(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
建築、土木構造物には汚れ防止、防水、意匠性等の付与を目的として建築土木用シートが用いられている。例えば、トンネル、廃棄物処分場、建築物の防水層として防水シートが用いられている。
防水シート等の建築土木用シートを下地に固定する方法として電磁誘導加熱装置を用いた機械的固定工法が行われている。この工法は、まず下地に固定具を固定し、その上に建築土木用シートを敷設する。そして、建築土木用シートの固定具に対応する位置に誘導加熱装置を配置し、固定具を加熱することで固定具と建築土木用シートを接合固定する工法である。
【0003】
したがって誘導加熱による機械的固定工法においては建築土木用シートが飛散や脱落するのを防止するために、固定具が下地に対して強く止め付けられ、その固定具に建築土木用シートが充分に接合されていることが求められる。
【0004】
しかし、固定具の上から建築土木用シートが敷設されると固定具が視認できないために建築土木用シートの上から電磁誘導加熱装置を固定具と対応する位置に配置することは容易ではない。そのため、電磁誘導加熱装置が固定具からずれて配置されたまま加熱されるとシートが充分に固定されないおそれがある。さらに、誘導加熱装置がずれたまま加熱された場合、固定具はその片側が異常に発熱し、その上の建築土木用シートが変形することも懸念される。
【0005】
このように建築土木用シートの表面から固定具の上に電磁誘導加熱装置を正確に配置する方法として、特許文献1においては、防水シートの敷設施工における固定部材にほぼ対応する厚さを有する非導電性板体の中程に固定部材の外周より大きく高周波発振ヘッドの外周よりも小さい接合位置決め用のガイド孔が設けられた接合位置決め治具を、固定部材にガイド孔が合致するように防水シートを介して載置したのち、高周波発振ヘッドをガイド孔に合わせて当接し高周波誘導加熱により固定部材と防水シートとを接合する防水シートの敷設方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には電磁誘導加熱器の防水シートとの当接面に、防水シートに当接する際、導体片を囲んで、その当接面が導体片から外れるのを防止するガイドを設ける方法が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に本発明の実施形態である電磁誘導加熱装置Eを用いて施工された建築土木用シートの固定構造の断面図を示す。下地Aの上に金属製の固定具CがビスDで固定されている。固定具Cと下地Aを覆うように建築土木用シートBが敷設されている。建築土木用シートBの上から固定具Cに対応する位置に電磁誘導加熱装置Eを置き、電磁誘導加熱装置Eを発振させ固定具Cを加熱することで固定具Cと建築土木用シートBとが接合される。
【0015】
ここで、本実施形態において固定具Cの建築土木用シートBと接する面には接着層(図示なし)が設けられている。固定具Cを加熱することで接着層が溶融し建築土木用シートBと固定具Cとが接合される。また、固定具CはビスDで下地Aに固定されているので、建築土木用シートBは下地Aに対し固定される。
【0016】
電磁誘導加熱装置Eを
図5を用いて説明する。本実施形態に係る電磁誘導加熱装置Eは誘導加熱コイル21と、建築土木用シートBの上から固定具Cを検知する検知部40と、制御部50とを有している。そして、誘導加熱コイル21には電源部70に接続された高周波出力部30から高周波電流が供給される。また制御部50は高周波出力部30を介して誘導加熱コイル21に接続されている。
【0017】
電磁誘導加熱装置Eを建築土木用シートBの上で移動させ固定具Cが検知部40の検知範囲内に入ると、検知部40は検知したことを示す信号を制御部50に送る。信号を受信した制御部50は、高周波出力部30を高周波電流が誘導加熱コイル21へ通電可能な状態にする。
【0018】
