特許第6500282号(P6500282)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6500282
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】露光装置及び照明装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20190408BHJP
   G02B 5/10 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   G03F7/20 501
   G02B5/10 B
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-26619(P2015-26619)
(22)【出願日】2015年2月13日
(65)【公開番号】特開2016-148811(P2016-148811A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2017年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 慎一郎
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/096365(WO,A1)
【文献】 特開2005−252149(JP,A)
【文献】 特開2002−156280(JP,A)
【文献】 特開2012−042931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを支持するワーク支持部と、
マスクを支持するマスク支持部と、
光源と、前記光源からの露光光を反射する反射鏡と、を有する照明光学系と、
前記反射鏡の曲率を補正可能なミラー曲げ機構と、
を備え、前記光源からの露光光を前記反射鏡及び前記マスクを介して前記ワークに照射して、前記マスクのパターンを前記ワークに転写する露光装置であって、
前記反射鏡は、ガラス板と、前記ガラス板よりも前記露光光が入射する側に形成されたミラー膜と、を有し、
前記ミラー膜は、前記露光光が前記ガラス板に入射可能であるように、少なくとも一つの孔を有し、
前記孔と前記ガラス板を介して対向する位置には照度計が配置され、
前記照度計は、前記孔を介して前記ガラス板を透過した前記露光光の照度を測定し、
前記照度計は、前記露光光を受光してその照度を測定する受光部と、前記受光部が内部に配置される筐体と、を有し、
前記筐体の前記孔と対向する面に貫通穴が形成されることにより、前記露光光が前記筐体の内部に入射可能とされ、
前記ミラー曲げ機構による前記反射鏡の曲率の補正前後において、前記貫通穴に入射して前記受光部が受光する前記露光光の照度に変化がないように、前記貫通穴の大きさが設定される
ことを特徴とする露光装置。
【請求項2】
ワークを支持するワーク支持部と、
マスクを支持するマスク支持部と、
光源と、前記光源からの露光光を反射する反射鏡と、を有する照明光学系と、
前記反射鏡の曲率を補正可能なミラー曲げ機構と、
を備え、前記光源からの露光光を前記反射鏡及び前記マスクを介して前記ワークに照射して、前記マスクのパターンを前記ワークに転写する露光装置であって、
前記反射鏡は、ガラス板と、前記ガラス板よりも前記露光光が入射する側に形成されたミラー膜と、を有し、
前記ミラー膜は、前記露光光が前記ガラス板に入射可能であるように、少なくとも一つの孔を有し、
前記孔と前記ガラス板を介して対向する位置には照度計が配置され、
前記照度計は、前記孔を介して前記ガラス板を透過した前記露光光の照度を測定し、
前記照度計は、前記露光光の照射方向に向かって延びる固定部材に固定され、
前記照度計が前記反射鏡の近傍に配置されるように、前記固定部材の前記反射鏡と近接する部分には面取りが設けられる
ことを特徴とする露光装置。
【請求項3】
前記ガラス板の表面又は裏面には、前記孔と対向する位置に反射防止膜が形成される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の露光装置。
【請求項4】
光源と、前記光源からの光を反射する反射鏡と、を有する照明光学系と、
前記反射鏡の曲率を補正可能なミラー曲げ機構と、
