特許第6501144号(P6501144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6501144
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】クリップ
(51)【国際特許分類】
   H01R 11/24 20060101AFI20190408BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20190408BHJP
   F16B 2/22 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   H01R11/24
   H02G3/30
   F16B2/22 E
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-24797(P2015-24797)
(22)【出願日】2015年2月10日
(65)【公開番号】特開2016-149230(P2016-149230A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2018年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】森山 裕之
【審査官】 石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−121161(JP,A)
【文献】 特開2010−182459(JP,A)
【文献】 実公昭37−030533(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 11/24
F16B 2/22
H02G 3/30
H02G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支軸を介して一端を開閉可能に連結される一対の把持部を備え、電線を挟持するクリップであって、
前記一対の把持部は、前記支軸から前記一端までを構成する把持片の長手方向に沿って、挟持部が前記把持片と別体的に設けられ、
前記挟持部は、前記支軸寄りの基端部と、先端部と、この先端部と前記基端部の間に設けられる傾動軸と、を備え、前記基端部から前記傾動軸までに第1の挟持片が構成されるとともに、前記傾動軸から前記先端部までに第2の挟持片が構成され、前記把持片に対して前記傾動軸を中心として傾動自在に取り付けられ、
前記第1の挟持片は、互いに対向する第1の端面を備え、
前記第2の挟持片は、互いに対向する第2の端面を備え、
前記基端部を互いに近づける方向に付勢する弾性体が、前記把持片の前記支軸寄りの端部と前記基端部との間に設けられることを特徴とするクリップ。
【請求項2】
前記第1の挟持片と前記第2の挟持片は、いずれも前記基端部と前記先端部を結ぶ直線軸上に連続して配列されつつ、一体的に形成され、
前記第1の挟持片の前記直線軸に沿った長さは、前記第2の挟持片の前記直線軸に沿った長さ以下であることを特徴とする請求項1記載のクリップ。
【請求項3】
前記把持片は、前記傾動軸が取り付けられる取付部が設けられ、前記支軸から前記取付部にかけて前記第1の端面を被覆しないように凹部が形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のクリップ。
【請求項4】
前記第2の端面は、これを側面視した場合に、直線状に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のクリップ。
【請求項5】
前記第2の端面は、凹凸面が形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支軸を介して一端を開閉可能に連結される一対の把持部を備えるクリップに係り、特に、把持部に対し、挟持部が傾動軸を中心として傾動自在に取り付けられるクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高圧引下線用コネクタの取付・撤去の際の引下線の電線への仮支持は、支軸を介して一端を開閉可能に連結される一対の把持部が備えられるクリップを間接活線操作棒の先端に取り付け、クリップで電線と引下線を同時に挟持することによって行われている。
しかし、このクリップにおいては、一対の把持部のうち互いに対向する挟持面がフラットに形成されているため、仮支持中に引下線が位置ズレし、やり直しが必要になるという課題があった。
