特許第6500300号(P6500300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6500300
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】部品、装置及び地盤調査装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/04 20060101AFI20190408BHJP
   G01N 1/08 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   E02D1/04
   G01N1/08 C
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-102319(P2015-102319)
(22)【出願日】2015年5月20日
(65)【公開番号】特開2016-216992(P2016-216992A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】513294323
【氏名又は名称】株式会社明倫開発
(74)【代理人】
【識別番号】100174805
【弁理士】
【氏名又は名称】亀山 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】明石 博嗣
(72)【発明者】
【氏名】大石 正行
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭49−040642(JP,Y1)
【文献】 特開平09−072184(JP,A)
【文献】 特開2005−009253(JP,A)
【文献】 特開2005−036570(JP,A)
【文献】 特開2001−342620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/04
G01N 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力を直接または間接的に受ける受け機構と、
土壌試料を採取可能な土壌サンプラ及び地盤の硬度を測定する貫入試験具が着脱自在な作用部側装着機構と、
前記受け機構が受けた外力を前記作用部側装着機構へ伝達する伝達機構と、を備え、
前記伝達機構は、
シリンダと、
前記シリンダの内部空間を移動自在に配されたロッドと、
前記シリンダ及び前記ロッドの相対的移動の規制を行う規制状態と、規制を解除した解除状態との間で切り替え可能な切替構造を有し、
前記土壌サンプラは、前記シリンダに着脱自在な採土シリンダと前記ロッドに着脱自在な採土ロッドとの相対的移動によって、土壌試料を採取可能なものであり、
前記貫入試験具は、前記シリンダに着脱自在な貫入試験シリンダと前記ロッドに着脱自在な貫入試験ロッドとの相対的移動が規制された状態で貫入試験を行うものであることを特徴とする地盤調査装置。
【請求項2】
前記貫入試験具は、
前記貫入試験シリンダの先端側に配されたコーンを備え、
前記貫入試験シリンダは、前記コーンに対して、前記貫入試験シリンダの軸周りに回動可能な状態であることを特徴とする請求項1記載の地盤調査装置。
【請求項3】
前記貫入試験具は、
前記貫入試験ロッドの先端側に配された係合部材を備え、
基端側への向きの力が前記ロッドに加わったときに、前記係合部材が前記コーンと係合することを特徴とする請求項2記載の地盤調査装置。
【請求項4】
ターゲットから試料を採取可能なサンプラ及び前記ターゲットの硬度を測定する貫入試験具が着脱自在な作用部側装着機構と、
受け機構が受けた外力を前記作用部側装着機構へ伝達する伝達機構と、を備え、
前記伝達機構は、
シリンダと、
前記シリンダの内部空間を移動自在に配されたロッドと、
前記シリンダ及び前記ロッドの相対的移動の規制を行う規制状態と、規制を解除した解除状態との間で切り替え可能な切替構造を有し、
前記サンプラは、前記シリンダに着脱自在な採取シリンダと前記ロッドに着脱自在な採取ロッドとの相対的移動によって、試料を採取可能なものであり、
前記貫入試験具は、前記シリンダに着脱自在な貫入試験シリンダと前記ロッドに着脱自在な貫入試験ロッドとの相対的移動が規制された状態で貫入試験を行うものであることを特徴とする部品
【請求項5】
前記貫入試験具は、
前記貫入試験シリンダの先端側に配されたコーンを備え、
前記貫入試験シリンダは、前記コーンに対して、前記貫入試験シリンダの軸周りに回動可能な状態であることを特徴とする請求項4記載の部品
