(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
非粘着性導電層(Y)が、ポリチオフェン、PEDOT−PSS、カーボンナノ材料、及びITO(酸化インジウムスズ)からなる群より選ばれる1種以上の導電材料を含む層である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性粘着シート。
前記粘着性組成物中に含まれる粘着性樹脂(x1)が、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイソブチレン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びポリオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる1種以上の粘着性樹脂を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性粘着シート。
粘着性導電層(X)及び非粘着性導電層(Y)から構成される二層体を2枚の剥離シートにより挟持した構成を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の導電性粘着シート。
第1の粘着性導電層(X−I)、非粘着性導電層(Y)、及び第2の粘着性導電層(X−II)をこの順で積層した三層体を2枚の剥離シートにより挟持した構成を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の導電性粘着シート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「質量平均分子量(Mw)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定した値である。
また、例えば「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の双方を示す語として用いており、他の類似用語についても同様である。
さらに、「導電性粘着シートの表面抵抗率」とは、特に断りが無い限り、導電性粘着シートが有する粘着性導電層(X)の表面側から測定した表面抵抗率を意味する。
【0012】
なお、本発明において、各層の表面抵抗率及び体積抵抗率の値は、JIS K 7194に準拠して測定した値であって、具体的には、実施例に記載の方法により測定した値を意味する。
【0013】
〔導電性粘着シート〕
本発明の導電性粘着シートは、少なくとも粘着性導電層(X)及び非粘着性導電層(Y)を有する。
本発明の導電性粘着シートは、非粘着性導電層(Y)を設けることで、粘着性導電層(X)の表面抵抗率が大幅に低下し、帯電防止性及び導電性を向上させることができる。その結果、粘着性導電層(X)中に多量の炭素系フィラーを含有する必要がないため、本発明の導電性粘着シートは、良好な粘着力を有する。
【0014】
本発明において、「粘着性導電層(X)」と「非粘着性導電層(Y)」とは、粘着性の有無で区別され、粘着性の有無は、各導電層の表面に対するプローブタックのピークトップの値から判断する。
つまり、本発明において、対象となる導電層の表面に対するプローブタックのピークトップの値が0.1N以上であれば、当該導電層は、粘着性を有していると判断し、「粘着性導電層(X)」に分類される。
逆に、対象となる導電層の表面に対するプローブタックのピークトップの値が0.1N未満であれば、当該導電層は、非粘着性であると判断し、「非粘着性導電層(Y)」に分類される。
なお、対象となる導電層の表面に対するプローブタックのピークトップの値は、JIS Z 0237(1991)に準拠して測定される値であり、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定した値を意味する。
【0015】
本発明の導電性粘着シートは、少なくとも粘着性導電層(X)及び非粘着性導電層(Y)を有する構成であれば特に制限はなく、これら以外の他の層を有していてもよい。
また、本発明の一態様の導電性粘着シートは、粘着性導電層(X)と非粘着性導電層(Y)との間に他の層を設けた構成であってもよいが、導電性粘着シートの表面抵抗率を低下させ、帯電防止性及び導電性を向上させる観点から、粘着性導電層(X)と非粘着性導電層(Y)とが直接積層した構成であることが好ましい。
【0016】
図1は、本発明の導電性粘着シートの好適な一態様の構成である、基材付き導電性粘着シートの断面図である。
本発明の一態様の導電性粘着シートとしては、例えば、
図1(a)に示すような、基材13、非粘着性導電層(Y)12、及び粘着性導電層(X)11をこの順で積層した構成を有する導電性粘着シート1Aが挙げられる。この導電性粘着シート1Aは、基材の一方の面上に、非粘着性導電層(Y)12及び粘着性導電層(X)11から構成される二層体21を有する。
また、導電性粘着シート1Aの構成に対して、さらに粘着性導電層(X)11上に剥離シート14を積層させた、
図1(b)に示すような導電性粘着シート1Bとしてもよい。
【0017】
また、本発明の一態様の導電性粘着シートとしては、例えば、
図1(c)、(d)に示すような、基材の両面上に、非粘着性導電層(Y)及び粘着性導電層(X)から構成される二層体21a、21bをそれぞれ有する導電性粘着シートであってもよい。
つまり、
図1(c)に示す導電性粘着シート2Aは、基材13の一方の面上に、第1の非粘着性導電層(Y−I)12a及び第1の粘着性導電層(X−I)11aから構成される第1の二層体21aを有し、基材13の他方の面上に、第2の非粘着性導電層(Y−II)12b及び第2の粘着性導電層(X−II)11bから構成される第2の二層体21bを有する。
また、
図1(d)に示す導電性粘着シート2Bは、導電性粘着シート2Aの構成に対して、さらに第1の粘着性導電層(X−I)11a上及び第2の粘着性導電層(X−II)11b上に、それぞれ剥離シート14a、14bを積層した構成を有する。
【0018】
また、
図2は、本発明の導電性粘着シートの好適な一態様の構成である、基材無し導電性粘着シートの断面図である。
本発明の一態様の導電性粘着シートとしては、基材無し導電性粘着シートであってもよく、具体的には、
図2(a)に示すような、粘着性導電層(X)11及び非粘着性導電層(Y)12から構成される二層体21を2枚の剥離シート14a、14bにより挟持した構成を有する導電性粘着シート3が挙げられる。
また、本発明の一態様の導電性粘着シートとしては、
図2(b)に示すような、第1の粘着性導電層(X−I)11a、非粘着性導電層(Y)12、及び第2の粘着性導電層(X−II)11bをこの順で積層した三層体22を2枚の剥離シート14a、14bにより挟持した構成を有する導電性粘着シート4であってもよい。
上記以外の構成を有する本発明の一態様の導電性粘着シートとしては、両面が剥離処理された剥離シートの片面に、粘着性導電層(X)及び非粘着性導電層(Y)から構成される二層体を粘着性導電層(X)が表出するように設けたものをロール状に巻いた構成を有する導電性粘着シート等も挙げられる。
【0019】
上述の第1の粘着性導電層(X−I)11a及び第2の粘着性導電層(X−II)11bは、同じ粘着性組成物から形成される層であってもよく、異なる粘着性組成物から形成される層であってもよい。
また、第1の非粘着性導電層(Y−I)12a及び第2の非粘着性導電層(Y−II)12bについても同様に、同じ形成材料から形成された層であってもよく、異なる形成材料から形成された層であってもよい。
以下、本発明の導電性粘着シートを構成する、粘着性導電層(X)、非粘着性導電層(Y)、基材、及び剥離シートについて説明する。
なお、本発明において、第1の粘着性導電層(X−I)及び第2の粘着性導電層(X−II)の構成は、粘着性導電層(X)と同じであり、第1の非粘着性導電層(Y−I)及び第2の非粘着性導電層(Y−II)の構成は、非粘着性導電層(Y)と同じである。
【0020】
〔粘着性導電層(X)〕
本発明の導電性粘着シートが有する粘着性導電層(X)は、粘着性樹脂(x1)及び平均アスペクト比が1.5以上の炭素系フィラー(x2)を含む粘着性組成物から形成された層である。
粘着性導電層(X)は、粘着性(上述のプローブタックのピークトップの値が0.1N以上)を有し、且つ、導電性(層単独の体積抵抗率(ρ
VX)が1.0×10
8Ω・cm以下)を有する層である。
【0021】
粘着性導電層(X)単独の表面抵抗率(ρ
SX)としては、粘着力が良好で、表面抵抗率を効果的に低下させた導電性粘着シートとする観点から、好ましくは1.0×10
2〜1.0×10
10Ω/□、より好ましくは1.0×10
2〜1.0×10
8Ω/□、更に好ましくは1.0×10
2〜1.0×10
7Ω/□、より更に好ましくは1.0×10
2〜1.0×10
6Ω/□である。
【0022】
粘着性導電層(X)単独の体積抵抗率(ρ
VX)としては、粘着力が良好で、表面抵抗率を効果的に低下させた導電性粘着シートとする観点から、好ましくは1.0×10
0〜1.0×10
8Ω・cm、より好ましくは1.0×10
0〜1.0×10
6Ω・cm、更に好ましくは1.0×10
0〜1.0×10
5Ω・cm、より更に好ましくは1.0×10
0〜1.0×10
4Ω・cmである。
【0023】
粘着性導電層(X)の厚さ(t
X)は、用途等に応じて適宜調整されるが、好ましくは1〜1200μm、より好ましくは2〜600μm、より好ましくは3〜300μm、更に好ましくは5〜250μm、更に好ましくは10〜200μm、より更に好ましくは15〜150μmである。
厚さ(t
