力を変化させる変換装置とを含み、前記主モータによって駆動される起振機と、
杭を把持する杭把持装置と、
オイルタンクと、
前記主モータに前記オイルタンクのオイルを圧送する主ポンプと、
前記杭把持装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する把持装置用ポンプと、
前記強制潤滑装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する強制潤滑装置用ポンプと、
前記変換装置に前記オイルタンクのオイルを圧送する変換装置用ポンプと、
前記主ポンプを駆動する発動機と、
前記把持装置用ポンプと、強制潤滑装置用ポンプと、前記変換装置用ポンプとを駆動する第1の小型動力源と、
を有する振動杭打抜機を用いる杭の打込み・引抜き工法であって、
前記第1の小型動力源を起動するステップと、
前記強制潤滑装置が前記起振機の予冷または暖機および潤滑を行うステップと、
前記杭把持装置が把持対象物を把持するステップと、
前記発動機を起動するステップと、
前記把持対象物の打込みまたは引き抜きを行うステップと、
前記杭把持装置が前記把持対象物を把持しており、かつ前記把持対象物の打込みおよび引き抜きをしていないときに、前記発動機を停止するステップと、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、補助の電気モータと補助の把持装置用油圧ポンプが無くても、またアキュムレータを動作させなくてもアイドリングストップ制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態に係る振動杭打抜機の構成の一例を示す図である。
図2】振動杭打抜機において打込みまたは引抜きの作業を行う主要部の構成の一例を概略的に示す図である。
図3図1の振動杭打抜機の変形例の構成を示す図である。
図4図1の振動杭打抜機または図3の振動杭打抜機によって杭を打設する工程の一例を示す図である。
図5図1の振動杭打抜機または図3の振動杭打抜機によって杭を引き抜く工程の一例を示す図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る振動杭打抜機の構成の一例を示す図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係る振動杭打抜機の構成の一例を示す図である。
図8】本発明の第4の実施形態に係る振動杭打抜機の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る振動杭打抜機および杭の打込み・引抜き工法について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施形態を説明する全図において、共通の構成要素には同一の符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0022】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る振動杭打抜機100Aの構成の一例を示す。
振動杭打抜機100Aは、起振機110と、杭把持装置120と、パワーユニット125Aとを備える。パワーユニット125Aは、発動機130と、オルタネータ(交流発電機)140と、24Vのバッテリ141と、直流モータ150と、制御部160と、主モータ用の主ポンプP1と、強制潤滑装置用ポンプP2と、変換装置用ポンプP3と、把持装置用ポンプP4と、オイルタンクTとを有する。
図2に示すように、杭把持装置120は起振機110の下に設置される。杭把持装置120が杭や矢板を把持して杭把持装置120の圧力が規定圧力に達したことをセンサ(図示なし)が検知し、センサがそれを制御部160に伝達すると、制御部160は起振機110を振動可能にする。杭把持装置120は、鋼管杭や鋼矢板等を把持する。起振機110は、緩衝装置(ショックアブソーバ)114を介して、例えばクレーンの主ワイヤロープで吊り下げられる。
なお、杭や矢板は本発明の把持対象物の一例である。以下では、杭の打込み・引抜きを例として本発明を説明する。
【0023】
起振機110は、主モータ111と、強制潤滑装置112と、変換装置113とを有する。
起振機110は、例えば、2つの偏心重錘(図示なし)を備える。杭把持装置120が規定圧力で杭を把持しているときに、主モータ111が回転して偏心重錘を駆動することにより、起振機110は振動する。その振動力が杭把持装置120を介して杭に伝達され、振動杭打抜機100Aは杭を対象地盤に打ち込んだり、対象地盤から引き抜いたりすることができる。
強制潤滑装置112は、起振機110内の回転部分(軸受、歯車、偏心重錘等)の予冷または暖機および潤滑を行う。
変換装置113は、2つの偏心重錘の相対角度を制御し、負荷に応じて振動力を変化させる。
【0024】
