特許第6500310号(P6500310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6500310
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】ウォータージェット推進船
(51)【国際特許分類】
   B63H 11/08 20060101AFI20190408BHJP
   B63H 21/32 20060101ALI20190408BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20190408BHJP
   F04F 5/04 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   B63H11/08 A
   B63H21/32 B
   B63H21/32 Z
   F01N13/08 Z
   F04F5/04 Z
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-247136(P2014-247136)
(22)【出願日】2014年12月5日
(65)【公開番号】特開2016-107826(P2016-107826A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(72)【発明者】
【氏名】川北 千春
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎輔
【審査官】 福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−119890(JP,A)
【文献】 米国特許第06881110(US,B1)
【文献】 米国特許第07160161(US,B2)
【文献】 特開2002−302096(JP,A)
【文献】 米国特許第05556314(US,A)
【文献】 特開2003−049796(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3090303(JP,U)
【文献】 特開平09−099896(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1655984(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 11/08
B63H 21/32
F01N 13/08
F04F 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体と、
前記船体の底部に配される開口部から水が導入可能な流路を形成する流路形成部と、
前記流路形成部の延びる方向で外側に向かうに従って前記流路の断面積が減少するように形成されるノズルと、
前記流路形成部の内部に配され、前記開口部から導入された水を圧送するインペラと、
少なくとも前記インペラを駆動する内燃機関と、
前記ノズルを外周側から囲むように設けられるとともに外部に開口する噴出口を有する筒状のケーシングと、
前記ノズルから噴射される水流を整流して前記水流の旋回流を軸線方向流れに変換する静翼と、
前記内燃機関の排気ガスを前記ケーシングと前記ノズルとの間に供給して、前記排気ガスを前記ノズルと前記静翼との間に流入させる排気流路形成部と、
を備え
前記ケーシングは、
前記ノズルを外周側から囲むノズル収容部と、
前記ノズルの船尾側に配されて、前記静翼が収容され、前記噴出口が形成された静翼収容部と、を備えるウォータージェット推進船。
【請求項2】
前記流路形成部は、前記ノズルと前記インペラとの間に、前記流路と前記排気ガスが流れる排気ガス流路とを連通する吹き出し口を備える請求項1に記載のウォータージェット推進船。
【請求項3】
前記吹き出し口は、少なくとも前記ケーシングの周方向に間隔をあけて複数設けられている請求項2に記載のウォータージェット推進船。
【請求項4】
前記吹き出し口は、前記排気ガスが前記ケーシングの内部に流入する流入側から遠いほど密に配置されるか、又は、前記流入側から遠いほど流路断面積が大きく形成されている請求項3に記載のウォータージェット推進船。
【請求項5】
前記ケーシングは、前記ノズルと前記静翼との間に、前記ノズルの端部が配される位置の内径よりも縮径して形成される絞り部を備える請求項1から4の何れか一項に記載のウォータージェット推進船。
【請求項6】
