(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6501229
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】褐藻抽出物、酵母抽出物及びアスコルビン酸を含有する化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9711 20170101AFI20190408BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20190408BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20190408BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20190408BHJP
A61K 8/9728 20170101ALI20190408BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
A61K8/9711
A61K8/67
A61Q19/00
A61K8/06
A61K8/9728
A61Q19/08
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-559536(P2015-559536)
(86)(22)【出願日】2014年2月24日
(65)【公表番号】特表2016-510016(P2016-510016A)
(43)【公表日】2016年4月4日
(86)【国際出願番号】FR2014050373
(87)【国際公開番号】WO2014131971
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2017年1月5日
(31)【優先権主張番号】1351809
(32)【優先日】2013年2月28日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502189579
【氏名又は名称】エルブイエムエイチ レシェルシェ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】フランチ, ジョセリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】レニメル, イザベル
(72)【発明者】
【氏名】ヌヴー, ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ゴルゼランチク, ヴァレリー
(72)【発明者】
【氏名】マニゲ, サブリナ
【審査官】
進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0229538(US,A1)
【文献】
特開2003−238384(JP,A)
【文献】
特開2000−169321(JP,A)
【文献】
特開2009−161458(JP,A)
【文献】
特開2005−029546(JP,A)
【文献】
国際公開第2004/075621(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの化粧品として許容される添加剤と、
パーセンテージを混合物の乾燥重量で表して、組成物の重量に対して0.01〜1重量%の範囲の量の、
褐藻ラミナリア・ディギタータの抽出物、
サッカロミセス加水分解物、及び
アスコルビン酸又はそのエステルの1つ
を含む混合物と、
を含む化粧品組成物。
【請求項2】
褐藻ラミナリア・ディギタータの抽出物の重量による濃度が、パーセンテージを抽出物の重量で表して、組成物の重量に対して0.005〜0.02重量%の間であることを特徴とする、請求項1に記載の化粧品組成物。
【請求項3】
サッカロミセス加水分解物の重量による濃度が、パーセンテージを加水分解物の乾燥重量で表して、組成物の重量に対して0.001〜0.05%の間であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の化粧品組成物。
【請求項4】
アスコルビン酸又はそのエステルの1つの濃度が、組成物の重量に対して0.05〜0.5重量%の間であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項5】
褐藻ラミナリア・ディギタータの抽出物のサッカロミセス加水分解物に対する重量比が、1/1〜5/1の間であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項6】
