特許第6501152号(P6501152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6501152
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】間接活線工具の安全限界位置の標示装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20190408BHJP
   B25B 7/22 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   H02G1/02
   B25B7/22
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-81786(P2015-81786)
(22)【出願日】2015年4月13日
(65)【公開番号】特開2016-201941(P2016-201941A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2018年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 光弘
【審査官】 石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−110134(JP,A)
【文献】 特開2012−143132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
B25B 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間接活線工具の安全限界位置に取付可能な本体と、該本体に取り付けられた照明とを備え
前記本体は、傘状の鍔部を有し、
前記照明は、前記鍔部の開口端面で開口する導出孔に設けられた発光部を含む発光体を有することを特徴とする間接活線工具の安全限界位置の標示装置。
【請求項2】
前記本体は、間接活線工具の棒本体に取り付けられる筒状の取付部を有し、鍔部は、前記取付部の端部に連続して形成さ、取付部の開口端部から鍔部の開口端部にかけて延びる線状の切欠きが形成されることを特徴とする請求項1に記載の間接活線工具の安全限界位置の標示装置。
【請求項3】
前記照明は、前記発光体を複数有することを特徴とする請求項2に記載の間接活線工具の安全限界位置の標示装置。
【請求項4】
前記本体は、間接活線工具の具備する安全限界位置目印体に重ね合わせ可能に形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の間接活線工具の安全限界位置の標示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間接活線工具の安全限界位置を標示する間接活線工具の安全限界位置の標示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から間接作業を行うために、間接活線工具が提供されている。該間接活線工具は、図6に示す如く、絶縁性のある絶縁操作棒101を備える。
【0003】
前記絶縁操作棒101は、棒本体102と、該棒本体102の基端側に配置され、作業者が把持するためのグリップ103と、棒本体102の先端側に配置され、付着した雨水が先端側から基端側に流れないようにするための雨切りつば104と、棒本体102における雨切りつば104とグリップ103との間に配置され、作業者と充電部との安全距離を確保するための鍔状の安全限界位置目印体105とを有する(特許文献1参照)。
【0004】
また、配電線の保守作業等の電設工事を行う場合、作業者は、高所作業車が具備するバケットに搭乗し、作業領域にバケットを移動させ、前記間接活線工具100を使用して所要の作業を行っている。
【0005】
また、地上では、現場責任者が、活線(充電部)に対して所定の距離を超えて近づかないように作業者を監視している。具体的には、現場責任者は、間接活線工具100の安全限界位置(安全限界位置目印体105)を視認しつつ、該安全限界位置に対する作業者を監視している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−206253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、夜間などの暗所において間接活線作業を行う場合、作業者及び現場責任者が安全限界位置を見落としてしまうおそれがある、という問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、作業現場の安全性を向上できる間接活線工具の安全限界位置の標示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る間接活線工具の安全限界位置の標示装置は、間接活線工具の安全限界位置に取付可能な本体と、該本体に取り付けられた照明とを備え、前記本体は、傘状の鍔部を有し、前記照明は、前記鍔部の開口端面で開口する導出孔に設けられた発光部を含む発光体を有することを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、夜間などの暗所において間接活線工具の安全限界位置を、照明によって明るく照らすことで外部に標示できる。これにより、間接活線工具を使用中の作業者が安全限界位置を視認できる。また、地上から監視する現場責任者が間接活線工具の安全限界位置を視認できる。したがって、作業現場の安全性が向上する。また、間接活線工具の安全限界位置の標示装置は、間接活線工具の安全限界位置に対して取付可能であるため、耐電圧試験時等に間接活線工具から取り外すことで対応できる。
【0011】
