【実施例】
【0054】
以下、本発明を実験例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
実験例1
<ロドサイチンのαおよびβサブユニット遺伝子を含む遺伝子組換えベクターの作成>
非特許文献4に記載されたロドサイチンのαおよびβサブユニットの遺伝子配列情報を基として塩基配列を設計した。表1に示す。設計した塩基配列は、GENEWIZ日本支社にポリヌクレオチド合成および、合成されたポリヌクレオチドを、pUC57-Ampベクター(GENEWIZ社)(配列番号26)に導入することを委託した。得られた組換えベクターは、表2に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
上記組換え体ベクターおよびpCMVベクター(Stratagene社)を用いて、表3に記載する組換え体ベクターを作製した。なお、Overlap extension PCR cloning法(Biotechniques. 2010 June ; 48(6): 463-465.)を参考にして実験を行った。
上記組換え体ベクターおよびpCMVベクター(Stratagene社)を鋳型にして、表3に記載するプライマーを用いて、PCR法によってPCR産物を得た。PCR法は、Q5 High-Fidelity DNA polymerase(New Englind Biolab社)を用いて、PCR反応「98℃で30秒、55℃で30秒、72℃で3分」のサイクルを25回繰り返して反応をサーマルサイクラーVeriti 200(Applied Biosystems社)を用いて行った。
それぞれ得られた、組換え体ベクターを鋳型にしたPCR産物5μLとpCMVベクターを鋳型にしたPCR産物1μLを、混合した。その混合液を100μLのコンピテントセルEscherichia coli DH5αにヒートショック法を用いて形質導入し,100μg/mLAmpicillin含有LB寒天培地に播種した。
また、ヒートショック法およびコンピテントセルの作成は、Sambrook, J., Fritsch, E. F., and Maniatis, T., "Molecular Cloning A Laboratory Manual, Second Edition",Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1989)を基にして行った。形質転換された大腸菌からQIAGEN Plasmid Maxi Kit(QIAGEN社)を用いて、組換え体ベクターを得た。
また、表3に記載した組換え体ベクターを用いて、表4に記載する組換え体ベクターを作製した。表3に記載した組換え体ベクターを鋳型として、表4に記載するプライマーを用いて、インバースPCR法によってPCR産物を得た。なおインバースPCR法の条件は上記PCR法と同じである。それぞれ得られたPCR産物6μLを100μLのコンピテントセルE.coli DH5αにヒートショック法を用いて形質導入し,100μg/mLAmpicillin含有LB寒天培地に播種した。形質転換された大腸菌からQIAGEN Plasmid Maxi Kit(QIAGEN社)を用いて、組換え体ベクターを得た。
なお、組換え体ベクターにおけるロドサイチンのαまたはβサブユニット遺伝子のシークエンスは、受注シークエンスサービス(マクロジェンジャパン社)に委託し、上記設計した塩基配列と比較し、欠損、置換、付加等がないことを確認した。
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
実験例2
<宿主細胞をCHO細胞としたロドサイチンのαおよびβサブユニット遺伝子を含む組換え細胞の作成>
・培養条件
タンパク質発現用細胞としてCHO細胞を用いた。培養条件については、直径15cm 培養皿を用い、25mLの血清DMEM培地(ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Life Technologies社)、10%ウシ胎児血清(FBS、Life Technologies社)、1%P/S溶液(10,000units/mLペニシリンG,10,000μg/mLストレプトマイシン硫酸塩)を加えた培養液にCHO細胞を播種し、直径15cm培養皿に対してCHO細胞が100%占有率になるまで、37℃、5%CO