誘導加熱コイル21は、高周波出力部30から供給される高周波電流によって磁束を発生する。そしてこの磁束は固定具Cに渦電流を発生させる。この渦電流は固定具Cにジュール熱を発生させる。本実施形態では固定具Cの接着層がジュール熱によって溶融し固定具Cと建築土木用シートBとが接合される。
【0019】
制御部50は検知部40で固定具Cを検知したとの信号を受け、高周波出力部30から誘導加熱コイル21への高周波電流の供給が可能となるように制御を行う。これにより検知部40が固定具Cを検知しない、すなわち固定具Cの対応する位置に電磁誘導加熱装置Eが配置されない状態では誘導加熱コイル21へ高周波電流が供給されないため誤発振が防止される。その結果、誤発振による接合不良を防止することができる。
【0020】
検知部40は固定具Cを検知するもので、本実施形態においては、センサーコイル23とセンサー制御部41とで構成される近接センサーが用いられている。センサーコイル23が発振回路を通じて磁束を発生し、これにより固定具Cに渦電流が発生する。この渦電流も磁界を生じその磁束がセンサーコイル23に鎖交する。そのためセンサーコイル23には渦電流による磁束が加算され、これらの磁束によってセンサーコイル23に電圧が発生する。コイルに流した電流に対してコイルに生じた電圧の比がコイルのインピーダンスであるから、センサーコイル23に固定具Cを接近させるとセンサーコイル23のインピーダンスが変化する。したがって、センサー制御部41はセンサーコイル23のインピーダンスの変化を測定することで固定具Cが近接したことを検知することが出来る。ここでインピーダンス変化は発振振幅や発振周波数の変化等を検出する方法がある。本実施形態においてはインダクタンス変化を検出している。
【0021】
また、検知部40を複数設けてもよく、複数の検知部40を用いることでより正確に固定具Cを検知することができるために好ましい。この場合、センサーコイル23、センサー制御部41を複数設けてよいし、複数のセンサーコイル23に対しそれ未満の個数のセンサー制御部41を設けてもよい。複数のセンサーコイル23に対し1つのセンサー制御部41を設ける場合でもそれぞれのセンサーコイル23の信号を個別に処理できるようにする。センサーコイル23が多ければ検知精度は向上するがセンサーコイル23同士の干渉や電磁誘導加熱装置Eが大きくなる場合があり、センサーコイル23は2〜10個が好ましく、5〜8個がより好ましい。
【0022】
ここでセンサーコイル23は誘導加熱コイル21が発振している際には、センサーコイル23への通電が停止されセンサーコイル23から磁束が生じない状態とすることが固定具Cの異常加熱を防止するとの点からは好ましい。一方、誘導加熱コイル21が発振している際にセンサーコイル23への通電を継続することで誘導加熱コイル21が発振している際に電磁誘導加熱装置Eが移動するのを検知することが出来る。
【0023】
さらに、固定具Cの検知を通知する通知部60を設けることで電磁誘導加熱装置Eを固定具Cと対応する位置に移動させることが容易となるため好ましい。本実施形態における通知部60は検知部40に接続されている。より具体的には表示ランプ12により表示する表示部61を有している。表示ランプ12は検知部40で固定具Cを検知すると点灯することで通知する。また表示ランプ12はセンサーコイル23の配置に対応して設けることでより電磁誘導加熱装置Eを固定具Cの位置に移動させることが容易となるため好ましい。例えば
図7のように表示部61を複数の表示ランプ12で構成し、表示ランプ12とセンサーコイル23との配置を対応させることで、点灯している表示ランプの方向へ電磁誘導加熱装置Eを移動させ表示ランプ12が全て点灯する位置に移動させることができる。これにより正確に電磁誘導加熱装置Eを固定具Cと対応する位置に置くことができる。ここで通知部60は制御部50に接続され、制御部50で制御されてもよい。
【0024】
