特許第6500771号(P6500771)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6500771
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/24 20060101AFI20190408BHJP
【FI】
   H01R13/24
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-253015(P2015-253015)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-117693(P2017-117693A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 章夫
(72)【発明者】
【氏名】西島 誠道
【審査官】 高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−143802(JP,A)
【文献】 実開昭58−61655(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0070173(US,A1)
【文献】 米国特許第7559769(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/24
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子と、前記端子を収納するハウジングとを備えたコネクタであって、
前記端子は、
天井壁を有し、前記ハウジング内に収納されたケースと、
前記ケースの前記天井壁に向かう圧縮方向に圧縮された状態で、前記ケースの内部に収容されたコイルスプリングと、
相手側端子との接点部を有し、前記コイルスプリングの一端と前記ケースとの間に挟持され、前記接点部が前記コイルスプリングをさらに圧縮させる前記圧縮方向に移動可能とされた第1導電部材と、を含み、
前記ケースは、金属材料によって構成されており、
前記ケースは、前記コイルスプリングに対して、前記第1導電部材の前記圧縮方向への移動を妨げない距離で近接して設けられた前方壁部であって、前記天井壁の前方側端部から前記第1導電部材側に屈曲する前方壁部を有し、
前記前方壁部は、前記第1導電部材の前方壁部側の一端部を支持する支持部であって、前記接点部の移動時において前記一端部が前記圧縮方向に移動可能とされた支持部を含む、コネクタ。
【請求項2】
前記第1導電部材は、前記第1導電部材の前記一端部として、他の部分より幅狭に形成された係合部を有し、
前記前方壁部は、前記支持部としての窓部であって、前記係合部が係合された状態で前記圧縮方向に移動可能とされた窓部を含む、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記端子は、
前記ハウジングに保持され、前記ハウジングから延出する第2導電部材と、
前記第1導電部材と前記第2導電部材とを接続する電線と、をさらに含み、
前記電線は、
前記第1導電部材に接続される第1端部と、
前記第2導電部材に接続される第2端部と、
前記第1端部と前記第2端部を連結する中間部分とを含み、
前記中間部分は、前記ハウジング内において、前記第1端部から前記第2端部に向けて前記圧縮方向に伸びるように配設されている、請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ケースは、前記天井壁の後方側端部から前記第1導電部材側に屈曲する屈曲部を有し、
前記屈曲部は、前記後方側端部に連続するアール部と、前記アール部に連続して伸びる延伸部とを含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、コネクタに関し、詳しくは、コネクタに含まれ、該コネクタの接続時に移動可能な導電部材を収容するケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接点同士を突き当てることで電気的に接続される給電装置として、特開2002−274290号公報(下記特許文献1)に記載のものが知られている。この給電装置は、車両のボディ側に設けられたフィメールジャンクション(「コネクタ」に相当)と、ドア側に設けられたメールジャンクションとから構成される。フィメールジャンクションは、中空筒状のケースの一端をボディから外部に臨ませて設けられている。