(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1絶縁基板の前記第1表面と、前記第1チップにおける前記第1絶縁基板側の表面電極との間に形成され、電導性を有し、前記第1チップを前記第1絶縁基板に接合する第1接合層と、
前記第1絶縁基板の前記第2表面と、前記第2チップにおける前記第1絶縁基板側の表面電極との間に形成され、電導性を有し、前記第2チップを前記第1絶縁基板に接合する第2接合層とを更に含む、請求項1に記載のスイッチング素子ユニット。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
【0010】
図1は、スイッチング素子ユニットの一例を概略的に示す側面図である。
図1では、
図2乃至
図10の各断面の位置が分かるように、内部が透視で示されている。
図2は、
図1のラインA−Aに沿った断面図である。
図3は、
図1のラインB−Bに沿った断面図である。
図4は、
図1のラインC−Cに沿った断面図である。
図5は、
図1のラインD−Dに沿った断面図である。
図6は、
図1のラインE−Eに沿った断面図である。
図7は、
図1のラインF−Fに沿った断面図である。
図8は、
図1のラインG−Gに沿った断面図である。
図9は、
図1のラインH−Hに沿った断面図である。
図10は、
図1のラインI−Iに沿った断面図である。
図11は、
図1のスイッチング素子ユニットの概略的な平面図である。
図11では、
図12乃至
図14の各断面の位置が分かるように、内部が透視で示されている。
図12は、
図11のラインX−Xに沿った断面図である。
図13は、
図11のラインY−Yに沿った断面図である。
図14は、
図11のラインZ−Zに沿った断面図である。尚、第1チップ21等は、断面図において概略的な断面で示されている。
【0011】
以下では、
図1に示すように上側及び下側、左側及び右側を定義する。なお、上側及び下側は、必ずしも実装時の鉛直方向の上側及び下側に対応することを意味しない。左側及び右側についても同様であり、実装時のスイッチング素子ユニット1の向きは任意である。また、以下で、「下面」とは、下側に向いている面を指し、必ずしも平面である必要はない。「上面」についても同様である。
【0012】
スイッチング素子ユニット1は、ハイブリッド車又は電気自動車で使用される走行用モータ104(
図15参照)を駆動するインバータ103(電力変換装置の一例、
図15参照)を形成する。インバータ103は、3相の上下アームを含み、各上下アームは、スイッチング素子と、FWD(Free Wheeling Diode)とを2組含む。スイッチング素子は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。尚、IGBTは、例えば、GaN(窒化ガリウム)やSiC(炭化珪素)等により形成されてよい。以下では、一例として、スイッチング素子ユニット1が任意の1つの上下アームを含む構造について説明する。
【0013】
スイッチング素子ユニット1は、第1絶縁基板10と、第1チップ21と、第2チップ22と、第1導体部31と、第2導体部32とを含む。
【0014】
第1絶縁基板10は、絶縁性を有する基板である。図示の例では、第1絶縁基板10は、一例として、絶縁性及び耐熱性を有するセラミック基板により形成される。
【0015】
第1チップ21は、第1絶縁基板10の上面に実装される。第1チップ21は、上アームを形成するIGBTを含む。第1チップ21は、FWDを内蔵する逆導通IGBT(RC(Reverse Conducting)−IGBT)のチップであってもよい。以下では、一例として、第1チップ21は、逆導通IGBTのチップであるものとする。第1チップ21のIGBTは、第1面に第1表面電極を備え、第2面に第2表面電極を備える。第1表面電極は、コレクタ電極及びカソード電極に対応し、以下、単に「コレクタ電極」と称する。第2表面電極は、エミッタ電極及びアノード電極に対応し、以下、単に「エミッタ電極」と称する。また、第1チップ21は、第1面の端部にゲート電極211(
図11参照)を備える。第1チップ21は、第2面が第1絶縁基板10の上面に向く向きで、第1絶縁基板10の上面に実装される。
【0016】
第1チップ21は、好ましくは、
