(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
空調用空気の流れ方向の下流端に吹出口を有する通風路が形成され、同吹出口の周りに、前記流れ方向に対し傾斜した傾斜面を有する傾斜壁部が形成されたリテーナを備え、
前記吹出口は、前記傾斜面において互いに離間した状態で傾斜方向に対し直交する方向へ延び、かつ同傾斜方向に沿って延びる一対の短辺部よりも長い一対の長辺部を備え、
前記吹出口から吹き出す空調用空気の前記短辺部に対しなす角度を変更する部材は、それぞれ前記長辺部に沿って延びる第1フィン、第2フィン及び第3フィンの3つのフィンからなり、
前記第1フィンは、前記吹出口における下流側の長辺部よりも上流に配置され、かつ自身の下流端のフィン軸により前記リテーナに支持され、前記第2フィンは、前記第1フィンよりも前記流れ方向に沿った上流に配置され、かつ自身の上流端のフィン軸により前記リテーナに支持され、前記第3フィンは、前記吹出口における上流側の長辺部よりも上流に配置され、かつ自身の下流端のフィン軸により前記リテーナに支持され、
前記リテーナにおける前記第1フィン及び前記第2フィンが配置された側の壁部には、前記通風路から遠ざかる側へ膨出する膨出壁部が形成され、
前記膨出壁部は、前記第1フィン及び前記第2フィンの傾動を許容する傾動空間を構成し、
前記吹出口の外部の操作部材と前記3つのフィンとの間には、同操作部材の操作に応じ、前記第1フィン及び前記第3フィンを同一方向へ傾動させ、前記第2フィンを第1及び第3フィンとは反対方向へ傾動させる伝達機構が設けられ、
前記第2フィンが前記第1フィンとは反対方向に傾動されて前記第1フィンの下流端及び前記第2フィンの上流端が前記膨出壁部側に移動したとき、前記第1フィンの下流端は前記第2フィンの上流端とともに前記傾動空間内に収容される空調用薄型レジスタ。
前記第3フィンは、前記流れ方向における前記第1フィンの下流端と、前記第2フィンの上流端との中間部分に配置されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の空調用薄型レジスタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記空調用薄型レジスタでは、一般的な非薄型の空調用レジスタと同様に、通風路に配置された部品が通風抵抗となり、圧力損失の増大を招く。この通風抵抗の指標として実開口面積がある。実開口面積は、通風路の吹出口において通風方向に直交する面を投影面とした場合、その投影面において上記各種部品が投影されていない箇所の面積である。実開口面積が小さくなるに従い通風抵抗が大きくなって、圧力損失が増大する。従って、こうした圧力損失の増大を抑えるうえでは、投影面において、上記各種部品が投影される箇所の面積を小さくすることが重要である。
【0008】
一方で、車両においては、意匠性向上等の観点から、インストルメントパネルの上下方向の寸法が小さくされる傾向にあり、それに伴い、空調用薄型レジスタに対してもさらなる薄型化、すなわち、上下方向の寸法をさらに小さくすることが求められる。
【0009】
ところが、空調用薄型レジスタの薄型化に伴い、吹出口の上下方向の寸法も小さくなる。そのため、通風路の中央に位置するメインフィンや操作部材が、吹出口の実開口面積に及ぼす影響が大きくなる。通風抵抗が大きくなって圧力損失が増大し、空調用空気が吹出口から吹き出す際に発生する風切り音等の騒音が大きくなる。
【0010】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、圧力損失の低減を図ることができ、さらなる薄型化に対処することのできる空調用薄型レジスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する空調用薄型レジスタは、空調用空気の流れ方向の下流端に吹出口を有する通風路が形成され、同吹出口の周りに、前記流れ方向に対し傾斜した傾斜面を有する傾斜壁部が形成されたリテーナを備え、前記吹出口は、前記傾斜面において互いに離間した状態で傾斜方向に対し直交する方向へ延び、かつ同傾斜方向に沿って延びる一対の短辺部よりも長い一対の長辺部を備え、前記吹出口から吹き出す空調用空気の前記短辺部に対しなす角度を変更する部材は、それぞれ前記長辺部に沿って延びる第1フィン、第2フィン及び第3フィンの3つのフィンからなり、前記第1フィンは、前記吹出口における下流側の長辺部よりも上流に配置され、かつ自身の下流端のフィン軸により前記リテーナに支持され、前記第2フィンは、前記第1フィンよりも上流に配置され、かつ自身の上流端のフィン軸により前記リテーナに支持され、前記第3フィンは、前記吹出口における上流側の長辺部よりも上流に配置され、かつ自身の下流端のフィン軸により前記リテーナに支持され、前記吹出口の外部の操作部材と前記3つのフィンとの間には、同操作部材の操作に応じ、前記第1フィン及び前記第3フィンを同一方向へ傾動させ、前記第2フィンを第1及び第3フィンとは反対方向へ傾動させる伝達機構が設けられている。
【0012】
上記の構成によれば、操作部材が操作されると、その操作部材の動きが伝達機構によって3つのフィンのそれぞれに伝達される。この伝達により、第1フィン及び第3フィンが、それらの下流端に設けられたフィン軸を支点として同一方向へ傾動される。また、上記伝達により第2フィンが、その上流端に設けられたフィン軸を支点として、第1及び第3フィンとは反対方向へ傾動される。
【0013】
空調用空気は、リテーナ内の通風路を流れる過程で、上記のように傾動された第2フィンと第3フィンとの間の流路や、第1フィンと第3フィンとの間の流路を流れることで、流れる向きを変えられる。向きを変えられた空調用空気は、その後に、通風路の下流端の吹出口から吹き出される。その結果、吹出口から吹き出す空調用空気の短辺部に対しなす角度が変更される。
【0014】
特に、上記角度が小さくなる側へ変更されると、吹出口から吹き出された空調用空気は、コアンダ効果により、傾斜した傾斜壁部の傾斜面に沿って流れる。そのため、傾斜面によるコアンダ効果がなく、上記3つのフィンのみによって、上記角度が変えられた場合よりも、空調用空気の吹き出し方向がより大きく変更され、指向性が向上する。
