(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ケーシングは、前記ノズルと前記静翼との間に、前記ノズルの端部が配される位置の内径よりも縮径して形成される絞り部を備える請求項5に記載のウォータージェット推進船。
前記ノズルの先端側の直径をD1、前記絞り部の内径をD2、前記噴出口の内径をD3とした場合に、D1≦D2<D3の関係を満たす請求項6に記載のウォータージェット推進船。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したウォータージェット推進船においては、上述した排ガス圧損の低減や低シグネチャー化に加えて、周囲環境への影響を抑制するために、排気ガス温度の低減が望まれている。しかしながら、特許文献1,2に記載のウォータージェット推進船の場合、水流の外側に接続された管路から排ガスが合流しているため、大部分の排ガスが水流の外側を流れてしまい、水に対して排ガスが十分に混合されない。そのため、船外に噴出された排ガスの温度が十分に低減されない可能性がある。
さらに、ウォータージェット非作動時には、水流によるエゼクター効果が得られないため、排ガス圧損が増加してしまうという課題がある。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ウォータージェットの作動、非作動に関わらず排気ガス圧損の低減を図ることができるとともに、ウォータージェットの作動時には、低シグネチャー化を図り、また排気ガス温度を十分に低下させて周囲環境への影響を低減することが可能なウォータージェット推進船を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の第一態様によれば、ウォ―タージェット推進船は、船体と、前記船体の底部に配される開口部から水が導入可能な流路を形成する流路形成部と、前記流路形成部の端部に設けられ、前記流路形成部の延びる方向で外側に向かうに従って前記流路の断面積が減少するように形成されるノズルと、前記流路形成部の内部に配され、前記開口部から導入された水を圧送するインペラと、少なくとも前記インペラを駆動する内燃機関と、前記流路形成部に合流接続される第一分岐部と、前記船体の外面に開口を有する第二分岐部と、を有し、前記内燃機関から排出される排気ガスを導く排気流路形成部と、前記排気流路形成部に設けられて、前記第一分岐部と、前記第二分岐部とに流れる排気ガスの流量を調節可能な弁部と、を備える。
このように構成することで、排気流路形成部に流れる排気ガスを、排気流路形成部の第一分岐部を介して、インペラとノズルとの間に流れる水流に合流させることができる。これにより、強い旋回成分を含む水流に対して排気ガスを合流させることができる。そのため、流路形成部の内部を流れる水流に対して排気ガスを十分に混合させることができる。
さらに、インペラが非作動時には、第二分岐部を介して排気ガスを船体の外部に排出することができるため、排気ガス圧損が上昇することを抑制できる。その結果、ウォータージェットの作動、非作動に関わらず排気ガス圧損の低減を図ることができる。さらに、ウォータージェットの作動時には、低シグネチャー化を図り、また排気ガス温度を十分に低下させて周囲環境への影響を低減することが可能となる。
【0007】
この発明の第二態様によれば、ウォ―タージェット推進船は、第一態様における弁部が、前記第二分岐部に配されて前記第二分岐部の内部を流れる排気ガスの流量を調整するようにしてもよい。
このように構成することで、弁部によって第二分岐部内部の排気流路を流れる排気ガスの流量を調節することが可能となる。また、弁部を閉塞側に調節することで、この閉塞した分だけ、第一分岐部の排気流路を流れる排気ガスの流量を増加させることができる。その結果、第二分岐部に配される弁部のみの簡単な構成によって、第一分岐部の排気流路に流れる排気ガスの流量を容易に調整することができる。
【0008】
この発明の第三態様によれば、ウォ―タージェット推進船は、第一態様における弁部が、前記第一分岐部に配されて前記第一分岐部の内部を流れる排気ガスの流量を調整する第一弁部と、前記第二分岐部に配されて前記第二分岐部の内部を流れる排気ガスの流量を調整する第二弁部と、を備えてもよい。