を備える照明装置であって、
前記反射鏡は、ガラス板と、前記ガラス板よりも前記光が入射する側に形成されたミラー膜と、を有し、
前記ミラー膜は、前記光が前記ガラス板に入射可能であるように、少なくとも一つの孔を有し、
前記孔と前記ガラス板を介して対向する位置には照度計が配置され、
前記照度計は、前記孔を介して前記ガラス板を透過した前記光の照度を測定し、
前記照度計は、前記露光光を受光してその照度を測定する受光部と、前記受光部が内部に配置される筐体と、を有し、
前記筐体の前記孔と対向する面に貫通穴が形成されることにより、前記露光光が前記筐体の内部に入射可能とされ、
前記ミラー曲げ機構による前記反射鏡の曲率の補正前後において、前記貫通穴に入射して前記受光部が受光する前記露光光の照度に変化がないように、前記貫通穴の大きさが設定される
ことを特徴とする照明装置。
【請求項5】
光源と、前記光源からの光を反射する反射鏡と、を有する照明光学系と、
前記反射鏡の曲率を補正可能なミラー曲げ機構と、
を備える照明装置であって、
前記反射鏡は、ガラス板と、前記ガラス板よりも前記光が入射する側に形成されたミラー膜と、を有し、
前記ミラー膜は、前記光が前記ガラス板に入射可能であるように、少なくとも一つの孔を有し、
前記孔と前記ガラス板を介して対向する位置には照度計が配置され、
前記照度計は、前記孔を介して前記ガラス板を透過した前記光の照度を測定し、
前記照度計は、前記露光光の照射方向に向かって延びる固定部材に固定され、
前記照度計が前記反射鏡の近傍に配置されるように、前記固定部材の前記反射鏡と近接する部分には面取りが設けられる
ことを特徴とする露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フラットパネルディスプレイ装置のカラーフィルタ等のパネルを製造する装置として、近接露光装置、スキャン露光装置、投影露光装置、ミラープロジェクション、密着式露光装置などの種々の露光装置が考案されている。例えば、特許文献1には走査型投影露光装置が開示されており、この露光装置は光路を折り曲げると共に一部の光束を透過するハーフミラーを備えている。
【0003】
ハーフミラーで反射された光束は、コンデンサレンズで集光され、レクチルを介してウエハに投射される。一方、ハーフミラーを透過した光束は、集光レンズによって集光された後、露光量制御を行うための受光手段に入射する。そして、受光手段からの信号に基づいてエキシマレーザへの印加電圧を決定し、露光量が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−180933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の露光装置では、全面で光を透過するハーフミラーが採用されているが、ハーフミラーで反射された光は強度が著しく低下する。したがって、所望の強度の露光光を実現するためには、照明光学系で大きなエネルギーが必要となっていた。
【0006】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、エネルギーロスが少ない露光装置及び照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) ワークを支持するワーク支持部と、
マスクを支持するマスク支持部と、
光源と、前記光源からの露光光を反射する反射鏡と、を有する照明光学系と、
前記反射鏡の曲率を補正可能なミラー曲げ機構と、
を備え、前記光源からの露光光を前記反射鏡及び前記マスクを介して前記ワークに照射して、前記マスクのパターンを前記ワークに転写する露光装置であって、
前記反射鏡は、ガラス板と、前記ガラス板よりも前記露光光が入射する側に形成されたミラー膜と、を有し、
前記ミラー膜は、前記露光光が前記ガラス板に入射可能であるように、少なくとも一つの孔を有し、
前記孔と前記ガラス板を介して対向する位置には照度計が配置され、
前記照度計は、前記孔を介して前記ガラス板を透過した前記露光光の照度を測定し、
前記照度計は、前記露光光を受光してその照度を測定する受光部と、前記受光部が内部に配置される筐体と、を有し、
前記筐体の前記孔と対向する面に貫通穴が形成されることにより、前記露光光が前記筐体の内部に入射可能とされ、
