(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ディーゼル燃料と天然ガス燃料とを二元燃料として用いる内燃機関の、一酸化窒素、メタンおよび煤煙型の粒子状物質を含む燃焼排ガスを浄化処理するSCR排ガス処理機構であって、
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の二元燃料酸化触媒と、
二酸化窒素の存在下で、前記煤煙型の粒子状物質の少なくとも一部を燃焼させて除去する黒煙除去フィルター、および/または、尿素および/またはアンモニアにより構成される還元剤の供給源および選択的接触還元触媒と、を前記燃焼排ガスの流れ方向上流側から下流側に向かってこの順序で備えていることを特徴とする二元燃料SCR排ガス処理機構。
【背景技術】
【0002】
天然ガスは、石油燃料と比べて燃焼過程で排出される二酸化炭素や有害排出成分(硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(以下、「NOx」とも云う。)、煤煙型の粒子状物質)が少ないクリーンな燃料であり、かつ、石油燃料に比して資源的にも優位性があることから,近年、とくにコージェネレーション用機関への適用に注目が集まっている。
【0003】
また、車両用の内燃機関において、火花点火方式の専用ガスエンジンが開発されて実用に供されているが、熱効率に優れた既存のディーゼル内燃機関に従来のディーゼル燃料に天然ガスを併用する二元燃料方式として適用する研究も試みられてきている。これは,天然ガスを補助燃料として吸気管からエンジンの燃焼室に吸入させ、燃焼室に生成した予混合気を軽油で着火して燃焼させる技術であり、機関の改造が少なくて済むという利点がある。
【0004】
ここで、天然ガスはLPG(Liquefied Petroleum Gas(液化石油ガス)の略)、LNG(Liquefied Natural Gas(液化天然ガス)の略)、および、CNG(Compressed Natural Gas(圧縮天然ガス)の略)の3種類に分類される。
【0005】
LPGは、常温、常圧では気体のプロパンやブタンなどの天然ガスからの分離物や石油の精製過程で生産された燃料となるガスを液化させ、液化状態で貯蔵し、必要に応じて気化させて使用する。
【0006】
LNGでの原料ガスはその組成中の85%〜95%がメタンであり、その他のエタン、プロパン、ブタンなどの成分は比較的少ない。LNGは、このような天然ガスを、輸送・貯蔵を目的として−162℃以下に冷却して液体にしたものであり、体積は気体状態の1/600程度とコンパクトである。このようなLNGを利用するためには、ガス井、パイプライン、液化プラント、LNGタンカー、受け入れ設備、気化設備など「LNGチェーン」と呼ばれる一連の設備が必要である。
【0007】
CNGは、高い圧力で圧縮された天然ガスのことであって、そのガス組成はLNGと同様にメタンが85%〜95%と主体を占め、その他のエタン、プロパン、ブタンなどは比較的少ない。このようなCNGは近年、環境に優しい自動車の燃料として注目を浴びるようになった。
【0008】
このようにLNGおよびCNGの天然ガスは、主にメタンからなる。ここで、メタンは、二酸化炭素に比べて難分解性が高いことから、地球温暖化を促進する恐れがあることが知られている。
【0009】
一方、ディーゼル燃料を用いた内燃機関から排出される物質は、一酸化窒素(以下、「NO」とも云う。)を含むガス状成分と、一般的にはパティキュレートと呼ばれる粒子状物質と、から構成されている。
【0010】
このうち、パティキュレートは、燃料噴霧油滴が燃焼時の熱で「蒸し焼き」状態となって生成するすす(ドライスート)、不完全燃焼による燃料の燃え残りとエンジン油揮発分とからなる有機溶媒可溶成分(Soluble Organic Fraction)、および、燃料に含まれる硫黄化合物が燃焼してなる硫黄酸化物(サルフェート)の3つの成分で構成される。本発明における煤煙型の粒子状物質とは、すす(SOOT)のことであり、以下、単に「PM」とも云う。)。
【0011】
ここで、ディーゼル燃料とLNG燃料とを併用するディーゼル内燃機関の排ガスの処理用の触媒として、パラジウムと白金とが、1:0.1〜1:0.5の質量比で含む触媒が提案されている。(特許文献1)
【0012】
しかし、特許文献1により開示された技術では、200℃以上300℃以下の燃焼排ガス温度域で、一酸化窒素の二酸化窒素(以下、「NO