このように構成することで、第一弁部と第二弁とによって、第一分岐部に流れる排気ガスの流量と、第二分岐部に流れる排気ガスの流量とを調整できるため、それぞれ第一分岐部から水流に混合される排気ガスの量と、第二分岐部から大気に放出される排気ガスの量とを変化させることができる。その結果、インペラの回転数等に応じて水流に混合する排気ガスの量を調整して、排気ガス圧損が上昇することを抑制できる。
【0009】
この発明の第四態様によれば、ウォ―タージェット推進船は、第一から第三態様の何れか一つの態様における第一分岐部が、前記ノズルと前記インペラとの間の前記流路形成部に合流接続されていてもよい。
このように構成することで、第一分岐部に流れる排気ガスを、ノズルと静翼との間の水流に合流させることができる。これにより、強い旋回成分を含む水流に対して排気ガスを合流させることができる。そのため、流路形成部の内部を流れる水に対して排気ガスを十分に混合させることができる。その結果、排気ガス圧損の低減、および、低シグネチャー化を図りつつ、排気ガス温度を十分に低下させて周囲環境への影響を低減することが可能となる。
【0010】
この発明の第五態様によれば、ウォ―タージェット推進船は、第一から第三態様の何れか一つの態様において、前記ノズルを外周側から囲むように設けられるとともに外部に開口する噴出口を有するケーシングと、前記ノズルから噴射される水流を整流可能な静翼と、を有し、前記第一分岐部は、前記内燃機関の排気ガスを前記ケーシングと前記ノズルとの間に供給して、前記排気ガスを前記ノズルと前記静翼との間に流入させるようにしてもよい。
このように構成することで、第一分岐部に流れる排気ガスを、ノズルと静翼との間に流れる水に合流させることができる。また、排気ガスが合流した水流の旋回流を静翼により整流して軸方向流れに変換することができる。さらに、この旋回流を静翼によって整流する際には、水流が撹拌されて水流に対する排気ガスの混合を促進させることができる。その結果、排気ガス圧損の低減、および、低シグネチャー化を図りつつ、排気ガス温度を十分に低下させて周囲環境への影響を低減することが可能となる。
【0011】
この発明の第六態様によれば、ウォ―タージェット推進船は、第五態様におけるケーシングが、前記ノズルと前記静翼との間に、前記ノズルの端部が配される位置の内径よりも縮径して形成される絞り部を備えていてもよい。
このように構成することで、ケーシングの内部の流路断面積を、ノズルの近傍で低減させることができる。そのため、エダクター効果が高まり、ノズルとケーシングとの間の排気流路から流入する排気ガスを、ノズルから噴出する水流に対してより効率よく混合させることができる。その結果、更なる排気ガス温度の低減を図ることができる。
【0012】
この発明の第七態様によれば、ウォ―タージェット推進船は、第六態様において、前記ノズルの先端側の直径をD1、前記絞り部の内径をD2、前記噴出口の内径をD3とした場合に、D1≦D2<D3の関係を満たすようにしてもよい。
このように構成することで、絞り部から噴出口に向かって流路断面積が増加するため、水流の剥離が生じて、水流と排気ガスとの混合がより一層促進される。
【0013】
この発明の第八態様によれば、ウォ―タージェット推進船は、第一から第七態様の何れか一つの態様における排気流路形成部が、排気ガスの温度を予め低下させる予冷装置を備えていても良い。
このように構成することで、水流に混合される排気ガスの温度が低下するため、船外に排出される排気ガス温度の更なる低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
上記ウォ―タージェット推進船によれば、ウォータージェットの作動、非作動に関わらず排気ガス圧損の低減を図ることができるとともに、ウォータージェットの作動時には、低シグネチャー化を図り、また排気ガス温度を十分に低下させて周囲環境への影響を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第一実施形態)
以下、この発明の一実施形態に係るウォータージェット推進船を図面に基づき説明する。
図1は、この発明の第一実施形態におけるウォータージェット推進船の側面図である。