図12に示すように、第1絶縁基板10の上面に、電導性を有する第1接合層51を介して接合される。第1接合層51は、例えば半田や銀ペースト等により形成される。銀ペーストとしては、例えば、粒径がナノ単位のナノ粒子を含む銀ナノペーストが用いられてよい。第1チップ21を第1接合層51を介して第1絶縁基板10に接合することで、第1チップ21が第1絶縁基板10の上面にバネで電気的に接続される構成に比べて、高い電気伝導性及び高い熱伝導性を効率的に実現し易い構成となる(例えば、高い電気伝導性及び高い熱伝導性を実現するために複数のバネを配置する必要が無い)。
【0017】
第2チップ22は、第1絶縁基板10の下面に実装される。第2チップ22は、下アームを形成するIGBTを含む。第2チップ22は、チップ構造自体は第1チップ21と同一であってよい。以下では、一例として、第2チップ22は、逆導通IGBTのチップであるものとする。第2チップ22のIGBTは、第1面に第1表面電極を備え、第2面に第2表面電極を備える。同様に、第1表面電極は、コレクタ電極及びカソード電極に対応し、以下、単に「コレクタ電極」と称する。第2表面電極は、エミッタ電極及びアノード電極に対応し、以下、単に「エミッタ電極」と称する。また、第2チップ22は、第1面の端部にゲート電極221(
図11参照)を備える。第2チップ22は、第1面が第1絶縁基板10の下面に向く向きで、第1絶縁基板10の下面に実装される。
【0018】
第2チップ22は、好ましくは、
図12に示すように、第1絶縁基板10の下面に、電導性を有する第2接合層52を介して接合される。第2接合層52は、例えば半田や銀ペースト等により形成される。これにより、第2チップ22が第1絶縁基板10の下面にバネで電気的に接続される構成に比べて、高い電気伝導性及び高い熱伝導性を効率的に実現し易い構成となる。
【0019】
第1導体部31は、第1絶縁基板10に形成される。第1導体部31は、第2チップ22のIGBTのゲート電極221に電気的に接続される。図示の例では、第1導体部31は、
図5、
図6、
図7及び
図12等に示すように、導体パターン310と、第1絶縁基板10の上面から上下方向に延在するビア312とを含む。導体パターン310は、
図12に示すように、第1絶縁基板10の内層、及び、第1絶縁基板10の下面(接合層52a分の厚み+導体パターン310の厚み相当分、凹状に上側にオフセットされた下面)に形成される。ビア312は、平面視で第1チップ21の接合範囲(第1接合層51)に対してオフセットして(図示の例では左側に)形成される。即ち、ビア312は、平面視でゲート電極221に対してオフセットして形成される。図示の例では、導体パターン310は、
図12に示すように、一端が接合層52aを介して第2チップ22のIGBTのゲート電極221に電気的に接続され、他端がビア312に電気的に接続される。尚、図示の例では、導体パターン310及びビア312は、2組形成されているが、組数は任意である。
【0020】
第2導体部32は、第1絶縁基板10に形成される。第2導体部32は、
図6に示すように、ビア(第1貫通導体部の一例)324を含む。ビア324は、第1チップ21のIGBTのエミッタ電極及び第2チップ22のIGBTのコレクタ電極の間を電気的に接続する。第2導体部32は、インバータ103の出力電極80に電気的に接続される。尚、インバータ103の出力電極80には、走行用モータ104(
図15参照)が電気的に接続される。
【0021】
図示の例では、第2導体部32は、
図5、
図7及び
図13に示すように、ビア324に加えて、導体パターンを含む。当該導体パターンは、第1パターン部321と、第2パターン部322と、第3パターン部323とを含む。第1パターン部321は、
図5に示すように、第1チップ21の接合範囲(第1接合層51)に対応した形成範囲で、第1絶縁基板10の上面に形成される。第2パターン部322は、
図7及び
図13に示すように、第2チップ22の接合範囲(第2接合層52)に対応した形成範囲で、第1絶縁基板10の下面(第2接合層52の厚み+第2パターン部322の厚み相当分、凹状に上側にオフセットされた下面)に形成される。第2パターン部322は、第1パターン部321に対して上下方向で対向する(上面視で重なり合う関係となる)。第3パターン部323は、
図5に示すように、第1パターン部321から形成され、第1チップ21の接合範囲外へ左側に延在する。ビア324は、第1絶縁基板10を上下方向に貫通する。ビア324は、
図6に示すように、第1パターン部321の形成範囲(=第2パターン部322の形成範囲)内に複数個形成される。尚、図示の例では、複数個のビア324は、上面視で格子状に配列されるが、他の配列パターンで(例えば千鳥状に)配列されてもよい。