2」とも云う。)への添加反応がほとんど進行しない。そのため、特許文献1に記載された上記のような触媒の、排ガス流れ方向下流に配置されるSCR触媒(Selective Catalytic Reduction(選択的還元反応用)触媒。以下、単に「SCR」とも云う。)での窒素酸化物の浄化効果、および、黒煙除去フィルター(ディーゼル微粒子捕集フィルター。以下、「DPF」とも云う。)でのPMの燃焼による浄化効果が、共に得られないおそれがあった。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の二元燃料酸化触媒は、天然ガス燃料とディーゼル燃料とを燃料として用いる内燃機関の排ガスを処理するための二元燃料酸化触媒であって、ディーゼル燃料の燃焼排ガスに含まれる一酸化窒素の一部を二酸化窒素へ転化する機能と、前記排ガスに含まれるメタンを酸化分解する機能と、を併せ持ち、前記燃焼排ガスの、二元燃料酸化触媒への入口温度が200℃以上300℃以下のときに前記一酸化窒素から二酸化窒素への転化率が20%以上60%以下で、かつ、前記入口温度が380℃のときに前記排ガス中のメタンの80%以上が酸化分解する。
【0028】
<天然ガス>
本発明で用いる天然ガス燃料は、上述の3種類の天然ガスのうちの、CNGまたはLNGである。ここで、インフラ施設、輸送機材および取り扱いが安価で簡便なことからCNGを用いることが好ましい。なお、CNGおよびLNGは通常は設備上、併用しないことが一般であるが、本発明では併用してもよく、「CNGまたはLNG」と記載した場合であっても、これらを併用する場合も含む。
【0029】
<金属酸化物>
本発明の二元燃料酸化触媒において、触媒担体として用いる金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、酸化セリウム等の、一般的な酸化触媒の触媒担体として用いられるものが挙げられ、このうち、比表面積が50〜300m
2/gと高く、初期活性が得られるのでガンマー型酸化アルミニウム(以下、「γ−アルミナ」とも云う。)およびアナターゼ型二酸化チタンであることが好ましい。なお、熱耐久性が持続する、酸化ジルコニウム、ルチル型二酸化チタンおよび酸化セリウムも好適に用いることができる。
【0030】
<効果成分>
前記二元燃料酸化触媒が、効果成分として、硫黄酸化物、塩素および塩素化合物、酸化ランタンを含有していると、高温時の結晶相転移の抑制、ディーゼル燃料由来の燃焼排ガスに含まれる硫黄酸化物(SO
2)による触媒被毒の抑制等が可能となるので好ましい。
【0031】
すなわち、硫黄酸化物、塩素および塩素化合物には、硫黄酸化物(SO
2)による触媒被毒の抑制効果があり、一方、酸化ランタンには、耐熱性低下の原因となるγ−アルミナおよびアナタース型二酸化ランタンの結晶転移の抑制効果がある。
【0032】
このような効果成分は、イオン交換水に溶解し、担体用の原料である金属酸化物と混練した後、乾燥し、焼成することで、触媒担体に含有させることができる。このような効果成分を触媒担体中に0.3〜5質量%の範囲で含有させることが上記の効果を十分に得るために好ましい。
【0033】
<粒度>
本発明の二元燃料酸化触媒で用いる触媒担体の平均粒径(レーザ回折式粒度計によって測定され、粒径分布の体積累積50%に相当する粒径(D50))は、0.5〜15μmであることが好ましい。小さすぎるとハニカムにコーティングするスラリーの粘度が高粘度になり、目詰まりを起こし不良となりやすく、大きすぎるとハニカム担持膜の強度が低くなり、振動で剥がれる恐れが生じる。
【0034】
粒度調整は、公知の方法を用いて行うことができる。すなわち、粉砕機および/または分級機を用いることで調整できる。
【0035】
粉砕機としては、ボールミル粉砕機、アトライター粉砕機、サンドミル粉砕機、ビーズミル粉砕機、ピンミル粉砕機、ハンマーミル粉砕機、パルペライザー粉砕機、ジェットミル粉砕機などが挙げられる。
【0036】
一方、分級機としては、振動ふるい機、超音波振動ふるい機、揺動ふるい機、ターボスクリーナー、気流分級機(コーン型、エルボージェット)などを使用することができる。
【0037】
<金属酸化物担体の触媒基体への担持方法>
触媒基体に金属酸化物担体および触媒活性金属を担持させる方法は、公知の方法を用いることができるが、高価な触媒活性金属の担持ロスおよびその回収コストを抑制することができるので、まず、前記金属酸化物により構成された触媒担体を担体基体に担持させ、次いで、この触媒担体が担持された触媒基体に、触媒活性金属を担持させる方法を採用することが好ましい。
【0038】
触媒基体として、ハニカムモノリス担体を用いる場合には、触媒担体を少なくとも50g/L(リットル)以上となるように担持させることが好ましい。すなわち、触媒担体の担持量が少なすぎると、触媒活性金属の担持量を多くすることができず、そのときには十分な浄化効果が得られない恐れがある。より好ましくは、触媒担体が50〜200g/Lの範囲である。
【0039】
<触媒基体>
触媒基体としては、気体流の通過処理を可能にするために、公知のハニカムフロースルー型の触媒基体を用いることができる。このような触媒基体の材質としてはセラミック、無機繊維および金属から選択できる。ここで、好適な多孔質としてハニカムフロースルーモノリス基板として、コージライト、α−アルミナ、炭化ケイ素、チタン酸アルミニウム、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、リシア輝石、アルミナ−シリカ−マグネシアまたはケイ酸ジルコニウム等の公知のセラミック材料製のものが使用できる。