ウォータージェット推進船110は、推力を得るための推力源として、ウォータージェット推進器1を備えている。ウォータージェット推進器1は、船体100内部に設けられる推進装置である。ウォータージェット推進器1は、船体100内部に水Wを取り込み、この取り込まれた水Wを船体100後方から噴射することで推進力を得る。このウォータージェット推進器1は、船体100の内部の船尾部103寄りの位置に設けられている。
【0017】
図2は、この発明の第一実施形態におけるウォータージェット推進器の構成図である。
図2に示すように、ウォータージェット推進器1は、流路形成部2と、インペラ3と、を備えている。
流路形成部2は、吸込み管路2aと、インペラ収容部13と、静翼収容部16と、ノズル部14と、を備えている。
【0018】
吸込み管路2aは、外部から水Wを吸込むための流路R1を形成する。吸込み管路2aは、直線部11と、湾曲部12と、を備えている。直線部11は、
図1に示す船体100の外面となる船底101に開口部Kを有している。この直線部11は、船首部102側から船尾部103側に向かって下方から上方に傾斜して形成される。通常は、この直線部11の開口部Kから水Wが取り込まれる。
【0019】
湾曲部12は、直線部11に連続して船尾方向を向くように湾曲して形成されている。この湾曲部12の船尾側には、インペラ収容部13と、静翼収容部16と、ノズル部14と、が順次連続して形成されている。
インペラ収容部13は、その内部にインペラ3を収容する収容空間を形成する。
【0020】
インペラ3は、内燃機関であるエンジンEの駆動力により回転可能となっている。インペラ3は、そのインペラボス部3aの外周に複数の翼4を備えている。インペラ3は、エンジンEにより軸線O回りに翼4が回転することで、水Wを吸込み管路2a内の後方、すなわち静翼5側に向かって圧送する。このインペラ3により圧送される水Wは、インペラ3の回転による、軸線Oを旋回中心とする強い旋回流を含んでいる。
【0021】
静翼収容部16は、インペラ収容部13とノズル部14との間に配されている。この静翼収容部16の内部空間には、静翼5が収容されている。この静翼収容部16は、インペラ収容部13を船尾側に延長するようにして形成され、インペラ収容部13と同等の流路断面積を有している。
【0022】
静翼5は、インペラ3によってノズル部14側に圧送される水Wを整流する。この静翼5は、ボスキャップ部6と、翼部7とを備えている。ボスキャップ部6は、インペラ3のインペラボス部3aのノズル部14側に僅かな隙間を有して配置されている。ボスキャップ部6の中心と、インペラボス部3aの中心とは、何れも軸線O上に配されている。ボスキャップ部6は、ノズル部14側に向かうに従って縮径するように外側に向かって凸となる曲面8を有している。ボスキャップ部6の曲面8は、上述したインペラボス部3aの外面3bの延長上に連続するように形成されている。翼部7は、ボスキャップ部6の曲面8と、静翼収容部16の内面との間に渡るように形成されている。翼部7は、軸線Oを中心とする周方向に複数配されている。これら静翼5の翼部7は、インペラ3の回転により生じる水Wの旋回成分を打ち消すような翼プロファイルを有している。
【0023】
ノズル部14は、インペラ収容部13、および、静翼収容部16と連続して形成されている。このノズル部14は、船首尾方向において船尾側に向かうに従って流路断面積が縮小するように形成されている。このノズル部14により、インペラ3によって圧送された水Wの船尾側に向かう流速が増加する。この増速された水Wは、船尾側に向かって噴射される。ノズル部14により水Wの船尾側に向かう流速が増すことで、水Wの旋回流が相対的に弱まり、船尾側に向かう強い流れとなる。
【0024】
上述した流路形成部2には、排気流路形成部15が合流接続されている。この排気流路形成部15は、エンジンEの排気ガスGが流れる排気流路R2を形成する配管である。
排気流路形成部15は、本体部15aと、第一分岐部15bと、第二分岐部15cと、を備えている。
【0025】
本体部15aは、その基端(図示せず)が、エンジンEの排気ポートに接続されている。
第一分岐部15bは、本体部15aから分岐して、流路形成部2に合流接続される。
第二分岐部15cは、本体部15aから分岐して大気解放されている。第二分岐部15cは、船体100の乾舷の外面に開口15dを有している。この第二分岐部15cに、弁部40が設けられている。
【0026】