アスコルビン酸又はそのエステルの1つのサッカロミセス加水分解物に対する重量比が、10/1〜100/1の間であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項7】
組成物の総重量に対して85重量%を超える水を含むアンチエイジングセラム、又は組成物の総重量に対して最大40重量%の脂肪相を含む水中油型エマルションの形態で提供されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項8】
褐藻ラミナリア・ディギタータの抽出物が、新鮮な藻類を粉砕するステップ、続いて、水中での浸軟のステップ、分離のステップ、沈降のステップ及び濾過のステップによって得られることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化粧品組成物を製造する方法。
【請求項9】
サッカロミセス加水分解物が、生酵母の懸濁液をUV光及び/又は熱にさらすステップ、タンパク質分解酵素により加水分解するステップ及び濾液を収集するステップによって得られることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化粧品組成物を製造する方法。
【請求項10】
しわ、小じわ、たるみ又は萎縮などの内因性及び/又は外因性の老化の兆候を示す皮膚に、i)請求項1〜7のいずれか一項に記載の化粧品組成物、又はii)褐藻ラミナリア・ディギタータの抽出物、サッカロミセス加水分解物及びアスコルビン酸若しくはそのエステルの1つの組合せを局所施用するステップを含む、化粧ケア方法。
【請求項11】
組成物又は組合せを、30歳を超える年齢の個体の皮膚に施用することを特徴とする、請求項10に記載の化粧ケア方法。
【請求項12】
組成物の重量に対して0.005〜0.02重量%の間の褐藻ラミナリア・ディギタータの抽出物、
組成物の重量に対して0.001〜0.05重量%の間のサッカロミセス加水分解物、
組成物の重量に対して0.05〜0.5重量%の間のアスコルビン酸又はそのエステルの1つ
を含有する組成物を、1〜5mg/cm2の比率で皮膚に施用することを特徴とする、請求項10又は11に記載の化粧ケア方法。
【請求項13】
同時に、i)コラーゲンI又はその前駆体のプロコラーゲンIの合成を増加させ、及びii)個体の皮膚における、GAGの発現、エラスチンの合成及びインテグリンの発現から選ばれる少なくとも1つのその他の効果を有する、褐藻ラミナリア・ディギタータの抽出物、サッカロミセス加水分解物及びアスコルビン酸又はそのエステルの1つの組合せの使用。
【請求項14】
少なくとも1つの化粧品として許容される添加剤と、褐藻ラミナリア・ディギタータの抽出物、サッカロミセス加水分解物及びアスコルビン酸又はそのエステルの1つの組合せと、を含む、皮膚の老化の処置又は予防に使用するための化粧品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、培養下の老いた真皮線維芽細胞における、I型コラーゲン及びその前駆体であるプロコラーゲンIの合成に対してもたらされる相乗的効果のために選択された3つの化粧活性剤の通常の組合せを含有する化粧ケア組成物である。これらの3つの活性剤の組合せは、生存条件下での皮膚外植片への局所施用後の皮膚の老化の4つのその他のマーカーに対しても効果的である。
【0002】
本発明の化粧品組成物は、皮膚のハリの低下に対処するための皮膚用ケア製品として、特に、老化した皮膚を再構築及び調色するアンチエイジング化粧剤として、とりわけ有用である。
【0003】
線維芽細胞は、真皮の主な細胞であり、真皮、特にコラーゲン繊維の構成要素となる細胞外マトリックスの繊維の合成に特化されている。
【0004】
したがって、コラーゲンは、三重らせん状に配置された皮膚の主な支持タンパク質であり、皮膚に張力及び牽引力に対する抵抗を与える。
【0005】
老化中、真皮中のコラーゲンの不足は、しわの形成の主な原因の1つである。加齢とともに、皮膚のこの支持組織は弱くなっていき、コラーゲン繊維は分解し、コラーゲン繊維の自然な再生は減速し、真皮はその密度及びその機械的特性を失って薄くなり、しわ及び小じわが出現し、顔の輪郭がたるむ。
【0006】
研究によって、高齢者の提供者の線維芽細胞によるI型コラーゲンを合成する能力の著しい低下が示されている(Dumas M.ら、Mech.Aging Dev.;1994、73、179〜87)。
【0007】
これに関連して、皮膚、特に真皮の老化に効果的に対処するためには、インビボでのコラーゲン合成を再開することが不可欠であると思われる。このことは、特に、コラーゲンIの前駆体であるプロコラーゲンIの合成を刺激することによって、達成することができる。
