特許第6500439号(P6500439)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気硝子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6500439-ガラスロール 図000002
  • 特許6500439-ガラスロール 図000003
  • 特許6500439-ガラスロール 図000004
  • 特許6500439-ガラスロール 図000005
  • 特許6500439-ガラスロール 図000006
  • 特許6500439-ガラスロール 図000007
  • 特許6500439-ガラスロール 図000008
  • 特許6500439-ガラスロール 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6500439
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】ガラスロール
(51)【国際特許分類】
   C03B 17/06 20060101AFI20190408BHJP
【FI】
   C03B17/06
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-560975(P2014-560975)
(86)(22)【出願日】2014年12月16日
(86)【国際出願番号】JP2014083297
(87)【国際公開番号】WO2015093491
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2017年9月21日
(31)【優先権主張番号】特願2013-261351(P2013-261351)
(32)【優先日】2013年12月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 克利
(72)【発明者】
【氏名】玉村 周作
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆英
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/111625(WO,A1)
【文献】 特開2012−131661(JP,A)
【文献】 特開2013−186456(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/099073(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 7/00− 7/22
C03B 9/00−17/06
C03B19/00−19/10
C03B21/00−21/06
G02B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスフィルムをロール状に巻き取ったガラスロールであって、
前記ガラスフィルムは、幅方向の断面において厚みが変化する部分を有し、
前記ガラスフィルムを、幅方向の一側の端部領域と、幅方向の他側の端部領域と、幅方向の中央領域と、に三等分する場合において、
前記ガラスフィルムの幅方向の断面における最大厚みが、
前記中央領域に位置する、
ことを特徴とするガラスロール。
【請求項2】
前記一側の端部領域における前記ガラスフィルムの最大厚みをαmaxとし、前記他側の端部領域における前記ガラスフィルムの最大厚みをβmaxとし、前記中央領域における前記ガラスフィルムの最大厚みをγmaxとする場合において、
前記αmaxと前記βmaxと前記γmaxの関係が、
γmax>αmax≧βmaxである場合に、
γmax−αmax>αmax−βmaxである、
ことを特徴とする請求項に記載のガラスロール。
【請求項3】
前記αmaxと前記βmaxが、略等しい、
ことを特徴とする請求項に記載のガラスロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺のガラスフィルムをロール状に巻き取った部材であるガラスロールの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルム状の薄板ガラスであるガラスフィルムの梱包形態として、以下に示す特許文献1に記載されているような、ガラスフィルムをロール状に巻き取った梱包態様が知られており、このような梱包形態のガラスフィルムをガラスロールと呼んでいる。
そして、このようなガラスロールを用いた製品の製造工程では、ガラスロールの入れ替え頻度を減らすことで、製造効率の向上を図ることができる。