【0022】
本実施例によれば、第1チップ21及び第2チップ22とが第1絶縁基板10の上下に配置されるため、第1チップ21及び第2チップ22間をビア324を介して電気的に接続することが可能となり、第1チップ21及び第2チップ22が左右方向に並んで配置される場合に比べて、第1チップ21及び第2チップ22間のインダクタンスの低減が可能となる。また、第2チップ22のIGBTのゲート電極221に電気的に接続される第1導体部31が第1絶縁基板10に形成されるので、ゲート電極221からのゲート信号線の形成が容易である。即ち、第1絶縁基板10にビアや配線パターンを形成することで第1導体部31(ゲート信号線の要素)を形成できるので、第2チップ22のゲート電極221に銅線をワイヤボンディングで接合してゲート信号線を形成する場合に比べて、同ゲート信号線の形成が容易となる。また、第2導体部32が第1絶縁基板10に形成されるので、第1チップ21及び第2チップ22をインバータ103の出力電極80に電気的に接続するための配線の形成が容易となる。
【0023】
次に、再度、
図1乃至
図14を参照して、図示の例によるスイッチング素子ユニット1の更なる好ましい特徴について説明する。
【0024】
図示の例では、スイッチング素子ユニット1は、
図12等に示すように、更に、第2絶縁基板12と、第3絶縁基板13と、上部カバー基板14、下部カバー基板15と、コンデンサ(平滑コンデンサ)40と、正極側バスバ(第1バスバの一例)60と、負極側バスバ(第2バスバの一例)62と、を含む。
【0025】
第2絶縁基板12は、絶縁性を有する基板である。図示の例では、第2絶縁基板12は、一例として、セラミック基板により形成される。第2絶縁基板12は、第1絶縁基板10の上側に配置される。図示の例では、第2絶縁基板12の下面は、第1接合層51等を介して第1絶縁基板10の上面に接合される。
【0026】
第2絶縁基板12は、第1チップ21を収容する空洞を有する。第2絶縁基板12は、
図3に示すように、正極側バスバ60を形成する導体層(導体パターン)を有する。また、第2絶縁基板12は、
図4等に示すように、コンデンサ40が搭載される空間が第1チップ21の右側に形成される。
【0027】
第2絶縁基板12は、
図2及び
図11に示すように、上面に、出力電極80と、第1ゲート外部電極91と、第2ゲート外部電極92とが形成される。出力電極80、第1ゲート外部電極91及び第2ゲート外部電極92は、それぞれ、導体パターンとして形成されてよい。出力電極80、第1ゲート外部電極91及び第2ゲート外部電極92は、平面視で、第1チップ21よりも左側の領域に形成される。図示の例では、出力電極80は、奥行き方向(上下方向及び左右方向に垂直な方向)で第1ゲート外部電極91及び第2ゲート外部電極92間に形成される。
【0028】
第2絶縁基板12は、
図3、
図4及び
図12に示すように、第2絶縁基板12を貫通するビア314が形成される。ビア314は、平面視で第1絶縁基板10のビア312に対応する位置に形成される。ビア314は、
図12に示すように、下端が接合層51aを介してビア312に電気的に接続され、上端が第2ゲート外部電極92に電気的に接続される。このようにして、第2チップ22のゲート電極221は、接合層52a、導体パターン310、ビア312、接合層51a、及び、ビア314を介して、第2絶縁基板12の上面の第2ゲート外部電極92に電気的に接続される。第2ゲート外部電極92は、第2絶縁基板12の上面に形成されるので、外部(制御装置)との電気的な接続が容易である。
【0029】
第2絶縁基板12は、
図3、
図4及び
図13に示すように、第2絶縁基板12を貫通するビア(第2貫通導体部の一例)802が形成される。ビア802は、平面視で第1絶縁基板10の第3パターン部323に対応する位置に形成される。ビア802は、
図13に示すように、下端が接合層51bを介して第3パターン部323に電気的に接続され、上端が出力電極80に電気的に接続される。このようにして、第1チップ21のIGBTのエミッタ電極(及び第2チップ22のIGBTのコレクタ電極)は、第2導体部32(第3パターン部323等)、接合層51b、及び、ビア802を介して、第2絶縁基板12の上面の出力電極80に電気的に接続される。出力電極80は、第2絶縁基板12の上面に形成されるので、外部(走行用モータ104)との電気的な接続が容易である。
【0030】
第2絶縁基板12は、
図3及び