前記ノズルの先端側の直径をD1、前記絞り部の内径をD2、前記噴出口の直径をD3とした場合に、D1≦D2<D3の関係を満たす請求項5に記載のウォータージェット推進船。
【請求項7】
前記排気流路形成部は、排気ガスの温度を予め低下させる予冷装置を備える請求項1から6の何れか一項に記載のウォータージェット推進船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ウォータージェット推進器を備えるウォータージェット推進船に関する。
【背景技術】
【0002】
ウォータージェット推進器を備えるウォータージェット推進船にあっては、船底等から吸引した水を後方等に噴出することで推進力を得ている。このウォータージェット推進船によれば、スクリュープロペラにより推進力を得る船舶と比較して高速航行や浅瀬での航行が可能となる点で有利となる。
【0003】
ウォータージェット推進船において、ウォータージェット推進器を駆動する内燃機関や、スクリュープロペラを駆動する内燃機関の排気ガス圧損の低減、および、周囲環境に出される音響、電磁気等の信号であるシグネチャーを低減することが望まれている。
そこで特許文献1,2においては、ウォータージェット推進器のケーシングから噴出する水流に内燃機関の排気ガスを合流させることで、エダクター効果により排気ガス圧損を低減するとともに、大気中に排気音を放出する場合よりも低シグネチャー化を図ることが可能な技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6881110号明細書
【特許文献2】米国特許第7160161号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したウォータージェット推進船においては、上述した排気ガス圧損の低減や低シグネチャー化に加えて、周囲環境への影響を抑制するために、排気ガス温度の低減が望まれている。しかしながら、特許文献1,2に記載のウォータージェット推進船の場合、水流の外側に接続された管路から排気ガスが合流しているため、大部分の排気ガスが水流の外側を流れてしまい、水に対して排気ガスが十分に混合されない。そのため、船外に噴出された排気ガスの温度が十分に低減されない可能性がある。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、排気ガス圧損の低減、および、低シグネチャー化を図りつつ、排気ガス温度を十分に低下させて周囲環境への影響を低減することが可能なウォータージェット推進船を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の第一態様によれば、ウォ―タージェット推進船は、船体と、前記船体の底部に配される開口部から水が導入可能な流路を形成する流路形成部と、前記流路形成部の延びる方向で外側に向かうに従って前記流路の断面積が減少するように形成されるノズルと、前記流路形成部の内部に配され、前記開口部から導入された水を圧送するインペラと、少なくとも前記インペラを駆動する内燃機関と、前記ノズルを外周側から囲むように設けられるとともに外部に開口する噴出口を有する筒状のケーシングと、前記ノズルから噴射される水流を整流して前記水流の旋回流を軸線方向流れに変換する静翼と、前記内燃機関の排気ガスを前記ケーシングと前記ノズルとの間に供給して、前記排気ガスを前記ノズルと前記静翼との間に流入させる排気流路形成部と、を備え、前記ケーシングは、前記ノズルを外周側から囲むノズル収容部と、前記ノズルの船尾側に配されて、前記静翼が収容され、前記噴出口が形成された静翼収容部と、を備える。
このように構成することで、排気流路形成部に流れる排気ガスを、ノズルと静翼との間に流れる水流に合流させることができる。また、排気ガスが合流した水流の旋回流を静翼により整流して軸方向流れに変換することができる。さらに、この旋回流を静翼によって整流する際には、水流が撹拌されて水流に対する排気ガスの混合を促進させることができる。その結果、排気ガス圧損の低減、および、低シグネチャー化を図りつつ、排気ガス温度を十分に低下させて周囲環境への影響を低減することが可能となる。
【0007】
この発明の第二態様によれば、ウォ―タージェット推進船は、第一態様における流路形成部が、前記ノズルと前記インペラとの間に、前記流路と前記排気ガスが流れる排気ガス流路とを連通する吹き出し口を備えていてもよい。
このように構成することで、吹き出し口を介して流路形成部の内部に排気ガスの一部を流入させて、流路形成部の内部を流れる水流に排気ガスを混合させることができる。その結果、水流に対する排気ガスの混合効率を向上して、より一層の排気ガス温度の低減を図ることができる。
