特許第6500293号(P6500293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6500293DNAメチル化編集用キットおよびDNAメチル化編集方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6500293
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】DNAメチル化編集用キットおよびDNAメチル化編集方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20190408BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   C12N15/09 110
   C12N15/63 ZZNA
【請求項の数】22
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-552723(P2017-552723)
(86)(22)【出願日】2016年11月25日
(86)【国際出願番号】JP2016084958
(87)【国際公開番号】WO2017090724
(87)【国際公開日】20170601
【審査請求日】2018年9月13日
(31)【優先権主張番号】特願2015-229896(P2015-229896)
(32)【優先日】2015年11月25日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 革新的バイオ医薬品創出基盤技術開発事業「新規CRISPR−Casシステムセットの開発とその医療応用」にかかる委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(72)【発明者】
【氏名】畑田 出穂
(72)【発明者】
【氏名】森田 純代
(72)【発明者】
【氏名】堀居 拓郎
【審査官】 関 景輔
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/152432(WO,A1)
【文献】 TANENBAUM E. M. et al.,A Protein-Tagging System for Signal Amplification in Gene Expression and Fluorescence Imaging,Cell,2014年,Vol.159,pp.635-646
【文献】 MAEDER M. L. et al.,Targeted DNA demethylation and activation of endogenous genes using programmable TALE-TET1 fusion proteins,Nature Biotechnology,2013年,Vol.31, No.12,pp.1137-1142
【文献】 MALI P. et al.,Cas9 as a versatile tool for engineering biology,Nature Methods,2013年,Vol.10, No.10,pp.957-963
【文献】 山崎大賀 他,ゲノム編集技術を応用したペリセントロメアへの人為的・配列得的DNAメチル化誘導,BMB2015講演要旨集,2015年11月 6日,Vol.2015th,#1P0832
【文献】 SHEN L. et al.,A single amino acid substitution confers enhanced methylation activity of mammalian Dnmt3b on chromatin DNA,Nucleic Acids Research,2010年,Vol.38, No.18,pp.6054-6064
【文献】 CABANTOUS S. et al.,A new protein-protein interaction sensor based on tripartite split-GFP association,Scientific Reports,2013年,Vol.3,pp.2854/1-2854/9
【文献】 SKELTON N. J. et al.,Origins of PDZ domain ligand specificity,The Journal of Biological Chemistry,2003年,Vol.278, No.9,pp.7645-7654
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ヌクレアーゼ活性を有しない不活性化型CRISPR-associated endonuclease Cas9(dCas9)と、タグペプチドが15〜50アミノ酸からなるペプチドリンカーを挟んで複数つながったタグペプチドアレイとの融合蛋白質、またはそれをコードするRNAもしくはDNA、(2)タグペプチド結合部位と、メチル化酵素もしくは脱メチル化酵素との融合蛋白質、またはそれをコードするRNAもしくはDNA、および
(3)メチル化または脱メチル化を所望する部位から1kb以内のDNA配列と相補的な配列を含むガイドRNA(gRNA)、またはそれを発現するRNAもしくはDNA
を含む、DNAメチル化編集用キット。
【請求項2】
前記脱メチル化酵素が、Ten-eleven translocation 1の触媒部位(TET1CD)である、請求項1に記載のDNAメチル化編集用キット。
【請求項3】
前記メチル化酵素が、DNA Methyltransferase 3 beta (DNMT3B)である、請求項1に記載のDNAメチル化編集用キット。
【請求項4】
前記タグペプチドがペプチドエピトープであり、前記タグペプチド結合部位が抗ペプチドエピトープ抗体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のDNAメチル化編集用キット。
【請求項5】
前記ペプチドエピトープがGeneral Control Non-derepressible 4(GCN4)ペプチドエピトープであり、前記抗ペプチドエピトープ抗体が抗GCN4ペプチドエピトープ抗体である、請求項4に記載のDNAメチル化編集用キット。
【請求項6】
前記ペプチドエピトープがHisタグまたはEEタグであり、前記抗ペプチドエピトープ抗体が抗Hisタグ抗体または抗EEタグ抗体である、請求項4に記載のDNAメチル化編集用キット。
【請求項7】
前記抗体が一本鎖抗体(scFv)である、請求項4〜6のいずれか一項に記載のDNAメチル化編集用キット。
【請求項8】
前記タグペプチドがスプリットタンパク質のスモールフラグメントであり、前記タグペプ
チド結合部位がスプリットタンパク質のラージフラグメントである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のDNAメチル化編集用キット。
【請求項9】
前記スプリットタンパク質がGFPである、請求項8に記載のDNAメチル化編集用キット。
【請求項10】
前記タグペプチドがGVKESLV(配列番号44)であり、前記タグペプチド結合部位がPDZ proteinである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のDNAメチル化編集用キット。
【請求項11】
前記リンカーが15〜40アミノ酸である、請求項1〜10のいずれか一項に記載のDNAメチル化編集用キット。
【請求項12】
前記(1)および/または(2)の融合蛋白質が、さらに選択マーカーを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載のDNAメチル化編集用キット。