図14に示すように、ビア318が形成される。ビア318は、平面視で第1チップ21のゲート電極211に対応する位置に形成される。ビア318は、
図14に示すように、下端が接合層54aを介してゲート電極211に電気的に接続され、上端が第1ゲート外部電極91に電気的に接続される。このようにして、第1チップ21のゲート電極211は、接合層54a及びビア318を介して、第2絶縁基板12の上面の第1ゲート外部電極91に電気的に接続される。第1ゲート外部電極91は、第2絶縁基板12の上面に形成されるので、外部(制御装置)との電気的な接続が容易である。
【0031】
第3絶縁基板13は、絶縁性を有する基板である。図示の例では、第3絶縁基板13は、一例として、セラミック基板により形成される。第3絶縁基板13は、第1絶縁基板10の下側に配置される。図示の例では、第3絶縁基板13の上面は、第2接合層52等を介して第1絶縁基板10の下面に接合される。
【0032】
第3絶縁基板13は、第2チップ22を収容する空洞を有する。第3絶縁基板13は、
図9に示すように、負極側バスバ62を形成する導体層(導体パターン)を有する。また、第3絶縁基板13は、
図8等に示すように、コンデンサ40が搭載される空間が第2チップ22の右側に形成される。
【0033】
上部カバー基板14は、絶縁性を有する基板である。図示の例では、上部カバー基板14は、一例として、セラミック基板により形成される。上部カバー基板14は、第2絶縁基板12の上側に配置される。上部カバー基板14には、
図12に示すように、導体パターン14aが形成される。上部カバー基板14は、導体パターン14aが接合層56を介して正極側バスバ60に接合されることで、第2絶縁基板12に接合される。上部カバー基板14の上側には、冷却装置(例えば冷却水が循環される冷却装置)が熱的に接続されてもよい。
【0034】
下部カバー基板15は、絶縁性を有する基板である。図示の例では、下部カバー基板15は、一例として、セラミック基板により形成される。下部カバー基板15は、第3絶縁基板13の下側に配置される。下部カバー基板15には、
図12に示すように、導体パターン15aが形成される。下部カバー基板15は、導体パターン15aが接合層57(
図10参照)を介して負極側バスバ62に接合されることで、第3絶縁基板13に接合される。下部カバー基板15の下側には、冷却装置(例えば冷却水が循環される冷却装置)が熱的に接続されてもよい。
【0035】
コンデンサ40は、インバータ103の正極側(正極側バスバ60)と負極側(負極側バスバ62)との間に電気的に接続される。コンデンサ40は、例えばセラミックコンデンサである。図示の例では、コンデンサ40は、
図12等に示すように、誘電体部41と、正極側電極(第1電極の一例)42と、負極側電極(第2電極の一例)44とを含む。正極側電極42及び負極側電極44は、誘電体部41を上下から挟む。正極側電極42は、
図12等に示すように、上部接合層54を介して正極側バスバ60に電気的に接続される。負極側電極44は、
図12等に示すように、下部接合層55を介して負極側バスバ62に電気的に接続される。
【0036】
コンデンサ40は、
図12等に示すように、第1チップ21及び第2チップ22に対して右側に隣接して配置される。例えば、コンデンサ40は、
図12等に示すように、第1チップ21及び第2チップ22に対して、左右方向で必要な絶縁距離だけ離間して配置される。これにより、コンデンサ40と第1チップ21及び第2チップ22との間のインダクタンスを低減できる。
【0037】
正極側バスバ60は、
図12等に示すように、第1チップ21のコレクタ電極(表面電極)及びコンデンサ40の正極側電極42の上面に、上部接合層54を介して接合される。即ち、正極側バスバ60及び上部接合層54は、第1チップ21のコレクタ電極及びコンデンサ40の正極側電極42に対して共通に設けられる。これにより、コンデンサ40及び第1チップ21間のインダクタンスを効率的に低減できる。
【0038】
負極側バスバ62は、
図12等に示すように、第2チップ22のエミッタ電極(表面電極)及びコンデンサ40の負極側電極44の下面に、下部接合層55を介して接合される。即ち、負極側バスバ62及び下部接合層55は、第2チップ22のエミッタ電極及びコンデンサ40の負極側電極44に対して共通に設けられる。コンデンサ40及び第2チップ22間のインダクタンスを効率的に低減できる。
【0039】
以上のような図示の例によるスイッチング素子ユニット1の更なる好ましい特徴によれば、とりわけ、以下のような効果が奏される。