【0008】
この発明の第三態様によれば、ウォ―タージェット推進船は、第二態様における吹き出し口が、少なくとも前記ケーシングの周方向に間隔をあけて複数設けられていてもよい。
このように構成することで、ケーシングの周方向の複数箇所から排気ガスをケーシング内に流入させることができる。その結果、吹き出し口からケーシング内部に流入する排気ガスの流量を増加させて、更なる排気ガス温度の低減を図ることができる。
【0009】
この発明の第四態様によれば、ウォ―タージェット推進船は、第三態様における吹き出し口が、前記排気ガスが前記ケーシングの内部に流入する流入側から遠いほど密に配置されていてもよい。
このように構成することで、経路形成部の外周全域から排気ガスを流路形成部の内部に流入させることができる。その結果、水流に対する排気ガスの混合をより一層促進させて、更なる排気ガス温度の低減を図ることができる。
【0010】
この発明の第五態様によれば、ウォ―タージェット推進船は、第一から第四態様におけるケーシングが、前記ノズルと前記静翼との間に、前記ノズルの端部が配される位置の内径よりも縮径して形成される絞り部を備えていてもよい。
このように構成することで、ケーシングの内部の流路断面積を、ノズルの近傍で低減させることができる。そのため、エダクター効果が高まり、ノズルとケーシングとの間の排気流路から流入する排気ガスを、ノズルから噴出する水流に対してより効率よく混合させることができる。その結果、更なる排気ガス温度の低減を図ることができる。
【0011】
この発明の第六態様によれば、ウォ―タージェット推進船は、第五態様において、前記ノズルの先端側の直径をD1、前記絞り部の内径をD2、前記噴出口の直径をD3とした場合に、D1≦D2<D3の関係を満たすようにしてもよい。
このように構成することで、絞り部から噴出口に向かって流路断面積が増加するため、水流の剥離が生じて、水流と排気ガスとの混合がより一層促進される。
【0012】
この発明の第七態様によれば、ウォ―タージェット推進船は、第一から第六態様の何れか一つの態様における排気流路形成部が、排気ガスの温度を予め低下させる予冷装置を備えていても良い。
このように構成することで、水流に混合される排気ガスの温度が低下するため、船外に排出される排気ガス温度の更なる低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
上記ウォ―タージェット推進船によれば、排気ガス圧損の低減、および、低シグネチャー化を図りつつ、排気ガス温度を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の第一実施形態におけるウォータージェット推進船の側面図である。
図2】この発明の第一実施形態におけるウォータージェット推進器の構成図である。
図3】この発明の第一実施形態におけるウォータージェット推進器の静翼の正面図である。
図4】この発明の第一実施形態の変形例における図2に相当する構成図である。
図5】この発明の第二実施形態における図2に相当する構成図である。
図6】この発明の第三実施形態における図2に相当する構成図である。
図7】この発明の第三実施形態における図2に相当する構成図である。
図8】この発明の第五実施形態におけるウォータージェット推進器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第一実施形態)
以下、この発明の一実施形態に係るウォータージェット推進船を図面に基づき説明する。
図1は、この発明の第一実施形態におけるウォータージェット推進船の側面図である。
ウォータージェット推進船110は、推力を得るための推力源として、ウォータージェット推進器1を備えている。ウォータージェット推進器1は、船体100内部に設けられる推進装置である。ウォータージェット推進器1は、船体100内部に水Wを取り込み、この取り込まれた水Wを船体100後方から噴射することで推進力を得る。このウォータージェット推進器1は、船体100の内部の船尾部103寄りの位置に設けられている。
【0016】
図2は、この発明の第一実施形態におけるウォータージェット推進器の構成図である。図3は、この発明の第一実施形態におけるウォータージェット推進器の静翼の正面図である。
図2に示すように、ウォータージェット推進器1は、流路形成部2と、インペラ3と、を備えている。
流路形成部2は、吸込み管路2aと、インペラ収容部13と、ノズル部14と、外部ケーシング(ケーシング)50と、を備えている。