【請求項13】
前記gRNAが複数である、請求項1〜12のいずれか一項に記載のDNAメチル化編集用キット。
【請求項14】
前記(1)〜(3)のDNAが全て一つのベクターに含まれている、請求1〜13のいずれか一項に記載のDNAメチル化編集用キット。
【請求項15】
下記(1)〜(3)を細胞にトランスフェクションする工程を含む、DNAメチル化編集方法。
(1)ヌクレアーゼ活性を有しない不活性化型CRISPR-associated endonuclease Cas9(dCas9)と、タグペプチドが15〜50アミノ酸からなるペプチドリンカーを挟んで複数つながったタグペプチドアレイとの融合蛋白質、またはそれをコードするRNAもしくはDNA、(2)タグペプチド結合部位と、メチル化酵素もしくは脱メチル化酵素との融合蛋白質、またはそれをコードするRNAもしくはDNA、および
(3)メチル化または脱メチル化を所望する部位から1kb以内のDNA配列と相補的な配列を含むガイドRNA(gRNA)、またはそれを発現するRNAもしくはDNA。
【請求項16】
前記(1)および/または(2)の融合蛋白質が、さらに選択マーカーを含む、請求項15に記載のDNAメチル化編集方法。
【請求項17】
前記選択マーカーを発現する細胞を選択して回収する工程をさらに含む、請求項16に記載のDNAメチル化編集方法。
【請求項18】
前記脱メチル化酵素が、Ten-eleven translocation 1の触媒部位(TET1CD)である、請求項15〜17のいずれか一項に記載のDNAメチル化編集方法。
【請求項19】
前記メチル化酵素が、DNA Methyltransferase 3 beta (DNMT3B)である、請求項15〜17のいずれか一項に記載のDNAメチル化編集方法。
【請求項20】
(1)ヌクレアーゼ活性を有しない不活性化型CRISPR-associated endonuclease Cas9(dCas9)と、タグペプチドが15〜50アミノ酸からなるペプチドリンカーを挟んで複数つながったタグペプチドアレイとの融合蛋白質をコードするRNAもしくはDNA、
(2)タグペプチド結合部位と、メチル化酵素もしくは脱メチル化酵素との融合蛋白質をコードするRNAもしくはDNA、および
(3)メチル化または脱メチル化を所望する部位から1kb以内のDNA配列と相補的な配列を含むガイドRNA(gRNA)を発現するRNAもしくはDNA
を含む、ベクター。
【請求項21】
前記脱メチル化酵素が、Ten-eleven translocation 1の触媒部位(TET1CD)である、請求項20に記載のベクター。
【請求項22】
前記メチル化酵素が、DNA Methyltransferase 3 beta (DNMT3B)である、請求項20に記載のベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAメチル化編集用キットおよびDNAメチル化編集方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遺伝子DNAのシトシンのメチル化は遺伝子発現を制御するエピジェネティクス(エピゲノム)の代表的修飾である。特定の遺伝子のメチル化を制御できれば、癌などのエピゲノム疾患の解明やモデル作製、さらにはエピゲノム治療への応用が可能である。現在は、5-アザシトシンなどによるゲノム全体の脱メチル化を使った癌の治療が実用化されているが、すべての遺伝子に影響するので安全性に関しては疑問が残る。そのため、特定部位のメチル化を制御する技術の開発が望まれていた。
【0003】
特定部位のメチル化を制御する技術としては、これまでに、脱メチル化に関与する酵素であるTET1の触媒部位とTALENを融合させたタンパク質を用いた、特定遺伝子の脱メチル化技術の報告がある(非特許文献1)。しかし、旧世代のゲノム編集技術TALENを用いているので、非常に手間がかかる上に、脱メチル化できる程度はそれほど高くなかった。
【0004】
新世代のゲノム編集法としては、CRISPR/Cas(非特許文献2)を用いる方法が挙げられる。CRISPR/Cas ゲノム編集法としては、ペプチドエピトープが複数つながったアレイと、一本鎖抗体であるscFvを用いて、シグナル増幅に適用することは報告されているものの(非特許文献3)、当該方法をDNAメチル化の制御に適用することは知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Maeder ML et al. Nat Biotechnol, 31, 1137-1142, 2013
【非特許文献2】実験医学(羊土社)2014年7月号 第1690〜1714頁
【非特許文献3】Tanenbaum ME et al. Cell 159, 635−646, 2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑み、DNAメチル化編集用キットおよびDNAメチル化編集方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前述の課題を解決すべく鋭意検討した結果、CRISPR/Cas ゲノム編集法を用いることにより、特定部位のメチル化を効果的に制御することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1](1)ヌクレアーゼ活性を有しない不活性化型CRISPR-associated endonuclease Cas9(dCas9)と、タグペプチドがリンカーを挟んで複数つながったタグペプチドアレイとの融合蛋白質、またはそれをコードするRNAもしくはDNA、
(2)タグペプチド結合部位(tag peptide binding portion)と、メチル化酵素もしくは脱メチル化酵素との融合蛋白質、またはそれをコードするRNAもしくはDNA、および
(3)メチル化または脱メチル化を所望する部位から1kb以内のDNA配列と相補的な配列を含むガイドRNA(gRNA)、またはそれを発現するDNA
を含む、DNAメチル化編集用キット。
[2]前記脱メチル化酵素が、Ten-eleven translocation 1の触媒部位(TET1CD)である、[1]に記載のDNAメチル化編集用キット。
[3]前記メチル化酵素が、DNA Methyltransferase 3 beta (DNMT3B)である、[1]に記載のDNAメチル化編集用キット。
[4]前記タグペプチドがペプチドエピトープであり、前記タグペプチド結合部位が抗ペプチドエピトープ抗体である、[1]〜[3]のいずれかに記載のDNAメチル化編集用キット。
[5]前記ペプチドエピトープがGeneral Control Non-derepressible 4(GCN4)ペプチドエピトープであり、前記抗ペプチドエピトープ抗体が抗GCN4ペプチドエピトープ抗体である、[4]に記載のDNAメチル化編集用キット。
[6]前記ペプチドエピトープがHisタグまたはEEタグであり、前記抗ペプチドエピトープ抗体が抗Hisタグ抗体または抗EEタグ抗体である、[4]に記載のDNAメチル化編集用キット。
[7]前記抗体が一本鎖抗体(scFv)である、[4]〜[6]のいずれかに記載のDNAメチル化編集用キット。
[8]前記タグペプチドがスプリットタンパク質のスモールフラグメントであり、前記タグペプチド結合部位がスプリットタンパク質のラージフラグメントである、[1]〜[3]のいずれかに記載のDNAメチル化編集用キット。
[9]前記スプリットタンパク質がGFPである、[8]に記載のDNAメチル化編集用キット。