【0040】
無機繊維製の触媒基体として、シリカファイバー、アルミナファイバーおよびシリコン、チタンまたはジルコニウムの酸化物等からなるセラミックファイバーが使用できる。
【0041】
また、金属製の触媒基体として、チタン製やステンレススチール製、または、ニッケル、クロムおよびアルミニウムのうちの2つ以上を含む合金製のものを使用できる。
【0042】
触媒基体としては、これらのうち、特にコスト面で有利であるので、ハニカムフロースルーモノリス型のコージライト製のものを用いることが好ましい。
【0043】
<バインダー>
触媒基体への担持担体の担持処理に適したバインダーとしては、アルミナおよびシリカが挙げられるがこれらには制限されない。アルミナバインダーとしては、アルミニウム酸化物、アルミニウム水酸化物、およびアルミニウム酸水酸化物が挙げられる。また、アルミニウム塩およびコロイドの形態のアルミナも使用できる。シリカバインダーとしては、コロイドシリカを含む二酸化ケイ素(SiO
2)の種々の形態を含む。さらに、バインダーとして、これらを単独で、あるいは、ジルコニア、アルミナ、および、シリカ等を適宜組み合わせて用いることができる。
【0044】
<触媒活性金属の担持>
本発明の二元燃料酸化触媒は、例えば、触媒基体に金属酸化物からなる触媒担体を無機バインダーを併用して担持させ、乾燥、熱処理し、得られた触媒担体を担持する触媒基体を、パラジウムイオンと白金イオンとを含む触媒活性金属水溶液、または、パラジウムイオンと白金イオンとイリジウム(第二活性触媒金属としてのイリジウム)イオンとを含む触媒活性金属水溶液に浸漬し、12〜24時間保持してこれら成分を触媒担体に共沈させて乾燥、熱処理して担持させて得ることができる。
【0045】
<触媒活性金属>
本発明の二元燃料酸化触媒では、触媒温度(通常は触媒へ供給される燃焼排ガスの温度に等しい)が380℃以上でのメタンの酸化分解によるメタン浄化効果と、300℃以下でのNOの酸化によるNO
2への転化効果と、を併せ持たせるために、パラジウムと白金、さらに必要に応じてイリジウムを含有し、パラジウムと白金との質量比が、パラジウムを1としたときに白金が0.5超0.9未満の範囲とすることが必要である。質量比の好ましい範囲としては、白金が0.55以上0.88以下である。すなわち、白金の量が少なすぎるとNOの酸化によるNO
2の生成が少なく、下流のDPFにおけるPM燃焼性およびSCR触媒のNOxの浄化性能が得られにくくなり、多すぎると、メタンを含む炭化水素の浄化性能が低下しやすい。なお、上記の質量比のより好ましい範囲としては0.55以上0.8以下である。
【0046】
また、イリジウムを第二活性触媒金属として併用する場合の好ましい質量比範囲はパラジウムの質量を1としたときに0.2以上0.9以下である。イリジウムの量が少なすぎるとイリジウム触媒の添加によるパラジウム触媒の相乗効果として、メタンを含む炭化水素の浄化性能と、NO
2の生成量が増えず、下流のDPFにおけるPM燃焼性およびSCR触媒のNOx浄化性能との、向上させるメリットが少ない。多すぎると、無駄に高価な触媒として実用性に欠くことになる。より好ましい範囲としては0.28以上0.86以下である。
【0047】
<触媒活性金属を含む水溶性化合物>
白金を含む水溶性化合物として、塩化白金酸、テトラアンミン白金硝酸塩、ジニトロジアンミン白金などが挙げられる。このうち、貴金属の担持(共沈)性が高い点で、ジニトロジアンミン白金が好ましい。パラジウムを含む水溶性化合物としては、硝酸パラジウム、塩化パラジウム、ジニトロジアンミンパラジウム、酢酸パラジウムなどが例示される。
【0048】
<第二触媒活性金属を含む水溶性化合物>
本発明では、触媒活性金属の、パラジウムおよび白金以外を第二触媒活性金属と呼び、イリジウムを含む水溶性化合物として、硝酸イリジウム、硫酸イリジウム、塩化イリジウム、ヘキサアンミンイリジウムなどが挙げられる。
【0049】
前記活性貴金属および第二触媒活性金属の水溶性化合物は、水に対する溶解度が低く、所望の濃度が得られない場合は、溶解性を高めるために、硝酸や塩酸等を添加してもよい。
【0050】
<本発明の二元燃料酸化触媒について>
本発明の二元燃料酸化触媒は、天然ガス燃料の未燃焼メタンを酸化分解する機能と、ディーゼル燃焼排ガスからのNOの一部をNO
2へ効果的に転化する機能とを、併せ持つ。
【0051】
すなわち、本発明の二元燃料酸化触媒の入口温度が350℃を超える車両の高速走行(高負荷)時において、ディーゼル燃料とともに天然ガス燃料を混合燃焼して、天然ガス由来の難分解性成分であるメタンを浄化することが可能となり、一方、入口温度が300℃以下となる、車両の街中走行(低負荷)時において、ディーゼル燃料のみで燃焼させたとき、一酸化炭素(以下、「CO」とも云う。)、炭化水素(以下「HC」と云う。)、SOF(未燃燃料や未燃の潤滑油)の浄化と、一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO
