(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6500586
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20190408BHJP
G01N 21/954 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
G01B11/00 H
G01N21/954 Z
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-99139(P2015-99139)
(22)【出願日】2015年5月14日
(65)【公開番号】特開2016-217728(P2016-217728A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】熊田 貴夫
【審査官】
齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−063804(JP,A)
【文献】
特開2004−061383(JP,A)
【文献】
特開2007−078404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00
G01N 21/954
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転軸を中心に回転可能である可動反射部と、
前記可動反射部の回転量を制御する制御部と、
前記第1回転軸が向いている方向から見た場合に複数の光を互いに異なる入射角で前記可動反射部に入射させる光源部と、
前記可動反射部で反射された前記光が対象物を照射する位置を撮像する撮像部と、
前記位置に照射された前記光が前記複数の光のいずれであるかを判断する判断部と、
前記可動反射部の回転量、前記撮像部が生成した画像データ、及び前記判断部の判断結果に基づいて、前記位置を算出する算出部と、
を備え、
前記可動反射部で反射された前記複数の光は、第1の光と、前記第1の光に隣接する第2の光と、前記第2の光の反対側において前記第1の光と隣接する第3の光と、を含み、
前記撮像部及び前記対象物の間の距離が第1距離の場合、前記第1の光、前記第2の光及び前記第3の光のうちの前記第1の光のみが、前記撮像部の撮像範囲内において前記対象物を照射し、
前記撮像部及び前記対象物の間の前記距離が前記第1距離と異なる第2距離の場合、前記第1の光、前記第2の光及び前記第3の光のうちの前記第2の光または前記第3の光の何れかのみが、前記撮像部の撮像範囲内において前記対象物を照射する、検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置において、
前記複数の光は、波長が互いに異なり、
前記判断部は、前記波長に基づいて、前記位置を照射する前記光が前記複数の光のいずれであるかを判断する検査装置。
【請求項3】
請求項1に記載の検査装置において、
前記複数の光は、互いに異なるアナログ信号がパルス変調された信号であり、
前記判断部は、前記信号の変調に基づいて、前記位置を照射する前記光が前記複数の光のいずれであるかを判断する検査装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の検査装置において、
前記可動反射部は、前記第1回転軸と異なる方向を向いている第2回転軸を中心に回転可能であり、
前記光源部は、前記第2回転軸が向いている方向から見た場合に他の光を前記光とは異なる入射角で前記可動反射部に入射させる検査装置。
【請求項5】
第1回転軸を中心に回転可能である可動反射部と前記可動反射部の回転量を制御する制御部を設け、
前記第1回転軸が向いている方向から見た場合に複数の光を互いに異なる入射角で前記可動反射部に入射させ、
前記可動反射部で反射された前記光が対象物を照射する位置を撮像部で撮像し、
前記位置に照射された前記光が前記複数の光のいずれであるかを判断部で判断し、
前記可動反射部の回転量、前記撮像部が生成した画像データ、及び前記判断部の判断結果に基づいて、前記位置を算出し、
前記可動反射部で反射された前記複数の光は、第1の光と、前記第1の光に隣接する第2の光と、前記第2の光の反対側において前記第1の光と隣接する第3の光と、を含み、
前記撮像部及び前記対象物の間の距離が第1距離の場合、前記第1の光、前記第2の光及び前記第3の光のうちの前記第1の光のみが、前記撮像部の撮像範囲内において前記対象物を照射し、
前記撮像部及び前記対象物の間の前記距離が前記第1距離と異なる第2距離の場合、前記第1の光、前記第2の光及び前記第3の光のうちの前記第2の光または前記第3の光のいずれかのみが、前記撮像部の撮像範囲内において前記対象物を照射する、検査方法。
【請求項6】
請求項5に記載の検査方法において、
前記複数の光は、波長が互いに異なり、
前記波長に基づいて、前記位置を照射する前記光が前記複数の光のいずれであるかを判断する、検査方法。
【請求項7】
請求項5に記載の検査方法において、