2条件下で培養した。なお、遺伝子導入後のCHO細胞の培養条件も上記と同じである。
【0062】
・エレクトロポレーションによるCHO細胞への遺伝子導入
コンピテントセルの作成
直径15cm培養皿に対して100%占有率となったCHO細胞の培養液を捨て、培養皿1枚に対して15mLの1×PBSで1回細胞を洗浄した。培養皿1枚に対して2mlのトリプシン-EDTA-Na溶液(0.25w/v%トリプシン溶液と1mM EDTA-Na溶液との混合液)を加え、培養皿全体に行き渡らせた後、トリプシン-EDTA-Na溶液を回収して、培養皿を37℃で2分インキュベートした。
インキュベート後、20mLのDMEM培地と0.2mL P/S溶液とを加えた溶液にてCHO細胞を懸濁し、50mLファルコンチューブに回収し,1,000rpm,5分間,室温(約25℃)で遠心分離し、上清を捨てた後、0.3mLのCytomix溶液(120mM KCl,0.15mM CaCl
2,10mM K
2HPO
4,10mM KH
2PO
4, 25mM HEPES, 2mM EGTA, 5mM MgCl
2, 2mM ATP, 5mM glutathione)を加えて、CHO細胞を再浮遊させた。この状態におけるCHO細胞を計数し、 CHO細胞数が2.5x10
7cell/mlになるようにCytomix溶液を加えて調整した。(目安として、通常で15cmの培養皿から得られる容量は0.5-0.6mLとなる)。
エレクトロポレーション
エレクトロポレーション用キュベット(Cell Projects社,EP-104,GAP:4mm)に、表3または表4に示す組換え体ベクター40μgを添加し、さらに、2.5x10
7cell/mlに調整したCHO細胞懸濁液400μLを添加し、キュベットの蓋をして転倒混和した後,10分間、室温でインキュベートした。エレクトロポレーションシステムはBIO-RAD GENE PULSER(R)II Electroporation System(BIO-RAD社)を使用した。なお、遺伝子導入の条件として250mV, 950μFにて設定し、エレクトロポレーションを行った。エレクトロポレーション後、氷上で10分間インキュベートした。次に、10cm培養皿に13mL血清DMEMを準備し、ここにエレクトロポレーションを行ったCHO細胞を播種し、一昼夜培養した。培養液を除き、培養皿1枚に対して15mLの1×PBSで一回洗浄した後、13mL Opti-MEM培地(Life Technologies社)を添加して、培養を継続した。なお、得られた組換え細胞を表5に示す。
【0063】
【表5】
【0064】
実験例3
<ウエスタンブロット法によるタンパク質の発現確認>
上記組換え細胞におけるロドサイチンの発現の確認をするために、ウエスタンブロット法を用いた。
・組換え細胞の培養液の調製
実験例2にて得られた組換え細胞において、Opti-MEM培地にて72時間培養後、培養液を回収し、3,000rpm,30分間の遠心分離を行い浮遊した細胞等を除いた。なお、必要に応じて培養液を-80℃で保存した。
上記組換え細胞の培養液は、15,000rpm, 30分間, 4℃で遠心分離後、培養液を回収した。
・組換え細胞の細胞溶解液の調製
培養液回収後の組換え細胞に氷冷1×PBSにて2回洗浄し、細胞溶解バッファー(1% NP40,150 mM NaCl,10 mM Tris,1mM Na
3VO
3,1mM EGTA, 1mM EDTA,1μg/mL leupeptin,1μg/mL aprotinin,1μg/mL pepstatin,1mM PMSF,pH7.5)を添加し、細胞溶解液を得た。なお、必要に応じて細胞溶解バッファーを加えて細胞溶解液を希釈した。
・ウエスタンブロット法
組換え細胞の培養液は、必要に応じてOpti-MEM培地を加えて培養液を希釈した。
蛇毒精製ロドサイチン(非特許文献1)または、上記調製した組換え細胞の培養液20μLあるいは上記細胞溶解液20μLにSDSサンプルバッファーを加えて、SDS-PAGEで電気泳動後、PVDF膜に転写し、一次抗体に抗ロドサイチン抗体(ウサギポリクローナル抗体)、二次抗体にHRP標識ウサギIgGを用い、ECL Prime Western Blottin Detection System(GE Healthcare Life Science)て検出した。画像撮影には,ImageQuant LAS 4000 mini(GE Healthcare Life Science)を使用し、High Resolutionモードで撮影した。なお、