弁部40は、第二分岐部15cにより形成される排気流路R2を閉塞する閉位置と、第二分岐部15cにより形成される排気流路R2を開放する開位置との間で開度調整可能となっている。この弁部40の開度を調整することで、第二分岐部15cにより形成される排気流路R2に流れる排気ガスGの流量を調節することが可能となっている。
【0027】
ここで、第一分岐部15bは、内部に水Wが流れる流路形成部2に合流接続されているため、弁部40が全開位置にある場合には、本体部15aの内部を流れる大部分の排気ガスGが大気解放された第二分岐部15cへと流れ込む。これは、第一分岐部15bに対して、第二分岐部15cの流路抵抗が非常に小さいためである。
【0028】
一方で、弁部40を開位置から閉位置側に変位させると、第二分岐部15cの流路抵抗が徐々に上昇する。これにより、第一分岐部15bと第二分岐部15cとの各抵抗の割合に応じて排気ガスGが第一分岐部15bと第二分岐部15cとに分流するようになる。その後、弁部40が閉位置になると、本体部15aに流れる排気ガスGの全てが第一分岐部15bを介して流路形成部2の内部空間に流入するようになる。
【0029】
第一分岐部15bは、流路形成部2のうち、静翼5と、インペラ3との間に接続されている。つまり、第一分岐部15bの内部を流れる排気ガスGは、静翼5とインペラ3との間で流路形成部2の内部を流れる水Wに合流する。ここで、この実施形態における第一分岐部15bは、インペラ3と静翼5との間に加えて、静翼5のうち軸線O方向におけるインペラ3側の一部を含む範囲に合流接続されている。また、インペラ3と静翼5との間の水Wの圧力は、第一分岐部15bと第二分岐部15cとの分岐点における排気ガスGの圧力よりも低くなっている。そのため、水Wが第一分岐部15bを介して逆流することはない。
【0030】
したがって、上述した第一実施形態によれば、排気流路形成部15に流れる排気ガスGを、排気流路形成部15の第一分岐部15bを介して、インペラ3とノズル部14との間に流れる水Wの流れに合流させることができる。これにより、強い旋回成分を含む水Wに対して排気ガスGを合流させることができる。そのため、流路形成部2の内部を流れる水Wに対して排気ガスGを十分に混合させることができる。
【0031】
さらに、インペラ3が非作動時には、第二分岐部15cを介して排気ガスGを船体100の外部に排出することができるため、排気ガス圧損が上昇することを抑制できる。その結果、ウォータージェットの作動、非作動に関わらず排気ガス圧損の低減を図ることができる。さらに、ウォータージェットの作動時には、低シグネチャー化を図り、また排気ガス温度を十分に低下させて周囲環境への影響を低減することが可能となる。
【0032】
また、第二分岐部15cの内部に配される弁部40のみにより、第一分岐部15bの排気流路R2を流れる排気ガスGの流量を調節することが可能となる。また、弁部40を閉塞側に調節することで、この閉塞した分だけ、第一分岐部15bの排気流路R2を流れる排気ガスGの流量を増加させることができる。その結果、第二分岐部15cに配される弁部40の簡単な構成によって、第一分岐部15bの排気流路R2に流れる排気ガスGの流量を容易に調整することが可能となる。
【0033】
(第二実施形態)
次に、この発明の第二実施形態におけるウォータージェット推進船を図面に基づき説明する。この第二実施形態におけるウォータージェット推進船は、上述した第一実施形態と静翼5の配置が異なるだけである。そのため、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
【0034】
図3は、この発明の第二実施形態における
図2に相当する構成図である。
図3に示すように、ウォータージェット推進器1は、第一実施形態と同様に、流路形成部2と、インペラ3と、を備えている。
流路形成部2は、吸込み管路2aと、インペラ収容部13と、ノズル部14と、外部ケーシング(ケーシング)50と、を備えている。この第二実施形態における流路形成部2は、インペラ収容部13の船尾側に、ノズル部14が配されている。つまり、この第二実施形態においては、インペラ3とノズル部14との間に、静翼5が配置されていない。
【0035】