また、一対の把持部はいずれも長手方向に沿って直線状に形成されているため、クリップの支軸側に太い直径の電線が配置され、一端側に細い直径の引下線が配置される場合には、引下線と一対の把持部との間に隙間が発生して引下線が落下するおそれがある。そのため、仮支持を行う際には、クリップに対する電線及び引下線の配置を考慮しなければならず、作業に手間がかかるという課題があった。
そこで、このような課題を解決する目的で、近年、電線等を確実に挟持できるクリップに関する技術が開発されており、それに関して既にいくつかの発明が開示されている。
【0003】
まず、特許文献1には、「鰐口クリップ」という名称で、計測対象線材を確実に咬持可能な鰐口クリップに関する発明が開示されている。
以下、特許文献1に開示された発明について説明する。特許文献1に開示された鰐口クリップに関する発明は、固定側クリップ片と、固定側クリップ片に対向させた可動側クリップ片と、固定側クリップ片側を常時加圧して可動側クリップ片を開閉操作する操作用レバー片とで構成され、固定側クリップ片は、ガイド長孔と第1軸支孔とを有する軸支片部を備え、可動側クリップ片は、ガイド長孔にて可動側クリップ片に軸支される第1支軸と、操作用レバー片を軸支する軸支体部とを備え、操作用レバー片は、軸支体部の第2軸支孔にて可動側クリップ片に軸支される第2支軸と、軸支片部の第1軸支孔にて固定側クリップ片側に軸支される第3支軸とを備え、操作用レバー片の押圧操作時に固定側クリップ片に対し可動側クリップ片が略平行に移動させるようにしたことを特徴とする。
このような特徴を備えた接続端子用クリップによれば、計測対象線材の線径の大小に拘わらず外れることなく確実に計測対象線材を咬持可能なので、計測作業を円滑に行うことができる。また、固定側クリップ片と可動側クリップ片は、長尺状をなすことから、複数の電線を咬持することも可能である。
【0004】
次に、特許文献2には、「電気配線用クリップ」という名称で、挟み込んだ導体から外れにくい電気配線用クリップに関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された発明は、それぞれ主要部を挟んで先端部および後端部を有するとともに主要部を横断するように貫通する第1の軸回りに回動自在に連結された一対の金属片と、各金属片を先端部どうしが閉じ且つ後端部どうしが開くように付勢するバネと、一方の金属片の先端部における他方の金属片側に設けられた板状の第1導電部材と、他方の金属片の先端部を横断するように貫通する第2の軸と、第2の軸回りに回動自在でありかつ第1導電部材に向くように設けられた板状の第2導電部材と、を有することを特徴とする。
このような特徴を有する電気配線用クリップによれば、第1導電部材と第2導電部材は、共に板状であるので、板材に対し、いわゆる「面」で接する。板材からずれにくく、つまり、外れにくく、板材の電気配線に適している。また、第1導電部材と第2導電部材によって、複数の電線を挟持することも可能である。
【0005】
さらに、特許文献3には、「間接活線工事用クリップ付き絶縁シート」という名称で、引下げ線の縁線を確実に支持できる間接活線工事用クリップ付き絶縁シートおよびこの絶縁シートに用いられる間接活線工事用クリップに関する発明が開示されている。
特許文献3に開示された発明のうち、間接活線工事用クリップは、第1電線を挟持可能な挟持部、及び挟持部に連続し、間接活線工具によって把持される把持部を有する一対の帯板状の第1開閉部材と、一対の挟持部の先端部を開閉可能に、一対の挟持部の基端部側を連結する連結部材と、一対の挟持部の先端部が閉じる方向に力を付勢する第1付勢部材と、基端部が挟持部の先端部と回転自在に連結し、先端部が挟持部の先端部から延設すると共に、第2電線を挟持可能な一対の帯板状の第2開閉部材と、一対の第2開閉部材の先端部が閉じる方向に力を付勢する第2付勢部材と、を有する。
このような特徴を有する間接活線工事用クリップによれば、第1開閉部材と第2開閉部材によって複数の電線(第1及び第2の電線)を同時に挟持することができる。さらに、第2開閉部材は、その基端部が第1開閉部材の先端部と回転自在に連結されるため、例えば、第1開閉部材が太い直径の電線を挟持しながら、第2開閉部材が細い直径の電線を挟持できる場合も考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−182459号公報
【特許文献2】特開2013−114970号公報