このため、ガラスロールは、できる限り長尺のガラスフィルムを巻き取って構成されたものが好まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−132532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、長尺のガラスフィルムをロール状に巻き取っていくと、一方向に巻きずれが生じ、ガラスロールが所謂たけのこ状になることがあった。
【0005】
本発明は、斯かる現状の課題を鑑みてなされたものであり、ガラスフィルムを偏らせずに巻き取って、より長尺のガラスフィルムにより構成された巻きずれの少ないガラスロールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、本来、ガラスロールを形成するガラスフィルムには、巻きずれを生じ難くする観点から、ガラスフィルムの幅方向における厚みが一定であることが望まれているところ、ガラスフィルムの成形工程における微妙な温度差に起因して、図8に示すように、ガラスフィルム11の幅方向において、一方の端部領域11a、11bに最大肉厚αmaxや最小肉厚αminが存在する肉厚分布を呈する場合があり、これに起因して、巻きずれが生じたガラスロールが製造されるとの知見を得て、本発明に至った。
【0007】
本願の第1の発明は、ガラスフィルムをロール状に巻き取ったガラスロールであって、前記ガラスフィルムは、幅方向の断面において厚みが変化する部分を有し、前記ガラスフィルムを、幅方向の一側の端部領域と、幅方向の他側の端部領域と、幅方向の中央領域と、に三等分する場合において、前記ガラスフィルムの幅方向の断面における最小厚みが、前記中央領域に位置することを特徴とする。
【0008】
本願の第2の発明は、請求項1に係る発明において、前記一側の端部領域における前記ガラスフィルムの最小厚みをαminとし、前記他側の端部領域における前記ガラスフィルムの最小厚みをβminとし、前記中央領域における前記ガラスフィルムの最小厚みをγminとする場合において、前記αminと前記βminと前記γminの関係が、αmin≧βmin>γminである場合に、αmin−βmin<βmin−γminであることを特徴とする。
【0009】
本願の第3の発明は、請求項2に係る発明において、前記αminと前記βminが、略等しいことを特徴とする。
ここで「略等しい」とは、実質的に同一の厚みであることを意味し、具体的には厚みの差がαminとβminの厚みのうち厚いほうの2%以下のことである。
【0010】
本願の第4の発明は、ガラスフィルムをロール状に巻き取ったガラスロールであって、前記ガラスフィルムは、幅方向の断面において厚みが変化する部分を有し、前記ガラスフィルムを、幅方向の一側の端部領域と、幅方向の他側の端部領域と、幅方向の中央領域と、に三等分する場合において、前記ガラスフィルムの幅方向の断面における最大厚みが、前記中央領域に位置することを特徴とする。
【0011】
本願の第5の発明は、請求項4に係る発明において、前記一側の端部領域における前記ガラスフィルムの最大厚みをαmaxとし、前記他側の端部領域における前記ガラスフィルムの最大厚みをβmaxとし、前記中央領域における前記ガラスフィルムの最大厚みをγmaxとする場合において、前記αmaxと前記βmaxと前記γmaxの関係が、γmax>αmax≧βmaxである場合に、γmax−αmax>αmax−βmaxであることを特徴とする。
【0012】
本願の第6の発明は、請求項5に係る発明において、前記αmaxと前記βmaxが、略等しいことを特徴とする。ここで「略等しい」とは、実質的の同一の厚みであることを意味し、具体的には厚みの差がαmaxとβmaxのうち厚いほうの2%以下のことである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
本願の第1の発明および第4の発明によれば、ガラスフィルムの偏りを抑制しつつ巻き取ることができ、従来に比してより長尺のガラスフィルムを巻き取った巻きずれの少ないガラスロールを提供することができる。
図7に記載されているような、幅方向において完全に肉厚差がないガラスフィルムを製造することは困難であるところ、本発明のように肉厚差の方向を予め決めることで、ガラスフィルムの肉厚差の制御が、比較的容易となる。従って、巻きずれの少ないガラスロールを容易に作製することができる。
【0015】