前記複数の光は、互いに異なるアナログ信号がパルス変調された信号であり、
前記信号の変調に基づいて、前記位置を照射する前記光が前記複数の光のいずれであるかを判断する、検査方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一項に記載の検査方法において、
前記可動反射部は、前記第1回転軸と異なる方向を向いている第2回転軸を中心に回転可能であり、
前記第2回転軸が向いている方向から見た場合に他の光を前記光とは異なる入射角で前記可動反射部に入射させる、検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光を用いて対象物を検査することがある。例えば特許文献1では、光を用いて対象物の表面の凹凸を検査している。具体的には、特許文献1では、対象物の上方に光源を配置している。そして光源からの光を対象物に照射している。光源の周辺には、撮像部(カメラ)が配置されている。撮像部は、光源からの光が対象物を照射する位置を撮像している。この場合、三角測量を用いることで、光が対象物を照射する位置を算出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−132524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対象物を検査する場合、可動反射部を用いて対象物を光で走査することがある。そしてこの場合、光が対象物を照射する位置を撮像部で撮像することがある。この場合、撮像部から対象物までの距離が変化すると、光が対象物を照射する位置が撮像部の撮像可能な範囲の外側にずれることがある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、可動反射部で反射された光が対象物を照射する位置を撮像部で撮像する場合、撮像部から対象物までの距離が変化しても、撮像部が撮像可能な領域において光を対象物に照射することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る検査装置は、可動反射部、制御部、光源部、撮像部、判断部、及び算出部を備える。可動反射部は、第1回転軸を中心に回転可能である。制御部は、可動反射部の回転量を制御する。光源部は、第1回転軸が向いている方向から見た場合に複数の光を互いに異なる入射角で可動反射部に入射させる。撮像部は、反射部で反射された光が対象物を照射する位置を撮像する。判断部は、上記した位置に照射された光が上記した複数の光のいずれであるかを判断する。算出部は、可動反射部の回転量、撮像部が生成した画像データ、及び判断部の判断結果に基づいて、上記した位置を算出する。
【0007】
本発明に係る検査方法では、可動反射部と制御部を設ける。可動反射部は、第1回転軸を中心に回転可能である。制御部は、可動反射部の回転量を制御する。そして、第1回転軸が向いている方向から見た場合に複数の光を互いに異なる入射角で可動反射部に入射させる。そして、可動反射部で反射された光が対象物を照射する位置を撮像部で撮像する。そして、上記した位置に照射された光が上記した複数の光のいずれであるかを判断部で判断する。そして可動反射部の回転量、撮像部が生成した画像データ、及び判断部の判断結果に基づいて、上記した位置を算出する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、可動反射部で反射された光が対象物を照射する位置を撮像部で撮像する場合、撮像部から対象物までの距離が変化しても、撮像部が撮像可能な領域において光を対象物に照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る検査装置の構成を示す図である。
【
図2】
図1に示した検査装置の動作の一例を説明するための図である。
【
図3】
図1に示した可動反射部の詳細構造の一例を示す平面図である。
【
図4】第2の実施形態に係る検査装置の一部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
なお、以下に示す説明において、制御部200、判断部500、及び算出部600は、ハードウエア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。制御部200、判断部500、及び算出部600は、任意のコンピュータのCPU、メモリ、メモリにロードされた本図の構成要素を実現するプログラム、そのプログラムを格納するハードディスクなどの記憶メディア、ネットワーク接続用インタフェースを中心にハードウエアとソフトウエアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置には様々な変形例がある。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る検査装置10の構成を示す図である。検査装置10は、可動反射部100、制御部200、光源部300、撮像部400、判断部500、及び算出部600を備える。可動反射部100は、第1回転軸102を中心に回転可能である。制御部200は、可動反射部100の回転量を制御する。光源部300は、第1回転軸102が向いている方向から見た場合に複数の光を互いに異なる入射角で可動反射部100に入射させる。撮像部400は、可動反射部100で反射された光が対象物20を照射する位置を撮像する。判断部500は、上記した位置に照射された光が上記した複数の光のいずれであるかを判断する。算出部600は、可動反射部100の回転量、撮像部400が生成した画像データ、及び判断部500の判断結果に基づいて、上記した位置を算出する。以下、詳細に説明する。
