(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用、結果、および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能であるとともに、基本的な構成に基づく種々の効果や、派生的な効果のうち、少なくとも一つを得ることが可能である。
【0018】
本実施形態の車両1は、例えば、不図示の内燃機関を駆動源とする自動車、すなわち内燃機関自動車であってもよいし、不図示の電動機を駆動源とする自動車、すなわち電気自動車や燃料電池自動車等であってもよいし、それらの双方を駆動源とするハイブリッド自動車であってもよいし、他の駆動源を備えた自動車であってもよい。また、車両1は、種々の変速装置を搭載することができるし、内燃機関や電動機を駆動するのに必要な種々の装置、例えばシステムや部品等を搭載することができる。また、車両1における車輪3の駆動に関わる装置の方式や、数、レイアウト等は、種々に設定することができる。
【0019】
図1に例示されるように、車体2は、不図示の乗員が乗車する車室2aを構成している。車室2a内には、乗員としての運転者の座席2bに臨む状態で、操舵部4や、加速操作部5、制動操作部6、変速操作部7等が設けられている。操舵部4は、例えば、ダッシュボード24から突出したステアリングホイールであり、加速操作部5は、例えば、運転者の足下に位置されたアクセルペダルであり、制動操作部6は、例えば、運転者の足下に位置されたブレーキペダルであり、変速操作部7は、例えば、センターコンソールから突出したシフトレバーである。なお、操舵部4や、加速操作部5、制動操作部6、変速操作部7等は、これらには限定されない。
【0020】
また、車室2a内には、表示出力部としての表示装置8や、音声出力部としての音声出力装置9が設けられている。表示装置8は、例えば、LCD(liquid crystal display)や、OELD(organic electroluminescent display)等である。音声出力装置9は、例えば、スピーカである。また、表示装置8は、例えば、タッチパネル等、透明な操作入力部10で覆われている。乗員は、操作入力部10を介して表示装置8の表示画面に表示される画像を視認することができる。また、乗員は、表示装置8の表示画面に表示される画像に対応した位置で手指等で操作入力部10を触れたり押したり動かしたりして操作することで、操作入力を実行することができる。これら表示装置8や、音声出力装置9、操作入力部10等は、例えば、ダッシュボード24の車幅方向すなわち左右方向の中央部に位置されたモニタ装置11に設けられている。モニタ装置11は、スイッチや、ダイヤル、ジョイスティック、押しボタン等の不図示の操作入力部を有することができる。また、モニタ装置11とは異なる車室2a内の他の位置に不図示の音声出力装置を設けることができるし、モニタ装置11の音声出力装置9と他の音声出力装置から、音声を出力することができる。なお、モニタ装置11は、例えば、ナビゲーションシステムやオーディオシステムと兼用されうる。
【0021】
また、
図1,2に例示されるように、車両1は、例えば、四輪自動車であり、左右二つの前輪3Fと、左右二つの後輪3Rとを有する。これら四つの車輪3は、いずれも転舵可能に構成されうる。
図3に例示されるように、車両1は、少なくとも二つの車輪3を操舵する操舵システム13を有している。操舵システム13は、アクチュエータ13aと、トルクセンサ13bとを有する。操舵システム13は、ECU14(electronic control unit)等によって電気的に制御されて、アクチュエータ13aを動作させる。操舵システム13は、例えば、電動パワーステアリングシステムや、SBW(steer by wire)システム等である。操舵システム13は、アクチュエータ13aによって操舵部4にトルク、すなわちアシストトルクを付加して操舵力を補ったり、アクチュエータ13aによって車輪3を転舵したりする。この場合、アクチュエータ13aは、一つの車輪3を転舵してもよいし、複数の車輪3を転舵してもよい。また、トルクセンサ13bは、例えば、運転者が操舵部4に与えるトルクを検出する。
【0022】
また、
