(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
昇降動作で開閉を行う可動柵とこの可動柵を支持し昇降させる固定柵とを備えた昇降式ホーム安全柵に対し、列車の進入停止時にはこの列車の速度情報に基づき前記可動柵の開動作を開始し、前記列車が停止する前に前記可動柵の開動作が完了し、前記列車の発車時には前記車両ドアが閉じたことおよび前記列車の発車動作を検知したことを条件にして前記可動柵の閉動作を開始するよう制御を行う制御手段を備え、この制御手段は、列車運行システムによる前記列車の進入停止および発車と車両ドアの開閉の各タイミングに対して、前記可動柵の開閉制御による遅延時間を短縮するように前記可動柵の開閉制御を行うことを特徴とする昇降式ホーム安全柵開閉システム。
前記速度検知手段は、前記列車の停止位置付近の区間に配置された2つの列車検知センサと前記制御手段の演算処理部とで構成され、前記制御手段の前記演算処理部は2つの前記列車検知センサの検知情報に基づき前記列車の区間速度を算出することを特徴とする請求項2記載の昇降式ホーム安全柵開閉システム。
【背景技術】
【0002】
駅のプラットホーム(「駅ホーム」または「ホーム」)では、近年、乗降客等の利用者が駅ホームから線路(軌道)に転落したり、ホーム線路に入線してきた列車(電車)と利用者が接触するのを防止するために、防護柵として、駅ホームの線路側の縁部に沿ってホーム安全柵が設けられつつある。ホーム安全柵としては、従来、種々の形式や構造がある。例えば、駅ホームに停車した列車の車両ドア(乗降ドア)に対応した位置に横開きホームドア装置を設置した腰高の高さを有する防護壁タイプ、または地下鉄のごとく駅ホームの線路側の縁部に沿って人の身長を超える高さまで全面的に壁を形成し、列車の車両ドアの位置に対応して横開き開閉ドアを設けた防護壁タイプ、または駅ホームの線路側の縁部に沿ってほぼ全域にわたって昇降自在なロープを配置して成る昇降式ロープ安全柵等(特許文献1)が存在する。ロープの代わりに長いバーやロッドを利用した安全柵もある。
上記のホーム安全柵は、基本的に、開閉動作を行う可動柵と、この可動柵を支持すると共に、当該可動柵を開閉駆動する駆動部を備えた固定柵とから構成されている。
【0003】
また下記の特許文献2や特許文献3に開示されるゲート構造を有したホーム安全柵も提案されている。
特許文献2のゲート装置は、例えばその
図4に示す正面形状(閉から開へ状態変化している。)を有し、駅ホームに停車した列車の複数の車両ドアの各位置に対応したゲート装置として駅ホームに設置されている。このゲート装置は、駅ホームの床面に固定された左右一対の固定支柱(11:この括弧内の番号は公報中で使用されている番号である。以下同じ)と、各固定支柱(11)に対して上下にスライドする可動支柱(12)とを備え、左右の可動支柱(12)の間に上側制止バー(13)と上下動する下側制止バー(14)を備えている。固定支柱とその関連部材が固定柵として機能し、可動支柱と制止バーから成る構造物が可動柵として機能する。
特許文献3に開示されるゲート装置も、
図2と
図5に示されるように、駅ホームに固定された左右一対の固定支柱(11)と、各固定支柱(11)に対して上下にスライドする左右一対の可動支柱(12)と、上側制止バー(13)と、上下動する下側制止バー(14)とから構成されている。
【0004】
さらに、上記の特許文献2,3に関連して、特許文献4に開示されるホーム安全柵も提案されている。このホーム安全柵は、可動柵と車両ドアの開閉動作(開閉タイミング)の制御および列車の発車制御(列車の運行制御)に関するものである。このホーム安全柵の開閉制御等では、列車が駅ホームで停車している時間を短縮し、列車の運行遅れを低減することを目的とする。そのため、このホーム安全柵の開閉制御等によれば、列車の進入停止時には、列車停止後において可動柵が開動作する途中で車両ドアの開動作を開始するように制御すると共に、列車の発車時には車両ドアの閉動作を完了した後に可動柵を閉動作させ、さらに可動柵の閉動作の途中で列車を発車させるように制御する。つまり、列車の進入停止時には可動柵の開動作の完了を待つことなく車両ドアを開動作させ、列車の発車時には可動柵の閉動作の完了を待つことなく列車を発車させ、これにより列車の駅ホームでの停車時間を短縮するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献4に記載されたホーム安全柵の開閉制御等の場合には、車両ドア付近の利用者等の接触の危険度合いに着目してその安全性を確保できるという観点から、列車の進入停止時には可動柵の開動作の完了を待つことなく車両ドアを開動作するように制御し、列車の発車時には可動柵の閉動作の完了を待つことなく列車を発車させるように制御することにより、遅延時間の短縮を図るものである。
