(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第一実施形態)
以下、この発明の一実施形態に係るウォータージェット推進船を図面に基づき説明する。
図1は、この発明の第一実施形態におけるウォータージェット推進船の側面図である。
ウォータージェット推進船110は、推力を得るための推力源として、ウォータージェット推進器1を備えている。ウォータージェット推進器1は、船体100内部に設けられる推進装置である。ウォータージェット推進器1は、船体100内部に水Wを取り込み、この取り込まれた水Wを船体100後方から噴射することで推進力を得る。このウォータージェット推進器1は、船体100の内部の船尾部103寄りの位置に設けられている。
【0017】
図2は、この発明の第一実施形態におけるウォータージェット推進器の構成図である。
図2に示すように、ウォータージェット推進器1は、流路形成部2と、インペラ3と、を備えている。
流路形成部2は、吸込み管路2aと、インペラ収容部13と、ノズル部14と、を備えている。
【0018】
吸込み管路2aは、外部から水Wを吸込むための流路R1を形成する。吸込み管路2aは、直線部11と、湾曲部12と、を備えている。直線部11は、
図1に示す船体100の外面となる船底101に開口部Kを有している。この直線部11は、船首部102側から船尾部103側に向かって下方から上方に傾斜して形成される。通常は、この直線部11の開口部Kから水Wが取り込まれる。
【0019】
湾曲部12は、直線部11に連続して船尾方向を向くように湾曲して形成されている。この湾曲部12の船尾側には、インペラ収容部13とノズル部14とが順次連続して形成されている。
インペラ収容部13は、その内部にインペラ3を収容する収容空間を形成する。
【0020】
インペラ3は、内燃機関であるエンジンEの駆動力により回転可能となっている。インペラ3は、そのインペラボス部3aの外周に複数の翼4を備えている。インペラ3は、エンジンEにより軸線O回りに翼4が回転することで、水Wを吸込み管路2a内の後方、すなわちノズル部14側に向かって圧送する。このインペラ3により圧送される水Wは、インペラ3の回転による、軸線Oを旋回中心とする強い旋回流を含んでいる。
【0021】
ノズル部14は、インペラ収容部13と連続して形成されている。このノズル部14は、船首尾方向で船尾側に向かうに従って流路R1の断面積が縮小するように形成されている。このノズル部14により、インペラ3によって圧送された水Wの船尾側に向かう流速が増加する。この増速された水Wは、船尾側に向かって噴射される。ノズル部14により水Wの船尾側に向かう流速が増すことで、水Wの旋回流が相対的に弱まり、船尾側に向かう強い流れとなる。
【0022】
上述した流路形成部2には、排気流路形成部15が合流接続されている。この排気流路形成部15は、エンジンEの排気ガスGが流れる排気流路R2を形成する配管である。排気流路形成部15は、ノズル部14と、インペラ3との間の流路形成部2内にエンジンEの排気ガスGを導いている。ここで、インペラ3とノズル部14との間の水Wの圧力は、排気ガスGの圧力よりも低くなっているため、水Wが排気流路形成部15を逆流することはない。
【0023】
したがって、上述した第一実施形態によれば、排気流路形成部15に流れる排気ガスGを、インペラ3とノズル部14との間に流れる水流(水W)に合流させることができる。これにより、強い旋回成分を含む水流に対して排気ガスGを合流させることができる。そのため、流路形成部2の内部を流れる水流に対して排気ガスを十分に混合させることができる。その結果、排気ガス圧損の低減、および、低シグネチャー化を図りつつ、排気ガス温度を十分に低下させて周囲環境への影響を低減することが可能となる。
【0024】
(第一実施形態の変形例)
次に、上述した第一実施形態の変形例におけるウォータージェット推進船を図面に基づき説明する。この第一実施形態の変形例におけるウォータージェット推進船は、上述した第一実施形態に対して静翼を設けた点でのみ異なる。そのため、同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
【0025】
図3は、この発明の第一実施形態の変形例における
図2に相当する構成図である。
図3に示すように、この第一実施形態の変形例におけるウォータージェット推進器1は、流路形成部2と、インペラ3と、を備えている。
流路形成部2は、吸込み管路2aと、インペラ収容部13と、ノズル部14と、静翼収容部16と、を備えている。