[10]前記タグペプチドがGVKESLVであり、前記タグペプチド結合部位がPDZ proteinである、[1]〜[3]のいずれかに記載のDNAメチル化編集用キット。
[11]前記リンカーが5〜100アミノ酸である、[1]〜[10]のいずれかに記載のDNAメチル化編集用キット。
[12]前記リンカーが5〜50アミノ酸である、[1]〜[11]のいずれかに記載のDNAメチル化編集用キット。
[13]前記リンカーが10〜50アミノ酸である、[1]〜[12]のいずれかに記載のDNAメチル化編集用キット。
[14]前記(1)および/または(2)の融合蛋白質が、さらに選択マーカーを含む、[1]〜[13]のいずれかに記載のDNAメチル化編集用キット。
[15]前記gRNAが複数である、[1]〜[14]のいずれかに記載のDNAメチル化編集用キット。
[16]前記(1)〜(3)のDNAが全て一つのベクターに含まれている、[1]〜[15]のいずれかに記載のDNAメチル化編集用キット。
[17]下記(1)〜(3)を細胞にトランスフェクションする工程を含む、DNAメチル化編集方法。
(1)ヌクレアーゼ活性を有しない不活性化型CRISPR-associated endonuclease Cas9(dCas9)と、タグペプチドがリンカーを挟んで複数つながったタグペプチドアレイとの融合蛋白質、またはそれをコードするRNAもしくはDNA、
(2)タグペプチド結合部位と、メチル化酵素もしくは脱メチル化酵素との融合蛋白質、またはそれをコードするRNAもしくはDNA、および
(3)メチル化または脱メチル化を所望する部位から1kb以内のDNA配列と相補的な配列を含むガイドRNA(gRNA)、またはそれを発現するDNA。
[18]前記(1)および/または(2)の融合蛋白質が、さらに選択マーカーを含む、[17]に記載のDNAメチル化編集方法。
[19]前記選択マーカーを発現する細胞を選択して回収する工程をさらに含む、[18]に記載のDNAメチル化編集方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特定部位のDNAメチル化を制御すること、たとえば、メチル化部位を脱メチル化すること、および、非メチル化部位をメチル化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】トランスフェクションしたベクターの構成要素を示す図(実施例1)。
図2】(a)STAT3結合部位をおよびマウスGfap部位を示す図。当該STAT3結合部位は、メチル化感受性CpG部位(TTCCGAGAAにおけるCG))を有する。gRNA(Gfap1-3)として使用されたターゲット1〜3を、黒の太い横棒で示す。(b)Gfap1-3をターゲットとするgRNAを使用した、TET1触媒ドメイン(TET1CD)に直接結合されたdCas9(システム1)の脱メチル化活性を示すグラフ。縦軸は、表中の数式(下記数式1と同じ)により計算された値を、標準化された脱メチル化%として表す。
図3】(a)dCas9および繰り返しペプチドアレイに基づく脱メチル化増幅のスキームを示す図。繰り返しペプチドアレイと融合したヌクレアーゼ活性を有しない不活性化型Cas9(dCas9)は、複数のscFv抗体-融合TET1CDをリクルートすることができる。そのため、当該複数のTET1CDは、より効果的にターゲットを脱メチル化することができる。(b)dCas9に融合した、各々のGCN4ペプチドエピトープを分離するリンカーの長さが、短すぎる場合(左)、適切な場合(中央)、および長すぎる場合(右)を示す図。
図4】(a)縦軸は、下記数式1により計算された値を、標準化された脱メチル化%として表す。横軸は、使用したベクターの構成及びソーティングの有無を示す。gRNAはGfapのターゲット2を使用した。(b)ターゲット部位周辺のメチル化を示す図。システム3およびGfap2をターゲットとするgRNAまたはコントロールgRNAをトランスフェクトしたESCsが、GFPによりソートされ、バイサルファイトシークエンスによりメチル化を解析した。黒白スタイルの円は、メチル化のパーセントを表しており、黒はメチル化、白は非メチル化を示す。円の下の数字は、各々の位置を表す。2つの群(Gfapとコントロール)における全てのCpG部位セットの間の統計的有意は、マンホイットニーUテストで評価された。
図5】Gfap2をターゲットとするgRNAのオフターゲット部位1〜3周辺のメチル化を示す図。システム3およびGfap2をターゲットとするgRNAをトランスフェクトしたESCsが、GFPによりソートされ、バイサルファイトシークエンスによりオフターゲット部位1〜3周辺のメチル化を解析した。黒白スタイルの円は、メチル化のパーセントを表しており、黒はメチル化、白は非メチル化を示す。円の下の数字は、各々の位置を表す。2つの群(Gfapとコントロール)における全てのCpG部位セットの間の統計的有意は、マンホイットニーUテストで評価された。下線で示した配列の部分はGfap2ターゲットと塩基配列が一致する箇所を示す。
図6】(a)CTCF結合部位およびマウスH19部位を示す。CTCF結合部位はメチル化感受性CpG部位(m1〜m4)を有する。gRNAのターゲットに使用された部位1〜4を、m1〜m4を示す縦長のバーの下に示す。(b)システム1、3、およびシステム3+ソーティングを使用した、CTCF結合部位におけるm2の脱メチル化を示す。縦軸は、下記数式1により計算された値を、標準化された脱メチル化%として表す。横軸は、使用したベクターの構成及びソーティングの有無を示す。(c)システム3+ソーティングを使用した場合における、CTCF結合部位(m1〜m4)の脱メチル化を示すグラフ。m1〜m4の各々の部位における左側のバーは、ターゲット部位2をgRNAとして使用した場合における脱メチル化を示し、右側のバーは、ターゲット部位1〜4のgRNAを全て一緒に使用した場合における脱メチル化を示す。縦軸は、下記数式1により計算された値を、標準化された脱メチル化%として表す。
図7】トランスフェクションしたベクターの構成要素を示す図(実施例2)。
図8】(a)CTCF結合部位およびマウスH19部位を示す。CTCF結合部位はメチル化感受性CpG部位(m1〜m4)を有するが、実施例2ではm2をターゲットとして使用した。(b)システム3+ソーティングを使用した、CTCF結合部位におけるm2のメチル化を示す。縦軸は、下記数式2により計算された値を、標準化されたメチル化%として表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
CRISPR/Casでは、DNA切断酵素のCas9が、ターゲットと相補的な約20塩基の配列を含む短いRNA(ガイドRNA(gRNA))と複合体を形成し、ターゲットのDNAを切断する(非特許文献2)。ここで、dCas9というDNA切断活性のない変異体酵素を用いると、ターゲットを切断せずにターゲットへの結合のみを行うことができる。そこで、dCas9に様々な構成要素を結合させることで、メチル化や脱メチル化を行う因子をリクルートすると、特定の遺伝子のメチル化制御を行うことが可能である。またdCas9と、それと融合させたタグペプチドが複数つながったタグペプチドアレイと、タグペプチド結合部位、例えば、タグペプチドに対する一本鎖抗体(scFv)などのタグペプチド結合部位にメチル化や脱メチル化をおこなう因子を融合させたシステムを用いると、1つのdCas9に対して複数のメチル化因子や脱メチル化因子をリクルートでき、そのメチル化あるいは脱メチル化の能力を増強することができる(図3a)。
【0012】
