【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の実施例1に係るスイッチング素子のドライブ回路の回路構成を示す図である。
図1において、トランスTaは、端子aと端子bとに接続され且つ駆動信号が入力される一次巻線Pと、端子cと端子dとに接続される二次巻線Sとから構成される。二次巻線Sの両端には、コンデンサC1とダイオードD1との直列回路が接続される。
【0013】
コンデンサC1の一端には二次巻線Sの一端とコンデンサC2の一端が接続される。コンデンサC1の他端にはベース抵抗R1の一端とダイオードD1のアノードが接続される。ベース抵抗R1の他端はバイポーラ型で且つpnp型のトランジスタQ1のベースとバイポーラ型で且つnpn型のトランジスタQ2のベースとベース抵抗R2の一端とに接続される。
【0014】
コンデンサ2の他端はベース抵抗R2の他端とダイオードD2のカソードとに接続される。ダイオードD1のカソードとトランジスタQ1のエミッタとトランジスタQ2のエミッタとダイオードD2のアノードと抵抗R3の一端とは、二次巻線Sの他端に接続される。
【0015】
抵抗R3の他端は、スイッチング素子Q3のゲートに接続される。トランジスタQ2のコレクタは電源Vccの正極に接続され、トランジスタQ1のコレクタは電源Vccの負極とスイッチング素子Q3のソースに接続される。
【0016】
なお、コンデンサC1はトランスTaの端子cに接続されている側を正電圧とし、コンデンサC2はダイオードD2のカソードに接続されている側を正電圧とする。ベース抵抗R1は、スイッチング素子Q3のベースからコンデンサC1へ向かう方向を正電流とし、ベース抵抗R2は、コンデンサC2からトランジスタQ2のベースに向かう方向を正電流とする。
【0017】
次にこのように構成された実施例1のスイッチング素子のドライブ回路の動作を
図2及び
図3、
図4のタイミングチャートを参照しながら説明する。
【0018】
なお、
図4において、Vabは端子aと端子bとの間の電圧、Vcdは端子cと端子dとの間の電圧、C1vはコンデンサC1の両端電圧、C2vはコンデンサC2の両端電圧、R1iはベース抵抗R1に流れる電流、R2iはベース抵抗R2に流れる電流、Q3gは、スイッチング素子Q3のゲートに印加される電圧を示す。
【0019】
まず、
図2を参照しながら、
図4の期間T1の動作を説明する。
図2において、トランスTaの端子aと端子bとの間に、端子aの電圧が端子bの電圧よりも大きくなるようにパルス電圧を印加し、トランスTaの二次側に
図2又は
図3の電圧Vaが発生している状態での電流の様子を示す。
【0020】
印加された電圧VabによりトランスTaの端子aから端子bに電流が流れると、同時にトランスTaの二次側に発生した電圧Vcdにより電流が発生して、一つは、Ta→C1→D1→Taの第一経路で電流が流れ、コンデンサC1は急速充電されて電圧C1vが上昇する。もう一つは、Ta→C2→R2→Q2のベース→Q2のエミッタ→Taの第二経路で電流R2iが流れる。
【0021】
このとき、ダイオードD1とトランジスタQ2のベース−エミッタ間の順方向電圧はほぼ等しいため、ベース抵抗R1の両端電圧は等しくなり、ベース抵抗R1には電流R1iが殆ど流れないので、ベース抵抗R1に流れる電流経路は無視できる。
【0022】
また、第二経路によりトランジスタQ2はターンオンし、Vcc→Q2→R3→Q3のゲートの経路でスイッチング素子Q3の入力容量Cissを充電してスイッチング素子Q3はターンオンする。このとき、スイッチング素子Q3のゲート電圧Q3gは、Vccとなる。
【0023】
また、トランスTaが逆極性で電流が流れた時にはTa→D2→C2→Taの第三経路で既にコンデンサC2は電圧Vbで充電されているから、トランスTaの二次側出力Vaにより第二経路は、ベース抵抗R2を介して合計電圧Vs(正値電圧Va+負値電圧Vb、
図10参照)でトランジスタQ2を駆動している。トランスTa出力とコンデンサC2の電荷によりベース抵抗R2を介してトランジスタQ2を駆動するので、第二経路はコンデンサC2の電荷放電経路である。
【0024】
次に、
図3を参照しながら、
図4の期間T2の動作を説明する。まず、期間T2において、トランスTaの端子aと端子bとの間に、端子bの電圧が端子aの電圧よりも大きくなるようにパルス電圧を印加し、トランスTaの二次側に
図2又は
図3のVbが発生している状態での電流の様子を示す。
【0025】