【特許文献3】特開2014−121161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された発明においては、操作用レバー片の押圧操作時に固定側クリップ片に対し可動側クリップ片が略平行に移動するため、直径の異なる複数の電線を同時に咬持することが不可能である。
【0008】
次に、特許文献2に開示された発明においては、板状の第2導電部材が第2の軸回りに回動自在であり、かつ第1導電部材に向くように設けられることから、直径の異なる複数の電線を同時に挟持できる可能性がある。しかしながら、このような場合に、第2導電部材が第2の軸回りに回動自在であるため、複数の電線の挟持が不安定となるものと考えられる。さらに、第1及び第2導電部材の奥行き方向(先端部と後端部を結ぶ方向)の長さが比較的短い場合には、複数の電線における挟持可能な直径の組み合わせが限定される。
【0009】
さらに、特許文献3に開示された発明においては、第1開閉部材の連結部材から先端部までの長さと、第2開閉部材の基端部から先端部までの長さが同等であるため、第1開閉部材に太い直径の電線を挟持した場合に、第2開閉部材の先端部同士が大きく離れてしまい、細い直径の電線を安定的に挟持できない可能性がある。
【0010】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、直径の異なる複数の電線を確実に挟持可能なクリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、支軸を介して一端を開閉可能に連結される一対の把持部を備えるクリップであって、一対の把持部は、支軸から一端までを構成する把持片の長手方向に沿って、挟持部が把持片と別体的に設けられ、挟持部は、支軸寄りの基端部と、先端部と、この先端部と基端部の間に設けられる傾動軸と、を備え、基端部から傾動軸までに第1の挟持片が構成されるとともに、傾動軸から先端部までに第2の挟持片が構成され、把持片に対して傾動軸を中心として傾動自在に取り付けられ、第1の挟持片は、互いに対向する第1の端面を備え、第2の挟持片は、互いに対向する第2の端面を備え、基端部を互いに近づける方向に付勢する弾性体が、把持片の支軸寄りの端部と基端部との間に設けられることを特徴とする。
【0012】
このような構成の発明においては、「支軸から一端までを構成する把持片の長手方向に沿って、挟持部がそれぞれ把持片と別体的に設けられる」ため、挟持部も大まかには長尺状に形成される。ただし、挟持部は、必ずしも直線状に形成される必要はなく、第1の挟持片に対し第2の挟持片が傾斜していても良い。
また、「挟持部は、把持片に対して傾動軸を中心として傾動自在に取り付けられ」とは、基端部同士が互いに近づいた場合には先端部同士が互いに遠ざかり、逆に基端部同士が互いに遠ざかる場合には先端部同士が互いに近づくように、挟持部が傾動軸を支点として傾動することを意味する。
このような挟持部の傾動は、例えば、電線を第1の挟持片同士の間に押し込むことによって行われる。また、傾動の角度とは、把持片の長手方向に対し挟持部の長手方向がなす角度をいい、第1の挟持片と第2の挟持片がそれぞれ電線を挟持する位置や、これら挟持された電線の直径、及びクリップの中心軸に対する一対の把持部の開閉角度に依存する。なお、クリップの中心軸とは、支軸を通り、かつ一対の把持部を閉じた場合に互いに重なり合う把持部の端面に沿って延びる軸線をいう。
さらに、弾性体としては、例えばコイルバネが使用される。
【0013】
上記構成の発明においては、クリップが電線を挟持しない場合には、把持部の一端が閉じられるとともに、弾性体の付勢によって、挟持部の基端部が互いに近づき、第1の端面同士は、クリップの中心軸に沿って密着する。第2の端面同士も、同様である。
これに対し、把持部の一端を開いて、例えば、1本目の電線を第1の端面同士の間に押し込むとともに、2本目の電線を第2の端面同士の間に押し込むと、基端部が互いに遠ざかる方向に挟持部が傾動軸を中心として傾動し、弾性体が収縮する。しかし、弾性体の付勢によって、第1の端面で1本目の電線が挟持される。これと同時に、挟持部の上記傾動に伴い、先端部が互いに近づくため、第2の端面で2本目の電線が挟持される。
【0014】
また、複数の電線は、いずれも同等の直径を有する他、異なる直径を有するものであっても良い。後者の場合、例えば、第1の端面で太い直径の電線を挟持するとともに第2の端面で細い直径の電線を挟持した場合であっても、双方の電線が挟持される。