本願の第2の発明、第3の発明、第5の発明および第6の発明によれば、ガラスロールにおけるガラスフィルムの偏りを、より確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るガラスロールを示す斜視模式図である。
図2】第1の実施形態に係るガラスフィルムの形状を示す模式図である、(a)実施例1に係るガラスフィルムの形状を示す図、(b)実施例2、3に係るガラスフィルムの形状を示す図。
図3】第2の実施形態に係るガラスフィルムの形状を示す模式図である、(a)実施例4に係るガラスフィルムの形状を示す図、(b)実施例5,6に係るガラスフィルムの形状を示す図。
図4】ガラスロールの製造装置の一例を示す図である。
図5】ガラスフィルムにレーザーの照射熱を作用させて、そのときの熱応力によってガラスフィルムを割断する長手方向切断装置の一例を示す説明図である。
図6】ガラスロールの巻き取り安定性を評価した実験結果を示す図、(a)ガラスフィルム各部の最小厚みを基準とする場合、(b)ガラスフィルム各部の最大厚みを基準とする場合。
図7】幅方向に肉厚差が殆どないガラスフィルムの形状を示した模式図である。
図8】比較例に係るガラスフィルムの形状を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るガラスロールについて、図面を参照しつつ説明する。
図1に示す如く、本発明に係るガラスロール1は、長尺のガラスフィルム11を保護シート12と共に、円筒状の芯材13に巻き付けて構成される。本発明に係るガラスロール1は、図2(a)(b)に示す通り、ガラスフィルム11の幅方向の断面における最小厚みγminが中央領域11c(範囲C)に位置するか、図3(a)(b)に示す通り、ガラスフィルム11の幅方向の断面における最大厚みγmaxが中央領域11c(範囲C)に位置することを特徴としている。
【0018】
ガラスフィルム11は、ガラスロール1として巻き取ることが可能な程度の可撓性を有する長尺の超薄板ガラスである。
【0019】
ガラスフィルム11を構成するガラスとしては、ケイ酸塩ガラス、シリカガラスが用いられ、好ましくはホウケイ酸ガラスが用いられ、最も好ましくは無アルカリガラスが用いられる。
ガラスフィルム11にアルカリ成分が含有されていると、表面において陽イオンの脱落が発生し、いわゆるソーダ吹きの現象が生じ、構造的に粗となる。この場合、ガラスフィルム11を湾曲させて使用していると、経年劣化により粗となった部分から破損する可能性がある。
尚、ここでいう無アルカリガラスとは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)が実質的に含まれていないガラスのことであって、具体的には、アルカリ成分が3000ppm以下のガラスのことである。
本発明で用いる無アルカリガラスのアルカリ成分の含有量は、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下であり、最も好ましくは300ppm以下である。
ガラスロール1を構成するガラスフィルム11の厚みは、ガラスフィルム11に適切な可撓性を付与するとともに、ガラスフィルム11を巻き取った際に、該ガラスフィルム11に不当な応力が作用するのを抑制することを可能にするため、1〜300μmであることが好ましく、10〜200μmであることがより好ましく、10〜100μmであることが最も好ましい。
【0020】
また、本発明に係るガラスロール1を構成するガラスフィルム11は、ダウンドロー法によって成形されていることが好ましく、オーバーフローダウンドロー法によって成形されていることがより好ましい。
特に、図4に示すオーバーフローダウンドロー法は、成形時に板ガラスの両面が、成形部材と接触しない成形法であり、得られた板ガラスの両面(透光面)には傷が生じ難く、研磨しなくても高い表面品位を得ることができる。無論、本発明に係るガラスロール1を構成するガラスフィルム11は、フロート法やスロットダウンドロー法、ロールアウト法、アップドロー法、リドロー法等によって成形されたものであってもよい。
【0021】
図4に示すガラスロール製造装置20の成形炉21内部には、断面楔状の外表面形状を有する成形体22が配設されており、図示しない溶融窯で溶融されたガラス(溶融ガラス)を成形体22に供給することで、当該溶融ガラスが成形体22の頂部から溢れ出るようになっている。そして、溢れ出た溶融ガラスは、成形体22の断面楔状を呈する両側面を伝って下端で合流することで、溶融ガラスからガラスフィルムリボンGの成形が開始されるようになっている。下端で合流したガラスフィルムリボンGは、冷却ローラ23によって、幅方向の収縮が規制されながら下方に流下し、成形領域20Aの下方に位置する徐冷領域20Bに至る。