【0015】
このように、吹出口からの空調用空気の吹き出し方向が変更されるため、吹出口の両長辺部間に同長辺部に沿う方向へ延び、かつ空調用空気の流れ方向(吹出口から吹き出す空調用空気の短辺部に対しなす角度)を変更するためのフィンを別途設けなくてすむ。しかも、操作部材は吹出口の外部に設けられている。
【0016】
そのため、通風路に配置された部品が吹出口の実開口面積に及ぼす影響は、吹出口の両長辺部間に、同長辺部に沿う方向へ延びるフィンが設けられた場合や、そのフィンに操作部材が設けられた場合よりも小さくなる。
【0017】
なお、第1フィン及び第2フィンは、吹出口における下流側の長辺部の上流に配置されている。また、第3フィンは、吹出口における上流側の長辺部の上流に配置されている。そのため、これらの3つのフィンが吹出口の実開口面積に及ぼす影響は、吹出口の両長辺部間にフィンが設けられた場合よりも小さい。
【0018】
従って、通風路に配置された部品による通風抵抗は、吹出口の両長辺部間にフィンが設けられ、かつそのフィンに操作部材が設けられた場合よりも小さくなる。その結果、圧力損失が低減される。
【0019】
上記空調用薄型レジスタにおいて、前記操作部材は、前記長辺部に沿って延びる支軸により、前記リテーナに対し傾動可能に支持されており、前記操作部材が、通風路に導入される空調用空気の流れ方向に沿う姿勢になるように傾動されたとき、前記第1フィン、前記第2フィン及び前記第3フィンは、前記伝達機構により、前記流れ方向に沿う姿勢になるように傾動されることが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、操作部材が、通風路に導入される空調用空気の流れ方向、すなわち、3つのフィンによって変更される前の空調用空気の流れ方向、に沿う姿勢になるように傾動されると、3つのフィンは伝達機構により、上記流れ方向に沿う姿勢になるように傾動される。3つのフィン間の流路は直線状となる。そのため、空調用空気は、3つのフィンに沿って流れることで、吹出口から下流側へ真っ直ぐ吹き出される。
【0021】
上記空調用薄型レジスタにおいて、前記操作部材は、前記長辺部に沿って延びる支軸により、前記リテーナに対し傾動可能に支持されており、前記操作部材が、前記傾斜面に沿って傾斜する姿勢となるように傾動されたとき、前記第1フィン及び前記第3フィンは、前記伝達機構により、前記傾斜面に沿って傾斜する姿勢となるように傾動され、前記第2フィンは、前記伝達機構により、同第2フィンの下流端が前記第3フィンを指向する姿勢になるように傾動されることが好ましい。
【0022】
上記の構成によれば、操作部材が、傾斜壁部の傾斜面に沿って傾斜する姿勢となるように傾動されると、第1フィン及び第3フィンは、伝達機構により、傾斜面に沿って傾斜する姿勢となるように傾動される。また、第1フィンの上流に位置する第2フィンは、伝達機構により、同第2フィンの下流端が第3フィンを指向する姿勢になるように傾動される。そのため、空調用空気は、第2フィンに沿って流れることで、第3フィンに向かう方向へ向きを変えられる。空調用空気は、その後に第3フィン及び第1フィンに沿って流れることで、傾斜面に沿う方向へ向きを変えられる。そして、空調用空気は、吹出口から傾斜面に沿う方向へ吹き出される。吹き出された空調用空気は、上述したコアンダ効果により、傾斜面に沿って流れる。
【0023】
上記空調用薄型レジスタにおいて、前記操作部材は、前記長辺部に沿って延びる支軸により、前記リテーナに対し傾動可能に支持されており、前記操作部材が、前記傾斜面に対し直交又は直交に近い状態で交差する姿勢となるように傾動されたとき、前記第1フィン及び前記第3フィンは、前記伝達機構により、前記傾斜面に対し直交又は直交に近い状態で交差する姿勢となるように傾動され、前記第2フィンは、前記伝達機構により、前記傾斜面に沿って傾斜する姿勢となるように傾動されることが好ましい。
【0024】
上記の構成によれば、操作部材が傾斜面に対し直交又は直交に近い状態で交差する姿勢となるように傾動されると、第1フィン及び第3フィンは、伝達機構により、傾斜面に対し直交又は直交に近い状態で交差する姿勢となるように傾動される。また、第2フィンは、伝達機構により、傾斜面に沿って傾斜する姿勢となるように傾動される。
【0025】
この際、第3フィンは、空調用空気が、第2フィンと第3フィンとの間を真っ直ぐ吹き抜けるのを妨げようとする。
従って、空調用空気は、第2フィンと第3フィンとの間を流れた後、第2フィンに沿って流れることで、傾斜面に沿って傾斜する方向へ向きを変えられる。その後、空調用空気は、第1フィンに沿って流れることで、傾斜面に対し直交する方向又は直交に近い状態で交差する方向へ向きを変えられる。そして、空調用空気は、吹出口から傾斜面に対し直交する方向又は直交に近い状態で交差する方向へ吹き出される。
【0026】
上記空調用薄型レジスタにおいて、前記第3フィンは、前記流れ方向における前記第1フィンの下流端と、前記第2フィンの上流端との中間部分に配置されていることが好ましい。
【0027】
上記の構成によれば、第3フィンが、空調用空気の流れ方向における第1フィンの下流端と、第2フィンの上流端との中間部分に位置する。そのため、第2フィンと第3フィンとの間に流路が好適に形成され、第3フィンと第1フィンとの間に流路が好適に形成される。このようにして、3つのフィン間に空調用空気の流路が好適に形成される。また、操作部材が操作されて3つのフィンがそれぞれ傾動された場合には、3つのフィン間に形成される流路の形状が好適に変更される。
【発明の効果】
【0028】
上記空調用薄型レジスタによれば、圧力損失の低減を図ることができ、さらなる薄型化に対処することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、車両用の空調用薄型レジスタに具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、車両の進行方向(前進方向)を前方とし、後進方向を後方とし、高さ方向を上下方向として説明する。また、車幅方向(左右方向)については、車両を後方から見た場合を基準として方向を規定する。
【0031】
