(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
自動車等のエンジンから排出される排気ガスを大気開放前に浄化することを目的として、排気ガス浄化装置が排気経路の途中に設けられる。排気ガス浄化装置として、例えば、特許文献1に示すように、NOx吸蔵還元型触媒を備えたものがある。
【0003】
NOx吸蔵還元型触媒(吸蔵材)は、アルミナ(Al
2O
3)等で形成された触媒担持層の一部に、排気ガスと接触する担持貴金属を有する触媒活性金属部と、NOx吸蔵物質としてバリウム(Ba)等のアルカリ金属を有するNOx吸蔵材部とを備えている。
【0004】
触媒活性金属部では、貴金属上で一酸化窒素(NO)が、排気中の酸素と結合して酸化し、二酸化窒素(NO
2)が生成される。特に、通常運転時等のように排気がリーン雰囲気の場合は、排気中の酸素が多いので、このような反応が促進される。そして、その生成された二酸化窒素は、NOx吸蔵物質であるバリウム等と化学反応して硝酸バリウム(Ba(NO
3)
2)等の硝酸塩となり、そのNOx吸蔵部内に吸蔵される。
【0005】
排気中に、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)や水素(H
2)といった還元剤を供給してリッチ雰囲気とすることにより、NOx吸蔵材部では、硝酸バリウムが分解し、窒素酸化物が放出される。このとき、窒素酸化物は、触媒活性金属部にて還元されて窒素(N
2)、水(H
2O)や二酸化炭素(CO
2)といった無害な形で大気中に放出される。このNOx吸蔵材部からの窒素酸化物の放出をNOxパージと称する。
【0006】
また、排気ガス浄化装置として、上記のような窒素酸化物を吸蔵する機能を有するNOx吸蔵還元型触媒とともに、窒素酸化物を吸着する機能を有するNOx吸着触媒を備えたものもある。
【0007】
NOx吸着触媒(吸着材)は、酸化セリウム(CeO
2)等で形成された触媒担持層の一部に、排気ガスと接触する担持貴金属を有する触媒活性金属部を備えている。
【0008】
触媒活性金属部では、貴金属上で一酸化窒素(NO)が、排気中の酸素と結合して酸化し、二酸化窒素(NO
2)が生成される。特に、通常運転時等のように排気がリーン雰囲気の場合は、排気中の酸素が多いので、このような反応が促進される。そして、その生成された二酸化窒素は酸化セリウムに吸着される(化学反応ではなく化学吸着した状態)が、温度の上昇により酸化セリウムから脱離する。
【0009】
NOx吸蔵還元型触媒は、触媒温度が低い温度では活性が極端に低下し、所定の吸蔵性能を発揮することができない。このため、エンジンの始動後、排気ガスの温度を早期に高める制御を行い、触媒の活性化を促進している。
【0010】
また、NOx吸着触媒は、比較的低い温度でも窒素酸化物の吸着性能を発揮できるので、NOx吸蔵還元型触媒が活性化していないような排気ガスの温度が低い状態においても、窒素酸化物の大気放出を抑制する効果を発揮できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このようなNOx吸蔵還元型触媒(吸蔵材)とNOx吸着触媒(吸着材)とを併せて備えたNOxトラップ触媒において、NOx吸蔵還元型触媒における窒素酸化物の放出し難さは、NOx吸着触媒における窒素酸化物の放出し難さよりも相対的に大きくなっている。すなわち、NOx吸蔵還元型触媒よりもNOx吸着触媒の方が、吸蔵又は吸着している窒素酸化物を容易に放出できる。このため、相対的に窒素酸化物が放出されやすいNOx吸着触媒から脱離した窒素酸化物は、その多くが近接するNOx吸蔵還元型触媒に吸蔵されると考えられる。
【0013】