【請求項6】
前記貫入試験具は、
前記貫入試験ロッドの先端側に配された係合部材を備え、
基端側への向きの力が前記ロッドに加わったときに、前記係合部材が前記コーンと係合することを特徴とする請求項5記載の部品
【請求項7】
請求項4ないし6のうちいずれか1項記載の部品と、
前記受け機構と、
を備えたことを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品、装置及び地盤調査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤調査のための試験方法として、ボーリング調査(標準貫入試験)、スウェーデン式サウンディング試験やラムサウンディング試験が知られている。
【0003】
ボーリング調査では、ロッドの先端に取り付けられたドリリングビットの回転と給圧により、土や岩を切り削り、粉砕しながら穴を掘り進む。次に、試験深度まで掘削した後、試験用サンプラをロッド先端に接続し、孔底に降ろす。そして、75cmの高さからハンマー(63.5kg±0.5kg)の自由落下による打撃を行い、サンプラが30cm貫入するのに要した打撃回数(N値)に基づいて、地盤の状態を判断する(例えば、特許文献1)。
【0004】
スウェーデン式サウンディング試験では、先端がキリ状になっているスクリューポイントを取り付けたロットに荷重をかけて、地面にねじ込み、25センチねじ込むのに何回転させたかを測定する。測定された回転数に基づいて、地盤の状態を判断する(以下、SS調査と称する)。
【0005】
一方、ラムサウンディング試験では、50cmの高さからハンマー(63.5kg±0.5kg)の自由落下による打撃を行い、貫入ロッドに取り付けた先端コーンを打ち込み、 20cm貫入に要する打撃回数を求める。求められた打撃回数に基づいて、地盤の状態を判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭62−62203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、東日本大震災をきっかけに、土壌汚染や液状化の問題が注目されるようになった。中でも、住宅地のような小規模の地盤調査のニーズが高い。
【0008】
ボーリング試験は、調査ポイントの土壌採取とともに、地盤の硬度測定を求めることができるため、土壌汚染や液状化に関する地盤調査に適している。しかしながら、ボーリング装置が大きく、また、掘削時や打撃時の騒音も大きい。このため、住宅地のような小規模の地盤調査には向かない。
【0009】
住宅地のような小規模の地盤調査においては、スウェーデン式サウンディング試験が採用されている。ところが、スウェーデン式サウンディング試験の場合には、地表側の硬い層に到達すると、それ以上、深部への貫入が難しくなる。このため、地表側の硬い層よりも深部側の地盤を行うことができない。したがって、地表側の硬い層よりも深部側において、柔らかい層の存在を検知することができない。
【0010】
かかる問題を解決すべく、スウェーデン式サウンディング試験と、ラムサウンディング試験との併用が検討されている。しかしながら、2つの試験の併用する場合には、個別の装置の搬入や試験時間などが長くなる結果、試験コストが高くなってしまう。このため、住宅地のような小規模の地盤調査がなかなか進んでいないのが現状である。
【0011】
本発明は、斯かる実情に鑑み、住宅地のような小規模の地盤調査に適した地盤調査装置及び装置、そして、これらに適用可能な部品を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の地盤調査装置は、外力を直接または間接的に受ける受け機構と、土壌試料を採取可能な土壌サンプラ及び地盤の硬度を測定する貫入試験具が着脱自在な作用部側装着機構と、前記受け機構が受けた外力を前記作用部側装着機構へ伝達する伝達機構と、を備え、前記伝達機構は、シリンダと、前記シリンダの内部空間を移動自在に配されたロッドと、前記シリンダ及び前記ロッドの相対的移動の規制を行う規制状態と、規制を解除した解除状態との間で切り替え可能な切替構造を有し、前記土壌サンプラは、前記シリンダに着脱自在な採土シリンダと前記ロッドに着脱自在な採土ロッドとの相対的移動によって、土壌試料を採取可能なものであり、前記貫入試験具は、前記シリンダに着脱自在な貫入試験シリンダと前記ロッドに着脱自在な貫入試験ロッドとの相対的移動が規制された状態で貫入試験を行うものであることを特徴とする。