そして、再度把持部の一端を開き、複数の電線の挟持を解除すると、弾性体の付勢によって、挟持部が傾動軸を中心として傾動し、挟持部は、クリップが電線を挟持しない場合の状態に戻る。
【0015】
次に、第2の発明は、第1の発明において、第1の挟持片と第2の挟持片は、いずれも基端部と先端部を結ぶ直線軸上に連続して配列されつつ、一体的に形成され、第1の挟持片の直線軸に沿った長さは、第2の挟持片の直線軸に沿った長さ以下であることを特徴とする。
このような構成の発明において、第1の挟持片と第2の挟持片は、あたかも傾動軸を支点とするシーソーのような形状となっている。また、「第1の挟持片の直線軸に沿った長さは、第2の挟持片の直線軸に沿った長さ以下である」としたのは、例えば、第1の端面で太い直径の電線を挟持する場合に、第2の挟持片の先端部同士を近接又は接触可能とするためである。
上記構成の発明においては、第1の発明の作用に加えて、第2の挟持片の先端部同士が近接又は接触可能に、第1及び第2の挟持片の直線軸に沿った長さをそれぞれ設計することにより、太い電線の直径や細い電線の直径に関わらず、第2の端面で細い直径の電線が挟持される。
【0016】
さらに、第3の発明は、第1又は第2の発明において、把持片は、傾動軸が取り付けられる取付部が設けられ、支軸から取付部にかけて第1の端面を被覆しないように凹部が形成されることを特徴とする。
このような発明において、「第1の端面を被覆しないように凹部が形成される」とは、凹部が、クリップの中心軸側へ第1の端面を超えて延設されないことをいう。
上記構成の発明においては、第1又は第2の発明の作用に加えて、凹部が形成されることにより、弾性体の付勢によって、例えば、常に第1の端面が電線に圧接することで、電線が挟持される。
【0017】
そして、第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、第2の端面は、これを側面視した場合に、直線状に形成されることを特徴とする。
このような構成の発明において、第2の端面は、必ずしも一様な平坦面をなしていなくても良く、例えば、凹凸面や緩やかな湾曲面をなしているが、第2の端面を側面視した場合に、その長手方向に沿って略直線状に形成されていても良い。すなわち、「直線状」とは、第2の端面が一様な平坦面をなしているほか、第2の端面に凹凸面等が形成されることで、第2の端面を側面視した場合に、第2の端面の両端点を最短距離で結ぶ直線に、第2の端面が上記直線からわずかに変位しながら上記直線にほぼ一致して位置することを意味する。
上記構成の発明においては、第1乃至第3のいずれかの発明の作用に加えて、例えば、第1の挟持片に対し第2の挟持片が傾斜する場合では、第1の端面で電線を挟持すると、第2の端面同士が略平行となる場合がある。したがって、第2の端面のうちいずれの位置においても、電線が挟持される。これは、支軸を介して一端を開閉可能に連結される一対の把持部を備え、この一対の把持部の対向する端面が直線状をなす従来技術に係るクリップと同様である。
また、第2の発明のように、第1の挟持片と第2の挟持片がいずれも基端部と先端部を結ぶ直線軸上に連続して配列された場合、先端部同士は鋭角をなすとともに、第2の端面はクリップの中心軸に対して緩やかに傾斜する。そのため、第2の端面における電線の挟持位置を電線の直径に応じて微調整可能である。
【0018】
そして、第5の発明は、第1乃至第4のいずれかの発明において、第2の端面は、凹凸面が形成されることを特徴とする。
上記構成の発明においては、第1乃至第4のいずれかの発明の作用に加えて、 例えば、電線に対する第2の端面の圧接力が増加し、電線の落下やズレが防止される。
【発明の効果】
【0019】
第1の発明によれば、例えば、第1の端面で太い直径の電線を挟持するとともに第2の端面で細い直径の電線を挟持することができる。この場合、細い直径の電線が第2の端面から外れることがなく、直径の異なる複数の電線を確実に挟持することが可能である。そのため、電線が外れるために発生する事故を未然に防止可能である。
【0020】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、例えば、太い電線の直径や細い電線の直径に関わらず、第2の端面で細い直径の電線が挟持されることから、挟持可能な直径の異なる電線の組み合わせが限定されない。したがって、電線の組み合わせ毎に、形状が異なるクリップを所持する必要がなく、便利である。
【0021】