2)への転化を可能することができる。
【0052】
このため、本発明の二元燃料酸化触媒の使用に際し、触媒入口の燃焼排ガス温度が通常、350℃超600℃以下の範囲で二元燃料を用いることが好ましく、この温度域より低い温度領域である200℃以上300℃以下の場合にはディーゼル燃料のみでの燃焼とすることが好ましい。二元燃料を用いる、より好ましい温度としては380℃以上450℃以下の範囲である。本発明の二元燃料酸化触媒は、燃焼排ガス中のメタンの酸化除去において高い活性を有するが、燃焼排ガス処理温度が低すぎる場合には、活性が下がり、所望のメタン除去率が得られないおそれがある。一方、触媒入口の燃焼排ガス温度域が高すぎる場合には、触媒の耐久性が悪化するおそれがある。
【0053】
このような理由で、本発明の二元燃料酸化触媒を備えた二元燃料ディーゼル内燃機関では、本発明の二元燃料酸化触媒を用い、処理対象ガスの触媒入口温度を350℃超のときに、ディーゼル燃料と天然ガスとを混合し燃焼室に噴射して、燃焼排ガス中の残存燃料成分であるメタンを酸化触媒で処理するように制御することが好ましい。なお、これら以外の条件は公知の方法に準じることができる。
【0054】
たとえば、二元燃料ディーゼル機関の性能、燃焼排ガス特性、燃焼特性は、全投入熱量に対する天然ガス(CNGまたはLNG)供給熱量の比率(Qg/Qt)を変化させた際、天然ガス供給比率の増加に伴い、Smoke濃度、すなわち、黒煙濃度は顕著に低減する。ここで、二元燃料運転ではディーゼル運転に比べ着火時期が遅角することが知られている。また、天然ガス供給比率(CNGまたはLNGとディーゼル燃料との合計体積量におけるCNGまたはLNGの体積量。以下、「CNG供給比率」とも云う。)が75%以下の範囲までは通常のディーゼル運転と同等の高い正味熱効率が得られるが、CNG供給比率が75%を超えると燃焼変動の急激な増大が誘起されて、着火が不安定となり,正味熱効率は大幅に低下することが知られている。本発明においても、CNG供給比率は、着火遅角によるピストンの仕事量にロスが少なく正味の熱効率を高く保持できるので、75%以下とすることが好ましい。ここで、CNG供給比率は30%以上であることが好ましい。すなわち、30%未満であるとSmoke濃度が高く、2元燃料を用いるメリットが得られない。なおQg/Qt=0%はディーゼル燃料のみで運転した場合を示す。
【0055】
<本発明の二元燃料SCR排ガス処理機構>
本発明の二元燃料SCR排ガス処理機構は、ディーゼル燃料と天然ガス燃料とを二元燃料として用いる内燃機関の、一酸化窒素、メタンおよび煤煙型の粒子状物質を含む燃焼排ガスを浄化処理するSCR排ガス処理機構であって、上記した本発明の二元燃料酸化触媒と、二酸化窒素の存在下で、前記煤煙型の粒子状物質の少なくとも一部を燃焼させて除去する黒煙除去フィルター、および/または、尿素および/またはアンモニアにより構成される還元剤の供給源および選択的接触還元(SCR)触媒と、を前記燃焼排ガスの流れ方向上流側から下流側に向かってこの順序で備えている。
【0056】
図1に本発明の二元燃料SCR排ガス処理機構の一例を示した。この例では、ディーゼル燃料と天然ガス燃料とを二元燃料として用いる内燃機関であるエンジン1の排気ガスが、本発明の二元燃料酸化触媒(DOC)を通過して、NOがNO
2に転化されるとともにCO、HCや、SOFが除去され、さらに、高温時にはメタンが酸化されて除去された後に、尿素および/またはアンモニアにより構成される還元剤(以下、「還元剤」とも云う。)が、還元剤インジェクター7から混合された後、選択的接触還元触媒(「SCR」あるいは「SCR触媒」)に供給され、NOxが選択的接触還元され、浄化された排気ガスが最終的に排出される。
【0057】
ここで選択的接触還元触媒の反応機構について説明する。
還元剤(尿素、アンモニア(以下「NH
3」」とも云う。)など)を使用する選択的接触還元(SCR)系では幾つかの化学反応が起こり、それらの全てが、NOxを元素状窒素に還元する反応を代表している。支配的な反応機構は、化学式(1)により表される。
【0058】
[化1]
4NO+4NH
3+O
2 → 4N
2+6H
2O ・・・・・(1)
【0059】
競合する酸素との非選択的反応は、2次的生成物を形成するか、またはNH
3を非生産的に消費することがある。そのような非選択的反応として、たとえば化学式(2)で示されるNH
3の完全酸化が挙げられる。
【0060】
[化2]
4NH
3+5NO
2 → 4NO+6H
2O ・・・・・(2)
【0061】
さらに、NO
x中に存在するNO
2とNH
3の反応は、化学式(3)で示される反応により進行すると考えられる。
【0062】
[化3]
3NO
2+4NH
3 → (7/2)N
2+6H
2O ・・・・・(3)
【0063】
さらに、NH
3とNOとNO