ケースの内部には、左右一対の端板、これらの端板の間に挟持圧縮されたコイルスプリング、およびコイルスプリングに接続された板バネ部材(「導電部材」に相当)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−274290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の給電装置では、絶縁部材で構成される端板に座部(凹部)を設けて、この凹部にコイルスプリングの端部を収容した構成である。そして、フィメールジャンクションとメールジャンクションとの接続時におけるコイルスプリングによる接圧を、端板の凹部が受ける構造となっている。そのため、端板が、例えば合成樹脂で構成される場合において、コイルスプリングからの高い接触圧力(付勢力)が端板の凹部にかかる場合、あるいは環境温度が高い場合には、端板にクリープ現象等が発生するおそれがあった。端板にクリープ現象等が発生すると、樹脂破壊に至る懸念があり、給電装置の信頼性が低下することとなる。そのため、高い環境温度、およびコイルスプリングの高い付勢力に対応しつつ、コンパクトなコネクタが所望されていた。その際、
本明細書に開示される技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、本明細書は、高い環境温度、およびコイルスプリングの高い付勢力に対応しつつ、コンパクトなコネクタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示されるコネクタは、端子と、前記端子を収納するハウジングとを備えたコネクタであって、前記端子は、天井壁を有し、前記ハウジング内に収納されたケースと、前記ケースの前記天井壁に向かう圧縮方向に圧縮された状態で、前記ケースの内部に収容されたコイルスプリングと、相手側端子との接点部を有し、前記コイルスプリングの一端と前記ケースとの間に挟持され、前記接点部が前記コイルスプリングをさらに圧縮させる前記圧縮方向に移動可能とされた第1導電部材と、を含み、前記ケースは、金属材料によって構成されており、前記ケースは、前記コイルスプリングに対して、前記第1導電部材の前記圧縮方向への移動を妨げない距離に近接して設けられた前方壁部であって、前記天井壁の前方側端部から前記第1導電部材側に屈曲する前方壁部を有し、前記前方壁部は、前記第1導電部材の前方壁部側の一端部を支持する前方側支持部であって、前記接点部の移動時において前記一端部が前記圧縮方向に移動可能とされた前方側支持部を含む。
【0006】
本構成によれば、端子を収容するケース、すなわち、コイルスプリングをさらに圧縮させる方向に移動可能な第1導電部材を収容するケースは、金属材料によって構成されている。そのため、端子が相手側端子と接触した際に、第1導電部材の接点部がコイルスプリングをさらに圧縮させることによって、ケースの天井壁がコイルスプリングから高い接圧(付勢力)を受ける場合であっても、高い環境温度においてケースにクリープ現象が発生することはない。
また、ケースは、コイルスプリングに対して、第1導電部材の圧縮方向への移動を妨げない距離に近接して設けられ、天井壁の前方側端部から第1導電部材側に屈曲する前方壁部を有し、前方壁部は、第1導電部材の前方壁部側の一端部(前方端部)を支持する支持部であって、接点部の移動時において一端部が圧縮方向に移動可能とされた支持部を含む。
すなわち、コイルスプリングから近距離に形成された前方壁部の支持部に第1導電部材の前方端部を支持させることができるとともに、前方端部を圧縮方向に移動させる構成を構築できる。それによって、例えば、ケースに前方壁部を設けず、第1導電部をケースの側壁にのみによって支持させる構成と比べると、第1導電部材の前後方向の長さを短くしつつ、第1導電部材を確実に移動させることができる。また、第1導電部材の前後方向の長さを短くできることによってケースの前後方向の長さを短くできる。その結果、コネクタをコンパクト化できる。すなわち、本構成のコネクタによれば、高い環境温度、およびコイルスプリングの高い付勢力に対応しつつ、コンパクト化できる。
【0007】
上記コネクタにおいて、前記第1導電部材は、前記第1導電部材の前記一端部として他の部分より幅狭に形成された係合部を有し、前記前方壁部は、前記支持部としての窓部であって、前記係合部が係合された状態で前記圧縮方向に移動可能とされた窓部を含むようにしてもよい。
本構成によれば、第1導電部材がコイルスプリングの圧縮方向に移動する際、第1導電部材の係合部が窓部に係合された状態で移動できる。それによって、第1導電部材を安定して移動させることができる。