【0026】
静翼収容部16は、インペラ収容部13とノズル部14との間に配されている。この静翼収容部16の内部空間には、静翼5が収容されている。この静翼収容部16は、インペラ収容部13を船尾側に延長するようにして形成され、インペラ収容部13と同等の流路断面積を有している。
【0027】
静翼5は、インペラ3によってノズル部14側に圧送される水Wを整流する。この静翼5は、ボスキャップ部6と、翼部7とを備えている。
ボスキャップ部6は、インペラ3のインペラボス部3aのノズル部14側に僅かな隙間を有して配置されている。ボスキャップ部6の中心と、インペラボス部3aの中心とは、何れも軸線O上に配されている。ボスキャップ部6は、ノズル部14側に向かうに従って縮径するように外側に向かって凸となる曲面8を有している。このボスキャップ部6の曲面8は、上述したインペラボス部3aの外面3bの延長上に連続するように形成されている。
【0028】
翼部7は、ボスキャップ部6の曲面8と、静翼収容部16の内面(言い換えれば、流路形成部2の内面2c)との間に渡るように形成されている。翼部7は、軸線Oを中心とする周方向に複数配されている。これら静翼5の翼部7は、インペラ3の回転により生じる水Wの旋回成分を打ち消すような翼プロファイルを有している。
【0029】
排気流路形成部15は、流路形成部2に合流接続されている。より具体的には、この変形例における排気流路形成部15は、インペラ3と、静翼5との間に合流接続されている。つまり、排気流路形成部15によって導かれる排気ガスGは、インペラ3直後の強い旋回流を含む水Wに対して合流するようになっている。
【0030】
したがって、上述した第一実施形態の変形例によれば、インペラ3とノズル部14との間に静翼5が設けられている場合であっても、強い旋回成分を含む水Wに対して排気ガスGを合流させることができる。そのため、流路形成部2の内部を流れる水Wに対して排気ガスGを十分に混合させることができる。その結果、ウォータージェット推進器1が静翼5を有する場合であっても排気ガスGの温度を効率よく低下させることが可能となる。
【0031】
(第二実施形態)
次に、この発明の第二実施形態におけるウォータージェット推進船を図面に基づき説明する。この第二実施形態におけるウォータージェット推進船は、上述した第一実施形態と、排気流路形成部15の接続の形態が異なるだけである。そのため、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
図4は、この発明の第二実施形態における合流接続部の側面図である。
図5は、
図4のV−V線に沿う断面図である。
【0032】
図4、
図5に示すように、排気流路形成部15は、排気配管部18と、合流接続部19と、を備えている。排気配管部18は、第一の端部がエンジンEに接続され、第二の端部が合流接続部19に接続されている。つまり、排気配管部18によってエンジンEの排気ガスGが合流接続部19に供給される。
【0033】
合流接続部19は、排気配管部18によって供給された排気ガスGを、流路形成部2の全周に回り込ませるための排気流路R2を形成する。この合流接続部19は、流路形成部2の延びる方向で、インペラ3とノズル部14との間(第一実施形態参照)、又は、インペラ3と静翼5との間(第一実施形態の変形例参照)に配されている。合流接続部19は、それぞれ軸線O方向で対向配置される一対の側壁19aと、これら側壁19aの周縁部同士を軸線O方向に繋ぐ周壁部19bとを備えている。合流接続部19の周壁部19bは、流路形成部2の外面2bから、軸線Oを中心とした径方向に離間して配される内面19cを有している。つまり、合流接続部19は、流路形成部2を外側から覆うようにして形成されている。
【0034】
流路形成部2には、合流接続部19に覆われた部分に貫通部20が形成されている。貫通部20は、合流接続部19と流路形成部2との間に形成される排気流路R2と、流路形成部2の内部に形成される流路R1とを連通させる。この実施形態における貫通部20は、流路形成部2の周方向に複数形成され、それぞれ周方向に等間隔で配されている。
【0035】
したがって、上述した第二実施形態によれば、排気ガスGを、流路形成部2の周方向に回り込ませて、流路形成部2の周方向における複数箇所に形成された貫通部20から、流路形成部2の内部の流路R1内の水Wに合流させることができる。その結果、水Wに対する排気ガスGの混合をより一層促進させることができ、更なる排気ガスGの温度低減を図ることが可能となる。
【0036】
(第三実施形態)