図4および
図5におけるLow exposureで撮影されたバンドは、露光時間2分で撮影した。また、High exposureは、露光時間10分で撮影をした。
上記組換え細胞の培養液あるいは細胞溶解液を使用して、ロドサイチンαサブユニットおよびロドサイチンβサブユニットタンパク質の発現を確認した。結果を
図3、4、5に示す。
【0065】
<結果の考察>
図3について、
組換え細胞の培養液および細胞溶解液は、希釈せずに用いた。
No.2については、ロドサイチンαサブユニット、ロドサイチンβサブユニットの2つのバンドが確認された。従って、No.2の組換え細胞は、ロドサイチンを生産することがわかる。なお、No.5、No.6,No.7の組換え細胞は、
図4および
図5から、ロドサイチンを生産することがわかる。
【0066】
図3から、No.2の組換え細胞の培養液中に、ロドサイチンαサブユニットおよびロドサイチンβサブユニットタンパク質のバンドが確認することができた。一方、No.4の組換え細胞の培養液中に、ロドサイチンβサブユニットタンパク質のバンドが現れず、細胞溶解液中のロドサイチンβサブユニットタンパク質のバンドが現れた。つまり、No.4の組換え細胞において、ロドサイチンβサブユニットタンパク質が細胞外に分泌されていないことがわかる。
No.3の組換え細胞について、培養液中のロドサイチンαサブユニットのバンドと細胞溶解液中のロドサイチンαサブユニットタンパク質のバンドと比べると、細胞溶解液中のバンドの方が濃いことがわかる。
これら実験結果から、同一細胞にロドサイチンαサブユニット遺伝子およびロドサイチンβサブユニット遺伝子を導入する方が、細胞外へタンパク質を分泌しやすい傾向がみられた。
【0067】
図4について、
それぞれ、100nM、50nM、25nMの蛇毒精製ロドサイチンをウエスタンブロットに供した。100nMの蛇毒精製ロドサイチンにおけるロドサイチンαサブユニットおよびロドサイチンβサブユニットタンパク質のバンド強度と、No.2およびNo.5の組換え細胞の4倍希釈培養液におけるロドサイチンαサブユニットおよびロドサイチンβサブユニットタンパク質のバンド強度が近いことがわかる。
また、No.2およびNo.5の組換え細胞の4倍希釈培養液におけるロドサイチンαサブユニットおよびロドサイチンβサブユニットタンパク質のバンド強度を比べると、No.5の組換え細胞の方が、バンド強度の方が強いことが分かる。すなわち、No.5の組換え細胞の方が、No.2の組換え細胞よりロドサイチン生産能が高いと判断できる。
【0068】
図5について、
No.6およびNo.7の組換え細胞の4倍希釈培養液におけるロドサイチンαサブユニットおよびロドサイチンβサブユニットタンパク質のバンド強度を比べると、No.6のバンド強度の方が強いことが分かる。すなわち、No.6の組換え細胞の方が、No.7の組換え細胞よりロドサイチン生産能が高いと判断できる。
【0069】
実験例4
<血小板凝集能の確認>
・マウスの洗浄血小板の調整
6−8週齢のC57BL/6(野生型)または6−8週齢のC57BL/6(Clec1b(fl/fl)PF4-Cre(血小板CLEC-2ノックアウトマウス)(J Biol Chem. 2012 Jun 22;287(26):22241-22252.))マウスをジエチルエーテル吸入により全身麻酔し、開腹した。腹部後大静脈より、1mLシリンジ(25G針を付けた1mLシリンジに予め100μLのACD溶液(acid citrate dextrose solution:2.5%クエン酸ナトリウム,1.5%クエン酸,2%グルコース)を抗凝固剤として充填しておく)で900μLの採血を行った。
採血した血液を2mLチューブに移し、あらかじめ37℃に温めておいた900μL CFT溶液(Calcium-freen modified Tyrode buffer:137mM NaCl,11.9mM NaHCO
3, 0.4mM NaH
2PO
4, 2.7mM KCl, 1.1mM MgCl
2, 5.6mM glucose, pH 7.4)および100μL ACD溶液を、上記チューブに加え、転倒混和した。次にアングルローター式遠心機で100G,10分間,室温で遠心分離した。上清を別の2mLチューブに移し回収した。