【0008】
本発明者らは、非常に高いレベルで、老いた皮膚線維芽細胞において、相乗的に作用して、I型コラーゲン、及びその前駆体であるプロコラーゲンIの合成を再開する3つの成分の組合せを見出した。
【0009】
これらの活性成分は、特にコラーゲンの合成に対するこれらの活性のために、アンチエイジング剤として知られているが、それにも関わらず、このような組合せが、とりわけI型コラーゲン、又はその前駆体の合成に対して、特筆すべき相乗効果をもたらし得ることは、今まで示されていなかった。個々にアンチエイジング活性を示す活性剤の組合せは、以下の実施例で本発明者らによって実証されているように、必ずしもアンチエイジング活性を示すわけではない。特に、アンチエイジングとして知られている2つの活性剤の組合せは、2つの活性剤を別々に使用した場合の活性の合計よりも活性が低くなる可能性があり、これら2つの同じ活性剤を第3の活性剤と組み合わせると、非常に優れたアンチエイジング活性が付与され得る。本発明に関連して使用される活性剤の組合せは、加えて、皮膚の老化に係わるその他のマーカー、例えばGAG及びエラスチンだけでなく、インテグリンβ−1を刺激することも可能である。
【0010】
グリコサミノグリカン(又はGAG)は、細胞の表面及び細胞外マトリックス中に豊富に見られる、一般には硫酸化されている複合多糖である。GAGの極性及び親水特性によりGAGは一定の生物学的機能に暗に関与することとなる。
【0011】
血管及び皮膚付属器の周囲の真皮表皮接合部などの基底膜中に見られる中性のGAGは、その陽イオンを固定する機能並びにイオン及び高分子フィルターの機能により、成長因子の重要なリザーバーであり、代謝の役割を果たすために、細胞の周りの領域中でこれらを濃縮させることを可能にする。
【0012】
酸性のGAG(本質的にヒアルロン酸、非硫酸化GAG)は、水を留めるその能力によって水和プロセスに強く関与し、弾力性及び細胞外培質の維持のその特性を皮膚に与える。酸性のGAGは、主に乳頭真皮中、及び表皮基底層の角化細胞内空間に位置している。真皮には、身体のヒアルロン酸の半分が含まれる。
【0013】
これらの2つのタイプのGAGは、細胞外マトリックスの大部分の構成要素となる。インビボで、GAGは、皮膚の弾力性及び水和に関与する。GAGの代謝及び再生、さらにGAG鎖の組成は、組織の生理学的状態に密接に依存している。老化のプロセスにおいて、GAGの合成が変更される。これは、皮膚のGAGのおよそ50%を占めるヒアルロン酸の場合であり、その合成が低減される。
【0014】
したがって、皮膚のハリの維持に対するGAGの好ましい効果を維持するために、老化の間にこれらのGAGの合成を刺激することができることは有用である。
【0015】
エラスチンは、真皮の弾性繊維に弾力性及び回復力を与え、皮膚をつまんだり又は伸ばしたりしたときに、皮膚が元の位置に戻ることを可能にする。エラスチンは、線維芽細胞によって合成されて、細胞外空間中に分泌され、弾性繊維の最大90%を占める。エラスチン及びコラーゲンは、細胞外マトリックスの主な構成要素である。エラスチンの総産生は思春期頃に停止し、その後、利用可能なエラスチンの量は、時間と共に低下することになる。
【0016】
紫外線放射に曝露することによって、エラスチンの分解が増加する。光老化による最もよく知られている変化は、異常なエラスチン、及びフィブロネクチン又はフィブリリンなどの細胞外マトリックスのその他のタンパク質からなる物質の蓄積に起因する、天日性弾力線維症の網状真皮における存在である。次いで、弾性繊維の網は、寸断され、肥厚し、機能しないことが多い繊維を示す。
【0017】
エラスチンは、弾性のある皮膚の維持において重要な役割を果たす。したがって、その合成を刺激して、皮膚の老化の兆候を予防する又は減速させることができることがとりわけ有用である。
【0018】
インテグリンは、膜貫通タンパク質であり、その末端の1つは、細胞の外側に位置する物質と相互作用し、もう一方の末端は、細胞内の構成要素と相互作用する。インテグリンの大多数は、細胞内の領域と組み合わされる一定の数の結合タンパク質を介して細胞外マトリックスの分子及びアクチンミクロフィラメントに結合する。インテグリンは、細胞の移動、分化及び生存に非常に重要な役割を果たす。
【0019】
したがって、このマークに関する作用は、アンチエイジングの有効性にとってとりわけ望ましい。
【0020】
本発明の組成物は、褐藻抽出物、酵母抽出物及びアスコルビン酸又はそのエステルの1つの組合せを含む。本発明の組成物は、特に、培養下の老化した皮膚線維芽細胞におけるI型コラーゲンの合成に影響を与える。