X)が1μm以上であれば、被着体の種類に依らない良好な粘着力を発現させることができる。一方、厚さ(t
X)が1200μm以下であれば、得られる導電性粘着シートの導電性が良好となる。また、当該導電性粘着シートを巻回体とした際に、粘着性導電層(X)が変形することによる巻きズレや、巻回体の端部から粘着性導電層(X)がはみ出すといった弊害を抑制することができる。
【0024】
粘着性導電層(X)の形成材料である粘着性組成物は、粘着性樹脂(x1)及び平均アスペクト比が1.5以上の炭素系フィラー(x2)を含むが、粘着性樹脂(x1)の種類に応じて、架橋剤や粘着付与剤、これら以外の汎用添加剤を含有してもよい。
以下、当該粘着性組成物に含まれる各成分について説明する。
【0025】
<粘着性樹脂(x1)>
粘着性導電層(X)の形成材料である粘着性組成物に含まれる粘着性樹脂(x1)は、質量平均分子量が1万以上の粘着性を有する樹脂を意味する。
粘着性樹脂(x1)の質量平均分子量(Mw)としては、導電性粘着シートの粘着力を向上させる観点から、好ましくは1万〜200万、より好ましくは2万〜150万である。
【0026】
粘着性組成物中の粘着性樹脂(x1)の含有量は、当該粘着性組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは60.0〜99.99質量%、より好ましくは70.0〜99.9質量%、更に好ましくは80.0〜99.5質量%、より更に好ましくは90.0〜99.0質量%である。
【0027】
粘着性樹脂(x1)としては、導電性粘着シートの粘着力を向上させ、帯電防止性及び導電性を良好とする観点から、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイソブチレン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びポリオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる1種以上の粘着性樹脂を含むことが好ましく、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイソブチレン系樹脂、及びスチレン系樹脂からなる群より選ばれる1種以上の粘着性樹脂を含むことがより好ましく、アクリル系樹脂、及びウレタン系樹脂からなる群より選ばれる1種以上の粘着性樹脂を含むことが更に好ましい。
【0028】
(アクリル系樹脂)
粘着性樹脂(x1)として用い得るアクリル系樹脂としては、例えば、直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有する重合体、環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有する重合体等が挙げられる。
アクリル系樹脂の質量平均分子量(Mw)としては、好ましくは5万〜150万、より好ましくは15万〜130万、更に好ましくは25万〜110万、より更に好ましくは35万〜90万である。
【0029】
アクリル系樹脂の中でも、炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a1’)(以下、「モノマー(a1’)」ともいう)に由来する構成単位(a1)、及び官能基含有モノマー(a2’)(以下、「モノマー(a2’)」ともいう)に由来する構成単位(a2)を有するアクリル系共重合体が好ましい。
なお、当該アクリル系共重合体は、モノマー(a1’)及び(a2’)以外のその他のモノマー(a3’)に由来する構成単位(a3)を有していてもよい。
また、当該アクリル系共重合体の共重合の形態は、特に限定されない。つまり、当該アクリル系共重合体としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0030】
モノマー(a1’)が有するアルキル基の炭素数としては、粘着特性の向上の観点から、好ましくは1〜12、より好ましくは4〜8、更に好ましくは4〜6である。
モノマー(a1’)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのモノマー(a1’)の中でも、ブチル(メタ)アクリレート及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0031】
構成単位(a1)の含有量は、上記アクリル系共重合体の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは50〜99.5質量%、より好ましくは60〜99質量%、更に好ましくは70〜97質量%、より更に好ましくは80〜95質量%である。
【0032】
モノマー(a2’)としては、例えば、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有物モノマー、シアノ基含有モノマー、ケト基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー等が挙げられる。
これらのモノマー(a2’)の中でも、カルボキシ基含有モノマーが好ましい。
カルボキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられ、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0033】
構成単位(a2)の含有量は、上記アクリル系共重合体の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは0.5〜50質量%、より好ましくは1〜40質量%、更に好ましくは5〜30質量%、より更に好ましくは7〜20質量%である。
【0034】
モノマー(a3’)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート等の環状構造を有する(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等が挙げられる。
【0035】
構成単位(a3)の含有量は、アクリル系共重合体の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、更に好ましくは0〜10質量%、より更に好ましくは0〜5質量%である。
【0036】
なお、上述のモノマー(a1’)〜(a3’)は、それぞれ、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
(ウレタン系樹脂)
粘着性樹脂(x1)として用い得るウレタン系樹脂としては、主鎖及び/又は側鎖に、ウレタン結合及び尿素結合の少なくとも一方を有する重合体であれば、特に制限されず、例えば、ポリオールと多価イソシアネート化合物とを反応して得られるウレタン系プレポリマー(α)や、当該ウレタン系プレポリマー(α)に対して、更に鎖延長剤を用いた鎖延長反応を行い得られるウレタン系ポリマー(β)等が挙げられる。
これらの中でも、本発明の一態様で用いるウレタン系樹脂としては、ポリオキシアルキレン骨格を有するウレタン系ポリマーを含むことが好ましい。
【0038】
ウレタン系樹脂の質量平均分子量(Mw)としては、好ましくは1万〜20万、より好ましくは1.2万〜15万、更に好ましくは1.5万〜10万、より更に好ましくは2万〜7万である。
【0039】
ウレタン系プレポリマー(α)の原料となるポリオールとしては、例えば、アルキレンジオール、ポリエーテル型ポリオール、ポリエステル型ポリオール、ポリカーボネート型ポリオール等のポリオール化合物が挙げられるが、ポリオールであれば特に限定はされず、2官能のジオール、3官能のトリオールであってもよい。
これらのポリオールの中でも、入手の容易性、反応性等の観点から、ジオールが好ましい。
【0040】
ジオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール等のアルカンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール等が挙げられる。なお、これらのジオールは、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらのジオールの中でも、さらに鎖延長剤との反応を行う場合、当該反応においてゲル化を抑制する観点から、質量平均分子量1000〜3000のグリコールが好ましい。
【0041】
ウレタン系プレポリマー(α)の原料となる多価イソシアネート化合物としては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
なお、多価イソシアネート化合物は、上述の芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、及び脂環式ポリイソシアネートから選ばれる化合物(ポリイソシアネート)の変性体であってもよい。具体的には、当該化合物のトリメチロールプロパンアダクト型変性体、当該化合物と水と反応させたビュウレット型変性体、当該化合物にイソシアヌレート環を含有させたイソシアヌレート型変性体であってもよい。
【0042】
これらの多価イソシアネート化合物の中でも、粘着性に優れたウレタン系ポリマーを得る観点から、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)及びこれらの変性体から選ばれる1種以上が好ましく、耐候性の観点から、HMDI、IPDI及びこれらの変性体から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0043】