図2に例示されるように、車体2には、複数の撮像部15として、例えば四つの撮像部15a〜15dが設けられている。撮像部15は、例えば、CCD(charge coupled device)やCIS(CMOS image sensor)等の撮像素子を内蔵するデジタルカメラである。撮像部15は、所定のフレームレートで動画データを出力することができる。撮像部15は、それぞれ、広角レンズまたは魚眼レンズを有し、水平方向には例えば140°〜190°の範囲を撮影することができる。また、撮像部15の光軸は斜め下方に向けて設定されている。よって、撮像部15は、車両1が移動可能な路面や車両1が駐車可能な領域を含む車体2の周辺の外部の環境を逐次撮影し、撮像画像データとして出力する。
【0023】
撮像部15aは、例えば、車体2の後側の端部2eに位置され、リヤトランクのドア2hの下方の壁部に設けられている。撮像部15bは、例えば、車体2の右側の端部2fに位置され、右側のドアミラー2gに設けられている。撮像部15cは、例えば、車体2の前側、すなわち車両前後方向の前方側の端部2cに位置され、フロントバンパー等に設けられている。撮像部15dは、例えば、車体2の左側、すなわち車幅方向の左側の端部2dに位置され、左側の突出部としてのドアミラー2gに設けられている。ECU14は、複数の撮像部15で得られた画像データに基づいて演算処理や画像処理を実行し、より広い視野角の画像を生成したり、車両1を上方から見た仮想的な俯瞰画像を生成したりすることができる。なお、俯瞰画像は、平面画像とも称されうる。
【0024】
また、ECU14は、撮像部15の画像から、車両1の周辺の路面に示された区画線等を識別し、区画線等に示された駐車区画を検出(抽出)する。
【0025】
また、
図1,2に例示されるように、車体2には、複数の測距部16,17として、例えば四つの測距部16a〜16dと、八つの測距部17a〜17hとが設けられている。測距部16,17は、例えば、超音波を発射してその反射波を捉えるソナーである。ソナーは、ソナーセンサ、あるいは超音波探知器とも称されうる。ECU14は、測距部16,17の検出結果により、車両1の周囲に位置された障害物等の物体の有無や当該物体までの距離を測定することができる。すなわち、測距部16,17は、物体を検出する検出部の一例である。なお、測距部17は、例えば、比較的近距離の物体の検出に用いられ、測距部16は、例えば、測距部17よりも遠い比較的長距離の物体の検出に用いられうる。また、測距部17は、例えば、車両1の前方および後方の物体の検出に用いられ、測距部16は、車両1の側方の物体の検出に用いられうる。また、測距部16,17は、レーダ装置等であってもよい。
【0026】
また、
図3に例示されるように、駐車支援システム100では、ECU14や、モニタ装置11、操舵システム13、測距部16,17等の他、ブレーキシステム18、舵角センサ19、アクセルセンサ20、シフトセンサ21、車輪速センサ22等が、電気通信回線としての車内ネットワーク23を介して電気的に接続されている。車内ネットワーク23は、例えば、CAN(controller area network)として構成されている。ECU14は、車内ネットワーク23を通じて制御信号を送ることで、操舵システム13、ブレーキシステム18等を制御することができる。また、ECU14は、車内ネットワーク23を介して、トルクセンサ13b、ブレーキセンサ18b、舵角センサ19、測距部16、測距部17、アクセルセンサ20、シフトセンサ21、車輪速センサ22等の検出結果や、操作入力部10等の操作信号等を、受け取ることができる。
【0027】
ECU14は、例えば、CPU14a(central processing unit)や、ROM14b(read only memory)、RAM14c(random access memory)、表示制御部14d、音声制御部14e、SSD14f(solid state drive、フラッシュメモリ)等を有している。CPU14aは、例えば、表示装置8で表示される画像に関連した画像処理や、車両1の目標位置の決定、車両1の移動経路の演算、物体との干渉の有無の判断、車両1の自動制御、自動制御の解除等の、各種の演算処理および制御を実行することができる。CPU14aは、ROM14b等の不揮発性の記憶装置にインストールされ記憶されたプログラムを読み出し、当該プログラムにしたがって演算処理を実行することができる。