外部ケーシング50は、ノズル部14を外周側から囲むように設けられている。この外部ケーシング50は、ノズル部14よりも船尾側に向かって延びており、その船尾側の端部に、船体100の外部の水中に開口する噴出口51を有している。より具体的には、外部ケーシング50は、ノズル収容部52と、絞り部53と、静翼収容部54と、を備えている。
【0036】
ノズル収容部52は、軸線Oを中心とする径方向において、ノズル部14から所定距離だけ離間した状態でノズル部14を外側から覆うように形成されている。この実施形態におけるノズル収容部52は、軸線O方向において、インペラ3の翼4と僅かに重なる位置から船尾側に向かって延びるように筒状に形成されている。このノズル収容部52は、その軸線O方向におけるインペラ3側の端部の外周側に、排気流路形成部15の本体部15aが接続されている。
【0037】
上述したインペラ収容部13の外周面13a、および、ノズル部14の外周面14aと、ノズル収容部52の内周面52aとにより、排気ガスGが流れる管状の排気流路R2が形成される。この排気流路R2は、排気流路形成部15の本体部15a内部の排気流路R2と連通されている。これにより、排気流路形成部15の本体部15aを流れる排気ガスGが、インペラ収容部13の外周面13a、および、ノズル部14の外周面14aと、ノズル収容部52の内周面52aとにより形成される排気流路R2を通じて、ノズル部14と静翼5との間に供給可能となっている。
【0038】
すなわち、この第二実施形態におけるノズル収容部52とインペラ収容部13とノズル部14とが、上述した第一実施形態の第一分岐部15bに相当する。これらノズル収容部52とインペラ収容部13とノズル部14とにより形成される排気流路R2の排気ガスG流量は、第一実施形態の第一分岐部15bと同様に、第二分岐部15cに設けられた弁部40の開度を調節することで増減可能となっている。
【0039】
絞り部53は、ノズル収容部52と静翼収容部54との間に形成されている。この絞り部53は、ノズル部14の端部が配される位置の内径D4よりも縮径して形成されている。この絞り部53のうち最も縮径されている位置の内径D2は、ノズル部14の端部の直径D1以上となるように形成されている。絞り部53の内面は、船尾側に向かって徐々に内径の縮小率が減少するように、径方向内側に向かって凸の曲面で形成されている。
【0040】
静翼収容部54は、絞り部53の船尾側に配されている。この静翼収容部54には、静翼5が収容され、上述した噴出口51が形成されている。静翼収容部54は、その噴出口51の内径D3が絞り部53の内径D2より大きく形成されている。つまり、外部ケーシング50は、ノズル部14の先端側の直径をD1、絞り部53の内径をD2、噴出口51の内径をD3とした場合に、D1≦D2<D3の関係を満たすように形成されている。
【0041】
図4は、この発明の第二実施形態におけるウォータージェット推進器の静翼の正面図である。
図3、
図4に示すように、静翼5は、ボス部6aと、翼部7とを備えている。翼部7は、静翼収容部54の中心に配されるボス部6aの周方向に等間隔に配置され、ボス部6aから放射方向に延びている。これら静翼5は、絞り部53を介して流れてきた水Wの旋回成分が打ち消す翼プロファイルをそれぞれ有している。静翼5は、外部ケーシング50の出口で水Wを整流している。
【0042】
したがって、上述した第二実施形態によれば、第一分岐部15bに相当するノズル収容部52とインペラ収容部13とノズル部14とにより形成される排気流路R2を流れる排気ガスGを、ノズル部14と静翼5との間に流れる水Wに合流させることができる。また、排気ガスGが合流した水Wの旋回流を静翼5により整流して軸方向流れに変換することができる。さらに、この旋回流を静翼5によって整流する際には、水Wが撹拌されて水Wに対する排気ガスGの混合を促進させることができる。その結果、排気ガス圧損の低減、および、低シグネチャー化を図りつつ、排気ガス温度を十分に低下させて周囲環境への影響を低減することが可能となる。
【0043】
また、外部ケーシング50が絞り部53を備えていることで、外部ケーシング50の内部の流路断面積を、ノズル部14の近傍で低減させることができる。そのため、エダクター効果が高まり、ノズル部14と外部ケーシング50との間の排気流路R2から流入する排気ガスGを、ノズル部14から噴出する水Wに対してより効率よく混合させることができる。その結果、更なる排気ガス温度の低減を図ることができる。