ウレタン系プレポリマー(α)中のイソシアネート基含有量(NCO%)は、JIS K 1603に準じて測定された値において、好ましくは0.5〜12質量%、より好ましくは1〜4質量%である。
【0044】
鎖延長剤としては、水酸基及びアミノ基の少なくとも一方を2つ有する化合物、又は、水酸基及びアミノ基の少なくとも一方を3つ以上有する化合物が好ましい。
【0045】
水酸基及びアミノ基の少なくとも一方を2つ有する化合物としては、脂肪族ジオール、脂肪族ジアミン、アルカノールアミン、ビスフェノール、芳香族ジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
脂肪族ジオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール等のアルカンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレングリコールが挙げられる。
脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン等が挙げられる。
アルカノールアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、イソプロパノールアミン等が挙げられる。
ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールA等が挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、例えば、ジフェニルメタンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン等が挙げられる。
【0046】
水酸基及びアミノ基の少なくとも一方を3つ以上有する化合物としては、例えば、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等のポリオール、1−アミノ−2,3−プロパンジオール、1−メチルアミノ−2,3−プロパンジオール、N−(2−ヒドロキシプロピルエタノールアミン)等のアミノアルコール、テトラメチルキシリレンジアミンのエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0047】
(ポリイソブチレン系樹脂)
粘着性樹脂(x1)として用い得るポリイソブチレン系樹脂(以下、「PIB系樹脂」ともいう)は、主鎖又は側鎖にポリイソブチレン骨格を有する樹脂である。
【0048】
PIB系樹脂の質量平均分子量(Mw)としては、得られる粘着性組成物の凝集力を十分に得て、導電性粘着シートの粘着力の向上の観点、及び被着体の汚染を防止する観点から、好ましくは2万以上であり、さらに被着体に対する濡れ性や溶媒に対する溶解性の観点から、好ましくは3万〜100万、より好ましくは5万〜80万、更に好ましくは7万〜60万である。
【0049】
PIB系樹脂としては、例えば、イソブチレンの単独重合体であるポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレンの共重合体、イソブチレンとn−ブテンの共重合体、イソブチレンとブタジエンの共重合体、及びこれら共重合体を臭素化又は塩素化等したハロゲン化ブチルゴム等が挙げられる。
【0050】
なお、PIB系樹脂が共重合体である場合、イソブチレンに由来する構成単位が、全構成単位の中で一番多く含まれている。
本発明の一態様で用いるPIB系樹脂において、イソブチレンに由来する構成単位の含有量は、当該PIB系樹脂の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%、更に好ましくは95〜100質量%、より更に好ましくは98〜100質量%である。
これらのPIB系樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
これらの中でも、形成される粘着性導電層(X)の耐久性及び耐候性を向上させる観点から、重合した際に密な分子構造を有し、主鎖及び側鎖に重合性二重結合が存在しない、イソブチレンに由来する構成単位を多く含むものが好ましい。
本発明の一態様で用いるPIB系樹脂において、このような主鎖及び側鎖に重合性二重結合が存在しない、イソブチレンに由来する構成単位の含有量は、当該PIB系樹脂の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%、更に好ましくは95〜100質量%、より更に好ましくは98〜100質量%である。
【0052】
また、PIB系樹脂を用いる場合、質量平均分子量が高いPIB系樹脂と、質量平均分子量が低いPIB系樹脂とを併用することが好ましい。
より具体的には、本発明の一態様で用いるPIB系樹脂としては、質量平均分子量が27万〜60万のPIB系樹脂(p1)(以下、「PIB系樹脂(p1)」ともいう)と、質量平均分子量が5万〜25万のPIB系樹脂(p2)(以下、「PIB系樹脂(p2)」ともいう)とを併用することが好ましい。
質量平均分子量の高いPIB系樹脂(p1)は、得られる粘着性組成物から形成される粘着性導電層(X)の耐久性及び耐候性を向上させると共に、粘着力を向上させることに寄与する。
また、質量平均分子量の低いPIB系樹脂(p2)は、PIB系樹脂(p1)と良好に相溶して、適度にPIB系樹脂(p1)を可塑化させることができ、粘着性導電層(X)の被着体に対する濡れ性を高め、粘着物性、柔軟性等を向上させることに寄与する。
【0053】
PIB系樹脂(p1)の質量平均分子量(Mw)は、上記観点から、好ましくは27万〜60万、より好ましくは29万〜48万、更に好ましくは31万〜45万、より更に好ましくは32万〜40万である。
PIB系樹脂(p2)の質量平均分子量(Mw)は、上記観点から、好ましくは5万〜25万、より好ましくは8万〜23万、更に好ましくは14万〜22万、より更に好ましくは18万〜21万である。
【0054】
PIB系樹脂(p1)100質量部に対する、PIB系樹脂(p2)の含有割合は、好ましくは5〜55質量部、より好ましくは6〜40質量部、更に好ましくは7〜30質量部、より更に好ましくは8〜20質量部である。
PIB系樹脂(p2)の含有割合が5質量部以上であれば、PIB系樹脂(p1)を十分に可塑化させることができ、形成される粘着性導電層(X)の被着体に対する濡れ性を良好とすると共に、粘着力も向上させることができる。
一方、PIB系樹脂(p2)の含有割合が55質量部以下であれば、形成される粘着性導電層(X)の粘着力、保持力、及び耐久性を向上させることができる。
【0055】
(スチレン系樹脂)
粘着性樹脂(x1)として用い得るスチレン系樹脂は、スチレンに由来する構成単位を有する重合体である。
本発明の一態様で用いるスチレン系樹脂において、スチレンに由来する構成単位の含有量は、当該スチレン系樹脂の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%、更に好ましくは15〜35質量%である。
【0056】
スチレン系樹脂の質量平均分子量(Mw)は、導電性粘着シートの粘着力を向上させる観点から、好ましくは1万〜40万、より好ましくは2万〜30万、更に好ましくは2.5万〜20万である。
【0057】
スチレン系樹脂の軟化点としては、導電性粘着シートの粘着力を向上させる観点から、好ましくは80〜200℃、より好ましくは90〜160℃、更に好ましくは100〜140℃、より更に好ましくは105〜135℃である。
なお、本発明において、スチレン系樹脂の軟化点は、JIS K 2531に準拠して測定した値を意味する。
【0058】
スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体(以下、「SBS」ともいう)、スチレン−block−(エチレン−co−ブチレン)−block−スチレントリブロック共重合体(以下、「SEBS」ともいう)、スチレン−block−(エチレン−co−ブチレン)−blockジブロック共重合体(以下、「SEB」ともいう)、スチレン−ブタジエンジブロック共重合体、スチレン−イソプレンジブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体、スチレン−block−(ブタジエン−co−イソプレン)−blockジブロック共重合体、スチレン−block−(ブタジエン−co−イソプレン)−block−スチレントリブロック共重合体等や、これらの共重合体のカルボキシル変性体や、スチレンとα−メチルスチレン等の芳香族系ビニル化合物との共重合体等が挙げられる。
上記のスチレン系樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのスチレン系樹脂の中でも、SBS、SEBS、及びSEBが好ましく、SBS及びSEBSがより好ましい。
なお、当該スチレン系樹脂が共重合体である場合、共重合の形態は、特に限定されない。つまり、当該スチレン系樹脂としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0059】
(ポリエステル系樹脂)
粘着性樹脂(x1)として用い得るポリエステル系樹脂は、酸成分とジオール成分又はポリオール成分とを重縮合反応により得られる共重合体であり、当該共重合体の変性物も含まれる。
上記重縮合反応は、直接エステル化法、エステル交換法等の一般的なポリエステル化反応によって行われる。
なお、当該ポリエステル系樹脂の共重合の形態は、特に限定されない。つまり、当該ポリエステル系樹脂としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0060】