油圧回路は、オイルタンクTのオイルを適宜のポンプにより目的とする油圧機器に圧送し、再びオイルタンクTに戻すように構成されている。主モータ111に対しては、主モータ用の主ポンプP1によってオイルが圧送される。強制潤滑装置112に対しては、強制潤滑装置用ポンプP2によってオイルが圧送される。変換装置113に対しては、変換装置用ポンプP3によってオイルが圧送される。杭把持装置120に対しては、把持装置用ポンプP4によってオイルが圧送される。
【0025】
発動機130は、主モータ用の主ポンプP1と、強制潤滑装置用ポンプP2と、変換装置用ポンプP3とを駆動する。発動機130は、例えばディーゼルエンジンである。
オルタネータ140は、交流発電機と整流回路を含み、交流発電機の発生する3相交流を整流回路で整流して直流に変換する。オルタネータ140から出力される直流電圧はバッテリ141に供給される。オルタネータ140は、通常バッテリ141の充電用としてパワーユニット125Aに常備されており、発動機130によって駆動される。ただし、パワーユニット125Aはオルタネータ140を備えておらず、振動杭打抜作業に欠かせないクレーン車等の作業車両に搭載のオルタネータによってバッテリ141が充電される構成であってもよい。
バッテリ141は、例えば12Vのバッテリが直列に接続されており、24Vの直流電圧を出力する。バッテリ141は、直流モータ150と制御部160に電力を供給する。なお、クレーン車等の作業車両に搭載のバッテリが十分な容量を持っているならば、バッテリ141としてそれを使用することも可能である。
直流モータ150は、把持装置用ポンプP4を駆動する。
制御部160は、振動杭打抜機100A全体を制御する。
なお、バッテリ141と直流モータ150は本発明における把持装置用ポンプを駆動する第1の小型動力源の一例である。
【0026】
図3は、図1の振動杭打抜機100Aの変形例の構成の一例を示す。
図3に示す振動杭打抜機100Bは、パワーユニット125Bが直流モータ150ではなく小型発動機170を備える点が図1の振動杭打抜機100Aと異なる。それ以外は、振動杭打抜機100Bは振動杭打抜機100Aと同一の構成である。
なお、小型発動機170は例えばディーゼルエンジンである。振動杭打抜機100Bでは、バッテリ141は、制御部160に電力を供給するのみであるので小容量のものでよい。
小型発動機170は、本発明における把持装置用ポンプを駆動する第1の小型動力源の他の例である。
【0027】
図4は、図1の振動杭打抜機100Aまたは図3の振動杭打抜機100Bによって杭を打設する工程の一例を示す。
振動杭打抜機100Aまたは振動杭打抜機100B(以下、振動杭打抜機100という。)の制御部160は、直流モータ150(または小型発動機170)を起動し、直流モータ150(または小型発動機170)で把持装置用ポンプP4を駆動する(S101)。このとき、把持装置用ポンプP4は低圧で運転される。
制御部160は、発動機130を起動してアイドリングさせ、発動機130で主ポンプP1を駆動する(S102)。このとき、主ポンプP1は低圧で運転される。
制御部160は、発動機130で強制潤滑装置用ポンプP2と変換装置用ポンプP3を駆動し、強制潤滑装置112と変換装置113の圧力を設定規定圧にする(S103)。このとき、強制潤滑装置112は、起振機110の回転部分(軸受、歯車、偏心重錘等)を潤滑・冷却する。
【0028】
作業者は、クレーンの補助ワイヤロープを用いて杭溜りで杭を釣り込んで打設位置に移動させる。そして、作業者は、打設位置で吊り下げられた杭を建て込む(S104)。
【0029】
制御部160は、杭把持装置120により杭を把持する(S105)。制御部160は、杭把持装置120が杭を把持したことを確認した後、杭把持装置120の圧力を設定規定圧にする(S106)。なお、振動杭打抜機100は図示しないセンサを備えている。振動杭打抜機100の起動から終了までの間、センサは、常時杭把持装置120の油圧を測定し、測定値を制御部160に送る。
【0030】
作業者は、杭を把持した状態で再度吊直し、直角2方向からトランシット等で杭の鉛直度を確認する(S107)。
杭把持装置120が杭を把持し、杭把持装置120の圧力が設定規定圧になった時点で、制御部160は発動機130を設定規定回転数とし、主モータ111が最大規定圧に設定される(S108)。このとき、制御部160は、例えば、運転準備灯を点灯させる。主モータ111は、起動時にハンチング現象により瞬間的に設定最大規定圧まで上昇するが、短時間(数秒間)でモータ圧力は整定し起動時の負荷に応じた圧力となる。主モータ111は、杭の打込み時又は引抜き時には、設定最大規定圧内で負荷に応じた圧力となる。
【0031】
制御部160は、起振機110を起動する(S109)。そして、制御部160は、杭を打設する(S110)。このとき、制御部160は、例えば特許文献1に記載の方法を用いて起振機110の振動力を変化させる。振動力の変化に応じて、発動機130の燃料消費率が変動する。