2の間の反応は、化学式(4)で示される反応により表される。
【0064】
[化4]
NO+NO
2+2NH
3 → 2N
2+3H
2O ・・・・・(4)
【0065】
化学式(1)、(3)および(4)で示される反応の反応速度は、反応温度および使用する触媒の種類に応じて大きく異なり、化学式(4)で示される反応の速度は、一般的に、化学式(1)および(3)で示される反応の速度の2〜10倍高い。
【0066】
これらのことから、SCR触媒のNOx浄化効果を高めるには、NOとNO
2との容積比を1:0.5〜1:1.5とすることが好ましいことが容易に理解される。
【0067】
図2には、本発明の二元燃料SCR排ガス処理機構の他の例を示した。この例では
図1の例におけるDOCから排出された燃焼排ガスが、還元剤インジェクター7により還元剤が添加される前に、煤煙型の粒子状物質の少なくとも一部を除去する黒煙除去フィルター(以下、「DPF」とも云う。)3を通過している。
【0068】
このように、本発明の二元燃料酸化触媒の燃焼排ガス流れ下流側に、煤煙型の粒子物質のトラップ機能を有するDPF3を設けることができる。このとき、本発明の二元燃料酸化触媒の、NOからNO
2へ効果的に転化させる機能により、NO
2の存在下で煤煙型の粒子物質を比較的低い温度で効率よく燃焼させることができる。その結果、DPF3の閉塞および背圧の問題を引き起こさずに、燃焼排ガスを浄化し、同時にNOxの一部を還元することができる。DPFが一般的に市販されており、セラミックから製造される一般的にウォール−フローフィルターと呼ばれる型のDPFが特に好ましいが、織布また不織布の耐熱性布地を包含する他のタイプのものも、DPFとして使用できる。
【0069】
図3に示した本発明の二元燃料SCR排ガス処理機構の他の例では、
図2におけるSCR4の燃焼排ガスの流れ下流側にアンモニア酸化触媒(AMOx)5を設置している。このAMOx5により燃焼排ガス中の残留アンモニアを酸化させて除去することができる。
【0070】
図4に示した本発明の二元燃料SCR排ガス処理機構の他の例は、
図2に示した例のDPF3の燃焼排ガスの流れ下流側でかつ還元剤インジェクター7の上流側に、さらにDOC2が配置されている。この構成により、
図2に示した二元燃料SCR排ガス処理機構に比べて、DPF3とSCR2と共にNO2を供給することを可能して、DPF3でのPM燃焼性とSCR2でのNOxの浄化性能を高めることができる。
【0071】
図5に示した本発明の二元燃料SCR排ガス処理機構の他の例では、
図4に示した本発明の二元燃料SCR排ガス処理機構の例のSCR4の燃焼排ガスの流れ下流側にAMOx5が配置されている。この構成により、
図4に示した二元燃料SCR排ガス処理機構では排出されてしまう残留アンモニアが除去される。
【0072】
図6に示した本発明の二元燃料SCR排ガス処理機構の他の例では、エンジン1の燃焼排ガスはDOC2で浄化された後に、還元剤インジェクター7により還元剤が添加され、次いでSCR/DPF一体型触媒6、すなわちSCRとDPFとが一体化された触媒を通過する。この構成によれば1つのハニカム触媒体でPM浄化とNOx浄化との機能を有することができ、ダウンサイジングを図ることができる。
【0073】
図7には、
図6に示した例のSCR/DPF一体型触媒6の下流側にAMOx5が配置されている例を示した。
【0074】
本発明の二元燃料ディーゼル内燃機関は例えば
図1〜7に示した二元燃料SCR排ガス処理機構を備えている。
【0075】
図8に本発明の二元燃料ディーゼル内燃機関の一例として、
図2で示したタイプの二元燃料SCR排ガス処理機構を備えた二元燃料ディーゼル内燃機関のモデル図を示した。
【0076】
ここで示したディーゼルエンジンは排気再循環タイプであり、EGRクーラー14をエンジン本体21の吸気管25と排気管26との間に有していて、排ガスの一部がEGRクーラー14で冷却されて吸気管25からエンジン本体21の燃焼室22に循環供給される。吸気管25には天然ガス燃料の供給ライン11に接続された天然ガス燃料の噴射インジェクター9が設けられており、天然ガス燃料がエンジン本体21の吸気サイクル時に燃焼室内に吸入されるようになっている。エンジン本体21の燃焼室22には、ディーゼル燃料の供給ライン12に接続されたディーゼル燃料の噴射インジェクター10が設けられていて、燃焼室22にディーゼル燃料が供給可能となっている。排気管26にはDOC2に導入される燃焼排ガスの温度を測定するためのDOC入口温度センサー8、DOC2、還元剤の供給ライン13に接続された還元剤インジェクター7、および、SCR4が、燃焼排ガス流れ方向上流から下流に向かってこの順で設けられている。なお、図中、エンジン本体21のピストンを符号23を付して示す。この本発明の二元燃料ディーゼル内燃機関では、DOC入口温度センサー8により燃焼排ガスの温度を測定し、350℃超のときに、天然ガス燃料の噴射インジェクター9から天然ガス燃料を供給する制御を行っている。
【0077】