RAM14cは、CPU14aでの演算で用いられる各種のデータを一時的に記憶する。また、表示制御部14dは、ECU14での演算処理のうち、主として、撮像部15で得られた画像データを用いた画像処理や、表示装置8で表示される画像データの合成等を実行する。また、音声制御部14eは、ECU14での演算処理のうち、主として、音声出力装置9で出力される音声データの処理を実行する。また、SSD14fは、書き換え可能な不揮発性の記憶部であって、ECU14の電源がオフされた場合にあってもデータを記憶することができる。なお、CPU14aや、ROM14b、RAM14c等は、同一パッケージ内に集積されうる。また、ECU14は、CPU14aに替えて、DSP(digital signal processor)等の他の論理演算プロセッサや論理回路等が用いられる構成であってもよい。また、SSD14fに替えてHDD(hard disk drive)が設けられてもよいし、SSD14fやHDDは、ECU14とは別に設けられてもよい。ECU14は、駐車支援装置の一例である。
【0028】
ブレーキシステム18は、例えば、ブレーキのロックを抑制するABS(anti-lock brake system)や、コーナリング時の車両1の横滑りを抑制する横滑り防止装置(ESC:electronic stability control)、ブレーキ力を増強させる(ブレーキアシストを実行する)電動ブレーキシステム、BBW(brake by wire)等である。ブレーキシステム18は、アクチュエータ18aを介して、車輪3ひいては車両1に制動力を与える。また、ブレーキシステム18は、左右の車輪3の回転差などからブレーキのロックや、車輪3の空回り、横滑りの兆候等を検出して、各種制御を実行することができる。ブレーキセンサ18bは、例えば、制動操作部6の可動部の位置を検出するセンサである。ブレーキセンサ18bは、可動部としてのブレーキペダルの位置を検出することができる。ブレーキセンサ18bは、変位センサを含む。
【0029】
舵角センサ19は、例えば、ステアリングホイール等の操舵部4の操舵量を検出するセンサである。舵角センサ19は、例えば、ホール素子などを用いて構成される。ECU14は、運転者による操舵部4の操舵量や、自動操舵時の各車輪3の操舵量等を、舵角センサ19から取得して各種制御を実行する。なお、舵角センサ19は、操舵部4に含まれる回転部分の回転角度を検出する。舵角センサ19は、角度センサの一例である。
【0030】
アクセルセンサ20は、例えば、加速操作部5の可動部の位置を検出するセンサである。アクセルセンサ20は、可動部としてのアクセルペダルの位置を検出することができる。アクセルセンサ20は、変位センサを含む。
【0031】
シフトセンサ21は、例えば、変速操作部7の可動部の位置を検出するセンサである。シフトセンサ21は、可動部としての、レバーや、アーム、ボタン等の位置を検出することができる。シフトセンサ21は、変位センサを含んでもよいし、スイッチとして構成されてもよい。
【0032】
車輪速センサ22は、車輪3の回転量や単位時間当たりの回転数を検出するセンサである。車輪速センサ22は、検出した回転数を示す車輪速パルス数をセンサ値として出力する。車輪速センサ22は、例えば、ホール素子などを用いて構成されうる。ECU14は、車輪速センサ22から取得したセンサ値に基づいて車両1の移動量などを演算し、各種制御を実行する。なお、車輪速センサ22は、ブレーキシステム18に設けられている場合もある。その場合、ECU14は、車輪速センサ22の検出結果をブレーキシステム18を介して取得する。
【0033】
なお、上述した各種センサやアクチュエータの構成や、配置、電気的な接続形態等は、一例であって、種々に設定(変更)することができる。
【0034】
また、
図4に示されるように、ECU14は、取得部141や、障害物検出部142、駐車区画検出部143、表示位置決定部144、目標位置決定部145、検出範囲設定部146、出力情報制御部147、経路設定部148、誘導制御部149、記憶部150等を備える。CPU14aは、プログラムにしたがって処理を実行することにより、取得部141や、障害物検出部142、駐車区画検出部143、表示位置決定部144、目標位置決定部145、検出範囲設定部146、出力情報制御部147、経路設定部148、誘導制御部149等として機能する。また、記憶部150には、各部の演算処理で用いられるデータや、演算処理の結果のデータ等が記憶される。なお、上記各部の機能の少なくとも一部は、ハードウエアによって実現されてもよい。