しかしながら、旅客乗降後の列車発車時における車両ドア付近の利用者の危険度合いについて取り残しリスクを含めて総合的に考慮すると、可動柵を下降させることなく上昇させたままの状態で車両ドアの開閉を行う方がより安全性を確保できるという知見を得た。そこで、可動柵を上昇させたままの状態で、車両ドアの開閉動作を開始し、併せて列車の発車の制御を行い、これにより駅ホームでの列車の停車時間をよりいっそう短縮し、列車の運行遅れをさらに低減することが求められる。また列車の進入停止時においても、停止前の列車速度が十分に遅くなった状態では可動柵の開動作を開始しても十分に安全性を確保することができる。
【0007】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、昇降動作に基づき開閉を行う可動柵と、可動柵を支持し昇降駆動させる固定柵とを備えた昇降式ホーム安全柵に適用され、可動柵の昇降(開閉)タイミングと列車の進入停止および発車のタイミングと車両ドアの開閉タイミングを安全性の観点からより適切に制御し、列車の運行上の遅延時間をより低減しかつ利用者の安全性をより高めた昇降式ホーム安全柵開閉システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る昇降式ホーム安全柵開閉システムは、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0009】
第1の昇降式ホーム安全柵開閉システム(請求項1に対応)は、昇降動作で開閉を行う可動柵とこの可動柵を支持し昇降させる固定柵とを備えた昇降式ホーム安全柵に対し、列車の進入停止時にはこの列車の速度情報に基づき可動柵の開動作を開始し、列車が停止する前に可動柵の開動作が完了し、列車の発車時には車両ドアが閉じたことおよび列車の発車動作を検知したことを条件にして可動柵の閉動作を開始するよう制御を行う制御手段を備え、この制御手段は、列車運行システムによる列車の進入停止および発車と車両ドアの開閉の各タイミングに対して、可動柵の開閉制御による遅延時間を短縮するように可動柵の
開閉制御を行うことを特徴とする。
【0010】
上記の昇降式ホーム安全柵開閉システムでは、昇降式ホーム安全柵の開閉動作が昇降動作によって行われることから、横開きの車両ドアの開閉動作との関係において、動作完了のための待ち時間に基づく遅延時間が生じやすい。そこで、列車の進入停止時には列車が停止する以前に可動柵の開動作を完了させたり、列車の発車時には車両ドアが閉じた後に列車の発車を優先しその後に可動柵の閉動作を行うことにより、必要な安全性を最低限確保しながら、可能な限り待ち時間を短縮し、遅延時間を低減する。
【0011】
第2の昇降式ホーム安全柵開閉システム(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、ホーム線路に進入し減速する列車の速度を検知する速度検知手段を備え、制御
手段は、速度検知手段が検知した列車の速度が所定速度以下になったとき、固定柵の昇降駆動部に対して可動柵を開動作させる開信号を与えることを特徴とする。この構成では、列車の進入停止時において列車の速度を検知することにより、停止状態に到る走行状態であるか否かを判定し、停止する場合には列車停止時の直前の低速走行状態で可動柵の上昇動作を開始し、停止時には上昇動作を完了するように制御を行う。従って、従来のように、列車の停止を待って昇降式ホーム安全柵の開動作を行わないので、待ち時間に起因する遅延時間を短縮することができる。
【0012】
第3の昇降式ホーム安全柵開閉システム(請求項3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、ホーム線路から動き出した列車の所定位置通過を検知する位置検知手段を備え、制御手段は、位置検知手段
から出力される検知信号に基づいて前記列車の発車動作を検知したとき、固定柵の昇降駆動部に対して可動柵を閉動作させる閉信号を与えることを特徴とする。この構成では、列車の発車時において列車の後尾車両等の移動位置を検知することにより、車両ドアの閉動作後には昇降式ホーム安全柵の閉動作を行うことなく列車の発車を優先し、さらに当該列車の発車動作を利用してその後に昇降式ホーム安全柵の閉動作を行うように制御を行う。従って、昇降式ホーム安全柵の閉動作を待って列車を発車しなくてもよいので、待ち時間に起因する遅延時間を短縮することができる。
【0013】