【0021】
これらの3つの化粧活性剤の組合せについて、I型コラーゲン及びその前駆体であるプロコラーゲンIの合成に対する相乗的効果が示されてきた。これらの成分は、老化した線維芽細胞によるI型コラーゲンの合成に対する能力を強化する作用を有する。
【0022】
本発明者らは、すべての活性剤の濃度が低い場合でも、本発明の組成物がI型コラーゲン及びその前駆体を刺激するための強い潜在力を有し、このことが、配合物に組み込まれる量及び化粧品の原価を低減することを可能にすることを見出した。
【0023】
本発明に関連して使用される化粧活性剤の組合せは、例えば水性相に溶かすことによって、容易に配合される利点も有し、このことが、クリームからスティックの範囲の、非常に多様なテクスチャ及び配合物形態を有する幅広いケア及びメーキャップ用のアンチエイジング化粧品をもたらすことを可能にする。
【0024】
したがって、本発明の第1の主題は、化粧品として許容される添加剤、並びに褐藻ラミナリア・ディギタータ(Laminaria digitata)の抽出物、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)加水分解物及びアスコルビン酸又はそのエステルの1つの組合せを含む化粧品組成物に関する。
【0025】
3つの活性成分の組合せは合計で、パーセンテージを組合せの乾燥重量で表して、組成物の重量に対して、好ましくは0.01〜1重量%を占め、好ましくは0.05〜0.6重量%、より好ましくは0.1〜0.3重量%を占める。
【0026】
褐藻ラミナリア・ディギタータの抽出物及び組成物の濃度は、パーセンテージを抽出物の乾燥重量で表して、組成物の重量に対して、好ましくは0.005と0.02重量%の間、好ましくは0.007と0.015重量%の間、より好ましくは0.009と0.011重量%の間である。
【0027】
一実施形態において、褐藻抽出物は、新鮮な藻類を粉砕するステップ、続いて、水中で浸軟するステップ、分離するステップ、沈降するステップ及び濾過するステップによって得られ、これらの段階のそれぞれは、撹拌、pH及び継続時間の管理条件下で実行される。グリコールなどの保存料を、反応の終了時に添加することができる。
【0028】
このような抽出物は、グリコール、例えばブチレングリコール又はグリコール及び水の混合物などの極性溶媒に溶かすことができる。
【0029】
褐藻抽出物のINCI名は、ラミナリア・ディギタータ抽出物(及び)ブチレングリコールとすることができる。
【0030】
組成物中のサッカロミセス加水分解物の濃度は、パーセンテージを加水分解物の乾燥重量で表して、組成物の重量に対して、好ましくは0.001と0.05重量%の間、好ましくは0.003と0.01重量%の間、より好ましくは0.004重量%と0.006重量%の間である。
【0031】
一実施形態において、サッカロミセス加水分解物は、パン酵母サッカロミセス・セレビシエの酵素加水分解によって得られる。本発明の意味の範囲内の加水分解物は、前記加水分解物が酵母を培養することではなく、酵母を加水分解することを目的としているので、単純なパン種ではない。したがって、加水分解物の生物学的特性は、同じ微生物のパン種であるものに類似しているとは限らない。
【0032】
サッカロミセス加水分解物は、UV光及び/又は加熱による生酵母の懸濁液への放射、タンパク質分解酵素による加水分解及び濾液の収集によって得ることができる。
【0033】
より詳細には、サッカロミセス加水分解物は、サッカロミセス、特にサッカロミセス・セレビシエを培養することによって得ることができる。その後、生酵母は、その培養培地において、UV光源及び/又は加熱源による放射に曝露する。この照射は、酵母をストレス状態に置き、一定の曝露時間後、複雑な生化学的防護機構をもたらす。防護機構が終了する際、酵母は、培養培地から分離され、タンパク質分解酵素による加水分解が行われる。加水分解反応が終了する際、酵素は、例えば80℃で1時間加熱して、不活化する。その後、細胞壁を濾過によって除去する。抽出物の乾燥物質含有量は、水に希釈することによって調整することができ、例えば25重量%に到達し得る。
【0034】
サッカロミセス・セレビシエ加水分解物は、一連の以下の段階を含むプロセスによって得ることができる:
適切な培養培地に生酵母を懸濁する段階;
培養培地にUV光を照射する及び/又は熱を与えることによって、ストレス状況に細胞を置く段階;
栄養培地を除去して、酵母の細胞をタンパク質分解酵素で溶解する段階;
酵素を不活化する段階;並びに
細胞壁を取り除くために、濾過し、濾液を収集する段階。
【0035】