このNOxトラップ触媒では、例えば、NOx吸蔵還元型触媒に吸蔵される窒素酸化物が多く、それ以上の吸蔵能力が無いか少ない場合においても、あるいは、NOx吸蔵還元型触媒が活性化していない温度条件下においても、NOx吸着触媒が窒素酸化物を吸着することにより、窒素酸化物の大気への放出を抑制することができる。また、NOx吸着触媒に吸着される窒素酸化物が多い場合は、昇温制御によりその吸着した窒素酸化物を脱離させ、脱離した窒素酸化物を近接するNOx吸蔵還元型触媒に吸蔵させることにより、その吸着能力を復元することができる。
【0014】
しかし、吸着した窒素酸化物が多く、且つ、吸蔵した窒素酸化物も多い場合は、吸着した窒素酸化物の脱離、及び、脱離した窒素酸化物のNOx吸蔵還元型触媒への吸蔵の作用が充分に発揮できない。このため、仮に、その状態でNOxパージを実行しても、浄化しきれない窒素酸化物がスリップして大気放出される危険性がある。
【0015】
そこで、この発明の課題は、NOx吸蔵還元型触媒とNOx吸着触媒とを併せて備えたNOxトラップ触媒において、浄化しきれない窒素酸化物の大気放出を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、この発明は、エンジンの燃焼室に接続される吸気通路及び排気通路と、前記排気通路に設けられ吸蔵材と吸着材とを備えたNOxトラップ触媒と、前記NOxトラップ触媒の活性化に必要な温度まで排気ガスを昇温させるように制御する排気ガス温度制御手段と、前記NOxトラップ触媒内の排気ガスに還元剤を供給する還元剤供給制御手段と、前記吸蔵材に吸蔵された窒素酸化物の吸蔵量を推定する吸蔵量推定手段と、前記吸着材に吸着された窒素酸化物の吸着量を推定する吸着量推定手段と、を備え、前記吸蔵量が所定吸蔵量未満であり且つ前記吸着量が所定吸着量以上の場合に、前記排気ガス温度制御手段は、昇温制御を行うことにより前記吸着材に吸着した窒素酸化物を脱離させてその脱離した窒素酸化物を前記吸蔵材に吸蔵させるエンジンの排気浄化装置とした。
【0017】
この構成において、前記還元剤供給制御手段は、還元剤を供給することにより前記吸蔵材に吸蔵された窒素酸化物を放出させる構成を採用することができる。
【0018】
また、前記吸蔵量が前記所定吸蔵量よりも大きい値に設定された第二の所定吸蔵量以上である場合に、前記還元剤供給制御手段は、還元剤を供給することにより前記吸蔵材に吸蔵された窒素酸化物を放出させる構成を採用することができる。
【0019】
前記排気通路に排気微粒子、炭化水素、又は一酸化炭素の大気放出を抑制する触媒装置を備え、前記NOxトラップ触媒が前記触媒装置の上流側にある場合に、前記昇温制御は、前記吸気通路に設けられるスロットルバルブを絞ることにより、窒素酸化物の脱離とその脱離した窒素酸化物の吸蔵が可能な第一の所定温度まで昇温し、燃料を増量させることにより、吸蔵された窒素酸化物の放出が可能な第二の所定温度まで昇温させる構成を採用することができる。
【0020】
また、前記排気通路に排気微粒子、炭化水素、又は一酸化炭素の大気放出を抑制する触媒装置を備え、前記NOxトラップ触媒が前記触媒装置の下流側にある場合に、前記昇温制御は、前記触媒装置の温度が触媒活性化温度未満であれば、前記吸気通路に設けられるスロットルバルブを絞ることにより、窒素酸化物の脱離とその脱離した窒素酸化物の吸蔵が可能な第一の所定温度まで昇温し、前記触媒装置の温度が触媒活性化温度以上であれば、燃料を増量させることにより、吸蔵された窒素酸化物の放出が可能な第二の所定温度まで昇温させる構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明は、排気ガスの温度が所定温度未満であって、NOxトラップ触媒が備えるNOx吸蔵還元型触媒(吸蔵材)の窒素酸化物の吸蔵量が所定吸蔵量未満であり、且つ、NOx吸着触媒(吸着材)の窒素酸化物の吸着量が所定吸着量以上の場合に、排気ガスの昇温制御を行うようにした。この昇温制御により、NOx吸着触媒に吸着した窒素酸化物は脱離して、その脱離した窒素酸化物はNOx吸蔵還元型触媒に吸蔵されるので、NOx吸着触媒の吸着性能を早期に高めることができる。これにより、浄化しきれない窒素酸化物の大気放出を防止することができる。