第3の発明によれば、第1又は第2の発明の効果に加えて、凹部が形成されることにより、例えば、電線は常に第1の端面が接触することで挟持されることから、電線を安定的に保持することができる。
【0022】
第4の発明によれば、第1乃至第3のいずれかの発明の効果に加えて、第1の挟持片と第2の挟持片の形状によっては、従来技術に係るクリップと同様に、第2の端面で、例えば電線を挟持することができる。この他にも、第2の端面における電線の挟持位置を電線の直径に応じて微調整可能であるので、電線のズレや電線に対する第2の端面による過度の圧接を防止することができる。
【0023】
第5の発明によれば、第1乃至第4のいずれかの発明の効果に加えて、第2の端面に形成された凹凸面によって、例えば、電線の落下等が防止されるため、クリップの付け直し等をする必要がなく作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例に係るクリップの外観斜視図である。
図2】(a)は実施例に係るクリップを構成する挟持部の側面図、(b)は(a)におけるA方向矢視図、(c)は挟持部の斜視図である。
図3】実施例に係るクリップの作用を説明するための平面図であって、一対の把持部の一端を閉じた場合を示している。
図4】実施例に係るクリップの作用を説明するための平面図であって、一対の把持部の一端を開いた場合を示している。
図5】実施例に係るクリップの作用を説明するための平面図であって、一対の把持部の一端を開き、複数の電線D,Dを挟持した場合を示している。
図6】(a)及び(b)は、それぞれ実施例の変形例に係るクリップの構成と作用を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0025】
本発明の実施の形態に係る実施例のクリップについて、図1乃至図6を用いて詳細に説明する。図1は、実施例に係るクリップの外観斜視図である。
図1に示すように、本実施例に係るクリップ1は、支軸2を介して一端3a,3aを開閉可能に連結される一対の把持部3,3を備えるクリップである。
一対の把持部3,3は、支軸2から一端3a,3aまでを構成する把持片4,4の長手方向に沿って、挟持部5,5が把持片4,4と別体的に設けられる。さらに、一対の把持部3,3は、それぞれ他端3b,3bと、互いに対向する端面3c,3cを備える。
支軸2には、一端3a,3aが互いに閉じるように付勢する金属製のねじりバネが巻回されている(図示せず)。したがって、ヤットコ等で他端3b,3b同士を開閉する操作を行うと、一端3a,3aが開閉される構造となっている。
把持片4の断面は略コ字状をなしており、この略コ字状の内部に挟持部5が設けられる。
【0026】
挟持部5,5は、支軸2寄りの基端部5a,5aと、先端部5b,5bと、この先端部5b,5bと基端部5a,5aの間に設けられる傾動軸6,6と、を備える。
さらに、挟持部5,5は、基端部5a,5aから傾動軸6,6までに挟持片7,7が構成されるとともに、傾動軸6,6から先端部5b,5bまでに挟持片8,8が構成され、把持片4,4に対して傾動軸6,6を中心として傾動自在に取り付けられる。
また、挟持片7,7は、互いに対向する端面7a,7aを備え、挟持片8,8は、互いに対向する端面8a,8aを備え、基端部5a,5aを互いに近づける方向(図中矢印)に付勢する弾性体9,9が、把持片4,4の支軸2寄りの端部4a,4aと基端部5a,5aとの間に設けられる。
【0027】
把持片4,4は、傾動軸6,6が取り付けられる取付部10,10が設けられ、支軸2から取付部10,10にかけて端面7a,7aを被覆しないように凹部4b,4bが形成される。すなわち、凹部4b,4bは、クリップ1の中心軸C側へ端面7a,7aを超えて延設されない。なお、クリップ1の中心軸Cとは、支軸2を通り、かつ把持部3,3を閉じた場合に互いに重なり合う把持部3,3の端面3c,3cに沿って延びる軸線である。
また、取付部10は、具体的には、把持片4に穿設された一対の孔部(図示せず)と、この一対の孔部に挿入される軸体6a(図2参照)の両端を回動可能に、かつこの両端が一対の孔部から抜き出さないように固定する一対のナット(図示せず)と、から構成される。
【0028】
次に、本実施例のクリップ1を構成する挟持部5について、図2を用いながら詳細に説明する。図2(a)は実施例に係るクリップを構成する挟持部の側面図、図2(b)は図2(a)におけるA方向矢視図、図2(c)は挟持部の斜視図である。なお、図1で示した構成要素については、図2においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0029】
