(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6501139
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】放射線検出器支持架台
(51)【国際特許分類】
G01T 7/00 20060101AFI20190408BHJP
G01T 1/16 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
G01T7/00 A
G01T1/16 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-228000(P2014-228000)
(22)【出願日】2014年11月10日
(65)【公開番号】特開2016-90503(P2016-90503A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】710002462
【氏名又は名称】セイコー・イージーアンドジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】板津 英輔
【審査官】
岡▲崎▼ 輝雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−300846(JP,A)
【文献】
特開2007−219197(JP,A)
【文献】
特開平11−192220(JP,A)
【文献】
特開2005−077380(JP,A)
【文献】
特開2009−025005(JP,A)
【文献】
特開2012−141500(JP,A)
【文献】
特表2002−500734(JP,A)
【文献】
特開2014−163776(JP,A)
【文献】
特開2014−169943(JP,A)
【文献】
特開平11−044770(JP,A)
【文献】
国際公開第2002/021038(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 7/00
G01T 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線検出器を保持する検出器保持部と、
前記検出器保持部を支持する炭素材料から形成され、脚部と、前記脚部に支持され表面上に前記検出器保持部が載置される頭部と、を備える支持部と、
前記放射線検出器の入射窓を通過した放射線が入射する検出部と、
前記支持部に着脱可能に固定され、基端部から先端部に向かって伸びる棒状に形成され、前記先端部に効率較正用の標準線源を固定する線源固定用治具と、
を備え、
前記基端部は、前記支持部に設けられた治具支持部に回転可能に固定され、
前記基端部の回転軸は、前記入射窓を臨む所定姿勢の前記検出部の中心を通過する、
放射線検出器支持架台。
【請求項2】
前記検出器保持部は、
少なくとも0°から−90°の仰俯角範囲で前記放射線検出器の向きを変更可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の放射線検出器支持架台。
【請求項3】
前記検出器保持部は、
前記支持部に着脱可能である、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射線検出器支持架台。
【請求項4】
前記検出器保持部によって保持される前記放射線検出器の検出部の中心の位置は、水平方向において前記支持部の前記頭部の中心位置からずれている、
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1つに記載の放射線検出器支持架台。
【請求項5】
前記検出器保持部は、
前記放射線検出器のエンドキャップを前記支持部の頭部から離間させて前記放射線検出器を保持する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1つに記載の放射線検出器支持架台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射線検出器支持架台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外での環境試料(例えば、地表面に沈着した放射性同位元素など)の測定に用いる放射線検出器を支持する支持架台が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「放射能測定法シリーズ 33 ゲルマニウム半導体検出器を用いたin−situ測定法」、文部科学省、平成20年3月、p.7−8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る支持架台を用いて環境試料を測定する際に、支持架台が鉄またはアルミニウムなどの金属の材料により形成されていると、環境試料と放射線検出器との間に介在する支持架台の一部(例えば、脚部など)による放射線の減弱が増大するという問題が生じる。このような問題に対して、屋外での測定に対応して運搬容易性および設置容易性を確保しつつ、放射線の減弱を抑制することが望まれている。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、運搬容易性および設置容易性を確保しつつ、放射線の減弱を抑制することが可能な放射線検出器支持架台を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1)本発明の一態様に係る放射線検出器支持架台は、放射線検出器を保持する検出器保持部と、前記検出器保持部を支持する炭素材料から形成され