このプロセスの例は、文献、米国特許出願公開第2002/0192765号で得られる。
【0036】
サッカロミセス加水分解物のINCI名は、水(及び)サッカロミセス溶解物の抽出物とすることができる。
【0037】
アスコルビン酸又はそのエステルの1つの濃度は、組成物の重量に対して、0.05〜0.5重量%の間、好ましくは0.1〜0.3重量%の間、より好ましくは0.15〜0.25重量%の間とすることができる。
【0038】
アスコルビン酸エステルは、以下の式(I):
【化1】
のアスコルビル−2−グルコシドとすることができる。
【0039】
アスコルビル−2−グルコシドの濃度は、組成物の重量に対して、好ましくは0.05〜0.5重量%の間である。
【0040】
褐藻ラミナリア・ディギタータの抽出物のサッカロミセス加水分解物に対する重量比は、有利には、1/1〜5/1の間、好ましくは1/1〜3/1の間、特にほぼ2/1程度である。
【0041】
アスコルビン酸又はそのエステルの1つのサッカロミセス加水分解物に対する重量比は、有利には、10/1〜100/1の間、好ましくは30/1〜50/1の間、特にほぼ40/1程度である。
【0042】
本発明の一態様によれば、本発明の組成物は、アンチエイジング活性剤、及び任意選択で少なくとも1つのその他の化粧活性剤として本発明の組合せを含む化粧ケア組成物、例えばアンチエイジングケア組成物である。
【0043】
前記アンチエイジング活性剤は、褐藻ラミナリア・ディギタータの抽出物、サッカロミセス加水分解物及びアスコルビン酸又はそのエステルの1つの組合せで構成される。
【0044】
一実施形態において、褐藻ラミナリア・ディギタータの抽出物、サッカロミセス加水分解物及びアスコルビン酸又はそのエステルの1つの組合せからなるアンチエイジング活性剤は、組成物の重量の0.01〜1重量%の間、例えばほぼ0.2重量%程度を占める。
【0045】
化粧品組成物は、加えて、特に、アンチエイジング効果、及び/又はフリーラジカルに対処する活性、及び/又は皮膚の脱色若しくは美白効果、及び/又は痩身効果、及び/又は湿潤効果、及び/又は鎮静、緩和若しくはリラックス効果、及び/又は皮膚の微小循環を刺激する効果、及び/又は脂漏調節効果、及び/又は皮膚の清浄若しくは浄化効果を有するものから選ばれる1つ又は複数のその他の化粧活性剤も含むことができる。
【0046】
組成物は、褐藻ラミナリア・ディギタータの抽出物、サッカロミセス加水分解物及びアスコルビン酸又はそのエステルの1つの組合せからなる上述のもの以外の、コラーゲンの合成を刺激するアンチエイジング活性剤が欠けていることが好ましい。
【0047】
本発明のアンチエイジング活性剤の作用は、有利には、老化の別の標的に作用するその他のアンチエイジング剤の作用によって補うことができる。
【0048】
特に、化粧品組成物は、特に:
皮膚のハリを刺激する作用剤、例えば、I型以外の型のコラーゲン、特にIII型又はVII型コラーゲンの合成を刺激するペプチド、ツボクサ(Centella asiatica)抽出物、マデカシン酸、アシアチン酸、マデカッソシド、オート麦抽出物、ブラジルナッツ(Bertholletia excelsa)抽出物、タンパク質加水分解物、大豆ペプチド、トルメンチラ(Potentilla erecta)抽出物、メナモミ(Siegesbeckia orientalis)抽出物又はギンセノシド若しくはノトギンセノシド;
アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、ツルレイシ(Momordica charantia)又はセイヨウカボチャ(Cucurbita maxima)抽出物などのエラスターゼ阻害剤;
琥珀抽出物などの、デルマトポンチンの合成を刺激する作用剤;
収斂性の植物の抽出物、例えばマンサク属(Hamamelis sp.)抽出物などの、毛穴を閉じる作用剤;
UV−A及びUV−B放射から保護する物理的又は化学的遮断剤、例えば、単独又は酸化チタンと組み合わせた、ベンゾフェノン、4−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、オクトクリレン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、サリチル酸エチルヘキシル、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸又はホモサレート;
色素沈着の異常に対処することを意図した作用剤、特に皮膚の老化に関連するもの、例えばコウジ酸、ブラックベリー又はカンゾウ根抽出物、アルブチン、パンテテインスルホン酸カルシウム、ボルジン、ジアセチルボルジン又はユリ抽出物、特にユリ根抽出物;