【0022】
また、排気ガスの温度が所定温度未満であって、NOx吸蔵還元型触媒の窒素酸化物の吸蔵量が所定吸蔵量以上であり、且つ、吸着量が所定吸着量以上の場合には、排気ガスの昇温制御を行うとともに、還元剤を供給するようにした。この昇温制御と還元剤の供給により、NOx吸着触媒に吸着した窒素酸化物は脱離して、その脱離した窒素酸化物はNOx吸蔵還元型触媒に吸蔵させれ、NOx吸蔵還元型触媒に吸蔵された窒素酸化物は無害な物質となって大気へ放出される。これにより、浄化しきれない窒素酸化物の大気放出を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この実施形態のエンジンの排気浄化装置の構成を概念的に示す模式図である。また、
図2は、
図1の変形例である。
【0025】
図1の例と
図2の例とは、排気ガスの浄化を行う触媒等の種別及び配置が異なる。以下、まず、
図1、
図2の順に、この発明のエンジンの排気浄化装置の構成、及び、その制御方法を説明する。
【0026】
まず、
図1に示すように、エンジン1の燃焼室には、吸気通路11及び排気通路5が接続されている。燃焼室には、吸気通路11を通じて空気供給される。また、燃焼室には、燃料噴射装置によって燃料が噴射されるようになっている。燃焼室からの排気ガスは、排気通路5を通って大気へ放出される。
【0027】
吸気通路11には、上流側から下流側に向かって、エアクリーナ、通路断面積を変化させて吸気の流量を制御するスロットルバルブ12、吸入空気量を検出するエアフローセンサ13等が順に設けられている。
【0028】
排気通路5には、上流側から下流側に向かって、ディーゼル酸化触媒4、ディーゼル微粒子フィルタ3、NOx吸蔵還元型触媒(吸蔵材)とNOx吸着触媒(吸着材)とを備えたNOxトラップ触媒2、消音装置としてのマフラ等が順に備えられている。
【0029】
ディーゼル酸化触媒4は、排気ガス中に含まれる一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)を酸化して、それらが大気へ放出されることを抑制する。
【0030】
ディーゼル微粒子フィルタ3は、排気ガス中に含まれるディーゼル微粒子(PM)を捕捉して、ディーゼル微粒子が大気へ放出されることを抑制する。
【0031】
NOxトラップ触媒2は、NOx吸蔵還元型触媒(吸蔵材)として、アルミナ(Al
2O
3)等で形成された触媒担持層の一部に、排気ガスと接触する担持貴金属を有する触媒活性金属部と、NOx吸蔵物質としてバリウム(Ba)等のアルカリ金属を有するNOx吸蔵材部とを備えている。
【0032】
触媒活性金属部では、貴金属上で一酸化窒素(NO)が、排気中の酸素と結合して酸化し、二酸化窒素(NO
2)が生成される。特に、通常運転時等のように排気がリーン雰囲気の場合は、排気中の酸素が多いので、このような反応が促進される。そして、その生成された二酸化窒素は、NOx吸蔵物質であるバリウム等と化学反応して硝酸バリウム(Ba(NO
3)
2)等の硝酸塩となり、そのNOx吸蔵部内に吸蔵される。このように、NOx吸蔵還元型触媒は、排気ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)を吸蔵して、窒素酸化物が大気へ放出されることを抑制する。
【0033】
また、NOxトラップ触媒2は、NOx吸着触媒(吸着材)として、酸化セリウム(CeO
2)等で形成された触媒担持層の一部に、排気ガスと接触する担持貴金属を有する触媒活性金属部を備えている。