以上、本発明について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明の二元燃料酸化触媒、SCR排ガス処理機構、二元燃料ディーゼル内燃機関、および、二元燃料ディーゼル内燃機関の制御方法は、上記実施形態の形成に限定されるものではない。
【0078】
当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の二元燃料酸化触媒、SCR排ガス処理機構、二元燃料ディーゼル内燃機関、および、二元燃料ディーゼル内燃機関の制御方法を適宜改変することができる。このような改変によってもなお、本発明の二元燃料酸化触媒、SCR排ガス処理機構、二元燃料ディーゼル内燃機関、および、二元燃料ディーゼル内燃機関の制御方法の構成を具備する限り、もちろん、本発明の範疇に含まれるものである。
【実施例】
【0079】
以下、実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定
されるものではない。
【0080】
<実施例1>
金属酸化物としてγ−アルミナからなる、酸化ランタンを被覆したγ−アルミナ担体と、活性貴金属触媒としてのパラジウムと白金との質量比が1:0.6である二元燃料酸化触媒を次のように作製した。
【0081】
まず、γ−アルミナ(GB−13、水沢化学社製)を粉砕し、平均粒径(D50)を5μmに調整したγ−アルミナ粉末300gを、予めイオン交換水750gに硝酸ランタン6水和物(La(NO
3)
3・6H
2O)(和光純薬社製)9.36gを溶解して調製した硝酸ランタン水溶液に、攪拌しながら少量ずつ投入して混合した。その後、硝酸ランタン水溶液から取り出し、底面積の大きい容器に移して十分に乾燥させ、次に電気炉を用いて500℃で2時間の熱処理(焼成)を行った。その後、磁性乳鉢で破砕を行って平均粒径(D50)を5μmとして、1質量%のγ−アルミナから構成されかつ酸化ランタンを含有する触媒担体を得た。
【0082】
次に、この酸化ランタンが被覆された触媒担体25gと、アルミナゾル(日産化学社製、AS200)9.3gと、コロイダルシリカ(日産化学社製、スノーテックO)15.5gとを、イオン交換水75gとともに磁性ボールミルを用いて混合し、ウォシュコート(WC)用スラリーを得た。このスラリーをコージライト製ハニカム(直径21mm、長さ20mm、#300cpsi)にコーティングし、乾燥後、500℃で2時間の熱処理を行って、触媒担体がコーティングされたハニカム構造体を得た。このハニカム構造体の、触媒担体のコート量は、ハニカム構造体の嵩体積当たり、100g/L(L:リットル)であった。
【0083】
次いで、塩化パラジウム(PdCl
2)塩酸3.6質量%水溶液(パラジウム(以下、「Pd」とも云う。)として100g/L)と、ジニトロジアンミン白金(Pt(NO
2)
2(NH3)
2)水溶液(白金(以下、「Pt」とも云う。)として8.5質量%)とを準備した。
【0084】
イオン交換水25gに、前記塩化パラジウム塩酸溶液0.118mL(ミリリットル)と、前記ジニトロジアンミン白金水溶液0.08gと、を加えて活性貴金属担持水溶液とした。この活性貴金属担持水溶液にはPdが11.8mg、Ptが6.8mgそれぞれ含まれ、PdとPtとの質量比が、1:0.58であった。
【0085】
前記活性貴金属担持水溶液をガラス容器に入れ、そこに前記の触媒担体がコーティングされたハニカム構造体(以下、単に「触媒担体」とも云う。)を含浸させ密閉した。この状態で、乾燥機を用い50℃で24時間加温して、パラジウムと白金とを触媒担体に共沈させて担持させて取り出した。乾燥後、500℃で2時間の熱処理を行った後、実施例1の二元燃料酸化触媒を得た。活性貴金属担持水溶液の残液を分析した結果、活性貴金属担持量率は、Pdで99質量%、Ptが100質量%であった。
【0086】
<活性貴金属担持量率>
上記の活性貴金属担持量率は次のようにして調べたものである。すなわち、活性貴金属担持水溶液の担持処理後の残液を、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES:Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry)を用いて、活性による定量分析を行い、活性貴金属担持量率を下記式(1)で求める。
【0087】
[数1]
(1−(活性貴金属担持後水溶液中のPd、Pt、Irの量)/(活性貴金属担持前水溶液中のPd、Pt、Irの量))×100% ……(1)
【0088】
<実施例2>
前記活性貴金属担持水溶液に含まれる、PdとPtとの質量比を、1:0.85とした以外は実施例1と同様にして、実施例2の二元燃料酸化触媒を得た。