フリーラジカルに対処するための作用剤又は抗炎症剤、例えばカワラヨモギ(Artemisia capillaris)抽出物、ワレモコウ(Sanguisorba officinalis)抽出物、レスベラトロール及びその誘導体、ウコン又はクルクミン又はテトラヒドロクルクミン、ブドウ種子から抽出したポリフェノール、ビタミンE及びその誘導体、特にそのリン酸誘導体、エルゴチオネイン若しくはその誘導体、又はイデベノン;
抗しわ作用を向上させるための、アスパラギン酸マグネシウム又はアデノシン;
ふっくらとした皮膚のためのふっくら効果を向上させるためのD−キシロース;
並びに、これらの混合物のいずれか1つ
から選ばれる1つ又は複数のその他の化粧活性剤を含むことができる。
【0049】
上述の3つの有効成分の組合せの作用は、バリア機能を向上させる再加脂効果のための脂質の合成に作用するアンチエイジング活性剤、又は老化プロセスに関わる微小炎症をおさえるアンチエイジング活性剤によって補うことができる。
【0050】
組成物は、追加的に、顔料、染料、ポリマー、界面活性剤、レオロジー剤、香料、電解液、pH調整剤、保存料及びこれらの混合物から選ぶことができる、少なくとも1つの化粧品として許容される添加剤を含むことが有利である。
【0051】
化粧品組成物は、例えば、セラム、ローション、クリーム(油/水エマルション)、あるいはヒドロゲル、好ましくはマスクとすることができ、スティック又はパッチの形態で提供することもできる。
【0052】
具体的な実施形態において、組成物は、85重量%超の水、好ましくは95重量%超の水を含むアンチエイジングセラムの形態で提供される。
【0053】
別の実施形態において、組成物は、組成物の総重量に対して、最大40重量%、好ましくは最大30重量%の脂肪相を含む、油/水エマルションの形態で提供される。
【0054】
本発明の第2の主題は、しわ、小じわ、弾力性の喪失、たるみ又は萎縮などの、内因性の及び/又は外因性の老化の兆候を示す皮膚に、i)上述の組成物又はii)褐藻ラミナリア・ディギタータの抽出物、サッカロミセス加水分解物及びアスコルビン酸若しくはそのエステルの1つの組合せを局所施用するステップを含む、化粧ケア方法に関する。
【0055】
組成物又は3つの化合物の組合せは、好ましくは30歳を超える、35歳を超える、より好ましくは40歳を超える年齢の個体の皮膚に施用される。
【0056】
一実施形態によれば、
組成物の重量に対して、0.005〜0.02重量%の間、好ましくは0.007〜0.015重量%の間、より好ましくは0.009〜0.011重量%の間の褐藻ラミナリア・ディギタータの抽出物、
組成物の重量に対して、0.001〜0.05重量%の間、好ましくは0.003〜0.01重量%の間、より好ましくは0.004〜0.006重量%の間のサッカロミセス加水分解物、
組成物の重量に対して、0.05〜0.5重量%の間、好ましくは0.1〜0.3重量%の間、より好ましくは0.15〜0.25重量%の間のアスコルビン酸又はそのエステルの1つ
を含有する組成物は、1〜5mg/cm
2の比率で、好ましくはほぼ2mg/cm
2程度で、皮膚に施用する。
【0057】
最終的に、本発明の第3の主題は、同時に、i)コラーゲンI又はその前駆体のプロコラーゲンIの合成を増加させ、及びii)個体の皮膚における、GAGの発現、エラスチンの合成及びインテグリンの発現から選ばれる少なくとも1つのその他の効果を有する、褐藻ラミナリア・ディギタータの抽出物、サッカロミセス加水分解物及びアスコルビン酸又はそのエステルの1つの組合せの使用に関する。
【0058】
本発明は、好ましくは30歳を超える年齢の個体において、皮膚の、特に皮膚の真皮の老化の処置又は予防で使用するための、化粧品として許容される添加剤、並びに褐藻ラミナリア・ディギタータの抽出物、サッカロミセス加水分解物及びアスコルビン酸又はそのエステルの1つの組合せを含む化粧品組成物にも関する。
【0059】
化粧品組成物は、特に、しわ及び小じわの強度を低減すること、並びに真皮の構成要素となる細胞外マトリックスの構造を回復させることを可能にする。化粧品組成物は、コラーゲン繊維の網を回復することによって、皮膚の表面を引き締める効果をもたらす。この引き締め効果は、顔の輪郭で知覚できる。
【0060】
本発明は、以下の実施例によってより詳細に例示されるであろう。
【0061】
実施例1:線維芽細胞に対するテスト
本発明の組合せの構成要素となる抽出物の、通常のヒト線維芽細胞(NHF)によるプロコラーゲンIの合成に対する影響を研究する。プロコラーゲンは、その末端を切断して、コラーゲンサブユニットをもたらす細胞外培地において分泌されるコラーゲンの前駆体型である。これらのコラーゲン分子を組み合わせることによって、コラーゲン繊維が、その後生成されることになる。