印加された電圧VabによりトランスTaの端子bから端子aに電流が流れると、同時にトランスTaの二次側に発生した電圧Vcdにより電流が発生して、一つは、Ta→D2→C2→Taの第三経路で電流が流れ、コンデンサC2は急速充電されて電圧C2vが上昇する。もう一つは、Ta→Q1のエミッタ→Q1のベース→R1→C1→Taの第四経路で電流R1iが流れる。
【0026】
このとき、ダイオードD2とトランジスタQ1のベース−エミッタ間の順方向電圧はほぼ等しいため、ベース抵抗R2の両端電圧は等しくなり、ベース抵抗R2には電流R2iが殆ど流れないので、ベース抵抗R2に流れる電流経路は無視できる。
【0027】
また、第二経路によりトランジスタQ1はターンオンし、Q3のゲート→R3→Q1のゲートの経路でスイッチング素子Q3の入力容量Cissを放電してスイッチング素子Q3をターンオフさせる。
【0028】
また、コンデンサC1は第一経路で電圧Vaで充電されているから、トランスTaの二次側出力Vbにより第四経路は、ベース抵抗R1を介して合計電圧Vs(正値電圧Va+負値電圧Vb、
図10参照)でトランジスタQ1を駆動している。トランスTa出力とコンデンサC1の電荷によりベース抵抗R1を介してトランジスタQ1を駆動するので、第四経路はコンデンサC1の電荷放電経路である。
【0029】
期間T1では、コンデンサC1は電圧Vaで急速充電され、既に電圧Vbで充電されているコンデンサC2の電圧とトランスTaの二次側電圧Vaの合計でベース抵抗R2を介してトランジスタQ2を駆動して、スイッチング素子Q3をターンオンさせる。
【0030】
期間T2では、コンデンサC1は既に電圧Vbで充電された電圧VaとトランスTaの二次側電圧Vbの合計でベース抵抗R1を介してトランジスタQ1を駆動して、スイッチング素子Q3をターンオフさせ、コンデンサC2を急速に充電させる。
【0031】
このように実施例1のスイッチング素子のドライブ回路によれば、期間T1では、コンデンサC1が第一経路により、期間T2では、コンデンサC2が第三経路により急速充電するので確実に充電される。また、期間T1では、第二経路によりコンデンサC2はベース抵抗R2で放電され、期間T2では、第四経路によりコンデンサC1はベース抵抗R1で放電される。
【0032】
即ち、コンデンサC1,C2ともに充電速度が放電速度よりも充分に大きいことから、トランジスタQ1,Q2はそれぞれのベース抵抗R1,R2を介して常にほぼ電圧Vaと電圧Vbとの合計値(放電による電圧傾斜があるため、ほぼとした)で駆動される。
【0033】
さらに、期間T1ではベース抵抗R1の両端電圧、期間T2ではベース抵抗R2の両端電圧がほぼ等しくなることから、それぞれの期間ではベース抵抗R1,R2にほぼ電流が流れない。このため、充電経路と放電経路とを分離でき、コンデンサC1,C2を安定に充放電することができる。
【0034】
従って、トランジスタQ1,Q2は安定して駆動され、如何なるデューティ幅でもスイッチング素子Q3のゲートを安定して一定の電源Vccで駆動することができる。また、構成が簡単になる。
【0035】
図5(a)は、デューティが小さい時、例えばデューティ4.7%時のスイッチング素子Q3のゲート波形を示す。
図5(b)は、デューティが大きい時、例えばデューティ93.6%時のスイッチング素子Q3のゲート波形を示す。
図5(b)に示すデューティ93.6%時の電圧Vaが、従来の
図10(b)に示す電圧Vaよりも充分に大きくなっていることから、スイッチング素子Q3のゲートを安定して駆動することができる。
【実施例2】
【0036】
図6は、本発明の実施例2に係るスイッチング素子のドライブ回路の回路構成を示す図である。
図7は、本発明の実施例2に係るスイッチング素子のドライブ回路の各部のタイミングチャートである。
【0037】
図1に示す実施例1に係るスイッチング素子のドライブ回路のトランスTaの一次巻線Pと二次巻線Sとが同相であるのに対して、
図6に示す実施例2に係るスイッチング素子のドライブ回路のトランスTbの一次巻線Pと二次巻線S1とが逆相である点が異なる。
【0038】
このため、
図4と同様のパルス信号をトランスTbの端子aと端子bとの間に印加すると、一次巻線Pに対して二次巻線S1が逆相に巻回されているため、トランスTbの端子cと端子dとの間には、電圧Vabを反転した電圧Vcdが発生する。このため、
図7に示す電圧C1v,C2v、電流R1i,R2i、電圧Q3gは、
図4に示す電圧C1v,C2v、電流R1i,R2i、電圧Q3gを反転したものとなる。
【0039】
従って、実施例2に係るスイッチング素子のドライブ回路は、実施例1に係るスイッチング素子のドライブ回路に対して反転した動作が行われるのみで、その効果は実施例1の効果と同様となる。