図2(a)乃至図2(c)に示すように、本実施例のクリップ1を構成する挟持部5は、挟持片7と挟持片8が、いずれも基端部5aと先端部5bを結ぶ直線軸L上に連続して配列されつつ、傾動軸6を介して一体的に形成される。なお、本実施例において、直線軸Lは、挟持片7の長手方向と挟持片8の長手方向に平行している。したがって、挟持片7と挟持片8は、あたかも傾動軸6を支点とするシーソーのような形状となっている。また、図2(a)に示すように、挟持片7の直線軸Lに沿った長さLは、挟持片8の直線軸Lに沿った長さLより短い。具体的には、長さLは、長さLのおよそ1/2である。
傾動軸6は、直線軸Lと直交する方向に沿った長軸を有する軸体6aを備える。そして、軸体6aの両端が把持片4の取付部10(図1参照)に対して固定されることで、挟持片7と挟持片8がそれぞれ軸体6aを中心として傾動自在な構成になっている。なお、具体的には、軸体6aは通しボルトである。
挟持片7,8の上記傾動については、図2(c)に示すように、挟持片7がα方向に回動すると挟持片8はα方向に回動し、挟持片7がβ方向に回動すると挟持片8はβ方向に回動する。すなわち、挟持部5,5は、挟持片7,7と挟持片8,8が挟持する被挟持物のサイズに適宜対応し、傾動することが可能である。
また、図2(a)に示すように、挟持片7の端面7aと挟持片8の端面8a、及び傾動軸6は、これを側面視した場合に、ほぼ連続する直線状に形成される。このうち、端面8aには、鋸歯状の凹凸面が形成されるが、端面8aを側面視した場合に、直線状に形成される。なお、この「直線状」とは、端面8aを側面視した場合に、端面8a,8aの端点8b,8cを最短距離で結ぶ直線Lminに、端面8aが厳密に一致して位置することのほか、端面8aに凹凸面や緩やかな湾曲面が形成されることで、端面8aが直線Lminからわずかに変位しながら直線Lminとほぼ一致して位置することを意味する。なお、端点8bは、端面8a及び傾動軸6を側面視した場合に、端面8aと傾動軸6との境界部に存在する点であり、端点8cは、同様の場合に、端点8bから直線軸Lに平行して先端部5bの側へ長さLだけ遠ざかった点である。
【0030】
次に、実施例に係るクリップの作用について、図3乃至図5を用いて詳細に説明する。図3は、実施例に係るクリップの作用を説明するための平面図であって、一対の把持部の一端を閉じた場合を示している。なお、図1及び図2で示した構成要素については、図3乃至図5においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図3に示すように、クリップ1を構成する把持部3,3の一端3a,3aを閉じた場合、弾性体9,9の付勢によって、基端部5a,5aが互いに近づき、挟持片7,7の端面7a,7aが互いにクリップの中心軸C上において密着する。挟持片8,8の端面8a,8aも互いにクリップの中心軸C上において密着し、鋸歯状の凹凸面同士が噛合する。なお、端面7a,7aの密着及び端面8a,8aの密着は、挟持片7,7と挟持片8,8の形状や、傾動軸6,6及び取付部10,10の配置を考慮することによって可能となる。
【0031】
次に、図4は、実施例に係るクリップの作用を説明するための平面図であって、一対の把持部の一端を開いた場合を示している。
図4に示すように、把持部3,3の一端3a,3aを、それぞれα,β方向へ開いた場合、弾性体9,9の付勢によって、挟持部5,5の基端部5a,5aが互いに近づいた状態が維持されながらも、傾動軸6,6の間隔が拡大されるため、基端部5a,5a同士は鋭角を形成する。また、挟持片7と挟持片8は、いずれも直線軸L(図2参照)上に連続して配列されるため、端面7a,7a及び端面8a,8aは中心軸Cに対して緩やかに傾斜する。
また、長軸M,Mは、それぞれ把持片4の端部4aと一端3aを結ぶ長軸(長手方向)であり、直線軸L,Lは、それぞれ挟持片7の長手方向と挟持片8の長手方向に平行し、挟持部5の基端部5aと先端部5bを結ぶ直線軸である。さらに、長軸M,Mに対しそれぞれ直線軸L,Lがなす角度が、挟持部5,5の傾動の角度θ,θである。したがって、図4においては、傾動の角度θ,θは、それぞれ0度であって、挟持片7,7と挟持片8,8は、いずれも傾動軸6,6を中心とした傾動を行わない。
【0032】
さらに、図5は、実施例に係るクリップの作用を説明するための平面図であって、一対の把持部の一端を開き、複数の電線D,Dを挟持した場合を示している。