また通知部60は光の点灯等、目視により確認できる表示部61だけでなく、アラーム等による鳴動や振動による通知を行う構成であってもよく、これらを併用してもよい。
【0025】
ここで、制御部50は検知部40が固定具Cを検知することで高周波出力部30から誘導加熱コイルへの通電を可能とするが、本実施形態のように全てのセンサーコイル23が固定具Cを検知した際に通電可能とすることが好ましい。全てのセンサーコイル23が固定具Cを検知しない状態では制御部50が高周波電流を誘導加熱コイルに供給しないためにこの状態で加熱を行うことができない。そのため電磁誘導加熱装置Eが固定具Cと対応する位置に正確に配置されない状態で加熱されることを防止することができる。すなわち、制御部50は全てのセンサーコイル23が固定具Cを検知すると、発振を指示する信号により誘導加熱コイル21への通電を可能とする。一方、一のセンサーコイル23が固定具Cを検知しない場合、発振の指示があっても誘導加熱コイル21へ通電しない。
【0026】
本実施形態の電磁誘導加熱装置Eの外形について
図2を用いて説明する。本体10の底面にはヘッド部17が設けられ、本体10とヘッド部17の内側に誘導加熱コイル21、制御部50、検知部40、高周波出力部30、電源部70が設けられている。ヘッド部17は、建築土木用シートBに押しつけられる部分である。本体10の上面には表示部61と発振スイッチ11が設けられている。
ここで、表示部61は
図7に示すように複数の表示ランプ12が設けられ、センサーコイル23の配置と対応している。センサーコイル23が固定具Cを検知しない状態では表示ランプ12は点灯しないが電磁誘導加熱装置Eの移動に応じ一部のセンサーコイル23が固定具Cを検知すると対応する一部の表示ランプ12が点灯し、全てのセンサーコイル23が固定具Cを検知すると全ての表示ランプ12が点灯する。
【0027】
次に
図3を用いて誘導加熱コイル21とセンサーコイル23の配置について説明する。
図3は本実施形態におけるヘッド部17の断面図であり、ヘッド部17には誘導加熱コイル21とセンサーコイル23とが収められている。本実施形態において、誘導加熱コイル21の下側、すなわち電磁誘導加熱装置Eを建築土木用シートBの表面に置いたときに建築土木用シートBに近い側にセンサーコイル23が配置されている。ここで、センサーコイル23は誘導加熱コイル21の上側に設けられてもよいが、誘導加熱コイル21の下側にセンサーコイル23を設けることでセンサーコイル23がより固定具Cに近くなるために固定具Cの検知精度が向上するために好ましい。
【0028】
建築土木用シートBは
図1のように1枚を敷設するだけでなく、複数枚の建築土木用シートBが重なった部位と固定具Cを接合する場合があり、この場合にはセンサーコイル23と固定具Cとの距離が長くなるためにセンサーコイル23の検出感度が低下する傾向にある。また建築土木用シートBの厚みが厚い場合もありセンサーコイル23の検出精度を確保するためにセンサーコイル23は固定具Cにより近い位置に配置することが好ましく、使用時において誘導加熱コイル21からみて下地側にセンサーコイル23を設けることが好ましい。
【0029】
また本実施形態において誘導加熱コイル21とセンサーコイル23はヘッド部17を構成するヘッドカバー22の内側に収められており、センサーコイル23の底面は保護材24で保護され、保護材24にパット25が固定されている。
ここでヘッドカバー22と保護材24は一体的に設けられていてもよく、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。
パット25は建築土木用シートBに接する部分であり、耐熱性および建築土木用シートBの傷付きを防止し建築土木用シートBの凹凸に追従しやすいように柔軟性のある材質で構成されている。材質としてはウレタン樹脂、シリコーン樹脂等を用いることができる。
【0030】
