(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両に備えられた出力器から出力され路面にて反射した音波が、前記車両の下面における互いに異なる設置位置に設置された複数の検出器のそれぞれにて検出された際の強度である検出強度を取得する強度取得部と、
複数の前記検出器のそれぞれについての前記設置位置と前記検出強度との対応関係に基づいて前記車両の移動方向を推定する推定部と、
を備える移動方向推定システム。
車両に備えられた出力器から出力され路面にて反射した音波が、前記車両の下面における互いに異なる設置位置に設置された複数の検出器のそれぞれにて検出された際の強度である検出強度を取得する強度取得工程と、
複数の前記検出器のそれぞれについての前記設置位置と前記検出強度との対応関係に基づいて前記車両の移動方向を推定する推定工程と、
を含む移動方向推定方法。
車両に備えられた出力器から出力され路面にて反射した音波が、前記車両の下面における互いに異なる設置位置に設置された複数の検出器のそれぞれにて検出された際の強度である検出強度を取得する強度取得機能と、
複数の前記検出器のそれぞれについての前記設置位置と前記検出強度との対応関係に基づいて前記車両の移動方向を推定する推定機能と、
をコンピュータに実現させる移動方向推定プログラム。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】(2A)(2B)は車両の側面図、(2C)〜(2E)は車両の平面透視図、(2F)〜(2H)は設置位置ごとの検出強度のグラフである。
【
図3】(3A)は移動方向推定処理のフローチャート、(3B),(3C)は車両の平面透視図である。
【0010】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)移動方向推定システムの構成:
(2)移動方向推定処理:
(3)他の実施形態:
【0011】
(1)移動方向推定システムの構成:
図1は、本発明の一実施形態にかかる移動方向推定システムとしてのナビゲーション装置10の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置10は、車両に備えられている。ナビゲーション装置10は、CPU(Central Processing Unit),RAM(Random Access Memory),ROM(Random Access Read Only Memory)等を備える制御部20と記録媒体30とを備えており、記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを制御部20が実行する。制御部20は、移動方向推定プログラムとしてのナビゲーションプログラム21を実行する。
【0012】
ナビゲーション装置10の記録媒体30には、地図情報30aと変換テーブル30bとが記録されている。地図情報30aには、車両が走行する道路上に設定されたノードの位置等を示すノードデータ、ノード間を接続するの道路区間の形状を特定するための形状補間点の位置等を示す形状補間データ、道路区間についての各種情報(区間長、旅行時間、幅員、レーン数等)を示すリンクデータ、目的地や経由地となり得る施設の位置と属性とを示す施設データ等が含まれている。制御部20は、地図情報30aに基づいて道路区間や施設を配置した二次元の画像である地図を描画する。変換テーブル30bの詳細については後述する。
【0013】
車両は、タッチパネルディスプレイ41と1個の出力器42と3個の検出器43a〜43cとを備えている。タッチパネルディスプレイ41は、映像を画面に出力する出力装置と、画面における指等の接触位置によってユーザの入力を受け付ける入力装置とを兼ねる。タッチパネルディスプレイ41は、制御部20の制御の下で地図を表示する。
【0014】
出力器42は、車両の下面(底面)に備えられた超音波送信装置であり、設置方向によって定まる音軸方向に超音波を出力する。また、制御部20は、出力器42に制御信号を出力することにより出力器42に超音波を出力させる。
【0015】
検出器43a〜43cは、車両の下面における互いに異なる設置位置に設置された超音波マイクである。本実施形態において、検出器43a〜43cは3個備えられている。検出器43a〜43cは4個以上備えられてもよい。検出器43a〜43cは音に応じて振動する振動部を備え、当該振動部の振動の振幅(音圧)と振動数(周波数)を示す信号を制御部20に出力する。なお、本実施形態において、検出器43a〜43cは、少なくとも音圧を示す信号を制御部20に出力するように構成されていればよい。出力器42と検出器43a〜43cとは、制御部20と直接通信可能に接続されてもよいし、例えば車両のECU(electronic control unit)等の車載コンピュータを中継して制御部20と通信可能に接続されてもよい。