【0008】
また、上記コネクタにおいて、前記端子は、前記ハウジングに保持され、前記ハウジングから延出する第2導電部材と、前記第1導電部材と前記第2導電部材とを接続する電線と、をさらに含み、前記電線は、前記第1導電部材に接続される第1端部と、前記第2導電部材に接続される第2端部と、前記第1端部と前記第2端部を連結する中間部分とを含み、前記中間部分は、前記ハウジング内において、前記第1端部から前記第2端部に向けて前記圧縮方向に伸びるように配設されているようにしてもよい。
本構成によれば、コネクタの端子電極として、第1導電部材のみによってハウジングの外部に取り出す場合と比べて、第1導電部材と第2導電部材との間に電線を介在させることによって、端子が相手側端子と接触した際の第1導電部材の移動を、電線によって吸収できる。
また、中間部分は、ハウジング内において、第1端部から第2端部に向けて圧縮方向に伸びるように配設されている。例えば、中間部分を上下方向にS字状に配設できる。それによって、例えば、中間部分を前後方向にU字状に配設する場合と比べて、ハウジング内における前後方向における電線の占めるスペースを狭くすることができる。すなわち、ハウジングの前後方向の長さを短くすることができる。それによって、コネクタをさらにコンパクトにできる。
【0009】
また、上記コネクタにおいて、前記ケースは、前記天井壁の後方側端部から前記第1導電部材側に屈曲する屈曲部を有し、前記屈曲部は、前記後方側端部に連続するアール部と、前記アール部に連続して伸びる延伸部とを含むようにしてもよい。
本構成によれば、ケースの天井壁の他端はアール部を有する屈曲部とされる。そのため、例えば、第1導電部材の移動に伴って電線の中間部分が金属製の天井壁の他端部に接触する場合であっても、天井壁の他端部によって電線の中間部分が損傷されることを抑制できる。例えば、電線が編組線で構成される場合、天井壁の角によって編組線が断線されることが抑制される。すなわち、アール部を有する屈曲部によって電線が保護される。
【発明の効果】
【0010】
本明細書によって開示されるコネクタによれば、高い環境温度、およびコイルスプリングの高い付勢力に対応しつつ、コンパクト化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態におけるコネクタの断面図
図2】コネクタに含まれる端子の斜視図
図3】端子を電線とは反対側から見た側面図
図4】端子の底面図
図5】端子の正面図
図6】端子を電線側から見た側面図
図7】端子の平面図
図8図3におけるA−A線での概略的な断面図
図9】コネクタに相手側コネクタを嵌合させる前の状態を示した断面図
図10図9の状態から相手側接点部を第1導電部材に突き当てることで第1導電部材をケース内に押し込んだ状態を示した断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
1.コネクタの構成
実施形態を図1から図10の図面を参照しながら説明する。本実施形態のコネクタ1は、図1に示されるように、端子10と、ハウジングHとを備える。なお、図1は、端子10がハウジングHに実装された場合において、図9におけるA−A線に対応したコネクタ1の概略的な断面図である。また、図1において、端子10の前方が矢印Xで示され、端子10の上方およびコイルスプリング30の圧縮方向が矢印Yで示される。
【0013】
本実施形態では、コネクタ1が、車両に設けられたインバータとモータとの電気的接続に使用されるコネクタを想定しているが、コネクタ1の適用例はこれに限られない。また、通常、モータがインバータ制御される際、三相交流が使用されるため、コネクタ1は三個の端子を含むが、各端子の構成は同一のため、以下の説明において、一個の端子10のみについて説明する。また、コネクタ1に関しても、各端子10に共通して関連する部分のみについて説明する。
【0014】
1−1.端子
端子10は、図2に示すように、ケース20と、ケース20の内部に圧縮状態で収容されたコイルスプリング30と、第1導電部材40および第2導電部材50と、両導電部材40、50を導通可能に接続する電線60とを含む。本実施形態における電線60は、銅合金などの金属線からなる編組線とされている。なお、電線60は編組線に限られない。また、図2において、端子10の前方が矢印Xで示され、端子10の上方およびコイルスプリング30の圧縮方向が矢印Yで示される。
【0015】
