(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る油圧制御弁を含む油圧パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
図1に示すように、油圧パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2の操作を転舵輪3に伝達するステアリング装置4と、操舵部材2の操作に必要な力を補助する操舵補助装置5と、操舵補助装置5を制御する制御部としてのECU(Electronic control unit )6とを備える。
【0016】
ステアリング装置4は、操舵部材2に連結されたステアリングシャフト7と、ステアリングシャフト7の回転を転舵軸8の軸方向の直線運動に変換するラックアンドピニオン機構等の転舵機構9とを備える。
操舵補助装置5は、操舵補助用のパワーシリンダ11を備える。パワーシリンダ11は、転舵軸8を挿通させるシリンダハウジング10と、シリンダハウジング10内に収容され転舵軸8と一体移動するピストン12と、シリンダハウジング10と転舵軸8との間に区画され、ピストン12の両側に配置された第1油室13aおよび第2油室13bとを含む。
【0017】
また、操舵補助装置5は、パワーシリンダ11の作動油圧の発生源であり、電動モータ14により駆動される油圧ポンプ15と、パワーシリンダ11からの作動油の排出先としての油タンク16とを備える。
また、操舵補助装置5は、油圧ポンプ15および油タンク16とパワーシリンダ11の第1油室13aおよび第2油室13bとの間に介在し、アクチュエータとしての電動モータ17により駆動される電動の油圧制御弁18を備える。
【0018】
油圧制御弁18は、弁体19と、弁体19を保持して回転する弁軸20と、弁軸20を介して弁体19を回転駆動する電動モータ17とを含み、弁体19の回転位置に応じてパワーシリンダ11に供給する出力油圧を制御する。
また、操舵補助装置5は、弁軸20に係合することにより弁体19の回転位置を中立位置に復帰させる復帰機構21を備える。
【0019】
また、操舵補助装置5は、車両の走行状態(例えば車速、操舵角度等)を検出する走行状態センサ22と、ステアリングシャフト7に付与される操舵トルクを検出するトルクセンサ23とを備える。また、操舵補助装置5は、弁体19の回転角を検出する回転角センサ24を備える。
ECU6は、走行状態センサ22から与えられる走行状態およびトルクセンサ23から与えられる操舵トルクに基づいて、油圧ポンプ15を駆動する電動モータ14および油圧制御弁18を駆動する電動モータ17を駆動制御する。回転角センサ24により検出された弁体19の回転角は、油圧制御弁18を駆動する電動モータ17のフィードバック制御に用いられる。
【0020】
ECU6による制御により、油圧制御弁18は、油圧ポンプ15からの作動油を、パワーシリンダ11の両油室13a,13bのうち操舵方向に応じた一方の油室に択一的に供給し、他方の油室からの作動油を油タンク16に排出する給排制御動作をする。
油圧制御弁18は、油圧ポンプ15に接続された第1ポート61と、油タンク16に接続された第2ポート62と、第1油室13aに第1油路25を介して接続された第3ポート63と、第2油室13bに第2油路26を介して接続された第4ポート64とを含む。
【0021】
油圧制御弁18は、第1ポート61を第3ポート63に接続し且つ第2ポート62を第4ポート64に接続する第1の状態と、第1ポート61を第4ポート64に接続し且つ第2ポート62を第3ポート63に接続する第2の状態とを、操舵方向に応じて切り換える方向制御弁として機能する。また、油圧制御弁18は、内部の絞りを変化させて、パワーシリンダ11への供給油圧を制御する圧力制御弁としても機能する。
【0022】
図2に示すように、油圧制御弁18は、第1ハウジング31と第2ハウジング32とを組み合わせて構成される筒状のハウジング30と、第1ハウジング31内に収容されたバルブ機構33と、第2ハウジング32内に収容されバルブ機構33を駆動するアクチュエータとしての電動モータ17とを備える。
バルブ機構33は、第1ハウジング31内に収容され回転規制された筒状のバルブボディ34と、バルブボディ34を挿通する弁体19とを備える。また、バルブ機構33は、バルブボディ34と弁体19との間に形成され、バルブボディ34と弁体19との相対角変位に応じて絞り面積を変化させる絞り36(具体的には、