本発明においては、まず、メチル化または脱メチル化を所望する部位から1kb以内のDNA配列と相補的な配列(ターゲット配列)を作製し、そして、当該ターゲット配列を含むgRNAを作製する。gRNAは、ヌクレアーゼ活性を有しないdCas9と複合体を形成する性質を有する。ここで、dCas9とタグペプチドアレイとの融合蛋白質を作製すると、gRNAはdCas9を介して当該融合蛋白質と複合体を形成するため、gRNA-dCas9-タグペプチドアレイ複合体が形成される。gRNAは、自身に含まれるターゲット配列と相補的な配列に結合するため、これによって、gRNA-dCas9-タグペプチドアレイ複合体は、メチル化または脱メチル化を所望する部位から1kb以内のDNA配列に結合することとなる。そして、タグペプチド結合部位とメチル化酵素または脱メチル化酵素との融合蛋白質は、タグペプチド結合部位がタグペプチドアレイに結合することにより、メチル化または脱メチル化を所望する部位から1kb以内にリクルートされる。リクルートされたメチル化酵素または脱メチル化酵素は、自身から1kb以内にある部位をメチル化または脱メチル化する(図3a)。
【0013】
(DNAメチル化編集用キットおよびDNAメチル化編集方法)
本発明は、(1)ヌクレアーゼ活性を有しない不活性化型CRISPR-associated endonuclease Cas9(dCas9)と、GCN4などのタグペプチドがリンカーを挟んで複数つながったタグペプチドアレイとの融合蛋白質、またはそれをコードするRNAもしくはDNA、(2)抗タグペプチド抗体などのタグペプチド結合部位と、メチル化酵素もしくは脱メチル化酵素との融合蛋白質、またはそれらをコードするRNAもしくはDNA、および(3)脱メチル化を所望する部位から1kb以内のDNA配列と相補的な配列を含むガイドRNA(gRNA)、またはそれを発現するDNAを含む、DNAメチル化編集用キットに関する。また、本発明は、上記(1)〜(3)を細胞にトランスフェクションする工程を含む、DNAメチル化編集方法に関する。
【0014】
DNAメチル化編集とは、DNAの非メチル化部位をメチル化すること、およびDNAのメチル化部位を脱メチル化することの両方を含む。
【0015】
(ヌクレアーゼ活性を有しない不活性化型Cas9)
CRISPR-associated endonuclease Cas9(Cas9)は、RECローブ(REC: recognition、認識)とNUCローブ(NUC: nuclease、ヌクレアーゼ)の2つのローブからなり、NUCローブがヌクレアーゼ活性を担う部位である(非特許文献2)。よって、本発明におけるヌクレアーゼ活性を有しない不活性化型Cas9(dCas9)は、Cas9のNUCローブに変異を導入したものである。これにより、ターゲット部位への結合能を保持したまま、Cas9のヌクレアーゼ活性を不活化させることができる。NUCローブへの変異導入部位は、ヌクレアーゼ活性のみを不活化させることができる限りにおいて制限はないが、たとえば、Cas9(UniProtKB/Swiss-Prot: Q99ZW2)におけるAsp10のアラニンへの変異(D10A)、His840のアラニンへの変異(H840A)、およびAsn863のアラニンへの変異(N863A)が好ましい。当該変異は、1種であっても、2種以上を組み合わせたものであってもよい。
【0016】
dCas9をコードするDNAは、GenBank等から入手可能なCas9をコードするDNAに変異を導入することにより、作製可能である。または、市販のdCas9を含むプラスミドをAddgene等から入手して使用してもよいし、当該プラスミドを鋳型としたPCRによりdCas9をコードするDNAを得てもよいし、当業者に公知の人工遺伝子合成技術を用いて人工的に作製してもよく、その入手方法に制限はない。dCas9をコードするRNAは、公知の分子生物学的手法により入手することができ、いずれの方法を用いてもよい。たとえば、前記dCas9をコードするDNAを鋳型とし、RNAポリメラーゼを作用させることにより入手することができる。
【0017】
(タグペプチドアレイ)
本発明におけるタグペプチドアレイとは、タグペプチドがリンカーを挟んで複数つながったものである。
タグペプチドは後述するタグペプチド結合部分との組み合わせで任意に選択できる。例えば、タグペプチドとタグペプチド結合部分の組み合わせとして、ペプチドエピトープとそれを認識する抗体の組み合わせ、スプリットタンパク質のスモールフラグメントとラージフラグメントの組み合わせなどが例示される。
ペプチドエピトープとそれを認識する抗体の組み合わせとしては、GCN4と抗GCN4抗体、Hisタグと抗Hisタグ抗体、EEヘキサペプチドと抗EEヘキサペプチド抗体、c-Mycタグと抗c-Mycタグ抗体、HAタグと抗HAタグ抗体、Sタグと抗Sタグ抗体、FLAGタグと抗FLAGタグ抗体などが例示される(Protein Engineering, Design & Selection vol. 24 no. 5 pp. 419-428, 2011)。この中ではGCN4に含まれるペプチドが好適に使用され、GCN4のアミノ酸配列は、たとえば、PDBから入手することができ、DNA配列は、GenBank等から入手可能である。また、当業者であれば、塩基配列変換ソフト等を用い、当該DNA配列情報に基づいて、それに対応するRNA配列も入手可能である。GCN4ペプチドエピトープとしては、GCN4におけるエピトープであれば制限なく使用できるが、配列番号1で表されるアミノ酸配列が好ましい。その他のタグペプチドのアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列も公知のデータベース等から情報を入手することができる。
【0018】
スプリットタンパク質とはあるタンパク質を2分したときに、2分したタンパク質が再集合して元と同じ構造をつくることができるタンパク質のペアのことをいう。特に元のタンパク質を2分するときに片方を短いペプチド(スモールフラグメント)としてタグペプチドと使用し、長い方の片割れ(ラージフラグメント)をタグペプチド結合部位として用いることができる(Current Opinion in Chemical Biology 2011, 15:789-797)。このような目的で使用できるスプリットタンパク質は公知のものを使用することができるが、例えば、GFP(Green Fluorescent Protein)が例示される。
【0019】
さらに、ペプチドとタンパク質のドメインとの結合はデータベース化されており、例えばPeptide Binding Proteins Database (http://pepbind.bicpu.edu.in/home.php)を参照することにより、タグペプチドとタグペプチド結合部分の組み合わせを見出すことができる。例えばPDZAlpha-Syntrophin PDZ protein interaction domainはGVKESLV(配列番号44)と結合できるのでGVKESLVをタグペプチドと使用し、PDZ domainをタグペプチド結合部分として使用することができる。
【0020】
さらにペプチドとペプチド結合部位のペアの結合力は別の不活性なドメインをリンカーを用いて結合させ進化工学で改良することにより強くすることができる。このようなペアを用いればさらに効率よくメチル化を制御できる(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2008, vol. 105 no. 18, 6578-6583)。
【0021】