車室内において、車両の前席(運転席及び助手席)の前方にはインストルメントパネルが設けられ、その左右方向(車幅方向)における中央部、側部等には空調用薄型レジスタが組込まれている。この空調用薄型レジスタの主な機能は、一般的な非薄型の空調用レジスタと同様、空調装置から送られてきて車室内に吹き出す空調用空気の向きを変更すること等である。
【0032】
ただし、上記空調用薄型レジスタは、一般的な非薄型の空調用レジスタよりも低い位置においてインストルメントパネルに組込まれている。例えば、車両の前席に、衝突試験用のダミーと同様の体格を有する乗員が着座しているものとした場合、本実施形態の空調用薄型レジスタは、その乗員のみぞおちと同程度の高さにおいてインストルメントパネルに組込まれている。
【0033】
図1〜
図4に示すように、空調用薄型レジスタは、リテーナ10、下流フィン群、上流フィン群、操作部材65、伝達機構80及び上流伝達機構85を備えている。次に、空調用薄型レジスタを構成する各部の構成について説明する。
【0034】
<リテーナ10>
リテーナ10は、空調装置の通風ダクト(図示略)と、インストルメントパネルに設けられた開口(図示略)とを繋ぐためのものであり、上流リテーナ11、下流リテーナ15及びベゼル20を備えている。このリテーナ10の内部空間は、空調用空気A1の流路(以下「通風路30」という)を構成している(
図6参照)。ここで、空調用空気A1の流れ方向に関し、空調装置に近い側を「上流」、「上流側」等といい、同空調装置から遠い側を「下流」、「下流側」等というものとする。
【0035】
図4(a),(b)及び
図6に示すように、上流リテーナ11は、リテーナ10の最上流部分を構成する部材である。上流リテーナ11は、上流端と下流端とが開放され、かつ左右方向(車幅方向)の寸法が上下方向の寸法よりも大きな四角筒状をなしている。
【0036】
図2及び
図6に示すように、下流リテーナ15は、上流リテーナ11の下流側に配置されている。下流リテーナ15の主要部は、上流リテーナ11と同様に、上流端及び下流端が開放され、かつ左右方向(車幅方向)の寸法が上下方向の寸法よりも大きな略四角筒状をなしている。下流リテーナ15は、自身の上流端部に設けられた係止孔16において、上記上流リテーナ11の対応する箇所に設けられた係止突起12(
図4(a)参照)に係止されることにより、同上流リテーナ11に連結されている。
【0037】
ベゼル20は、リテーナ10の最下流部分を構成する部材である。ベゼル20は、その複数箇所に設けられた係止孔21において、上記下流リテーナ15の対応する箇所に設けられた係止突起17に係止されることにより、下流リテーナ15に連結されている。
【0038】
図1及び
図5に示すように、ベゼル20には、通風路30の下流端を構成し、かつ空調用空気A1が吹き出される吹出口22が形成されている。
ベゼル20における吹出口22の周りには傾斜壁部26が形成されている。傾斜壁部26における下流側の面は、上記流れ方向に対し傾斜する傾斜面26aとなっている。傾斜面26aは、空調用薄型レジスタの意匠面の一部を構成している。ここでは、傾斜面26aは、下流側ほど高くなるように傾斜している(
図8等参照)。
【0039】
吹出口22は、一対の短辺部23と、各短辺部23よりも長い一対の長辺部24,25とを備えている。両短辺部23は、上記傾斜面26aにおいて、互いに平行に離間した状態で傾斜方向に沿って延びている。両長辺部24,25は、上記傾斜面26aにおいて、互いに平行に離間した状態で、傾斜方向に対し直交する方向である左右方向(車幅方向)へ延びている。傾斜面26aが上記のように傾斜していることから、下側の長辺部24は、上側の長辺部25よりも上流側に位置している(
図8等参照)。
【0040】
両短辺部23及び両長辺部24,25により、吹出口22は、傾斜面26aの傾斜方向に沿う方向よりも、左右方向(車幅方向)に細長い横長の長方形状をなしている。
ベゼル20において、吹出口22に対し左右方向(車幅方向)の一方(右方)へ僅かに離れた箇所には、矩形状をなす孔からなる窓部27が形成されている。
【0041】
図6及び
図8に示すように、上記通風路30は、リテーナ10の4つの壁部によって取り囲まれている。これらの4つの壁部は、左右方向(車幅方向)に相対向する一対の側壁部31,32と、互いに上下方向に相対向する上壁部33及び底壁部36とからなる。両側壁部31,32は互いに平行な状態又はそれに近い状態で対向している。
【0042】
図8〜
図10に示すように、上壁部33はその上流部と下流部とで形状が異なっている。上壁部33の上流部は、平坦な一般壁部34によって構成されている。一般壁部34は、上側の長辺部25に対し、上流へ離間した箇所に位置している。上壁部33の下流部は、上記一般壁部34よりも通風路30から遠ざかる側である上側へ膨出する上膨出壁部35によって構成されている。この上膨出壁部35とベゼル20とによって囲まれた空間は、後述する第1フィン50及び第2フィン54が、一般壁部34よりも上側へ傾動するのを許容する上傾動空間STを構成している。
【0043】
また、底壁部36の上流部は、上記一般壁部34に対し略平行の関係にある一般壁部37によって構成されている。一般壁部37は、下側の長辺部24に対し、上流へ離間した箇所に位置している。底壁部36の下流部は、上記一般壁部37よりも通風路30から遠ざかる側である下側へ膨出する下膨出壁部38によって構成されている。この下膨出壁部38とベゼル20とによって囲まれた空間は、後述する第3フィン58が、一般壁部37よりも下側へ傾動するのを許容する下傾動空間SBを構成している。
【0044】
図2、
図3及び
図8に示すように、リテーナ10における左右の両側壁部31,32には、3種類の軸受部41,42,43がそれぞれ設けられている。
軸受部41は、下流リテーナ15の下流端部とベゼル20との間であって、長辺部25の上流であり、かつ同長辺部25に接近した箇所に設けられている。軸受部42は、下流リテーナ15であって、長辺部24の上流であり、かつ同長辺部24に接近した箇所に設けられている。軸受部43は、下流リテーナ15であって、上記軸受部41から上流へ離間した箇所に設けられている。
【0045】
図4(a),(b)及び
