特許第6501250号(P6501250)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6501250Liイオン伝導性微粒子及びその製造方法、アモルファスLiPON微粒子の製造方法、電解質層及び電極層の製造方法、リチウムイオン二次電池及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6501250
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】Liイオン伝導性微粒子及びその製造方法、アモルファスLiPON微粒子の製造方法、電解質層及び電極層の製造方法、リチウムイオン二次電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/30 20060101AFI20190408BHJP
   C23C 14/16 20060101ALI20190408BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20190408BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20190408BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20190408BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20190408BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20190408BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20190408BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20190408BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20190408BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20190408BHJP
   C23C 14/35 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   C01B25/30 Z
   C23C14/16 Z
   C23C14/14 D
   H01M10/0562
   H01M10/052
   H01M4/139
   H01M4/13
   H01M4/62 Z
   H01M10/058
   H01B1/06 A
   H01B13/00 Z
   C23C14/35
【請求項の数】26
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-39310(P2015-39310)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-160127(P2016-160127A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2018年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
(73)【特許権者】
【識別番号】593163449
【氏名又は名称】株式会社豊島製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】595152438
【氏名又は名称】アドバンストマテリアルテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110858
【弁理士】
【氏名又は名称】柳瀬 睦肇
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】阿部 孝之
(72)【発明者】
【氏名】岩根 弘晃
(72)【発明者】
【氏名】菊山 英志
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 雄三
(72)【発明者】
【氏名】本多 祐二
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−035818(JP,A)
【文献】 特開2010−111565(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/098784(WO,A1)
【文献】 Keerthi Senevirathne, et al.,A new crystalline LiPON electrolyte: Synthesis, properties and electronic structure,Solid state Ionics,NL,Elsevier,2013年,vol.233,pp.95-101
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/00−25/46
H01B 1/02−1/24
H01B 13/00−13/016
H01B 13/34
H01M 4/00−4/62
H01M 10/05−10/0587
H01M 10/36−10/39
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Li3PO4微粒子と、
少なくとも前記Li3PO4微粒子表面に形成されたアモルファスのLiPON層と、
を具備することを特徴とするLiイオン伝導性微粒子。
【請求項2】
アモルファスLiPON微粒子と、
前記アモルファスLiPON微粒子表面に形成された金属粒子または金属膜を有し、
前記アモルファスLiPON微粒子表面は前記金属粒子または前記金属膜から露出することを特徴とするLiイオン伝導性微粒子