【0035】
取得部141は、種々のデータや信号等を取得する。取得部141は、例えば、各センサの検出結果や、操作入力、指示入力、画像データ等の、データや信号等を取得する。取得部141は、操作部14gの操作入力による信号を取得することができる。操作部14gは、例えば、押しボタンやスイッチ等である。
【0036】
障害物検出部142は、車両1の走行に支障を来す障害物を検出する。障害物は、例えば、他の車両や、壁、柱、柵、突起、段差、輪留め、物体等である。障害物検出部142は、種々の手法により、障害物の有無や高さ、大きさ等を検出することができる。障害物検出部142は、例えば、測距部16,17の検出結果に基づいて、障害物を検出することができる。また、測距部16,17は、そのビームの高さに対応した物体を検出でき、当該ビームの高さより低い物体を検出できない。よって、測距部16,17の検出結果と、それぞれのビームの高さとによって、障害物検出部142は、障害物の高さを検出することができる。また、障害物検出部142は、車輪速センサ22や不図示の加速度センサの検出結果と、測距部16,17の検出結果とに基づいて、障害物の有無あるいは高さを検出してもよい。また、障害物検出部142は、例えば、撮像部15が撮像した画像に基づく画像処理によって、障害物の高さを検出してもよい。
【0037】
駐車区画検出部143は、駐車区画を検出する。駐車区画は、車両1がその場所に駐車されるよう設定された目安あるいは基準となる区画であって、駐車境界によって区画された領域である。駐車境界は、駐車区画の境界あるいは外縁であって、例えば、区画線や、枠線、直線、帯、段差、それらのエッジ等である。すなわち、駐車境界は、標示や物体等である。以下では、駐車区画の境界の標示は、境界標示と記される。駐車区画検出部143は、例えば、撮像部15が撮像した画像に基づく画像処理によって、駐車区画および駐車境界を検出することができる。駐車区画検出部143は、境界標示検出部の一例である。
【0038】
表示位置決定部144は、例えば、障害物検出部142による検出結果、および駐車区画検出部143の検出結果のうち少なくとも一方に基づいて、車両1を誘導する目安あるいは目標となる表示要素の表示位置を決定する。表示位置は、移動経路の終点に対応してもよいし、移動経路の途中に対応してもよい。表示要素は、例えば、表示装置8に表示される点や、線、枠、領域等として設定されうる。
【0039】
目標位置決定部145は、例えば、障害物検出部142による検出結果、および駐車区画検出部143の検出結果のうち少なくとも一方に基づいて、車両1を誘導する目安あるいは目標となる位置としての目標位置を決定する。目標位置は、移動経路の終点であってもよいし、移動経路の途中であってもよい。目標位置は、例えば、点や、線、枠、領域等として設定されうる。目標位置は、表示位置と同じであってもよい。
【0040】
検出範囲設定部146は、駐車区画検出部143による駐車区画(境界標示)の検出範囲を設定する。駐車区画検出部143は、設定された検出範囲において、駐車区画(境界標示)を検出する。また、本実施形態では、検出範囲設定部146は、検出範囲の大きさを変更することができる。検出範囲の大きさを変更することにより、例えば、境界標示ではないノイズが検出されるのが抑制されうる。検出範囲設定部146の処理については、後述する。
【0041】
出力情報制御部147は、例えば、駐車支援の開始や、終了、目標位置の決定、経路算出、誘導制御等の各段階で、表示装置8や音声出力装置9が、所期の情報を所期の態様で出力するよう、表示制御部14dや音声制御部14e、ひいては表示装置8や音声出力装置9を制御する。
【0042】
経路設定部148は、例えば、車両1すなわち自車の現在の位置や、決定された目標位置、障害物の検出結果等に基づいて、公知の手法等により、車両1の現在の位置から目標位置までの移動経路を設定する。
【0043】