図9に示すように、上記上壁部33及び底壁部36において、上記軸受部43よりも上流であって、左右方向(車幅方向)に互いに略等間隔毎に離間した複数箇所には、軸受部44がそれぞれ設けられている。本実施形態では、上壁部33の軸受部44と、底壁部36の軸受部44とは、上流リテーナ11の下流端部と下流リテーナ15の上流端部との境界部分に設けられている。
【0046】
さらに、上流リテーナ11において、上壁部33の軸受部44と、底壁部36の軸受部44とを上下両側から挟み込む箇所には、支持片13が形成されている。各支持片13において、上記軸受部44の中心軸線と同一線上となる箇所には孔14があけられている。
【0047】
<下流フィン群>
図2(a),(b)及び
図8に示すように、下流フィン群は、吹出口22から吹き出す空調用空気A1の短辺部23に対しなす角度α(
図8参照)を変更する3つの部材からなる。これらの部材は、第1フィン50、第2フィン54及び第3フィン58からなる。3つのフィン50,54,58のそれぞれの主要部は、長辺部24,25に沿って左右方向(車幅方向)に延びる板状をなしている。
【0048】
第1フィン50は、長辺部25の上流近傍に配置されている。第1フィン50の下流端には、長辺部25に沿って左右方向(車幅方向)へ延びるフィン軸51が設けられている。フィン軸51は、上記リテーナ10の軸受部41により両側壁部31,32に支持されている。第1フィン50の左右方向(車幅方向)に互いに離間した複数箇所には、同第1フィン50の剛性を高めることを目的として、補強リブ52が形成されている。
【0049】
第2フィン54は、第1フィン50よりも上流に配置されている。第2フィン54の上流端には、長辺部25に沿って左右方向(車幅方向)に延びるフィン軸55が設けられている。フィン軸55は、上記リテーナ10の軸受部43により両側壁部31,32に支持されている。第2フィン54の左右方向(車幅方向)に互いに離間した複数箇所には、同第2フィン54の剛性を高めることを目的として、補強リブ56が形成されている。
【0050】
第3フィン58は、長辺部24の上流近傍に配置されている。第3フィン58は、下方へ僅かに膨らむように緩やかに湾曲している。第3フィン58の下流端には、長辺部24に沿って左右方向(車幅方向)に延びるフィン軸59が設けられている。フィン軸59は、上記リテーナ10の軸受部42により両側壁部31,32に支持されている。
【0051】
<上流フィン群>
図6に示すように、上流フィン群は、吹出口22から吹き出す空調用空気A1の長辺部24,25に対しなす角度βを変更するためのものである。
図4(a),(b)及び
図9に示すように、上流フィン群は、通風路30内の第2フィン54よりも上流に配置された複数の上流フィン62からなる。各上流フィン62は互いに同一の構成を有している。各上流フィン62は、それぞれ通風路30内で上下方向へ延びる板状体によって構成されている。複数の上流フィン62は、左右方向(車幅方向)には略等間隔で互いに略平行に離間した状態で配置されている。
【0052】
各上流フィン62は上下方向へ延びるフィン軸63を備えている。フィン軸63は、空調用空気A1の流れ方向については、上流フィン62の略中央部に位置している。上流フィン62毎のフィン軸63は、上記軸受部44により上壁部33及び底壁部36に支持されている。上流フィン62毎のフィン軸63の上下の両端部は円錐状に形成されており、この部分において、上記支持片13の孔14に挿入及び支持されている。
【0053】
さらに、上流フィン62毎のフィン軸63の上端部には、扇状をなす従動ギヤ64が形成されている。従動ギヤ64の各歯は、フィン軸63を中心とする円弧に沿って配列されている。
【0054】
<操作部材65>
図1及び
図3に示すように、操作部材65は、吹出口22からの空調用空気A1の吹き出し方向を変更する際に乗員によって操作される部材である。
【0055】
図3及び
図13に示すように、リテーナ10の一方(
図3の右方)の側壁部32に対し、同方向へ離れた箇所には、同側壁部32に対し平行に補助側壁部71が形成されている。側壁部32と補助側壁部71との間には、リテーナ10の一般壁部34,37に対し平行に形成された横壁部72が架け渡されている。
【0056】
側壁部32と補助側壁部71との間であって、横壁部72よりも下流には軸部材73が配置されている。軸部材73は、側壁部32及び補助側壁部71に対し、回動可能に支持されている。より詳しくは、軸部材73の主要部は、左右方向(車幅方向)に細長い軸本体部74によって構成されている。軸本体部74の下流端部には、吹出口22の長辺部24,25に沿って左右方向(車幅方向)へ延びる支軸75が形成されている(
図7(a),(b)参照)。一方、側壁部32及び補助側壁部71の各下流端部、より詳しくは軸受部41から上流へ僅かに離れた箇所には、それぞれ支持孔76が貫通されている。そして、各支軸75が支持孔76に係合されることで、軸部材73が側壁部32及び補助側壁部71に支持されている。
【0057】
上記軸本体部74の左右方向(車幅方向)における中央部分には、下方へ向けて突出する筒状部77が形成されている。
操作部材65の多くの部分は、平面視で半円盤状をなす操作本体部66によって構成されている。操作本体部66の一部は、ベゼル20の窓部27を通じ下流側へ露出しており(
図1参照)、車両の乗員がこの露出部分に触れて操作部材65を操作することが可能である。
【0058】
操作本体部66には、上下方向に貫通する孔67が形成されており、この孔67に上記筒状部77が挿通されている。そのため、操作部材65は、軸部材73の左右の両支軸75を支点としてリテーナ10に対し、吹出口22の短辺部23に沿う方向へ傾動することが可能であり、また、筒状部77を支点として軸部材73に対し吹出口22の長辺部24,25に沿う方向(左右方向、車幅方向)へ傾動することが可能である。
【0059】
<伝達機構80>
図2(a),(b)及び
図11に示すように、伝達機構80は、操作部材65の短辺部23に沿う方向の傾動を、上記3つのフィン50,54,58にそれぞれ伝達して、傾動させるための機構である。
【0060】