前記ミラー曲げ機構による前記反射鏡の曲率の補正前後において、前記貫通穴に入射して前記受光部が受光する前記露光光の照度に変化がないように、前記貫通穴の大きさが設定される
ことを特徴とする露光装置。
(2) ワークを支持するワーク支持部と、
マスクを支持するマスク支持部と、
光源と、前記光源からの露光光を反射する反射鏡と、を有する照明光学系と、
前記反射鏡の曲率を補正可能なミラー曲げ機構と、
を備え、前記光源からの露光光を前記反射鏡及び前記マスクを介して前記ワークに照射して、前記マスクのパターンを前記ワークに転写する露光装置であって、
前記反射鏡は、ガラス板と、前記ガラス板よりも前記露光光が入射する側に形成されたミラー膜と、を有し、
前記ミラー膜は、前記露光光が前記ガラス板に入射可能であるように、少なくとも一つの孔を有し、
前記孔と前記ガラス板を介して対向する位置には照度計が配置され、
前記照度計は、前記孔を介して前記ガラス板を透過した前記露光光の照度を測定し、
前記照度計は、前記露光光の照射方向に向かって延びる固定部材に固定され、
前記照度計が前記反射鏡の近傍に配置されるように、前記固定部材の前記反射鏡と近接する部分には面取りが設けられる
ことを特徴とする露光装置。
(3) 前記ガラス板の表面又は裏面には、前記孔と対向する位置に反射防止膜が形成される
ことを特徴とする(1)又は(2)に記載の露光装置。
(4) 光源と、前記光源からの光を反射する反射鏡と、を有する照明光学系と、
前記反射鏡の曲率を補正可能なミラー曲げ機構と、
を備える照明装置であって、
前記反射鏡は、ガラス板と、前記ガラス板よりも前記光が入射する側に形成されたミラー膜と、を有し、
前記ミラー膜は、前記光が前記ガラス板に入射可能であるように、少なくとも一つの孔を有し、
前記孔と前記ガラス板を介して対向する位置には照度計が配置され、
前記照度計は、前記孔を介して前記ガラス板を透過した前記光の照度を測定し、
前記照度計は、前記露光光を受光してその照度を測定する受光部と、前記受光部が内部に配置される筐体と、を有し、
前記筐体の前記孔と対向する面に貫通穴が形成されることにより、前記露光光が前記筐体の内部に入射可能とされ、
前記ミラー曲げ機構による前記反射鏡の曲率の補正前後において、前記貫通穴に入射して前記受光部が受光する前記露光光の照度に変化がないように、前記貫通穴の大きさが設定される
ことを特徴とする照明装置。
(5) 光源と、前記光源からの光を反射する反射鏡と、を有する照明光学系と、
前記反射鏡の曲率を補正可能なミラー曲げ機構と、
を備える照明装置であって、
前記反射鏡は、ガラス板と、前記ガラス板よりも前記光が入射する側に形成されたミラー膜と、を有し、
前記ミラー膜は、前記光が前記ガラス板に入射可能であるように、少なくとも一つの孔を有し、
前記孔と前記ガラス板を介して対向する位置には照度計が配置され、
前記照度計は、前記孔を介して前記ガラス板を透過した前記光の照度を測定し、
前記照度計は、前記露光光の照射方向に向かって延びる固定部材に固定され、
前記照度計が前記反射鏡の近傍に配置されるように、前記固定部材の前記反射鏡と近接する部分には面取りが設けられる
ことを特徴とする露光装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の露光装置及び照明装置によれば、光は反射鏡のミラー膜に設けられた孔を介してガラス板を透過し、照度計によってその照度が測定される。したがって、従来の特許文献1の発明と異なり、反射鏡のうち必要な部分のみ光が透過するように構成されているので、エネルギーのロスを少なくすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】露光装置の正面図である。
図2】照明光学系の構成を示す図である。
図3】複数の光源部が取り付けられたカセットの正面図である。
図4図3に示す複数のカセットが取り付けられたフレームの正面図である。
図5】各光源部の出射面からインテグレータの入射面までの距離を示す概略図である。
図6】各光源部の制御構成を示すための図である。
図7】(a)は、照明光学系の反射鏡支持構造を示す平面図であり、(b)は(a)のVII−VII線に沿った断面図であり、(c)は、(a)のVII´−VII´線に沿った断面図である。
図8】平面ミラーの断面図である。
図9図2の要部拡大図である。