誘導制御部149は、算出された移動経路に沿った車両1の移動が実現されるよう、各部を制御する。誘導制御部149は、例えば、アクセルペダルを操作しなくてもクリープ等によって移動する車両1では、車両1の位置に応じて操舵システム13を制御することにより、車両1を移動経路に沿って移動させることができる。また、誘導制御部149は、操舵システム13のみならず、エンジンやモータ等の駆動機構や、制動機構としてのブレーキシステム18等を制御してもよい。また、誘導制御部149は、例えば、出力情報制御部147や、表示制御部14d、音声制御部14e、ひいては表示装置8や音声出力装置9を制御して、車両1の位置に応じた表示出力や音声出力によって、運転者に、移動経路に沿った車両1の移動を案内してもよい。
【0044】
記憶部150は、ECU14での演算で用いられるあるいはECU14での演算で算出されたデータを記憶する。
【0045】
また、駐車支援システム100では、
図5に例示される手順で処理が実行される。まず、取得部141は、その時点での車両1(自車)の状態を示すデータを取得する(S1)。S1での車両1の状態を示すデータとは、車両1の移動に関わる物理量(パラメータ)のデータであって、具体的には、例えば、車両1の位置、車両1と目標位置および境界標示のうち少なくとも一方との相対的な位置関係、車両1の速度、車両1の加速度、車輪3(前輪3F)の舵角、操作部に対する操作信号等である。なお、車両1の位置と目標位置若しくは境界標示の位置との相対的な位置関係とは、例えば、それら両方の間の位置座標の差分や、一方に対する他方の方向、両方の間の距離等である。次に、検出範囲設定部146は、取得部141で取得されたデータに基づいて検出範囲を設定し(S2)、障害物検出部142は、障害物を検出し(S3)、駐車区画検出部143は、S2で設定された検出範囲において駐車区画(駐車境界、境界標示)を検出する(S4)。次に、目標位置決定部145は、S3やS4の検出結果に基づいて、車両1の移動経路の目標位置を決定する(S5)。次に、経路設定部148は、車両1の現在の位置から決定された目標位置までの移動経路を算出する(S6)。次に、誘導制御部149は、算出された移動経路に沿った車両1の移動が実現されるよう、各部を制御する(S7)。なお、目標位置や、移動経路等は、車両1が移動経路を移動している途中で、適宜に修正あるいは更新されうる。
図5のフローは、駐車支援制御中、所定の時間間隔で設定された各タイムステップで実行される。なお、S1〜S7の全てのステップを全てのタイムステップで実行する必要は無く、例えば、検出範囲の設定(S2)等は、複数のタイムステップ毎に実行されてもよい。
【0046】
次に、
図6〜11が参照されながら、本実施形態の駐車支援システム100の検出範囲設定部146による検出範囲の設定手順の一例が説明される。
【0047】
図6には、車両1における検出範囲の設定可能範囲AL,ARが例示されている。設定可能範囲AL,ARは、検出範囲を設定可能な範囲であって、大きさが最大である場合の検出範囲と同じである。設定可能範囲AL,ARは、例えば、車両1の左右両側に、それぞれ、端部2d,2fから比較的近い位置に配置され、車両1の前後方向Cvに沿って細長く延びた長方形状(四角形状)である。設定可能範囲AL,ARの長辺、すなわち
図6の上下方向に沿った辺は、車両1の前後方向Cvと平行であり、設定可能範囲AL,ARの短辺、すなわち
図6の左右方向に沿った辺は、車両1の車幅方向、すなわち前後方向Cvとの直行方向と、平行である。設定可能範囲AL,ARの前後方向に沿った長さはL、車幅方向に沿った長さはWである。この設定可能範囲AL,ARは、車両1に対して相対的に固定されている。よって、設定可能範囲AL,ARは、車両1に固定された座標系では車両1の移動によらず静止し、地面に固定された座標系では車両1の移動に応じて移動する。なお、設定可能範囲AL,ARは、種々の形状や位置に設定可能であり、例えば、長方形で無くてもよい。なお、検出された駐車区画や駐車境界の位置は、ECU14において、キャリブレーションに基づく座標変換等によって、
図6に例示されるような車両1の上方からの平面視での位置に変換される。
【0048】
また、