リテーナ10の一方(右方)の側壁部32において、軸受部42の略上方には、支持孔76を中心とする円弧に沿って、上流側へ膨らむように湾曲する長孔81が形成されている。また、軸本体部74において、支軸75よりも上流には、側壁部32側へ突出する連結ピン82が設けられている(
図7(a),(b)参照)。この連結ピン82は、上記長孔81に挿通され、先端部が通風路30に露出している。そして、連結ピン82における上記露出部分に対し、長尺板状をなす伝達部材83が、その長さ方向の中間部分において連結(本実施形態では固定)されている。伝達部材83は、下流側ほど高くなるように傾斜した姿勢で配置されている。
【0061】
第1フィン50の一方(右方)の側面であって、フィン軸51よりも上流の箇所には、ピン53が突設されている。また、第3フィン58の一方(右方)の側面であって、フィン軸59よりも上流の箇所には、ピン60が突設されている。そして、第1フィン50のピン53が、伝達部材83の下流側の端部に回動可能に連結されている。また、第3フィン58のピン60が、伝達部材83の上流側の端部に回動可能に連結されている。
【0062】
図2(a)及び
図12に示すように、左右方向(車幅方向)において、第3フィン58の上記ピン60とは反対側の端部(左端部)には、扇状をなす駆動ギヤ61が設けられている。第2フィン54において上記駆動ギヤ61と同じ側の端部(左端部)には、扇状をなす従動ギヤ57が設けられている。駆動ギヤ61の各歯は、第3フィン58のフィン軸59を中心とする円弧に沿って配列されている。従動ギヤ57の各歯は、第2フィン54のフィン軸55を中心とする円弧に沿って配列されている。そして、駆動ギヤ61と従動ギヤ57とが互いに噛み合わされている。
【0063】
<上流伝達機構85>
図3及び
図4(a),(b)に示すように、上流伝達機構85は、操作部材65の長辺部24,25に沿う方向の動き(左右方向の回動)を、複数の上流フィン62にそれぞれ伝達して、フィン軸63を支点として各上流フィン62を傾動させるための機構である。
【0064】
上記操作本体部66の上流側の端部には、伝達ギヤ68が形成されている。伝達ギヤ68の各歯は、孔67を中心とする円弧に沿って配列されている。また、伝達ギヤ68の各歯は、軸部材73の支軸75を中心とする円弧に沿って、上流側へ膨らむように湾曲形成されている。
【0065】
上記横壁部72の上流部には、上方へ向けて規制突部78が突設されている。
リテーナ10の上壁部33において、一般壁部34の上膨出壁部35との境界部分には、左右方向(車幅方向)に細長いギヤ部材86が配置されている(
図10参照)。ギヤ部材86の一方の端部(右端部)は上記横壁部72上に位置している。ギヤ部材86の上記右端部には、左右方向(車幅方向)に延びる規制孔87が形成されており、この規制孔87に上記規制突部78が挿通されている(
図7(a),(b)参照)。これらの規制孔87及び規制突部78は、ギヤ部材86が空調用空気A1の流れ方向へ動くのを規制しつつ、左右方向(車幅方向)へスライド移動するのを許容する。
【0066】
なお、下流リテーナ15における左右方向(車幅方向)の複数箇所には、ギヤ部材86の上方への動きを規制しつつ、一般壁部34とともに左右方向(車幅方向)の動きを許容する規制片18が設けられている(
図10参照)。
【0067】
ギヤ部材86の上流部であって、右端部を除く左右方向に広い領域にはラックギヤ88が形成されており、このラックギヤ88に上流フィン62毎の扇状の従動ギヤ64が噛み合わされている。ギヤ部材86の右端部の下流部には、ラックギヤ89が形成されている。ラックギヤ88,89の各歯は、左右方向(車幅方向)に沿って配列されている。
【0068】
図3、
図7(a),(b)及び
図13に示すように、上記横壁部72において、上記規制突部78の下流側には凹部79が形成されており、この凹部79に軸受部材91が嵌合されている。この軸受部材91には、上記筒状部77を支点とした操作部材65の長辺部24,25に沿う方向(左右方向、車幅方向)の回動を上記ギヤ部材86に伝達するためのピニオンギヤ92が支持されている。より詳しくは、ピニオンギヤ92は、円板状をなすギヤ本体部93と、ギヤ本体部93から下方へ延びる軸部94とを備えて構成されている。そして、軸部94が軸受部材91に挿通され、凹部79の底部を貫通している。横壁部72から下方へ露出する軸部94の下端部には、止め輪95が係止されており、軸部94が軸受部材91から抜け出ることが止め輪95によって規制されている。さらに、ギヤ本体部93は、操作部材65の伝達ギヤ68に対し上流側から噛み合い、かつラックギヤ89に対し下流側から噛み合っている。なお、軸受部材91は、ピニオンギヤ92の軸部94を支持する機能を有するほか、同軸部94に摺動抵抗を付与して、操作部材65を長辺部24,25に沿う方向へ回動操作する際の操作荷重を適切な大きさにする機能も有している。
【0069】
前記のようにして本実施形態の空調用薄型レジスタが構成されている。次に、この空調用薄型レジスタの作用について説明する。
図8〜
図13は、操作部材65が、通風路30に導入される空調用空気A1の流れ方向に沿う姿勢(水平状態)にされたときの、各部の状態を示している。このときには、
図11に示すように、連結ピン82が支持孔76の上流に位置、表現を変えると、長孔81の上下方向における中央部に位置している。伝達部材83の下流端部は、第1フィン50のフィン軸51の上流に位置し、伝達部材83の上流端部は第3フィン58のフィン軸59の上流に位置している。
【0070】
第1フィン50では、ピン53がフィン軸51の上流に位置している。第3フィン58では、ピン60がフィン軸59の上流に位置している。第1フィン50は、上傾動空間STの通風路30との境界部分で、上壁部33の一般壁部34に対し略平行な状態となっている。また、第3フィン58は、下傾動空間SBの通風路30との境界部分で、底壁部36の一般壁部37に対し略平行な状態となっている。
【0071】
また、
図12に示すように、第3フィン58の駆動ギヤ61が、その周方向の中間部分において、第2フィン54の従動ギヤ57に対し、その周方向の中間部分に噛み合っている。第2フィン54は、上傾動空間STの通風路30との境界部分で、上壁部33の一般壁部34に対し略平行な状態となっている。
【0072】