【0016】
図2A,2Bは、出力器42と検出器43a〜43cの配置を示す車両下部の側面図である。
図2C〜2Eは、鉛直方向上方から見た場合の出力器42と検出器43a〜43cの配置を示す車両の平面透視図である。
図2A〜2Eに示すように、検出器43a〜43cの設置位置A〜Cは、ほぼ水平な車両の下面における互いに異なる位置となっている。
図2A,2Bに示すように、出力器42は、車両の斜め後下方に向けて超音波を出力するように設置されている。
図2C〜2Eに示すように、検出器43bの設置位置Bは、水平方向において出力器42を通過する前後方向の軸T(一点鎖線)上の位置となっている。検出器43a,43cの設置位置A,Cは、軸Tに関して線対称となる位置となっている。検出器43bの設置位置Bは、検出器43a,43cを結ぶ線分と軸Tとの交点と異なる位置となっており、検出器43a〜43cの設置位置A〜Cは単一の直線上となっていない。検出器43a〜43cの設置位置A〜Cは互いに異なる位置であればよく、必ずしも同一の水平面内の位置でなくてもよい。
【0017】
ナビゲーションプログラム21は、ナビゲーションモジュール21aと強度取得モジュール21bと推定モジュール21cとを含む。
ナビゲーションモジュール21aは、車両の現在位置を示すマーカを地図上に表示させる機能を制御部20に実現させる。すなわち、ナビゲーションモジュール21aの機能により制御部20は、地図情報30aに基づいて現在位置の周辺の地図をタッチパネルディスプレイ41上に表示し、当該地図上において車両の現在位置を示すマーカを重畳して表示する。なお、制御部20は、例えばダイクストラ法等の公知の経路探索手法によって探索した移動予定経路を地図上に表示してもよい。さらに、制御部20は、現在位置や移動予定経路を案内する音声を図示しないスピーカから出力してもよい。
【0018】
強度取得モジュール21bは、車両に備えられた出力器42から出力され路面にて反射した音波が、車両の下面における互いに異なる設置位置A〜Cに設置された複数の検出器43a〜43cのそれぞれにて検出された際の強度である検出強度を取得する機能を制御部20に実現させる。具体的に、強度取得モジュール21bの機能により制御部20は、出力器42を制御して当該出力器42から超音波を路面に向けて出力させる。そして、制御部20は、超音波の出力タイミングから予め決められた到達期間だけ経過した検出タイミングにおいて、検出器43a〜43cが検出した音波の音圧を検出強度として取得する。到達期間とは、出力器42が音波を出力してから当該音波の路面における反射波が検出器43a〜43cに到達するのに要する期間であり、例えば出力器42や検出器43a〜43cの路面からの高さや車高に基づいて設定されてもよい。
【0019】
推定モジュール21cは、複数の検出器43a〜43cのそれぞれについての設置位置と検出強度との対応関係に基づいて車両の移動方向を推定する機能を制御部20に実現させる。さらに、推定モジュール21cの機能により制御部20は、複数の検出器43a〜43cのそれぞれについての設置位置A〜Cと検出強度Sとの対応関係に基づいて、車両の移動方向とともに移動距離を推定する。具体的に、推定モジュール21cの機能により制御部20は、複数の設置位置A〜Cと検出強度との対応関係と、車両の移動方向と、移動距離とを対応付けて記録した変換テーブル30bを参照することにより、車両の移動方向と移動距離とを推定する。
【0020】
図2F〜2Hは、複数の設置位置A〜Cと検出強度Sとの対応関係を示す棒グラフである。
図2F〜2Hの横軸は設置位置A〜Cを示し、縦軸は検出強度Sを示す。変換テーブル30bにおいては、複数の設置位置A〜Cと検出強度Sとの対応関係ごとに、移動方向と移動距離とが規定されている。変換テーブル30bは、例えば移動方向と移動距離ごとに実際の検出強度Sを各設置位置A〜Cについて調査することにより用意されてもよいし、音軸を中心に、外側に向けて減衰していく検出強度Sの分布である強度分布(音圧分布)をシミュレーションすることにより用意されてもよい。なお、強度分布は設置位置A〜Cや出力器42の設置方向に依存するため、変換テーブル30bは、車高や出力器42の設置方向ごとに用意されてもよい。また、超音波の反射率は路面の状態に依存するため、変換テーブル30bは、路面の状態ごとに用意されてもよい。
【0021】
以下、複数の設置位置A〜Cと検出強度Sとの対応関係と、移動方向と、移動距離と、の関係について説明する。