、脚部と、前記脚部に支持され表面上に前記検出器保持部が載置される頭部と、を備える支持部と、
前記放射線検出器の入射窓を通過した放射線が入射する検出部と、前記支持部に着脱可能に固定され、基端部から先端部に向かって伸びる棒状に形成され、前記先端部に効率較正用の標準線源を固定する線源固定用治具と、を備え
、前記基端部は、前記支持部に設けられた治具支持部に回転可能に固定され、前記基端部の回転軸は、前記入射窓を臨む所定姿勢の前記検出部の中心を通過する。
【0007】
(2)上記(1)に係る放射線検出器支持架台では、前記検出器保持部は、少なくとも0°から−90°の仰俯角範囲で前記放射線検出器の向きを変更可能である。
【0008】
(3)上記(1)または(2)に係る放射線検出器支持架台では、前記検出器保持部は、前記支持部に着脱可能である。
【0009】
(4)上記(1)から(3)の何れか1つに係る放射線検出器支持架台では、
前記検出器保持部によって保持される前記放射線検出器の検出部の中心の位置は、水平方向において前記支持部の前記頭部の中心位置からずれている。
【0010】
(5)上記(1)から(4)の何れか1つに係る放射線検出器支持架台では、前記検出器保持部は、前記放射線検出器のエンドキャップを前記支持部の頭部から離間させて前記放射線検出器を保持する。
【発明の効果】
【0011】
上記(1)に記載の態様に係る放射線検出器支持架台によれば、炭素材料から形成される支持部を備えることにより、環境試料と放射線検出器との間に支持部の一部が介在する場合であっても、金属材料から形成される支持部に比べて放射線の減弱を抑制することができる。さらに、炭素材料から形成される支持部を、金属材料から形成される支持部に比べて軽量化することができ、運搬容易性および設置容易性を確保することができる。
【0012】
上記(2)に記載の態様に係る放射線検出器支持架台によれば、測定対象に応じて放射線検出器の姿勢を最適化することができる。
【0013】
上記(3)に記載の態様に係る放射線検出器支持架台によれば、運搬容易性および設置容易性を、より一層、向上させることができる。
【0014】
上記(4)に記載の態様に係る放射線検出器支持架台によれば、環境試料と放射線検出器との間に支持部の一部が介在することを抑制し、支持部による放射線の減弱を抑制することができる。
【0015】
上記(5)に記載の態様に係る放射線検出器支持架台によれば、支持部の頭部による放射線の減弱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る放射線検出器支持架台の斜視図。
【
図2】本発明の実施形態の変形例に係る放射線検出器支持架台の斜視図。
【
図3】本発明の実施形態の変形例に係る放射線検出器支持架台における検出器支持部の下部の一部を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る放射線検出器支持架台について添付図面を参照しながら説明する。
【0018】
実施形態による放射線検出器支持架台10は、
図1に示すように、放射線検出器11を保持する検出器保持部12と、検出器保持部12を支持する支持部13と、を備えている。さらに、放射線検出器支持架台10は、屋内での放射線検出器11の較正時などにおいて用いられるように着脱可能な線源固定用治具14を備えている。
なお、
図1においては、線源固定用治具14を図示しているが、屋外などでの測定時においては、線源固定用治具14は取り外される。一方、屋内での放射線検出器11の較正時などにおいて線源固定用治具14は装着される。
【0019】
放射線検出器11は、例えばゲルマニウム半導体検出器やシリコン半導体検出器などの半導体検出器である。放射線検出器11は、クライオスタット21の内部を電気的に冷却するスターリング冷凍機などの電気冷却装置22を備えている。放射線検出器11は、クライオスタット21において、放射線の入射窓(図示略)を有するエンドキャップハウジング21aの内部の真空領域に、放射線に対して有感なゲルマニウム結晶やシリコン結晶などの半導体結晶(図示略)を保持している。半導体結晶に形成された結晶電極(図示略)はエンドキャップハウジング21aの内部に収容された電荷型前置増幅器(図示略)に接続されている。電荷型前置増幅器は、半導体結晶に入射した放射線のエネルギーに応じた波高値を有する出力信号パルスを出力する。
【0020】
検出器保持部12は、いわゆる自由雲台などである。検出器保持部12は、支持部13に着脱可能に固定されている。検出器保持部12は、放射線検出器11を着脱可能に保持しながら、少なくとも0°から−90°の仰俯角範囲で放射線検出器11の向き(エンドキャップハウジング21aの基端側から先端側に向かう方向)を変更可能である。
なお、検出器保持部12は、少なくとも0°から−90°の仰俯角範囲を有しているので、放射線検出器11の取付姿勢を変更(例えば、上下反転など)することによって、放射線検出器11の向きを0°から+90°の仰俯角範囲に設定してもよい。
【0021】
支持部13は、脚頭部31と、3つまたは4つの脚部32と、を備えている。なお、脚部32の数は、3または4に限定されない。支持部13における少なくとも脚部32は、炭素材料(例えば、炭素繊維など)によって形成されている。
脚頭部31の外形は、板状に形成されている。脚頭部31は、表面上に載置される検出器保持部12を解除可能に固定する。脚頭部31の中心位置は、水平方向Hにおいて、検出器保持部12が放射線検出器11を保持する位置に対してずれている。これにより検出器保持部12によって保持される放射線検出器11の検出部(例えば、半導体結晶など)の位置は、水平方向Hにおいて脚頭部31の中心位置からずれている。検出器保持部12は、放射線検出器11のエンドキャップハウジング21aを、脚頭部31から離間させて保持している。