本発明に係る間接活線工具の安全限界位置の標示装置の一態様として、前記本体は、間接活線工具の棒本体に取り付けられる筒状の取付部を有し、鍔部は、前記取付部の端部に連続して形成さ、取付部の開口端部から鍔部の開口端部にかけて延びる線状の切欠きが形成されることが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、取付部の開口端部から鍔部の開口端部にかけて延びる線状の切欠きによって、取付部の開口端部から鍔部の開口端部にかけて一対の対向端面が形成される。そして、切欠きによって形成された一対の対向端面間を押し広げて、間接活線工具の棒本体の外側から取付部内に嵌め入れて、棒本体に取付部を装着する。これにより、間接活線工具の安全限界位置を光によって標示することができる。
【0013】
本発明に係る間接活線工具の安全限界位置の標示装置の他態様として、前記照明は、前 記発光体を複数有することが好ましい。
【0014】
前記鍔部の開口端部に複数の発光体が配置されるため、前記鍔部の開口端部から斜め外方に向かって光が照射されるようになり、間接活線工具を操作する作業者、及び現場責任者の位置から間接活線工具の安全限界位置を視認しやすくなる。
【0015】
本発明に係る間接活線工具の安全限界位置の標示装置の他態様として、前記本体は、間接活線工具の具備する安全限界位置目印体に重ね合わせ可能に形成されることが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、間接活線工具の具備する安全限界位置目印体に対し、本体を重ね合わせ可能に構成することで、間接活線工具の安全限界位置に対し本体を位置決めできる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、夜間などの暗所において間接活線工具の安全限界位置を、間接活線工具を操作中の作業者、及び該作業者を監視する現場責任者が視認でき、作業現場の安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る安全限界位置の標示装置を備えた間接活線工具を示す図である。
図2図2は、図1の標示装置の斜視図である。
図3図3は、図1の標示装置の一部を破断した図である。
図4図4(a)は、同実施形態に係る標示装置を間接活線工具の安全限界位置に装着するときの説明図、図4(b)は、同実施形態に係る標示装置を間接活線工具の安全限界位置に装着した状態を示す図である。
図5図5は、同実施形態に係る間接活線工具を使用した作業現場の説明図である。
図6図6は、間接活線工具(絶縁ヤットコ)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る間接活線工具の安全限界位置の標示装置について図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態の場合、夜間などの暗所において、配電線の保守作業等の電設工事を行うことを前提とし、高所作業車を使用するものとする。また、間接活線工具としては、絶縁ヤットコを使用するものとする。
【0020】
本実施形態を説明するに先立って、間接活線工具及び高所作業車について説明する。
【0021】
間接活線工具は、本実施形態においては、絶縁ヤットコを例にとって説明する。該絶縁ヤットコは、図1に示す如く、作業者によって支持される絶縁操作棒10を備える。絶縁操作棒10は、棒本体11と、該棒本体11の基端側に配置され、作業者が把持するためのグリップ12と、棒本体11の先端側に配置され、付着した雨水が先端側から基端側に流れないようにするための雨切りつば13と、棒本体11における雨切りつば13とグリップ12との間に配置され、作業者と充電部との安全距離を確保するための鍔状の安全限界位置目印体14とを有する。また、絶縁操作棒10の先端には、一対の把持部が設けられ、絶縁操作棒10の基端側には、一対の把持部を操作するための操作部が設けられる。また、該操作部の動作を一対の把持部に伝達する伝達棒であって、絶縁操作棒10よりも小径の伝達棒をさらに備える。
【0022】
高所作業車は、図5に示す如く、走行可能な車両20であって、旋回可能な旋回台21が搭載された荷台22を有する車両20と、旋回台21に設置された伸縮可能なブーム23であって、先端にバケット24が取り付けられたブーム23と、車両20を地面に固定する伸縮可能なアウトリガー25とを備える。なお、作業現場には、作業領域を照射するための照明装置26が設置される。
【0023】
本実施形態に係る間接活線工具の安全限界位置の標示装置は、図1図4に示す如く、後述する間接活線工具1の安全限界位置に取付可能な本体30と、該本体30に取り付けられた照明5とを備える。間接活線工具1の安全限界位置は、具体的には、間接活線工具1が具備する安全限界位置目印体14であり、該安全限界位置目印体14に本体30が重ね合わせ可能に形成される。
【0024】
具体的に説明すると、本体30は、図4(a)に示す如く、安全限界位置目印体14の具備する筒状部14aを被覆する取付部31と、前記筒状部14aの端部に連続して形成される傘状のつば部14bを被覆する鍔部32とを有する。また、本体30には、取付部31の開口端部から鍔部32の開口端部にかけて延びる線状の切欠き33が形成され、該切欠き33によって、取付部31の開口端部から鍔部32の開口端部にかけて一対の対向端面34,34が形成される。また、本体30は、安全限界位置目印体14に対して取り付けるための締結手段4をさらに備える。
【0025】
取付部31は、外周面に突設された電池収納部31aであって、後述する発光体50を発光させるための電源51を供給する電池を収納可能な電池収納部31aと、発光体50をオン・オフするスイッチ52が収納されるスイッチ収納部31bであって、電池収納部31aの近傍の取付部31の外周面に突設されたスイッチ収納部31bとを備える。
【0026】
取付部31から鍔部32の開口端部にかけて発光体50の一対のリード線50b,50bを配線するための配線用スペース32aが形成される。また、鍔部32の開口端部には、発光体50の発光部50aを外部に対して斜め外方に導出する導出孔32bが所定の間隔をおいて形成される。そして、配線用スペース32aの一端部は、電池収納部31aに連通し、配線用スペース32aの他端部は導出孔32bに連通する。
【0027】