【0040】
図示の例によるスイッチング素子ユニット1によれば、第1チップ21及び第2チップ22は、第1絶縁基板10に第1接合層51及び第2接合層52を介してそれぞれ接合される。これにより、例えば第2絶縁基板12や第3絶縁基板13の上下方向の寸法公差を、第1接合層51及び第2接合層52により吸収でき、搭載性が向上する。また、上述の如く、第1接合層51及び第2接合層52を用いることで第1チップ21及び第2チップ22が第1絶縁基板10にバネで電気的に接続される構成に比べて、高い電気伝導性及び高い熱伝導性を効率的に実現し易い構成となる。
【0041】
図示の例によるスイッチング素子ユニット1によれば、第1チップ21及び第2チップ22は、第1接合層51、第1絶縁基板10のビア324及び第2接合層52を介して電気的に接続される。これにより、第1絶縁基板10のビア324の代わりに単一の金属板を用いる場合に比べて、第1チップ21及び第2チップ22と第1絶縁基板10との間の熱膨張係数の差に起因した第1接合層51及び第2接合層52における熱応力を低減できる。特に、図示の例のように、ビア324が複数個離散して設けられる場合には、単一の比較的サイズの大きいビアを設ける場合に比べて、熱応力を低減できる。具体的には、第1絶縁基板10のビア324は、導体であるので、第1チップ21及び第2チップ22よりも有意に熱膨張係数が高い。しかしながら、各ビア324のそれぞれのサイズ自体は大きくないため、個々の膨張量自体も比較的小さい。このため、それぞれのビア324と第1チップ21及び第2チップ22との間の熱膨張係数の差に起因した第1接合層51及び第2接合層52における熱応力を低減できる。
【0042】
図示の例によるスイッチング素子ユニット1によれば、コンデンサ40は、第1絶縁基板10に対して左右方向で(図示の例では右側に)隣接する。これにより、コンデンサ40の正極側電極42と第1チップ21との間のインダクタンスは、主に正極側バスバ60のインダクタンスのみになるので、同インダクタンスを低減できる。同様に、コンデンサ40の負極側電極44と第2チップ22との間のインダクタンスは、主に負極側バスバ62のインダクタンスのみになるので、同インダクタンスを低減できる。
【0043】
図示の例によるスイッチング素子ユニット1によれば、第3絶縁基板13の上面の一端側(図示の例では左側の端部)に出力電極80、第1ゲート外部電極91及び第2ゲート外部電極92が集約される。これにより、出力電極80、第1ゲート外部電極91及び第2ゲート外部電極92と外部との間の電気的な接続が容易となる。例えば、第1ゲート外部電極91及び第2ゲート外部電極92と外部(制御装置)との電気的な接続は、可撓性のある基板により形成される制御基板を、第3絶縁基板13の上面の一端に配置することで容易に実現できる。
【0044】
次に、
図15を参照して、スイッチング素子ユニット1が適用されるのに好適な電動車両用モータ駆動システムの一例を説明する。
【0045】
図15は、電動車両用モータ駆動システム100の全体構成の一例を示す図である。
【0046】
モータ駆動システム100は、
図15に示すように、バッテリ101、DC−DCコンバータ102、インバータ103、及び、走行用モータ104を備える。
【0047】
スイッチング素子ユニット1は、インバータ103の3つの上下アームの任意の1つを形成できる。また、スイッチング素子ユニット1のコンデンサ40は、モータ駆動システム100の平滑コンデンサCを形成する。例えば、スイッチング素子ユニット1は、インバータ103のU相に係る上下アームを形成できる。この場合、第1チップ21は、スイッチング素子Q1及びダイオードD1を含み、第2チップ22は、スイッチング素子Q2及びダイオードD2を含む。このとき、出力電極80は、中点M1に対応する。
【0048】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0049】
例えば、図示の例では、
また、図示の例では、ビア324は、複数個形成されているが、1つだけであってもよい。この場合、ビア324は、扱う電流の大きさに応じた容積(又は断面積)を有するように形成されてよい。この場合、例えば、ビア324の形成範囲(断面)を、第1チップ21の接合範囲(=第2チップ22の接合範囲)よりも小さくすることで、第1チップ21の接合範囲の全体をカバーする場合に比べて、第1接合層51及び第2接合層52における熱応力の低減が依然として可能である。また、この場合、ビア324は、第1絶縁基板10を貫通する態様で挿入される導体材料(例えば金属片)により置換されてもよい。