上記酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、α−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸又はこれらのエステル類、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデシレン酸、ドデカンジカルボン酸又はこれらのエステル類等の脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサヒドロ無水フタル酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。
【0061】
上記ジオール成分又はポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、2,2,3−トリメチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の脂肪族グリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式グリコール、ビスフェノールA等の芳香族グリコール等が挙げられる。
【0062】
なお、上記のポリエステル系樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
(ポリオレフィン系樹脂)
粘着性樹脂(x1)として用い得るポリオレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン等のオレフィン化合物に由来する構成単位を有する重合体である。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、及び線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレンと他のα−オレフィンとの共重合体、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体、エチレンとプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体、エチレンと他のエチレン性不飽和単量体との共重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アルキル(メタ)アクリレート共重合体等)等が挙げられる。
なお、当該ポリオレフィン系樹脂が共重合体である場合、共重合の形態は、特に限定されない。つまり、当該ポリオレフィン系樹脂としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0064】
上記のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等が挙げられる。
上記のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、ビニルアルコール等が挙げられる。
【0065】
これらのポリオレフィン系樹脂の中でも、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンとの共重合体、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体等のプロピレンに由来する構成単位を含むポリプロピレン系樹脂が好ましい。
なお、上記のポリオレフィン系樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
<炭素系フィラー(x2)>
粘着性導電層(X)の形成材料である粘着性組成物は、粘着性樹脂(x1)と共に、平均アスペクト比が1.5以上の炭素系フィラー(x2)を含む。
炭素系フィラー(x2)の平均アスペクト比が1.5未満であると、形成される粘着性導電層(X)の表面抵抗率が高くなる傾向があり、更に非粘着性導電層(Y)を設けた導電性粘着シートとしても、十分に表面抵抗率を低下させることが難しく、帯電防止性及び導電性が劣る。
炭素系フィラー(x2)の平均アスペクト比としては、形成される粘着性導電層(X)の表面抵抗率を低下させ、且つ粘着力を良好とする観点から、好ましくは2〜10000、より好ましくは3〜5000、より好ましくは4〜1000、更に好ましくは5〜500、更に好ましくは6〜400、より更に好ましくは10〜300である。
【0067】
本発明において、「アスペクト比」とは、対象となる炭素系フィラーの短辺の長さ(L)に対する長辺の長さ(H)の割合、つまり「長辺の長さ(H)/短辺の長さ(L)」より算出される値である。また、「平均アスペクト比」とは、対象となる炭素系フィラー10個の算出した当該「アスペクト比」の平均値である。
また、炭素系フィラー(x2)の長辺の長さ(H)とは、対象となる炭素系フィラーの高さ方向(長手方向)の長さを意味する。
一方、炭素系フィラー(x2)の短辺の長さ(L)とは、対象となる炭素系フィラーの高さ方向(長手方向)と直交する切断面において、当該断面が円又は楕円であれば、直径又は長径であり、当該断面が多角形であれば、当該多角形の外接円の直径を指す。
【0068】
炭素系フィラー(x2)の長辺の長さ(H)としては、好ましくは0.01〜2000μm、より好ましくは0.05〜1000μm、更に好ましくは0.07〜500μm、より更に好ましくは0.10〜100μmである。
なお、本発明において、任意に10個選択した炭素系フィラーの長辺の長さの平均値を、上記の「炭素系フィラー(x2)の長辺の長さ(H)」の値とみなすこともできる。
【0069】
炭素系フィラー(x2)の短辺の長さ(L)としては、好ましくは1〜1000nm、より好ましくは2〜750nm、より好ましくは3〜500nm、更に好ましくは5〜100nm、より更に好ましくは7〜50nmである。
なお、本発明において、任意に10個選択した炭素系フィラーの短辺の長さの平均値を、上記の「炭素系フィラー(x2)の短辺の長さ(L)」の値とみなすこともできる。
【0070】
炭素系フィラー(x2)の形状としては、例えば、柱状、筒状、錘状、繊維状、扁球状(真球度が通常0.7以下)、及びこれらを組み合わせた形状等が挙げられる。
これらの形状の中でも、良好な導電性を有する粘着性導電層(X)を形成する観点から、柱状の炭素系フィラー、筒状の炭素系フィラー、及び繊維状の炭素系フィラーから選ばれる1種以上が好ましい。
【0071】
粘着性組成物中の炭素系フィラー(x2)の含有量は、粘着性樹脂(x1)100質量部に対して、0.01〜15質量部であり、好ましくは0.02〜10質量部、より好ましくは0.30〜7.0質量部、より好ましくは0.40〜5.0質量部、更に好ましくは0.50〜4.5質量部、より更に好ましくは0.70〜3.8質量部である。
炭素系フィラー(x2)の含有量が0.01質量部未満であると、形成される粘着性導電層(X)の表面抵抗率が高くなる傾向があり、更に非粘着性導電層(Y)を設けた導電性粘着シートとしても、十分に表面抵抗率を低下させることが難しく、帯電防止性及び導電性が劣る。
一方、炭素系フィラー(x2)の含有量が15質量部を超えると、形成される粘着性導電層(X)の粘着力が低下する傾向にある。
なお、本発明の導電性粘着シートは、粘着性導電層(X)中の炭素系フィラー(x2)の含有量が少なくても、優れた帯電防止性及び導電性が発現されるため、炭素系フィラー(x2)を多く配合する必要はない。
【0072】
なお、粘着性組成物の全量(100質量%)に対する炭素系フィラー(x2)の含有量としては、上記観点から、通常0.01〜10質量%、好ましくは0.30〜7.0質量%、より好ましくは0.40〜5.0質量%、更に好ましくは0.50〜4.5質量%、より更に好ましくは0.70〜3.8質量%である。
【0073】
炭素系フィラー(x2)としては、例えば、カーボンナノ材料、カーボンブラック、ミルド炭素繊維、黒鉛等が挙げられるが、形成される粘着性導電層(X)の表面抵抗率を低下させ、且つ粘着力を良好とする観点から、カーボンナノ材料が好ましい。
カーボンナノ材料は、六員環配列構造を主構造とするグラファイトシートを含む物質からなるものであるが、グラファイト構造中にホウ素や窒素等の炭素以外の元素を含有していてもよく、カーボンナノ材料が他の物質を内包している形態であってもよく、さらに、カーボンナノ材料が他の導電性物質に修飾されている形態であってもよい。
【0074】
カーボンナノ材料としては、例えば、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、フラーレン等が挙げられ、カーボンナノチューブが好ましい。
カーボンナノチューブは、炭素6員環構造を主構造とするグラファイト(黒鉛)シートが円筒状に閉じた構造を有する筒状の炭素多面体である。
カーボンナノチューブには、1層の黒鉛シートが円筒状に閉じた構造を有する単層カーボンナノチューブと、2層の黒鉛シートが円筒状に閉じた構造を有する二層カーボンナノチューブと、黒鉛シートが3層以上同心筒状に閉じた多層構造を有する多層カーボンナノチューブとがあり、これらのうちのいずれか2つ以上を併用することもできる。
【0075】
<架橋剤>
粘着性導電層(X)の形成材料である粘着性組成物には、更に架橋剤を含有してもよい。
特に、粘着性樹脂(x1)として、上述のアクリル系樹脂(特に、上述の構成単位(a2)を有するアクリル系共重合体)を用いる場合には、形成される粘着性導電層(X)の粘着力を向上させる観点から、架橋剤を含有することが好ましい。