図5に示すように、把持部3,3の一端3a,3aを、それぞれα,β方向へ開き、電線Dを端面7a,7aの間に押し込むとともに、電線Dを端面8a,8aの間に押し込むと、端面7a,7aが電線Dによって押されるため、基端部5a,5aが互いに遠ざかる方向に挟持部5,5が傾動軸6,6を中心として傾動する。したがって、図5においては、傾動の角度θ,θは、それぞれ絶対値で0度以上である。このとき、弾性体9,9は収縮するが、その付勢によって電線Dに端面7a,7aが圧接することから、端面7a,7aで電線Dが挟持される。
これと同時に、挟持部5,5の上記傾動に伴い、先端部5b,5bが互いに近づき、電線Dに端面8a,8aが圧接する。よって、端面8a,8aで電線Dが挟持される。なお、電線Dの直径は電線Dの直径よりも大である。
また、先端部5b,5b同士は鋭角をなすとともに、端面8a,8aは中心軸Cに対して緩やかに傾斜する。そのため、端面8a,8aにおける電線Dの挟持位置を電線Dの直径に応じて微調整可能である。
【0033】
また、図3乃至図5に示すように、一端3a,3aが開いた場合には、挟持部5,5が傾動しているか否かに関わらず、凹部4b,4bは、クリップ1の中心軸C側へ端面7a,7aを超えて延設されない。そのため、端面7a,7aの間に電線Dを押し込むことが、把持片4,4によって阻害されない。さらに、端面7a,7aで電線Dが挟持されることも、把持片4,4によって阻害されない。すなわち、凹部4b,4bが形成されることによって、把持片4,4が電線Dに直接接触することがないため、電線Dが端面7a,7aの間に押し込まれて挟持される場合は、常に端面7a,7aが電線Dに圧接することが可能となる。
さらに、端面8a,8aには、鋸歯状の凹凸面が形成されるため、電線Dに対する端面8a,8aの圧接力が増加し、電線Dの落下やズレが防止される。
【0034】
以上説明したように、本実施例のクリップ1によれば、ヤットコ等で把持部3,3の他端3b,3b同士を開閉するという簡単な操作を行うことによって、直径の異なる複数の電線D,Dを、それぞれ端面7a,7a及び端面8a,8aで確実に挟持することができる。特に、細い直径の電線Dが端面8a,8aから外れることを防止できるので、別のヤットコ等で外れた電線Dを把持するという余分な手間が発生しない。さらに、外れた電線Dが、周囲の充電部へ接触するおそれがなくなるため、地絡事故の発生防止や、接触する可能性のある充電部等への防具の取り付けを不要とすることができる。そのため、作業の時間短縮や安全性の確保が可能であり、突発的な停電を回避することができる。
【0035】
また、クリップ1によれば、挟持部5,5は、挟持片7,7と挟持片8,8が挟持する被挟持物のサイズに適宜対応し、傾動することが可能であることと、端面8a,8aにおける電線Dの挟持位置を電線Dの直径に応じて微調整可能であることから、挟持可能な直径の異なる電線の組み合わせが限定されない。したがって、電線の組み合わせ毎に、形状が異なるクリップを所持する必要がなく、便利である。
【0036】
さらに、クリップ1によれば、把持片4,4に凹部4b,4bが形成されることによって、図4に示すように、電線Dを端面7a,7aの間に容易に押し込むことができる。さらに、図5に示すように、電線Dが端面7a,7aの間に挟持される場合は、常に端面7a,7aが電線Dに圧接し、把持片4,4が電線Dに直接接触することがない。
これに対し、凹部4b,4bが形成されない把持片4,4の場合には、ヤットコ等により一端3a,3aが一定角度に固定されて開かれているので、電線Dを端面7a,7aの間に深く押し込むことが困難である。仮に、電線Dが端面7a,7aの間に挟持される場合は、把持片4,4が電線Dに直接接触することで電線Dが挟持される。この場合には、電線Dは弾性体9,9の付勢を受けないために把持片4,4からずれ易く、電線Dの落下が多発するおそれがある。このように、クリップ1によれば、凹部4b,4bによって、電線Dを安定的に挟持することができる。
【0037】
加えて、端面8a,8aにおける電線Dの挟持位置を微調整可能であることから、電線Dのズレや電線Dに対する端面8a,8aによる過度の圧接を防止することができる。
また、端面8a,8aに形成された凹凸面によって、電線Dの落下やズレが防止されるため、クリップ1の付け直し等をする必要がなく、クリップ1の発生を防止できるとともに作業効率を向上させることが可能である。
【0038】