ケース20は、金属材料で構成され、例えばSUS(ステンレス鋼)材などで構成される一枚の金属板材をプレス加工したものである。なお、金属材料は、SUS材に限られない。ケース20は、図2および図3に示すように、天井壁21と、前方壁部22と、天井壁21の両側縁から下方に延出された一対の側壁23と、側壁23の下縁から天井壁21と対向する配置で内向きに延出された一対の後方支持部24とを備えている。
【0016】
前方壁部22は、図1等に示されるように、天井壁21の前方側端部21Aから第1導電部材側に垂直に屈曲している。前方壁部22は、後述するコイルスプリング30に対して、第1導電部材40の、コイルスプリングの圧縮方向(図1等の矢印Y方向:以下、単に「圧縮方向Y」と記す)への移動を妨げない距離に近接して設けられている。言い換えれば、前方壁部22は、コイルスプリング30に対して、少なくともコイルスプリング30の圧縮動作を妨げない距離に近接して設けられている。また、前方壁部22は、後述する第1導電部材40の係合部(「前方壁部側の一端部」の一例)45を支持する窓部(「支持部」の一例)28を含む。窓部28は、後述する第1導電部材40の接点部43の移動時において第1導電部材40の係合部45を圧縮方向Yに移動可能とする。すなわち、第1導電部材40の接点部43の移動に伴って、第1導電部材40の係合部45は、窓部28に係合した状態で、言い換えれば、窓部28から外れることなく、圧縮方向Yに移動できる。
【0017】
各側壁23には、前方(図2の矢印X方向)に伸びる腕部23Aが形成されている。また、腕部23Aの先端部は屈曲され、前方壁部22の前面に当接する当接部23Bとされている。また、一対の後方支持部24は、図4に示すように、第1導電部材40の図示右端側、言い換えれば、第1導電部材40の後端側に配されている。
【0018】
図5に示すように、側壁23における腕部23Aの下部と後方支持部24の間には、第1開口25が設けられている。側壁23における第1開口25の上方には、第1開口25よりも幅狭で上下方向に長い第2開口26が設けられている。
【0019】
また、図5に示すように、天井壁21の、前方壁部22が形成される前方側端部21Aとは反対側の後方側端部21Bには屈曲部29が設けられている。屈曲部29は、後方側端部21Bから第1導電部材側に屈曲する。屈曲部29は、後方側端部21Bに連続する第1アール部29A(「アール部」の一例)と、第1アール部29Aに連続して下側(図5の矢印Y方向と反対方向)に伸びる延伸部29Bと、延伸部29Bに連続する第2アール部29Cと、第2アール部29Cに連続して、ケース20内に(図5の矢印X方向に)伸びる折返し部29Dとを含む。屈曲部29は、天井壁21の後方側端部21Bから電線(編組線)60を保護するために設けられている。
【0020】
また、図8に示すように、第1導電部材40の係合部45を支持する窓下縁部28A(言い換えれば、前方支持部)と天井壁21の間隔は、後方支持部24と天井壁21の間隔よりも大きい。言い換えれば、窓下縁部28Aと後方支持部24とは、窓下縁部28Aと天井壁21の間隔と、後方支持部24と天井壁21の間隔とが異なるように配置されている。また、窓下縁部28Aと後方支持部24は、同一平面をなすように配置されている。すなわち、天井壁21と、窓下縁部28Aおよび後方支持部24がなす平面とは平行ではなく、同平面は、後方支持部24が窓下縁部28Aに対して図8の上方(矢印Y方向)となるように、所定の角度で傾斜している。
【0021】
コイルスプリング30は、SUSなどの金属線材をコイル状に巻回したものであって、ケースの天井壁21に向かう圧縮方向Y(図8の矢印を参照)に圧縮された状態で、ケース20の内部に収容されている。具体的には、コイルスプリング30は、第1導電部材40と軸心70のフランジ部72によって圧縮状態で挟持されている。このため、コイルスプリング30は、第1導電部材40と軸心フランジ部72の双方を付勢している。この付勢力によって、第1導電部材40は、コイルスプリング30の下端(「一端」の一例)31と、後方支持部24の内壁および窓下縁部28Aとの間に挟持されている。また、軸心フランジ部72は、コイルスプリング30の上端32と天井壁21の内壁との間に挟持されている。
【0022】
また、コイルスプリング30の内部には、図8に示されるように、軸心70が収容されている。軸心70は、ケースの天井壁21からコイルスプリング30の軸方向に突出している。すなわち、軸心70の端部71は、天井壁21の貫通孔27を貫通して配されている。軸心70は、例えば、真鍮などの金属からなり、円柱状をなしている。軸心70の端部71は、上方から叩かれてかしめられることで固着孔54の孔縁部に圧着されている。軸心70の端部71に続くフランジ部72は、コイルスプリング30の上端32と天井壁21の内壁との間に挟持されている。