図7に例示されるように、経路設定部148は、車両1が位置Psから折り返し点Ptを経て目標位置Paf,Paへ移動する経路R1,R2を設定する。この場合、目標位置Pafは、例えば、駐車区画の入口に対応する位置として、検出された二つの境界標示DL,DRの入口側の端部d1,d1から等距離の中点に設定され、目標位置Paは、例えば、車両1の経路R2の終点に対応して設定される。目標位置Paは、例えば、前端が目標位置Pafであり検出された二つの境界標示DL,DRから等距離となる車両1の位置として、設定される。なお、位置Psは、初期位置あるいは始点位置とも称され、目標位置Paf,Paは、最終位置あるいは終点位置とも称されうる。
【0049】
図8〜11には、車両1が位置Psから目標位置Paに到達するまでの各位置における検出範囲の設定が例示されている。
【0050】
図8には、車両1が経路R1,R2の折り返し点Ptにある状態が示されている。
図8に示されるように、この状態で、設定可能範囲AL,AR内には、検出範囲が設定されていない。本実施形態では、検出範囲設定部146は、車両1が目標位置Paまたは境界標示DL,DRから所定距離以上あるいは所定距離を越えて離れている状態では、検出範囲を設定しない。境界標示DL,DRの検出精度は、車両1から境界標示DL,DRまでの距離が遠いほど、低くなりやすい。仮に、位置の検出精度が高くない境界標示DL,DRに基づいて目標位置Pa,Pafが設定されると、実際の駐車区画と目標位置Pa,Pafとのずれが大きくなる場合がある。この点、本実施形態によれば、車両1と目標位置Paまたは境界標示DL,DRとが所定距離以上離れている状態では、境界標示DL,DRの検出、ならびに当該検出結果に基づく目標位置Pa,Pafの更新が行われないので、境界標示DL,DRの検出精度がそれほど高くないことによる不都合な事象が抑制されうる。
【0051】
図9には、車両1が駐車区画の入口に差し掛かった状態が示されている。
図9に示されるように、この状態では、車両1の左側の設定可能範囲AL内には、検出範囲SL1(SL)が設定されているが、車両1の右側の設定可能範囲AR内には、検出範囲は設定されていない。
図9から明らかとなるように、車両1の右側の設定可能範囲AR内には、境界標示DRは入っていない。このような状態で、設定可能範囲AR内に検出範囲を設定し、当該検出範囲内で境界標示DRの検出が行われたとしても無駄になる。よって、このような設定により、例えば、無駄な演算処理が実行されるのが抑制されうる。
【0052】
誘導制御部149による誘導制御等(駐車支援)における車両1の経路演算によって、ECU14は、車両1の位置と目標位置Paおよび位置Psで検出した境界標示DL,DRの位置との相対的な位置関係を、各タイミングで取得できる。よって、検出範囲設定部146は、車両1に対応する検出範囲SL,SR内に境界標示DL,DRが相対的に進入するタイミングあるいは位置を予測し、当該予測されたタイミングよりも所定時間前のタイミングから検出範囲SL,SRの設定を開始したり、当該予測された位置よりも所定距離手前の位置から検出範囲SL,SRの設定を開始したりすることができる。この場合、設定開始時点における検出範囲SL,SRの車両1の前後方向Cvに沿った長さは
図9,10の長さMとすることができる。
【0053】
また、
図9に示されるように、検出範囲設定部146は、検出範囲SLを、設定可能範囲ALの中に設定する。仮に、各タイミングで予め決められた範囲(設定可能範囲AL)とは無関係に検出範囲SLが設定されると、演算処理の負荷が高くなる場合もある。この点、本実施形態では、検出範囲設定部146は、予め決められた設定可能範囲ALの中に、検出範囲SLを設定するので、例えば、検出範囲SLの設定あるいは変更に伴う演算処理の負荷が増大するのが抑制されうる。なお、設定可能範囲ARにおける検出範囲SR(
図10参照)の設定もこれと同様である。
【0054】
また、
図9に示されるように、検出範囲SLは、設定可能範囲ALのうち、車両1の進行方向の前方側に設定されている。車両1の進行方向の前方側は、
図6〜11の例のように車両1が後進する場合にあっては車両1の前後方向Cvの後方側であり、運転席に座ったドライバーの後方側である。なお、図示されないが、車両1が前進する場合にあっては車両1の前後方向Cvの前方側である。車両1が目標位置Pa(終点位置)に向けて移動する場合、境界標示DL,DRは、車両1から見れば、当該車両1の進行方向の前方側から車両1に相対的に近付くことになる。よって、このような設定により、例えば、境界標示DL,DRを、より効率良く、より迅速に、あるいはより確実に、検出することができる。なお、設定可能範囲ARにおける検出範囲SR(