【請求項3】
請求項1において、
前記Liイオン伝導性微粒子の径は、0.01 μm以上1000 μm以下であることを特徴とするLiイオン伝導性微粒子。
【請求項4】
請求項2において、
前記アモルファスLiPON微粒子の径は、0.01 μm以上1000 μm以下であることを特徴とするLiイオン伝導性微粒子
【請求項5】
請求項1または3において、
前記LiPON層上に形成された金属粒子または金属膜を有し、
前記LiPON層は前記金属粒子または前記金属膜から露出することを特徴とするLiイオン伝導性微粒子。
【請求項6】
請求項1または3に記載のLiイオン伝導性微粒子と、バインダーとを混合して固めたことを特徴とする電解質層。
【請求項7】
第1の電極層と、
第2の電極層と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された電解質層と、
を具備し、
前記電解質層は、請求項1または3に記載のLiイオン伝導性微粒子と、バインダーとを混合して固めたものであることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【請求項8】
請求項1または3に記載のLiイオン伝導性微粒子と、電子が伝導する導電助剤とを混合して固めることを特徴とする電極層の製造方法。
【請求項9】
請求項において、
前記電極層はバインダーを含むことを特徴とする電極層の製造方法。
【請求項10】
第1の電極層と第2の電極層を有するリチウムイオン二次電池の製造方法において、
前記第1の電極層を請求項8または9に記載の電極層の製造方法により製造し、
前記第2の電極層を請求項8または9に記載の電極層の製造方法により製造することを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項11】
Li3PO4微粒子を窒素プラズマで処理することにより、少なくとも前記Li3PO4微粒子表面にアモルファスのLIPON層を形成することを特徴とするLiイオン伝導性微粒子の製造方法。
【請求項12】
Li3PO4微粒子を窒素プラズマで処理して前記Li3PO4微粒子を内部まで窒化することを特徴とするアモルファスLiPON微粒子の製造方法。
【請求項13】
請求項11において、
前記Liイオン伝導性微粒子の径は、0.01 μm以上1000 μm以下であることを特徴とするLiイオン伝導性微粒子の製造方法
【請求項14】
請求項12において、
前記アモルファスLiPON微粒子の径は、0.01 μm以上1000 μm以下であることを特徴とするアモルファスLiPON微粒子の製造方法
【請求項15】
Li3PO4微粒子を容器内に収容する工程と、
前記容器の内面に対向する電極を配置する工程と、
前記容器内に窒素ガスまたは窒素を含むガスを導入する工程と、
前記容器内を真空排気する工程と、
前記電極と前記容器との間に電力を供給して前記容器内にプラズマを形成し、前記容器を振り子動作または回転させることにより、前記容器内の前記Li3PO4微粒子表面にアモルファスのLiPON層を形成する工程と、
を具備することを特徴とするLiイオン伝導性微粒子の製造方法。
【請求項16】
Li3PO4微粒子を容器内に収容する工程と、
前記容器の内面に対向する電極を配置する工程と、
前記容器内に窒素ガスまたは窒素を含むガスを導入する工程と、
前記容器内を真空排気する工程と、
前記電極と前記容器との間に電力を供給して前記容器内にプラズマを形成し、前記容器を振り子動作または回転させることにより、前記容器内の前記Li3PO4微粒子を内部まで窒化することでアモルファスLiPON微粒子を形成する工程と、
を具備することを特徴とするアモルファスLiPON微粒子の製造方法。
【請求項17】
容器と、
前記容器を振り子動作または回転させる駆動機構と、
前記容器内に配置された電極と、
前記電極と前記容器との間に電力を供給する電源と、
前記容器内に窒素ガスまたは窒素を含むガスを導入するガス導入機構と、
前記容器内を真空排気する排気機構と、
制御部と、
を具備するプラズマ装置を用いてLiイオン伝導性微粒子を製造する方法であり、
前記制御部は、Li3PO4微粒子が収容された前記容器内に前記ガス導入機構によって窒素ガスまたは窒素を含むガスを導入し、前記排気機構によって前記容器内を真空排気し、前記電源によって前記電極と前記容器との間に電力を供給して前記容器内にプラズマを形成し、前記駆動機構によって前記容器を振り子動作または回転させることにより、前記容器内の前記Li3PO4微粒子を攪拌あるいは回転させながら前記Li3PO4微粒子表面にアモルファスのLiPON層を形成するように制御することを特徴とするLiイオン伝導性微粒子の製造方法。
【請求項18】
容器と、
前記容器を振り子動作または回転させる駆動機構と、
前記容器内に配置された電極と、
前記電極と前記容器との間に電力を供給する電源と、
前記容器内に窒素ガスまたは窒素を含むガスを導入するガス導入機構と、
前記容器内を真空排気する排気機構と、
制御部と、
を具備するプラズマ装置を用いてアモルファスLiPON微粒子を製造する方法であり、
前記制御部は、Li3PO4微粒子が収容された前記容器内に前記ガス導入機構によって窒素ガスまたは窒素を含むガスを導入し、前記排気機構によって前記容器内を真空排気し、前記電源によって前記電極と前記容器との間に電力を供給して前記容器内にプラズマを形成し、前記駆動機構によって前記容器を振り子動作または回転させることにより、前記容器内の前記Li3PO4微粒子を攪拌あるいは回転させながら前記Li3PO4微粒子を内部まで窒化するように制御することを特徴とするアモルファスLiPON微粒子の製造方法。
【請求項19】
請求項17において、
前記電源は、周波数が50 kHz以上500 kHz以下の高周波電源であり、
前記プラズマを形成する際の直流電圧成分が-500 V以下であることを特徴とするLiイオン伝導性微粒子の製造方法。
【請求項20】
請求項18において、