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アミン系架橋剤、アミノ樹脂系架橋剤等が挙げられる。これらの架橋剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、導電性粘着シートの粘着力を向上させる観点から、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0076】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、リジンイソシアネート等の多価イソシアネート化合物が挙げられる。
また、多価イソシアネート化合物は、上記化合物のトリメチロールプロパンアダクト型変性体、水と反応させたビュウレット型変性体、イソシアヌレート環を含むイソシアヌレート型変性体であってもよい。
【0077】
架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(x1)100質量部に対して、好ましくは0.01〜15質量部、より好ましくは0.05〜10質量部、更に好ましくは0.1〜5質量部である。
【0078】
<粘着付与剤>
粘着性導電層(X)の形成材料である粘着性組成物は、更に粘着付与剤を含有してもよい。
特に、粘着性樹脂(x1)として、上述のウレタン系樹脂、PIB系樹脂、及びスチレン系樹脂を用いる場合には、形成される粘着性導電層(X)の粘着力を向上させる観点から、粘着付与剤を含有することが好ましい。
なお、この粘着付与剤の質量平均分子量(Mw)は、通常1万未満であり、上述の粘着性樹脂(x1)とは区別されるものである。
粘着付与剤の質量平均分子量(Mw)は、形成される粘着性導電層(X)の粘着力を向上させる観点から、好ましくは400〜4000、より好ましくは800〜1500である。
【0079】
粘着付与剤の軟化点としては、好ましくは110℃以上、より好ましくは110〜180℃、更に好ましくは115〜175℃、より更に好ましくは120〜170℃である。
なお、本発明において、粘着付与剤の「軟化点」は、JIS K 2531に準拠して測定した値を意味する。
【0080】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン樹脂、ロジンフェノール樹脂、及びそのエステル化合物等のロジン系樹脂;これらロジン系樹脂を水素化した水素化ロジン系樹脂;テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール系樹脂等のテルペン系樹脂;これらテルペン系樹脂を水素化した水素化テルペン樹脂;石油ナフサの熱分解で生成するペンテン、イソプレン、ピペリン、1.3−ペンタジエン等のC5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂及びこのC5系石油樹脂の水素化石油樹脂;石油ナフサの熱分解で生成するインデン、ビニルトルエン、α−又はβ−メチルスチレン等のC9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂及びこのC9系石油樹脂を水素化石油樹脂;等が挙げられる。
なお、本発明において、粘着付与剤は、単独で又は軟化点や構造が異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
粘着付与剤の含有量は、粘着性樹脂(x1)100質量部に対して、好ましくは1〜200質量部、より好ましくは5〜160質量部、更に好ましくは10〜120質量部である。
なお、粘着性樹脂(x1)がアクリル系樹脂を含む場合、当該粘着付与剤の含有量は、アクリル系樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは5〜50質量部、更に好ましくは10〜40質量部である。
粘着性樹脂(x1)がウレタン系樹脂を含む場合、当該粘着付与剤の含有量は、ウレタン系樹脂100質量部に対して、好ましくは5〜200質量部、より好ましくは40〜160質量部、更に好ましくは80〜120質量部である。
粘着性樹脂(x1)がPIB系樹脂を含む場合、当該粘着付与剤の含有量は、PIB系樹脂100質量部に対して、好ましくは5〜100質量部、より好ましくは10〜80質量部、更に好ましくは15〜40質量部である。
粘着性樹脂(x1)がスチレン系樹脂を含む場合、当該粘着付与剤の含有量は、スチレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは5〜100質量部、より好ましくは15〜80質量部、更に好ましくは25〜60質量部である。
粘着性樹脂(x1)がポリエステル系樹脂を含む場合、当該粘着付与剤の含有量は、ポリエステル系樹脂100質量部に対して、好ましくは5〜100質量部、より好ましくは15〜80質量部、更に好ましくは25〜60質量部である。
粘着性樹脂(x1)がポリオレフィン系樹脂を含む場合、当該粘着付与剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、好ましくは5〜100質量部、より好ましくは15〜80質量部、更に好ましくは25〜60質量部である。
【0082】
<その他の添加剤>
粘着性導電層(X)の形成材料である粘着性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、一般的に、粘着性樹脂と共に使用される汎用添加剤を含有してもよい。
このような汎用添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填剤、防錆剤、顔料、染料、硬化剤、硬化助剤、触媒等が挙げられる。
これらの汎用添加剤を配合する場合、汎用添加剤のそれぞれの配合量は、粘着性樹脂(x1)100質量部に対して、好ましくは0.01〜6質量部、より好ましくは0.01〜2質量部である。
【0083】
粘着性導電層(X)の形成材料である粘着性組成物の全量(100質量%)中の粘着性樹脂(x1)と炭素系フィラー(x2)との合計含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。
【0084】
また、アクリル系樹脂を主成分とする粘着性樹脂(x1)を用いる場合、粘着性組成物の全量(100質量%)中の粘着性樹脂(x1)と炭素系フィラー(x2)との合計含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上である。
【0085】
ウレタン系樹脂を主成分とする粘着性樹脂(x1)を用いる場合、粘着性組成物の全量(100質量%)中の粘着性樹脂(x1)と炭素系フィラー(x2)との合計含有量は、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上であり、粘着性樹脂(x1)と炭素系フィラー(x2)と粘着付与剤との合計含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。
【0086】
PIB系樹脂を主成分とする粘着性樹脂(x1)を用いる場合、粘着性組成物の全量(100質量%)中の粘着性樹脂(x1)と炭素系フィラー(x2)との合計含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、粘着性樹脂(x1)と炭素系フィラー(x2)と粘着付与剤との合計含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。
【0087】
スチレン系樹脂を主成分とする粘着性樹脂(x1)を用いる場合、粘着性組成物の全量(100質量%)中の粘着性樹脂(x1)と炭素系フィラー(x2)との合計含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。
【0088】
なお、「ZZ系樹脂を主成分とする粘着性樹脂(x1)」との標記は、「粘着性樹脂(x1)に含まれる樹脂のうち、ZZ系樹脂の含有量が最も多い」ということを意味している。
当該記載における具体的なZZ系樹脂の含有量としては、粘着性樹脂(x1)の全量(100質量%)に対して、通常50質量%以上、好ましくは65〜100質量%、より好ましくは75〜100質量%、更に好ましくは85〜100質量%である。
【0089】
<粘着性導電層(X)の形成方法>
粘着性導電層(X)の形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法により製造することができ、例えば、下記方法(X−1)及び(X−2)が挙げられる。
・方法(X−1):粘着性組成物の有機溶媒の溶液を調製し、当該溶液を、後述の剥離シート上に公知の塗布方法により塗布し塗布膜を形成し、塗布膜を乾燥させて粘着性導電層(X)を形成する方法。
・方法(X−2):粘着性樹脂(x1)及び炭素系フィラー(x2)等を加熱混練してコンポジットを調製した後、当該コンポジットを公知の成形法によりシート状に成形して、粘着性導電層(X)を形成する方法。
【0090】
(方法(X−1))
方法(X−1)は、粘着性樹脂(x1)として、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、及びPIB系樹脂等を用いる場合に好適な形成方法である。
方法(X−1)において、使用する有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、トルエン、キシレン、n−プロパノール、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
なお、これらの有機溶媒は、粘着性樹脂(x1)の合成時に使用した有機溶媒をそのまま用いてもよい。
【0091】
