【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、小断面シールド工法や円筒シールド工法において、小断面のシールドトンネルや円筒状シールドトンネルの露出面のケレン作業を省略することが可能な大断面トンネルの構築方法を提供することを目的とする。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る大断面トンネルの構築方法は請求項1に記載したように、シールドトンネルを大断面トンネルの構築予定領域を取り囲むようにかつ周辺地山との隙間に裏込め材を注入しながら構築するとともに該シールドトンネルを用いて大断面トンネルの外殻を構築し、しかる後、前記外殻の内側に拡がる地山を掘削して大断面トンネル空間を形成する大断面トンネルの構築方法において、
前記シールドトンネルを構成するシールドセグメントのうち、前記大断面トンネル空間側に位置するシールドセグメントを、シールドセグメント本体と該シールドセグメント本体の外面に設けられた第1の被覆手段とからなるシールドセグメントで構成
するとともに、前記第1の被覆手段を、表面が前記裏込め材に対して低付着性となるよう構成し、前記掘削工程終了後、前記第1の被覆手段を前記シールドセグメント本体に残置するものである。
【0011】
また、本発明に係る大断面トンネルの構築方法は、前記掘削工程と同時に又はその後、前記第1の被覆手段の表面に付着した前記裏込め材の固形物を除去するものである。
【0012】
また、本発明に係る大断面トンネルの構築方法は、前記第1の被覆手段を、前記シールドセグメント本体に塗布された被膜で構成し、又は前記シールドセグメント本体に貼着された被覆シート若しくは被覆フィルムで構成したものである。
【0013】
また、本発明に係る大断面トンネルの構築方法は
請求項4に記載したように、シールドトンネルを大断面トンネルの構築予定領域を取り囲むようにかつ周辺地山との隙間に裏込め材を注入しながら構築するとともに該シールドトンネルを用いて大断面トンネルの外殻を構築し、しかる後、前記外殻の内側に拡がる地山を掘削して大断面トンネル空間を形成する大断面トンネルの構築方法において、
前記シールドトンネルを構成するシールドセグメントのうち、前記大断面トンネル空間側に位置するシールドセグメントを、シールドセグメント本体と該シールドセグメント本体の外面に設けられた第2の被覆手段とからなるシールドセグメントで構成し、
前記掘削工程と同時に又はその後、前記第2の被覆手段を前記シールドセグメント本体から除去する大断面トンネルの構築方法であって、
該第2の被覆手段を、前記シールドセグメント本体の外面が前記大断面トンネル空間に露出しないように配置するものである。
【0014】
また、本発明に係る大断面トンネルの構築方法は、前記第2の被覆手段を、前記シールドセグメント本体に貼着された被覆シート若しくは被覆フィルムで構成し、又は前記裏込め材が注入できるように形成され前記シールドセグメント本体に設けられた裏込め材注入孔に連通接続された状態で該シールドセグメント本体に取り付けられた袋体で構成したものである。
【0015】
また、本発明に係る大断面トンネルの構築方法は、前記シールドセグメント本体を鋼製セグメントで構成するとともに、該鋼製セグメントと前記被膜、前記被覆シート若しくは前記被覆フィルムとの間に腐食防止用塗膜を設け、又は前記第2の被覆手段を前記袋体で構成する場合に前記鋼製セグメントの表面に腐食防止用塗膜を設けるものである。
【0016】
また、本発明に係る大断面トンネルの構築方法は、前記シールドトンネルを、前記大断面トンネルのトンネル軸線回りにかつ該トンネル軸線に沿って繰り返し周回させることで前記トンネル軸線に沿って列状に複数構築された円筒状シールドトンネルで構成したものである。
【0017】
また、本発明に係る大断面トンネルの構築方法は、前記シールドトンネルを、前記大断面トンネルのトンネル軸線方向に沿って複数構築された小断面のシールドトンネルで構成したものである。
【0018】
本発明に係る大断面トンネルの構築方法においては、シールドトンネルを大断面トンネルの構築予定領域を取り囲むようにかつ周辺地山との隙間に裏込め材を注入しながら構築するとともに該シールドトンネルを用いて大断面トンネルの外殻を構築し、しかる後、外殻の内側に拡がる地山を掘削して大断面トンネル空間を形成するが、シールドトンネルを構築するにあたっては、シールドトンネルを構成するシールドセグメントのうち、大断面トンネル空間側に位置するシールドセグメントを、シールドセグメント本体と該シールドセグメント本体の外面に設けられた第1の被覆手段又は第2の被覆手段とからなるシールドセグメントで構成する。
【0019】
ここで、第1の被覆手段は表面が低付着性となるよう構成するが、第2の被覆手段については、表面を低付着性とするかどうかは任意である。なお、低付着性には、実質的に付着性がないものも包摂される。