前記電源は、周波数が50 kHz以上500 kHz以下の高周波電源であり、
前記プラズマを形成する際の直流電圧成分が-500 V以下であることを特徴とするアモルファスLiPON微粒子の製造方法。
【請求項21】
請求項17または19において、
前記Li3PO4微粒子表面にアモルファスのLiPON層を形成した後に、前記LiPON層上に金属粒子または金属膜を形成し、
前記LiPON層は前記金属粒子または前記金属膜から露出することを特徴とするLiイオン伝導性微粒子の製造方法。
【請求項22】
請求項18または20において、
前記Li3PO4微粒子を内部まで窒化することで前記アモルファスLiPON微粒子を形成した後に、前記アモルファスLiPON微粒子上に金属粒子または金属膜を形成し、
前記アモルファスLiPON微粒子の表面は前記金属粒子または前記金属膜から露出することを特徴とするアモルファスLiPON微粒子の製造方法。
【請求項23】
請求項151719及び21のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたLiイオン伝導性微粒子と、電子が伝導する導電助剤とを混合して固めることを特徴とする電極層の製造方法。
【請求項24】
請求項161820及び22のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたアモルファスLiPON微粒子と、電子が伝導する導電助剤とを混合して固めることを特徴とする電極層の製造方法。
【請求項25】
請求項23または24において、
前記電極層はバインダーを含むことを特徴とする電極層の製造方法。
【請求項26】
第1の電極層と第2の電極層を有するリチウムイオン二次電池の製造方法において、
前記第1の電極層を請求項23乃至25のいずれか一項に記載の電極層の製造方法により製造し、
前記第2の電極層を請求項23乃至25のいずれか一項に記載の電極層の製造方法により製造することを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Liイオン伝導性微粒子及びその製造方法、アモルファスLiPON微粒子及びその製造方法、電解質層及び電極層の製造方法、リチウムイオン二次電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化やエネルギー問題に端を発し、二酸化炭素を排出しない電気自動車の普及が期待されている。この技術において、電気を貯める「二次電池」は不可欠であり、高容量で軽量な「リチウムイオン二次電池」が有力な候補とされている。しかし、有機電解液を使用している現状のリチウムイオン二次電池は液漏れや発火、電解液の分解による爆発の危険性(内圧上昇、暴走反応)を有する。また、このタイプのリチウムイオン二次電池は、有機電解液の分解を防ぐため、充電電圧は4.2 V付近で制限されており、その結果、電気自動車における充電1回あたりの航続距離はガソリン車に比べ、短い。
【0003】
上記の背景から、近年、発火や爆発の危険性がなく、高容量化が可能な固体電解質を用いた「全固体リチウムイオン二次電池」が注目されている。このうち、電解質薄膜と電極材薄膜を積層させた薄膜型全固体リチウムイオン二次電池は研究開発が進んでおり、現在、実用化レベルにある。しかし、薄膜型の場合、電極材の使用量が少ないため低容量であるだけでなく、振動による膜の剥離の問題も抱える。従って、このタイプの全固体リチウムイオン二次電池は、自立センサーやメモリー、及びRFIDタグ用のバックアップ電源のような微細デバイスへの適用に有用であるものの、電気自動車への利用は難しい。
【0004】
一方、粒子状の電極、及び電解質材料を用いたバルク型全固体リチウムイオン二次電池は高容量化が可能で、且つ、振動にも強い。それ故、電気自動車への適用を目指した研究が行われており、最近では、硫化物系電解質微粒子を用いたバルク型システムが比較的高い電池特性を示すことが報告されている(例えば非特許文献1参照)。しかし、硫化物系システムでは水分との反応による有害ガス(硫化水素)発生が懸念され、安全性の観点から問題が指摘されている。
【0005】
そこで、有害ガス発生がなく、安全性の高い酸化物系電解質微粒子を用いたバルク型全固体リチウムイオン二次電池の実用化が期待されている。
【0006】
なお、微粒子ではなく酸化物系電解質薄膜を用いたバルク型全固体リチウムイオン二次電池として、リン酸オキシ窒化リチウム(LiPON)の薄膜を用いたリチウムイオン二次電池がある。このLiPON薄膜はN2流通下におけるLi3PO4の反応性スパッタリングで調製できることが非特許文献2、3に開示されている。しかし、高イオン伝導性のLiPON微粒子を調製する方法は見出されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】K. Takada, Progress and prospective of solid-state lithium batteries, Acta Mater. 61 (2013) 759-770.
【非特許文献2】B. Fleutot, B. Pecquenard, F. Le, Cras, B. Delis, H. Martinez, L. Dupont, D. Guy-Bouyssou, Characterization of all-solid-state Li/LiPONB/TiOS microbatteries produced at the pilot scale, J. Power Sources 196 (2011) 10289-10296.
【非特許文献3】N. Suzuki, T. Inaba, T. Shiga, Electrochemical properties of LiPON films made from a mixed powder target of Li3PO4 and Li2O, Thin Solid Films 520 (2012) 1821-1825.