図10】実施形態に係る光路を示す図であり、(a)は平面ミラーの曲率補正前の図であり、(b)は平面ミラーの曲率補正後の図である。
図11】比較例に係る光路を示す図であり、(a)は平面ミラーの曲率補正前の図であり、(b)は平面ミラーの曲率補正後の図である。
図12】平面ミラーの断面図である。
図13】平面ミラーの断面図である。
図14】平面ミラーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る露光装置及び照明装置の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の露光装置を示す図である。図1に示すように、近接露光装置PEは、被露光材としてのワークWより小さいマスクMを用いる。マスクMはマスクステージ1に保持される。ワークWはワークステージ(ワーク支持部)2に保持される。マスクMとワークWとを近接させて所定の露光ギャップで対向配置した状態で、照明光学系3からパターン露光用の光をマスクMに向けて照射することにより、マスクMのパターンをワークW上に露光転写する。また、ワークステージ2をマスクMに対してX軸方向とY軸方向の二軸方向にステップ移動させて、ステップ毎に露光転写が行われる。
【0011】
ワークステージ2をX軸方向にステップ移動させるため、装置ベース4上には、X軸送り台5aをX軸方向にステップ移動させるX軸ステージ送り機構5が設置されている。X軸ステージ送り機構5のX軸送り台5a上には、ワークステージ2をY軸方向にステップ移動させるため、Y軸送り台6aをY軸方向にステップ移動させるY軸ステージ送り機構6が設置されている。Y軸ステージ送り機構6のY軸送り台6a上には、ワークステージ2が設置されている。ワークステージ2の上面には、ワークWがワークチャック等で真空吸引された状態で保持される。また、ワークステージ2の側部には、マスクMの下面高さを測定するための基板側変位センサ15が配設されている。従って、基板側変位センサ15は、ワークステージ2と共にX、Y軸方向に移動可能である。
【0012】
装置ベース4上には、複数(図に示す実施形態では4本)のX軸リニアガイドのガイドレール51がX軸方向に配置され、それぞれのガイドレール51には、X軸送り台5aの下面に固定されたスライダ52が跨架されている。これにより、X軸送り台5aは、X軸ステージ送り機構5の第1リニアモータ20で駆動され、ガイドレール51に沿ってX軸方向に往復移動可能である。また、X軸送り台5a上には、複数のY軸リニアガイドのガイドレール53がY軸方向に配置され、それぞれのガイドレール53には、Y軸送り台6aの下面に固定されたスライダ54が跨架されている。これにより、Y軸送り台6aは、Y軸ステージ送り機構6の第2リニアモータ21で駆動され、ガイドレール53に沿ってY軸方向に往復移動可能である。
【0013】
Y軸ステージ送り機構6とワークステージ2の間には、ワークステージ2を上下方向に移動させるため、比較的位置決め分解能は粗いが移動ストローク及び移動速度が大きな上下粗動装置7と、上下粗動装置7と比べて高分解能での位置決めが可能で、ワークステージ2を上下に微動させてマスクMとワークWとの対向面間のギャップを所定量に微調整する上下微動装置8と、が設置されている。
【0014】
上下粗動装置7は後述の微動ステージ6bに設けられた適宜の駆動機構によりワークステージ2を微動ステージ6bに対して上下動させる。ワークステージ2の底面の4箇所に固定されたステージ粗動軸14は、微動ステージ6bに固定された直動ベアリング14aに係合し、微動ステージ6bに対し上下方向に案内される。なお、上下粗動装置7は、分解能が低くても、繰り返し位置決め精度が高いことが望ましい。
【0015】
上下微動装置8は、Y軸送り台6aに固定された固定台9と、固定台9にその内端側を斜め下方に傾斜させた状態で取り付けられたリニアガイドの案内レール10と、を備えている。案内レール10にはスライダ11が跨架される。スライダ11を介して案内レール10に沿って往復移動するスライド体12には、ボールねじのナット(図示せず)が連結される。スライド体12の上端面は、微動ステージ6bに固定されたフランジ12aに対して水平方向に摺動自在に接している。
【0016】