第4の昇降式ホーム安全柵開閉システム(請求項4に対応)は、上記の構成において、好ましくは、速度検知手段は、列車の停止位置付近の区間に配置された2つの列車検知センサと制御手段の演算処理部とで構成され、制御手段の演算処理部は2つの列車検知センサの検知情報に基づき列車の区間速度を算出することを特徴とする。この構成では、所定の区間に配置された2つの列車検知センサの各々の検知信号の時間差を利用して当該区間における速度を算出することができる。
【0014】
第5の昇降式ホーム安全柵開閉システム(請求項5に対応)は、上記の構成において、好ましくは、位置検知手段は、列車の後端部位置を基準にして所定位置通過を検知することを特徴とする。この構成では、位置検知手段の監視範囲内に含まれていた列車の後端部の移動を検知して、列車の存在の有無を確認し、列車の位置通過を検知することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、次の効果を奏する。
昇降動作で開閉する可動柵とこの可動柵を支持し昇降させる固定柵とを備えた昇降式ホーム安全柵において、駅ホームに列車が進入し減速走行して停止する場合に、可動柵の上昇動作と列車の進入停止と車両ドアの開動作の各タイミングを適切に制御するようにしたため、待ち時間に起因する遅延時間を短縮することができ、さらに利用者の安全性も高く保持することができる。また上記の昇降式ホーム安全柵において駅ホームに停止中の列車が車両ドアの閉動作後に発車を行う場合に、列車の発車動作のタイミングと可動柵の下降動作のタイミングを適切に制御するようにしたため、待ち時間に起因する遅延時間を短縮することができ、同時に列車の発車動作の初期時に起きやすい取り残しリスクに関して、可動柵は上方位置にあるので、迅速に対処でき、利用者の安全性も確実に保持することができる。
駅ホームにおける列車の進入停止から列車の発車までの時間について、全体の遅延時間を低減することができるので、全体として待ち時間を短縮でき、列車の運行遅れを改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
図1に昇降式ホーム安全柵の一例を部分的に示す。
図1では基本となる単位構成の柵部分を示している。単位構成となる柵部分を、以下の説明では「昇降式ホーム安全柵」と呼ぶ。この昇降式ホーム安全柵10は、
図1中、左側に設置される端部ポスト11と、
図1中右側に設置される中央部ポスト12と、端部ポスト11と中央部ポスト12の間に設置される例えば2つのスルーポスト13を備える。端部ポスト11、中央部ポスト12、スルーポスト13の間にはロープ14が架け渡されている。これらのポストは、例えば列車(電車)の一車両分(約20m)程度の相対的に長いロープ14を支持または保持し、かつロープ14を昇降させる支柱としての機能を有している。
図1で示した例では、ロープ14は、上下方向に配置された例えば4本の平行なロープによって構成されている。なおロープ14は長いので、
図1中では一部をカットして示している。図示例では4本のロープ14を示しているが、ロープ14の本数は任意である。端部ポスト11、中央部ポスト12、スルーポスト13は、駅ホーム15の床面に固定され、かつ駅ホーム15のホーム縁に沿って所要の間隔で設置されている。端部ポスト11はそのポスト筐体から右側の一方向へロープ14が引き出されている。中央部ポスト12は両側にロープ14が引き出されている。中央部ポスト12から右側へ引き出されるロープ14は、隣りの図示しない他のスルーポスト等に引き延ばされる。スルーポスト13もロープ14を挿通させる構造を有し、両側にロープ14が引き出され、かつ基本的にテンションをかけながらロープ14を保持する機能を有している。
【0019】
図1の(A)は、各ポスト11,12,13の伸縮機能の縮み動作に基づいてロープ14が下方位置に移動し昇降式ホーム安全柵10が閉じた状態にある場合を示す。すなわち、昇降式ホーム安全柵10は、可動柵であるロープ14が下降し、閉動作を行った場合である。
図1の(B)は、各ポスト11,12,13の伸縮機能の伸び動作に基づいてロープ14が上方位置に移動し昇降式ホーム安全柵10が開いた状態にある場合を示す。すなわち、昇降式ホーム安全柵10は、可動柵であるロープ14が上昇し、開動作を行った場合である。
【0020】
駅ホーム15に列車がいない場合、または、列車が駅ホーム15に進入し停止する前の設定された時間帯の場合には、