図10参照)の設定もこれと同様である。
【0055】
また、
図9に示されるように、駐車区画に進入する前の状態のような、前輪3Fの舵角が比較的大きい状態では、当該前輪3Fの一部が設定可能範囲AL,AR内に入っている。このような状態で、仮に設定可能範囲AL,ARの全域が検出範囲SL,SRであったとすると、前輪3Fが境界標示として誤検知されてしまう場合もある。この点、本実施形態によれば、
図9に示されるように、検出範囲SL,SRは、車両1の前後方向Cvの後方側に位置され、前輪3Fを避けて検出範囲SL,SRの範囲が設定されているため、このような誤検知が生じない。よって、検出範囲設定部146は、前輪3F(車輪3)の転舵角が所定角度(閾値)と同じかあるいはより大きい状態では、当該前輪3F(車輪3)が検出範囲SL,SR内に入らないように、当該検出範囲SL,SRの大きさを設定してもよい。
【0056】
図10には、車両1が
図9の状態よりも駐車区画の奥側に進んだ状態が示されている。
図9,10から明らかとなるように、車両1が目標位置Pa(終点位置)に近付くほど、設定可能範囲AL,ARと境界標示DL,DRとが重なっている部分の面積は大きくなる。そこで、本実施形態では、検出範囲設定部146は、車両1が目標位置Pa(終点位置)に近いほど検出範囲SL,SRが大きくなるよう、当該検出範囲SL,SRを設定する。具体的には、
図9の検出範囲SL1の面積よりも
図10の検出範囲SL2の面積の方が大きい。このような設定により、例えば、境界標示DL,DRをより確実に検出することができる。また、検出範囲SL,SRが広いほど、検出範囲設定部146の演算処理の負荷が高まるとともに、境界標示DL,DRの誤検知が多くなりやすい。この点、本実施形態によれば、車両1の位置に応じて検出範囲SL,SRがより適切に設定され、検出範囲SL,SRが無駄に大きく(広く)なるのが抑制されるため、例えば、演算処理の負荷の増大や、境界標示の誤検知等の不都合な事象が抑制されうる。
【0057】
検出範囲設定部146は、具体的には、例えば、検出範囲SL,SRの車両1の進行方向の後方側の端部m1,m2と、前回検出された境界標示DL,DRの車両1の進行方向後方側の端部d1,d2とが、車両1の前後方向Cv、すなわち設定可能範囲AL,ARの長手方向に、距離Mだけ離間するよう、検出範囲SL,SRが設定される。距離Mは、種々の誤差等に対応した余裕長さと考えることができる。よって、このような設定により、境界標示DL,DRがより確実に検出されうる。また、このような設定により、設定可能範囲AL,ARにおける車両1の前後方向Cvに沿った長さを変更するという比較的簡単な演算処理によって、検出範囲SL,SRを変更することができるので、検出範囲設定部146による演算処理の負荷の増大を抑制することができる。なお、本実施形態では、検出範囲SL,SRを設定する演算(
図5のS2)では、前回のタイムステップでの境界標示DL,DRの検出結果と、現在のタイムステップ(演算処理を行っているタイミング)での車両1(自車)の状態の検出結果とが、用いられるが、これには限定されず、前回のタイムステップでの境界標示DL,DRの検出結果と、前回のタイムステップでの車両1の状態の検出結果とが、用いられてもよい。すなわち、検出範囲SL,SRを設定する演算が境界標示DL,DRの検出(同S4)の後に行われ、設定された検出範囲SL,SRが記憶部150に記憶され、次のタイムステップでの駐車区画(境界標示DL,DR)を検出する演算が、記憶部150に記憶された検出範囲SL,SRを対象として行われてもよい。端部m1,m2は、第一の端部の一例であり、端部d1,d2は、第二の端部の一例である。
【0058】
そして、
図11に示されるように、車両1は目標位置Pa(終点位置)に到達する。この時点、あるいはその直前の時点で、検出範囲SL,SRは、設定可能範囲AL,ARと同じである。また、
図11の検出範囲SL3は、
図9および
図10の検出範囲SL1,SL2よりも大きく、
図11の検出範囲SR3は、
図10の検出範囲SR2よりも大きい。なお、車両1が目標位置Paに所定距離以上近付いた状態では、目標位置Pa(中点位置)は、当初の目標位置Paとは異なる位置に補正されてもよい。この場合、目標位置Paの設定(演算)には、境界標示DL,DRの車両1の進行方向の前方側の端部d3,d3の位置等が用いられてもよい。