このように、第1〜第3フィン50,54,58は、通風路30に導入される空調用空気A1の流れ方向に沿う姿勢(一般壁部34,37に対し略平行な姿勢)になる。そのため、
図8に示すように、空調用空気A1は、第2フィン54及び第3フィン58の間の流路を、それらの第2フィン54及び第3フィン58に沿って流れる。その後、空調用空気A1は、第1フィン50に沿って流れることで、吹出口22から下流側へ真っ直ぐ吹き出される。
【0073】
また、このときには、第1フィン50の下流端が長辺部25に接近し、第2フィン54の上流端が上膨出壁部35の一般壁部34との境界部分に接近している。さらに、第1フィン50の上流端と第2フィン54の下流端とが互いに接近している。そのため、上傾動空間STは、通風路30との境界部分で、第1フィン50及び第2フィン54によって塞がれたような状態となる。従って、上傾動空間STに流入する空調用空気A1は少ない。
【0074】
また、第3フィン58の下流端が長辺部24に接近し、上流端が下膨出壁部38の一般壁部37との境界部分に接近している。そのため、下傾動空間SBは、通風路30との境界部分で、第3フィン58によって塞がれたような状態となる。従って、下傾動空間SBに流入する空調用空気A1は少ない。
【0075】
上記
図11及び
図13の状態から、操作部材65において、窓部27から下流側へ露出している部分に対し、上方へ向かう力が加えられると、同操作部材65は、軸部材73の支軸75を支点として、
図13の時計回り方向へ傾動する。操作部材65は、下流側ほど高い傾斜状態になる。上記傾動に伴い、
図11において、連結ピン82が長孔81内を下方へ移動する。これに伴い、伝達部材83が傾斜した姿勢を維持しながら下方へ平行移動する。この平行移動により、伝達部材83の下流端が第1フィン50のフィン軸51の上流で、同フィン軸51よりも低い箇所に移動する。また、伝達部材83の上流端が第3フィン58のフィン軸59の上流で、同フィン軸59よりも低い箇所に移動する。
【0076】
第1フィン50は、フィン軸51を支点として
図11の反時計回り方向へ傾動する。この傾動により、第1フィン50は上流側ほど低くなるように傾斜した状態となる。
第3フィン58は、フィン軸59を支点として
図11の反時計回り方向へ傾動する。この傾動により、第3フィン58は、下傾動空間SBにおいて、上記第1フィン50と同様に、上流側ほど低くなるように傾斜した状態となる。
【0077】
第3フィン58が上記のように傾動すると、
図12及び
図16において同第3フィン58の駆動ギヤ61と第2フィン54の従動ギヤ57との噛み合い位置が変化し、第2フィン54が
図12及び
図16の反時計回り方向へ傾動する。この傾動により、第2フィン54は下流側ほど低くなるように傾斜した状態となる。
【0078】
そして、
図14に示すように、操作部材65が、支軸75を支点として、可動範囲の上側の端まで傾動されると、
図15に示すように、連結ピン82が長孔81内の下端部に達する。このときには、第1フィン50の傾斜角度は、ベゼル20の傾斜面26aの傾斜角度よりも小さくなる。また、第3フィン58は、第1フィン50に対し略平行となる状態で傾斜壁部26の底部に接近する。第2フィン54は、その下流端が、第3フィン58の下流端を指向する姿勢になる。3つのフィン50,54,58間の流路が、
図11での直線状の流路とは異なる形状に変化する。
【0079】
そのため、空調用空気A1は、
図17において矢印で示すように、第2フィン54に沿って流れることで、第3フィン58に向かう方向である斜め下方へ向きを変えられる。空調用空気A1は、その後に第3フィン58に沿って流れることで、斜め上方へ向きを変えられる。第2フィン54の下流端と第3フィン58の下流端との間の流路を通過した空調用空気A1は、同第3フィン58と略平行の関係にある第1フィン50に沿って流れる。空調用空気A1は、このように第3フィン58及び第1フィン50に沿って流れることで、傾斜壁部26の傾斜面26aに沿う方向へ向きを変えられる。そして、空調用空気A1は、吹出口22から傾斜面26aに沿う方向へ吹き出される。吹き出された空調用空気A1は、コアンダ効果により、傾斜面26aに沿って流れる。コアンダ効果とは、流れの中に物質を置いたときに、その物体に沿って流れようとする流体の性質である。
【0080】
ここで、第1フィン50の下流端が、吹出口22における長辺部25に接近している。このため、空調用空気A1は、吹出口22から吹き出された直後から傾斜面26aに沿って流れる。従って、上記コアンダ効果がより効果的に発揮される。
【0081】
傾斜面26aによるコアンダ効果がなく、3つのフィン50,54,58のみによって、流れ方向が変えられた場合よりも、空調用空気A1の吹き出し方向がより大きく変更される。
【0082】
従って、空調用薄型レジスタの吹出口22が、車室内で乗車姿勢を採っている乗員の前下方(みぞおちの前方)に位置するものの、空調用空気A1はその乗員の上部、例えば頭部に向けても流れる。
【0083】
上記とは逆に、
図11及び
図13の状態から、操作部材65において、窓部27から下流側へ露出している部分に対し、下方へ向かう力が加えられると、同操作部材65は、軸部材73の支軸75を支点として、
図13の反時計回り方向へ傾動する。操作部材65は、下流側ほど低い傾斜状態となる。上記傾動に伴い、
図11において連結ピン82が長孔81内を上方へ移動する。これに伴い、伝達部材83が傾斜した姿勢を維持しながら上方へ平行移動する。この平行移動により、伝達部材83の下流端が第1フィン50のフィン軸51の上流で、同フィン軸51よりも高い箇所に移動する。また、伝達部材83の上流端が第3フィン58のフィン軸59の上流で、同フィン軸59よりも高い箇所に移動する。
【0084】
第1フィン50は、フィン軸51を支点として
図11の時計回り方向へ傾動する。この傾動により、第1フィン50は、上傾動空間STにおいて、上流側ほど高くなるように傾斜した状態となる。
【0085】
第3フィン58は、フィン軸59を支点として
図11の時計回り方向へ移動する。この傾動により、第3フィン58は、上記第1フィン50と同様に、上流側ほど高くなるように傾斜した状態となる。
【0086】
第3フィン58が上記のように傾動すると、