【0013】
前記貫入試験具は、前記貫入試験シリンダの先端側に配されたコーンを備え、前記貫入試験シリンダは、前記コーンに対して、前記貫入試験シリンダの軸周りに回動可能な状態であることが好ましい。
【0014】
前記貫入試験具は、前記貫入試験ロッドの先端側に配された係合部材を備え、基端側への向きの力が前記ロッドに加わったときに、前記係合部材が前記コーンと係合することが好ましい。
【0015】
本発明の部品は、ターゲットから試料を採取可能なサンプラ及び前記ターゲットの硬度を測定する貫入試験具が着脱自在な作用部側装着機構と、受け機構が受けた外力を前記作用部側装着機構へ伝達する伝達機構と、を備え、前記伝達機構は、シリンダと、前記シリンダの内部空間を移動自在に配されたロッドと、前記シリンダ及び前記ロッドの相対的移動の規制を行う規制状態と、規制を解除した解除状態との間で切り替え可能な切替構造を有し、前記サンプラは、前記シリンダに着脱自在な採取シリンダと前記ロッドに着脱自在な採取ロッドとの相対的移動によって、試料を採取可能なものであり、前記貫入試験具は、前記シリンダに着脱自在な貫入試験シリンダと前記ロッドに着脱自在な貫入試験ロッドとの相対的移動が規制された状態で貫入試験を行うものであることを特徴とする。
【0016】
前記貫入試験具は、前記貫入試験シリンダの先端側に配されたコーンを備え、前記貫入試験シリンダは、前記コーンに対して、前記貫入試験シリンダの軸周りに回動可能な状態であることが好ましい。前記貫入試験具は、前記貫入試験ロッドの先端側に配された係合部材を備え、基端側への向きの力が前記ロッドに加わったときに、前記係合部材が前記コーンと係合することが好ましい。
【0017】
本発明の装置は、上記の部品と、前記受け機構と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、住宅地のような小規模の地盤調査に適した地盤調査装置及び装置、そして、これらに適用可能な部品を提供しようとするものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】地盤調査装置の概要を示す斜視図である。
図1B】スタンド機構の概要を示す斜視図である。
図1C】回転機構の概要を示す斜視図である。
図2】(A)は、ラムサウンディング試験の様子を示す説明図である。(B)は、引き抜き作業の様子を示す説明図である。(C)は、土壌サンプラを用いて土壌試料を採取する様子を示す説明図である。
図3】(A)〜(B)は、土壌サンプラを用いて土壌試料を採取する様子を示す説明図である。
図4】(A)は、下方向への打撃側筒51Lの移動を許容する状態のロック構造の説明図である。(B)は、下方向への打撃側筒51Lの移動を規制する状態のロック構造の説明図である。
図5】(A)は、ピストンの概要を示す分解断面図である。(B)は、付勢部材の平面図である。(C)は、弾性変形していない状態の付勢部材の概要を示すピストンの断面図である。(D)は、弾性変形している状態の付勢部材の概要を示すピストンの断面図である。
図6】(A)は、貫入ロッドの概要を示す部分断面図である。(B)は、貫入ロッドの概要を示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1Aに示すように、地盤調査装置2は、調査ユニット4と、車台ユニット6と、調査ユニット4及び車台ユニット6を連結する連結ユニット8と、を備える。連結ユニット8により、調査ユニット4は、地面から起立した起立状態と、地面から離隔した離隔状態(図示省略)と、の間で遷移可能である。調査ユニット4が起立状態の場合には、所定の位置において地盤調査を行うことができる。また、調査ユニット4が離隔状態の場合には、車台ユニット6による移動が可能となる。
【0021】
車台ユニット6は、台座6Dと、台座6Dに取り付けられたクローラ(無限軌道)6Cと、アウトリガー6Uと、水準器6Lと、バッテリー6Bと、操作部6Fを有する。アウトリガー6Uは、台座6Dを支持するとともに、油圧シリンダの駆動によって、台座6Dの高さを調整するものである。アウトリガー6Uは、台座6Dの前方であって左右両側に設けられる。なお、アウトリガー6Uは、台座6Dの前方のみならず、後方の左右両側にも設けられていてもよい。水準器6Lは、台座6Dに設けられる。バッテリー6Bは、地盤調査装置2の各部へ電源を供給する。操作部6Fは、クローラ6C、連結ユニット8や調査ユニット4の各部の操作を行うことができる。このような地盤調査装置2は、連結ユニット8及び車台ユニット6の制御によって、所望の位置へ調査ユニット4を搬送し、所定の調査を行うことができる。さらに、水準器6Lを読み取りながら、左右のアウトリガー6Uを駆動して、車台6Dのレベル合わせを行う。これにより、貫入ロッド等(詳細は後述する)を土壌に対して垂直に貫入させることができる。