【0022】
徐冷領域20Bでは、ガラスフィルムリボンGを徐冷しながらその残留ひずみを除去(アニール処理)するようになっている。徐冷領域20Bのさらに下流側(下方)には冷却領域20Cが設けられており、徐冷されたガラスフィルムリボンGを室温程度の温度にまで十分に冷却するようになっている。徐冷領域20Bと冷却領域20Cには、ガラスフィルムリボンGを下方に案内する複数のローラ24が配置されている。複数のローラ24は、適宜空転ローラや引張りローラ等としてガラスフィルムリボンGを下方に案内しながら引き出す機能を果たしている。
【0023】
冷却領域20Cを通過したガラスフィルムリボンGは、鉛直方向から水平方向へと進行方向を変えながら、ガラスフィルム11の製造装置の最も下流側に配置した巻き取り装置26に向けて引き出される。具体的には、冷却領域20Cの下方には、ガラスフィルムリボンGを湾曲させて、その引き出し方向を鉛直方向から略水平方向へと変換する湾曲領域20Dが連続している。この実施形態では、図4に示すように、湾曲領域20DにおいてガラスフィルムリボンGを所定の曲率半径で湾曲させるための複数の湾曲補助ローラ25が設けられており、湾曲領域20Dの下流側(図2でいえば湾曲領域20Dの左側)には、湾曲領域20Dを通過したガラスフィルムリボンGを水平方向に向けて引き出す水平引き出し領域20Eが連続している。これら複数の湾曲補助ローラ25の働きにより、水平引き出し領域20Eに向けてガラスフィルムリボンGを送り出すようになっている。
【0024】
また、水平引き出し領域20Eには、ガラスフィルムリボンGをその長手方向に沿って切断可能な長手方向切断装置27が配設されており、湾曲領域20Dを過過して水平引き出し領域20Eに到達したガラスフィルムリボンGの幅方向両端部をその長手方向に沿って連続的に切断できるようになっている。
【0025】
長手方向切断装置27は、図5に示すように、ガラスフィルム11の下流側端部に初期クラックWを形成すると共に、レーザー照射による加熱点Xをガラスフィルム11の長手方向に沿って走査した後、冷媒による冷却点Yを走査しながら加熱された部分を冷却し、そのときに生じる熱応力によって初期クラックWを進展させて割断線Zを形成するものである。ここで、この割断線Zは、ガラスフィルム11の表面から裏面に亘って連続的に形成される。従って、初期クラックWを進展させて割断線Zを形成した時点で、割断線Zの形成部分に対応した耳部は切断される。尚、レーザーの加熱点X及び冷媒による冷却点Yの走査は、レーザーの加熱点X及び冷媒による冷却点Yを固定した状態で、ガラスフィルム11を搬送方向下流側(図4に示す例では左方向)に順次搬送することによって行われる。
【0026】
上述のようにして、ガラスフィルムリボンGの幅方向両端部を切断した後、これら幅方向両端部が除かれたガラスフィルム11は、巻き取り装置26の芯材13のまわりにロール状に巻き取られる。この際、図4に示すように、巻き取り装置26の近傍に保護シート供給装置28が配設されており、この保護シート供給装置28から供給される保護シート12をガラスフィルム11と共に巻き取り装置26の芯材13まわりにロール状に巻き取るようになっている。保護シート供給装置28には、図4に示される通り、張力付与ローラ29が備えられており、保護シート12に張力が付与された状態で巻き取ることによって、緩みの少ないガラスロール1が作製されている。
【0027】
その後、巻き取られて出来たガラスロール1のロール径(厚み寸法)が所定の寸法に達した時点で、図示しない幅方向切断装置によりガラスフィルム11を幅方向に切断する。この場合、幅方向切断装置は、長手方向切断装置27よりもガラスフィルムリボンGの引き出し経路の下流側に位置していてもよく、また、これとは逆に、長手方向切断装置27が幅方向切断装置よりも下流側に位置していてもよい。以上の工程を経て、図1に示すガラスロール1が得られる。
【0028】
尚、図2図3に示すように、中央領域11c(範囲C)に最大肉厚γmaxや最小肉厚γminを有するガラスフィルム11の作製は、成形されるガラスフィルムリボンGの肉厚を図示しないセンサーで監視しながら、図4に示す成形領域20Aや徐冷領域20BでガラスフィルムリボンGの幅方向に温度差を形成したり、冷却ローラ23やローラ24の回転速度や把持力を適宜調整したりすることで行う。
これにより、図7に示す幅方向に略均等な肉厚を有するガラスフィルム11に比して容易に、巻きずれが生じにくいガラスフィルム11を作製することができる。
【0029】