図1(A)に示すごとく、昇降式ホーム安全柵10はロープ14を下降し閉じた状態になっている。ロープ14が下降したとき、ロープ14は乗降客等の利用者の移動を阻止する位置になる。これによりロープ14で利用者が駅ホーム15から線路へ転落したり、列車に接触するのを防止する。またロープ14が下降したとき、好ましくは4本のロープの間隔は広くなり、利用者の移動を阻止する働きを高める。
【0021】
また、駅ホーム15に列車が停止し列車の各車両ドアが開いて旅客等の利用者が乗降する場合には、
図1(B)に示すごとく、昇降式ホーム安全柵10は、各ポスト11,12,13に内蔵される昇降部11−1,12−1,13−1を上昇させることでロープ14を上昇させ開いた状態になっている。本発明に係る昇降式ホーム安全柵10の開閉システムによる開閉タイミングの制御によれば、後述するように、駅ホーム15に進入した列車が駅ホーム15に停止する前の所定時間の範囲内でロープ14の上昇を開始しかつ完了するよう制御される。ロープ14が上方位置に上昇したとき、ロープ14は利用者の移動阻止を解除する位置になる。ロープ14が上昇したとき、好ましくは4本のロープの間隔は狭くなり、一番下のロープが十分に上方に移動して利用者の移動阻止解除の働きを高める。一番下のロープは、列車の車両ドアの高さよりも高い位置に上昇する。
【0022】
図2の(A)と(B)は、駅ホーム15に昇降式ホーム安全柵10を設置した例であって、列車の運行状態と昇降式ホーム安全柵10の開閉動作例を示している。昇降式ホーム安全柵10は、駅ホーム15のホーム縁に沿ってその全体に渡って設置されている。
図2(A)は、昇降式ホーム安全柵10の下降動作例(閉状態)を示し、列車が駅ホーム15の線路に進入し始めた状態を示している。
図2(B)は、昇降式ホーム安全柵10の上昇動作例(開状態)を示し、駅ホーム15に進入した列車が停止した状態を示している。
【0023】
図2(A)では、列車16が駅ホーム15の線路に進入してD1方向へ減速走行中の状態を示す。図示された列車車両は先頭車両である。列車16は、一車両が4つの乗降用車両ドア16Aを有し、複数の車両で構成されている。端部ポスト11、中央部ポスト12、2つのスルーポスト13が駅ホーム15のホーム縁15aに沿って設置され、それらの間にロープ14が架け渡されている。端部ポスト11、中央部ポスト12、2つのスルーポスト13、およびロープ14によって構成された昇降式ホーム安全柵10は、列車16の一車両分に対応して設置されている。一車両分に対応する昇降式ホーム安全柵10の開閉動作(ロープ昇降動作)は一車両分ごとの単位で制御することができる。昇降式ホーム安全柵10は、列車16の車両数に応じた数だけ設置されている。
図2(A)に示すように、列車16が駅ホーム15の線路に進入してD1方向へ減速走行している状態のときには、昇降式ホーム安全柵10のロープ14(可動柵)は下降しており、閉じた状態にある。
【0024】
図2(B)では、駅ホーム15の線路に進入した列車16が減速し、定められた停止位置で停止した状態を示す。図示された列車車両は後尾車両である。列車16が停止する前の時点で、前述した昇降式ホーム安全柵10のロープ14(可動柵)の上昇動作が開始され、かつ列車16が停止した時点ではロープ14の上昇動作は完了しており、開いた状態にある。すなわち、列車16が駅ホーム15に停止する前の段階で、所定条件の検知の下で、昇降式ホーム安全柵10はロープ14の上昇動作を開始し、列車16の停止する前にロープ14の上昇動作を完了するように制御される。
【0025】
図1と
図2に示した昇降式ホーム安全柵10について、駅ホーム15の床面に設置された端部ポスト11、中央部ポスト12、スルーポスト13は「固定柵」として機能し、これらのポストに内蔵されかつ駆動部(図示せず)によって昇降する昇降部11−1,12−1,13−1およびこれらの昇降部で保持されるロープ14は「可動柵」として機能する。
【0026】
また、本発明に係る昇降式ホーム安全柵開閉システムが適用される昇降式ホーム安全柵は、
図1と
図2に示した昇降式ホーム安全柵10には限定されない。本発明に係る昇降式ホーム安全柵開閉システムは、列車16の各車両の車両ドア16A毎に対してゲート装置として設けられ、かつロープ以外の規制手段を利用して成り、固定柵と可動柵を備える各種の昇降式ホーム安全柵に対しても適用することができる。固定柵と可動柵から成る構造部分は、上記の伸縮動作の構造には限定されず、任意の構造を有するものを対象とすることができる。
【0027】
図3では、上述した端部ポスト11、中央部ポスト12、スルーポスト13の各ポストに関する共通の伸縮動作の構成例を示している。
図3の(A)はポストが縮んだ状態(下降動作)を示し、(B)はポストが伸びた状態(上昇動作)を示している。