【0034】
触媒活性金属部では、貴金属上で一酸化窒素(NO)が、排気中の酸素と結合して酸化し、二酸化窒素(NO
2)が生成される。特に、通常運転時等のように排気がリーン雰囲気の場合は、排気中の酸素が多いので、このような反応が促進される。そして、その生成された二酸化窒素は酸化セリウムに吸着した状態であるが、温度の上昇により酸化セリウムから脱離する。このように、NOx吸着触媒は、排気ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)を吸着して、窒素酸化物が大気へ放出されることを抑制する。また、適宜、その吸着した窒素酸化物を脱離して、その脱離した窒素酸化物を、より安定的に保持できる(吸蔵できる)NOx吸蔵還元型触媒へと移行させる。
【0035】
排気通路5内には、排気ガスの温度を検出する排気ガス温度検出手段が設けられている。この実施形態では、排気ガス温度検出手段として、ディーゼル酸化触媒4内、ディーゼル微粒子フィルタ3内、NOxトラップ触媒2内に、それぞれ排気温度センサ4a,3a,2aが設けられている。排気ガス温度検出手段は、浄化装置以外の場所、例えば、ディーゼル酸化触媒4とエンジン1との間や、ディーゼル微粒子フィルタ3とNOxトラップ触媒2の間の排気通路5等に設けてもよい。
【0036】
排気ガス温度検出手段によって得られた排気ガスの温度は、その排気ガス温度検出手段が設けられた箇所の温度、すなわち、ディーゼル酸化触媒4、ディーゼル微粒子フィルタ3やNOxトラップ触媒2等の各浄化装置の温度と同等であり、この温度の情報は、ケーブルを通じて、エンジン1を制御する電子制御ユニット(Electronic Control Unit)20に備えられた制御手段へ伝達される。また、排気ガス温度検出手段を排気通路5の1箇所だけ設けて、その1箇所で検知された排気ガスの温度を、各浄化装置の温度と同等と位置付けてもよい。
【0037】
また、NOxトラップ触媒2の下流側端部には、空燃比センサ14が設けられている。空燃比センサ14によって得られた空燃比の情報は、同じく電子制御ユニット20の制御手段へ伝達される。
【0038】
なお、吸気バルブや排気バルブ、燃料噴射装置、その他エンジンの動作に必要な機器は、それぞれケーブルを通じて、電子制御ユニット20に備えられた制御手段によって制御される。
【0039】
最も上流側の浄化装置であるディーゼル酸化触媒4の上流側の排気通路5と、スロットルバルブ12の下流側の吸気通路11とは、排気還流通路6で結ばれている。排気還流通路6は、排気還流バルブ6aによって開閉され、排気ガスの一部が還流ガスとして吸気通路11内へ還流される。排気還流バルブ6aの開閉も、運転状況に応じて、電子制御ユニット20の制御手段によって制御される。
【0040】
電子制御ユニット20は、車両に搭載したエンジン1の運転状態を判断する運転状態判別手段21を備える。
【0041】
運転状態判別手段21は、エンジン1から冷却水の温度の情報や、エンジンの回転数、エンジン負荷の情報等を取得し、その情報をエンジン1の制御に活用している。運転状態判別手段21は、前述の排気温度の情報の他、エンジン1が冷間時であるか、暖機後の状態であるか等の情報も取得することができ、その情報を、各種の制御に利用している。
【0042】
ディーゼル酸化触媒4やディーゼル微粒子フィルタ3、NOxトラップ触媒2等の浄化装置には、排気ガスの浄化に有効な温度条件がある。触媒やフィルタの温度が、その触媒やフィルタ特有の活性温度以上であれば、通常の運転状況ではない異常な高温ではない限り、有害物質の浄化が良好に行われる。
【0043】