【0044】
さらに、D1≦D2<D3の関係を満たすことで、絞り部53から噴出口51に向かって流路断面積が増加するため、水Wの流れに剥離が生じて、水Wと排気ガスGとの混合がより一層促進される。
【0045】
(第三実施形態)
次に、この発明の第三実施形態におけるウォータージェット推進船を図面に基づき説明する。この第三実施形態は、第一実施形態に対して予冷装置30を設けたものである。そのため、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
【0046】
図5は、この発明の第三実施形態における
図2に相当する構成図である。
上述した各実施形態においては、エンジンEの排気ガスGを、排気流路形成部15を介して流路形成部2の内部に流れる水Wに合流させる場合について説明した。しかし、この構成に限られない。例えば、
図5に示すように、エンジンEから排出された排気ガスGの温度を予め低下させる予冷装置30を設けるようにしても良い。
【0047】
このようにすることで、エンジンEから排出された排気ガスGは、予冷装置30によってある程度冷却された後に、流路形成部2の内部に流れる水Wに合流される。そのため、船外に排出される排気ガスGの温度の更なる低減を図ることができる。ここで、
図2においては、第一実施形態に対して予冷装置30を追加する場合を例示したが、第二実施形態の構成に対して予冷装置30を追加するようにしても良い。
【0048】
(その他変形例)
この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
【0049】
図6は、この発明の第一実施形態の変形例における
図2に相当する構成図である。
図7は、この発明の第二実施形態の変形例における
図3に相当する構成図である。
例えば、上述した第一実施形態においては、第二分岐部15cに弁部40が設けられる場合を一例にして説明した。しかし、
図6に示すように、第一分岐部15bに第一弁部40a設け、第二分岐部15cに第二弁部40bを設けても良い。第一弁部40aは、第一分岐部15b内部の排気流路R2を開閉し、第二弁部40bは、第二分岐部15c内部の排気流路R2を開閉する。
【0050】
このようにすることで、第一分岐部15b内部の排気流路R2を流れる排気ガスGの流量を第一弁部40aにより調整できるとともに、第二分岐部15c内部の排気流路R2を流れる排気ガスGの流量を第二弁部40bにより調整することができる。そのため、第一分岐部15b内部の排気流路R2に流れる排気ガスGの流量調整を直接的且つ容易に行うことができる。
【0051】
また、
図7に示す第二実施形態の変形例のように、第二実施形態の構成に対して、弁部として、第一弁部40a、および、第二弁部40bを設けるようにしても良い。このようにすることで、上述した第一実施形態の変形例と同様に、流路形成部2の内部に供給する排気ガスGの流量を直接的、且つ、容易に調整することができる。また、図示は省略するが、上述した第一実施形態の変形例と、第二実施形態の変形例とにおける第一弁部40a、第二弁部40bに代えて、三方弁を用いても良い。この場合、大気放出される排気ガスGの流量と、流路形成部2内部の水Wに混合される排気ガスGの流量とは、一つの三方弁によって各々調整することができる。
【0052】
さらに、上述した実施形態においては、船舶として、ウォータージェット推進器1により推進力を得るウォータージェット推進船110を一例にして説明した。しかし、この発明を適用可能な船舶は、ウォータージェット推進器1のみによって推進する船舶に限られない。例えば、推進力を得るために、ウォータージェット推進器1と、プロペラとの両方を備えている船舶にも適用できる。
【0053】
さらに、上述した各実施形態においては、ウォータージェット推進器1を駆動するためのエンジンEの排気ガスGをウォータージェット推進器1に供給する場合について説明した。しかし、排気ガスGの供給源としては、ウォータージェット推進器1を駆動するエンジンEに限られない。例えば、発電用のエンジンや、プロペラ駆動用のエンジンからの排気ガスをウォータージェット推進器1に供給しても良い。さらに、エンジンEは、レシプロエンジンに限られず、例えばガスタービンエンジン等であっても良い。