【0062】
材料及び方法
1.細胞モデル
タイプ:通常のヒト線維芽細胞(NHF、提供者は37歳)、培養下の継代培養(20回目の継代培養)によって老化。
培養条件:37℃、CO
25%。
培養培地:(Invitrogen 21090−22)L−グルタミン2mM、ペニシリン50UI/mlを補充−ストレプトマイシン50μg/ml、FCS10%(Biowest S1810)。
テスト培地:ウシ胎仔血清(FCS)中、培養培地1%。
【0063】
活性剤を、以下の表に指定した濃度で、培養培地に溶かす。
【表1】
【0064】
2.培養及び処理
これらの細胞によるI型プロコラーゲンの合成を、老化した線維芽細胞の培養上清からELISA技術によって評価した。
【0065】
NHFを、24時間、細胞7500個/ウェルの速度で、96ウェルマイクロプレート中で培養する。80%のコンフルエンスで、培地を、試験される活性剤又は基準品を含有するテスト培地と置き換える。細胞を72時間インキュベートする。その後、培養上清を回収し、アッセイを待つ間、−20℃で保管する。総タンパク質のアッセイ(BCA)を、細胞層で実行する。
【0066】
プロコラーゲンIのアッセイを、ELISAキット(Takara)を使用して実行する。
【0067】
プロコラーゲンIの量はng/タンパク質mgで表す。
【0068】
結果
各実験において、一連の対照値及び処理した値を、(対応のない)スチューデント検定を使用して比較する。p<0.05の値である差異は有意である。
【0069】
1.活性剤単独の効果
単独でテストした活性剤のそれぞれについて得られた結果を、以下の表に提示する。
【表2】
【0070】
各活性剤個々について得られた値から算出される予想される理論的効果と、これらの活性剤のうち2つ又は3つの組合せの効果とを比較するために、これらの結果を、以下で使用する。
【0071】
2.サッカロミセス抽出物に基づくものを含めた、2つの活性剤の組合せの効果
以下の表は、活性剤と酵母(サッカロミセス)抽出物との種々の組合せについて得られた結果を合わせている。
【表3】
【0072】
上の組合せのそれぞれに対して得られた結果をセクション1において得られた値から算出した予想される理論的効果と比較すると、酵母抽出物に基づく組合せは測定可能な相乗的効果をもたらさないことに留意されたい。組合せについて測定された活性は、常に、算出した活性には満たない。
【表4】
【0073】
3.アスコルビン酸に基づくものを含めた、2つの活性剤の組合せの効果
アスコルビル−2−グルコシドに基づく異なる組合せについて得られた結果を以下の表に示す。
【表5】
【0074】
3つの組合せのうち2つについて、アスコルビル−2−グルコシドは、プロコラーゲンIの合成を非常に著しく促進する。以下の表の結果は、酵母抽出物が、プロコラーゲンIの合成を刺激するための(この場合は、アスコルビン酸との)組合せにおける良好な候補であるようには見えないことも裏付けている。
【表6】
【0075】
4.アスコルビン酸に基づくもの及び酵母抽出物に基づくものを含めた、3つの活性剤の組合せの効果
3つの活性剤のこれらの異なる組合せについて得られた結果を、以下の表で合わせる:
【表7】
【0076】
3つの活性剤の組合せについて測定した活性を、別々に摂取した活性剤のそれぞれによる活性から算出した理論的な活性と以下で比較する。
【0077】
ラファーマイン(登録商標)+バイオダインズ(登録商標)+ビタミンC
【表8】
【0078】
この組合せについて、測定した活性は、先行するテストから算出した予想される活性よりわずかに低いことがわかる。
このような組合せを皮膚の老化の処置のために留保することができる相乗効果は、観測されない。
【0079】
セアネルギリウム(登録商標)+バイオダインズ(登録商標)+ビタミンC
【表9】
【0080】
この組合せは、プロコラーゲンIの合成に対して相乗的効果を示す。これは、褐藻ラミナリア・ディギタータの抽出物、酵母抽出物及びアスコルビン酸を含む組合せの場合、測定した活性は、予想した活性よりも非常に顕著に大きくなることが見出されるからである。
【0081】
非常に驚くべきことに、本発明の組合せの場合、及び先行する組合せに反して、酵母抽出物の存在に関連する負の効果は測定されないこと、反対に、プロコラーゲンIの合成に対して測定された好ましい効果は、予めテストした組合せのすべてについて測定又は算出したものよりはるかに大きいことも観測される。
【0082】
したがって、この組合せは、化粧品組成物の形態で、皮膚の老化の兆候の出現に対処するのにとりわけ有利である。