図12及び
図20において同第3フィン58の駆動ギヤ61と第2フィン54の従動ギヤ57との噛み合い位置が変化し、第2フィン54が同
図12及び
図20の時計回り方向へ傾動する。この傾動により、第2フィン54は、上傾動空間STにおいて下流側ほど高くなるように傾斜した状態となる。
【0087】
そして、
図18に示すように、操作部材65が、軸部材73の支軸75を支点として、可動範囲の下側の端まで傾動されると、
図19に示すように、連結ピン82が長孔81内の上端部に達する。操作部材65は、傾斜面26aに対し直交又は直交に近い状態で交差する姿勢となる。第1フィン50は、長辺部25の上流近傍で、傾斜面26aに対し直交又は直交に近い状態で交差する。第3フィン58は、長辺部24の上流近傍で、第1フィン50に対し略平行であって、傾斜面26aに対し直交又は直交に近い状態で交差する。第2フィン54は、傾斜面26aに沿って傾斜する姿勢となる。3つのフィン50,54,58間の流路が、
図11及び
図15での流路とは異なる形状に変化する。
【0088】
ここで、
図21に示すように、第3フィン58は、空調用空気A1が、第2フィン54と第3フィン58との間を真っ直ぐ吹き抜けること、すなわち、3つのフィン50,54,58によって向きを変えられる前の方向(一般壁部34,37に沿う方向)を維持することを妨げようとする。
【0089】
従って、同
図21において矢印で示すように、空調用空気A1は、第2フィン54と第3フィン58との間の流路を流れる際に、第3フィン58の上流端と第2フィン54のフィン軸55とを結ぶ円弧Cの法線Nに沿う方向へ流れる。空調用空気A1は、このように一旦上方へ向きを変えられて、下流側ほど高くなるように傾斜した第2フィン54に沿って流れる。この現象も、コアンダ効果によるものといえる。その後、空調用空気A1は、第1フィン50に沿って流れることで、傾斜面26aに対し直交する方向又は直交に近い状態で交差する方向へ向きを変えられる。そして、空調用空気A1は、吹出口22から斜め下方へ吹き出される。
【0090】
なお、このときには、第2フィン54の下流端も、第1フィン50の上流端も上膨出壁部35において最も高い箇所に接近する。そのため、第2フィン54の下流端と上膨出壁部35の上記箇所との間に流入する空調用空気A1の量は僅かである。また、第1フィン50の上流端と上膨出壁部35の上記箇所との間に流入する空調用空気A1の量は僅かである。
【0091】
また、
図14及び
図18に示すように、上記操作部材65が軸部材73を伴って、その軸部材73の支軸75を支点として、吹出口22の短辺部23に沿う方向(略上下方向)へ傾動される際には、同操作部材65の伝達ギヤ68も上記支軸75を中心として同方向へ傾動する。この傾動の方向は、伝達ギヤ68及びピニオンギヤ92の各歯の歯すじに沿う方向である。そのため、伝達ギヤ68は、これに噛み合ったピニオンギヤ92の歯に対し摺動する。従って、操作部材65の上記方向の傾動はピニオンギヤ92には伝わらない。
【0092】
ところで、
図6及び
図7(a),(b)に示すように、操作部材65が筒状部77を支点として、長辺部24,25に沿う方向(左右方向、車幅方向)回動されると、それに伴って伝達ギヤ68が筒状部77の周りを旋回する。伝達ギヤ68のピニオンギヤ92との噛み合い位置が変化する。ピニオンギヤ92が回動し、そのピニオンギヤ92のギヤ部材86におけるラックギヤ89との噛み合い位置が変化する。ギヤ部材86が左右方向(車幅方向)へ移動し、同ギヤ部材86におけるラックギヤ88の複数の従動ギヤ64との噛み合い位置が変化する。各従動ギヤ64が同一方向へ回動し、同従動ギヤ64と同軸上の上流フィン62が、例えば
図6において二点鎖線で示すように、フィン軸63を支点として同一方向へ傾動する。通風路30に流入した空調用空気A1は、上記のように傾動した各上流フィン62に沿って流れることで、流れる方向(長辺部24,25に対しなす角度β)を変えられる。
【0093】
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)リテーナ10の吹出口22は、傾斜壁部26の傾斜面26aにおいて互いに離間した状態で傾斜方向に対し直交する方向へ延びる一対の長辺部24,25と、互いに離間した状態で同傾斜方向に沿って延びる一対の短辺部23とにより構成される(
図1、
図5)。
【0094】
吹出口22から吹き出す空調用空気A1の短辺部23に対しなす角度αを変更する部材は、それぞれ長辺部24,25に沿って延びる第1フィン50、第2フィン54及び第3フィン58によって構成される(
図8)。
【0095】
第1フィン50は、吹出口22における下流側の長辺部25よりも上流に配置され、かつ自身の下流端のフィン軸51によりリテーナ10に支持される。第2フィン54は、第1フィン50よりも上流に配置され、かつ自身の上流端のフィン軸55によりリテーナ10に支持される。第3フィン58は、吹出口22における上流側の長辺部24よりも上流に配置され、かつ自身の下流端のフィン軸59によりリテーナ10に支持される。
【0096】
吹出口22の外部に設けられた操作部材65と、3つのフィン50,54,58との間には、操作部材65の操作に応じ、第1フィン50及び第3フィン58を同一方向へ傾動させ、第2フィン54を第1フィン50及び第3フィン58とは反対方向へ傾動させる伝達機構80が設けられている(
図11)。
【0097】
そのため、操作部材65を操作することで、3つのフィン50,54,58をそれぞれ傾動させて、3つのフィン50,54,58の間の流路の形状を変更し、吹出口22から吹き出す空調用空気A1の短辺部23に対しなす角度αを変更することができる。特に、上記角度αが小さくなる側へ変更された場合(
図17)には、吹出口22から吹き出された空調用空気A1を、コアンダ効果により傾斜面26aに沿って流れさせることができ、空調用空気A1の向きを斜め上方へ大きく変更し、指向性を向上させることができる。
【0098】
従って、空調用空気A1の吹き出し方向を変更するために、両長辺部24,25間の中央部分にフィンを設けたり、そのフィンに操作部材を設けたりしなくてもよくなり、圧力損失の低減を図ることができ、空調用薄型レジスタのさらなる薄型化に対処することができる。