【0050】
また、図示の例では、スイッチング素子はIGBTであったが、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)のような他のスイッチング素子であってもよい。
【0051】
また、図示の例では、スイッチング素子ユニット1は、インバータ103の一の上下アームを含むが、他の電力変換装置(例えば、
図15に示すDC−DCコンバータ102)の上下アームを含む構成であってもよい。例えば、スイッチング素子ユニット1がDC−DCコンバータ102の上下アームに適用される場合、出力電極80は、
図15の中点M4に対応し、バッテリ101がインダクタンスLを介して電気的に接続される。
【0052】
また、図示の例では、スイッチング素子ユニット1は、インバータ103の3つの上下アームの任意の1つを形成するが、スイッチング素子ユニット1は、上述の如く、インバータ103の3つの上下アームの全てを含むこともできる。この場合、例えば、スイッチング素子ユニット1は、
図1乃至
図14に示した構造を奥行き方向に3つ並設した構造を有してよい。この場合、コンデンサ40については1つだけ設けられてもよい。また、この場合、正極側バスバ60及び負極側バスバ62は、各上下アームに共通であってよい。
【0053】
また、図示の例では、ゲート電極211及びゲート電極221は、それぞれ2組図示されているが、それぞれ1組だけでもよいし、より多数の組を有してもよい。また、ゲート電極211及びゲート電極221に並列して、センスエミッタ(過電流検出用)や温度センサに係る信号端子が設けられてもよい。この場合、信号端子も、ゲート電極211及びゲート電極221と同様の態様で、外部に取り出すことができる。
【0054】
また、図示の例では、スイッチング素子ユニット1は、第1絶縁基板10、第2絶縁基板12及び第3絶縁基板13を含むが、第2絶縁基板12の一部又は全部、及び/又は、第3絶縁基板13の一部又は全部は、省略されてもよい。例えば第2絶縁基板12及び第3絶縁基板13が省略される場合、出力電極80、第1ゲート外部電極91及び第2ゲート外部電極92は、第1絶縁基板10の上面又は下面の一端側(例えば図示の左側の端部)に形成することができる。これにより、出力電極80、第1ゲート外部電極91及び第2ゲート外部電極92と外部との間の電気的な接続が依然として容易となる。尚、この場合、第1ゲート外部電極91とゲート電極211との間の電気的な接続は、ワイヤボンディング等により実現できる。また、この場合、第2絶縁基板12及び第3絶縁基板13の省略により形成される空間には、樹脂がモールドされて樹脂モールド部が形成されてもよい。
【0055】
また、図示の例では、出力電極80、第1ゲート外部電極91及び第2ゲート外部電極92は、第2絶縁基板12の上面に設けられるが、出力電極80、第1ゲート外部電極91及び第2ゲート外部電極92のうちの一部又は全部は、他の場所に設けられてもよい。例えば、出力電極80、第1ゲート外部電極91及び第2ゲート外部電極92は、第3絶縁基板13の下面に設けられてもよい。また、第1ゲート外部電極91及び第2ゲート外部電極92は、第2絶縁基板12の上面に設けられ、出力電極80は、第3絶縁基板13の下面に設けられてもよい。また、出力電極80、第1ゲート外部電極91及び第2ゲート外部電極92のうちの一部又は全部は、第2絶縁基板12の上面等における奥行き方向の端部に設けられてもよい。
【0056】
また、図示の例では、第2導体部32は、ビア324に加えて、第1パターン部321と、第2パターン部322と、第3パターン部323とを含むが、これに限られない。ビア324が第1接合層51を介して第3パターン部323に適切な態様で電気的に接続される場合、第1パターン部321及び第2パターン部322は、省略されてもよい。
【0057】
また、図示の例では、第3パターン部323は、第1パターン部321と連続する態様で第1絶縁基板10の上面に形成されているが、これに限られない。例えば、第3パターン部323は、第2パターン部322に連続する態様で第1絶縁基板10の下面に形成されてもよい。この場合、第1絶縁基板10にビアを形成し、当該ビア及びビア802を介して第3パターン部323を出力電極80に電気的に接続することとしてよい。
【0058】