ディーゼル酸化触媒4とディーゼル微粒子フィルタ3が、ともに良好に浄化作用を発揮できる最低温度を、触媒活性化温度と称する。触媒活性化温度以上であれば、ディーゼル酸化触媒4とディーゼル微粒子フィルタ3は良好に浄化作用を発揮できる。浄化装置として、ディーゼル酸化触媒4とディーゼル微粒子フィルタ3のいずれか一方のみを備える場合は、その一方が良好な浄化作用を発揮できる最低温度を、触媒活性化温度と称する。浄化装置として、ディーゼル酸化触媒4とディーゼル微粒子フィルタ3の両方を備える場合は、相対的に低い方の最低温度を、触媒活性化温度と称することができる。
【0044】
また、NOxトラップ触媒2のNOx吸着触媒が良好に窒素酸化物を脱離でき、且つ、NOxトラップ触媒2のNOx吸蔵還元型触媒が良好に窒素酸化物の吸蔵作用を発揮できる温度を、第一の所定温度と称する。第一の所定温度以上であれば、NOx吸着触媒は良好に窒素酸化物を脱離でき、且つ、NOx吸蔵還元型触媒は良好に窒素酸化物の吸蔵作用を発揮できる。なお、NOx吸着触媒による窒素酸化物の吸着は、比較的低温状態でも可能である。
【0045】
さらに、NOxトラップ触媒2のNOx吸蔵還元型触媒に吸蔵された窒素酸化物を放出させる、すなわち、パージさせることが可能な最低温度を、第二の所定温度と称する。第二の所定温度以上であれば、他の環境条件が整えば、吸蔵された窒素酸化物を速やかに放出させることができる。なお、第二の所定温度>第一の所定温度の関係となっている。
【0046】
電子制御ユニット20は、運転状態判別手段21が必要であると判断した場合に、各浄化装置の活性化に必要な温度まで、排気ガスを昇温させる制御を行う排気ガス温度制御手段22を備える。排気ガス温度制御手段22は、燃焼室内への燃料の増減、空気の供給量の増減、燃料の噴射時期の制御等により、排気ガスの温度を調整することができる。
【0047】
すなわち、排気ガス温度制御手段22は、冷間時等においてエンジン1を始動した際、必要な場合には、排気ガスの温度を早期に高めるために、燃焼室に供給される燃料及び空気を増量して高い排気温度を確保したり、あるいは、燃料噴射時期の遅角を行って排気温度を上昇させる制御を行う。この排気ガス温度制御手段22による排気ガス温度上昇の制御を、以下、昇温制御と称する。排気ガス温度制御手段22による制御は、運転状態判別手段21からの情報に基づいている。
【0048】
また、電子制御ユニット20は、NOxトラップ触媒2内の排気ガスに還元剤を供給する還元剤供給制御手段23を備える。還元剤供給制御手段23は、NOxトラップ触媒2内の排気ガスに一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)や水素(H
2)といった還元剤を供給して、排気ガスをリッチ雰囲気とすることにより、NOx吸蔵材部では、硝酸バリウムが分解し、窒素酸化物が放出される。このとき、窒素酸化物は、窒素(N
2)、水(H
2O)や二酸化炭素(CO
2)といった無害な形で大気中に放出され、NOxパージが行われる。
【0049】
電子制御ユニット20は、NOxトラップ触媒2のNOx吸蔵還元型触媒による窒素酸化物の吸蔵量を推定する吸蔵量推定手段24と、NOxトラップ触媒2のNOx吸着触媒による窒素酸化物の吸着量を推定する吸着量推定手段25とを備える。
【0050】
吸着量推定手段25は、排気通路5を通過する排気中の空燃比やその温度、経過時間等の情報に基づき、NOx吸着触媒における窒素酸化物の吸着量、NOx吸着量(n)を演算により算出することができる。排気中の空燃比やその温度に基づき、マップを用いてこれらの窒素酸化物の吸着量、NOx吸着量(n)を求めることもできる。また、吸着されていた窒素酸化物を脱離した際も、排気中の空燃比やその温度、経過時間等の情報に基づき、その放出量(脱離量)を算出し、残存する窒素酸化物の吸着量を把握することができる。
【0051】
具体的な算定方法として、例えば、NOx吸着量は、
NOx吸着量(n)=NOx吸着量(n−1)+吸着NOx量−脱離NOx量