次に、この発明の第三実施形態におけるウォータージェット推進船を図面に基づき説明する。この第三実施形態におけるウォータージェット推進船は、上述した第一実施形態の変形例、および、第二実施形態に対して静翼5の構成が異なるだけである。そのため、第一実施形態の変形例、および、第二実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
【0037】
図6は、この発明の第三実施形態における
図3に相当する構成図である。
図6に示すように、この第三実施形態における排気流路形成部15は、第一実施形態の変形例と同様に、排気配管部18と、合流接続部19と、を備えている。合流接続部19は、静翼5の翼部7の端部7aのうち少なくとも一部の外周側に形成されている。
静翼5は、翼部7とボスキャップ部6とを備えている。
ボスキャップ部6は、中空に形成されている。このボスキャップ部6は、軸線Oを中心とする周方向に間隔をあけて、複数のボス孔21を有している。これらボス孔21は、ボスキャップ部6の曲面8上のうち翼部7が形成されていない箇所に配されている。これらボス孔21によってボスキャップ部6の内部空間(言い換えれば、排気流路R2)と、流路形成部2の内部空間(言い換えれば、流路R1)とが連通されている。
【0038】
翼部7は、流路形成部2の内部において、軸線O周りに等間隔で放射状に複数配されている。これら翼部7は、基部7bがボスキャップ部6に支持され、端部7aが流路形成部2の内面2cに支持されている。翼部7は、その内部に排気流路形成部15の内部空間とボスキャップ部6の内部空間とを連通する静翼通路22を備えている。
【0039】
したがって、上述した第三実施形態によれば、排気流路形成部15により案内された排気ガスGを、静翼通路22を介してボスキャップ部6の内部空間に流入させることができる。また、この排気ガスGをボスキャップ部6に形成されたボス孔21を介して、流路形成部2の内部を流れる水Wに合流させることができる。その結果、旋回流を整流する際に生じる水流の乱れの中に排気ガスGを合流させて、水Wに対して排気ガスGを十分に混合させることが可能となる。
【0040】
(第四実施形態)
次にこの発明の第四実施形態におけるウォータージェット推進船を図面に基づき説明する。この第四実施形態は、第一実施形態に対して予冷装置30を設けたものである。そのため、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
【0041】
図7は、この発明の第四実施形態における
図3に相当する構成図である。
上述した各実施形態においては、エンジンEの排気ガスGを、排気流路形成部15を介して流路形成部2の内部に流れる水Wに合流させる場合について説明した。しかし、この構成に限られない。例えば、
図7に示すように、エンジンEから排出された排気ガスGの温度を予め低下させる予冷装置30を設けるようにしても良い。予冷装置30は、排気ガスGの温度を低下できればよく、例えば、冷媒との間で熱交換する装置や、外気との間で熱交換する装置などを用いることができる。
【0042】
このようにすることで、エンジンEから排出された排気ガスGは、予冷装置30によってある程度冷却された後に、流路形成部2の内部に流れる水Wに合流される。そのため、船外に排出される排気ガスGの温度の更なる低減を図ることができる。ここで、
図7においては、第一実施形態に対して予冷装置30を追加する場合を例示したが、第一実施形態の変形例や、第二、第三実施形態の構成に対して予冷装置30を追加するようにしても良い。
【0043】
(第五実施形態)
次に、この発明の第五実施形態におけるウォータージェット推進船を図面に基づき説明する。この第五実施形態は、上述した第二実施形態と貫通部20の配置が異なるだけである。そのため、同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
【0044】
図8は、この発明の第五実施形態における
図5に相当する断面図である。
この実施形態の流路形成部2には、第二実施形態と同様に、合流接続部19に覆われた部分に貫通部20が形成されている。貫通部20は、合流接続部19と流路形成部2との間に形成される排気流路R2と、流路形成部2の内部に形成される流路R1とを連通させる。
【0045】