再度上清が回収された2mLチューブを室温で遠心分離した。その上清を回収し、上清が入っている2mLチューブに移した。その次に上清が入っている2mLチューブに1μg/μL PGI2(Prostaglandin I2)溶液2μLを加え、転倒混和し、スイングローター式遠心機で、2,300rpm,10分間,室温で遠心分離した。
上清を除き、沈降した血小板のペレットに215μL CFT溶液を加えて再浮遊させた。そのうちの15μLを採取し後、135μL CFT溶液で10倍希釈し、多項目自動血球分析装置XE-2100(シスメックス株式会社)により血小板数を計数した。得られた血小板数に従い、20×10
4 PLT/μLになるようにCFT溶液で希釈し調製した。これを血小板凝集能測定に使用した。
なお、多項目自動血球分析装置XE-2100は、ヒト用に設定された血球分析装置である。計数は光学方式(PLT-O)とインピーダンス方式(PLT-I)があるが、マウス血小板はヒト血小板よりも小さいため、今回マウス血小板の計数にはPLT-Oを採用した。
【0070】
・ヒトの洗浄血小板の調整
健常人ドナーの肘正中皮静脈より採血し、血液9容に3.8%クエン酸ナトリウム1容を混合して凝固を防いだ。この血液検体を、スイングローター式遠心機で1,100rpm,10分間,室温で遠心して、赤血球および白血球を沈殿させた。上清を回収して多血小板血漿(platelet-rich plasma; PRP)を得た。
さらにPRPに終濃度が15%ACD、1μM PGI2になるよう加え、スイングローター式遠心機で2,500rpm,10分間,室温で遠心して血小板を沈降させた。
上清を捨て、5mL CFT溶液と750μL ACD溶液を混合した液を加えてペレットを浮遊させ、さらに20mL CFT,3mL ACD溶液,10μL 1μg/μL PGI2溶液を加え、スイングローター式遠心機で2,500rpm,10分,室温で遠心した。
上清を捨て、沈降した血小板にCFT溶液を加えて再浮遊させ、多項目自動血球分析装置XE-2100(シスメックス株式会社)により血小板数を計数した。なお、計数は光学方式(PLT-O)を用いた。
得られた血小板数に従い、20×10
4 PLT/μLになるようにCFT溶液で希釈し調製した。これを血小板凝集能測定に使用した。
【0071】
組換え細胞の培養液の調製
実験例3にて調製した組換え細胞の培養液を血小板凝集能試験に用いた。なお必要に応じて、Opti-MEM培地を用いて、1倍、2倍、4倍、8倍、16倍希釈した培養液を調製した。
【0072】
・血小板凝集能の測定
血小板凝集能は、血小板凝集能測定装置ヘマトレーサー712(MCM HEMA TRACER 712, LMS株式会社)を用いた。調整したマウスの洗浄血小板またはヒトの洗浄血小板100μLを使用し、No.6またはNo.7の組換え細胞の培養液11.1μLを加え、凝集率を10分間、継時的に測定した。またコントロールとして、No.6またはNo.7の組換え細胞の培養液の変わりに、CFT溶液、終濃度が2μg/mlコラーゲンまたは所望する蛇毒精製ロドサイチンの濃度となるように調整した溶液を、洗浄血小板に加えた。結果を
図6、
図7、
図8に示す。
【0073】
<結果の考察>
図6について、
組換え細胞の培養液は、希釈せずに用いた。
C57BL/6(野生型)のマウスの血小板に、No.6またはNo.7の組換え細胞の培養液を加えたものは、血小板凝集が現れた。一方、CLEC-2ノックアウトマウスの血小板にNo.6またはNo.7の組換え細胞の培養液を加えたものは、血小板凝集が現れなかった。
なお、コラーゲンは、CLEC-2と異なる血小板表面のレセプターと結合することでシグナル伝達経路を刺激し血小板凝集を起すことが既に報告されている。
No.6またはNo.7の組換え細胞の培養液は、C57BL/6(野生型)のマウスの血小板に対して、血小板凝集能を有し、CLEC-2ノックアウトマウスの血小板に対して、血小板凝集能を示さなかった。つまり、No.6またはNo.7の組換え細胞は、血小板活性化能を有するロドサイチンを生産することが分かる。
なお、図示はしていないが、No.2およびNo.5の組換え細胞の培養液についても、同様に血小板凝集能の測定を行い、血小板凝集能を確認した。
【0074】
図7について、