図2A,2Bにおいて、音軸を実線の矢印で示し、路面にて反射した音軸が車両の下面(設置位置A〜Cを含む水平面)と交差する点(中心位置W)を黒丸で示している。
図2C〜2Eにおいて、グレーで塗りつぶした領域における色の濃さによって強度分布を表している。
図2C〜2Eにおいて、色が濃いほど検出強度Sが大きいことを意味する。
図2C〜2Eにおいて、設置位置A〜Cを含む水平面における強度分布が音軸(中心位置W)を中心とする真円状となっていることとする。なお、図示の簡略化のため強度分布を真円状としたが、実際の強度分布は、路面にて反射した超音波の入射角等に応じて非真円状となり得る。
【0022】
図2A,2Cは、超音波の出力から検出までの期間において車両が移動しなかった状態を示す。車両が移動しなかった状態における中心位置Wを基準位置W
0(×で図示)と表記する。
図2Fは、車両が移動しなかった状態における設置位置A〜Cと検出強度Sとの対応関係を示す。車両が移動しなかった場合、基準位置W
0を中心とする強度分布が形成され、設置位置A〜Cにおいて当該強度分布に対応する検出強度Sの超音波が検出される。ここで、設置位置A〜Cにおける検出強度Sが得られれば、設置位置A〜Cから中心位置Wまでの距離を検出強度Sから導出することができ、当該距離を満足する中心位置Wの位置を幾何学的に一意に推定できる。
【0023】
図2B,2Dは、超音波の出力から検出までの期間において車両が前方に距離L
1だけ移動した状態を示す。この状態において、中心位置Wは基準位置W
0から後方に距離L
1だけずれた位置に存在することとなる。この場合、基準位置W
0から後方に距離L
1だけずれた中心位置Wを中心とする強度分布が形成され、設置位置A〜Cにおいて当該強度分布に対応する検出強度Sの超音波が検出される。この場合も、設置位置A〜Cにおける検出強度Sが得られれば、設置位置A〜Cから中心位置Wまでの距離を検出強度Sから導出することができ、当該距離を満足する中心位置Wの位置を幾何学的に一意に推定できる。そして、基準位置W
0から中心位置Wまでのベクトル(太線矢印)の反対方向を車両の移動方向として推定でき、さらに当該ベクトルの長さ(距離L
1)を移動距離として推定できる。
【0024】
図2Eは、超音波の出力から検出までの期間において車両が左前方に距離L
2だけ移動した状態を示す。この状態において、中心位置Wは基準位置W
0から右後方に距離L
2だけずれた位置に存在することとなる。この場合、基準位置W
0から右後方に距離L
2だけずれた中心位置Wを中心とする強度分布が形成され、設置位置A〜Cにおいて当該強度分布に対応する検出強度Sの超音波が検出される。この場合も、設置位置A〜Cにおける検出強度Sが得られれば、設置位置A〜Cから中心位置Wまでの距離を検出強度Sから導出することができ、当該距離を満足する中心位置Wの位置を幾何学的に一意に推定できる。そして、基準位置W
0から中心位置Wまでのベクトル(太線矢印)の反対方向を移動方向として推定でき、さらに当該ベクトルの長さを移動距離として推定できる。
【0025】
以上説明したように、3個の設置位置A〜Cにおける検出強度Sと、移動方向と移動距離とは一意の関係にあり、当該関係を規定した変換テーブル30bを用意しておくことにより、3個の設置位置A〜Cにおける検出強度Sに基づいて移動方向と移動距離とを推定できる。変換テーブル30bを用意しておけば、中心位置Wを推定することなく、3個の設置位置A〜Cにおける検出強度Sに基づいて移動方向と移動距離とを推定できる。
【0026】
推定モジュール21cの機能により制御部20は、推定した移動距離の長さだけ、推定した移動方向に延びる移動ベクトルを累積することにより車両の位置を推定する。すなわち、制御部20は、
図2D,2Eに示すベクトル(太線矢印)と反対方向のベクトルである移動ベクトルを累積していき、最新の移動ベクトルの先端位置を車両の現在位置として推定する。ここで、移動ベクトルを累積するとは、直前の移動ベクトルの終点から次の移動ベクトルを開始することを繰り返すことである。
【0027】
なお、制御部20は、移動ベクトルが、連続した期間における移動方向と移動距離とを示すように、出力器42における超音波の出力タイミングを制御している。具体的に、制御部20は、超音波の出力タイミングを、検出器43a〜43cが直前に出力した超音波の検出強度Sを検出する検出タイミングと同時とする。上述したように出力タイミングから検出タイミングまでの期間は到達期間であるため、出力タイミングおよび検出タイミングはともに到達期間の周期となる。なお、到達期間とは、出力器42が音波を出力してから当該音波の路面における反射波が検出器43a〜43cに到達するのに要する期間である。制御部20は、必ずしも3個の設置位置A〜Cにおける検出強度Sのみに基づいて現在位置を推定しなくてもよく、例えばGPS信号や自立航行軌跡やマップマッチング等によって現在位置を補正してもよいし、GPS信号に基づいて現在位置の初期位置(移動ベクトルを累積する初期位置)を取得してもよい。