図5の絞り部A,B,C,Dに相当)を備える。
【0023】
バルブボディ34の外周は、複数の外周溝37を含み、各外周溝37に、第1ハウジング31の内周に弾性的に嵌合する環状シール部材38が保持されている。複数の環状シール部材38は、バルブボディ34の外周と第1ハウジング31の内周との間に形成されて、第1ポート61、第2ポート62、第3ポート63および第4ポート64にそれぞれ連通する流路を仕切る働きをする。
【0024】
弁体19は、第2ハウジング32から延びる第1ハウジング31側へ延びる弁軸20の一端から同軸上に一体に延設されている。弁軸20の他端は、第1ハウジング31に保持された例えば玉軸受等の軸受40によって回転可能に支持されている。弁軸20とは反対側の弁体19の端部19aは、第2ハウジング32により保持された例えば針状ころ軸受等の軸受41によって回転可能に支持されている。
【0025】
電動モータ17は、筒状の第2ハウジング32の内周に固定されたステータ42と、弁軸20の外周に一体回転に連結されたロータ43とを備える。電動モータ17は、弁軸20を介して弁体19を弁体19の中心軸線C1(弁軸20の中心軸線に一致)回りに回転駆動する。
油圧制御弁18は、第1ハウジング31の内部と第2ハウジング32の内部とを仕切る仕切り部材44を備える。仕切り部材44の外周縁の近傍部分は、第1ハウジング31と第2ハウジング32の対向端部に設けられたフランジ45,46間に挟持されている。
【0026】
仕切り部材44は、両フランジ45、46および仕切り部材44を挿通して、両ハウジング31,32を締結する固定ボルト47によって、両ハウジング31,32と共締めされている。
仕切り部材44は、弁軸20を挿通させる挿通孔48を含む。挿通孔48には、弁軸20の外周と挿通孔48の内周との間を封止するシール部材49が保持されている。
【0027】
仕切り部材44は、第2ハウジング32内に突出する環状突起からなる軸受保持部50を備える。軸受保持部50に保持された軸受51が、弁軸20と一体回転するロータ43を回転可能に支持している。
第2ハウジング32内に、回転角センサ24が収容されている。回転角センサ24は、第2ハウジング32に固定されたセンサステータ52と、弁軸20と一体回転するセンサロータ53とを備える。回転角センサ24は、レゾルバを用いたものであってもよいし、ホール素子を用いたものであってもよい。
【0028】
復帰機構21は、第2ハウジング32に固定されたハウジング54と、ハウジング54によって係合位置[
図4(b)参照]と係合解除位置(
図3参照)との間に変位可能に支持された係合部材としての係合ピン55とを備える。また、復帰機構21は、係合ピン55を係合位置に付勢する付勢部材56と、付勢部材56に抗して係合ピン55を係合解除位置に駆動するソレノイド57とを備える。付勢部材56は、係合ピン55とハウジング54との間に介在する圧縮コイルばねであってもよい。
【0029】
図2を参照して、弁軸20の他端は、第2ハウジング32の挿通孔を通して、復帰機構21のハウジング54内に挿入されている。弁軸20の他端の外周20aには、係合ピン55が係合する被係合部としての径方向孔58が形成されている。
図3に示すように、径方向孔58は、弁軸20の軸方向から見たときに入口側に向かって扇形状に拡がる一対の被係合面59を含む。係合ピン55の端部60は、先細り状に形成されている。具体的には、係合ピン55の端部60は、円錐状部を含む。係合ピン55は、
図4(b)に示すように、弁軸20の被係合部としての径方向孔58に係合することにより、弁軸20を介して、弁体19の回転位置を中立位置に復帰させる。
【0030】
ECU6は、フェール発生時に、ソレノイド57をオフすることにより、付勢部材56により付勢された係合ピン55を弁軸20の径方向孔58に係合させて、弁軸20を中立位置に復帰させる機能を有する。
図5は油圧制御弁18の断面を含む油圧回路の概略図である。
図5を参照して、バルブボディ34と弁体19との間の流路における絞り部A,B,C,Dの開度が、バルブボディ34に対する弁体19の角度変位に応じて変化する。
【0031】
油圧ポンプ15から第1ポート61を介して供給される作動油は、バルブボディ34の外周に形成された外周溝71と、バルブボディ34を径方向に貫通する油路72とを介して、弁体19の外周に複数設けられた軸方向溝である第1溝73に供給される。