【0017】
吸込み管路2aは、外部から水Wを吸込むための流路R1を形成する。吸込み管路2aは、直線部11と、湾曲部12と、を備えている。直線部11は、図1に示す船体100の外面となる船底101に開口部Kを有している。この直線部11は、船首部102側から船尾部103側に向かって下方から上方に傾斜して形成される。通常は、この直線部11の開口部Kから水Wが取り込まれる。
【0018】
湾曲部12は、直線部11に連続して船尾方向を向くように湾曲して形成されている。この湾曲部12の船尾側には、インペラ収容部13と、ノズル部14と、が順次連続して形成されている。
インペラ収容部13は、その内部にインペラ3を収容する収容空間を形成する。
【0019】
インペラ3は、内燃機関であるエンジンEの駆動力により回転可能となっている。インペラ3は、そのインペラボス部3aの外周に複数の翼4を備えている。インペラ3は、エンジンEにより軸線O回りに翼4が回転することで、水Wを吸込み管路2a内の後方、すなわちノズル部14側に向かって圧送する。このインペラ3により圧送される水Wは、インペラ3の回転による、軸線Oを旋回中心とする強い旋回流を含んでいる。
【0020】
ノズル部14は、インペラ収容部13と連続して形成されている。このノズル部14は、船首尾方向において船尾側に向かうに従って流路断面積が縮小するように形成されている。このノズル部14により、インペラ3によって圧送された水Wの船尾側に向かう流速が増加する。この増速された水Wは、船尾側に向かって噴射される。
【0021】
外部ケーシング50は、ノズル部14を外周側から囲むように設けられている。この外部ケーシング50は、ノズル部14よりも船尾側に向かって延びており、その船尾側の端部に、船体100の外部の水中に開口する噴出口51を有している。より具体的には、外部ケーシング50は、ノズル収容部52と、静翼収容部54と、を備えている。
【0022】
ノズル収容部52は、軸線Oを中心とする径方向において、ノズル部14から所定距離だけ離間した状態でノズル部14を外側から覆うように形成されている。この実施形態におけるノズル収容部52は、軸線O方向において、インペラ3の翼4と僅かに重なる位置から船尾側に向かって延びるように筒状に形成されている。このノズル収容部52は、船尾側に向かって徐々に縮径して形成されている。一方で、ノズル収容部52は、その軸線O方向におけるインペラ3側の端部の外周側に、排気流路形成部15の管状の本体部15aが接続されている。
【0023】
上述したインペラ収容部13の外周面13a、および、ノズル部14の外周面14aと、ノズル収容部52の内周面52aとにより、排気ガスGが流れる断面環状の排気流路R2が形成される。この排気流路R2は、排気流路形成部15の本体部15a内部の排気流路R2と連通されている。これにより、本体部15aを流れる排気ガスGが、インペラ収容部13の外周面13a、および、ノズル部14の外周面14aと、ノズル収容部52の内周面52aとにより形成される排気流路R2を通じて、ノズル部14と静翼5との間に供給可能となっている。この実施形態における排気流路形成部15は、本体部15aと、インペラ収容部13の外周面13aと、ノズル部14の外周面14aと、ノズル収容部52の内周面52aとにより構成されている
【0024】
静翼収容部54は、ノズル部14の船尾側に配されている。図2図3に示すように、静翼収容部54には、静翼5が収容され、上述した噴出口51が形成されている。
【0025】
静翼5は、ノズル部14から噴射された水Wを整流する。この静翼5は、ボス部6と、翼部7とを備えている。
【0026】
図2図3に示すように、ボス部6は、インペラボス部3aの中心を通る軸線Oの延長上にその中心が配されている。
翼部7は、ボス部6と、静翼収容部54の内面54aとの間に渡るように形成されている。翼部7は、ボス部6の周方向に等間隔に配置され、それぞれボス部6を中心とした放射方向に延びている。これら静翼5の翼部7は、インペラ3の回転により生じる水Wの旋回成分を打ち消すような翼プロファイルを有している。
【0027】
したがって、上述した第一実施形態によれば、排気流路形成部15に流れる排気ガスGを、ノズル部14と静翼5との間に流れる水Wに合流させることができる。また、排気ガスGが合流した水Wの旋回流を静翼5により整流して軸線O方向の流れに変換することができる。さらに、この旋回流を静翼5によって整流する際には、水流が撹拌されて水Wに対する排気ガスGの混合を促進させることができる。その結果、排気ガス圧損の低減、および、低シグネチャー化を図りつつ、排気ガス温度を十分に低下させて周囲環境への影響を低減することが可能となる。