上記のようなタグペプチドを複数含むタグペプチドアレイに挟まれるリンカーとしては、ペプチドとペプチド結合部位の結合を妨げず、本発明における所望の効果を妨げないものであれば、どのような配列のものでもよいが、たとえば、グリシンとセリンの繰り返し配列が挙げられる。また、当該リンカーの長さは、メチル化酵素もしくは脱メチル化酵素の種類等に合わせて適宜設定可能であるが、5〜100アミノ酸が好ましく、5〜50アミノ酸がより好ましく、10〜50アミノ酸がさらにより好ましい。後述のTETやDNMTの場合、15〜40アミノ酸がより好ましく、17〜30アミノ酸がさらにより好ましく、22アミノ酸が最も好ましい。グリシン(G)とセリン(S)の繰り返し配列でリンカーの長さを10アミノ酸とする場合には、例えば、リンカー配列はGSGSG(配列番号45)、GSGSGGSGSGSGGSGSGGSGSG(配列番号46)またはGSGSGGSGSGGSGSGGSGSGGSGGSGSGGSGSGGSGSGGSGSG(配列番号47)のようにすることができる。
【0022】
本発明におけるタグペプチドアレイとは、タグペプチドおよびリンカーの組み合わせを1単位とした場合、この単位が1または複数繰り返してつながったものを指す。複数とは、2以上の数であり、繰り返し数は、ターゲット部位からメチル化または脱メチル化部位までの距離や、メチル化酵素または脱メチル化酵素の種類等に応じて、適宜増減可能であり、たとえば3〜5回の繰り返しであってよい。
【0023】
タグペプチドアレイをコードするDNAは、GenBank等から入手可能なタグペプチドをコードするDNAに、所望のリンカーをコードするDNA配列を付加することにより、作製可能である。当該DNAは、当該DNAの配列情報に基づいて、分子生物学的手法により得る方法が公知であり、たとえば、当業者に公知の人工遺伝子合成技術を用いて人工的に作製することができ、その入手方法に制限はない。また、当業者であれば、塩基配列変換ソフト等を用い、当該DNA配列情報に基づいて、それに対応するRNA配列も入手可能である。
【0024】
(dCas9とタグペプチドアレイとの融合蛋白質、またはそれをコードするRNAもしくはDNA)
dCas9とタグペプチドアレイとの融合蛋白質をコードするDNAは、周知の遺伝子操作法を含む任意の方法を用いて、上記において定義したdCas9をコードするDNAとタグペプチドアレイをコードするDNAとを結合させることにより作製することができ、特に限定されない。また、当該融合蛋白質をコードするDNAには、選択マーカーをコードするDNA配列を挿入してもよい。当該選択マーカーにより、融合蛋白質をコードするDNAが導入された細胞を、セルソーティング等により選択することが可能となる。当該選択マーカーとしては、GFP、Ds-RedおよびmCherry等の蛍光蛋白質をコードする遺伝子や、ピューロマイシン耐性遺伝子およびネオマイシン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子が例示されるが、これらに限定されない。また、上記融合蛋白質またはそれをコードするRNAは、上記融合蛋白質をコードするDNAを使用して公知の分子生物学的手法により入手することができ、たとえば、上記融合蛋白質をコードするDNAを適切な発現ベクターに挿入して発現させることにより、得ることができる。
【0025】
(タグペプチド結合部位)
上記の通り、タグペプチド結合部位はタグペプチドの種類に応じて抗タグペプチド(ペプチドエピトープ)抗体、スプリットタンパク質のラージフラグメントなどを使用することができる。ここで、抗タグペプチド抗体は、タグペプチドを特異的に認識する抗体を意味する。抗タグペプチド抗体には、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体が含まれ得る。当該モノクローナル抗体は、モノクローナル抗体、モノクローナル抗体のフラグメント、F(ab')2化抗体、F(ab')化抗体、短鎖抗体(scFv)、ダイアボディ(Diabodies)およびミニボディ(Minibodies)を含むものとする。抗タグペプチド抗体をコードするDNAは、公知の分子生物学的手法により入手可能であり、たとえば、Addgeneプラスミド60904等の市販のプラスミドからPCRにより増幅して得ることができ、または、当業者に公知の人工遺伝子合成技術を用いて人工的に作製してもよく、その入手方法に制限はない。抗タグペプチド抗体またはそれをコードするRNAは、上記抗タグペプチド抗体をコードするDNAを適切な発現ベクターに挿入して発現させることにより、得ることができる。
【0026】
(メチル化酵素、脱メチル化酵素)
本発明におけるメチル化酵素としては、非メチル化部位のメチル化を触媒する酵素であれば制限なく使用することができ、DNA塩基配列上の特定の塩基をメチル化する酵素であるメチラーゼ、特定の塩基にメチル基を転移する酵素であるメチルトランスフェラーゼが含まれ、より具体的にはDNA Methyltransferase 3 beta(DNMT3B)、DNA Methyltransferase 3 alpha(DNMT3A)、DNA Methyltransferase 1(DNMT1)が挙げられる。本発明における脱メチル化酵素としては、メチル化部位の脱メチル化にいたる一連の反応を触媒する酵素であれば制限なく使用することができ、Ten-eleven translocation 1(TET1)、Ten-eleven translocation 2(TET2)、Ten-eleven translocation 3(TET3)、Thymine-DNA glycosylase(TDG)が含まれる。それら酵素は、酵素蛋白質の一部分であってもよいし、全体であってもよい。酵素蛋白質の一部分としては、酵素触媒部位が好ましく例示される。それら酵素をコードするDNAは、GenBank等から配列情報を入手可能であり、ヒト等の対象動物のcDNAからPCRにより作製可能である。または、それら酵素をコードするDNAは、当業者に公知の人工遺伝子合成技術を用いて人工的に作製してもよく、その入手方法に制限はない。それら酵素またはそれらをコードするRNAは、上記DNAを適切な発現ベクターに挿入して発現させることにより、得ることができる。
【0027】
(タグペプチド結合部位と、メチル化酵素もしくは脱メチル化酵素との融合蛋白質、またはそれをコードするRNAもしくはDNA)
抗ペプチドエピトープ抗体などのタグペプチド結合部位と、メチル化酵素もしくは脱メチル化酵素との融合蛋白質をコードするDNAは、周知の遺伝子操作法を含む任意の方法を用いて、上記において定義したタグペプチド結合部位をコードするDNAと、メチル化酵素または脱メチル化酵素をコードするDNAとを結合させることにより作製することができ、特に限定されない。また、当該融合蛋白質をコードするDNAには、選択マーカーをコードするDNA配列を挿入してもよい。当該選択マーカーにより、融合蛋白質をコードするDNAが導入された細胞を、セルソーティング等により選択して回収することが可能となる。当該選択マーカーとしては、GFP、Ds-RedおよびmCherry等の蛍光蛋白質をコードする遺伝子や、ピューロマイシン耐性遺伝子およびネオマイシン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子が例示されるが、これらに限定されない。なお、選択マーカーをコードするDNA配列が、上記dCas9とタグペプチドアレイとの融合蛋白質をコードするDNAに挿入されている場合、当該選択マーカーとは異なる選択マーカーを、タグペプチド結合部位とメチル化酵素もしくは脱メチル化酵素との融合蛋白質をコードするDNAに挿入してもよい。また、上記融合蛋白質またはそれをコードするRNAは、上記融合蛋白質をコードするDNAを使用して公知の分子生物学的手法により入手することができ、たとえば、上記融合蛋白質をコードするDNAを適切な発現ベクターに挿入して発現させることにより、得ることができる。