一方、バルブボディ34の内周には、複数の軸方向溝である第2溝74が形成されている。バルブボディ34の内周の複数の第2溝74の軸方向縁と、弁体19の外周の複数の第1溝73の軸方向縁との間が、絞り部A,B,C,Dとされる。
【0032】
バルブボディ34の周方向に関して、油路72を挟んだ両側に、バルブボディ34を径方向に貫通する油路75および油路76が形成されている。各油路75,76は、対応する第2溝74に開口している。
バルブボディ34の油路75と第1ハウジング31の第3ポート63とを介して第1油室13aに通じる第2溝74と、バルブボディ34の油路76と第1ハウジング31の第4ポート64とを介して第2油室13bに通じる第2溝74とが、バルブボディ34の周方向において交互に配置されている。
【0033】
バルブボディ34の油路72と第1ハウジング31の第1ポート61とを介して油圧ポンプ15に通じる第1溝73と、バルブボディ34を径方向に貫通する油路77と弁体19の中心孔からなる油路78と第1ハウジング31の第2ポート62を介して油タンク16に通じる第1溝73とが、周方向において交互に配置されている。
図5に示すように弁体19が中立位置にある状態では、各絞り部A,B,C,Dは、所定の流路断面積を有している。すなわち、弁体19が中立位置にある状態においては、パワーシリンダ11の第1油室13aと第2油室13bとは、第1油路25、第3ポート63、油路75、第2溝74、絞り部A、第1溝73、絞り部B、第2溝74、油路76、第4ポート64および第2油路26を介して連通されており、第1油室13aおよび第2油室13bとの間で、作動油の流通が可能となっている。
【0034】
図示していないが、右操舵のときは、弁体19の回転角に応じて、絞り部A,Dの開度が大きくなるとともに絞り部B,Cの開度が小さくなる。これにより、第1油室13aに高圧の作動油が供給されるとともに第2油室13bから油タンク16に作動油が還流される。その結果、弁体19の回転角に応じて、右方向への操舵補助力が、パワーシリンダ11に発生する。
【0035】
また、図示していなが、左操舵のときは、絞り部B,Cの開度が大きくなるとともに絞り部A,Dの開度が小さくなる。これにより、第2油室13bに高圧の作動油が供給されるとともに第1油室13aから油タンク16に作動油が還流される。その結果、弁体19の回転角に応じて、左方向への操舵補助力が、パワーシリンダ11に発生する。
次いで、
図6は、フェール処理に関する制御の流れを示すフローチャートである。
図6に示すように、ECU6は、ステップS1において、各種信号を入力する。具体的には、油圧ポンプ15を駆動する電動モータ14の駆動電流、油圧制御弁18を駆動する電動モータ17の駆動電流、各種センサ(走行状態センサ22、トルクセンサ23、回転角センサ24、図示しない操舵角センサ等)の検出信号を入力している。
【0036】
ステップS2において、何れかの信号に異常があるか否かを判定する。異常がない場合(ステップS2において、NOの場合)は、ステップS1に戻り、ステップS1、ステップS2の動作を繰り返し、異常があるか否かを継続的に監視する。
ステップS2において、異常が検出されてフェールが発生したと判定されると(ステップS2において、YESの場合)、ステップS3に進む。ステップS3では、油圧ポンプ15を駆動する電動モータ14および油圧制御弁18を駆動する電動モータ17への電源供給を遮断する。
【0037】
次いで、ステップS4において、復帰機構21のソレノイド57の励磁をオフする。これにより、付勢部材56によって付勢された係合ピン55が、
図4(b)に示すように、弁軸20の径方向孔58に係合する係合位置に変位される。その結果、弁軸20を介して弁体19が、中立位置に戻される。
係合ピン55の進出時において、
図4(a)に示すように、仮に、弁軸20の回転位置が中立位置から周方向に多少ずれていても、係合ピン55の円錐状の端部60が、何れかの被係合面59と係合することにより、確実に、
図4(b)に示すように、弁軸20の回転位置が中立位置に矯正される。
【0038】