図3では、端部ポスト11、中央部ポスト12、スルーポスト13を、基本的な構造(入れ子構造、釣り竿構造、繰出し型アンテナ構造等)の観点から共通化して、ポスト21として示している。ポスト21は、駅ホーム15のホーム縁15aに沿ってその床面に固定状態で設置されている。ポスト21は、床面に固定される固定部22と、固定部22内に形成された内部空間22aに収納されかつ当該内部空間22a内において昇降自在に設けられた昇降部23とから構成されている。固定部22が「固定柵」に対応し、昇降部23およびこれに支持されるロープ14が「可動柵」に対応する。固定部22の内部空間22aは、下降した昇降部23を収容するための空間であり、上端が開口されている。
図3の(A)に示すように、昇降部23が下降したときには、固定部22の内部空間22aに収容されている。このときポスト21の高さは例えばほぼ腰高程度の高さとなり、ポスト21自体が昇降式ホーム安全柵10の防護壁として機能する。ポスト21で昇降部23が上昇するときには、
図3の(B)に示すように、固定部22の内部空間22aの上端開口部22bからせり出し、上昇し、昇降式ホーム安全柵10を開状態にするための必要な高さに移動する。ポスト21には昇降部23を昇降させる駆動部が設けられている。昇降部23は、
図1や
図2を参照して説明した通りロープ14を支持しているので、固定部22の側面には昇降部23と共に昇降するロープ14を挿通させるスリット状のロープ挿通部22cが形成されている。
【0028】
図4を参照して、前述した昇降式ホーム安全柵10に装備される開閉システムのシステム構成を説明する。
【0029】
図4では、昇降式ホーム安全柵10は、
図3で説明したポスト21を利用して構成された基本構成を用いて概念的に示している。支柱の構造はポスト21に限定されない。昇降式ホーム安全柵10は、一対のポスト21と、2つのポスト21の間に設けられたロープ14とから構成される。一対のポスト21の各々は、駅ホーム15の床面に固定された固定部22(固定柵)と、この固定部22に対して昇降自在に設けられた昇降部23およびロープ14(可動柵)とから構成される。各ポスト21には、昇降部23を昇降駆動する駆動部21Aが設けられている。外部から与えられる開制御信号S1に基づき駆動部21Aが昇降部23を上昇駆動すると、昇降式ホーム安全柵10の可動柵が開動作を行う。また外部から与えられる閉制御信号S2に基づき駆動部21Aが昇降部23を下降駆動すると、昇降式ホーム安全柵10の可動柵が閉動作を行う。
【0030】
上記の昇降式ホーム安全柵10に対して、ポスト21の駆動部21Aの駆動動作を制御する制御装置31が設けられる。制御装置31は、第1検知系40から出力された検知信号に基づき所定条件を満たすと判断したときには駆動部21Aに対して開制御信号S1を出力する。また制御装置31は、第2検知系50から出力された検知信号に基づき所定条件を満たすと判断したときには駆動部21Aに対して閉制御信号S2を出力する。
【0031】
第1検知系40は、列車運行システム32に基づいて運行制御される列車16が駅ホーム15の線路に進入し減速して停止しようとするとき、これを監視し、列車16の停止位置33の直前における所定区間での当該列車16の速度を求めるための検知信号を出力するという働きを有している。制御装置31では、第1検知系40から出力される検知信号に基づいて所定区間での列車16の速度(時速)を算出し、当該速度が例えば23Km/hである場合には上記の開制御信号S1を出力する。すなわち、駅ホーム15に入線した列車16が停止位置33で停止する前の段階で、昇降式ホーム安全柵10の可動柵を開動作させるための開制御信号S1を与えて開動作(上昇動作)を開始し、かつ列車16が停止位置33で停止する前の時点で可動柵の開動作(上昇動作)を完了するように制御が行われる。
【0032】
第2検知系50は、列車運行システム32に基づいて運行制御される列車16が、車両ドア16Aの閉動作が完了したことを条件に発車動作を開始したとき、この動きを列車16の後端部等で監視し、後端部等が所定位置を通過したこと(第2検知系50が列車非検知状態になること)を判断するための検知信号を出力するという働きを有している。制御装置31では、第2検知系50から出力される検知信号の状態に基づいて、列車16の後端部等が所定位置を通過した場合には上記の閉制御信号S2を出力する。すなわち、駅ホーム15に停止した列車16で旅客等の乗降が終了し車両ドア16Aが閉じた場合において列車16の発車を優先的に行い、列車16の後端部等が所定位置を通過した場合には、その後に昇降式ホーム安全柵10の可動柵を閉動作させるための閉制御信号S2を与えて閉動作(下降動作)を行うように制御が行われる。