【0023】
軸心70の下端は、第1導電部材40のばね受け部41の内壁よりも上方に位置している。詳細には、軸心70の下端は、第1導電部材40が相手側端子110によって上方に持ち上げられた場合に(図10参照)、軸心70の下端と第1導電部材40が干渉しない範囲内で、最大限下方に位置するように配されている。このようにすることで、コイルスプリング30が傾いたり、途中で折れ曲がったりすることを抑制できる。
【0024】
第1導電部材40は、銅合金などの金属板材をプレス加工したものであって、図8に示すように、コイルスプリング30の下端31を支持するばね受け部41、ケース20の後方支持部24によって支持された電線接続部42、および係合部45を有している。係合部45は、第1導電部材40の前方壁部側の一端部として、他の部分より幅狭に形成されている(図4参照)。
【0025】
また、第1導電部材40は、後述する相手側端子110(図9参照)との接点部43を有している。また、第1導電部材40は、コイルスプリングの下端31とケース20の内壁(24、28A)との間に挟持され、接点部43がコイルスプリング30をさらに圧縮させる圧縮方向Yに移動可能とされている。
【0026】
本実施形態における電線60は、電線接続部42に、例えば、抵抗溶接で接続されている。ばね受け部41は、窓下縁部28Aと後方支持部24との間に位置し、ケース20の第1開口25によってケース20の外部に露出されている。ばね受け部41の下面は、接点部43とされている。接点部43は、コイルスプリング30の軸線上で、かつ、窓下縁部28Aと後方支持部24の間に配置されている。
【0027】
第1導電部材40は、ほとんどがケース20の内部に収容されているものの、ばね受け部41の両側縁に設けられた一対の張出片44と、係合部45とについては、ケース20の外部に配されている。一対の張出片44は、一対の第1開口25にそれぞれ収容されている。張出片44は、第1開口25の開口縁部に対して後方向(図5における矢印Xと反対方向)に当接すること、および前方壁部22に対して前方向(図5における矢印X方向)に当接することで、第1導電部材40の前後方向への移動を抑制しつつ、上方(図5における矢印Y方向)への移動を許容している。
【0028】
一方、第2導電部材50は、第1導電部材40と同様に、銅合金などの金属板材をプレス加工したものである。第2導電部材50は、ハウジングHに保持され、ハウジングHから延出する。詳しくは、第2導電部材50は、図8に示されるように、上方(図8の矢印Y方向)に立ち上がる電線接続部52と、電線接続部52と連続して上方に立ち上がる機器側接続部53とを有している。機器側接続部53には、機器取付け用のボルト孔55が設けられている。
【0029】
電線60は、図8に示すように、第1導電部材40の電線接続部42に接続された第1端部61と、第2導電部材50の電線接続部52に接続された第2端部62と、第1端部61と第2端部62を連結する中間部分63とからなる。中間部分63は、ケース20の外部に配され、略S字状をなしている(図1参照)。電線60は可撓性を有するため、第1導電部材40と第2導電部材50が相対的に移動すると、中間部分63が撓み変形するようになっている。
【0030】
1−2.ハウジング
ハウジングHは、図1等に示すように、上下一対の絶縁部材80、90によって構成され、その内部に端子10を収容している。
下側絶縁部材90の底壁には、図1に示すように、ケース20の後方支持部24に当接する第1リブ91が設けられている。また、下側絶縁部材90には、第1導電部材40の接点部43を外部に露出させる開口を有する嵌合凹部93が設けられている。第1リブ91の嵌合凹部93を介した反対側には第2リブ92が設けられている。第2リブ92と下側絶縁部材90によって形成される凹部94には、ケース20の前方壁部22の下端が位置する。これにより、ケース20が、ハウジングHの内部において前後方向(図1における図示左右方向)に移動することが抑制されている。
【0031】
一方、上側絶縁部材80は、図1等に示すように、収容部81、延出部82、および上壁部83を含む。収容部81は上壁部83より上方に突出するように設けられており、第2導電部材50の電線接続部52および電線60の第2端部62等を収容する。また、収容部81には、第2導電部材50を保持するとともに、第2導電部材50の機器側接続部53をハウジングHの外部に延出させる延出部82が設けられている。延出部82の下方には、電線60が配されている。