締結手段4は、本実施形態では、締結バンドが使用される。具体的には、電池収納部31aを挟んだ本体30の両側に周方向に沿って固定されたベルト体40と、該ベルト体40の基端に配置された被係止部41であって、ベルト体40の先端側を挿通可能な挿通孔41aを有する被係止部41と、ベルト体40の先端部に形成された係止部42であって、被係止部41の挿通孔41aの周縁部に係止可能な係止突起42aを有する係止部42とを備える。
【0028】
照明5は、鍔部32の開口端部に配置された複数の発光体50と、該複数の発光体50を点灯させるための複数の電源51と、発光体50と電源51とを電気的に接続するスイッチ52であり、発光体50を点灯及び消灯させるスイッチ52とを備える。
【0029】
発光体50は、本実施形態では、発光ダイオード(LED)が使用される。具体的には、該発光体50は、鍔部32の導出孔32bから斜め外方に導出された発光部50aと、+電極及び−電極にそれぞれ接続された一対のリード線50b,50bとを有する。
【0030】
電源51は、本実施形態では、直流電源を備える。具体的には、複数又は単数のボタン電池が使用される。そして、複数又は単数の電池によって複数の発光体50が点灯する。
【0031】
スイッチ52は、本実施形態では、防水仕様のものを使用する。具体的には、本体30の取付部31の軸線に対して直交する方向に押し操作可能な操作ボタン52aと、該操作ボタン52aを外側から覆うゴム製のカバー52bとを備える。
【0032】
そして、直列接続又は並列接続された複数の発光体50と、複数又は単数の電源51とがスイッチ52を介して電気的に接続され、スイッチ52をオン・オフすることで、複数の発光体50を点灯させたり、消灯させたりすることができる。
【0033】
つぎに本実施形態に係る間接活線工具の安全限界位置の標示装置の使用態様について説明する。なお、高所作業車2の運転手は、作業現場においてアウトリガー25を伸長して、地面に対して荷台22を水平方向に固定しているものとする。また、ブーム23は短縮された状態になっているものとする。また、照明装置26は作業領域を照射すべく点灯されているものとする。
【0034】
まず、作業者Aは、間接活線工具1の安全限界位置に、間接活線工具の安全限界位置の標示装置3を装着する。具体的には、切欠き33によって形成された本体30の一対の対向端面34,34間を押し広げて、安全限界位置目印体14の外側から本体30を覆い被せる。具体的には、安全限界位置目印体14は、本体30内に挿入され、本体30の取付部31によって、安全限界位置目印体14の筒状の筒状部14aが被覆されるとともに、本体30の鍔部32によって、安全限界位置目印体14の傘状のつば部14bが被覆される。このとき、本体30の一対の対向端面34,34間は少し開いた状態になっている。
【0035】
つぎに、締結手段4のベルト体40の被係止部41に係止突起42aを係止させ、本体30の一対の対向端面34,34同士を接合させ、一対の対向端面34,34間を閉じる。これにより、安全限界位置目印体14に本体30が固定される。
【0036】
つぎに、作業者Aは、照明5が取り付けられた間接活線工具1を持って高所作業車2のバケット24に搭乗する。
【0037】
そして、バケット24に搭乗した作業者Aは、間接活線工具の安全限界位置の標示装置3のスイッチ52をオンにして、間接活線工具1の安全限界位置の標示装置3の複数の発光体50を点灯させる。これにより、間接活線工具1の安全限界位置が点灯標示される。
【0038】
つぎに、高所作業車2の運転手は、ブーム23を伸長してバケット24をケーブルCの近傍に移動させ、作業者Aが作業者しやすい位置にバケット24を配置する。
【0039】
その後、ケーブルCの近傍に位置した作業者Aは、間接活線工具1を用いて所要の作業を行う。
【0040】
バケット24の作業者Aによる作業を現場責任者Bは地上から監視する。具体的には、現場責任者Bは、ケーブル(活線)Cに対して作業者Aが所定の距離を超えて近づかないように監視しており、点灯標示された間接活線工具1の安全限界位置を視認しつつ、該安全限界位置に対する作業者Aを監視している。
【0041】
このように、本実施形態に係る間接活線工具の先端工具によれば、夜間などの暗所において間接活線工具1の安全限界位置を、間接活線工具1を操作中の作業者A、及び安全限界位置に対する作業者Aを監視する現場責任者Bが視認でき、作業現場の安全性を向上することができる。
【0042】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論のことである。
【0043】
例えば、前記実施形態の場合、間接活線工具の安全限界位置の標示装置3を、間接活線工具1の安全限界位置目印体14に対して取付可能としたが、間接活線工具1の安全限界位置目印体14に組み込まれていてもよい。この場合、配電線の保守作業等の電設工事時、間接活線工具1の安全限界位置目印体14への取付作業が不要になる。
【0044】
また、前記実施形態の場合、発光体50としてLEDを使用したが、フィラメント電球やキセノン球であってもよい。要は、間接活線工具1を使用する作業者A、及び安全限界位置を監視する現場責任者Bが、作業している間、間接活線工具1の安全限界位置を視認できるように標示できればよい。
【0045】
また、前記実施形態の場合、間接活線工具1として、絶縁ヤットコを例にとって説明したが、絶縁操作棒の先端に先端工具が着脱される共用操作棒であって、絶縁操作棒の基端側にグリップを有する共用操作棒でもよい。要は、間接活線工具1において安全限界位置を標示できればよい。
【符号の説明】
【0046】
1…間接活線工具、14…安全限界位置目印体、14a…筒状部、14b…つば部、2…高所作業車、3…間接活線工具の安全限界位置の標示装置、30…本体、31…取付部、32…鍔部、33…切欠き、5…照明、50…発光体、51…電源、52…スイッチ、A…作業者、B…現場責任者、C…ケーブル(活線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6