【0022】
次に、調査ユニット4の詳細について説明する。
【0023】
調査ユニット4は、調査位置Xにおける地盤調査を行うためものであり、調査位置Xの近傍に配されるスタンド機構21と、スタンド機構21から垂直方向へ起立するレール22と、レール22上を垂直方向にスライド自在なスライド台23と、スライド台23に取りつけられたハンマー24と、スタンド機構21の上に取り付けられた回転機構25と、各部を制御する制御部(図示しない)と、を備える。
【0024】
図1Bに示すように、スタンド機構21は、調査位置Xを挟むように地面に配される2枚のベース板21Bと、2枚のベース板21Bから、それぞれ垂直方向に延びた脚ユニット21Lと、2本の脚ユニット21Lを連結する台座21Dとを備える。
【0025】
ベース板21Bは、矩形状に形成されており、4隅にアンカー(図示しない)が挿入可能な孔21BXが設けられる。また、ベース板21Bの裏面は平坦に形成されている。孔21BXを介してアンカーを地面に刺すことで、ベース板21Bの位置が固定される。
【0026】
脚ユニット21Lは、ベース板21Bから垂直方向に延びた油圧シリンダ21LCと、ベース板21Bから垂直方向に延びたガイドシャフト21LGと、を備える。油圧シリンダ21LCの上端は、台座21Dの下面を支持する。また、ガイドシャフト21LGは、台座21Dに設けられた孔を貫通するように設けられる。1対の油圧シリンダ21LCの駆動により、台座21Dは、ガイドシャフト21LGに沿って上下方向に移動する。
【0027】
台座21Dのうち、調査位置Xの真上に位置する部分には、垂直方向に延びる貫通孔21DXが設けられる。貫通孔21DXは、図2に示す貫入ロッド40や土壌サンプラ50(以下、貫入ロッド40等と称する)が貫通可能な大きさとなっている。
【0028】
図1Cに示すように、回転機構25は、貫通孔21DXの上方に配され、貫入ロッド40等を保持可能なクランプユニット25Cと、貫通孔21DX及びクランプユニット25Cの間に配された第1プーリ25Pと、貫入ロッド40等とほぼ平行となるように垂直方向に延びるシャフト25Sと、シャフト25Sに対して回転自在に取り付けられた第2プーリ25Qと、第1プーリ25P及び第2プーリ25Qに巻きかけられたベルト25Bと、シャフト25Sの軸周りのトルクを計測するトルクセンサ25Tと、シャフト25Sを駆動するブラシレスモータ25Mと、各部を収容する筐体25Kを収容する。
【0029】
シャフト25Sやクランプユニット25Cは、保持機構(図示しない)によって、筐体25K内で保持される。このため、筐体25Kを除く回転機構25は、台座21Dから浮いた状態で保持される。
【0030】
クランプユニット25Cは、貫入ロッド40等の軸AX周りの回転方向に対して係止可能な回転方向係止機構25CRと、貫入ロッド40等に対する相対的移動を規制する移動規制機構25CUと、移動規制機構25CUに対して着脱自在な引抜具25CHと、を備える。
【0031】
回転方向係止機構25CRは、貫入ロッド40等の軸AX周りの回転方向に対して係止する係止状態と、係止が解除された状態の間で遷移自在である。
【0032】
移動規制機構25CUは、いわゆるワンウェイクランプであって、自身に上向きの力がかかると、貫入ロッド40等に対する相対的移動を規制する状態(移動規制状態)となる一方、自身に下向きの力がかかると、貫入ロッド40等に対する相対的移動の規制が解除された状態(移動規制解除状態)となる。このため、上方向係止機構25Cに上方向の力がかかると、上方向係止機構25Cとともに、貫入ロッド40等が上方向へ移動する。反対に、上方向係止機構25Cに下方向の力がかかると、上方向係止機構25Cのみが下方向へ移動する。
【0033】
引抜具25CHは、移動規制機構25CUに対して着脱自在となっている。また、移動規制機構25CUは、筐体25Kの上面に形成された穴25Xから露出する(図1A)。このため、引抜具25CHの着脱操作を筐体25Kの外から行うことができる。引抜具25CHを移動規制機構25CUに装着すると、移動規制機構25CUに上向きの力がかかった際、貫入ロッド40等に対する相対的移動が規制される。一方、引抜具25CHを移動規制機構25CUから外すと、移動規制機構25CUに上向きの力がかかった際であっても、貫入ロッド40等に対する相対的移動が許容される。