【0033】
次に、
図5を参照して、上記の昇降式ホーム安全柵開閉システムに基づいて実行される昇降式ホーム安全柵10の開閉制御の流れを説明する。
この開閉制御に関連して、先ず、昇降式ホーム安全柵10の昇降(開閉)の動作、駅ホーム15での列車16の進入停止および発車の動作、車両ドア16Aの開閉動作の各内容と、それぞれの関係(動作タイミング)とを
図6を参照して説明する。なお
図6では、「列車の進入停止時」に関連する状態(A)と「列車の発車時」に関連する状態(B)とに分けて示している。
【0034】
図6の(1)は、昇降式ホーム安全柵10の昇降(開閉)の動作を示す。固定部22(固定柵)に対して昇降部23が下降し下方位置に移動すると、可動柵が下降し、昇降式ホーム安全柵10は閉状態になる((A)に示す状態)。固定部22(固定柵)に対して昇降部23が上昇し上方位置に移動すると、可動柵が上昇し、昇降式ホーム安全柵10は開状態になる((B)に示す状態)。昇降式ホーム安全柵10は、可動柵が適時なタイミングで昇降動作を繰り返すことにより、開閉動作を繰り返す。
【0035】
図6の(2)は、列車16(先頭車両)が駅ホーム15に進入し減速走行して停止しようとする状態((A)に示す状態)と、駅ホーム15に停止した列車16(後尾車両)が発車を開始する状態((B)に示す状態)とを示す。状態(A)では、停止線33の直前において、列車16は所定の速度に減速された状態にある。状態(B)では、発車を開始した列車16はゆっくりと動き出し、次第に加速される。
【0036】
図6の(3)は、走行中の列車16、または駅ホーム15に停止した列車16においてその車両ドア16Aの開閉動作を示す。車両ドア16Aは横開きで開閉動作を行う。車両ドア16Aでは、適時なタイミングで、左右の扉がそれぞれ接近するように移動して閉動作を行い((A)に示す状態)、または左右の扉がそれぞれ左と右に移動して開動作を行う((B)に示す状態)。
【0037】
上記の
図6の(1),(2),(3)において、状態(A)と状態(B)は原則的に対応している。すなわち、状態(1)については、列車16が駅ホーム15に進入し減速走行して停止しようとする段階では、事前に設定された時間範囲では昇降式ホーム安全柵10は閉動作の状態にあり、列車16の車両ドア16Aは閉じた状態にある。ただし、列車16の停止位置の直前の所定区間にて列車16の速度が所定速度以下となった場合には、昇降式ホーム安全柵10は開動作を開始する。他方、状態(2)については、列車16が駅ホーム15に停止し旅客の乗降を行っている場合には、昇降式ホーム安全柵10は開状態にあり、車両ドア16Aは開いた状態にある。ただし、旅客の乗降が終了し、車両ドア16Aの閉動作が完了すると、昇降式ホーム安全柵10が開状態のままで、列車16の発車が開始される。
【0038】
図6の(1)〜(3)で説明した昇降式ホーム安全柵10の昇降(開閉)動作、駅ホーム15での列車16の進入停止および発車の動作、車両ドア16Aの開閉動作の関係を踏まえて、
図5に示した昇降式ホーム安全柵開閉システムに基づく開閉制御の流れを説明する。なお
図5では、前述の通り、開閉制御の一連の流れを、「列車の進入停止時」の場合の開閉制御の流れ(A)と、「列車の発車時」の開閉制御の流れ(B)とに分けて示している。
【0039】
最初の開閉制御の流れ(A)は「列車の進入停止時」の場合である。最初のステップS11では、列車16が駅ホーム15の線路に進入し減速走行して停止しようとする状態において、ロープ14が下降動作し下方位置にあって昇降式ホーム安全柵10は閉状態にある。列車16は減速状態であっても、相対的に速い速度で走行しているので、昇降式ホーム安全柵10は閉状態に保持される。駅ホーム15では、列車16の移動方向(D1)における先端側の列車の停止位置33の手前側の所定位置(所定区間)に第1検知系40が配置され、同じく列車16の移動方向における後端側の所定位置に第2検知系50が配置されている。駅ホーム15に列車16が進入すると、最初に第2検知系50が列車16の存在を検知し、次に列車16が列車停止位置33の近くまで走行すると、第1検知系40が列車16の存在を検知する。第1検知系40が出力する検知信号は、所定区間を移動する列車16の移動情報を含む信号であり、当該検知信号に基づいて列車16の速度を求めることが可能となる。第2検知系50が出力する検知信号は、その監視範囲内における列車16の存在を検知するための信号である。従って、駅ホーム15に列車16が停止している場合には、列車16は第2検知系50の監視範囲に存在し、列車16の存在を知らせる信号を出力し続ける。以上により、次のステップS12では、第1検知系40および第2検知系50の両方が、共に、列車16を検知した状態になっている。なお第1検知系40と第2検知系50の具体的構成については後述される。