【0028】
以上説明した本実施形態の構成において、制御部20は、複数の検出器43a〜43cのそれぞれについての設置位置A〜Cと検出強度Sとの対応関係に基づいて車両の移動方向を推定する。これにより、車両の下面における複数の設置位置A〜Cでの検出強度S(音圧)の組み合わせを満足する強度分布の中心位置W(音軸の位置)を推定でき、当該強度分布の中心位置Wに基づいて車両の移動方向を推定できる。
【0029】
また、検出器43a〜43cを3個以上備えることにより、3個以上の設置位置A〜Cでの検出強度Sの組み合わせを満足する強度分布の中心位置Wを一意に推定できる。すなわち、検出強度Sは強度分布の中心位置Wまでの距離に対応するため、車両の下面における3個の設置位置A〜Cからの距離が、検出強度Sに対応することとなる強度分布の中心位置Wを、幾何学的に一意に推定できる。従って、複数の検出器43a〜43cのそれぞれについての設置位置A〜Cと検出強度Sとの対応関係以外の情報を考慮しなくても、車両の移動方向を推定できる。
【0030】
推定モジュール21cの機能により制御部20は、複数の検出器43a〜43cのそれぞれについての設置位置A〜Cと検出強度Sとの対応関係に基づいて、車両の移動方向とともに移動距離を推定する。これにより、複数の検出器43a〜43cのそれぞれについての設置位置A〜Cと検出強度Sとの対応関係に基づいて、移動方向だけでなく移動距離も推定できる。
【0031】
さらに、推定モジュール21cの機能により制御部20は、推定した移動距離の長さだけ、推定した移動方向に延びる移動ベクトルを累積することにより車両の位置を推定する。これにより、複数の検出器43a〜43cのそれぞれについての設置位置A〜Cと検出強度Sとの対応関係に基づいて、車両の現在位置も推定できる。
【0032】
(2)移動方向推定処理:
次に、ナビゲーションプログラム21によって実行される移動方向推定処理を説明する。
図3Aは、移動方向推定処理のフローチャートである。まず、強度取得モジュール21bの機能により制御部20は、出力器42に超音波を出力させる(ステップS100)。すなわち、制御部20は、到達期間ごとに到来する超音波の出力タイミングにおいて出力器42に超音波を出力させる。次に、強度取得モジュール21bの機能により制御部20は、検出器43a〜43cに超音波を検出させる(ステップS110)。すなわち、制御部20は、前回の出力タイミングから到達期間だけ経過した検出タイミングにおいて出力器42に超音波を検出させる。
【0033】
次に、強度取得モジュール21bの機能により制御部20は、強度パターンを取得する(ステップS120)。ここで、強度パターンとは、複数の検出器43a〜43cのそれぞれについての設置位置A〜Cと検出強度Sとの対応関係を意味する。
【0034】
次に、推定モジュール21cの機能により制御部20は、強度パターンが停止パターンと一致するか否かを判定する(ステップS130)。ここで、停止パターンとは、出力タイミングから検出タイミングまでの期間において車両が移動しなかった場合(
図2A,2C)における複数の設置位置A〜Cでの検出強度Sの組み合わせ(
図2F)を意味する。変換テーブル30bにおいては、多数の強度パターンのそれぞれについて移動方向と移動距離が記録されており、当該変換テーブル30bに記録された強度パターンに停止パターンも含まれている。制御部20は、ステップS120にて取得した強度パターンと停止パターンとの類似度が閾値以上であれば、強度パターンが停止パターンと一致すると判定してもよい。類似度は、設置位置A〜Cのそれぞれにおける検出強度Sの差の絶対値の平均値や二乗平均平方根が小さいほど大きくなるように定義された指標値であってもよい。
【0035】
強度パターンが停止パターンと一致すると判定した場合(ステップS130:Y)、推定モジュール21cの機能により制御部20は、車両が移動しなかったと判定する(ステップS140)。そして、制御部20は、ステップS100に戻る。
【0036】