また、図示の例では、第2絶縁基板12及び第3絶縁基板13は、それぞれ、一体化された多層の基板(セラミック材料の層を積層して形成される基板)であるが、第2絶縁基板12及び/又は第3絶縁基板13は、複数の基板の組み合わせにより形成されてもよい。例えば、第3絶縁基板13は、負極側バスバ62を上面に有する第1基板と、第2チップ22を内部に含む第2基板とを下部接合層55を介して上下に接合することで形成されてもよい。また、第2絶縁基板12及び/又は第3絶縁基板13は、別々の基板を左右方向に接合することで形成されてもよい。例えば、第2絶縁基板12は、左右方向でコンデンサ40(例えば、コンデンサ40の左端)と第1チップ21との間に境界を有する態様で、別々の基板を左右方向に接合することで形成されてもよい。
【0059】
また、図示の例では、第2絶縁基板12における第1チップ21を収容する空洞の深さは、第1チップ21及び第1接合層51を収容できるように設定されているが、これに限られない。例えば、
図16には、変形例によるスイッチング素子ユニット1Bの断面図が示されている。
図16は、
図11のラインX−Xに沿った断面に対応するスイッチング素子ユニット1Bの断面を表す。
図16に示す変形例によるスイッチング素子ユニット1Bでは、第1接合層51は、第1絶縁基板10B側に同様の空洞(第1接合層51になる接合剤のための空洞)を形成することで、第1絶縁基板10B側に形成される。即ち、第1絶縁基板10B及び第2絶縁基板12Bの上下方向の境界が上側に移動されてもよい。或いは、第1接合層51は、第1絶縁基板10及び第2絶縁基板12の双方に形成されてもよい。このように、第1絶縁基板10B及び第2絶縁基板12Bの上下方向の境界(第1絶縁基板10及び第3絶縁基板13の上下方向の境界についても同様)は、適宜、上下に変更されてよいし、積層方向で凹凸(図示される凹凸以外の凹凸)を更に有してよい。
【0060】
なお、以上の実施例に関し、さらに以下を開示する。尚、以下で記載する効果は、必ずしも常に奏するものでない場合もある。また、従属形式の特徴に関する効果は、その特徴に係る効果であり、追加の効果である。
(1)
絶縁性を有する第1絶縁基板(10)と、
第1絶縁基板(10)の第1表面に実装され、電力変換装置の上アームを形成する第1スイッチング素子を含む第1チップ(21)と、
第1絶縁基板(10)の第1表面とは逆側の第2表面に実装され、電力変換装置の下アームを形成する第2スイッチング素子を含む第2チップ(22)と、
第1絶縁基板(10)に形成され、第2スイッチング素子のゲート電極(221)に電気的に接続される第1導体部(31)と、
第1絶縁基板(10)に形成され、電力変換装置の出力電極(80)に電気的に接続される第2導体部(32)であって、第1絶縁基板(10)を貫通し第1チップ(21)及び第2チップ(22)間を電気的に接続する第1貫通導体部(324)を含む第2導体部(32)とを含む、スイッチング素子ユニット(1、1B)。
【0061】
(1)に記載の構成によれば、第1チップ(21)及び第2チップ(22)とが第1絶縁基板(10)の両側の表面に配置されるため、第1チップ(21)及び第2チップ(22)が第1絶縁基板(10)の一方側の同一の表面上に並んで配置される場合に比べて、第1チップ(21)及び第2チップ(22)間のインダクタンスの低減が可能となる。即ち、第1チップ(21)及び第2チップ(22)間を、第1貫通導体部(324)によって実質的に第1絶縁基板(10)の厚み分の距離で電気的に接続でき、インダクタンスの低減を図ることができる。また、第1導体部(31)が第1絶縁基板(10)に形成されるので、第2スイッチング素子のゲート電極(221)からのゲート信号線を銅線を用いて形成する場合に比べて、同ゲート信号線の形成が容易となる。このように、(1)に記載の構成によれば、インダクタンスの低減を図りつつ、ゲート信号線の形成が容易となる。また、第2導体部(32)が第1絶縁基板(10)に形成されるので、電力変換装置の出力電極(80)への配線の形成が容易となる。
(2)
第1絶縁基板(10)の第1表面と、第1チップ(21)における第1絶縁基板(10)に対向する側の表面電極との間に形成され、電導性を有し、第1チップ(21)を第1絶縁基板(10)に接合する第1接合層(51)と、
第1絶縁基板(10)の第2表面と、第2チップ(22)における第1絶縁基板(10)に対向する側の表面電極との間に形成され、電導性を有し、第2チップ(22)を第1絶縁基板(10)に接合する第2接合層(52)とを更に含む、(1)に記載のスイッチング素子ユニット(1、1B)。