そして、固定台9に取り付けられたモータ17によってボールねじのねじ軸を回転駆動させると、ナット、スライダ11及びスライド体12が一体となって案内レール10に沿って斜め方向に移動し、これにより、フランジ12aが上下微動する。なお、上下微動装置8は、モータ17とボールねじによってスライド体12を駆動する代わりに、リニアモータによってスライド体12を駆動するようにしてもよい。
【0017】
上下微動装置8は、Z軸送り台6aのY軸方向の一端側(図1の左端側)に1台、他端側に2台、合計3台設置されてそれぞれが独立に駆動制御されるようになっている。これにより、上下微動装置8は、ギャップセンサ27による複数箇所でのマスクMとワークWとのギャップ量の計測結果に基づき、3箇所のフランジ12aの高さを独立に微調整してワークステージ2の高さ及び傾きを微調整する。なお、上下微動装置8によってワークステージ2の高さを十分に調整できる場合には、上下粗動装置7を省略してもよい。
【0018】
また、Y軸送り台6a上には、ワークステージ2のY方向の位置を検出するY軸レーザ干渉計18に対向するバーミラー19と、ワークステージ2のX軸方向の位置を検出するX軸レーザ干渉計に対向するバーミラー(共に図示せず)と、が設置されている。Y軸レーザ干渉計18に対向するバーミラー19は、Y軸送り台6aの一側でX軸方向に沿って配置されている。X軸レーザ干渉計に対向するバーミラーは、Y軸送り台6aの一端側でY軸方向に沿って配置されている。
【0019】
Y軸レーザ干渉計18及びX軸レーザ干渉計は、それぞれ常に対応するバーミラーに対向するように配置されて装置ベース4に支持されている。なお、Y軸レーザ干渉計18は、X軸方向に離間して2台設置されている。2台のY軸レーザ干渉計18により、バーミラー19を介してY軸送り台6a、ひいてはワークステージ2のY軸方向の位置及びヨーイング誤差を検出する。また、X軸レーザ干渉計により、対向するバーミラーを介してX軸送り台5a、ひいてはワークステージ2のX軸方向の位置を検出する。
【0020】
マスクステージ1は、略長方形状の枠体からなるマスク基枠24と、該マスク基枠24の中央部開口にギャップを介して挿入されてX,Y,θ方向(X,Y平面内)に移動可能に支持されたマスクフレーム25と、を備えている。マスク基枠24は、装置ベース4から突設された支柱4aによってワークステージ2の上方の定位置に保持されている。
【0021】
マスクフレーム25の中央部開口の下面には、枠状のマスクホルダ(マスク支持部)26が設けられている。即ち、マスクフレーム25の下面には、図示しない真空式吸着装置に接続される複数のマスクホルダ吸着溝が設けられており、マスクホルダ26が複数のマスクホルダ吸着溝を介してマスクフレーム25に吸着保持される。
【0022】
マスクホルダ26の下面には、マスクMのマスクパターンが描かれていない周縁部を吸着するための複数のマスク吸着溝(図示せず)が開設されており、マスクMは、マスク吸着溝を介して図示しない真空式吸着装置によりマスクホルダ26の下面に着脱自在に保持される。
【0023】
図2及び図3に示すように、本実施形態の露光装置PEの照明光学系3は、紫外線照射用の光源である例えば高圧水銀ランプ61、及びこの高圧水銀ランプ61から照射された光を集光するリフレクタ62をそれぞれ有する複数のランプユニット60を備える光照射装置80と、光路ELの向きを変えるための平面ミラー63と、照射光路を開閉制御する露光制御用シャッターユニット64と、露光制御用シャッターユニット64の下流側に配置され、リフレクタ62で集光された光を照射領域においてできるだけ均一な照度分布となるようにして出射するオプティカルインテグレータ65と、オプティカルインテグレータ65から出射された光路ELの向きを変えるための平面ミラー66と、高圧水銀ランプ61からの光を平行光として照射するコリメーションミラー67と、該平行光をマスクMに向けて照射する平面ミラー(反射鏡)68と、を備える。なお、オプティカルインテグレータ65と露光面との間には、DUVカットフィルタ、偏光フィルタ、バンドパスフィルタが配置されてもよい。また、光源は、高圧水銀ランプは、単一のランプであってもよく、或いは、LEDによって構成されてもよい。
【0024】