の演算により算定することができる。
【0052】
まず、飽和NOx吸着量を吸着材料の種別、容量、NOxトラップ触媒2の温度から算出し、NOx吸着量(n−1)を飽和NOx吸着量で除することにより、NOx吸着飽和率を算出する。
【0053】
つぎに、吸着NOx量の求め方について説明する。NOx吸着飽和率から吸着脱離率を算出する。吸着脱離率は、符号+で吸着による増加割合、符号−で脱離による減少割合を示す。NOx吸着飽和率<1の場合は、エンジン1の回転数やトルクのマップから流入NOx量を算出して、吸着脱離率を乗じることにより、吸着NOx量を算出する。NOx吸着飽和率=1の場合は、吸着NOx量、脱離NOx量は、ともに0である。NOx吸着飽和率>1の場合は、NOx吸着量(n−1)に吸着脱離率を乗じることにより、脱離NOx量を算出することができる。
【0054】
吸蔵量推定手段24は、排気通路5を通過する排気中の空燃比やその温度、経過時間等の情報に基づき、NOx吸蔵還元型触媒における窒素酸化物の吸蔵量、NOx吸蔵量(n)を演算により算出することができる。排気中の空燃比やその温度に基づき、マップを用いてこれらの窒素酸化物の吸蔵量、NOx吸蔵量(n)を求めることもできる。また、吸蔵されていた窒素酸化物を放出した際も、排気中の空燃比やその温度、経過時間等の情報に基づき、その放出量(分解量)を算出し、残存する窒素酸化物の吸蔵量を把握することができる。
【0055】
具体的な算定方法として、例えば、NOx吸蔵量は、
NOx吸蔵量(n)=NOx吸蔵量(n−1)+吸蔵NOx量−分解NOx量
の演算により算定することができる。
【0056】
まず、NOx吸蔵可能量の求め方について説明する。飽和NOx吸蔵量を吸蔵材料の種別、容量から算出し、NOx吸蔵量(n−1)より、NOx吸蔵可能量を算出する。
【0057】
つぎに、吸蔵NOx量の求め方について説明する。NOxトラップ触媒2の温度、及び、吸気量のマップからNOx吸蔵率を算出し、それを、NOx吸蔵可能量で補正することにより、補正後NOx吸蔵率を算出する。NOx吸蔵率の変化は、概ね300℃をピークとする山なりの傾向を示し、吸気量が大であれば吸蔵率は低下する傾向がある。
【0058】
エンジン1の回転数やトルクのマップから、NOxトラップ触媒2へ流入する窒素酸化物の量を算出し、NOx吸着触媒から脱離した窒素酸化物の量を加算して、補正後流入NOx量を算出する。補正後流入NOx量と補正後NOx吸蔵率とを乗じることにより、新たに吸蔵される窒素酸化物の量、すなわち、吸蔵NOx量を算出することができる。吸蔵NOx量>NOx吸蔵可能量の場合は、吸蔵NOx量=NOx吸蔵可能量に補正を行う。
【0059】
つぎに、分解NOx量の求め方について説明する。分解NOx量は、排気中の空燃比やその温度に基づき、マップを用いてこれらの窒素酸化物の分解量を求めることができる。分解NOx量>NOx吸蔵量の場合は、分解NOx量=0に補正を行う。
【0060】
図2の例は、排気ガスの浄化を行う触媒等の浄化装置の種別及び配置を、
図1とは異ならせたものである。具体的には、浄化装置として、排気通路5の上流側から下流側に向かって、NOxトラップ触媒2、ディーゼル微粒子フィルタ3が順に備えられている。その他の構成は、前述の
図1の説明と同様である。
【0061】
このエンジンの制御装置の作用、及び、その制御方法を、
図3の図表及び
図4のフローチャートに基づいて説明する。
【0062】
まず、ステップS1において、電子制御ユニット20は、NOxトラップ触媒2のNOx吸蔵還元型触媒による窒素酸化物の吸蔵量と、NOxトラップ触媒2のNOx吸着触媒による窒素酸化物の吸着量を推定する。推定は、前述の算出方法によって行う。
【0063】