図4には誘導加熱コイル21、センサーコイル23、固定具Cの位置関係を示した平面図であり、固定具Cと誘導加熱コイル21の中心が合致している状態を示している。センサーコイル23の少なくとも一部が誘導加熱コイル21の内側にあることが好ましい。これにより誘導加熱コイル21を固定具Cと対応する位置に誘導しやすくなる。
本実施形態では、固定具Cの外径より誘導加熱コイル21の外径が大きく、センサーコイル23が固定具Cの外周を跨ぐ位置に配置されている。さらに、センサーコイル23は誘導加熱コイル21の内側に配置されている。
【0031】
ここで、センサーコイル23は固定具Cの外周より外側に配置することも可能である。この場合、固定具Cが誘導加熱コイル21の中心に合致した際に固定具Cはセンサーコイル23から外れた位置となる。そのため、固定具Cは検知部40で検知されない状態となる。一方、電磁誘導加熱装置Eが固定具Cの近傍に配置されない状態においても検知部40は固定具Cを検知しない。したがって、センサー制御部41、制御部50において、センサーコイル23が固定具を検知していない状態において固定具Cが誘導加熱コイル21の中心に合致したと判断するように制御する必要がある。例えば、電磁誘導加熱装置Eが固定具Cの近くにない初期状態において全てのセンサーコイル23が固定具Cを検知しないことを記憶し、電磁誘導加熱装置Eを移動させ固定具Cの一部がセンサーコイル23の検知範囲に入り固定具Cを検知したことを記憶する。その後、全てのセンサーコイル23が固定具Cを検知しなくなったときに固定具Cと対応する位置に電磁誘導加熱装置Eが配置されたと判断することができる。
【0032】
一方、電磁誘導加熱装置Eが固定具Cと対応する位置に配置されたことを容易に判断できるとい点から、
図4のようにセンサーコイル23の少なくとも一部が固定具Cの外周に接する位置より内側すなわち誘導加熱コイル21の中心側に配置することが好ましい。これにより、センサーコイル23により固定具Cが検知されることで固定具Cが誘導加熱コイル21の中心にほぼ合致した判断することが可能となる。
【0033】
複数のセンサーコイル23を固定具Cの外周と接する位置より内側に配置することにより、複数のセンサーコイル23が固定具Cを検知すると固定具Cが誘導加熱コイル21の中心に合致と判断されるため、センサー制御部41、制御部50での判断が簡略化されそれに伴う誤動作を防止することができる。
さらに、センサーコイル23は、誘導加熱コイル21と固定具Cとの中心が合致した場合に固定具Cの外周を跨ぐように配置することで、固定具Cの外周を検知しやすくなりより好ましい。
図4においてはセンサーコイル23の中心が固定具Cの外周に沿って配置されている。
【0034】
ここで、電磁誘導加熱装置Eは固定具Cと完全に一致した位置に配置されることは要せず、固定具Cと対応する位置に配置されていればよい。この場合、誘導加熱コイル21が固定具Cと対応する位置に配置されていることとなる。対応する位置とは誘導加熱コイル21と固定具Cの中心とが合致している場合だけでなく、正常な加熱が行われる範囲内でずれて誘導加熱コイル21が配置されてもよい。したがって、誘導加熱コイル21と固定具Cとは正常な加熱が行われる範囲でズレが許容されこれをクリアランスとして設定することができる。
このクリアランスを設定することで固定具Cと誘導加熱コイル21の中心が完全に合致しない状態でも発振可能となるため、作業の効率化が図られるとともに、固定具Cは正常に加熱され、建築土木用シートBと固定具Cとは充分に固定される。
【0035】
さらに
図8は固定具C11の中心81から電磁誘導加熱装置Eがずれて配置され、誘導加熱コイル21の中心が中心82まで下方にずれた状態の配置を示している。固定具C11の中心81と誘導加熱コイル21の中心82との距離がクリアランス83であり、誘導加熱コイル21の外周が固定具C11の外周近傍に配置されるようにクリアランス83を設定することが好ましい。これにより電磁誘導加熱装置がクリアランス83だけずれて配置されても固定具C11は誘導加熱コイル21の外周内に収まることとなり、正常な加熱が行われる。なお、破線は誘導加熱コイル21と固定具Cの中心が合致したときの固定具C10における外周を示している。