【0013】
可動反射部100は、反射面106を有している。光源部300からの光は、反射面106で反射する。可動反射部100は、第1回転軸102を中心に回転可能である。可動反射部100の回転量は、制御部200によって制御されている。さらに、可動反射部100の回転量は、検出部210によって検出されている。制御部200は、検出部210の検出結果に基づいて、可動反射部100の回転量を制御している。
【0014】
光源部300は、光源制御部320によって制御されている。本図に示す例において、光源部300は、複数の光源310を有している。光源310は、例えば、レーザ光源である。複数の光源310は、互いに異なる場所に位置している。複数の光源310それぞれは、光を出射する。そしてこれらの複数の光は、可動反射部100の反射面106に対する入射角が互いに異なっている。なお、本図に示す例では、これら複数の光は、反射面106の一点に入射している。
【0015】
光源部300から出射された複数の光は、対象物20に向けて、可動反射部100の反射面106で反射される。この場合、制御部200が可動反射部100の回転量を制御することで、反射した光が向かう方向を制御することができる。これにより、対象物20を光で走査することができる。
【0016】
撮像部400は、撮像範囲Sに含まれる領域を撮像することができる。本図に示す例では、撮像部400の撮像範囲Sは、撮像部400と対象物20の間に位置している。この場合、反射面106からの光が対象物20を照射する位置が撮像範囲Sに含まれる場合、この位置が撮像部400によって撮像される。
【0017】
判断部500は、撮像範囲Sで対象物20を照射する光が光源部300からの複数の光のいずれであるかを判断する。判断部500は、複数の光源310それぞれが出射する光の特性(例えば、波長)を示す信号を光源制御部320から受信する。そして判断部500は、この信号に基づいて、上記した光が上記した複数の光のいずれであるかを判断する。
【0018】
例えば、光源部300からの複数の光は、波長が互いに異なっている。この場合、判断部500は、この波長に基づいて、撮像範囲Sで対象物20を照射する光が光源部300からの複数の光のいずれであるかを判断することができる。その他の例として、光源部300からの複数の光は、互いに異なるアナログ信号がパルス変調された信号であってもよい。具体的には、例えば、アナログ信号をPCM(Pulse Code Modulation)により変調する。この場合、判断部500は、撮像範囲Sで対象物20を照射する光の信号の変調(例えば、光が対象物20を照射している間の時間と光が対象物20を照射しない間の時間の比)に基づいて、上記した光が上記した複数の光のいずれであるかを判断することができる。
【0019】
算出部600は、三角測量を用いて、撮像範囲Sで光が対象物20を照射する位置(検出位置)を算出する。詳細には、算出部600は、可動反射部100の回転量を示す信号を検出部210から受信する。さらに、算出部600は、撮像部400が生成した画像データを撮像部400から受信する。さらに、算出部600は、撮像範囲Sで対象物20を照射する光が光源部300からの複数の光のいずれであるかを示す信号を判断部500から受信する。光源部300からの光が可動反射部100で反射する位置(反射位置)から撮像部400までの距離は、予め固定されている。さらに、撮像部400から上記した検出位置への角度は、撮像部400の画像データに基づいて決定することができる。さらに、上記した反射位置から上記した検出位置への角度は、可動反射部100の回転量及び光源部300からの光の入射角に基づいて決定することができる。この場合、判断部500の判断結果に基づいて、光源部300からの光の入射角を決定することができる。これにより、算出部600は、三角測量を用いて、上記した検出位置を算出することができる。
【0020】
図2は、
図1に示した検査装置10の動作の一例を説明するための図である。
図2に示す例では、撮像部400から対象物20までの距離が
図1に示した例よりも長いものとなっている。
図1示した例においても
図2に示した例においても、撮像部400の画角は一定のままである。これにより、
図1に示した例において撮像範囲Sで対象物20を照射した光が、
図2に示す例では、撮像範囲Sで対象物20を照射することができないようになる。この場合においても、