【0020】
これらの被覆手段は、シールドセグメント本体を製作する工場で該シールドセグメント本体に設けるようにしてもよいし、シールド工事に伴って現地に設置される資材ヤードでシールドセグメント本体に設けるようにしてもよい。
【0021】
次に、第1の被覆手段又は第2の被覆手段が設けられたシールドセグメントを組み立てることで、シールドトンネルを上述したように大断面トンネルの構築予定領域を取り囲むように構築するが、周辺地山との間隙に注入された裏込め材は、シールドセグメント本体への接触を遮断するという各被覆手段の作用により、大断面トンネル空間側では、シールドセグメント本体に付着することなく固化する。
【0022】
そのため、外殻の内側に拡がる地山を掘削して大断面トンネル空間を形成する際には、第1の被覆手段を採用している場合であれば、上述したように裏込め材がシールドセグメント本体に付着しない状態で、かつ第1の被覆手段にもほとんど付着しない状態で固化しているため、該固化物は、掘削土砂とともに除去される。
【0023】
一方、第2の被覆手段を採用している場合であれば、第2の被覆手段が大断面トンネル空間に露出するので、これを剥離、取り外しといった簡易な作業でシールドセグメント本体から除去する。
【0024】
このようにすると、上述したように裏込め材がシールドセグメント本体に付着しない状態で固化しているため、該裏込め材の固化物は、掘削土砂とともにあるいは第2の被覆手段に付着した状態で該被覆手段とともに除去される。
【0025】
したがって、いずれの場合もシールドトンネルの露出面をケレンする必要がなくなり、大断面トンネル工事全体の工期を短縮するとともにトンネル構築コストの低減を図ることが可能となる。
【0026】
第1の被覆手段は、シールドセグメント本体からの除去を不要としたものであって、例えば、シールドセグメント本体に塗布された剥離剤等の被膜や、シールドセグメント本体に貼着された高耐久性の被覆シート若しくは被覆フィルムで構成することができる。
【0027】
ここで、第1の被覆手段は低付着性となるよう構成されているため、裏込め材の固化物が付着する懸念は少ないが、大断面トンネル空間を形成する際、第1の被覆手段に固化物が付着しているようであれば、これらを簡単な清掃作業で除去すればよい。
【0028】
第2の被覆手段は、剥離や取り外しといった簡易な作業によるシールドセグメント本体からの除去を前提としたものであって、例えば、シールドセグメント本体に貼着された仮設の被覆シート若しくは被覆フィルムや、シールドセグメント本体に設けられた裏込め材注入孔に連通接続された状態で該シールドセグメント本体に設置された袋体で構成することができる。
【0029】
シールドセグメント本体は、従来公知のRCセグメントや鋼製セグメントで構成することができるが、これを鋼製セグメントで構成する場合、鋼製セグメントと被膜、被覆シート若しくは被覆フィルムとの間に腐食防止用塗膜を設け、又は第2の被覆手段を袋体で構成する場合に鋼製セグメントの表面に腐食防止用塗膜を設けるようにすれば、鋼製セグメントの腐食を防止するための塗装を工場や資材ヤードで予め施しておくことが可能となり、大断面トンネル工事全体の工期や構築コストをさらに抑えることができる。
【0030】
第1の被覆手段や第2の被覆手段は、大断面トンネル空間側に位置するシールドセグメント本体に設ける構成とする限り、他の位置のシールドセグメント本体に設けるかどうかは任意である。
【0031】
すなわち、大断面トンネル空間側に位置するシールドセグメント本体のみに設けようとすると、シールドトンネルを構成するシールドセグメントが、大断面トンネルのどの角度位置に配置されるのかを個々に把握し、あるいは大断面トンネル空間の高さを事前に把握してこれらをセグメント製作及びセグメント組立に反映させなければならず、シールドセグメントを製作組立する上で歩留まり低下につながることも懸念される。
【0032】
そのため、第1の被覆手段や第2の被覆手段が、外殻内側に残置される地山、あるいは外殻外側の地山に埋設されたままとなって、それらの機能が発揮されない状態になるものの、これらの被覆手段を、大断面トンネル空間側に位置しないシールドセグメント本体に設ける構成としてもかまわない。
【0033】
シールドトンネルは、大断面トンネルの構築予定領域を取り囲むように構築することができる限り、その構造や構築手順は任意であるが、以下の2例が典型例となる。すなわち、
(a) 大断面トンネルのトンネル軸線回りにかつ該トンネル軸線に沿って繰り返し周回させることで、トンネル軸線に沿って列状に複数構築された円筒状シールドトンネルで構成する
(b) 大断面トンネルのトンネル軸線方向に沿って複数構築された小断面のシールドトンネルで構成する