貫通部20は、流路形成部2の周方向に複数形成されている。貫通部20の配置密度、言い換えれば、単位面積当たりの貫通部20の個数の割合は、流路形成部2の周方向で変化している。より具体的には、上記配置密度は、排気ガスGが合流接続部19に流入する流入部18a側よりも、流入部18aとは反対側の方が高くなっている。この実施形態においては、軸線Oを挟んで流入部18aとは反対側において、貫通部20の配置密度が高くなっているが、流入部18aから離間するにつれて徐々に貫通部20の配置密度が高くなるようにしても良い。
【0046】
したがって、第五実施形態によれば、流路形成部2の周方向で、排気ガスGが回り込みにくい流入部18aとは反対側の貫通部20の配置密度を増大して、流入部18aとは反対側において排気ガスGが貫通部20を通じて水流に合流し易くすることができる。これにより、流路形成部2の周方向で、より均一に排気ガスGを水Wに対して合流させることができる。その結果、水Wに対する排気ガスGの混合をより円滑に行うことができる。
【0047】
(第五実施形態の変形例)
図9は、この発明の第五実施形態の変形例における
図3に相当する断面図である。
上述した第五実施形態においては、貫通部20の配置密度を高くすることで、流入部18aとは反対側において排気ガスGが水Wに合流し易くする場合について説明した。しかし、
図9に示すように、貫通部20の大きさ(流路断面積)を、流入部18a側よりも流入部18aとは反対側の方が大きくなるように形成しても良い。このように形成することで、第五実施形態と同様に、流入部18aとは反対側において排気ガスGが貫通部20を通じて水流に合流し易くすることができる。また、貫通部20と同様に、第三実施形態の静翼5に形成される静翼通路22の周方向の配置密度を、流入部18aの反対側において高くしたり、静翼通路22の流路断面積を、流入部18aの反対側において大きく形成したりしても良い。
【0048】
(第六実施形態)
図10は、この発明の第六実施形態における
図3に相当する断面図である。
図10に示すように、この実施形態における合流接続部19の内面19cと流路形成部2の外面2bとの間に形成される排気流路R2の幅Dは、流路形成部2の周方向で、排気ガスGが合流接続部19に流入する流入部18a側よりも、流入部18aとは反対側の方が大きく形成されている。
【0049】
したがって、第六実施形態によれば、第五実施形態と同様に、流路形成部2の周方向で、排気ガスGが回り込みにくい流入部18aとは反対側の排気流路R2の断面積を拡大して、流入部18aとは反対側に排気ガスGがより回り込み易くすることができる。これにより、流路形成部2の周方向で、より均一に排気ガスGを水流に対して合流させることができる。その結果、水流に対する排気ガスGの混合をより円滑に行うことが可能となる。
【0050】
(その他変形例)
この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
【0051】
図11は、この発明の第三実施形態の変形例における
図4に相当する側面図である。
図12は、この発明の第三実施形態の変形例における
図5に相当する断面図である。
例えば、上述した第三実施形態においては、合流接続部19が、流路形成部2の全周を覆うように形成される場合を例示した。しかし、合流接続部19は、流路形成部2の全周を覆うように形成されるものに限られない。
【0052】
例えば、
図11、
図12に示すように、流路形成部2の一部を覆うように形成しても良い。この
図11、
図12においては、軸線Oを中心とした周方向において、排気配管部18が配索される側の流路形成部2の一部を覆うように形成される場合を例示しているが、合流接続部19が流路形成部2を覆う位置は、
図11、
図12の位置に限られない。
また、上述した各実施形態、および、その変形例における構成は、適宜組み合わせて用いても良い。
【0053】
さらに、上述した各実施形態においては、船舶として、ウォータージェット推進器1により推進力を得るウォータージェット推進船110を一例にして説明した。しかし、この発明を適用可能な船舶は、ウォータージェット推進器1のみによって推進する船舶に限られない。例えば、推進力を得るために、ウォータージェット推進器1と、プロペラとの両方を備えている船舶にも適用できる。
【0054】
さらに、上述した各実施形態においては、ウォータージェット推進器1を駆動するためのエンジンEの排気ガスGをウォータージェット推進器1に供給する場合について説明した。しかし、排気ガスGの供給源としては、ウォータージェット推進器1を駆動するエンジンEに限られない。例えば、発電用のエンジンや、プロペラ駆動用のエンジンからの排気ガスGをウォータージェット推進器1に供給しても良い。さらに、エンジンEは、レシプロエンジンに限られず、例えばガスタービンエンジン等であっても良い。