【0028】
(ガイドRNA(gRNA)、またはそれを発現するDNA)
本発明におけるガイドRNA(gRNA)は、CRISPER/Cas法におけるtracrRNAとcrRNAを人工的に連結させたものである。tracrRNAを発現するDNAは、非特許文献2(第1698頁)に記載されているRNA配列を基に、公知の手法によりそれに対応するDNAを得ることが可能である。たとえば、当業者に公知の人工遺伝子合成技術を用いて、当該DNAを人工的に作製してもよく、その入手方法に制限はない。または、任意のcrRNAに対応するDNA配列を挿入することにより所望のgRNAを発現させることができるプラスミドが市販されている(Addgeneプラスミド41824等)ので、それを使用してもよい。crRNAとしては、メチル化または脱メチル化を所望する部位から1kb以内のDNA配列と相補的な配列を使用する。gRNAは、1種類であってもよいし、それぞれ異なるcrRNAを含むgRNAを複数使用してもよい。
【0029】
(オールインワンベクター:all in one vector)
上記で述べた2つの融合蛋白質をコードするDNAを、さらに連結させて、dCas9、タグペプチドアレイ、タグペプチド結合部位、およびメチル化酵素もしくは脱メチル化酵素の融合蛋白質をコードするDNAをベクターに組み込み、使用してもよい。当該DNAを含むベクターを、オールインワンベクターと称する。当該融合蛋白質をコードするDNAには、適宜リンカーを挿入してもよい。たとえば、dCas9とタグペプチドアレイとの融合蛋白質(構成要素1とする)と、タグペプチド結合部位とメチル化酵素もしくは脱メチル化酵素の融合蛋白質(構成要素2とする)との間に、リンカーとして、ウイルス由来の2Aペプチドを挿入すると、当該2Aペプチドが細胞内で2Aペプチターゼにより切断されるため、構成要素1と2は連結されておらず、分離した2つの蛋白質として発現することになる。また、当該オールインワンベクターには、gRNAを含めても良い。
【0030】
本発明において目的遺伝子を含むベクターとしては、真核生物細胞において複製可能なベクター、ならびにエピソームを維持するベクターあるいは宿主細胞ゲノムに組み込まれるベクターが挙げられるが、ウイルスベクターが好ましく、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターがより好ましい。ベクターは、選択マーカーを含んでもよい。「選択マーカー」とは、選択マーカーが導入された細胞に選択可能な表現型を提供する遺伝エレメントをいい、一般には、遺伝子産物が細胞の増殖を阻害するかまたは細胞を殺傷する薬剤に対する耐性を与える遺伝子である。具体的には、例えば、Neo遺伝子、Hyg遺伝子、hisD遺伝子、Gpt遺伝子およびBle遺伝子が挙げられる。選択マーカーの存在を選択するために有用な薬物としては、例えば、Neoに対してはG418、Hygに対してはハイグロマイシン、hisDに対してはヒスチジノール、Gptに対してはキサンチン、そしてBleに対してはブレオマイシンが挙げられる。
【0031】
(細胞へのトランスフェクション)
細胞へのDNA、RNA、および蛋白質のトランスフェクションは、公知の任意の手段を使用することにより可能であり、市販のトランスフェクション用試薬を使用してもよい。たとえば、DNAのトランスフェクションには、エレクトロポレーション、Lipofectamine2000(Invitrogen)、jetPRIME Kit(ポリプラストランスフェクション)、DreamFect(オズバイオサイエンス)、GenePorter3000(オズバイオサイエンス)、Calcium Phosphate Transfection Kit(オズバイオサイエンス)等を使用可能である。RNAのトランスフェクションには、エレクトロポレーション、Lipofectamine 3000(Invitrogen)、RNAi Max(Invitrogen)、MessengerMAX(Invitrogen)等を使用可能である。蛋白質のトランスフェクションには、エレクトロポレーション、Lipofectamine CRISPRMAX(Invitrogen)、PULSin(ポリプラストランスフェクション)、Pro-DeliverIN(オズバイオサイエンス)、BioPORTER Protein Delivery Reagent(Genlantis)等を使用可能である。細胞へのトランスフェクションは、dCas9とタグペプチドアレイとの融合蛋白質とgRNAとで予め複合体を形成させ、当該複合体を細胞にトランスフェクションしてもよい。また受精卵にマイクロインジェクション、エレクトロポレーションによりDNA、RNA、蛋白質を導入することも可能である。
【実施例】
【0032】
以下に非限定的な例を参照して、本発明を更に説明する。なお、本実施例ではタグペプチドとしてGCN4を使用したが、これを他のタグペプチドに置き換えられることは当然のことである。
【0033】
実施例1.TET1CDを用いたターゲットの脱メチル化
<標的脱メチル基のためのプラスミド構築>
dCas9−TET1触媒部位(CD)融合蛋白質発現ベクター(pCAG−dCas9TET1CD)は、触媒として不活性なヌクレアーゼであるコドン最適化S.pyogenes Cas9(dCas9)をコードするcDNAを、ヒトTET1CDのN末端にある触媒ドメインに融合することにより作製された(システム1)。dCas9フラグメントは、PCRによりAddgeneプラスミド48240から増幅された。TET1CDフラグメントはヒトcDNAからPCRにより増幅された。
【0034】
図1におけるシステム1−4のdCas9フラグメントは、Addgeneプラスミド60903からPCRにより増幅された。使用されたGCN4のアミノ酸シークエンスはEELLSKNYHLENEVARLKK(配列番号1)である。GCN4間のリンカーシークエンスは、GSGSG(配列番号2:システム2)、GSGSGGSGSGSGGSGSGGSGSG(配列番号3:システム3)、およびGSGSGGSGSGGSGSGGSGSGGSGGSGSGGSGSGGSGSGGSGSG(配列番号4:システム4)である。GFPフラグメントはAddgeneプラスミド60904から増幅された。ScFvフラグメントもまた、Addgeneプラスミド60904から増幅された。全ての融合タンパク質は、CAGプロモーターのコントロール下において発現させた。オールインワンベクターは、システム3のコンポーネント1及び2を、2Aペプチド(配列番号5:GSGATNFSLLKQAGDVEENPGP)を挟んで融合して作製した。ベクターシークエンスは、配列番号6〜11(それぞれ、システム1(pCAG-dCas9TET1CD)、システム2のdCas9-GCN4融合蛋白質(pCAG-dCas9-10xGCN4_v4)、システム2〜4のscFv-TET1CD融合蛋白質(pCAG-scFvGCN4sfGFPTET1CD)、システム3のdCas9-GCN4融合蛋白質(pCAG-dCas9-5xPlat2AflD)、システム4のdCas9-GCN4融合蛋白質(pCAG-dCas9-3.5xSuper)、およびオールインワンベクター(pPlatTET-gRNA2))に示す。
【0035】
<gRNA構築>
GfapおよびH19のためのgRNAベクターは、Addgeneプラスミド41824の中にターゲットシークエンスを挿入することにより作製した。クローニングは、AflII部位の直線化と、gRNAフラグメントの挿入を媒介するギブソンアセンブリーシステムにより行った。
ターゲットシークエンスを表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