方法(X−1)において、炭素系フィラー(x2)は、溶媒中に分散させた分散液の形態で、粘着性樹脂(x1)に対して配合することが好ましい。
炭素系フィラー(x2)を分散液の形態で配合することで、低粘度の状態で粘着性樹脂(x1)と混合することができるため、炭素系フィラー(x2)同士が近接しやすくなり、フィラーのネットワークが形成されることにより、形成される粘着性導電層(X)の表面抵抗率及び体積抵抗率が低下し易くなる。
炭素系フィラー(x2)の分散液の調製に用いる溶媒としては、水又は上述の有機溶媒が挙げられ、有機溶媒が好ましい。
炭素系フィラー(x2)の分散液の調製方法としては、例えば、溶媒中に炭素系フィラー(x2)を添加し、超音波等により振動を一定時間与えて調製する方法等が挙げられる。
炭素系フィラー(x2)の分散液の固形分濃度としては、好ましくは0.01〜60質量%、より好ましくは0.05〜10質量%、更に好ましくは0.1〜3質量%である。
【0092】
方法(X−1)において、剥離シート上への粘着性組成物の溶液の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0093】
なお、剥離シート上に粘着性組成物の溶液を塗布し塗布膜を形成した後、乾燥処理をし、塗布膜中に含まれる溶媒を除去することが好ましい。
さらに、方法(X−1)においては、粘着力を向上させるために、当該乾燥処理の後の塗布層を、例えば、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で7日間〜30日程度静置して、塗布層内部を十分に架橋させることが好ましい。
【0094】
(方法(X−2))
方法(X−2)は、粘着性樹脂(x1)として、スチレン系樹脂等の加熱混練に耐久し得る樹脂を用いる場合に好適な形成方法である。
加熱混練装置としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロールミル、プラストミル、バンバリーミキサー、インターミックス、加圧ニーダー等が挙げられる。
当該加熱混練装置により得られたコンポジットを成形する方法としては、例えば、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法等が挙げられ、圧縮成形法が好ましい。
圧縮成形法の具体的な方法としては、調製したコンポジットを、2枚の剥離シートで挟み込み、ホットプレス機等により加熱圧縮することでシート状の粘着性導電層(X)を成形することができる。なお、2枚の剥離シートに代えて、基材と剥離シートとで調製したコンポジットを挟み込み、シート状の粘着性導電層(X)を成形してもよい。
【0095】
〔非粘着性導電層(Y)〕
本発明の導電性粘着シートが有する非粘着性導電層(Y)は、非粘着性(上述のプローブタックのピークトップの値が0.1N未満)の層であって、且つ、導電性(層単独の体積抵抗率(ρ
VX)が1.0×10
8Ω・cm以下)を有する層である。
【0096】
非粘着性導電層(Y)単独の表面抵抗率(ρ
SY)としては、表面抵抗率を効果的に低下させた導電性粘着シートとする観点から、好ましくは1.0×10
−2〜1.0×10
8Ω/□、より好ましくは1.0×10
−2〜1.0×10
7Ω/□、より好ましくは1.0×10
−2〜1.0×10
6Ω/□、更に好ましくは1.0×10
−2〜1.0×10
5Ω/□、更に好ましくは1.0×10
−2〜1.0×10
4Ω/□、より更に好ましくは1.0×10
−2〜1.0×10
3Ω/□である。
なお、本発明の一態様において、導電性粘着シートの表面抵抗率を効果的に低下させる観点から、非粘着性導電層(Y)単独の表面抵抗率(ρ
SY)は、粘着性導電層(X)単独の表面抵抗率(ρ
SX)よりも小さい値であることが好ましい。
【0097】
非粘着性導電層(Y)単独の体積抵抗率(ρ
VY)としては、表面抵抗率を効果的に低下させた導電性粘着シートとする観点から、好ましくは1.0×10
−4〜1.0×10
6Ω・cm、より好ましくは1.0×10
−4〜1.0×10
4Ω・cm、更に好ましくは1.0×10
−4〜1.0×10
3Ω・cm、更に好ましくは1.0×10
−4〜1.0×10
2Ω・cm、更に好ましくは1.0×10
−4〜1.0×10
1Ω・cm、より更に好ましくは1.0×10
−4〜1.0×10
0Ω・cmである。
なお、本発明の一態様において、導電性粘着シートの表面抵抗率を効果的に低下させる観点から、非粘着性導電層(Y)単独の体積抵抗率(ρ
VY)は、粘着性導電層(X)単独の体積抵抗率(ρ
VX)よりも小さい値であることが好ましい。
【0098】
非粘着性導電層(Y)の厚さ(t
Y)は、用途等に応じて適宜調整されるが、好ましくは0.01〜200μm、より好ましくは0.1〜160μm、更に好ましくは0.5〜130μm、より更に好ましくは1.0〜100μmである。
厚さ(t
Y)が0.01μm以上であれば、非粘着性導電層(Y)の表面抵抗率を効果的に低下させることができる。
一方、厚さ(t
Y)が200μm以下であれば、導電性粘着シートを巻回体とした際に、非粘着性導電層(Y)が変形することによる巻きズレや、巻回体の端部から非粘着性導電層(Y)がはみ出すといった弊害を抑制することができる。また、導電性粘着シートの総厚を小さくすることで、小型の電子機器に適用しやすい導電性粘着シートとすることができる。
【0099】
本発明において、非粘着性導電層(Y)は、導電性高分子、炭素系フィラー、及び金属酸化物からなる群より選ばれる1種以上の導電材料を含む層である。
非粘着性導電層(Y)は、これらの特定の導電材料を含む層であるため、粘着性導電層(X)の表面抵抗率を著しく低下させることができる。
なお、上記観点から、非粘着性導電層(Y)は、ポリチオフェン、PEDOT−PSS、カーボンナノ材料、及びITO(酸化インジウムスズ)からなる群より選ばれる1種以上の導電材料を含むことが好ましく、ポリチオフェン、PEDOT−PSS、及びカーボンナノ材料からなる群より選ばれる1種以上の導電材料を含むことがより好ましい。
【0100】
非粘着性導電層(Y)中に含まれる導電材料の密度としては、導電性粘着シートの軽量化の観点から、好ましくは0.8〜2.5g/cm
3、より好ましくは0.8〜2.0g/cm
3、更に好ましくは0.8〜1.7g/cm
3である。
以下、非粘着性導電層(Y)を構成する導電材料について説明する。
【0101】
<導電性高分子>
導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、PEDOT−PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸))、ポリアニリン、ポリピロール、ポリキノキサリン等が挙げられる。
これらの中でも、ポリチオフェン、及びPEDOT−PSSが好ましい。
【0102】
導電性高分子を含む非粘着性導電層(Y)は、導電性高分子と共に、非粘着性樹脂を含むことが好ましく、非粘着性樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、PIB系樹脂、及びスチレン系樹脂から選ばれる1種以上の非粘着性樹脂が好ましい。
導電材料として導電性高分子を用いる場合、導電性高分子の含有量は、非粘着性導電層(Y)の全量(100質量%)に対して、好ましくは4〜100質量%、より好ましくは8〜100質量%である。
【0103】
導電性高分子を含む非粘着性導電層(Y)の形成方法としては、特に制限は無く、例えば、導電性高分子を含む有機溶媒の溶液を調製し、当該溶液を、基材又は剥離シート上に公知の塗布方法により塗布し塗布膜を形成し、塗布膜を乾燥させて形成する方法が挙げられる。
当該方法に用いる有機溶媒の種類、及び溶液の塗布方法については、上述の粘着性導電層(X)の形成方法である「方法(X−1)」に関する記載と同様である。
【0104】
<炭素系フィラー>
炭素系フィラーとしては、上述の炭素系フィラー(x2)と同じものが挙げられ、カーボンナノ材料が好ましい。
炭素系フィラーを含む非粘着性導電層(Y)は、炭素系フィラーと共に、非粘着性樹脂を含むことが好ましく、非粘着性樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、PIB系樹脂、及びスチレン系樹脂から選ばれる1種以上の非粘着性樹脂が好ましい。
導電材料として炭素系フィラーを用いる場合、当該炭素系フィラーの含有量は、非粘着性導電層(Y)の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜15質量%、更に好ましくは1.0〜10質量%、より更に好ましくは2.0〜7質量%である。
【0105】
炭素系フィラーを含む非粘着性導電層(Y)の形成方法としては、特に制限は無く、例えば、炭素系フィラーの分散液と、非粘着性樹脂の有機溶媒の溶液とを混合して、樹脂組成物の溶液を調製した後、当該溶液を、基材又は剥離シート上に公知の塗布方法により塗布し塗布膜を形成し、塗布膜を乾燥させて形成する方法が挙げられる。
当該方法に用いる有機溶媒の種類、炭素系フィラーの分散液の調製方法、及び溶液の塗布方法については、上述の粘着性導電層(X)の形成方法である「方法(X−1)」に関する記載と同様である。
【0106】
また、炭素系フィラーを含む非粘着性導電層(Y)の形成方法としては、炭素系フィラーと非粘着性樹脂とを加熱混練してコンポジットを調製した後、当該コンポジットを公知の成形法によりシート状にして得る方法であってもよい。
当該方法に用いる加熱混練機、コンポジットの成形法については、上述の粘着性導電層(X)の形成方法である「方法(X−2)」に関する記載と同様である。
【0107】
<金属酸化物>