【0032】
すなわち、収容部81と下側絶縁部材90によって、電線60を収容する縦長の電線収容空間LSが形成されている。電線収容空間LS内に、電線60が側面視、縦長のS字状を成して収納されている。また、上側絶縁部材80の上壁部83は、図1に示すように、ケース20の天井壁21に当接する肉厚部84を有する。
【0033】
2.相手側コネクタとの関係
コネクタ1と嵌合する相手側コネクタ100は、例えば図9に示されるように、合成樹脂製の相手側ハウジング101と、相手側ハウジング101にインサート成形された相手側端子110とを備えている。相手側端子110はL字状をなし、その一端側に第1導電部材40の接点部43に対面する相手側接点部111が設けられている。相手側接点部111の上面には、球状部112が、相手側接点部111の面側からの叩き出しにより形成されている。相手側接点部111は、コネクタ1の嵌合凹部93の内部に嵌合可能な嵌合部113に配設されている。
【0034】
相手側コネクタ100の嵌合部113をコネクタ1の嵌合凹部93の内部に嵌合させていくと、球状部112が接点部43に接触する。嵌合部113をさらに嵌合させていくと、図10に示すように、第1導電部材40が持ち上がり、コイルスプリング30が圧縮される。また、電線60は、第1導電部材40の移動によってわずかに撓む。コイルスプリング30は予め圧縮状態とされているため、わずかに撓むだけで大きなばね力を発生させる。こうして、コイルスプリング30のばね力が発生し、このばね力によって相手側端子110の球状部112と端子10の接点部43との間に所定の接触圧を生じさせる。したがって、相手側端子110と第2導電部材50とが、第1導電部材40および電線60を介して導通可能に接続される。
【0035】
3.本実施形態の効果
以上のように本実施形態では、端子10を収容するケース20、すなわち、コイルスプリング30をさらに圧縮させる方向に移動可能な第1導電部材40を収容するケース20は、金属材料によって構成されている。そのため、端子10が相手側端子110と接触した際に、第1導電部材40の接点部43がコイルスプリング30をさらに圧縮させることによって、ケース20の天井壁21がコイルスプリング30から高い接圧(付勢力)を受ける場合であっても、高い環境温度においてケース20にクリープ現象が発生することはない。
【0036】
また、ケース20の前方壁部22は、コイルスプリング30に対して、第1導電部材40の、コイルスプリング30の圧縮方向(図1の矢印Y方向)への移動を妨げない距離で近接して設けられている。また、前方壁部22は、天井壁21の前方側端部21Aから第1導電部材側に屈曲するように形成されている。そして、前方壁部22は、第1導電部材40の係合部(前方壁部側の一端部)45を支持する窓部28(支持部)であって、接点部43の移動時において係合部45が圧縮方向に移動可能とされた窓部28を含む。
【0037】
すなわち、コイルスプリング30から至近距離に形成された前方壁部22の窓部28に、詳しくは、窓下縁部28Aに第1導電部材40の係合部45を支持させることができるとともに、係合部45を圧縮方向Yに移動させる構成を構築できる。それによって、例えば、ケース20に前方壁部22を設けず、第1導電部材40をケースの側壁にのみによって支持させる構成と比べると、第1導電部材40の前後方向(図5の左右方向)の長さを短くしつつ、第1導電部材40を確実に移動させることができる。また、第1導電部材40の前後方向の長さを短くできることによってケース20の前後方向の長さを短くできる。その結果、コネクタ1をコンパクト化できる。
【0038】
すなわち、本実施形態のコネクタ1によれば、高い環境温度、およびコイルスプリング30の高い付勢力に対応しつつ、コネクタ1をコンパクト化できる。
【0039】
また、第1導電部材40がコイルスプリング30の圧縮方向Yに移動する際、第1導電部材40の係合部45が前方壁部22の窓部28に係合された状態で移動できる。それによって、第1導電部材40を安定して移動させることができる。
【0040】
また、第1導電部材40は、電線60および第2導電部材50を介して外部と接続される。そのため、コネクタ1の導電部材として、第1導電部材40のみによってハウジングHの外部に取り出し、外部と接続される場合と比べて、第1導電部材40と第2導電部材50との間に電線60を介在させることによって、端子10が相手側端子110と接触した際の第1導電部材40の移動を電線60によって吸収することができる。それによって、第1導電部材40の移動に伴う影響を、コネクタ1内において低減させることができる。