一方、強度パターンが停止パターンと一致すると判定しなかった場合(ステップS130:N)、推定モジュール21cの機能により制御部20は、強度パターンに対応する移動方向と移動距離を推定する(ステップS150)。具体的に、制御部20は、ステップS120にて取得した強度パターンとの類似度が最も大きい強度パターンを変換テーブル30bにて検索し、当該検索した強度パターンに対応付けられている方向と距離とを、車両の移動方向と移動距離として推定する。なお、制御部20は、単純ベイズ分類器を用いて、ステップS120にて取得した強度パターンとの類似度が最も大きい強度パターンを検索してもよい。制御部20は、各種多変量解析の手法を用いて、複数の設置位置A〜Cの検出強度に基づいて移動方向と移動距離とを推定することができる。
【0037】
次に、推定モジュール21cの機能により制御部20は、移動ベクトルを累積して車両の現在位置を更新する(ステップS160)。具体的に、制御部20は、
図2D,2Eに示すベクトル(太線矢印)と反対方向のベクトルである移動ベクトルを、直前に累積した移動ベクトルの終点から開始するように累積し、当該累積した移動ベクトルの先端位置を車両の現在位置として推定する。そして、制御部20は、ステップS100に戻る。
【0038】
なお、ステップS100における超音波の出力から到達期間だけ経過したタイミングで、ステップS110における超音波の検出が行われる。これに対して、ステップS130〜S160の処理期間は極めて短いため、ステップS110における超音波の検出と次のステップS100における超音波の出力とは同時であると見なすことができる。従って、連続的な期間における車両の移動方向と移動距離とを示す移動ベクトルを順次得ることができ、車両の現在位置を順次更新していくことができる。
【0039】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、本発明の効果を損なわない範囲で実施形態の変更が可能である。例えば、
図3B,3Cに示すように、検出器43b,43cは2個のみ備えられてもよい。そして、推定モジュール21cの機能により制御部20は、出力器42から出力され路面にて反射した音波が、複数の検出器43b,43cの少なくとも1個にて検出された際の周波数、および、複数の検出器43b,43cのそれぞれについての設置位置B,Cと検出強度Sとの対応関係に基づいて車両の移動方向を推定してもよい。ここで、検出器43b,43cにて検出された音波の周波数(ドップラーシフトの周波数)に基づいて、当該検出器43b,43cに対する出力器42の速度を推定できる。従って、2個の設置位置B,Cからの距離が検出強度Sに対応する距離となる強度分布の中心位置を、幾何学的に一意に推定できなくても、いずれかの検出器にて検出された音波の周波数も組み合わせることにより、強度分布の中心位置を一意に推定でき、車両の移動方向を推定できる。検出器43b,43cの個数を2個に抑えることができる。
【0040】
例えば、
図3B,3Cに示すように、設置位置B,Cと検出強度Sとの対応関係に基づいて、設置位置Bからの距離が距離bとなり、かつ、設置位置Cから距離が距離cとなる条件を満足する位置に中心位置Wが存在すると推定できる。しかし、
図3B,3Cに示すように、以上の条件を幾何学的に満足する中心位置Wは2個存在し、そのうちのいずれが真であるか判断ができない。そこで、制御部20は、検出器43bにて検出された超音波のドップラーシフト周波数に基づいて検出器43bと出力器42の相対速度を取得し、当該相対速度に基づいて中心位置Wを一意に絞り込むことができる。相対速度に出力タイミングから検出タイミングまでの到達期間を乗算することにより移動距離を得ることができ、制御部20は、当該移動距離が適切となる方の中心位置Wを絞り込むことができる。
【0041】
前記実施形態においては、車両の現在位置を推定したが、制御部20は、設置位置A〜Cと検出強度Sとの対応関係に基づいて、車両の移動方向のみを推定してもよいし、車両の移動方向と移動距離を推定してもよい。車両の現在位置を推定しない場合、必ずしも連続的に音波の出力と検出とを行わなくてもよい。また、車両の現在位置を推定する場合、常時一定の音波を出力しておき、到達期間の長さと一致する周期ごとの検出タイミングで音波を検出するようにしてもよい。この場合も、連続的な移動ベクトルを得ることができる。また、推定した移動方向を現在位置の推定以外の種々の用途に利用できる。例えば、最大操舵角における移動方向よりも、推定した移動方向が大きく左右方向に傾いている場合に、制御部20は、車両が横滑りしていると判定してもよい。
【0042】
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。音波とは、道路上にて生じる雑音と区別して強度が計測可能な音波であればよく、可聴音の音波であってもよいし超音波であってもよい。また、出力器はスピーカや超音波発生器であってもよい。出力器は路面に向けて音波を出力すればよく、路面に対して垂直に音波を出力してもよいし、斜めに音波を出力してもよい。検出器は、車両の下面において互いに異なる位置に設置されればよく、2個以上であれば個数は限定されない。