金属酸化物としては、ITO(酸化インジウムスズ)、ZnO(酸化亜鉛)、IZO(酸化亜鉛インジウム)、AZO(酸化亜鉛アルミニウム)、GZO(酸化亜鉛ガリウム)、IGZO(酸化インジウムガリウム亜鉛)、ATO(酸化スズアンチモン)等が挙げられる。
これらの中でも、ITO(酸化インジウムスズ)が好ましい。
また、導電材料として金属酸化物を用いる場合、非粘着性導電層(Y)は、当該金属酸化物のみからなる層であることが好ましい。
なお、金属酸化物を含む非粘着性導電層(Y)の形成方法としては、基材に対して蒸着により形成する方法が好ましい。
【0108】
〔基材〕
本発明の一態様の導電性粘着シートに用いる基材としては、導電性粘着シートの用途に応じて適宜選択されるが、絶縁性材料を含む絶縁性基材であってもよく、金属等の導電性材料を含む導電性基材であってもよい。
【0109】
本発明において、絶縁性基材とは、表面抵抗率が1.0×10
14Ω/□以上(好ましくは1.0×10
16Ω/□以上)の基材を指す。
絶縁性基材としては、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、グラシン紙等やこれらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙等の各種紙類;不織布等の多孔質材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂等からなるプラスチックフィルム又はシート;これらの樹脂の混合物からなるプラスチックフィルム又はシート;これらのプラスチックフィルム又はシートの積層体からなるプラスチックフィルム又はシート等が挙げられる。
なお、プラスチックフィルム又はシート等の基材は、未延伸でもよいし、縦又は横等の一軸方向あるいは二軸方向に延伸されていてもよい。
また、これらの絶縁性基材(特にプラスチックフィルム又はシート)は、さらに紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤等が含有されていてもよい。
【0110】
導電性基材としては、例えば、金属箔、金属箔を上述の絶縁性基材を形成する樹脂等でラミネートしたフィルム又はシート、上述の絶縁性基材の表面に金属蒸着処理を行ったフィルム又はシート、上述の絶縁性基材の表面に帯電防止処理を行ったフィルム又はシート、メッシュ状に金属線を編んだシート等が挙げられる。
なお、導電性基材に用いられる金属としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、金等が挙げられる。
【0111】
基材の厚さは、特に制限はないが、取り扱い易さの観点から、好ましくは10〜250μm、より好ましくは15〜200μm、更に好ましくは20〜150μmである。
【0112】
基材がプラスチックフィルム又はシートである場合、基材と非粘着性導電層(Y)との密着性を向上させる観点から、必要に応じて、基材の表面に対し酸化法や凹凸化法等の表面処理を施すことが好ましい。
酸化法としては、特に限定されず、例えば、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、クロム酸酸化(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。また、凹凸化法としては、特には限定されず、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選定されるが、非粘着性導電層(Y)との密着性の向上効果や操作性の観点から、コロナ放電処理法が好ましい。また、プライマー処理を施すこともできる。
【0113】
〔剥離シート〕
また、本発明の一態様の導電性粘着シートに用いる剥離シートとしては、両面剥離処理をされた剥離シートや、片面剥離処理された剥離シート等が用いられ、剥離シート用基材上に剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。
【0114】
剥離シート用基材としては、例えば、グラシン紙、コート紙、上質紙等の紙基材、これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、又はポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルム等が挙げられる。
剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0115】
剥離シートの厚さは、特に制限ないが、好ましくは10〜200μm、より好ましくは25〜150μmである。
【0116】
〔導電性粘着シートの製造方法、物性〕
本発明の一態様の導電性粘着シートは、上述の形成方法で形成した粘着性導電層(X)及び非粘着性導電層(Y)、並びに基材や剥離シートを適宜貼り合わせることで、製造することができる。
【0117】
本発明の一態様の導電性粘着シートが有する粘着性導電層(X)の表面に対するプローブタックのピークトップの値としては、好ましくは0.1N以上、より好ましくは0.1〜49N、更に好ましくは0.5〜49N、より更に好ましくは1.0〜49Nである。
なお、当該プローブタックのピークトップの値は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。また、当該プローブタックのピークトップの値は、導電性粘着シートの粘着力の指標となる物性値であって、当該値が大きいほど、高い粘着力を有している。
【0118】
本発明の一態様の導電性粘着シートが有する粘着性導電層(X)の表面側から測定した表面抵抗率(ρ
S)は、好ましくは9.0×10
4Ω/□以下、より好ましくは1.0×10
4Ω/□以下、更に好ましくは5.0×10
3Ω/□以下、より更に好ましくは2.0×10
3Ω/□以下である。
なお、上記の「導電性粘着シートが有する粘着性導電層(X)の表面側から測定した表面抵抗率」の値は、少なくとも粘着性導電層(X)及び非粘着性導電層(Y)が積層した本発明の導電性粘着シートの表出した粘着性導電層(X)の表面側から測定した表面抵抗率の値であり、上述の「粘着性導電層(X)単独の表面抵抗率(ρ
SX)」の値とは異なる。
【実施例】
【0119】
以下の実施例及び比較例で用いた各成分の物性、並びに、導電性粘着シート、粘着性導電層(X)、及び非粘着性導電層の各物性について、以下に記載の方法により測定した。
【0120】
<質量平均分子量(Mw)>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC−8020」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「TSK guard column HXL−H」、「TSK gel GMHXL(×2)」及び「TSK gel G2000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)を順次連結したもの。
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
【0121】
<炭素系フィラーのアスペクト比、長辺及び短辺の長さ>
走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、製品名「S−4700」)を用いて、無作為に抽出した炭素系フィラーの粒子10個を観察して、それぞれの長辺の長さ及び短辺の長さを測定し、炭素系フィラーの粒子10個の平均値を、そのフィラーの「長辺の長さ(H)」及び「短辺の長さ(L)」とした。また、アスペクト比(H/L)は、「長辺の長さ(H)/短辺の長さ(L)」より算出した。
【0122】
<軟化点>
JIS K 2531に準拠して測定した。
【0123】
<密度>
JIS Z 8807:2012に準拠して測定した。
【0124】
<プローブタック>
JIS Z0237(1991)に準拠して測定した。
具体的には、10mm×10mmの大きさの試験片を、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で24時間静置した後、当該試験片の測定対象の層の表面を表出させて、タッキング試験機(理学工業株式会社製、製品名「PROBE TACK TESTER」)を用いて、当該層の表面に対するプローブタック値を測定した。
なお、当該プローブタック値は、直径5mmのステンレス製プローブを1秒間、接触荷重0.98N/cm
2で、測定対象の層の表面に接触させた後、プローブを600mm/秒の速度で、当該表面から離すのに必要な力を、その層の表面のプローブタック値とした。
また、非粘着性導電層の表面に対しては、プローブタック値のピークトップを測定した。また、導電性粘着シートが有する粘着性導電層(X)の表面に対しては、プローブタック値のピークトップ及び積分値を測定した。
さらに、測定対象の層の表面に粘着性が無く、プローブタック値のピークトップが測定不能である場合は、当該ピークトップの値を「0(N)」とした。
【0125】
<表面抵抗率、体積抵抗率>
JIS K 7194に準拠して測定した。
具体的には、20mm×40mmの大きさの試験片を、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で24時間静置した後、当該試験片の測定対象の層の表面を表出させて、低抵抗率計(株式会社三菱化学アナリテック製、製品名「ロレスタGP MCP−T610型」)を用いて、表面抵抗率及び体積抵抗率を測定した。
表面抵抗率については上記測定を3回行い、体積抵抗率については上記測定を5回行い、表1及び2には、それぞれの測定で得た測定値の平均値を記載している。