次に、実施例の変形例に係るクリップについて、図6を用いて詳細に説明する。図6(a)及び図6(b)は、それぞれ実施例の変形例に係るクリップの構成と作用を説明するための平面図である。このうち、図6(a)は把持部3,3の一端3a,3aを閉じた場合であり、図6(b)は一端3a,3aを開き、複数の電線D,Dを挟持した場合である。なお、図1乃至図5で示した構成要素については、図6においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図6(a)及び図6(b)に示すように、実施例の変形例に係るクリップ1aは、実施例に係るクリップ1を構成する挟持部5,5が挟持部11,11に置換されたものである。
【0039】
挟持部11,11は、それぞれ、支軸2寄りの基端部11a,11aと、先端部11b,11bと、この先端部11b,11bと基端部11a,11aの間に設けられる傾動軸6,6と、を備え、基端部11a,11aから傾動軸6,6までに挟持片12,12が構成されるとともに、傾動軸6,6から先端部11b,11bまでに挟持片13,13が構成され、把持片4,4に対して傾動軸6,6を中心として傾動自在に取り付けられる。
挟持片12,12は、互いに対向する端面12a,12aを備え、挟持片13,13は、互いに対向する端面13a,13aを備える。
また、挟持片12,12と挟持片13,13は、それぞれ挟持片12に対し挟持片13が傾斜して配列されつつ、傾動軸6を介して一体的に形成される。クリップ1aにおけるこの他の構成は、実施例に係るクリップ1と同様である。
【0040】
図6(a)に示すように、クリップ1aを構成する把持部3,3の一端3a,3aを閉じた場合、弾性体9,9の付勢によって、基端部11a,11aが互いに近づき、挟持片12,12の端面12a,12aが互いにクリップの中心軸C上において密着する。しかし、挟持片13,13は、先端部11b,11bが互いに離隔するようにクリップの中心軸Cに対して緩やかに傾斜している。すなわち、端面13a,13aは互いに密着していない。
【0041】
図6(b)に示すように、把持部3,3の一端3a,3aを、それぞれα,β方向へ開き、電線Dを端面12a,12aの間に押し込むとともに、電線Dを端面13a,13aの間に押し込むと、基端部11a,11aが互いに遠ざかる方向に、挟持部11,11が傾動軸6,6を中心として傾動する。このとき、弾性体9,9の付勢によって、端面12a,12aで電線Dが挟持される。
これと同時に、先端部11b,11bが互いに近づき、端面13a,13aが略平行となる。そのため、端面13a,13aのうちいずれの位置においても、電線Dが挟持される。
したがって、クリップ1aによれば、端面13a,13aが略平行となるため、従来技術に係るクリップと同様な使用をすることも可能である。なお、従来技術に係るクリップとは、支軸を介して一端を開閉可能に連結される一対の把持部を備え、この一対の把持部の対向する端面が略直線状をなす構成であるものを指す。クリップ1aにおけるこの他の作用及び効果は、実施例に係るクリップ1と同様である。
【0042】
なお、本発明のクリップ1,1aの構造は本実施例に示すものに限定されない。例えば、挟持片7,7の端面7a,7aに凹凸面が形成されても良く、端面8a,8aの凹凸面は、鋸歯状以外にも波型状に形成されても良い。また、把持片4,4の凹部4b,4bは、図3に図示された以外の湾曲形状や矩形状に形成されても良い。さらに、クリップ1,1aによって挟持される被挟持物としては、絶縁シートやボルトといった、電線以外の物であっても良い。
この他、クリップ1aにおいて、挟持片12の長さが挟持片13の長さよりも長く構成されても良い。この場合、把持片4に凹部4bが形成されなくても挟持端面12a,12aで細い直径の電線Dを挟持可能であるとともに、端面13a,13aで太い直径の電線Dを挟持可能である場合も考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、直径の異なる複数の電線を確実に挟持可能なクリップとして利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1,1a…クリップ 2…支軸 3…把持部 3a…一端 3b…他端 3c…端面 4…把持片 4a…端部 4b…凹部 5…挟持部 5a…基端部 5b…先端部 6…傾動軸 6a…軸体 7,8…挟持片 7a,8a…端面 8b,8c…端点 9…弾性体 10…取付部 11…挟持部 11a…基端部 11b…先端部 12,13…挟持片 12a,13a…端面
図1
図2
図3
図4
図5
図6