【0028】
(第一実施形態の変形例)
次に、この発明の第一実施形態の変形例におけるウォータージェット推進船を図面に基づき説明する。この第一実施形態の変形例におけるウォータージェット推進船は、上述した第一実施形態と流路形成部2の構成が異なるだけである。そのため、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
【0029】
図4は、この発明の第一実施形態の変形例における図2に相当する構成図である。
図4に示すように、ウォータージェット推進器1は、第一実施形態と同様に、流路形成部2と、インペラ3と、を備えている。
流路形成部2は、吸込み管路2aと、インペラ収容部13と、ノズル部14と、外部ケーシング(ケーシング)50と、を備えている。この第二実施形態における流路形成部2は、インペラ収容部13の船尾側に、ノズル部14が配されている。
【0030】
ノズル収容部52は、軸線Oを中心とする径方向において、ノズル部14から所定距離だけ離間した状態でノズル部14を外側から覆うように形成されている。この第一実施形態の変形例におけるノズル収容部52も、第一実施形態と同様に、軸線O方向において、インペラ3の翼4と僅かに重なる位置から船尾側に向かって延びるように筒状に形成されている。このノズル収容部52は、その軸線O方向におけるインペラ3側の端部の外周側に、排気流路形成部15の本体部15aが接続されている。
【0031】
上述したインペラ収容部13の外周面13a、および、ノズル部14の外周面14aと、ノズル収容部52の内周面52aとにより、排気ガスGが流れる管状の排気流路R2が形成される。この排気流路R2は、排気流路形成部15の本体部15a内部の排気流路R2と連通されている。これにより、排気流路形成部15の本体部15aを流れる排気ガスGが、インペラ収容部13の外周面13a、および、ノズル部14の外周面14aと、ノズル収容部52の内周面52aとにより形成される排気流路R2を通じて、ノズル部14と静翼5との間に供給可能となっている。
【0032】
また、インペラ収容部13は、その外周面13aに複数の吹き出し口13bを有している。これら吹き出し口13bは、軸線Oを中心とする周方向に所定間隔で並んで形成されている。この第一実施形態の変形例における吹き出し口13bは、軸線O方向に2列で形成されるとともに、各列においては周方向に等間隔で形成されている。これら吹き出し口13bは、インペラ収容部13をその厚さ方向で貫通している。つまり、吹き出し口13bは、流路形成部2の内部に形成される流路R1と、ノズル収容部52の内部の排気ガスGが流れる排気ガス流路とを連通している。ここで、吹き出し口13bが2列配される場合を例示したが、吹き出し口13bの配置は2列に限られない。
【0033】
したがって、第一実施形態の変形例によれば、吹き出し口13bを介して流路形成部2の内部に排気ガスGの一部を流入させて、流路形成部2の内部を流れる水流に排気ガスGを混合させることができる。その結果、水Wに対する排気ガスGの混合効率を向上して、より一層の排気ガス温度の低減を図ることができる。
(第二実施形態)
次に、この発明の第二実施形態におけるウォータージェット推進船を図面に基づき説明する。この第二実施形態におけるウォータージェット推進船は、上述した第一実施形態と外部ケーシングの形状が異なるだけである。そのため、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
【0034】
図5は、この発明の第二実施形態における図2に相当する構成図である。
図5に示すように、ウォータージェット推進器1は、第一実施形態と同様に、流路形成部2と、インペラ3と、を備えている。
流路形成部2は、吸込み管路2aと、インペラ収容部13と、ノズル部14と、外部ケーシング(ケーシング)50と、を備えている。
【0035】
外部ケーシング50は、ノズル部14を外周側から囲むように設けられている。この外部ケーシング50は、ノズル部14よりも船尾側に向かって延びており、その船尾側の端部に、船体100の外部の水中に開口する噴出口51を有している。より具体的には、外部ケーシング50は、ノズル収容部52と、絞り部53と、静翼収容部54と、を備えている。
【0036】
ノズル収容部52は、第一実施形態と同様に、軸線Oを中心とする径方向において、ノズル部14から所定距離だけ離間した状態でノズル部14を外側から覆うように形成されている。
【0037】