【0034】
第1プーリ25Pは、回転方向係止機構25CRと連結している。このため、貫入ロッド40等の軸AX周りの回転運動は、回転方向係止機構25CR、第1プーリ25P、ベルト25B、及び第2プーリ25Qを介してシャフト25Sの回転運動となる。また、制御部の制御の下、ブラシレスモータ25Mが駆動すると、ブラシレスモータ25Mの駆動力は、第2プーリ25Q、ベルト25B、第1プーリ25P及び回転方向係止機構25CRを介して、貫入ロッド40等に伝わる。この結果、貫入ロッド40等は軸AX周りに回転する。
【0035】
制御部は、トルクセンサ25Tから読み取ったシャフト25Sのトルクの計測値に基づいて、シャフト25Sのトルクを算出することができる。
【0036】
図3(A)に示すように、土壌サンプラ50は、ハンマー24(図1)によって打撃される被打撃具51と、土壌を採集する採土具53と、を備える。被打撃具51は、採土具53に対して着脱自在となっている。
【0037】
採土具53は、採土側シリンダ53Cと、採土側シリンダ53Cの内部空間を移動自在なピストン60と、ピストン60に連結したピストンロッド53Lと、採土側シリンダ53Cの内部空間においてピストン60よりも上方に配されたストッパ53Tと、を備える。ピストン60が採土側シリンダ53Cの内部へ退く(図3(B))ことにより、採土側シリンダ53Cの内部空間に土壌を収容する空間(土壌収容空間)KXが形成される。
【0038】
被打撃具51は、地表に対してピストン60を固定した状態で、ハンマー24(図2(C))からの打撃力を採土具53の採土側シリンダ53Cへ伝えるためのものであり、打撃側シリンダ51Cと、打撃側シリンダ51Cの内部空間にて打撃側シリンダ51Cの長手方向に移動自在となっている打撃側ロッド51Lと、打撃側ロッド51Lの移動を規制するロック構造51Kと、を備える。
【0039】
打撃側シリンダ51Cの下端と採土側シリンダ53Cの上端とは、螺合によって連結する。また、打撃側ロッド51Lの下端と、ピストンロッド53Lの上端とは、マイクロカプラによって着脱自在に連結する。
【0040】
なお、採土具53及び被打撃具51の間に、必要な数の継柄70を連結させてもよい(図3)。継柄70は、継柄用シリンダ70Cと、継柄用シリンダ70Cの内部空間に配された継柄用ロッド70Lと、を備える。継柄用シリンダ70Cの上端と打撃側シリンダ51Cの下端とは螺合によって連結する。同様に、継柄用シリンダ70Cの下端と採土側シリンダ53Cの上端とも螺合によって連結する。また、継柄用ロッド70Lの上端と打撃側ロッド51Lの下端と、そして、継柄用ロッド70Lの下端とピストンロッド53Lの上端とは、それぞれマイクロカプラによって連結する。
【0041】
図4(A)に示すように、ロック構造51Kは、地表、すなわちスタンド機構21に対する打撃側ロッド51Lの相対的移動を規制するためのものであり、打撃側ロッド51Lの周面に設けられた凹部51KHと、打撃側シリンダ51Cの外周面に設けられ凹部51KHが露出可能な長穴51KXと、長穴51KXを介して凹部51KHに嵌合する嵌合棒51KBと、引抜具25CHに設けられ嵌合棒51KBを下方から支持可能な係合溝51KMと、を備える。
【0042】
長穴51KXは、打撃側シリンダ51Cの長手方向に延びている。このため、凹部51KHに嵌合した状態の嵌合棒51KBは長穴51KXに沿って移動可能となっている。
【0043】
地盤調査装置2に土壌サンプラ50を装着する際には、貫通孔21DXに土壌サンプラ50を挿入する。このとき、凹部51KHに嵌合する嵌合棒51KBは係合溝51KMの底に対して係合した状態となる。これにより、移動規制機構25CUに対する打撃側ロッド51Lの相対的移動、すなわち地表に対する打撃側ロッド51Lの相対的移動は、上方向へは可能であるが、下方向へは規制される(図4(B)〜(C))。
【0044】
嵌合棒51KBが長穴51KXの縁と係合しない場合(図4(B))において、打撃側シリンダ51Cの上端に向けてハンマー24を落下させる(図2(C))と、打撃側ロッド51Lのみが引抜具25CHに係止されているため、地表に対する打撃側ロッド51Lの相対的移動は行われないが、打撃側シリンダ51Cは地表に対して下向きへ移動する。
【0045】
嵌合棒51KBが長穴51KXの上端と係合する場合(図4(C))には、