【0083】
実施例2:生存条件下で維持された老齢の皮膚のモデルに対するテスト
この研究の目的は、生体外で、ヒトの皮膚の外植片の表皮及び真皮の構造に対する化粧品配合物のアンチエイジング活性を調査することである。
【0084】
この活性は、グリコサミノグリカン(又はGAG)、コラーゲンIの免疫標識、エラスチンの免疫標識及びインテグリンβ−1の免疫標識の視覚化によって評価される。
【0085】
年齢50歳の女性に対する腹部形成手術によって、直径10mmの外植片を調製する。外植片を、CO
2を5%に強化した湿潤環境中37度で、BEM(BIO−ECの外植片培地)培地中に生存条件下で配置した。
【0086】
研究の条件:
本発明の種々の化粧品組成物及び比較組成物をテストする。本発明の化粧品組成物は、褐藻ラミナリア・ディギタータの抽出物、酵母抽出物及びアスコルビン酸のエステルからなる本発明の組合せを含む。
【0087】
したがって、各化粧品組成物は:
乾燥重量で0.01%のセアネルギリウム(登録商標) BG/BASF(ラミナリア・ディギタータ抽出物)、
乾燥重量で0.005%のバイオダインズ(登録商標) TRF(登録商標)improved 25/ARCH(サッカロミセス抽出物)及び
0.2重量%のアスコルビル−2−グルコシド、アスコルビン酸のエステル
を含む。
【0088】
これらの化粧品組成物は、7重量%で不変のグリコールの濃度、及び互いに異なる可変の比率の脂肪相を有する。
【0089】
テストしたテクスチャは、以下の通りである:
20重量%の脂肪相を含む油/水(O/W)エマルション、E
20で表示、
本発明の組合せを含まない、20重量%の脂肪相を含むプラシーボO/Wエマルション、プラシーボエマルションP
20で表示、
10重量%の脂肪相を含むO/Wエマルション、E
10で表示、
1.5重量%の脂肪相を含むゲル状セラム、Sで表示。
【0090】
テストされる各化粧品組成物について、D0、D2、D4、D6及びD8で、皮膚外植片に対して、1cm
2当たり2mgの用量の5つの連続する施用を実行する。したがって、少なくとも3つ、例えば6つの外植片を調製し、それらに対してD9又はD10で、各マーカーの測定を実行する。各マーカーに対して、調製したすべての外植片の平均を得る。
【0091】
GAGの発現は、パラフィン中で生成した外植片の切片の三重染色によって評価する。続いて、染色を、画像解析によって、顕微鏡を用いて評価する。
【0092】
エラスチン、コラーゲンI及びインテグリンβ−1を、免疫標識及び顕微鏡分析によって定量化する。
【0093】
テストした各マーカーについて、生存条件下での皮膚外植片上で得られた結果を、明確に有意な結果についてのみ、未処理対照に対する変動のパーセンテージとして表す。
非有意な変動を、NSで表示する。
【0094】
本発明の組合せを含む又は含まない、20重量%の多相を含むエマルションに対して、未処理対照に対するパーセンテージの符号として、活性の変動を、以下の表に示す:
【表10】
【0095】
本発明の化粧品組成物は、多くのマーカーに対して有意な活性を示すことが示されており、プラシーボエマルション(プラシーボエマルションP
20)の場合はそうではない。
【0096】
より低い比率で脂肪相を含むエマルションを使用するテストも実行する。
【0097】
試験したマーカーのそれぞれに対する、未処理対照に対するパーセンテージとして、活性の変動を以下の表に表す。
【表11】
【0098】
したがって、この組合せは、高齢者の皮膚又は皮膚の老化の兆候を示す皮膚のケアを意図した多様な製品におけるアンチエイジング活性剤としてのその利点のすべてを示す。
【0099】
この組合せ自体、又は本発明の組合せを含む化粧品組成物の両方について得られた結果は、皮膚をケアするための又はメーキャップするための異なる化粧品テクスチャを示す化粧品組成物中の本発明の組合せの有効性を実証している。
【0100】
本発明の組合せは、GAG、エラスチン又はインテグリンβ−1などの、皮膚の老化に強く関与している異なるマーカーを著しく刺激する。
【0101】
皮膚用の組成物のなかで、脂肪相の最も低い比率を示すゲル状セラムは、テストした最多数のマーカーに対して、高い有効性を示す。
【0102】
プロコラーゲンIの合成に対する相乗的効果が示された本発明の組合せは、老化のその他のマーカー、特にコラーゲンIに対する、有利な効果ももたらす。
【0103】
したがって、この組合せは、皮膚の老化の兆候の出現に対処すること、又はその発生を減速させることを目的とした、アンチエイジング組成物、又はケア若しくはメーキャップ法での使用のための最優先の利点を示す。