図2図3に示す通り、実施形態の説明においては、ガラスロール1を構成するガラスフィルム11は、端部領域11a・11bと中央領域11cを備えており、端部領域11aに対応する範囲を範囲A、端部領域11bに対応する範囲を範囲B、中央領域11cに対応する範囲を範囲C、とそれぞれ規定している。範囲A、範囲B、範囲Cは、長手方向切断装置27によってガラスフィルムの耳部を切断した後に幅方向に仮想的に3等分することで、区分けを行っている。また実施形態の説明では、端部領域11aの厚みをα、端部領域11bの厚みをβ、中央領域11cの厚みをγ、の各記号でそれぞれ表すものとしている。
【0030】
図2(a)(b)は、本発明の第1の実施形態に係るガラスフィルムの断面模式図である。
【0031】
第1の実施形態に係るガラスフィルム11は、ガラスフィルム11の断面における幅方向において、中央領域11cで最も肉厚が薄くなっている。
図2(a)に示すガラスフィルム11は、各部の最小厚みαmin・βmin・γminの大小関係が、αmin=βmin>γminとなっている。この場合、αmin−γminは、ガラスフィルム11の作製の容易性の観点から、αminの5%以上であることが好ましく、7%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましい。一方、作製したガラスロール1の良好な巻き取りの観点から、αmin−γminはαminの20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、12%以下であることが更に好ましい。αmin=βminであれば、ガラスロール1に巻きずれが殆ど生ずることが無く、最も好ましい。
【0032】
図2(a)に記載されている通り、第1の実施形態にかかるガラスフィルム11は、αmin=βminであることが、ガラスロール1を作製した場合に巻きずれが少なく好ましいが、図2(b)に記載されている通り、αmin>βminであっても良い。この場合において、αmin−βmin<βmin−γminであることが好ましい。これにより、ガラスロール1の巻き取りを、より安定的に行うことができる。αmin−βminは、ガラスロール1の巻き取り安定性の観点から、αminの10%以下が好ましく、7%以下がより好ましく、5%以下が更に好ましい。また、上記とは逆に、αmin<βminであっても良い。
【0033】
図3(a)(b)は、本発明の第2の実施形態に係るガラスフィルムの断面模式図である。
【0034】
第2の実施形態に係るガラスフィルム11は、ガラスフィルム11の断面における幅方向において、中央領域11cで最も肉厚が厚くなっている。
図3(a)に示すガラスフィルム11は、各部の最大厚みαmax・βmax・γmaxの大小関係が、γmax>αmax=βmaxとなっている。この場合、γmax−αmaxは、ガラスフィルム11の作製の容易性の観点から、γmaxの5%以上であることが好ましく、7%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましい。一方、作製したガラスロール1の良好な巻き取りの観点から、γmax−αmaxはγmaxの20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、12%以下であることが更に好ましい。αmax=βmaxであれば、ガラスロール1に巻きずれが殆ど生ずることが無く、最も好ましい。
【0035】
図3(a)に記載されている通り、第2の実施形態に係るガラスフィルム11は、αmax=βmaxであることが、ガラスロール1を作製した場合に巻きずれが少なく好ましいが、図3(b)に記載されている通り、αmax>βmaxであっても良い。この場合において、γmax−αmax>αmax−βmaxであることが好ましい。これにより、ガラスロール1の巻き取りを、より安定的に行うことができる。αmax−βmaxは、ガラスロール1の巻き取り安定性の観点から、αmaxの10%以下が好ましく、7%以下がより好ましく、5%μm以下が更に好ましい。また、上記とは逆に、αmax<βmaxであっても良い。
【0036】
次に、ガラスフィルム11の断面形状の差異によるガラスロールの巻き取り安定性の変化状況を確認した結果を、図6を用いて説明をする。
尚、図2(a)(b)に示すように、ガラスフィルム11における端部領域11a(範囲A)における最小厚みをαmin、端部領域11b(範囲B)における最小厚みをβmin、中央領域11c(範囲C)における最小厚みをγmin、とそれぞれ規定している。