打撃側シリンダ51Cは、地表に対する下向きの相対的移動が規制される。嵌合棒51KBが長穴51KXの上端と係合した場合において、打撃側ロッド51Lの上端は、打撃側シリンダ51Cの内部空間に退いていることが好ましい。
【0046】
図5(A)に示すように、ピストン60は、ピストン本体61と、ピストン本体61との係合によって弾性変形する付勢部材62と、ナット63と、ナット63に対し螺合可能なボルト64と、を備える。
【0047】
ピストン本体61は、円筒状に形成されるものであり、その中空部分が、付勢部材62、ナット63、及びボルト64の部材収容空間PXとなる。なお、ピストン本体61の外周面には、シール突起61Tが複数形成されていることが好ましい。ピストン本体61やシール突起61Tの形成材料としては、例えば、ゴムを用いることができる。
【0048】
図5(B)に示すように、付勢部材62は、円板部62Bと、円板部62Bから放射状に延びた複数の片62Cを有する。片62Cは、円板部62Bに対して弾性的に変形できるようになっている。円板部62Bの中央には、ボルト64の先端64Sが挿入可能な挿入孔62BXが形成される。付勢部材62の形成材料としては、例えば、金属やゴムといった弾性材料を用いることができる。
【0049】
ナット63は、付勢部材62よりも上側(採土側シリンダ53Cの基端側)の部材収容空間PXに配され、ボルト64は、付勢部材62よりも下側(採土側シリンダ53Cの先端側)の部材収容空間PXに配される。
【0050】
円板部62Bの半径RE(図5(B))は、部材収容空間PXの内径RS(図5(A))よりも小さい。また、片62Cの外径RH(図5(B))は、部材収容空間PXの内径RS(図5(A))よりも大きい。なお、片62Cの外径RHは、採土側シリンダ53Cの内径よりも小さいことが好ましい。
【0051】
図5(A)において、ボルト64の先端64Sを挿入孔62BXに通した状態でボルト64をナット62に螺合させる(図5(C))。更に、ボルト64を締めると、円板部62Bは部材収容空間PXに収容されるものの、片62Cは部材収容空間PXの壁に接触する。このため、片62Cは円板部62Bに対して弾性変形する(図5(D))。この復元力は、部材収容空間PXの壁を介して、径方向外側、すなわち採土側シリンダ53Cの内面へ押し出す力を有する。ボルト64をさらに締めると、片62Cは弾性域での変形量が大きくなるため、より大きな復元力が生まれる。この復元力により、採土側シリンダ53C及びピストン60の隙間が気密状態となる。このようにして、ピストン本体61と、付勢部材62と、ナット63と、ボルト64とが気密機構として機能する。
【0052】
なお、ピストン本体61の下側(採土側シリンダ53Cの先端側)の開口は、下に向かって内径RSが漸増する形状となっていることが好ましい。これにより、ボルト64の締めつけ作業によって、採土側シリンダ53Cの内面部材を押すための復元力を得やすくなる。
【0053】
図6に示すように、貫入ロッド40は、地盤の硬度を測定するためのものであり、被打撃具51に着脱自在なキャップ42と、キャップ42を介して打撃される被打撃具51と、貫入試験を行うための貫入試験具43と、を備える。被打撃具51は、貫入試験具43に対して着脱自在となっている。したがって、被打撃具51は、貫入試験具43と採土具53とのうち一方が装着される。
【0054】
キャップ42は、打撃側シリンダ51Cの基端側開口に装着される。さらに、キャップ42は、打撃側ロッド51Lの基端側を保持する。すなわち、キャップ42によって、打撃側シリンダ51Cと打撃側ロッド51Lとが連結される。このため、キャップ42に向けて、ハンマー24を落下させると、ハンマー24の落下エネルギーは、キャップ42を介して、打撃側シリンダ51Cと打撃側ロッド51Lとの双方に伝達される。
【0055】
貫入試験具43は、試験側シリンダ43Cと、試験側シリンダ43Cの先端に配された栓部材43Aと、試験側シリンダ43Cの内部空間に配され、先端側が栓部材43Aと連結する試験側ロッド43Lと、栓部材43A及び試験側シリンダ43Cの外周を覆うように設けられた外筒43Tと、外筒43Tに対して連結されたコーン43Kと、を備える。
【0056】
試験側シリンダ43Cは、打撃側シリンダ51Cや継柄用シリンダ70Cに対して着脱自在となっている。試験側ロッド43Lは、打撃側ロッド51Lや継柄用ロッド70Lに対して着脱自在となっている。
【0057】
栓部材43Aは、略円盤状に形成される。また、栓部材43Aは、試験側シリンダ43Cの径方向において、試験側シリンダ43Cよりも突出するように配される。したがって、栓部材43Aは、試験側シリンダ43Cに対して基端側に向かって係止される。なお、栓部材43Aの外径は、試験側シリンダ43Cの外径よりも大きいことが好ましい。