【0062】
(2)に記載の構成によれば、第1チップ(21)及び第2チップ(22)が第1絶縁基板(10)に対してそれぞれ第1接合層(51)及び第2接合層(52)を介して接合されるので、第1チップ(21)及び第2チップ(22)並びに第1絶縁基板(10)の全体としての積層方向の寸法公差を第1接合層(51)及び第2接合層(52)によって吸収可能となる。また、第1接合層(51)及び第2接合層(52)を用いることで、バネを用いる場合に比べて、接合面積を効率的に大きくでき、高い電気伝導性及び高い熱伝導性を効率的に実現できる。
(3)
第1貫通導体部(324)は、複数個、離散して形成される、(1)又は(2)に記載のスイッチング素子ユニット(1、1B)。
【0063】
(3)に記載の構成によれば、第1貫通導体部(324)を複数個形成することで、車両走行用モータの駆動時に扱うような比較的大きい電流を扱うことを可能としつつ、第1チップ(21)及び第2チップ(22)と第1貫通導体部(324)の材料との間の熱膨張係数の差に起因して第1接合層(51)及び第2接合層(52)に発生する熱応力を効率的に低減できる。
(4)
第1絶縁基板(10)の面直方向に対して垂直方向で第1絶縁基板(10)に隣接するコンデンサ(40)と、
コンデンサ(40)の第1電極(42)と、第1チップ(21)における第1絶縁基板(10)に対向する側とは逆側の表面電極とに電気的に接続される第1バスバ(60)と、
コンデンサ(40)の第2電極(44)と、第2チップ(22)における第1絶縁基板(10)に対向する側とは逆側の表面電極とに電気的に接続される第2バスバ(62)とを更に含む、(1)〜(3)のうちのいずれか1項に記載のスイッチング素子ユニット(1、1B)。
【0064】
(4)に記載の構成によれば、コンデンサ(40)と第1チップ(21)及び第2チップ(22)とに対して第1バスバ(60)及び第2バスバ(62)を共通化して短い距離で形成でき、コンデンサ(40)と第1チップ(21)及び第2チップ(22)との間のインダクタンスを効率的に低減できる。
(5)
第1絶縁基板(10)の第1表面側に設けられ、絶縁性を有し、第1絶縁基板(10)側とは逆側の表面に、第1導体部(31)及び第1スイッチング素子のゲート電極(211)に電気的に接続されるゲート外部電極(91.92)を有する第2絶縁基板(12)を更に含む、(1)〜(4)のうちのいずれか1項に記載のスイッチング素子ユニット(1、1B)。
【0065】
(5)に記載の構成によれば、第1チップ(21)のゲート電極及び第2チップ(22)のゲート電極からの各ゲート信号線を、第2絶縁基板(12)の表面のゲート外部電極(91.92)を介して外部へ容易に取り出すことができる。即ち、ゲート外部電極(91.92)が第2絶縁基板(12)の表面(第1絶縁基板(10)側とは逆側の表面)に設けられるので、ゲート外部電極(91.92)と外部(例えば制御基板)との電気的な接続が容易となる。
(6)
出力電極(80)は、第2絶縁基板(12)における第1絶縁基板(10)側とは逆側の表面に設けられ、
第2絶縁基板(12)を貫通し、出力電極(80)に電気的に接続される第2貫通導体部(802)を更に含み、
第2導体部(32)は、第1絶縁基板(10)の第1表面に形成され、第2貫通導体部(12)と第1貫通導体部(10)とを電気的に接続する導体パターン(323)を含む、請求項5に記載のスイッチング素子ユニット(1、1B)。
【0066】
(6)に記載の構成によれば、出力電極(80)が第2絶縁基板(12)の表面(第1絶縁基板(10)側とは逆側の表面)に設けられるので、出力電極(80)と外部(例えば走行用モータ)との電気的な接続が容易となる。また、第1チップ(21)及び第2チップ(22)から出力電極(80)までの配線を第1絶縁基板(10)及び第2絶縁基板(12)に形成できるので、同配線の形成が容易となる。
(7)
電力変換装置は、車両用走行モータ(104)を駆動するためのインバータ(103)であり、
出力電極(80)は、車両用走行モータ(104)に電気的に接続される、(1)〜(6)のうちのいずれか1項に記載のスイッチング素子ユニット(1、1B)。
【0067】
(1)〜(6)のうちのいずれか1項に記載のスイッチング素子ユニット(1、1B)によれば、上記のようにインダクタンスの低減を図ることができるので、高速のスイッチング動作に伴ってサージ電圧が比較的高くなりやすい車両用走行モータ(104)の駆動用のインバータ(103)に使用される場合でも、サージ電圧を抑えること可能である。