<細胞培養>
胚性幹細胞(ESCs)は、37℃、5%CO2下で、1%FBS、17.5%KSR100(10828028, Gibco)、0.2%の2−メルカプトエタノール(21985-023, Gibco)、およびESGRO mLIF,を1x103 ユニット/mL (ESG1107, Millipore)添加したダルベッコ改変イーグル培地−高濃度グルコース(D6429-500ML, Sigma)にて培養した。ESCsは、リポフェクトアミン2000(Invitrogen)を添付のプロトコールに従って使用してトランスフェクションを行い、トランスフェクションから48時間後に細胞を回収し、それらを、アッセイやFACSAriaII (BD Biosciences)によるソートに、直接使用した。
【0038】
<DNAメチル化解析>
ゲノムDNAは、Epitect Plus DNA Bisulfite Kit (QIAGEN)を添付の指示書に従って使用して処置された。修飾DNAは、下記表2のPCRプライマーを使用して増幅された。
【0039】
【表2】
【0040】
GfapのSTAT3部位、およびH19のm1−m4部位における脱メチル化パーセントは、Combined Bisulfite Restriction Analysis(COBRA)により決定された。下記表3のプライマーを使用して増幅されたフラグメントを、上記部位の中に認識部位を有する下記表3において示す制限酵素で切断し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した。
【0041】
【表3】
【0042】
メチル化は、エチジウムブロマイドで染色したゲルのデンシトメトリー解析で、切断DNAの比として計算された。各々のアッセイにおいて、コントロールベクター(空のgRNAベクター)でトランスフェクトされた細胞のメチル化は、100%メチル化(0%脱メチル化)として定義され、各々のサンプルの脱メチル化は、以下の数式1を使用してコントロールによって標準化された。
サンプル脱メチル化(%)=(コントロールのメチル化-サンプルのメチル化)/コントロールのメチル化×100・・・数式1
【0043】
周辺領域のメチル化解析およびオフターゲット解析のために、バイサルファイトシークエンスが行われた。増幅されたフラグメントをTOPOベクター(Invitrogen)にライゲーションし、少なくとも14クローンのシークエンスを行った。シークエンスは、QUantification tool for Methylation Analysis (QUMA)と呼ばれるメチル化解析ツールにより解析された。CpG部位における全セットのうちの2グループ間における統計的有意性は、ノンパラメトリック統計的有意性の検定に使用されるマンホイットニーUテスト(ウィルコクソンの順位和検定とも呼ばれる)を用いて評価した。
【0044】
<結果>
まず、メチル化処置のために、不活性化Cas9ヌクレアーゼ(dCas9)とTET1との直接融合タンパクというシンプルな設計を作製した。TET1は、C末端に保存された触媒ドメインを有しており、このドメインはフルレングスのタンパク質よりも高い触媒活性を有する。そのため、このTET1触媒ドメイン(TET1CD)を、触媒作用が不活性であるdCas9に融合させた(図1のシステム1)。
【0045】
アストロサイト特異的マーカーであるGfap遺伝子をコードするグリア細胞線維性酸性タンパク質(GFAP)の上流におけるSTAT3−結合部位内のシトシン残基は、ターゲットとして使用された。当該部位は、アストロサイトを除く多くの細胞タイプにおいてメチル化され、当該部位の脱メチル化は、神経前駆細胞(NPCs)のアストロサイトへの分化において、重要な役割を有する。STAT3−結合部位周辺の3つのターゲットを設計し(図2a)、それらのためのgRNAベクターを作製して、当該gRNAベクターを、dCAS9−TET1CD融合タンパク質発現ベクター(pCAG−dCas9TET1CD)と共に、一過性に胚性幹細胞(ESCs)に導入した。STAT3−結合部位のメチル化は、Combined Bisulfite Restriction Analysis(COBRA)により解析された。各々のアッセイにおいて、コントロールベクター(空のgRNAベクター)と共に遺伝子導入した細胞のメチル化は、0%脱メチル化(100%メチル化)と定義され、各々のサンプルの脱メチル化は、コントロールにより標準化された。
【0046】
これら3つのgRNAGfap1、Gfap2、およびGfap3は、STAT3
部位において、それぞれ3%、14%、および9%の脱メチル化を示した(図2b)。一方、無関係のgRNA(UR1、UR2、およびUR3)は脱メチル化を示さなかった。よって、このシンプルなシステムはgRNA依存的特異的脱メチル化を誘発するが、脱メチル化の程度はせいぜい14%であることが示された。
【0047】
次に、抗体融合TET1ヒドロキシラーゼ触媒ドメインの複数コピーをリクルートするために、反復ペプチド配列に融合されたdCas9を使用して、脱メチル化能を増幅することを試みた(図3a)。Gfap STAT3部位の脱メチル化のために、ESCsにおいて、Gfap2gRNA、GCN4ペプチドを10コピー有するdCas9、およびGCN4ペプチド抗体(scFv)−スーパーフォルダー緑色蛍光タンパク質(sfGFP)−TET1CD融合タンパク質の発現ベクターを使用した(図1のシステム2)。しかし、このシステム2の使用により、脱メチル化の程度は改善されなかった(図4a)。
【0048】
システム2により脱メチル化の程度が改善されなかった原因を探るために、19アミノ酸からなるGCN4ペプチドエピトープの配列を分離しているリンカーの長さを検証した。もしリンカーの長さが短すぎるのであれば、抗体−TET1CD融合タンパク質にとって、GCN4ペプチド配列に接近し結合するためのスペースが狭すぎるため、脱メチル化活性が不十分となると考えられる。もしリンカーの長さが長すぎるのであれば、抗体−TET1CD融合タンパク質はターゲットメチル化部位に近づくことができないと考えられる(図3b)。システム2のリンカーの長さは、5アミノ酸であった(図1システム2)。
【0049】
22アミノ酸長のリンカーを有するdCas9−GCN4融合タンパク質(図1のシステム3)、および43アミノ酸長のリンカーを有するdCas9−GCN4融合タンパク質(図1のシステム4)を作製し、脱メチル化活性を比較した。合成遺伝子技術における技術的制限のために、22アミノ酸長のリンカーおよび43アミノ酸長のリンカーを有するGCN4ペプチドのコピー数は、それぞれ5および4に減少させた。GCN4ペプチドのコピー数の減少にも関わらず、22アミノ酸長のリンカーが43%と最も良い脱メチル化を示した。44アミノ酸長のリンカーは2番目に活性が高く、プロトタイプである5アミノ酸長は最も低かった(図4a)。
【0050】
これらの結果は、脱メチル化活性には、GCN4のコピー数よりも、dCas9に融合する各々のGCN4ペプチドユニット配列を分離するリンカーの長さが重要であることを示唆した。リンカーの長さを5アミノ酸から22アミノ酸に拡張することにより、脱メチル化活性は顕著に改善した。これは、22アミノ酸が、抗体−TET1CD融合タンパク質がペプチド配列に近づくために十分な広さであったことによると思われる。一方、43アミノ酸のリンカー長では、抗体−TET1CD融合タンパク質がターゲットであるメチル化部位に近づくには長すぎたと思われる。
【0051】