【0041】
また、電線60の中間部分63は、ハウジング内において、第1端部61から第2端部62に向けてコイルスプリング30の圧縮方向(図1の矢印Y方向)に伸びるように、例えば、図1に示されるように、中間部分63を上下方向(圧縮方向Y)に縦長のS字状に配設されている。それによって、例えば、中間部分を前後方向(図1の左右方向)にU字状に配設する場合と比べて、ハウジング内における前後方向(図1の左右方向)における電線60の占めるスペースを狭くすることができる。すなわち、ハウジングHの前後方向(図1の左右方向)の長さを短くすることができる。それによって、コネクタ1をさらにコンパクトにできる。また、第2導電部材50の形状を、図5等に示されるように、曲げ部のないストレート状の単純な形状にできる。
【0042】
また、ケース20の天井壁21の後方側端部21Bは、第1アール部29Aおよび延伸部29Bを有する屈曲部29とされる。そのため、例えば、第1導電部材40の移動に伴って電線60の中間部分63が、金属製の天井壁21の後方側端部21Bに接触する場合であっても、天井壁21の後方側端部21Bによって電線60の中間部分63が損傷されることを抑制できる。例えば、本実施形態のように電線60が編組線で構成される場合、天井壁21の後方側端部21Bの角部によって編組線が断線されることが抑制される。すなわち、第1アール部29Aを有する屈曲部29によって電線60が保護される。
【0043】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
【0044】
(1)上記実施形態では、前方側支持部を前方壁部22に設けられた窓部28によって構成する例を示したが、これに限られない。前方側支持部は、例えば、前方壁部22の下端部をケース20の内側方向(図1の矢印X方向と逆方向)に屈曲して形成された下端屈曲部によって構成されてもよい。このような支持部の構成であっても、第1導電部材40の前方壁部側の一端部(係合部)45を支持できるとともに、一端部45が圧縮方向(図1の矢印Y方向)に移動できる。
【0045】
(2)上記実施形態では、端子10は、第2導電部材50と、第1導電部材40と第2導電部材50とを接続する電線60とを含む例を示したがこれに限られない。第2導電部材50は省略されてもよいし、第2導電部材50および電線60は、省略されてもよい。
また、第2導電部材50および電線60を含む場合、第2導電部材50および電線60の配設形態は、図5および図8に示される形態、すなわち、側面視、縦長のS字状に限られない。例えば、電線60は、側面視、前方(図5の矢印X方向)に開口するU字状に配設されてもよい。その場合、第2導電部材50の形状は、側面視、L字状とされ、水平方向(図5の矢印X方向)の一端(機器側接続部53と反対側)がケース20内に位置し、その一端を電線接続部52とするようにしてもよい。その際、第2導電部材50の一端は、コイルスプリング30の受け部を構成するようにしてもよい。
【0046】
(3)上記実施形態では、ケース20は、天井壁21の後方側端部21Bから第1導電部材側に屈曲する屈曲部29を有する例を示したが、これに限られず、ケース20は屈曲部29を有さなくてもよい。
【0047】
また、屈曲部29を有する場合、屈曲部29の構成は、図5および図8等に示された構成に限られず、例えば、第1アール部29Aのみの構成であってもよい。すなわち、延伸部29B、第2アール部29C、および折返し部29Dは省略されてもよい。
【0048】
(4)上記実施形態では、ハウジングHを、上側絶縁部材80と下側絶縁部材90とによって、上下に分割して構成する例を示したがこれに限られず、ハウジングHを一体構造としてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…コネクタ
10…端子
20…ケース
21…天井壁
21…天井壁
21A…前方側端部
21B…後方側端部
22…前方壁部
28…窓部(支持部)
29…屈曲部
29A…第1アール部(アール部)
29B…延伸部
30…コイルスプリング
31…コイルスプリングの下端(一端)
40…第1導電部材
43…接点部
45…係合部(一端部)
50…第2導電部材
60…電線
61…第1端部
62…第2端部
63…中間部分
H…ハウジング
図1
図2
図3
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図10