すなわち、実施例1と同様にして触媒担体を作製し、その後、イオン交換水25gに、前記塩化パラジウム水溶液0.080mLと、前記ジニトロジアンミン白金水溶液0.08gと、を加えて触媒活性金属担持水溶液とした。前記活性貴金属担持水溶液にPdが8.0mg、Ptが6.8mgそれぞれ含まれ、PdとPtとの質量比が、1:0.85であった。その後は、やはり実施例1と同様にして、実施例2の二元燃料酸化触媒を得た。このときの活性貴金属担持量率は、Pdが100質量%、Ptが100質量%であった。
【0089】
<実施例3>
前記活性貴金属担持水溶液に含まれるPdとPtとに、さらにイリジウム(以下、「Ir」とも云う。)を加えた以外は実施例1と同様にして、本発明の二元燃料酸化触媒を得た。
【0090】
すなわち、実施例1と同様にして触媒担体を作製し、イオン交換水25gに前記塩化パラジウム水溶液0.118mLと、前記ジニトロジアンミン白金水溶液0.08gと、硝酸イリジウム(Ir(NO
3)
4)水溶液(Irとして100g/L)0.034mLと、を加えて活性貴金属担持水溶液とした。この活性貴金属担持水溶液には、Pdが11.8mg、Ptが6.8mg、Irが3.4mgそれぞれ含まれ、PdとPtとIrとの質量比が、1:0.58:0.29であった。その後は、実施例1と同様にして、実施例3の二元燃料酸化触媒を得た。このときの活性貴金属担持量率は、Pdで99質量%、Ptで100質量%、Irで97質量%であった。
【0091】
<実施例4>
前記活性貴金属担持水溶液に含まれるPdとPtとに、さらにIrを加えた以外は、実施例1と同様にして、本発明の二元燃料酸化触媒を得た。
【0092】
すなわち、実施例1と同様にして触媒担体を作製し、イオン交換水25gに前記塩化パラジウム水溶液0.118mLと、前記ジニトロジアンミン白金水溶液0.08gと、硝酸イリジウム溶液(Irとして、100g/L)0.102mLと、を加えて活性貴金属担持水溶液とした。この活性貴金属担持水溶液には、Pdが11.8mg、Ptが6.8mg、Irが10.2mgそれぞれ含まれ、PdとPtとIrとの質量比は1:0.58:0.86であった。その後、実施例1と同様にして、実施例4の二元燃料酸化触媒を得た。このときの活性貴金属担持量率は、Pdが98質量%、Ptが99質量%、Irが95質量%であった。
【0093】
<実施例5>
特許文献1と、同様に、硝酸パラジウム(Pd(NO
3)
2)と、塩化白金酸(H
2PtCl
6)とを用い、前記活性貴金属担持水溶液に含まれるPdとPtとの質量比を、1:0.55とした以外は、実施例1と同様にして、本発明の二元燃料酸化触媒を得た。
【0094】
すなわち、実施例1と同様にして触媒担体を作製し、その後、イオン交換水25gに、前記硝酸パラジウム水溶液0.123mLと、塩化白金酸水溶液(Ptとして8.5質量%)0.08gと、を加えて触媒活性金属担持水溶液とした。この活性貴金属担持水溶液にはPdが12.3mg、Ptが6.8mgそれぞれ含まれ、PdとPtとの質量比が、1:0.55であった。その後は、実施例1と同様にして、実施例5の二元燃料酸化触媒を得た。このときの活性貴金属担持量率は、Pdが93質量%、Ptが98質量%であった。
【0095】
<実施例6>
実施例1の塩化パラジウム水溶液を、硝酸パラジウム(Pd(NO
3)
2)水溶液(Pdとして、100g/L)に代えた以外は実施例1と同様にして、実施例6の二元燃料酸化触媒を得た。
【0096】
すなわち、実施例1と同様にして触媒担体を作製し、その後、イオン交換水25gに、前記硝酸パラジウム水溶液0.118mLと、前記ジニトロジアンミン白金水溶液0.08gと、を加えて触媒活性金属担持水溶液とした。前記活性貴金属担持水溶液にPdが11.8mg、Ptが6.8mgそれぞれ含まれ、PdとPtとの質量比が、1:0.58であった。その後は、やはり実施例1と同様にして、実施例6の二元燃料酸化触媒を得た。このときの活性貴金属担持量率は、Pdが100質量%、Ptが100質量%であった。
【0097】
<実施例7>
前記活性貴金属担持水溶液に含まれる、PdとPtとの質量比を、1:0.75とした以外は実施例1と同様にして、実施例7の二元燃料酸化触媒を得た。
【0098】
すなわち、実施例1と同様にして触媒担体を作製し、その後、イオン交換水25gに、前記塩化パラジウム水溶液0.091mLと、前記ジニトロジアンミン白金水溶液0.08gと、を加えて触媒活性金属担持水溶液とした。前記活性貴金属担持水溶液にPdが9.1mg、Ptが6.8mgそれぞれ含まれ、PdとPtとの質量比が、1:0.75であった。その後は、やはり実施例1と同様にして、実施例7の二元燃料酸化触媒を得た。このときの活性貴金属担持量率は、Pdが99質量%、Ptが100質量%であった。
【0099】
<比較例1>
特許文献1の実施例4と同様にして、前記活性貴金属担持水溶液に含まれる、PdとPtとの質量比が1:0.20の二元燃料酸化触媒を得た。
【0100】
すなわち、硝酸パラジウムと塩化白金酸とを用いて、Pdとして34.0mg、Ptとして6.8mgとなる触媒活性金属の水溶液25gを作製した。PdとPtとの質量比が、1:0.20であった。その後、実施例1と同様にして、比較例1の二元燃料酸化触媒を得た。このときの活性貴金属担持量率は、Pdが85質量%、Ptが98質量%であった。