【0043】
検出器は、少なくとも検出強度を検出可能なセンサであればよく、マイクであってもよい。なお、音波が検出された際の強度とは音圧が大きければ大きくなる値であればよい。強度取得部は、検出強度を検出器から直接取得してもよいし、車両のECU等を介して検出器から検出強度を取得してもよい。移動方向推定システムは、出力器が音波を出力したタイミングと検出強度とを取得可能に構成されていればよく、例えば移動方向推定システムと通信可能な車両に出器と検出器とが備えられてもよい。
【0044】
推定部は、設置位置と検出強度との対応関係を複数取得し、当該取得した複数の対応関係に基づいて車両の移動方向を推定すればよく、当該取得した複数の対応関係から車両の移動方向を導出可能な関数やテーブルが予め容易されていればよい。この関数やテーブルは、例えば設置位置と検出強度の複数の対応関係と、実際の移動方向(他の手段によって計測した移動方向)との関係を予め実験によって調査することにより用意されてもよい。なお、設置位置と検出強度の複数の対応関係のみに基づいて移動方向を一意に推定できない場合、推定部は、他の情報も考慮して移動方向を推定してもよい。他の情報とは、検出器が検出した音波についての他の情報であってもよいし、検出器以外の他のセンサが検出した情報であってもよい。
【0045】
ここで、検出器は3個以上備えられてもよい。3個の設置位置での検出強度の組み合わせを満足する強度分布の中心位置を一意に推定できる。すなわち、検出強度は強度分布の中心位置までの距離に対応するため、車両の下面における3個の設置位置からの距離が、検出強度に対応する距離となる強度分布の中心位置を、幾何学的に一意に推定できる。従って、複数の検出器のそれぞれについての設置位置と検出強度との対応関係以外の情報を考慮しなくても、車両の移動方向を推定できる。なお、検出器が多く備えられるほど、設置位置と検出強度の対応関係を多く得ることができ、精度よく車両の移動方向を推定できる。従って、検出器は4個以上備えられてもよい。3個以上の検出器を一直線状に並ばないように設置することにより、検出器が存在する2次元の平面内において移動方向を推定できる。
【0046】
また、検出器は2個備えられ、推定部は、出力器から出力され路面にて反射した音波が、複数の検出器の少なくとも1個にて検出された際の周波数、および、対応関係に基づいて車両の移動方向を推定してもよい。ここで、検出器にて検出された音波の周波数(ドップラーシフトの周波数)に基づいて、当該検出器に対する出力器の位相速度を推定できる。従って、2個の設置位置からの距離が、検出強度に対応する距離となる強度分布の中心位置を幾何学的に一意に推定できなくても、いずれかの検出器にて検出された音波の周波数も組み合わせることにより、強度分布の中心位置を一意に推定でき、車両の移動方向を推定できる。これにより、検出器の個数を2個に抑えても、移動方向を推定できる。
【0047】
さらに、推定部は、車両の移動方向とともに移動距離を推定してもよい。すなわち、実際の検出強度から推定した強度分布の中心位置と、車両が移動しなかった場合の強度分布の中心位置との間の距離が、出力器から音波が出力されてから検出器にて音波が検出されるまでの期間における移動距離であると推定してもよい。これにより、複数の検出器のそれぞれについての設置位置と検出強度との対応関係に基づいて、移動方向だけでなく移動距離も推定できる。
【0048】
さらに、推定部は、推定した移動距離の長さだけ、推定した移動方向に延びる移動ベクトルを累積することにより車両の位置を推定してもよい。すなわち、連続的な微小期間における移動ベクトルを累積することにより、車両の位置を取得してもよい。これにより、複数の検出器のそれぞれについての設置位置と検出強度との対応関係に基づいて車両の位置も推定できる。
【0049】
さらに、複数の検出器における音波の検出強度に基づいて車両の移動方向を推定する手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のような移動方向推定システム、プログラム、方法は、単独の移動方向推定システムとして実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような移動方向推定システムを備えたナビゲーションシステムや方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、移動方向推定システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。