【0099】
また、通風抵抗及び圧力損失が小さくなることから、空調用空気A1が吹出口22から吹き出す際に発生する風切り音等の騒音を小さくすることができる。
(2)操作部材65は、長辺部24,25に沿って延びる支軸75により、リテーナ10に対し傾動可能に支持される(
図1、
図3)。
【0100】
そして、操作部材65が、通風路30に導入される空調用空気A1の流れ方向に沿う姿勢になるように傾動されたとき、3つのフィン50,54,58が、伝達機構80により、同流れ方向に沿う姿勢になるように傾動される(
図11)。
【0101】
そのため、3つのフィン50,54,58間の流路を直線状にし、空調用空気A1を吹出口22から下流側へ真っ直ぐ吹き出させることができる。
(3)操作部材65が、傾斜面26aに沿って傾斜する姿勢となるように傾動されたとき、第1フィン50及び第3フィン58は、伝達機構80により、傾斜面26aに沿って傾斜する姿勢となるように傾動される。第2フィン54は、伝達機構80により、同第2フィン54の下流端が第3フィン58を指向する姿勢になるように傾動される(
図15)。
【0102】
そのため、空調用空気A1を第2フィン54に沿って流れさせることで、第3フィン58に向かわせることができる。その後に空調用空気A1を第3フィン58及び第1フィン50に沿って流れさせることで、同空調用空気A1を吹出口22から傾斜面26aに沿う方向へ吹き出させることができる。さらに、空調用空気A1を、コアンダ効果により、傾斜面26aに沿って流れさせることができ、斜め上方へ向かう空調用空気A1の指向性の向上を図ることができる。
【0103】
(4)操作部材65が、傾斜面26aに対し直交又は直交に近い状態で交差する姿勢となるように傾動されたとき、第1フィン50及び第3フィン58は、伝達機構80により、傾斜面26aに対し直交又は直交に近い状態で交差する姿勢となるように傾動される。第2フィン54は、伝達機構80により、傾斜面26aに沿って傾斜する姿勢となるように傾動される(
図19)。
【0104】
そのため、空調用空気A1を、第2フィン54に沿わせることで、第1フィン50に導くことができる。その後に、空調用空気A1を第1フィン50に沿って流れさせることで、傾斜面26aに対し直交する方向又は直交に近い状態で交差する方向へ向きを変え、吹出口22から斜め下方へ吹き出させることができる。
【0105】
(5)第3フィン58が、第1フィン50の下流端と、第2フィン54の上流端との中間部分に配置されている(
図8)。
そのため、第2フィン54と第3フィン58との間にも、第3フィン58と第1フィン50との間にも、空調用空気A1の流路を好適に形成することができる。このようにして、3つのフィン50,54,58間に空調用空気A1の流路を好適に形成することができる。
【0106】
また、操作部材65が操作されて3つのフィン50,54,58がそれぞれ傾動された場合に、3つのフィン50,54,58間の流路の形状を好適に変更することができる。
(6)第1〜第3フィン50,54,58を傾動させる際に操作される操作部材65と、複数の上流フィン62を傾動させる際に操作される操作部材65とが、共通の部材によって構成されている。
【0107】
そのため、部品点数の削減を図ることができる。また、操作部材65の配置に要するスペースを小さくすることができる。この点は、空調用薄型レジスタのさらなる薄型化を図るうえで有効である。
【0108】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
<下流フィン群について>
・第3フィン58についても、第1フィン50及び第2フィン54と同様に、補強リブが設けられてもよい。
【0109】
・第1フィン50及び第2フィン54において、充分な剛性が得られる場合には、補強リブ52,56の数が減少されてもよいし、場合によっては割愛されてもよい。
<傾斜壁部26について>
・傾斜壁部26は、下流側(後側)ほど高くなるよう一定の角度で傾斜する単一の平らな壁部によって構成されてもよい。
【0110】
・傾斜壁部26は、後側ほど傾斜角度が大きくなる複数の平らな壁部によって構成されてもよい。
・傾斜壁部26は、後側ほど傾斜角度が徐々に大きくなる湾曲した壁部によって構成されてもよい。
【0111】
<操作部材65について>
・操作部材65は、リテーナ10において、吹出口22の外部であることを条件に、上記実施形態とは異なる箇所に設けられてもよい。
【0112】
・伝達機構80を介して第1〜第3フィン50,54,58を傾動させる際に操作される操作部材65と、上流伝達機構85を介して複数の上流フィン62を傾動させる際に操作される操作部材65とが別々の部材によって構成されてもよい。
【0113】
<伝達機構80について>
・第3フィン58の傾動に連動して第2フィン54を、同第3フィン58とは反対方向へ傾動させるために、ギヤ機構を用いた上記実施形態とは異なる機構、例えばリンク機構が採用されてもよい。
【0114】
<適用箇所について>
・上記空調用薄型レジスタは、車室内においてインストルメントパネルとは異なる箇所に設けられる空調用薄型レジスタにも適用可能である。
【0115】
・上記空調用薄型レジスタは、空調装置から送られてきて室内に吹き出す空調用空気A1の向きをフィンによって調整することのできるものであれば、車両に限らず広く適用可能である。
【0116】
<その他>
・上記空調用薄型レジスタは、上記実施形態とは逆に、傾斜壁部26の傾斜面26aが下流側ほど低くなるように傾斜するタイプの空調用薄型レジスタにも適用可能である。このタイプの空調用薄型レジスタは、上記実施形態よりも高い位置に配置され、かつ空調用空気A1の吹き出し方向を斜め上方に対するよりも斜め下方へ大きく変更したい場合に適している。
【0117】
・上記空調用薄型レジスタは、吹出口22が縦長となるように配置されるタイプの空調用薄型レジスタにも適用可能である。この場合、第1〜第3フィン50,54,58として、それぞれ上下方向へ延びるものが用いられ、これらが左右方向(車幅方向)に配列される。複数の上流フィン62としては、それぞれ左右方向(車幅方向)へ延びるものが用いられ、これらが互いに上下方向に離間した状態で配列される。