作業者は、杭を打設し終えた後に、杭天端揃え調整を行う(S111)。
【0032】
そして、杭天端揃え調整後に、制御部160は、主ポンプP1を停止させて起振機110を停止させ(S112)、次に発動機130を停止する(S113)。制御部160は、同時に強制潤滑装置用ポンプP2と変換装置用ポンプP3を停止する(S113)。
次に、制御部160は、杭把持装置120の杭把持用チャックを開き、中立にして振動杭打抜機100を杭から取り外す(S114)。
次に打設する杭が有る場合(S115:Yes)、制御部160は、ステップS102に戻り、次の杭を打設する(S102〜S114)。
【0033】
一方、作業が終了し、次に打設する杭は無い場合(S115:No)、制御部160は、主ポンプP1と強制潤滑装置用ポンプP2と変換装置用ポンプP3と発動機130、および把持装置用ポンプP4と直流モータ150(または小型発動機170)を停止する(S116)。
【0034】
図5は、図1の振動杭打抜機100Aまたは図3の振動杭打抜機100Bによって杭を引き抜く工程の一例を示す。
制御部160は、直流モータ150(または小型発動機170)を起動し、直流モータ150(または小型発動機170)で把持装置用ポンプP4を駆動する(S201)。このとき、把持装置用ポンプP4は低圧で運転される。
制御部160は、発動機130を起動してアイドリングさせ、発動機130で主ポンプP1を駆動する(S202)。このとき、主ポンプP1は低圧で運転される。
制御部160は、発動機130で強制潤滑装置用ポンプP2と変換装置用ポンプP3を駆動し、強制潤滑装置112と変換装置113の圧力を設定規定圧にする(S203)。このとき、強制潤滑装置112は、起振機110の回転部分(軸受、歯車、偏心重錘等)を潤滑・冷却する。
【0035】
作業者は、杭を引き抜くために振動杭打抜機100を引抜き位置に移動させる(S204)。
制御部160は、杭把持装置120により杭を把持する(S205)。制御部160は、杭把持装置120が杭を把持したことを確認した後、杭把持装置120の圧力を設定規定圧にする(S206)。なお、振動杭打抜機100の起動から終了までの間、センサは、常時杭把持装置120の油圧を測定し、測定値を制御部160に送る。
杭把持装置120が杭を把持し、杭把持装置120の圧力が設定規定圧になった時点で、制御部160は発動機130を設定規定回転数とし、主モータ111が最大規定圧に設定される(S207)。このとき、制御部160は、例えば、運転準備灯を点灯させる。
【0036】
制御部160は、起振機110を起動する(S208)。そして、制御部160は、杭を引き抜く(S209)。このとき、制御部160は、例えば特許文献1に記載の方法を用いて起振機110の振動力を変化させる。振動力の変化に応じて、発動機130の燃料消費率が変動する。
【0037】
制御部160は、主ポンプP1を停止させて起振機110を停止させ(S210)、次に発動機130を停止する(S211)。制御部160は、同時に強制潤滑装置用ポンプP2と変換装置用ポンプP3を停止する(S211)。
そして、作業者は、杭を仮置きする(S212)。制御部160は、杭把持装置120の杭把持用チャックを開き、中立にして振動杭打抜機100から杭を取り外す(S213)。
次に引き抜く杭が有る場合(S214:Yes)、制御部160は、ステップS202に戻り、次の杭を引き抜く(S202〜S213)。
【0038】
一方、作業が終了し、次に引き抜く杭は無い場合(S214:No)、制御部160は、主ポンプP1と強制潤滑装置用ポンプP2と変換装置用ポンプP3と発動機130、および把持装置用ポンプP4と直流モータ150(または小型発動機170)を停止する(S215)。
【0039】
制御部160は、杭把持装置が杭を把持しており、かつ発動機が規定回転数で回転しているときに杭の打込みまたは引抜き開始の指示がないまま所定の時間が経過した場合、発動機130を停止する。たとえば、杭の打込みまたは引抜きを終えてから次の杭の打込みまたは引抜きを開始するまでの間、所定の作業(例えば、杭の穴開けや溶断等)が行われる。制御部160は、図4のステップS113とS114および図5のステップS211〜S213に示したように、この期間に発動機130を停止する。
このように、制御部160は、杭把持装置120が杭を把持しており、かつ杭の打込みまたは引き抜きをしているとき、直流モータ150により把持装置用ポンプP4を駆動し、かつ発動機130により主ポンプP1を駆動する。そして、制御部160は、杭把持装置120が杭を把持しており、かつ杭の打込みおよび引き抜きをしていないとき、直流モータ150により把持装置用ポンプP4を駆動し、かつ発動機130を停止する。すなわち、振動杭打抜機100は、杭把持装置120が杭等を把持しており、かつ杭等の打込みおよび引き抜きをしていないときに、発動機130を停止(アイドリングストップ制御)することができる。このため、発動機130の燃料消費量は大幅に低減される。