本実施形態によれば、フェール発生時に、復帰機構21の係合部材(係合ピン55)を油圧制御弁18の弁軸20の被係合部(径方向孔58)に係合させることにより、弁体19を中立位置に復帰させる。これにより、油圧制御弁18を介して、パワーシリンダ11の両油室13a,13b間が連通されるので、マニュアル操舵が可能となる。従来のバイパスバルブを設ける場合のような油圧回路の変更が不要であり、係合部材(係合ピン55)を被係合部(径方向孔58)に係合させる簡単な構造が用いられる。したがって、フェールセーフ機能を達成する小型、軽量で安価な油圧パワーステアリング装置1を実現することができる。
【0039】
また、フェール発生時に、ソレノイドへ57の通電を遮断すると、
図4(b)に示すように、付勢部材56によって付勢された係合部材(係合ピン55)を係合位置に変位させて、弁軸20の被係合部(径方向孔58)に係合させる。したがって、確実にフェールセーフを達成することができる。
また、フェール発生時に、係合部材としての係合ピン55が、弁軸20の外周20aの被係合部としての径方向孔58に係合する。したがって、確実にフェールセーフを達成することができる。
【0040】
また、フェール発生時に、弁体19を保持した弁軸20が中立位置から周方向に多少ずれていたとしても、係合ピン55の円錐状の端部60が、弁軸20の径方向孔58の何れかの被係合面59に係合して係合位置に変位することにより、弁体19を保持した弁軸20を確実に中立位置に復帰させ、確実にフェールセーフを達成することができる。
なお、フェール発生時に、パワーシリンダ11の両油室13a,13bが、中立状態に復帰した油圧制御弁18を介して連通されるときに、油圧制御弁18の内部油路の流通抵抗(特に、絞り部A,Bの絞りによる流通抵抗)の影響で、マニュアル操舵の操作力が多少重くなる。しかしながら、車両を安全な場所に移動させる程度の運転には、何らの支障もない。
(第2実施形態)
図7は本発明の第2実施形態の油圧パワーステアリング装置1Pの油圧制御弁18Pの概略断面図である。
図7の第2実施形態の油圧制御弁18Pが
図2の第1実施形態の油圧制御弁18と主に異なるのは、復帰機構21Pが、バルブ機構33Pの弁体19Pに設けられた被係合部としての径方向孔58Pに係合可能な係合部材としての係合ピン55Pを備える点にある。
【0041】
すなわち、係合ピン55Pは、第1ハウジング31に固定されたハウジング54Pと、ハウジング54Pによって係合位置[
図8(b)参照]と係合解除位置(
図7参照)との間に変位可能に支持されている。係合ピン55Pの端部60Pは、円錐状や円錐台状等の先細り状に形成されている。
図8(a)に示すように、弁体19Pに設けられた径方向孔58Pは、貫通孔からなる。径方向孔58Pは、弁軸20の軸方向[
図8(a)の紙面と直交する方向]から見たときに入口側に向かって扇形状に拡がる一対の被係合面59Pを含む。
【0042】
また、
図7に示すように、復帰機構21Pは、係合ピン55Pを係合位置に付勢する付勢部材56Pと、付勢部材56Pに抗して係合ピン55Pを係合解除位置に駆動するソレノイド57Pとを備える。
フェール発生時に、ソレノイド57Pの励磁がオフされて付勢部材56Pの働きで、係合ピン55Pが進出する。
図8(a)に示すように、弁体19Pの回転位置が中立位置からずれていても、係合ピン55Pの先細り状の端部60Pが、弁体19Pの径方向孔58Pの被係合面59Pと係合することにより、
図8(b)に示すように、弁体19Pを確実に中立位置に復帰させる。
【0043】
第2実施形態においても、第1実施形態と同じく、フェールセーフ機能を達成する簡単な構造の油圧パワーステアリング装置1Pを実現することができる。
(
参考形態)
図9は本発明の
参考形態の油圧パワーステアリング装置1Qの油圧制御弁18Qの概略断面図である。
図9の
参考形態の油圧制御弁18Qが
図2の第1実施形態の油圧制御弁18と主に異なるのは、復帰機構21Qが、弁体19と第1ハウジング31Qとの間に介在し、弁体19を弁体19の中心軸線C1回りの中立位置に回転付勢するねじりばね80のみにより構成されている点にある。
【0044】
ねじりばね80の一端81は、弁体19の端部19aに一体回転可能に係合され、ねじりばね80の他端82は、第1ハウジング31Qの内底面に係合されている。ねじりばね80の付勢力は、電動モータ17のモータトルクよりも十分に小さく設定されている。
また、ねじりばね80の付勢力は、弁軸20や弁体19を支持する部分から弁軸20や弁体19に付与される回転摩擦抵抗よりも大きくなるように設定されている。したがって、フェール発生時に、ECU6が電動モータ17への電源供給を遮断すると、ねじりばね80が、弁体19を中立位置に復帰させる。