さらに脱メチル化効率を改善するために、fluorescence activated cell sorting (FACS)を使用して、GFP発現ベクター導入細胞を選択した。この目的のために、gRNA、システム3のGCN4配列を含むdCas9、および抗体−sfGFP−TET1CD融合タンパク質を含むオールインワン(all-in-one)ベクターを作製した(図1)。GFPでソートされたオールインワン導入ESCsは、ほぼ完全な脱メチル化を示した(図4)。また、期待に反して、システム3を導入しGFPでソートされたESCsもまた、ほぼ完全な脱メチル化を示した(図4)。脱メチル化能の促進とソーティング技術により、ターゲット領域における完全な脱メチル化が達成された。
【0052】
次に、ソートされたサンプルを使用して、バイサルファイトシークエンスにより、ターゲット部位からの脱メチル化の範囲を検証した。脱メチル化は、ターゲット部位から少なくとも100bp以上離れた部位でも起こっていた(図4b)。また、同じサンプルを使用して、バイサルファイトシークエンスにより、オフターゲット活性も検証したところ、顕著なオフターゲット活性は観察されなかった(図5)。
【0053】
次に、同様の実験を、父系メチル化インプリンティング遺伝子であるH19のメチル化可変領域(differential methylation region;DMR)を用いて行った。H19のDMRには、4つのメチル化感受性CTCF結合部位(m1−m4)があり、H19インプリンティングの調整に重要である(図6a)。m2をターゲットとするgRNA(H19DMR2)を、dCas9−TET1CDまたはシステム3と共にESCsに導入し、システム3導入細胞は、導入後に細胞ソーティングを行ったものも作製した。
【0054】
その結果、システム3はdCas9−TET1CDと比較して、顕著なメチル化の改善が観察された。GFPでソートした細胞では、m2部位において完全な脱メチル化が観察された(図6b)。GFPでソートした細胞は、さらに周辺領域のメチル化について解析をしたところ、ターゲット領域から200bp離れたm1部位において完全な脱メチル化が示された(図6c)。一方、ターゲット部位から1kb以上離れたm3とm4部位は、わずかに脱メチル化されただけであり(図6c)、脱メチル化効果は1kb以上れた部位にはおよばないことが示唆された。また、複数部位ターゲティングの可能性をテストするために、m1−m4のgRNAをシステム3と共に導入した(H19DMR1−4)。その結果、GFPでソートされた細胞において、4つの部位(m1〜m4)全てにおいてほぼ完全な脱メチル化が観察された(図6c)。このことは、複数のgRNAを使用することにより、複数部位を脱メチル化することが可能であることが示された。
【0055】
実施例2.Dnmt3bを用いたターゲットのメチル化
ターゲットにメチル化を導入するためシステム3(リンカー22aa)を用いてH19のm2部位のメチル化をおこなった。TET1CDの代わりに(1)Dnmt3b、(2)Dnmt3bNLS、(3)Dnmt3bNLS_N662Rを用いて実験を行った(図7)。(1)はDe novoメチル化酵素Dnmt3bで、(2)は(1)のDnmt3bのC末にNLS(核移行シグナル)をつけたもの、(3)は(2)の662番目のアミノ酸をアスパラギン(N)からアルギニン (R)に変えたものである。このアミノ酸置換はメチル化活性を向上させることが報告されている(下記のShen L et al.)。用いたプラスミドは以下の通り。
(1)Dnmt3b: pCAG-scFvGCN4sfGFPDnmt3bF(配列番号41)
(2)Dnmt3bNLS: pCAG-scFvGCN4sfGFPDnmt3bFNLS(配列番号42)
(3)Dnmt3bNLS_N662R: pCAG-scFvGCN4sfGFPDnmt3bS1(配列番号43)
これらの(1)〜(3)の系をES細胞に導入して2日目にGFPの蛍光によりセルソーターで遺伝子が導入されて蛍光を発する細胞のみを単離し、脱メチル化のときと同様にH19のm2のメチル化を調べた。メチル化は数式2のようにコントロールで標準化したメチル化(%)として計算した。その結果、ターゲットのメチル化は(1)54%、(2)74%、(3)84%となり、メチル化効率はDnmt3bだけよりはNLSをつけた方がよく、さらにN662Rのアミノ酸置換をいれたものの方がよいことがわかった(図8)。
コントロールで標準化したメチル化(%)=(サンプルのメチル化-コントロールのメチル化)/コントロールのメチル化×100・・・数式2

参考文献
Shen L, Gao G, Zhang Y, Zhang H, Ye Z, Huang S, Huang J, Kang J. A single amino acid substitution confers enhanced methylation activity of mammalian Dnmt3b on chromatin DNA. Nucleic Acids Res. 38:6054-6064, 2010. doi: 10.1093/nar/gkq456.
【0056】
配列番号1:GCN4
配列番号2:リンカー5
配列番号3:リンカー22
配列番号4:リンカー43
配列番号5:2Aペプチド
配列番号6:pCAG-dCas9TET1CD
配列番号7:pCAG-dCas9-10xGCN4_v4
配列番号8:pCAG-scFvGCN4sfGFPTET1CD
配列番号9:pCAG-dCas9-5xPlat2AflD
配列番号10:pCAG-dCas9-3.5xSuper
配列番号11:pPlatTET-gRNA2
配列番号12:Gfap_1
配列番号13:Gfap_2
配列番号14:Gfap_3
配列番号15:H19DMR_1
配列番号16:H19DMR_2
配列番号17:H19DMR_3
配列番号18:H19DMR_4
配列番号19:UR_1
配列番号20:UR_2
配列番号21:UR_3
配列番号22:GfapSTAT3-B3
配列番号23:GfapSTAT3-B4
配列番号24:H19DMR-B1
配列番号25:H19DMR-B2
配列番号26:Gfap_O1B1
配列番号27:Gfap_O1B2
配列番号28:Gfap_O2B1
配列番号29:Gfap_O2B2
配列番号30:Gfap_O3B1
配列番号31:Gfap_O3B2
配列番号32:GfapSTAT3-B1
配列番号33:GfapSTAT3-B2
配列番号34:H19DMR-B3
配列番号35:H19DMR-B4
配列番号36:H19DMR-B5
配列番号37:H19DMR-B6
配列番号38:off target 1
配列番号39:off target 2
配列番号40:off target 3
配列番号41:pCAG-scFvGCN4sfGFPDnmt3bF
配列番号42:pCAG-scFvGCN4sfGFPDnmt3bFNLS
配列番号43:pCAG-scFvGCN4sfGFPDnmt3bS1
配列番号44:タグペプチドGVKESLV
配列番号45:GSリンカー
配列番号46:GSリンカー
配列番号47:GSリンカー
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によって特定の遺伝子のメチル化を制御することができる。それにより、癌やインプリンティング疾患などDNAメチル化異常により発症する疾患(エピゲノム疾患)のモデル細胞、動物を作製することが可能である。またウイルスベクターその他のデリバリーシステムを用いれば、それらの疾患の治療に用いることが可能である。またiPS細胞作製において、Oct-4等の万能遺伝子を、本発明によって脱メチル化し活性化することにより、効果的にiPS細胞を作製することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]