【0036】
また、
図9に誘導加熱コイル21の中心がクリアランス分だけ下方にずれたときの誘導加熱コイル21、センサーコイル23、固定具C12の位置関係を示している。このとき検知部40が固定具Cを検知できるようにセンサーコイル23がずれた固定具Cの外周に接触していることが好ましい。
図9においては下部のセンサーコイル23a、23bが固定具C12の外周に接触している。これにより電磁誘導加熱装置がクリアランスだけずれて配置されてもすべてのセンサーコイル23が固定具C12の近傍に配置され固定具C12を検知することができる。なお、破線は誘導加熱コイル21と固定具Cの中心が合致したときの固定具C10における外周を示している。
【0037】
センサーコイル23の配置は固定具Cの形状に合わせて均等に配置するのが好ましく、固定具Cが円形であればセンサーコイル23の中心を結ぶ直線が正三角形、正方形、正五角形、正六角形等、正多角形状に配置されるのが好ましい。
【0038】
誘導加熱コイル21は固定具Cと同じ大きさでもよいが大きいことが好ましい。誘導加熱コイル21を固定具Cに対して大きくすればより多くのクリアランスを設定することができる。しかし、固定具Cに対し誘導加熱コイル21を大きくし過ぎると固定具Cの加熱状態に異常を生じ充分な固定がされない場合がある。したがって、誘導加熱コイル21の外径は固定具Cの直径に対し、1〜3倍程度が好ましく1〜2倍程度がより好ましい。
【0039】
本実施形態の電磁誘導加熱装置Eの使用法について説明する。
図1に示すように下地Aの上に固定具CをビスDで固定し、その上に建築土木用シートBが敷設する。この場合、
図6に示すように固定具Cは建築土木用シートBにより覆われているために建築シートBの上から視認することはできない。
そこで建築土木用シートBの膨らみを目視や触感で確認し、固定具Cのおよその位置に電磁誘導加熱装置Eを置き、検知部40が固定具Cを検知するように電磁誘導加熱装置Eを移動させる。そして、固定具Cを検知した後に誘導加熱コイル21に高周波電流を供給することで固定具Cを加熱する。
このように固定具Cの位置を検知部40で検知することで電磁誘導加熱装置Eを建築土木用シートBの上から正確に固定具Cと対応する位置に配置することができる。そのため、電磁誘導加熱装置Eの発振により固定具Cを適切に加熱することができ、固定具Cと建築土木用シートBを充分に接合することができる。
【0040】
ここで固定具Cは磁場によって渦電流が発生し加熱される材質であればよく、金属製の固定具が用いられる。金属製の固定具を構成する材質としては、鉄、ステンレス等が用いられ、亜鉛・アルミニウム・マグネシウムメッキまたは亜鉛メッキ等の防錆処理が施されていてもよい。電磁誘導により加熱されやすい点から鉄やステンレスが好ましい。また磁性を有するステンレスを用いることでセンサーコイル23での検知感度が向上するとの点で好ましい。具体的には、磁性を有するマルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト・フェライト系(二相系)が一般的に磁性を有しないオーステナイト系よりも好ましい。厚みとしては、0.6〜1.5mm程度で、形状は正方形または長方形をした矩形状のプレート状や、円形または楕円形状のディスク状、長尺状など任意であり、大きさは1辺または外径が50〜100mm程度に形成することができる。
【0041】
また、固定具Cの上面に設けられる接着層は接着剤を塗布することや、熱可塑性樹脂層を積層する等して設けることができる。接着剤は加熱より溶融するホットメルト接着剤を用いることができ、ホットメルト接着剤としては、ポリエステル系、ポリアミド系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系等が挙げられる。熱可塑性樹脂層としてはポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル等を用いることができる。