【非特許文献4】K. Senevirathne, C.S. Day, M.D. Gross, A. Lachgar, N.A.W. Holzwarth, A new crystalline LiPON electrolyte: Synthesis, properties, and electronic structure, Solid State Ionics 233 (2013) 95-101.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一態様は、少なくとも表面にLiPON層を有するLiイオン伝導性微粒子またはその製造方法を提供することにある。
また、本発明の一態様は、アモルファスLiPON微粒子またはその製造方法を提供することにある。
また、本発明の一態様は、Liイオン伝導性を有する固体状の電解質層または電極層の製造方法を提供することにある。
また、本発明の一態様は、固体状の電解質層を有するリチウムイオン二次電池またはその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に、本発明の種々の態様について説明する。
[1]Li3PO4微粒子と、
少なくとも前記Li3PO4微粒子表面に形成されたアモルファスのLiPON層と、
を具備することを特徴とするLiイオン伝導性微粒子。
[2]Li3PO4微粒子を内部まで窒化することで作製されることを特徴とするアモルファスLiPON微粒子。
【0010】
なお、アモルファスのLiPON層としたのは、結晶化したLiPON層ではLiイオン伝導性が悪くなるからである。
【0011】
[3]上記[1]において、
前記Liイオン伝導性微粒子の径は、0.01 μm以上1000 μm以下であることを特徴とするLiイオン伝導性微粒子。
[4]上記[2]において、
前記アモルファスLiPON微粒子の径は、0.01 μm以上1000 μm以下であることを特徴とするアモルファスLiPON微粒子。
【0012】
[5]上記[1]または[3]において、
前記LiPON層上に形成された金属粒子または金属膜を有し、
前記LiPON層は前記金属粒子または前記金属膜から露出することを特徴とするLiイオン伝導性微粒子。
[6]上記[2]または[4]において、
前記アモルファスLiPON微粒子表面に形成された金属粒子または金属膜を有し、
前記アモルファスLiPON微粒子表面は前記金属粒子または前記金属膜から露出することを特徴とするアモルファスLiPON微粒子。
【0013】
[7]上記[1]または[3]に記載のLiイオン伝導性微粒子は、Li3PO4微粒子を容器内に収容し、前記容器の内面に対向する電極を配置し、前記容器内に窒素ガスまたは窒素を含むガスを導入し、前記容器内を真空排気し、前記電極と前記容器との間に電力を供給して前記容器内にプラズマを形成し、前記容器を振り子動作または回転させることにより、前記容器内の前記Li3PO4微粒子を攪拌あるいは回転させながら、前記Li3PO4微粒子表面にアモルファスのLiPON層を形成することで製造されることを特徴とするLiイオン伝導性微粒子。
[8]上記[2]または[4]に記載のアモルファスLiPON微粒子は、Li3PO4微粒子を容器内に収容し、前記容器の内面に対向する電極を配置し、前記容器内に窒素ガスまたは窒素を含むガスを導入し、前記容器内を真空排気し、前記電極と前記容器との間に電力を供給して前記容器内にプラズマを形成し、前記容器を振り子動作または回転させることにより、前記容器内の前記Li3PO4微粒子を攪拌あるいは回転させながら、前記Li3PO4微粒子を内部まで窒化することで製造されることを特徴とするアモルファスLiPON微粒子。
【0014】
[9]上記[1]または[3]に記載のLiイオン伝導性微粒子は、
容器と、
前記容器を振り子動作または回転させる駆動機構と、
前記容器内に配置された電極と、
前記電極と前記容器との間に電力を供給する電源と、
前記容器内に窒素ガスまたは窒素を含むガスを導入するガス導入機構と、
前記容器内を真空排気する排気機構と、
制御部と、
を具備するプラズマ装置を用いて製造されるものであって、
前記制御部は、Li3PO4微粒子が収容された前記容器内に前記ガス導入機構によって窒素ガスまたは窒素を含むガスを導入し、前記排気機構によって前記容器内を真空排気し、前記電源によって前記電極と前記容器との間に電力を供給して前記容器内にプラズマを形成し、前記駆動機構によって前記容器を振り子動作または回転させることにより、前記容器内の前記Li3PO4微粒子を攪拌あるいは回転させながら、前記Li3PO4微粒子表面にアモルファスのLiPON層を形成するように制御することを特徴とするLiイオン伝導性微粒子。
[10]上記[2]または[4]に記載のアモルファスLiPON微粒子は、