絞り部53は、ノズル収容部52と静翼収容部54との間に形成されている。この絞り部53は、ノズル部14の端部が配される位置の内径D4よりも縮径して形成されている。この絞り部53のうち最も縮径されている位置の内径D2は、ノズル部14の端部の直径D1以上となるように形成されている。絞り部53の内面は、船尾側に向かって徐々に内径の縮小率が減少するように、径方向内側に向かって凸となる曲面で形成されている。
【0038】
静翼収容部54は、絞り部53の船尾側に配されている。この静翼収容部54には、静翼5が収容され、上述した噴出口51が形成されている。静翼収容部54は、その噴出口51の直径D3が絞り部53の内径D2より大きく形成されている。つまり、外部ケーシング50は、ノズル部14の先端側の直径をD1、絞り部53の内径をD2、噴出口の直径をD3とした場合に、D1≦D2<D3の関係を満たすように形成されている。
【0039】
したがって、上述した第二実施形態によれば、ノズル収容部52とインペラ収容部13とノズル部14とにより形成される排気流路R2を流れる排気ガスGを、ノズル部14と静翼5との間に流れる水Wに合流させることができる。また、排気ガスGが合流した水Wの旋回流を静翼5により整流して軸方向流れに変換することができる。さらに、この旋回流を静翼5によって整流する際には、水Wが撹拌されて水Wに対する排気ガスGの混合を促進させることができる。その結果、排気ガス圧損の低減、および、低シグネチャー化を図りつつ、排気ガス温度を十分に低下させて周囲環境への影響を低減することが可能となる。
【0040】
また、外部ケーシング50が絞り部53を備えていることで、外部ケーシング50の内部の流路断面積を、ノズル部14の近傍で低減させることができる。そのため、エダクター効果が高まり、ノズル部14と外部ケーシング50との間の排気流路R2から流入する排気ガスGを、ノズル部14から噴出する水Wに対してより効率よく混合させることができる。その結果、更なる排気ガス温度の低減を図ることができる。
【0041】
さらに、D1≦D2<D3の関係を満たすことで、絞り部53から噴出口51に向かって流路断面積が増加するため、水Wの流れに剥離が生じて、水Wと排気ガスGとの混合がより一層促進される。
【0042】
(第三実施形態)
次に、この発明の第三実施形態におけるウォータージェット推進船を図面に基づき説明する。この第三実施形態は、第一実施形態の変形例における吹き出し口13bの配置密度を周方向で変化させたものである。そのため、第一実施形態の変形例と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
【0043】
図6は、この発明の第三実施形態における図2に相当する構成図である。
この実施形態の流路形成部2には、第一実施形態の変形例と同様に、外部ケーシング50に覆われた部分に吹き出し口13bが形成されている。吹き出し口13bは、外部ケーシング50と流路形成部2との間に形成される排気流路R2と、流路形成部2の内部に形成される流路R1とを連通させる。
【0044】
吹き出し口13bは、流路形成部2の周方向に複数形成されている。吹き出し口13bの配置密度、言い換えれば、吹き出し口13bの単位面積当たりの個数の割合は、流路形成部2の周方向で変化している。より具体的には、上記配置密度は、排気ガスGが排気流路形成部15の本体部15a側(言い換えれば、排気ガスGの流入側)よりも、本体部15aとは反対側の方が高くなっている。この実施形態においては、軸線Oを挟んで本体部15aとは反対側において、貫通部20の配置密度が高くなっているが、本体部15aから離間するにつれて徐々に吹き出し口13bの配置密度が高くなるようにしても良い。また、配置密度の変化に限らず、例えば、吹き出し口13bの内径を変化させて、本体部15aから遠い側の内径を大きく形成するようにしても良い。
【0045】
したがって、第三実施形態によれば、流路形成部2の周方向で、排気ガスGが回り込みにくい排気流路形成部15とは反対側における吹き出し口13bの配置密度を増大して、排気流路形成部15とは反対側において排気ガスGが吹き出し口13bを通じて水流に合流し易くすることができる。これにより、流路形成部2の周方向で、より均一に排気ガスGを水Wに対して合流させることができる。その結果、水Wに対する排気ガスGの混合をより円滑に行うことができる。
【0046】
(第四実施形態)
次に、この発明の第四実施形態におけるウォータージェット推進船を図面に基づき説明する。この第四実施形態は、第一実施形態に対して予冷装置30を設けたものである。そのため、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