【0040】
次のステップS13では、制御装置31は、第1検知系40から出力される検知信号に基づいて列車16の速度(時速等)を算出する。この列車16の速度は、停止位置33の直前における所定区間における列車16の速度である。次の判断ステップS14では、算出された列車16の速度が所定速度(例えば23Km/時)以下であるか否かが判定される。判断ステップS14においてYESである場合には、列車16は停止直前の速度状態であると判断され、昇降式ホーム安全柵10の可動柵を開動作させるための次のステップS15に移行する。判断ステップS14においてNOである場合には、列車16は停止する状態または停止できる状態ではないと判断され、昇降式ホーム安全柵10は閉状態のままに保持され、開動作の制御は行われず、開閉制御のプロセスを終了する。
【0041】
ステップS15では、昇降式ホーム安全柵10の開動作を開始する。すなわち、
図4に示されるように、制御装置31が、第1検知系40の出力した検知信号に基づいて算出された列車16の速度が所定速度以下であると判断したとき(判断ステップS14でYES)、開制御信号S1を駆動部21Aに提供し、ポスト21の昇降部23およびロープ14を上昇させ、昇降式ホーム安全柵10の可動柵を開動作させる。そして、昇降式ホーム安全柵10の可動柵の開動作は、列車16が停止位置33に停止する以前の時点で完了する(ステップS16)。昇降式ホーム安全柵10の開動作は、この動作条件を満たすように設定されている。
【0042】
列車16は、停止位置33で停止する(ステップS17)。この時点で、昇降式ホーム安全柵10は開動作を完了した状態にある。その後、列車16のすべての車両ドア16Aが一斉に開動作され(ステップS18)、旅客の乗降が行われる。旅客の乗降が終わった頃を見計らって車両ドア16Aの閉動作が一斉に行われる(ステップS19)。車両ドア16Aの閉動作が完了すると、列車16を発車させるための指令が与えられる(ステップS20)。以上の一連のステップS17〜S20は、
図4に示されるように、列車運行システム32による運行制御に基づいて実行される。
【0043】
以上の内容が、「列車の進入停止時」の場合における昇降式ホーム安全柵10の開閉動作の制御の流れである。その後、「列車の発車時」の場合における昇降式ホーム安全柵10の開閉動作の制御の流れ(B)に移り、ステップS21に移行する。
【0044】
ステップS21では、ステップS20による列車10の発車指令を受けて、列車16の発車動作が開始される。列車16が発車すると、駅ホーム15での停止状態から列車16が動き出す。列車16が所定の距離だけ動くと、第2検知系50の監視範囲の外に列車16が移動することになる。従って、次の判断ステップS22では、第2検知系50が列車16を検知しているか否かを判断し、NOと判断される場合に、次のステップS23に移行する。ステップS23では昇降式ホーム安全柵10の閉動作を実行する。すなわち、
図4に示されるように、制御装置31が、第2検知系50の出力した検知信号に基づいて列車16の存在が検知されないと判断したとき(判断ステップS22)、閉制御信号S2を駆動部21Aに提供し、各ポスト21の昇降部23およびロープ14を下降させ、昇降式ホーム安全柵10の可動柵を閉動作させる。昇降式ホーム安全柵10の閉動作が完了すると、開閉制御のプロセスを終了する。
【0045】
図7を参照して、本実施形態に係る昇降式ホーム安全柵開閉システムに基づく上記の昇降式ホーム安全柵10の開閉制御の流れの特徴と利点を説明する。
図7では、「列車の進入停止時」の場合(A)と「列車の発車時」の場合(B)を示し、かつ各場合で(1)本実施形態の場合と(2)従来の場合を対比して示している。
【0046】
「列車の進入停止時」の場合(A)を説明する。本実施形態の開閉制御では、列車16の停止時の前の段階で第1検知系40の検知情報に基づいて昇降式ホーム安全柵10の開動作が行われ、列車16の停止の時点では当該開動作は完了している。そして列車16が停止すると、直ぐに列車16のすべての車両ドア16Aが一斉に開動作される。他方、従来の開閉制御では、列車16が停止した後に昇降式ホーム安全柵の開動作が実行される。そして昇降式ホーム安全柵の開動作が終了すると、その後に車両ドアの開動作が実行される。その結果、車両ドアの開動作の終了時点で比較すると、従来に比較して本実施形態の開閉制御によれば、図示された時間T1の分、早く開閉動作を行うことができる。すなわち、従来の開閉制御での時間遅延(時間T1の分)を短縮することができる。