No.6またはNo.7の組換え細胞の培養液について、それぞれ1倍、2倍、4倍、8倍、16倍希釈した培養液を用いた。No.6またはNo.7の組換え細胞の8倍希釈培養液の血小板凝集能を比べると、No.6の組換え細胞の方が短い時間で高い血小板凝集を示すことがわかった。この結果と実験例3におけるウエスタンブロット法の結果と合わせて、No.7の組換え細胞と比べてNo.6の組換え細胞の方が、ロドサイチン生産能が高いと判断できる。
【0075】
図8について、
ヒトの血小板に、No.2の組換え細胞の培養液を添加したものは、血小板凝集が現れた。つまり、No.2の組換え細胞は、血小板活性化能を有するロドサイチンを生産することが分かる。なお、図示はしていないが、No.5〜No.7の組換え細胞の1倍希釈培養液についても、同様に血小板凝集能の測定を行い、血小板凝集能を確認した。つまり、No.5〜No.7の組換え細胞は、血小板活性化能を有するロドサイチンを生産することが分かる。
【0076】
実験例5
<フローサイトメーターによるヒトCLEC-2との結合の確認>
ヒトCLEC-2発現細胞として,ドキシサイクリン(Dox)による発現誘導が可能なT-REx ヒトCLEC-2発現293細胞(J Biol Chem. 2007 Sep 7;282(36):25993-26001)を使用した。
T-REx ヒトCLEC-2発現293細胞は、終濃度10μg/μLドキシサイクリンを含む血清DMEM培地を用いて直径15cm培養皿に対して100%占有率になるまで培養した。培養液を捨て1×PBSで1回細胞を洗浄した。培養皿1枚に対して2mlのトリプシン-EDTA-Na溶液を加え、培養皿全体に行き渡らせた後、トリプシン-EDTA-Na溶液を回収して、培養皿を37℃で2分インキュベートした。インキュベート後、20mLのDMEMと0.2mL P/S溶液とを加えた溶液にてCHO細胞を懸濁し、50mLファルコンチューブに回収し,1,000rpm,5分間,室温で遠心分離し、上清を捨てた後、血清DMEMにてT-REx ヒトCLEC-2発現293細胞を5×10
6cells/mLに調整した。
No.2の組換え細胞の培養液は、実験例3にて調製したものを用いた。なお、培養液は希釈せずに用いた。
T-RExヒトCLEC-2発現293細胞の浮遊液50μLにNo.2の培養液50μLおよび1mg/mL抗ロドサイチン抗体1μLまたは、コントロールウサギIgGを混合し、室温で30分間インキュベートした後、洗浄するために400μLの1×PBSを加え、3,000rpm、5分間、室温で遠心分離し、上清を捨て、T-RExヒトCLEC-2発現293細胞を回収した。回収されたT-RExヒトCLEC-2発現293細胞に、さらに二次抗体としてanti-Rabbit Alexa 488(Molecular Probes社)を加え、室温で30分間インキュベートし、サンプルとした。検出にはAccuri C6 Flow Cytometer(Becton, Dickinson and Company社)を使用した。
またコントロール1として、T-RExヒトCLEC-2発現細胞の浮遊液50μLにCFT溶液50μLおよび、抗CLEC-2抗体または、コントロールマウスIgGを混合した以外は、上記と同様の方法でヒトCLEC-2との結合の確認を行った。
またコントロール2として、T-RExヒトCLEC-2発現細胞の浮遊液50μLmlにCFT溶液50μLmlおよび、抗ロドサイチン抗体またはコントロールウサギIgGを混合したものを、上記と同様の方法でヒトCLEC-2との結合の確認を行った。結果を
図9に示す。
【0077】
<結果の考察>
図9について、
コントロール1について、CLEC-2抗体のグラフは、発現されたヒトCLEC-2に抗CLEC-2抗体が結合するため、コントロールマウスIgGのグラフから右にシフトしている。
コントロール2について、発現されたヒトCLEC-2に抗ロドサイチン抗体が結合しないため、コントロールマウスIgGのグラフと抗ロドサイチン抗体のグラフがほぼ同じになる。
No.2の培養液の結果ついて、コントロールマウスIgGのグラフから、右へシフトしていることがわかる。従って、No.2の組換え細胞の培養液に含まれるロドサイチンは、ヒトCLEC-2に結合することがわかる。なお、図示はしていないが、No.5〜No.7の組換え細胞の培養液についても、同様にヒトCLEC-2との結合の確認を行い、No.5〜No.7の組換え細胞から生産されるロドサイチンについて、ヒトCLEC-2結合能を確認した。