【0045】
本参考形態においても、第1実施形態と同じく、フェールセーフ機能を達成する簡単な構造の油圧パワーステアリング装置1Qを実現することができる。特に、復帰機構21Qが、ねじりばね80という簡素な機械的構造のみを用いるので、構造を格段に簡素化することができる。
ねじりばね80は、図示のような、ねじりコイルばねであってもよいし、樹脂製やゴム製等のトーションバー(図示せず)であってもよい。また、図示していないが、ねじりばねが、弁軸20と第2ハウジング32との間に介在し、弁軸20を中立位置に回転付勢するものであってもよい。
(第
3実施形態)
図10は、本発明の第
3実施形態の油圧パワーステアリング装置1Rの油圧制御弁18Rの概略断面図である。
図10の第
3実施形態の油圧制御弁18Rが
図9の
参考形態の油圧制御弁18Qと主に異なるのは、下記である。
【0046】
すなわち、復帰機構21Rが、バルブ機構33Rの弁体19Rの端面19bに設けられたカム面91と、カム面91に係合するカム突起92を形成したカム部材93と、カム部材93をカム面91側に付勢する圧縮ばねからなる付勢ばね94とを備えている。
図10および
図11に示すように、カム部材93は、第1ハウジング31Rによって回転不能に且つ弁軸20の軸方向(中心軸線C1の方向)に移動可能に支持されている。
【0047】
具体的には、第1ハウジング31Rの内周に形成されて弁体19Rの中心軸線C1と平行に延びる案内部としての案内溝95に、カム部材93に突出形成された被案内部としての被案内突起96が嵌合されている。案内溝95が、被案内突起96を介してカム部材93の移動を案内する。
模式図である
図12(a)に示すように、カム面91は、弁体19Rの回転方向Kに対して互いに逆向きに傾斜する一対の傾斜面91a,91bを含む。カム部材93は、円板状をなしている。カム部材93は、弁体19Rの端面19bに対向する面93aに、回転方向Kに離隔する一対のカム突起92を設けている。
【0048】
一対のカム突起92は、回転方向Kに対して互いに対称な形状をなしている。一方のカム突起92は、中立位置において、一方のカム面91の一方の傾斜面91aに一致する傾斜面92aと、一方のカム面91に接触しない非接触面92bとを含む。他方のカム突起92は、中立位置において、他方のカム面91の一方の傾斜面91aに一致する傾斜面92aと、他方のカム面91に接触しない非接触面92bとを含む。
【0049】
カム突起92からカム面91を介して弁体19Rに付与される付勢ばね94による回転付勢力は、電動モータ17のモータトルクよりも十分に小さく設定されている。
また、前記回転付勢力は、弁軸20や弁体19Rを支持する部分から弁軸20や弁体19Rに付与される回転摩擦抵抗よりも大きくなるように設定されている。したがって、フェール発生時に、ECU6が電動モータ17への電源供給を遮断すると、付勢ばね94が、
図12(a)から
図12(b)に示すように、弁体19Rを中立位置に復帰させる。
【0050】
第
3実施形態においても、
前記参考形態と同じく、フェールセーフ機能を達成する簡単な構造の油圧パワーステアリング装置1Rを実現することができる。特に、復帰機構21Rが、カム部材93と付勢ばね94という簡素な機械的構造のみを用いるので、構造を格段に簡素化することができる。
図示していないが、復帰機構21Rが、弁軸20と第2ハウジング32との間に介在し、弁軸20を中立位置に回転付勢するものであってもよい。また、第1ハウジング31Rに案内部としての案内突起を設け、カム部材93に被案内部としての被案内溝を設けるようにしてもよい。
【0051】
本発明は各前記実施形態に限定されるものではなく、図示していないが、弁軸が、回転不能な第1部分と、電動モータのロータと一体回転可能に連結された第2部分と、第1部分と第2部分とを同軸上に連結するトーションバー部分とを含み、油圧制御弁の電動モータのオフ時に、トーションバー部分が、弁体を中立位置に戻す働きをしてもよい。
また、油圧ポンプ15を駆動する電動モータ14を操舵時のみに駆動するオンデマンド方式で制御してもよい。また、油圧ポンプを電動モータではなく、車両のエンジンにより駆動するようにしてもよい。その他、本発明は、特許請求の範囲記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。