そして、露光時にその露光制御用シャッターユニット64が開制御されると、ランプユニット60から照射された光が、平面ミラー63、オプティカルインテグレータ65、平面ミラー66、コリメーションミラー67、平面ミラー68を介して、マスクホルダ26に保持されるマスクM、ひいてはワークWの表面にパターン露光用の光として照射され、マスクMの露光パターンがワークW上に露光転写される。
【0025】
図3及び図4に示すように、光照射装置80は、ランプユニット60がα方向に6個、β方向に4段の計24個の取り付けられたカセット81が、3段×3列の計9個、支持体82に取り付けられ、合計216個のランプユニット60から構成される。なお、本実施形態のランプユニット60では、リフレクタ62の開口部が略正方形形状に形成されており、四辺がα、β方向に沿うように配置されている。
【0026】
図5に示すように、ランプユニット60は、ランプユニット60の光を照射する照射面(ここでは、リフレクタ62の開口面62a)と、ランプユニット60の光軸Lとの交点pが、各α、β方向において単一の曲面、例えば、球面r上に位置するように、カセット81に取り付けられている。更に、カセット81は、全てのランプユニット60の光を照射する照射面と、ランプユニット60の光軸Lとの交点Pが、各α、β方向において単一の曲面、例えば、球面r上に位置するように、所定の角度γで交差するように、支持体82に取り付けられている。従って、支持体82に位置決めされた全てのランプユニット60の光が照射する各照射面と、ランプユニット60の光が入射されるオプティカルインテグレータ65の入射面までの各光軸Lの距離は略一定となる。また、全てのランプユニット60の各光軸Lは、オプティカルインテグレータ65で交差する。
【0027】
また、図6に示すように、各カセット81のランプユニット60には、高圧水銀ランプ61に電力を供給する点灯電源95及び制御回路96が個々に接続されており、各ランプユニット60から後方に延びる各配線97は、各カセット81に設けられた少なくとも一つのコネクタ98に接続されてまとめられている。そして、各カセット81のコネクタ98と、支持体82の外側に設けられた光学制御部77との間は、他の配線99によってそれぞれ接続される。これにより、光学制御部77は、各高圧水銀ランプ61の制御回路96に制御信号を送信し、各高圧水銀ランプ61に対して点灯と消灯を含め、電圧を調整する電圧制御を行う。
【0028】
なお、各ランプユニット60の点灯電源95及び制御回路96は、カセット81に集約して設けられてもよいし、カセット81の外部に設けられてもよい。また、点灯電源95及び制御回路96は、ランプユニット60毎に設けているが、カセット81毎に1つ設けるようにし、カセット81内の各ランプユニット60を纏めて管理するようにしてもよい。
【0029】
図2図7図8に示すように、平面ミラー68(反射鏡)は、風冷強化(物理強化)や化学強化等により強化された板状のガラス板31と、ガラス板31の表面(露光光が入射する面。図8中の上面)に真空蒸着やスパッタ等で形成されたミラー膜32と、を有し、全体として正面視矩形状に形成されている。ミラー膜32は、露光光の少なくとも一部がガラス板31に入射可能であるように、少なくとも一つの孔33を有する。本実施形態においては、ミラー膜32の略中心に略円筒形状の孔33が一つ形成されている。
【0030】
平面ミラー68は、ガラス板31の裏面側に設けられた複数のミラー変形ユニット(ミラー曲げ機構)70によりミラー変形ユニット保持枠71に支持されている。このミラー変形ユニット70と、照明光学系3と、によって本発明に係る照明装置の一部が構成される。
【0031】
各ミラー変形ユニット70は、ガラス板31の裏面に接着剤で固定されるパッド72と、一端がパッド72に固定された支持部材73と、支持部材73を駆動する駆動装置であるアクチュエータ74と、を備える。
【0032】
支持部材73には、保持枠71に対してパッド72寄りの位置に、±0・5deg以上の屈曲を許容する屈曲機構としてのボールジョイント76が設けられており、保持枠71に対して反対側となる他端には、アクチュエータ74が取り付けられている。
【0033】
さらに、マスク側のアライメントマーク(図示せず)の位置に露光光を反射する平面ミラー68の各位置の裏面には、複数の接触式センサ83が取り付けられている。
【0034】