【0042】
下地Aは特に限定されずコンクリート下地、金属下地、軽量発泡コンクリート(ALC)、鋼材、木質材等が用いられる。また、下地Aの上に無機質板、モルタル材層等の他の層を積層しても良い。
【0043】
建築土木用シートBには、建築土木用の防水シートが好適に用いられる。建築土木用シートBは熱可塑性樹脂層を有する建築土木用シートを使用することができ、塩化ビニル樹脂系、ポリオレフィン系、アクリル系等を使用することができる。
【0044】
また建築土木用シートBは単層でも良いが、寸法安定性、引張強度に優れるという点からガラスクロス、不織布等の基材層を積層した複層品が好ましい。基材層は最下層に設けても良いが熱可塑性樹脂層の中間に設けても良い。また熱可塑性樹脂層は一層であっても、複数の層であってもよく、それぞれの層の組成を異なるものとしてもよい。
厚さとしては1mm〜5mm程度のシートが用いられ、建築用防水シートとしては1.5mm程度のシートが好適に用いられる。
【0045】
本実施態様のビスDは、炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼等の鋼材などが使用できる。また、固定具C等の上面から頭部がはみ出ないように、ビスDのビス頭の形状は皿、平、なべがよく、ドライバーやレンチで掛ける座面の窪み形状は十字穴、六角穴、四角穴が好ましい。
【0046】
ここで、これらの実施態様において断熱材や緩衝用シート、アルミシート、防水性を向上させる増し張シート、下地Aに設けられた下穴に挿入されるアンカービスやエポキシ接着剤等の部材、材料を使用することができる。
アルミシートが下地Aと建築土木用シートBとの間に敷設される場合、検知部40はアルミシートを検知しないように構成される。
【0047】
次に、本発明の各実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0048】
図1を用いて電磁誘導加熱装置Eを用いた施工された建築土木用シートBの固定構造について説明する。
図1は建築物の屋上等に施工された防水シートの固定構造である。
下地Aであるコンクリート下地A1に円板形状のステンレス製固定具C1が配置され、ビスDでコンクリート下地A1に固定される。ここでステンレス製固定具C1はその上面、すなわち建築土木用シートBと接する面にポリ塩化ビニル樹脂層から成る接着層が設けられている。建築土木用シートBはポリ塩化ビニル樹脂製の防水シートB1が用いられ、コンクリート下地A1とステンレス製固定具C1の上に敷設されている。そして、防水シートB1のステンレス製固定具C1と対応する位置に電磁誘導加熱装置Eが置かれ、電磁誘導加熱装置Eを発振することでステンレス製固定具C1が加熱される。それによりステンレス製固定具C1の接着層が溶融し防水シートB1とステンレス製固定具C1とが接合される。ここで、ステンレス製固定具C1は外形が約85mm、ステンレス鋼板の厚みが4mmであり、防水シートB1は厚みが1.5mm、中間にガラス基材が積層されている。
【0049】
図2に電磁誘導加熱装置Eの模式図を示したが、六角形の本体10の上面には電源ランプ13、表示ランプ12である表示LED12aと発振スイッチ11、取っ手15が設けられ、側面には電源スイッチ14、冷却孔18と電源コード16が設けられ、底面にはヘッド部17が設けがれている。
表示LED12aは検知部40により固定具Cが検知された際に通知される通知部60であり、6つのLEDがセンサーコイル23の配置形状および本体形状に合わせて六角形に配置されている。表示ランプ12をセンサーコイル23の配置と本体10の形状に合わせることで表示ランプ12の点灯・消灯パターンから電磁誘導加熱装置Eのずれの状態を確認でき、電磁誘導加熱装置Eを移動させる方向がわかりやすくなる。
【0050】