【0059】
以上、説明したように、本実施形態では、検出範囲設定部146は、境界標示DL,DR(駐車区画、駐車境界)が検出される検出範囲SL,SRの大きさを変更可能に、当該検出範囲SL,SRを設定する。よって、検出範囲SL,SRが必要以上に大きく(広く)なるのを抑制することができるため、例えば、境界標示DL,DRの検出に伴う演算処理が無駄に実行されるのが抑制されたり、境界標示DL,DRの誤検出が減ったりといった効果が得られる。
【0060】
また、本実施形態では、検出範囲設定部146は、検出範囲SL,SRを、目標位置Paおよび境界標示DL,DRのうち少なくとも一方に対する車両1(自車)の相対的な位置に応じて変更可能である。車両1の位置に応じて、境界標示DL,DRを検出可能な範囲は変化する。すなわち、このような構成によれば、例えば、検出範囲SL,SRがより適切に設定されやすい。
【0061】
また、本実施形態では、検出範囲設定部146は、目標位置Pa(終点位置)に車両1が近いほど検出範囲SL,SRが大きくなるよう、当該検出範囲SL,SRを変更可能である。車両1が目標位置Paおよび境界標示DL,DRに近付くほど、境界標示DL,DRを検出可能な範囲は広がる。すなわち、このような構成によれば、例えば、検出範囲SL,SRがより適切に設定されやすい。
【0062】
また、本実施形態では、検出範囲設定部146は、検出範囲SL,SRを、車両1(自車)に対する相対的な位置が固定された設定可能範囲AL,ARのうちの一部に設定する。よって、例えば、検出範囲SL,SRをより容易に変更しやすい。
【0063】
また、本実施形態では、検出範囲設定部146は、検出範囲SL,SRを、設定可能範囲AL,ARのうち車両1(自車)の進行方向の前方側に設定する。車両1が目標位置Pa(終点位置)に近付くにつれて、境界標示DL,DRは車両1の進行方向の前方側から相対的に車両1に近付く。すなわち、このような構成によれば、例えば、検出範囲SL,SRがより適切に設定されやすい。
【0064】
また、本実施形態では、検出範囲設定部146は、検出範囲SL,SRの、車両1の前後方向での長さを変更する。よって、例えば、検出範囲SL,SRをより容易に変更しやすい。
【0065】
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各例の構成や形状は、部分的に入れ替えて実施することも可能である。また、各構成や形状等のスペック(構造や、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、高さ、数、配置、位置等)は、適宜に変更して実施することができる。また、本発明は、種々の形態の駐車場や駐車スペースでの駐車支援に適用可能である。また、本発明は、複数の目標位置の候補の設定に、適用することができる。また、本発明では、設定可能範囲の中から検出範囲が設定される構成には限定されず、設定可能範囲によらずに所定の条件を満たす検出範囲が設定(算出)される構成であってもよい。
【0066】
また、実施形態の駐車支援装置は、以下の[7],[8]に示されるような構成であってもよい。
[7]
上記検出範囲設定部は、自車の左側と右側とで上記検出範囲の大きさが異なるよう、上記検出範囲を変更可能である、請求項1〜6のうちいずれか一つに記載の駐車支援装置。
車両1(自車)が旋回しながら目標位置Pa(終点位置)に近付く場合、車両1の左右で、境界標示DL,DRとの距離や、境界標示DL,DRのうち車両1の近傍にある部分の長さが異なる。よって、このような構成によれば、検出範囲SL,SRがより適切に設定されやすい。
[8]
上記検出範囲設定部は、上記検出範囲の、自車の進行方向での後側の第一の端部が、検出された上記境界標示における上記進行方向の後側の第二の端部よりも、上記進行方向の後側に位置するよう、上記検出範囲を変更可能である、請求項1〜6,[7]のうちいずれか一つに記載の駐車支援装置。
検出範囲SL,SRの進行方向の後側の端部m1,m2が境界標示DL,DRの進行方向の後側の端部d1,d2よりも進行方向の後側に位置することにより、境界標示DL,DRの当該端部d1,d2に対して後側に検出範囲SL,SRが確実に位置することになる。よって、このような構成によれば、検出範囲SL,SRがより適切に設定されやすい。