【0058】
試験側ロッド43Lは、栓部材43Aの先端側と連結している。
【0059】
外筒43Tは、栓部材43Aが収容可能な栓収容部43TSと、栓収容部43TSに設けられ、栓収容部43TSに収容された栓部材43Aと係合する係合突起43TTと、外筒43Tの内径のうち係合突起43TTよりも先端側に設けられたネジ43TNと、を備える。
【0060】
コーン43Kは、基端側に位置する円柱部43KEと、円柱部43KEの先端側から延びる先鋭部43KCと、円柱部43KEの外周に設けられたネジ43KNと、先鋭部43KCの周面に設けられた周溝43KMと、を備える。
【0061】
ネジ43KNは、ネジ43TNと螺合可能である。周溝43KMは、外筒43Tに対するコーン43Kの脱着操作の際、コーン43Kを係止するために用いられる。栓部材43Aと係合突起43TTとが係合したままでネジ43KNをネジ43TNに螺合させた状態では、栓部材43Aは、係合突起43TTによって、貫入ロッド40の基端側への移動が規制されるものの、軸周りには回転可能となっている(図6(A))。したがって、栓部材43Aに連結する試験側シリンダ43Cも、貫入ロッド40の基端側への移動が規制されるものの、軸周りに回転可能となっている。
【0062】
次に、地盤調査装置2の使用方法について説明する。
【0063】
図1に示すように、調査位置Xの真上に貫通孔21DXが位置するようにスタンド機構21を設置する。
【0064】
次に、図2(A)に示すように、貫入ロッド40を貫通孔21DX(図1B)に挿入する。その後、スライド台23は、所定の重さのハンマー24を所定の高さまで上げた後、自由落下させる。自由落下した錘は、貫入ロッド40の上端40Tを打撃する。この打撃によって、貫入ロッド40は地面に貫入する。貫入ロッド40が所定の深さに到達するのに要した打撃数を、制御部は、貫入試験のNd値として内蔵メモリに記憶する。
【0065】
次に、回転方向係止機構25CRは、貫入ロッド40等の軸AX周りの回転方向に対して係止する係止状態へ遷移させる。その後、ブラシレスモータ25Mが駆動すると、貫入ロッド40等は軸AX周りに回転する。制御部は、トルクセンサ25Tから読み取ったシャフト25Sのトルクの計測値から所定の設定値を減じて、シャフト25Sのトルクを算出することができる。この設定値としては、貫入ロッド40を保持しない状態で、ブラシレスモータ25Mを駆動させたときのシャフト25Sのトルクの計測値としてもよい。こうして得られたシャフト25Sのトルクの算出値を、せん断抵抗値硬度として内蔵メモリに記憶する。
【0066】
その後、引抜具25CHを移動規制機構25CUに装着する。これにより、移動規制機構25CUは移動規制状態となる。移動規制機構25CUが移動規制状態の場合に、油圧シリンダ21LCを駆動すると、移動規制機構25CUは、台座21Dとともに上へ移動する。結果、移動規制機構25CUは、貫入ロッド40等を地中から引き抜くことができる(図2(B))。
【0067】
ここで、地中に貫入させたままの貫入ロッド40等をそのまま引き抜こうとすると、貫入ロッド40の周面と土壌との摩擦力によって、引き抜きに要する力が大きくなってしまう。そこで、この摩擦力による影響を低減するために、引き抜きに先だって貫入ロッド40等を回転させる、または、引き抜きと同時に貫入ロッド40等を回転させることが好ましい(図2(B))。これによって、貫入ロッド40等の引き抜きに要する力を小さくすることができるため、地盤調査装置2の重量の軽量化、小型化を行うことができる。なお、貫入ロッド40等の引き抜き作業と、ブラシレスモータ25Mによる貫入ロッド40等の回転を交互に行ってもよい。
【0068】
次に、ピストン60が採土側シリンダ53Cの開口近傍に位置する状態(図3(A))の採土具53を、貫通孔21DXを介して地表にできた貫入跡(穴)へ挿入する。そして、採土具53の上端に、被打撃具51を連結して、採土具53をさらに穴の奥へ挿入する。
【0069】
なお、貫入孔の深さが、土壌サンプラ50の長さよりも深い場合には、土壌サンプラ50及び被打撃具51の間を継柄70でつないでもよい。その後、採土具53の下端が孔の底に到達したとき、被打撃具51の上部が貫通孔21Cから露出し、嵌合棒51KBが係合溝51KMと係合した状態となっている(図4(B))。
【0070】