図2に示すように、他の光が撮像範囲Sで対象物20を照射することができる。そして判断部500は、
図2に示す例において撮像範囲Sで対象物20を照射する光が光源部300からの複数の光のいずれであるかを判断する。これにより、
図1に示した例と同様にして、算出部600は、撮像範囲Sで光が対象物20を照射する位置を算出することができる。
【0021】
図3は、
図1に示した可動反射部100の詳細構造の一例を示す平面図である。可動反射部100は、可動電極120、枠体110、保持部材130、及び2つの第1固定電極140を備えている。保持部材130は、可動電極120を枠体110に取り付けており、かつ可動電極120の回転軸(
図1に示した第1回転軸102)となる。2つの第1固定電極140は、可動電極120を介して互いに対向しており、可動電極120の回転軸と交わる方向に並んでいる。
【0022】
可動電極120の平面形状は矩形であるが、第1固定電極140と対向する辺(本図においてY方向に伸びている辺)は、櫛歯形状となっている。枠体110は、可動電極120の4辺のうち第1固定電極140と対向していない2つの辺(本図においてX方向に伸びている辺)それぞれに対向している。保持部材130は、可動電極120のうち枠体110と対向している2辺それぞれに対して設けられている。詳細には、保持部材130は、可動電極120のうち枠体110と対向している辺の中心に接続している。そして2つの保持部材130を結ぶ線が、可動電極120の回転軸となっている。本実施形態では、枠体110、可動電極120、及び保持部材130は一体的に形成されている。
【0023】
第1固定電極140のうち可動電極120と対向する辺は、櫛歯形状となっており、可動電極120の櫛歯部分とかみ合っている。このため、第1固定電極140と可動電極120は、互いに対向する部分の面積が大きくなり、その結果、可動電極120の駆動力は大きくなる。
【0024】
また、第1固定電極140は、一部が可動電極120と枠体110の間に伸びている。その伸びている部分の先端は、保持部材130に対向している。
【0025】
可動反射部100の可動電極120は、例えば上面が鏡面になっている。この鏡面は、例えば可動電極120の上面に金属膜(例えばAl膜)を形成することにより、形成されている。そして可動電極120の角度を変えることにより、可動電極120に入射してきた光の反射角を変える。可動電極120の角度は、制御部200によって制御される。
【0026】
以上、本実施形態によれば、光源部300は、互いに異なる入射角で可動反射部100に入射する複数の光を出射する。これにより、撮像部400から対象物20までの距離が変化しても、撮像部400が撮像可能な範囲(撮像範囲S)で、光を対象物20に照射することができる。
【0027】
なお、対象物20は、例えば、トンネルの内壁である。この場合、検査装置10は、車両(例えば、自動車又は列車)に搭載されている。さらにこの場合、車両は、例えば、第1回転軸102が向いている方向に移動している。これにより、可動反射部100を制御しなくても、可動反射部100からの光を車両の移動方向に沿って走査することができる。ただし、対象物20は、上記した例に限定されるものではない。対象物20は、例えば、工場のラインを流れる製品であってもよい。
【0028】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る検査装置10の一部の構成を示す図である。本実施形態に係る検査装置10は、以下の点を除いて、第1の実施形態に係る検査装置10と同様の構成である。
【0029】
可動反射部100は、第1回転軸102と異なる方向を向いている第2回転軸104を有している。これにより、可動反射部100は、第2回転軸104を中心に回転可能になっている。本図に示す例では、反射面106に垂直な方向から見た場合、第1回転軸102及び第2回転軸104は、互いに直交している。
【0030】
本図に示す例において、光源部300は、2次元的に配列された複数の光源310を有している。これにより、光源部300は、第2回転軸104が向いている方向から見た場合に互いに異なる入射角で複数の光を可動反射部100の反射面106に入射させることができる。この場合、第2回転軸104を中心に反射面106を回転させることで、反射されたこれらの光が向かう方向を制御することができる。さらに、本図に示す例では、
図1に示した例と同様にして、第1回転軸102を中心に反射面106を回転させることができる。これにより、光源部300からの光を用いて、対象物20(
図1)を2次元的に走査することができる。
【0031】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0032】
10 検査装置
20 対象物
100 可動反射部
102 第1回転軸
104 第2回転軸
106 反射面
110 枠体
120 可動電極
130 保持部材
140 第1固定電極
200 制御部
210 検出部
300 光源部
310 光源
400 撮像部
500 判断部
600 算出部