【0040】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る振動杭打抜機200の構成の一例を示す。
振動杭打抜機200と第1の実施形態に係る振動杭打抜機100とは、図2に示す主要部の構成は同一である。パワーユニット225が直流モータ150に加えて直流モータ151を有しており、直流モータ151が強制潤滑装置用ポンプP2と変換装置用ポンプP3を駆動する点、およびパワーユニット225の発動機130が主ポンプP1のみを駆動する点が第1の実施形態に係るパワーユニット125と異なる。それ以外は、パワーユニット225はパワーユニット125と同一の構成である。
制御部160は、杭把持装置120が杭を把持しており、かつ杭の打込みまたは引き抜きをしているとき、直流モータ150により把持装置用ポンプP4を駆動し、かつ発動機130により主ポンプP1を駆動する。そして、制御部160は、杭把持装置120が杭を把持しており、かつ杭の打込みおよび引き抜きをしていないとき、直流モータ150により把持装置用ポンプP4を駆動し、かつ発動機130を停止する。すなわち、振動杭打抜機100と同様に、振動杭打抜機200は、杭把持装置120が杭等を把持しており、かつ杭等の打込みおよび引き抜きをしていないときに、発動機130を停止(アイドリングストップ制御)することができる。
また、振動杭打抜機200は、発動機130と直流モータ150が停止しているときでも、直流モータ151を動作させることができる。直流モータ151は、強制潤滑装置用ポンプP2と変換装置用ポンプP3を駆動する。このため、振動杭打抜機200は、発動機130および/または直流モータ150が停止しているときでも、直流モータ151を起動し、強制潤滑装置112を動作させ、起振機110を予冷または暖機および潤滑することができる。従って、例えば、図4のステップS101とS102の間、および図5のステップS201とS202の間に、直流モータ151を起動して強制潤滑装置用ポンプP2を駆動し、強制潤滑装置112を動作させるステップを追加すること等により、発動機130が停止しているときでも、起振機110を予冷または暖機および潤滑することができる。
なお、バッテリ141と直流モータ150は本発明における把持装置用ポンプを駆動する第1の小型動力源の一例であり、バッテリ141と直流モータ151は本発明における強制潤滑装置用ポンプと変換装置用ポンプとを駆動する第2の小型動力源の一例である。
振動杭打抜機200も、振動杭打抜機100と同様に、直流モータ150と直流モータ151の代わりに、それぞれ小型発動機を設けることができる。
【0041】
図7は、本発明の第3の実施形態に係る振動杭打抜機300の構成の一例を示す。
振動杭打抜機300と第1の実施形態に係る振動杭打抜機100とは、図2に示す主要部の構成は同一である。パワーユニット325が直流モータ150に加えて直流モータ152と直流モータ153を有しており、直流モータ152が強制潤滑装置用ポンプP2を駆動し、直流モータ153が変換装置用ポンプP3を駆動する点、およびパワーユニット325の発動機130が主ポンプP1のみを駆動する点が第1の実施形態に係るパワーユニット125と異なる。それ以外は、パワーユニット325はパワーユニット125と同一の構成である。
すなわち、パワーユニット325では、発動機130が主ポンプP1を駆動し、直流モータ152が強制潤滑装置用ポンプP2を駆動し、直流モータ153が変換装置用ポンプP3を駆動し、直流モータ150が把持装置用ポンプP4を駆動する。
制御部160は、杭把持装置120が杭を把持しており、かつ杭の打込みまたは引き抜きをしているとき、直流モータ150により把持装置用ポンプP4を駆動し、かつ発動機130により主ポンプP1を駆動する。そして、制御部160は、杭把持装置120が杭を把持しており、かつ杭の打込みおよび引き抜きをしていないとき、直流モータ150により把持装置用ポンプP4を駆動し、かつ発動機130を停止する。すなわち、振動杭打抜機100と同様に、振動杭打抜機300は、杭把持装置120が杭等を把持しており、かつ杭等の打込みおよび引き抜きをしていないときに、発動機130を停止(アイドリングストップ制御)することができる。
また、振動杭打抜機300は、発動機130と直流モータ150が停止しているときでも、直流モータ152を動作させることができる。直流モータ152は、強制潤滑装置用ポンプP2を駆動する。従って、例えば、図4のステップS101とS102の間、および図5のステップS201とS202の間に、直流モータ152を起動して強制潤滑装置用ポンプP2を駆動し、強制潤滑装置112を動作させるステップを追加すること等により、発動機130が停止しているときでも、起振機110を予冷または暖機および潤滑することができる。