これにより、平面ミラー68は、信号線91により各アクチュエータ74に接続されたミラー制御部94からの指令に基づいて(図2参照)、接触式センサ83によって平面ミラー68の変位量をセンシングしながら、各ミラー変形ユニット70のアクチュエータ74を駆動して、各支持部材73の長さを変えることによって、平面ミラー68の曲率を局部的に補正し、平面ミラー68のデクリネーション角を補正することができる。
【0035】
その際、各ミラー変形ユニット70には、ボールジョイント76が設けられているので、支持部側の部分を三次元的に回動可能とすることができ、各パッド72を平面ミラー68の表面に沿って傾斜させることができる。このため、各パッド72と平面ミラー68との接着剥がれを防止するすると共に、移動量の異なる各パッド72間における平面ミラー68の応力が抑制され、平均破壊応力値が小さいガラス素材からなる場合であっても、平面ミラー68の曲率を局部的に補正する際、平面ミラー68を破損することなく、10mmオーダーで平面ミラー68を曲げることができ、曲率を大きく変更することができる。
【0036】
図2及び図9に示すように、平面ミラー68(ガラス板31)の裏面側であり、孔33とガラス板31を介して対向する位置には、照度計40が配置される。ミラー変形ユニット保持枠71には、露光光の照射方向(図2及び図9中の左右方向)に延びるブラケット35(固定部材)が連結されており、このブラケット35の先端付近に照度計40が固定される。なお、露光光の照度を適切に測定するためには、照度計40は平面ミラー68の近傍に配置されることが望ましい。そのため、ブラケット35の平面ミラー68と近接する部分には、平面ミラー68と平行である面取り36が設けられ、ブラケット35及び当該ブラケット35に固定された照度計40を、平面ミラー68に近づけることを可能にしている。
【0037】
照度計40は、露光光を受光してその照度を測定する受光部41と、受光部41がその内部に配置され、ブラケット35に固定される筐体42と、を有する。筐体42は、受光部41を覆う箱型形状であり、孔33と対向する前面43に例えば円筒形状の貫通穴44が形成される。ここで、貫通穴44は、孔33及びガラス板31を透過した露光光の少なくとも一部が入射する位置に形成されているので、当該貫通穴44から筐体42の内部に入射した露光光は、受光部41によって受光され、その照度が測定される。光学制御部77は、照度計40によって測定された照度に基づいて、各高圧水銀ランプ61の制御回路96に制御信号を送信し、各高圧水銀ランプ61に対して電圧を調整する電圧制御を行う。これにより、露光光の照度が所望の値に調整される。
【0038】
ここで、図10に示すように、貫通穴44の大きさ(直径)Rは、孔33の大きさ(直径)Lとsinθ(θ:露光光と平面ミラー68とがなす角度)との積Lsinθに比べて十分に小さく設定される。図中、EL1及びEL2は、孔33を介してガラス板31を透過する露光光のうち、最も外側の光路を示すものであり、EL3及びEL4は、貫通穴44に入射して受光部41によって受光される露光光の光路のうち、最も外側の光路を示すものである。光路EL1及びEL2の間の距離はLsinθであり、光路EL3及びEL4の間の距離はRである。図10(a)に示すように、ミラー変形ユニット70による平面ミラー68の曲率補正前においては、光路EL1及びEL2の間に光路EL3及びEL4が含まれる。さらに、図10(b)に示すように、平面ミラー68の曲率が補正され、例えば孔33の位置が下方に変位した場合であっても、光路EL1及びEL2の間に光路EL3及びEL4が含まれるので、受光部41によって測定される照度は変化しない。このように、ミラー変形ユニット70による平面ミラー68の曲率補正前後において、貫通穴44に入射し受光部41が受光する露光光の照度に変化がないように、貫通穴44の大きさを小さく設定することで、平面ミラー68の曲率が変化した場合であっても、受光部41は露光光の照度を適切に測定することが可能である。
【0039】
一方、比較例として図11に示すように、R=Lsinθとした場合、平面ミラー68の曲率補正前においては、孔33を通過した露光光のほぼ全てが貫通穴44に入射し、受光部41によって受光される。このとき、光路EL1及びEL2並びに光路EL3及びEL4はそれぞれ一致する。次に、平面ミラー68の曲率が補正され、孔33の位置が下方に変化した場合、貫通穴44に入射する光路EL3及びEL4の間の露光光は、平面ミラー68の曲率補正前に比べて少なくなる。この場合、高圧水銀ランプ61の照射強度を変更していないにも拘らず、受光部41によって測定される照度が変化してしまう。