容器と、
前記容器を振り子動作または回転させる駆動機構と、
前記容器内に配置された電極と、
前記電極と前記容器との間に電力を供給する電源と、
前記容器内に窒素ガスまたは窒素を含むガスを導入するガス導入機構と、
前記容器内を真空排気する排気機構と、
制御部と、
を具備するプラズマ装置を用いて製造されるものであって、
前記制御部は、Li3PO4微粒子が収容された前記容器内に前記ガス導入機構によって窒素ガスまたは窒素を含むガスを導入し、前記排気機構によって前記容器内を真空排気し、前記電源によって前記電極と前記容器との間に電力を供給して前記容器内にプラズマを形成し、前記駆動機構によって前記容器を振り子動作または回転させることにより、前記容器内の前記Li3PO4微粒子を攪拌あるいは回転させながら、前記Li3PO4微粒子を内部まで窒化するように制御することを特徴とするアモルファスLiPON微粒子。
【0015】
[11]上記[9]において、
前記電源は、周波数が50 kHz以上500 kHz以下の高周波電源であり、
前記プラズマを形成する際の直流電圧成分が-500 V以下であることを特徴とするLiイオン伝導性微粒子。
[12]上記[10]において、
前記電源は、周波数が50 kHz以上500 kHz以下の高周波電源であり、
前記プラズマを形成する際の直流電圧成分が-500 V以下であることを特徴とするアモルファスLiPON微粒子。
【0016】
[13]上記[1]、[3]、[7]、[9]及び[11]のいずれか一項に記載のLiイオン伝導性微粒子と、バインダーとを混合して固めたことを特徴とする電解質層。
[14]上記[2]、[4]、[8]、[10]及び[12]のいずれか一項に記載のアモルファスLiPON微粒子と、バインダーとを混合して固めたことを特徴とする電解質層。
[15]第1の電極層と、
第2の電極層と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された電解質層と、
を具備し、
前記電解質層は、上記[1]、[3]、[7]、[9]及び[11]のいずれか一項に記載のLiイオン伝導性微粒子と、バインダーとを混合して固めたものであることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
[16]第1の電極層と、
第2の電極層と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された電解質層と、
を具備し、
前記電解質層は、上記[2]、[4]、[8]、[10]及び[12]のいずれか一項に記載のアモルファスLiPON微粒子と、バインダーとを混合して固めたものであることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
[17]上記[1]、[3]、[7]、[9]及び[11]のいずれか一項に記載のLiイオン伝導性微粒子と、電子が伝導する導電助剤とを混合して固めることを特徴とする電極層の製造方法。
[18]上記[2]、[4]、[8]、[10]及び[12]のいずれか一項に記載のアモルファスLiPON微粒子と、電子が伝導する導電助剤とを混合して固めることを特徴とする電極層の製造方法。
[19]上記[17]または[18]において、
前記電極層はバインダーを含むことを特徴とする電極層の製造方法。
[20]第1の電極層と第2の電極層を有するリチウムイオン二次電池の製造方法において、
前記第1の電極層を請求項17乃至19のいずれか一項に記載の電極層の製造方法により製造し、
前記第2の電極層を請求項17乃至19のいずれか一項に記載の電極層の製造方法により製造することを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【0017】
[21]Li3PO4微粒子を窒素プラズマで処理することにより、少なくとも前記Li3PO4微粒子表面にアモルファスのLiPON層を形成することを特徴とするLiイオン伝導性微粒子の製造方法。
[22]Li3PO4微粒子を窒素プラズマで処理して前記Li3PO4微粒子を内部まで窒化することを特徴とするアモルファスLiPON微粒子。
[23]上記[21]において、
前記Liイオン伝導性微粒子の径は、0.01 μm以上1000 μm以下であることを特徴とするLiイオン伝導性微粒子。
[24]上記[22]において、
前記アモルファスLiPON微粒子の径は、0.01 μm以上1000 μm以下であることを特徴とするアモルファスLiPON微粒子。
【0018】
[25]Li3PO4微粒子を容器内に収容する工程と、
前記容器の内面に対向する電極を配置する工程と、
前記容器内に窒素ガスまたは窒素を含むガスを導入する工程と、
前記容器内を真空排気する工程と、