採土側シリンダ53Cの先端部分が穴の底に貫入すると、穴の底にある土壌が採土側シリンダ53Cの先端部分に充填される。このようにして、土壌がピストン60に対して密着した状態にする(図3(A))。
【0071】
ここで、採土側シリンダ53Cの下側の開口が穴の底に貫入された状態で、ハンマー24を用いて打撃側シリンダ51Cの上端を所定の力で打撃する(図2(C))。このとき、嵌合棒51KBが係合溝51KMと係合した状態であるため、ピストン60は地表に対して上下方向に移動しないが、採土側シリンダ53Cは、地表に対して地中方向へ貫入する。すなわち、ピストン60は、採土側シリンダ53Cの内部空間に退くように、採土側シリンダ53Cに対して相対的に移動する。採土側シリンダ53Cは、地表に対して地中方向へ貫入するため、土壌収容空間KXに、土壌試料が収容される(図3(B))。
【0072】
土壌試料を収容した後は、貫入ロッド40の場合と同様に、土壌サンプラ50を引き抜く、すなわち、引き抜きに先だって貫入ロッド40等を回転させる、または、引き抜きと同時に貫入ロッド40等を回転させることが好ましい。ここで、栓部材43Aは、試験側シリンダ43Cの径方向において、試験側シリンダ43Cよりも突出し、突出した部分が係合突起43TTと係合する。このため、土壌サンプラ50の引き抜き時に、外筒43Tやコーン43Kが、試験側シリンダ43Cや試験側ロッド43Lから脱落せずに済む。このため、地盤調査の際、調査位置にコーン43Kを残さずに済むため、環境にも良い。
【0073】
このように、被打撃具51は、貫入試験具43及び採土具53の双方に装着可能であるため、1つの装置を用いて、地盤の硬度測定と土壌採取を所望の深さごとに短時間に行うことができる。特に、打撃側シリンダ51Cと打撃側シリンダ51Cとの相対的移動の規制や、規制の解除が、ロック構造51Kやキャップ42によって、切替可能であるため、地盤の硬度測定と土壌採取といった作業をスムーズに行うことができる。このように、本発明の地盤調査装置2によれば、調査位置Xの地盤の硬度測定を求めるとともに、調査位置Xの土壌採取を行うことが可能となるため、土壌汚染や液状化に関する地盤調査に適している。
【0074】
また、ピストン本体61と、付勢部材62と、ナット63と、ボルト64とが気密機構として機能するため、土壌収容空間KXの負圧が維持される。このため、土壌収容空間KXに収容された土壌を脱落させることなく、地表まで搬送することができる。
【0075】
さらに、貫入ロッド40等の引き抜きに先だって貫入ロッド40等を回転させる、または、引き抜きと同時に貫入ロッド40等を回転させることができる。これによって、貫入ロッド40等の引き抜きに要する力を小さくすることができるため、結果として、地盤調査装置2の重量の軽量化、小型化を行うことができる。
【0076】
加えて、ボルト64の締める量を増すことによって、円板部62Bに対する片62Cは弾性域での変形量を調節することができる。したがって、付勢部材61の弾性係数が変化した場合や、弾性係数の異なる付勢部材61へ交換した場合であっても、ボルト64により、付勢部材61に応じた所望の復元力を得ることができる。さらに、復元力の調節は、ピストン60が採土側シリンダ53Cの開口近傍に位置する状態(図5(D))で行うことも可能になる。結果、復元力の調節作業を容易に行うことができる。
【0077】
なお、水位よりも深い位置まで土壌サンプラ50を地中へ入れる場合には、被打撃具51、採土具53や継柄70の継ぎ目から内部へ水が浸入することがある。この状態のまま、土壌サンプラ50を地中から引き上げると、調査位置Xの近傍が水浸しになり作業性が低下する。そこで、採土側シリンダ53Cに、水が通過可能な側孔53CXを形成してもよい(図3)。側孔53CXは、ストッパ53Tよりも上側(基端側)に位置することが好ましい。これにより、土壌サンプラ50を地中に位置する間に、採土側シリンダ53Cの内部空間に浸入した水を外部へ排出することができる。なお、水が通過可能な側孔53CXと同様の側孔を継柄用シリンダ70Cに設けてもよい。
【0078】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0079】
2 地盤調査装置
4 調査ユニット
6 車台ユニット
8 連結ユニット
21 スタンド機構
22 レール
23 スライド台
24 回転機構
25 チャック機構
30 ハンマ
40 貫入ロッド
50 土壌サンプラ
51 打撃部
53 採土部
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6