次に、ステップS2では、その推定された吸蔵量が、NOx吸蔵還元型触媒に設定された所定吸蔵量a以上であるかどうかが判別される。吸蔵量≧所定吸蔵量aであればステップS3へ移行し、吸蔵量<所定吸蔵量aであればステップS10へ移行する。
【0064】
ステップS3では、推定された吸蔵量が、NOx吸蔵還元型触媒に設定された第二の所定吸蔵量b(b>a)以上であるかどうかが判別される。第二の所定吸蔵量bは、
図3(b)に示すように、所定吸蔵量aよりも大きい値に設定され、飽和吸蔵量に近い値に設定される。ここで、吸蔵量≧第二の所定吸蔵量bであればステップS4へ移行し、強制的なNOxパージ(
図3の符号#1,#2,#3参照)を行うかどうかが判断される。また、ここで、吸蔵量<第二の所定吸蔵量bであれば、ステップS20へ移行する。
【0065】
強制的なNOxパージを実行できる条件は、排気温度が所定温度以上であることとしている。ステップS4で、排気温度が所定温度以上であればステップS6へ移行し、NOxパージを実行する。排気温度が所定温度未満であれば、NOxパージを実行する準備が整っていない状況であるので、ステップS5へ移行し、NOxパージを実行できる触媒温度となるように昇温制御を行ってから、再度、ステップS4の判定を経て、NOxパージを実行する。なお、排気温度による判定に代えて、水温による判定を用いてもよい。以下の各ステップにおいても同様である。
【0066】
ステップS6の強制的なNOxパージは、吸蔵量<第二の所定吸蔵量bとなるまで継続する(ステップS7参照)。吸蔵量<第二の所定吸蔵量bとなれば、制御を終了する(ステップS14参照)。
【0067】
ステップS20では、推定された吸着量が、NOx吸着触媒に設定された所定吸着量c以上であるかどうかが判別される。ここで、吸着量≧所定吸着量cであればステップS21へ移行し、排気温度が所定温度に満たない場合には、ステップS22へ移行して、排気ガスの昇温制御、吸着した窒素酸化物の脱離、脱離した窒素酸化物の吸蔵、NOxパージが行われる(
図3の符号#4,#5参照)。また、ここで、吸着量<所定吸着量cであれば吸着可能量に余裕があるのでステップS14へ移行し、浄化の制御を終了する(
図3の符号#6参照)。
【0068】
ステップS22の昇温制御、脱離・吸蔵、NOxパージは、吸着量<所定吸蔵量cとなるまで継続する(ステップS23参照)。吸着量<所定吸蔵量cとなれば、制御を終了する(ステップS14参照)。
【0069】
ステップS10では、推定された吸着量が、NOx吸着触媒に設定された所定吸蔵量c以上であるかどうかが判別される。ここで、吸着量≧所定吸蔵量cであればステップS11へ移行し、排気温度が所定温度に満たない場合には、ステップS12へ移行して、排気ガスの昇温制御が行われる(
図3の符号#7,#8参照)。また、ここで、吸着量<所定吸着量cであれば吸着可能量に余裕があるのでステップS14へ移行し、浄化の制御を終了する(
図3の符号#9参照)。
【0070】
ステップS12の昇温制御は、吸着量<所定吸蔵量cとなるまで継続する(ステップS13参照)。吸着量<所定吸蔵量cとなれば、S14へ移行し、浄化の制御を終了する。
【0071】
なお、NOx吸着触媒に設定される所定吸着量cとは別に、第二の所定吸着量dを設定してもよい。第二の所定吸着量dは、
図3(b)に示すように、所定吸着量cよりも大きい値に設定され、飽和吸着量に近い値に設定される。吸着量≧第二の所定吸着量dであれば、第二の所定吸着量d≧吸着量≧所定吸着量cの場合よりも、ステップS8やS12で行う排気ガスの昇温制御、吸着した窒素酸化物の脱離、脱離した窒素酸化物の吸蔵、NOxパージ等の各作用を、より急速に行う制御を行ってもよい。
【0072】
昇温制御を行うかどうかを判断する基準となる前述の所定温度について、この所定温度としては、NOxトラップ触媒2のNOx吸着触媒に設定される第一の所定温度としてもよいし、あるいは、NOxトラップ触媒2のNOx吸蔵還元型触媒に設定される第二の所定温度としてもよい。また、この所定温度を、第一の所定温度と第二の所定温度のいずれか低い方とすることもできる。