また本実施形態の場合において上記の開閉制御を行える理由は、駅ホーム15に進入して減速走行する列車16は停止位置の直前では十分に減速した速度で走行するので、その状態で昇降式ホーム安全柵10の開動作を行っても、必要な安全性を十分に確保できるという考え方に基づいている。
ただし、閉動作中のロープ14に人が接近している等の昇降式ホーム安全柵10の動作の上で問題がある場合に、別途に設けた監視手段の情報に基づき、開動作を中止することもある。
【0047】
次に「列車の発車時」の場合(B)を説明する。本実施形態の開閉制御では、旅客の乗降が終了し、列車16のすべての車両ドア16Aの閉動作が実行されると、当該閉動作の終了後に直ぐに列車16の発車に移り、列車17の走行が開始される。すなわち、昇降式ホーム安全柵10の閉動作の実行・完了を待つことなく、列車16の発車を優先して行う。そして、第2検知系50の検知情報に基づいて、列車16が動き出した後、列車10の加速走行中に昇降式ホーム安全柵10の閉動作を実行する。他方、従来の開閉制御では、車両ドアの閉動作が終わった後に、先ず昇降式ホーム安全柵の閉動作を行い、当該閉動作が終わった後に列車の発車を開始する。その結果、列車の発車の開始時点で比較すると、従来に比較して本実施形態の開閉制御によれば、図示された時間T2の分、早く列車の発車を行うことができる。すなわち、従来の開閉制御での時間遅延(時間T2の分)を短縮することができる。
また本実施形態の場合において上記の開閉制御を行える理由は、列車16が発車した初期にはゆっくりと加速走行するので、その状態では昇降式ホーム安全柵10を閉動作を完了していなくても必要な安全性を確保でき、さらに発車初期の旅客の取り残しリスクという観点では昇降式ホーム安全柵10を或る程度の時間帯では開状態に維持している方が迅速かつ適切に対処できるという考え方に基づいている。
【0048】
遅延時間の減少という観点では、本実施形態に係る昇降式ホーム安全柵開閉システムによる開閉制御によれば、「列車の進入停止時」の短縮分T1と「列車の発射時」の短縮分T2を合計した「T1+T2」だけ短縮することができる。実際の時間としては、例えば約3秒程度である。
【0049】
次に
図8と
図9を参照して第1検知系40と第2検知系50の具体的構成の一例について説明する。
【0050】
図8は第1検知系40の構成を示す。第1検知系40は、列車16の停止位置33に対して設定された区間R1(駅ホーム15の先部)の両端に配置された2つのセンサ41,42により構成される。43は列車16の移動路(移動方向)を示している。センサ41は停止位置33から例えば20mの距離の後方位置に配置され、センサ42は停止位置33から例えば10mの距離の後方位置に配置されている。従って、区間R1の距離は10mに設定されている。また停止位置33に対しても、通常、停止許容範囲が設定されている。センサ41,42は例えば超音波センサである。2つのセンサ41,42は共に列車16の移動路43に向けて配置されている。センサ41,42の正面位置を列車16が通過すると、超音波の反射作用等で、列車16の存在(到来)を検知した検知信号がセンサ41,42から出力される。センサ41,42は移動路43に沿って異なる位置で配置されているので、センサ41,42の検知信号に基づいて、その時間差から区間R1での列車16の速度を計算することができる。前述した通り、計算した列車16の速度が所定速度以下であると判断された場合には、区間R1の先方位置から停止位置33までの距離を列車16が移動する間に、昇降式ホーム安全柵10の可動柵の開動作が行われる。
【0051】
図9は第2検知系50の構成を示す。第2検知系50は、駅ホーム15に停止した列車16の後端部付近(駅ホーム15の後部)に配置されたセンサ51によって構成される。従って、列車16の長さが200mである場合には、移動路43において、停止位置33から約200m程の距離の位置にセンサ51は配置される。センサ51の監視範囲R2は、列車16の後尾車両の後端部付近を含む範囲である。センサ51は例えば超音波センサである。センサ51の監視範囲内に列車16(後尾車両の後端部)が存在する場合に検知信号を出力する。列車16がセンサ51の監視範囲から出ると、検知信号は消えることなる。
【0052】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また数値および各構成の組成(材質)等については例示にすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。