例えば4つの脚部32は、脚頭部31を支持している。各脚部32の基端部(第1端部)32aは、脚頭部31に設けられた支持部31aに締結部材31bによって回転可能に固定されている。各脚部32は、支持部31aに対して回転する第1端部32aを備えることによって、脚頭部31に対する角度を変更可能に取り付けられている。各脚部32は、固定部材32bによって固定位置を変更可能な複数の棒状部材32cを備えることによって、伸縮可能に形成されている。
【0022】
線源固定用治具14は、屋内での放射線検出器11の較正時などにおいて脚頭部31の下部に着脱可能に固定されている。線源固定用治具14の外形は、基端部(第1端部)14aから先端部(第2端部)14bに向かって伸びる棒状に形成されている。線源固定用治具14は、炭素材料(例えば、炭素繊維など)によって形成されている。線源固定用治具14の第1端部14aは、脚頭部31の下部に設けられた治具支持部31cに締結部材31dによって回転可能に固定されている。線源固定用治具14の第2端部14bは、放射線検出器11の効率較正用の標準線源を固定する。線源固定用治具14の第1端部14aの回転軸は、所定姿勢(放射線検出器11の向きが鉛直方向Vの下方の状態)の放射線検出器11の検出部の中心(例えば、半導体結晶の中心など)を含んでいる。これにより線源固定用治具14は、標準線源と放射線検出器11の検出部との距離を所定の一定距離に維持しながら、放射線検出器11の検出部と標準線源を結ぶ線と放射線検出器11の中心軸とがなす角度を適宜に変更可能である。
【0023】
上述したように、本実施形態による放射線検出器支持架台10によれば、少なくとも脚部32が炭素材料から形成される支持部13を備えることにより、環境試料などの測定対象と放射線検出器11との間に脚部32の一部が介在する場合であっても、放射線の減弱を抑制することができる。さらに、炭素材料から形成される支持部13を備えるので、金属材料から形成される支持部に比べて軽量化することができ、運搬容易性および設置容易性を確保することができる。
【0024】
また、放射線検出器11を保持する検出器保持部12を備えることにより、環境試料などの測定対象に応じて放射線検出器11の姿勢を最適化することができる。さらに、支持部13に着脱可能な検出器保持部12を備えることにより、運搬容易性および設置容易性を、より一層、向上させることができる。さらに、水平方向Hにおいて脚頭部31の中心位置からずれた位置で放射線検出器11を保持する検出器保持部12を備えるので、環境試料などの測定対象と放射線検出器11との間に支持部13の一部が介在することを抑制し、支持部13による放射線の減弱を抑制することができる。さらに、放射線検出器11のエンドキャップハウジング21aを脚頭部31から離間させて保持する検出器保持部12を備えるので、脚頭部31による放射線の減弱を抑制することができる。
【0025】
以下に、上述した実施形態の変形例について説明する。
上述した実施形態において、検出器保持部12によって保持される放射線検出器11の検出部(例えば、半導体結晶など)の位置は、水平方向Hにおいて脚頭部31の中心位置からずれているとしたが、これに限定されない。例えば放射線検出器11の向きが鉛直方向Vの下方または上方となる場合に、検出部(例えば、半導体結晶など)の位置が脚頭部31の中心位置の下方または上方に配置されてもよい。
【0026】
上述した実施形態において、検出器保持部12は省略され、放射線検出器11が直接的に支持部13に着脱可能とされてもよい。
実施形態の変形例に係る放射線検出器支持架台10は、
図2および
図3に示すように、放射線検出器11を支持する検出器支持部41と、線源固定用治具14と、を備えている。
検出器支持部41は、貫通孔50が形成された台座51と、台座51に固定された4つの脚部52と、を備えている。検出器支持部41における少なくとも4つの脚部52は、炭素材料(例えば、炭素繊維など)によって形成されている。
台座51の外形は、板状に形成されている。台座51は、表面上に載置される放射線検出器11を解除可能に固定する。放射線検出器11のクライオスタット21は、鉛直方向Vの下方に向かって貫通孔50に挿入され、エンドキャップハウジング21aを台座51から下方に突出させている。放射線検出器11の電気冷却装置22は、台座51の表面上に載置されている。
4つの脚部52は、台座51を支持している。各脚部52の基端部(第1端部)52aは、台座51に設けられた支持部51aに締結部材51bによって回転可能に固定されている。各脚部52は、支持部51aに対して回転する第1端部52aを備えることによって、台座51に対する角度を変更可能に取り付けられている。各脚部52は、固定部材52bによって固定位置を変更可能な複数の棒状部材52cを備えることによって、伸縮可能に形成されている。
【0027】
上述した実施形態において、支持部13は、炭素材料によって形成される移動可能な台車などであってもよい。
【0028】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0029】
10…放射線検出器支持架台、11…放射線検出器、12…検出器保持部、13…支持部、14…線源固定用治具、21…クライオスタット、21a…エンドキャップハウジング、31…脚頭部、32…脚部、41…検出器支持部、51…台座、52…脚部