【0073】
以上のように、排気ガス温度検出手段2a,3a,4aによって検出された排気ガスの温度が所定温度未満であって、NOxトラップ触媒2のNOx吸蔵還元型触媒の吸蔵量が所定吸蔵量a未満であり、且つ、NOxトラップ触媒2のNOx吸着触媒の吸着量が所定吸着量c以上の場合に、排気ガス温度制御手段22は、排気ガスの昇温制御を行うことにより、NOx吸着触媒に吸着した窒素酸化物を脱離させて、その脱離した窒素酸化物の多くをNOx吸蔵還元型触媒に吸蔵させる。これにより、NOx吸着触媒の吸着可能量を素早く増加させ、排気温度が低い場合の窒素酸化物の大気解放防止に対応する。
【0074】
排気ガスの温度が所定温度未満であって、NOxトラップ触媒2のNOx吸蔵還元型触媒の吸蔵量が所定吸蔵量a以上であり、且つ、NOxトラップ触媒2のNOx吸着触媒の吸着量が所定吸着量c以上の場合に、排気ガス温度制御手段22は、排気ガスの昇温制御を行うことによりNOx吸着触媒に吸着した窒素酸化物を脱離させて、その脱離した窒素酸化物の多くをNOx吸蔵還元型触媒に吸蔵させる。さらに、還元剤供給制御手段23は、還元剤を供給することにより、NOx吸蔵還元型触媒に吸蔵された窒素酸化物を、無害な物質として大気へ放出させる。これにより、NOx吸着触媒の吸着可能量、NOx吸蔵還元型触媒の吸蔵可能量を増加させ、排気温度が低い場合の窒素酸化物の大気解放防止に対応する。
【0075】
また、NOxトラップ触媒2のNOx吸蔵還元型触媒の吸蔵量が所定吸蔵量aよりも大きい値に設定された第二の所定吸蔵量b以上である場合には、吸蔵可能量が全く無いか、あるいは、非常に少ない状態であるので、還元剤供給制御手段23は、他の条件に関わらず強制的に還元剤を供給することにより、NOx吸蔵還元型触媒に吸蔵された窒素酸化物を、無害な物質として放出させ、吸蔵可能量の増加を図る。
【0076】
ここで、昇温制御の手法について説明する。
【0077】
図1の構成の場合、NOxトラップ触媒2が、ディーゼル酸化触媒4やディーゼル微粒子フィルタ3等の触媒装置の下流側にある。この場合、排気ガスの昇温制御は、触媒装置の温度が触媒活性化温度未満であれば、吸気通路11に設けられるスロットルバルブ12を絞ることにより、NOx吸着触媒における窒素酸化物の脱離と、その脱離した窒素酸化物のNOx吸蔵還元型触媒への吸蔵が可能な第一の所定温度まで昇温する。触媒装置の温度が触媒活性化温度以上であれば、燃料をメイン噴射よりも前に行うポスト噴射により増量させることにより、吸蔵された窒素酸化物のパージ(放出)が可能な第二の所定温度まで緩やかに昇温させる制御を行うことができる。ポスト噴射により、燃料を前段の浄化装置であるディーゼル酸化触媒4やディーゼル微粒子フィルタ3付近で燃焼させて酸化・発熱させることにより、放熱ロスの最小化を図っている。
【0078】
図2の構成の場合、NOxトラップ触媒2が、ディーゼル微粒子フィルタ3等の触媒装置の上流側にある。この場合、排気ガスの昇温制御は、吸気通路11に設けられるスロットルバルブ12を絞ることにより、NOx吸着触媒における窒素酸化物の脱離と、その脱離した窒素酸化物のNOx吸蔵還元型触媒への吸蔵が可能な第一の所定温度まで昇温する。その後、燃料を増量させることにより、NOx吸蔵還元型触媒に吸蔵された窒素酸化物のパージ(放出)が可能な第二の所定温度まで昇温させる制御を行うことができる。吸気絞りによって空間速度(
space velocity)も低下するため、窒素酸化物の吸蔵を促進することができる。
なお、本実施例ではディーゼルの排気について記載したが、ディーゼルに限られるものではなく、一般的な内燃機関の排気浄化に用いることができる。