また、図3(a)(b)に示すように、ガラスフィルム11における端部領域11a(範囲A)における最大厚みをαmax、端部領域11b(範囲B)における最大厚みをβmax、中央領域11c(範囲C)における最大厚みをγmax、とそれぞれ規定している。
【0037】
本実験では、図2図3図8に示すような、断面形状が異なる合計7種類のガラスフィルム(実施例1〜実施例6と比較例)を準備し、それぞれをシート状の保護シート12と共に巻き取ってガラスロールを作製した。
そして、作製したガラスロールの軸方向における長さD(図1参照)を測定して、長さDに基づいて巻ズレ状態の良否を判定した。図6(a)(b)に示す巻き取り安定性評価では、ガラスロールに巻きずれが生じなかったものを◎、僅かに巻きずれが生じたが実用上問題がなかったものを○、巻きずれが生じたが実用上問題が無かったものを△、実用上問題が生じる程度まで巻きずれが生じたものを×と記載した。
【0038】
図2(a)および図6に示す如く、実施例1に係るガラスロール1は、端部領域11a(範囲A)における最小厚みαminが100μm、端部領域11b(範囲B)における最小厚みβminが100μm、中央領域11c(範囲C)における最小厚みγminが80μm、となっているガラスフィルム11を用いて作製した。
即ち、実施例1に係るガラスロール1を構成するガラスフィルム11は、各部の最小厚みαmin・βmin・γminの大小関係が、αmin=βmin>γminとなっており、実施例1に係るガラスフィルム11は、中央領域11c(範囲C)に、厚みが最小となる部位が存在している。
【0039】
また、図2(b)および図6に示す如く、実施例2に係るガラスロール1は、端部領域11a(範囲A)における最小厚みαminが100μm、端部領域11b(範囲B)における最小厚みβminが95μm、中央領域11c(範囲C)における最小厚みγminが80μm、となっているガラスフィルム11を用いて作製した。実施例3に係るガラスロール1は、端部領域11a(範囲A)における最小厚みαminが100μm、端部領域11b(範囲B)における最小厚みβminが90μm、中央領域11c(範囲C)における最小厚みγminが80μm、となっているガラスフィルム11を用いて作製した。
即ち、実施例2、3に係るガラスロール1を構成するガラスフィルム11は、各部の最小厚みαmin・βmin・γminの大小関係が、αmin>βmin>γminとなっており、実施例2、3に係るガラスフィルム11は、中央領域11c(範囲C)に、厚みが最小となる部位が存在している。加えて、実施例2に係るガラスロール1を構成するガラスフィルム11は、αmin−βmin<βmin−γminとなっている。
【0040】
さらに、図6および図8に示す如く、比較例に係るガラスロールは、端部領域11a(範囲A)における最小厚みαminが100μm、端部領域11b(範囲B)における最小厚みβminが80μm、中央領域11c(範囲C)における最小厚みγminが90μm、となっているガラスフィルム11を用いて作製した。
即ち、比較例に係るガラスロールを構成するガラスフィルム11は、各部の最小厚みαmin・βmin・γminの大小関係が、αmin>γmin>βminとなっており、比較例に係るガラスフィルム11は、端部領域11b(範囲B)に、厚みが最小となる部位が存在し、中央領域11c(範囲C)には、厚みが最小となる部位が存在していない。
【0041】
そして、実施例1〜3および比較例に係るガラスロールを比較すると、実施例1に係るガラスロール1において、ガラスフィルム11の巻き取り安定性が最も良好であり、実施例2に係るガラスロール1が、それに次いでガラスフィルム11の巻き取り安定性が良好であり、実施例3に係るガラスロール1が、更にそれに次いでガラスフィルム11の巻き取り安定性が良好であった。
一方、比較例に係るガラスロールでは、ガラスフィルム11の巻き取り安定性が悪かった。
【0042】
そして、本実験では、実施例1〜3に係る各ガラスロール1のように、ガラスフィルム11の中央領域11cにおいて、厚みが最小となる部位が存在する場合、ガラスフィルム11の巻き取り安定性を良好に保ちつつ、巻ズレの少ないガラスロール1を作製できることが確認できた。
またこの場合において、実施例1に係るガラスロール1のように、各端部領域11a・11b同士の最小厚みを略一致させたガラスフィルム11を用いることで、より巻ズレの少ないガラスロール1を作製できることが確認できた。
【0043】