【0040】
以上説明したように、照明光学系3とミラー変形ユニット70と照度計40とを有する照明装置、及び当該照明装置を備える露光装置PEでは、照明光学系3において、露光時に露光制御用シャッターユニット64が開制御されると、高圧水銀ランプ61から照射された光が、平面ミラー63で反射されてインテグレータ65の入射面に入射される。そして、インテグレータ65の出射面から発せられた光は、平面ミラー66、コリメーションミラー67、及び平面ミラー68によってその進行方向が変えられるとともに平行光に変換される。そして、この平行光は、マスクステージ1に保持されるマスクM、さらにはワークステージ2に保持されるワークWの表面に対して略垂直にパターン露光用の光として照射され、マスクMのパターンPがワークW上に露光転写される。
【0041】
ここで、ワークWのパターンに対応してワークW上に露光転写されるマスクMのパターンを補正するため、ミラー制御部94から平面ミラー68の各アクチュエータ74に対して駆動信号が伝達される。各ミラー変形ユニット70のアクチュエータ74は、各支持部材73の長さを変えて、平面ミラー68の曲率を局部的に補正して、平面ミラー68のデクリネーション角を補正する。
【0042】
なお、上述したように、平面ミラー68に入射した光の一部は、ミラー膜32に設けられた孔33を介してガラス板31を透過し、照度計40によってその照度が測定される。したがって、従来の特許文献1の発明と異なり、平面ミラー68のうち照度測定に必要な部分のみ光が透過するように構成されているので、露光光のエネルギーロスを少なくすることが可能である。また、光学制御部77は、照度計40によって測定された照度に基づいて、各高圧水銀ランプ61の制御回路96に制御信号を送信し、各高圧水銀ランプ61に対して電圧を調整する電圧制御を行う。これにより、露光光の照度が適切に調整される。
【0043】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【0044】
例えば、照度計40は二つ以上配置してもよく、その場合、平面ミラー68のミラー膜32には照度計40と同数の孔33が形成される。照度計40を二つ以上とすることにより、複数の波長において露光光の照度測定を行うことが可能となる。
【0045】
また、図12に示すように、ガラス板31の表面において、ミラー膜32の孔33と対向する位置には、反射防止膜34を形成しても構わない。このように反射防止膜34を形成することにより、孔33を通過した光がガラス板31の表面で反射することを抑制でき、照度計40による照度測定をより適切に行うことが可能となる。反射防止膜34により、ミラーの透過率が85%以上を確保するのが好ましい。これにより、照度計40が照度をより感知し易くなり、照度測定をより適切に行うことができる。なお、図13に示すように、ガラス板31の裏面において、ミラー膜32の孔33と対向する位置に、反射防止膜34を形成しても構わない。また、図14に示すように、ガラス板31の表面全体に反射防止膜34を形成し、当該反射防止膜34の表面にミラー膜32を形成しても構わない。また、図12及び図13の構成を組み合わせてガラス板31の表面及び裏面に反射防止膜を形成してもよく、図13及び図14の構成を組み合わせてガラス板31の表面及び裏面に反射防止膜を形成してもよい。
【符号の説明】
【0046】
2 ワークステージ(ワーク支持部)
3 照明光学系
26 マスクホルダ(マスク支持部)
31 ガラス板
32 ミラー膜
33 孔
34 反射防止膜
35 ブラケット(固定部材)
36 面取り
40 照度計
41 受光部
42 筐体
43 面
44 貫通穴
61 高圧水銀ランプ(光源)
68 平面ミラー(反射鏡)
70 ミラー変形ユニット(ミラー曲げ機構)
71 ミラー変形ユニット保持枠
72 パッド
73 支持部材
74 アクチュエータ
76 ボールジョイント
83 接触式センサ
M マスク
PE 近接露光装置(露光装置)
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14