図3はヘッド部17の断面図であり、フェノール樹脂製のカバー部22の内側に誘導加熱コイル21が収められ、カバー部22の底部にはセンサーコイル23が配置され底面を除きフェノール樹脂に埋設されている。そして、センサーコイル23の底面にはフェノール樹脂製の保護材24で覆われている。センサーコイル23は周囲をフェノール樹脂で保護されている。保護材24の底面側にはウレタン樹脂製のパット25が設けられている。
【0051】
図5にはブロック図を示したが、電磁誘導加熱装置Eは誘導加熱コイル21と高周波出力部30に接続された制御部50を有し、制御部50に接続された検知部40はセンサーコイル23とセンサー制御部41とを備えている。検知部40のセンサー制御部41は通知部60である表示部61に接続されている。表示部61は
図2、
図7に示すように6つの表示LED12aで構成されている。高周波出力部70、制御部50、検知部40は必要な電流を供給できるように電源部70に接続されている。
【0052】
図5を用いて電磁誘導加熱装置Eの動作について説明する。電磁誘導加熱装置Eを移動させ、センサーコイル23のインダクタンスの変化をセンサー制御部41で測定しステンレス製固定具C1が近接したことを検知する。6つのセンサーコイル23全てでステンレス製固定具C1の近接を検知することでステンレス製固定具C1を検知したとの信号を制御部50に送信する。制御部50は高周波出力部30が高周波電流を誘導加熱コイル21に供給可能な状態にする。さらに、センサー制御部41はステンレス製固定具C1が近接したことを検知すると通知部60である表示LED12を点灯させる。ここで、表示LED12aはセンサーコイル23の配置と対応しており、検知された位置の表示LED12aが点灯し6つのセンサーコイル23でステンレス製固定具C1の近接を検知すると6つの表示LED12aが点灯し、さらに発振スイッチ11に組み込まれた発振LEDが点灯する。さらに図示しないがアラームが鳴動し、発振スイッチ11が押されることで制御部50の信号を受けた高周波出力部30から誘導加熱コイル21へ通電される。誘導加熱コイル21は所定時間発振後、通電が停止される。
【0053】
検知部40はインダクタンスの変化によりステンレス製固定具C1の近接を感知している。電磁誘導加熱装置Eがステンレス製固定具C1が近くにない状態、すなわち初期状態でのセンサーコイル23のインダクタンスを初期インダクタンスとしてセンサー制御部41が記憶する。電磁誘導加熱装置Eがステンレス製固定具C1に近づくとセンサーコイル23のインダクタンスが変化し、その変化したインダクタンスと初期インダクタンスとの差を差分インダクタンスをとし、差分インダクタンスと予め設定した基準値と比較することでステンレス製固定具C1の近接を検知している。
【0054】
次に電磁誘導加熱装置Eを使用した施工方法について説明する。コンクリート下地A1にステンレス製固定具C1をビスDで固定し、その上からポリ塩化ビニル樹脂製の防水シートB1を敷設する。そして、電磁誘導加熱装置Eを防水シートB1上のステンレス製固定具C1のない位置に置き、電源スイッチ14を入れる。目視や膨らみを確認してステンレス製固定具C1に対応する付近に電磁誘導加熱装置Eを置く。そして表示LED12aの点灯を確認し、表示LED12aの点灯している方向に電磁誘導加熱装置Eを移動させながら、6つの表示LED12aが点灯する位置に電磁誘導加熱装置Eを置く。本実施例では6つの表示LED12aが点灯すると、発振スイッチ11に組み込まれた発振LEDが点灯(図示なし)し、さらにアラーム(図示なし)が鳴動する。発振LEDの点灯とアラーム鳴動を確認して、発振スイッチ11を押すと誘導加熱コイルに高周波電流が供給され、ステンレス製固定具C1が加熱される。所定時間経過後、制御部50により高周波電流の供給が停止し、電磁誘導加熱装置Eを次のステンレス製固定具C1の位置に移動させる。ここで、所定時間経過はアラーム鳴動が停止することで通知されるが、表示ランプ21による通知を行ってもよい。