なお、バッテリ141と直流モータ150は本発明における把持装置用ポンプを駆動する第1の小型動力源の一例であり、バッテリ141と直流モータ152は本発明における強制潤滑装置用ポンプを駆動する第2の小型動力源の一例であり、バッテリ141と直流モータ153は本発明における変換装置用ポンプを駆動する第3の小型動力源の一例である。
振動杭打抜機200も、振動杭打抜機100と同様に、直流モータ150と直流モータ152と直流モータ153の代わりに、それぞれ小型発動機を設けることができる。
【0042】
図8は、本発明の第4の実施形態に係る振動杭打抜機400の構成の一例を示す。
振動杭打抜機400と第1の実施形態に係る振動杭打抜機100とは、図2に示す主要部の構成は同一である。パワーユニット425が直流モータ150や直流モータ151に比べて大型の直流モータ154を有しており、直流モータ154が強制潤滑装置用ポンプP2と変換装置用ポンプP3と把持装置用ポンプP4を駆動する点、およびパワーユニット425の発動機130が主ポンプP1のみを駆動する点が第1の実施形態に係るパワーユニット125と異なる。それ以外は、パワーユニット425はパワーユニット125と同一の構成である。
制御部160は、杭把持装置120が杭を把持しており、かつ杭の打込みまたは引き抜きをしているとき、直流モータ154により把持装置用ポンプP4を駆動し、かつ発動機130により主ポンプP1を駆動する。そして、制御部160は、杭把持装置120が杭を把持しており、かつ杭の打込みおよび引き抜きをしていないとき、直流モータ154により把持装置用ポンプP4を駆動し、かつ発動機130を停止する。すなわち、振動杭打抜機100と同様に、振動杭打抜機400は、杭把持装置120が杭等を把持しており、かつ杭等の打込みおよび引き抜きをしていないときに、発動機130を停止(アイドリングストップ制御)することができる。
また、振動杭打抜機400は、発動機130が停止しているときでも、直流モータ154を動作させることができる。直流モータ154は、強制潤滑装置用ポンプP2を駆動する。従って、例えば、図4のステップS101とS102の間、および図5のステップS201とS202の間に、強制潤滑装置用ポンプP2を駆動し、強制潤滑装置112を動作させるステップを追加すること等により、発動機130が停止しているときでも、起振機110を予冷または暖機および潤滑することができる。
なお、バッテリ141と直流モータ154は本発明における把持装置用ポンプと強制潤滑装置用ポンプと前記変換装置用ポンプとを駆動する第1の小型動力源の一例である。
振動杭打抜機400も、振動杭打抜機100と同様に、直流モータ154の代わりに、小型発動機を設けることができる。
【0043】
上述した実施形態では、杭の打込み・引抜きについて説明したが、杭は一例であり、矢板等の打込み・引抜きについても本発明を適用できることはもちろんである。
【0044】
また、上述した実施形態では把持装置用ポンプP4の送り側にアキュムレータを設けることは必須ではない。ただし、把持装置用ポンプP4の送り側にアキュムレータを設置することが望ましい。例えば、把持装置用ポンプP4の故障、シリンダや弁等からのオイル漏れ等によって杭把持装置120の把持圧力が降圧する場合が有り得る。このような場合に、把持圧力の低下をセンサが検知して制御部160に通知すると、制御部160がアキュムレータから杭把持装置120にオイルを圧送することにより、杭把持装置120の規定圧力を保持することができる。
【0045】
以上説明したように、本発明によれば、補助の電気モータと補助の把持装置用油圧ポンプが無くても、またアキュムレータを動作させなくてもアイドリングストップ制御することができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、設計上の都合やその他の要因によって必要となる様々な修正や組み合わせは、請求項に記載されている発明や発明の実施形態に記載されている具体例に対応する発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
100A、100B…振動杭打抜機、110…起振機、111…主モータ、112…強制潤滑装置、113…変換装置、114…緩衝装置(ショックアブソーバ)、120…杭把持装置、125A、125B…パワーユニット、130…発動機、140…オルタネータ(交流発電機)、141…バッテリ、150〜154…直流モータ、160…制御部、170…小型発動機、P1…主ポンプ、P2…強制潤滑装置用ポンプ、P3…変換装置用ポンプ、P4…把持装置用ポンプ、T…オイルタンク、200…振動杭打抜機、225…パワーユニット、300…振動杭打抜機、325…パワーユニット、400…振動杭打抜機、425…パワーユニット

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8