即ち、実施例1〜3に示すように、本発明に係るガラスロール1は、ガラスフィルム11をロール状に巻き取ったものであって、巻き取り軸方向における一側の端部領域11aのガラスフィルム11の最小厚みαmin、および他側の端部領域11bのガラスフィルム11の最小厚みβminが、各端部領域11a・11bの間の部位である中央領域11cのガラスフィルム11の最小厚みγminに比して大きく、中央領域11cに板厚が最小となる部位を備えたガラスフィルム11を用いて作製することを特徴としている。
【0044】
そして、中央領域11cに板厚が最小となる部位を備えたガラスフィルム11を巻き取ってガラスロール1を作製することにより、ガラスフィルム11の偏りを抑制しつつ巻き取ることができ、従来に比してより長尺のガラスフィルム11を巻き取ったガラスロール1を提供することができる。
【0045】
図3(a)および図6に示す如く、実施例4に係るガラスロール1は、端部領域11a(範囲A)における最大厚みαmaxが70μm、端部領域11b(範囲B)における最大厚みβmaxが70μm、中央領域11c(範囲C)における最大厚みγmaxが100μm、となっているガラスフィルム11を用いて作製した。
即ち、実施例4に係るガラスロール1を構成するガラスフィルム11は、各部の最大厚みαmax・βmax・γmaxの大小関係が、γmax>αmax=βmaxとなっており、実施例4に係るガラスフィルム11は、中央領域11c(範囲C)に、厚みが最大となる部位が存在している。
【0046】
また、図3(b)および図6に示す如く、実施例5に係るガラスロールは、端部領域11a(範囲A)における最大厚みαmaxが80μm、端部領域11b(範囲B)における最大厚みβmaxが70μm、中央領域11c(範囲C)における最大厚みγmaxが100μm、となっているガラスフィルム11を用いて作製した。実施例6に係るガラスロール1は、端部領域11a(範囲A)における最大厚みαmaxが95μm、端部領域11b(範囲B)における最大厚みβmaxが90μm、中央領域11c(範囲C)における最大厚みγmaxが100μm、となっているガラスフィルム11を用いて作製した。
即ち、実施例5、6に係るガラスロール1を構成するガラスフィルム11は、各部の最大厚みαmax・βmax・γmaxの大小関係が、γmax>αmax>βmaxとなっており、実施例5、6に係るガラスフィルム11は、中央領域11c(範囲C)に、厚みが最大となる部位が存在している。加えて、実施例5に係るガラスロール1は、γmax−αmax>αmax−βmaxとなっている。
【0047】
そして、実施例4〜6および上述の比較例に係るガラスロールを比較すると、実施例4に係るガラスロール1において、ガラスフィルム11の巻き取り安定性が最も良好であり、実施例5に係るガラスロール1が、それに次いでガラスフィルム11の巻き取り安定性が良好であり、実施例6に係るガラスロール1が、更にそれに次いでガラスフィルム11の巻き取り安定性が良好であった。
一方、比較例に係るガラスロールでは、ガラスフィルム11の巻き取り安定性が悪かった。
【0048】
そして、本実験では、実施例4〜6に係る各ガラスロール1のように、ガラスフィルム11の中央領域11cにおいて、厚みが最大となる部位が存在する場合、ガラスフィルム11の巻き取り安定性を良好に保ちつつ、巻ズレの少ないガラスロール1が作製できることが確認できた。
またこの場合において、実施例4に係るガラスロール1のように、各端部領域11a・11b同士の最大厚みを略一致させたガラスフィルム11を用いることで、より巻ズレの少ないガラスロール1を作製できることが確認できた。
【0049】
即ち、実施例4〜6に示すように、本発明に係るガラスロール1は、ガラスフィルム11をロール状に巻き取ったものであって、巻き取り軸方向における一側の端部領域11aのガラスフィルム11の最大厚みαmax、および他側の端部領域11bのガラスフィルム11の最大厚みβmaxが、各端部領域11a・11bの間の部位である中央領域11cのガラスフィルム11の最大厚みγmaxに比して小さく、中央領域11cに板厚が最大となる部位を備えたガラスフィルム11を用いて作製することを特徴としている。
【0050】
そして、中央領域11cに板厚が最大となる部位を備えたガラスフィルム11を巻き取ってガラスロール1を作製することにより、ガラスフィルム11の偏りを抑制しつつ巻き取ることができ、従来に比してより長尺のガラスフィルム11を巻き取ったガラスロール1を提供することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 ガラスロール
11 ガラスフィルム
11a 端部領域
11b 端部領域
11c 中央領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8