【0047】
図7は、この発明の第三実施形態における図2に相当する構成図である。
上述した各実施形態においては、エンジンEの排気ガスGを、排気流路形成部15を介して流路形成部2の内部に流れる水Wに合流させる場合について説明した。しかし、この構成に限られない。例えば、図7に示すように、エンジンEから排出された排気ガスGの温度を予め低下させる予冷装置30を設けるようにしても良い。
【0048】
このようにすることで、エンジンEから排出された排気ガスGは、予冷装置30によってある程度冷却された後に、流路形成部2の内部に流れる水Wに合流される。そのため、船外に排出される排気ガスGの温度の更なる低減を図ることができる。ここで、図7においては、第一実施形態に対して予冷装置30を追加する場合を例示したが、第一実施形態の変形例や第二実施形態の構成に対して予冷装置30を追加するようにしても良い。
【0049】
(第五実施形態)
図8は、この発明の第五実施形態におけるウォータージェット推進器の断面図である。
図8に示すように、この実施形態におけるノズル収容部52の内周面52aと、インペラ収容部13の外周面13a、および、ノズル部14の外周面14aとの間に形成される排気流路R2の幅Dは、流路形成部2の周方向で変化している。より具体的には、上記排気流路R2の幅Dは、排気流路形成部15の本体部15a側よりも、軸線Oを挟んで本体部15aとは反対側の方が大きくなっている。この実施形態における排気流路R2の幅Dは、周方向で本体部15aから離れるに従って徐々に拡大している。しかし、排気流路R2の幅Dは、本体部15a側よりも本体部15aの反対側で大きくなっていればよく、例えば、段階的に変化させるようにしても良い。
【0050】
したがって、第五実施形態によれば、第五実施形態と同様に、流路形成部2の周方向で、排気ガスGが回り込みにくい排気流路形成部15とは反対側の排気流路R2の断面積を拡大して、排気流路形成部15とは反対側に排気ガスGがより回り込み易くすることができる。これにより、流路形成部2の周方向で、より均一に排気ガスGを水流に対して合流させることができる。その結果、水流に対する排気ガスGの混合をより円滑に行うことが可能となる。
【0051】
(その他変形例)
この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
【0052】
例えば、吹き出し口13bを第一実施形態におけるインペラ収容部13に設ける場合について説明したが、上述した第二実施形態におけるインペラ収容部13に吹き出し口13bを形成するようにしても良い。
【0053】
さらに、上述した各実施形態においては、船舶として、ウォータージェット推進器1により推進力を得るウォータージェット推進船110を一例にして説明した。しかし、この発明を適用可能な船舶は、ウォータージェット推進器1のみによって推進する船舶に限られない。例えば、推進力を得るために、ウォータージェット推進器1と、プロペラとの両方を備えている船舶にも適用できる。
【0054】
さらに、上述した各実施形態においては、ウォータージェット推進器1を駆動するためのエンジンEの排気ガスGをウォータージェット推進器1に供給する場合について説明した。しかし、排気ガスGの供給源としては、ウォータージェット推進器1を駆動するエンジンEに限られない。例えば、発電用のエンジンや、プロペラ駆動用のエンジンからの排気ガスをウォータージェット推進器1に供給しても良い。さらに、エンジンEは、レシプロエンジンに限られず、例えばガスタービンエンジン等であっても良い。
【符号の説明】
【0055】
1 ウォータージェット推進器
2 流路形成部
2a 吸込み管路
3 インペラ
3a インペラボス部
4 翼
5 静翼
6 ボス部
7 翼部
11 直線部
12 湾曲部
13 インペラ収容部
13a 外周面
13b 吹き出し口
14 ノズル部(ノズル)
14a 外周面
15 排気流路形成部
15a 本体部
22 静翼通路
30 予冷装置
50 外部ケーシング
51 噴出口
52 ノズル収容部
53 絞り部
54 静翼収容部
54a 内面
100 船体
101 船底
102 船首部
103 船尾部
110 ウォータージェット推進船
E エンジン(内燃機関)
G 排気ガス
K 開口部
O 軸線
R1 流路
R2 排気流路
W 水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8