【0101】
<比較例2>
特許文献1の実施例3と同様にして、前記活性貴金属担持水溶液に含まれる、PdとPtとの質量比が1:0.46の二元燃料酸化触媒を得た。
【0102】
すなわち、実施例1と同様にして、触媒担体を作製し、次に、硝酸パラジウムと塩化白金酸とを用いて、Pdとして14.8mg、Ptとして6.8mgとなる触媒活性金属の水溶液25gを作製した。このときPdとPtとの質量比は、1:0.46であった。その後、実施例1と同様にして、比較例2の二元燃料酸化触媒を得た。このときの活性貴金属担持量率は、Pdが92質量%、Ptが98質量%であった。
【0103】
<比較例3>
前記活性貴金属担持水溶液に含まれる、PdとPtとの質量比を、1:0.93とした以外は、実施例1と同様にして、本発明の二元燃料酸化触媒を得た。
【0104】
すなわち、実施例1と同様にして、触媒担体および塩化パラジウム水溶液とジニトロジアンミン白金水溶液を作製した。その後、イオン交換水25gに、前記塩化パラジウム水溶液0.073mLと、ジニトロジアンミン白金水溶液0.08gを加えて、活性貴金属担持水溶液とした。この活性貴金属担持水溶液にPdが7.3mg、Ptが6.8mg含まれ、PdとPtとの質量比が、1:0.93であった。その後は、実施例1と同様にして、比較例3の二元燃料酸化触媒を得た。このときの活性貴金属担持量率は、Pdが100質量%、Ptが100質量%であった。
【0105】
<比較例4>
実施例1と同様にして、前記活性貴金属担持水溶液に含まれる、PdとPtとの質量比を、1:0.47の二元燃料酸化触媒を得た。
【0106】
すなわち、実施例1と同様にして触媒担体を作製し、その後、イオン交換水25gに、前記塩化パラジウム水溶液0.146mLと、ジニトロジアンミン白金水溶液0.08g を加えて、触媒活性金属担持水溶液とした。前記活性貴金属担持水溶液にPdが14.6mg、Ptが6.8mg含まれ、PdとPtとの質量比が、1:0.47であった。その後は、実施例1と同様にして、比較例4の二元燃料酸化触媒を得た。このときの活性貴金属担持量率として、Pdが97質量%、Ptが99質量%であった。
【0107】
これら実施例1〜7、および、比較例1〜4の二元燃料酸化触媒について表1にまとめた。
【0108】
【表1】
【0109】
<浄化性能試験>
前記二元燃料酸化触媒体を、表2に示す混合条件で作成した試験ガスに対して、同様に表2に示す空間速度条件で浄化性能を評価した。このときの、触媒の燃焼排ガス流れ方向上流側の濃度に対し下流側の濃度をオンラインFT−IR分析法で測定して、NOからNO
2への転化率、メタン、エタン、プロパン、一酸化炭素の削減率を求めた。その結果を表3〜表7に示す。
【0110】
[表2]
<試験ガスおよび試験条件>
一酸化窒素濃度 :550ppm
メタン濃度 :3000ppm
プロパン濃度 :1333ppm
一酸化炭素濃度 :4400ppm
酸素濃度 :10体積%
二酸化炭素濃度 :11体積%
水分濃度 : 6体積%
窒素を加えて100体積%とした。
空間速度SV :50000/h
【0111】
【表3】
【0112】
【表4】
【0113】
【表5】
【0114】
【表6】
【0115】
【表7】
【0116】
これら表3〜7から、実施例1〜7の二元燃料酸化触媒は、街中での低速走行時を想定した、ディーゼル燃料のみでの触媒入口温度が200℃以上300℃以下の実用範囲で、NOからNO
2への転嫁率が20%〜60%であって、DPFまたはSCR触媒としての機能を満たすことが判る。特に、実施例3および実施例4の二元燃料酸化触媒は、NO
2への転嫁率が50%以上と高く、それに比較して、比較例1、比較例2および比較例4の二元燃料酸化触媒は、NOからNO
2への転嫁率が2%〜18%であり、その活性は十分と云えないものであった。
【0117】
一方、実施例1および実施例2の二元燃料酸化触媒は、高速走行(高負荷)時を想定した、ディーゼル燃料に体積比で30%〜60%の天然ガスを混合する場合において、触媒入口温度380℃のとき、難分解性のメタンを80%以上削減できた。これに対して、比較例3の二元燃料酸化触媒は、触媒入口温度380℃で削減率が14%と、極めて低いメタン浄化率であった。
【0118】
また、PdとPtとの質量比が1:0.85の実施例2の二元燃料酸化触媒と、質量比が1:0.75の実施例2の二元燃料酸化触媒と、を比較すると、後者がメタン削減率、および、エタンの削減率で優れており、その性能は他の、質量比が1:0.58の実施例の二元燃料酸化触媒と同レベルであった。
【0119】
本発明の二元燃料酸化触媒は、街中走行でディーゼル燃料の触媒入口温度が200℃以上300℃以下の範囲で、NOからNO
2への転嫁率が高く、DPFまたはSCR触媒を用いるSCR機構のすす粒子物質およびNOxの浄化に寄与でき、かつ、高速走行(高負荷)時にディーゼル燃料に天然ガスを混合する本発明の方法で、難分解性のメタンを高度に浄化できるものである。