【0126】
なお、粘着性導電層(X)単独の表面抵抗率及び体積抵抗率の測定では、粘着性導電層(X)のみが2枚の剥離シートに挟持された積層体を試験片として使用し、当該試験片の一方の剥離シートを除去して、表出した粘着性導電層(X)の表面に対して、これらの値を測定した。
また、非粘着性導電層単独の表面抵抗率及び体積抵抗率の測定では、非粘着性導電層付き基材を試験片として使用し、当該試験片の非粘着性導電層の表面に対して、これらの値を測定した。
さらに、導電性粘着シートの表面抵抗率の測定では、実施例及び比較例で作製した、基材、非粘着性導電層、粘着性導電層(X)、及び剥離シートがこの順で積層した導電性粘着シートを試験片として使用し、当該試験片の当該剥離シートを除去して、表出した粘着性導電層(X)の表面に対して、表面抵抗率の値のみを測定した。
【0127】
製造例1
(非粘着性導電層(Y−1)付き基材の作製)
基材として用いる、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ株式会社製、商品名「ルミラー」、表面抵抗率:1.18×10
18Ω/□)上に、ポリチオフェンの溶液(総研化学株式会社製、商品名「ベラゾール IW−103」)を、乾燥後の厚みが2.4μmとなるように塗布し塗布膜を形成し、当該塗布膜を乾燥させ、ポリチオフェンを含む非粘着性導電層(Y−1)付き基材を得た。
【0128】
製造例2
(非粘着性導電層(Y−2)付き基材の作製)
アクリル系水溶性ポリマー(荒川化学工業株式会社製、商品名「タマノリG−37」、ポリアクリル酸)100質量部(固形分)に対して、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT−PSS)の分散液(Agfa社製、商品名「Orgacon S305」)10質量部(固形分比)、及びエチレングリコール10質量部を含む溶液を調製した。
そして、製造例1で用いたものと同じPETフィルム上に、上記溶液を乾燥後の厚みが1.0μmとなるように塗布し塗布膜を形成し、当該塗布膜を乾燥させ、PEDOT−PSSを含む非粘着性導電層(Y−2)付き基材を得た。
【0129】
製造例3
(非粘着性導電層(Y−3)付き基材の作製)
スチレン系樹脂(クレイトン社製、商品名「1726M」、SEBS)100質量部(固形分)に対して、多層カーボンナノチューブ(CNT)(ナノシル社製、商品名「NC7000」、詳細は後述のとおり)10質量部(固形分比)を添加し、加熱混練機(株式会社東洋精機製作所製,製品名「30C150」)を用いて、100℃、50rpmの条件下で混練し、コンポジットを得た。
そして、上記のコンポジットを、製造例1で用いたものと同じPETフィルムと、厚さ75μmの剥離シート(リンテック株式会社製、商品名「SP−PET751031」)とで挟み込み、ホットプレス機(テスター産業株式会社製、製品名「SA−302」)を用いて、130℃、10MPaの条件下で10分間熱プレスした。熱プレス後に、剥離シートを除去し、厚さ100.0μmのSEBS及びCNT(10質量部)を含む非粘着性導電層(Y−3)付き基材を得た。
【0130】
本実施例及び比較例では、上述の製造例1〜3により作製した非粘着性導電層付き基材の他に、以下の非粘着性導電層付き基材も使用した。
・「ITOからなる非粘着性導電層(Y−A)付き基材」:商品名「ITO−ポリエチレンテレフタレート」(尾池工業株式会社製)。厚さ50μmのPETフィルム(表面抵抗率:1.18×10
18Ω/□)の片面上に、厚さ1.6μmのITO膜を蒸着したもの。
・「銅からなる非粘着性導電層(Y−B)付き基材」:商品名「ニカフレックス」(ニッカン工業株式会社製)。厚さ50μmのPETフィルム(表面抵抗率:1.18×10
18Ω/□)の片面上に、厚さ35.0μmの銅膜を接着剤で貼り合わせたもの。
・アルミニウムからなる非粘着性導電層(Y−C)付き基材:商品名「メタルミー#50」(東レフィルム加工株式会社製)。厚さ50μmのPETフィルム(表面抵抗率:1.18×10
18Ω/□)の片面上に、厚さ10.0μmのアルミニウム膜を蒸着したもの。
【0131】
本実施例及び比較例で使用する、非粘着性導電層付き基材の非粘着性導電層の各種物性は、表1のとおりである。
【0132】
【表1】
【0133】
実施例1〜15、比較例1〜8
(1)粘着性導電層(X)の形成
表2に示す種類及び配合量(粘着性樹脂100質量部(固形分)に対する固形分比)の炭素系フィラー(x2)を酢酸エチル中に添加し、超音波洗浄機で、超音波(42kHz、125W)による振動を1時間与えて、固形分濃度0.5質量%の炭素系フィラー(x2)の分散液を予め調製した。
次いで、表2に示す種類の粘着性樹脂(x1)100質量部(固形分)に、当該炭素系フィラー(x2)の分散液を加え、更に表2に示す種類及び配合量(固形分比)の架橋剤や粘着付与剤を必要に応じて添加した。その後、酢酸エチルで適宜希釈し、均一になるまで撹拌して、粘着性組成物の溶液を調製した。
そして、上記のとおり調製した粘着性組成物の溶液を、剥離シート(リンテック株式会社製、商品名「SP−PET381031」、厚さ:38μm、表面がシリコーン剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム)の剥離処理面上に塗布して塗布膜を形成し、乾燥させて、塗布層を形成した。
次いで、当該塗布層上に、上記と同じ種類の剥離シートを別途積層し、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下に14時間静置した後、塗布層を十分に架橋させ、表2に示す厚さの粘着性導電層(X)のみが2枚の剥離シートに挟持された積層体を得た。
(2)導電性粘着シートの作製
実施例1〜15及び比較例7〜8では、上記積層体の一方の剥離シートを除去して表出した粘着性導電層(X)と、表2に示す種類の非粘着性導電層付き基材の非粘着性導電層とを貼り合わせて、導電性粘着シートを作製した。
比較例1〜6では、上記積層体の一方の剥離シートを除去して表出した粘着性導電層(X)と、厚さ50μmのPETフィルム(東レ株式会社製、商品名「ルミラー」)とを貼り合わせて、導電性粘着シートを作製した。
【0134】
実施例16
(1)粘着性導電層(X)の形成
スチレン系樹脂(東洋アドレ株式会社製、商品名「P−907Y」、詳細は後述のとおり)100質量部(固形分)に対して、多層カーボンナノチューブ(CNT)(ナノシル社製、商品名「NC7000」、詳細は後述のとおり)を表2に示す配合量(固形分比)で添加し、加熱混練機(株式会社東洋精機製作所製,製品名「30C150」)を用いて、100℃、50rpmの条件下で混練し、コンポジットを得た。
そして、上記のコンポジットを、2枚の剥離シート(リンテック株式会社製、商品名「SP−PET751031」、厚さ:75μm)で挟み込み、ホットプレス機(テスター産業株式会社製、製品名「SA−302」)を用いて、130℃、10MPaの条件下で10分間熱プレスし、粘着性導電層(X)のみが2枚の剥離シートに挟持された積層体を得た。
(2)導電性粘着シートの作製
上記積層体の一方の剥離シートを除去して表出したスチレン系樹脂を含む粘着性導電層(X)と、非粘着性導電層(Y−2)付き基材の非粘着性導電層とを貼り合わせて、導電性粘着シートを作製した。
【0135】
表2に示された実施例及び比較例で用いた粘着性組成物中の各成分の詳細は、以下のとおりである。
(粘着性樹脂(x1))
・「アクリル系樹脂」:n−ブチルアクリレート(BA)及びアクリル酸(AA)からなるアクリル系ポリマーの酢酸メチル溶液、BA/AA=90.0/10.0(質量部)、Mw:70万、固形分濃度:33.6質量%。
・「ウレタン系樹脂」:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名「US−902A」、ウレタン系樹脂、Mw=56,000。
・「PIB系樹脂」:Mw34万のPIB系樹脂(BASF社製、商品名「オパノールB50」)90.9質量部(固形分比)、及び、Mw20万のPIB系樹脂(BASF社製、商品名「オパノールB30」)9.1質量部(固形分比)との混合樹脂。
・「スチレン系樹脂」:東洋アドレ株式会社製、商品名「P−907Y」、SEBS及びSEBを含有する混合樹脂、SEBS及びSEBの合計含有量=30質量%、軟化点=112℃。
【0136】
(炭素系フィラー(x2))
・「NC7000」:商品名、ナノシル社製、円筒状の多層カーボンナノチューブ、平均アスペクト比(H/L):150、長辺の長さ(H):1.5μm、短辺の長さ(L):10nm。
・「AMC」:商品名、宇部興産株式会社製、円筒状の多層カーボンナノチューブ、平均アスペクト比(H/L):100、長辺の長さ(H):1.1μm、短辺の長さ(L):11nm。
【0137】
(架橋剤)
・「コロネートL」:商品名、東ソー株式会社製、イソシアネート系架橋剤、固形分濃度:75質量%。
(粘着付与剤)
・「アルコンP−125」:商品名、荒川化学工業株式会社製、水素化石油樹脂、軟化点:125℃。
・「YSポリスターK125」:商品名、ヤスハラケミカル株式会社製、テルペンフェノール系樹脂、軟化点:125℃。
(他の成分)
・スチレン系樹脂として用いる「P−907Y」に含まれる(x1)成分以外の他の成分(粘着付与剤、可塑剤等)の混合物。
【0138】
以上のようにして作製した導電性粘着シートについて、上記方法に基づき測定した各種物性値を表2に示す。
【0139】
【表2】
【0140】
表2により、実施例1〜16の導電性粘着シートは、良好な粘着力を有すると共に、比較例1〜8の導電性粘着シートに比べて、表面抵抗率が低く、帯電防止性及び導電性に優れていることが分かる。