前記電極と前記容器との間に電力を供給して前記容器内にプラズマを形成し、前記容器を振り子動作または回転させることにより、前記容器内の前記Li3PO4微粒子表面にアモルファスのLiPON層を形成する工程と、
を具備することを特徴とするLiイオン伝導性微粒子の製造方法。
[26]Li3PO4微粒子を容器内に収容する工程と、
前記容器の内面に対向する電極を配置する工程と、
前記容器内に窒素ガスまたは窒素を含むガスを導入する工程と、
前記容器内を真空排気する工程と、
前記電極と前記容器との間に電力を供給して前記容器内にプラズマを形成し、前記容器を振り子動作または回転させることにより、前記容器内の前記Li3PO4微粒子を内部まで窒化することでアモルファスLiPON微粒子を形成する工程と、
を具備することを特徴とするアモルファスLiPON微粒子の製造方法。
【0019】
[27]容器と、
前記容器を振り子動作または回転させる駆動機構と、
前記容器内に配置された電極と、
前記電極と前記容器との間に電力を供給する電源と、
前記容器内に窒素ガスまたは窒素を含むガスを導入するガス導入機構と、
前記容器内を真空排気する排気機構と、
制御部と、
を具備するプラズマ装置を用いてLiイオン伝導性微粒子を製造する方法であり、
前記制御部は、Li3PO4微粒子が収容された前記容器内に前記ガス導入機構によって窒素ガスまたは窒素を含むガスを導入し、前記排気機構によって前記容器内を真空排気し、前記電源によって前記電極と前記容器との間に電力を供給して前記容器内にプラズマを形成し、前記駆動機構によって前記容器を振り子動作または回転させることにより、前記容器内の前記Li3PO4微粒子を攪拌あるいは回転させながら前記Li3PO4微粒子表面にアモルファスのLiPON層を形成するように制御することを特徴とするLiイオン伝導性微粒子の製造方法。
[28]容器と、
前記容器を振り子動作または回転させる駆動機構と、
前記容器内に配置された電極と、
前記電極と前記容器との間に電力を供給する電源と、
前記容器内に窒素ガスまたは窒素を含むガスを導入するガス導入機構と、
前記容器内を真空排気する排気機構と、
制御部と、
を具備するプラズマ装置を用いてアモルファスLiPON微粒子を製造する方法であり、
前記制御部は、Li3PO4微粒子が収容された前記容器内に前記ガス導入機構によって窒素ガスまたは窒素を含むガスを導入し、前記排気機構によって前記容器内を真空排気し、前記電源によって前記電極と前記容器との間に電力を供給して前記容器内にプラズマを形成し、前記駆動機構によって前記容器を振り子動作または回転させることにより、前記容器内の前記Li3PO4微粒子を攪拌あるいは回転させながら前記Li3PO4微粒子を内部まで窒化するように制御することを特徴とするアモルファスLiPON微粒子の製造方法。
【0020】
[29]上記[27]において、
前記電源は、周波数が50 kHz以上500 kHz以下の高周波電源であり、
前記プラズマを形成する際の直流電圧成分が-500 V以下であることを特徴とするLiイオン伝導性微粒子の製造方法。
[30]上記[28]において、
前記電源は、周波数が50 kHz以上500 kHz以下の高周波電源であり、
前記プラズマを形成する際の直流電圧成分が-500 V以下であることを特徴とするアモルファスLiPON微粒子の製造方法。
【0021】
[31]上記[27]または[29]において、
前記Li3PO4微粒子表面にアモルファスのLiPON層を形成した後に、前記LiPON層上に金属粒子または金属膜を形成し、
前記LiPON層は前記金属粒子または前記金属膜から露出することを特徴とするLiイオン伝導性微粒子の製造方法。
[32]上記[28]または[30]において、
前記Li3PO4微粒子を内部まで窒化することで前記アモルファスLiPON微粒子を形成した後に、前記アモルファスLiPON微粒子上に金属粒子または金属膜を形成し、
前記アモルファスLiPON微粒子の表面は前記金属粒子または前記金属膜から露出することを特徴とするアモルファスLiPON微粒子の製造方法。
【0022】
[33]上記[25]、[27]、[29]及び[31]のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたLiイオン伝導性微粒子と、電子が伝導する導電助剤とを混合して固めることを特徴とする電極層の製造方法。
[34]上記[26]、[28]、[30]及び[32]のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたアモルファスLiPON微粒子と、電子が伝導する導電助剤とを混合して固めることを特徴とする電極層の製造方法。
[35]上記[33]または[34]において、
前記電極層はバインダーを含むことを特徴とする電極層の製造方法。
【0023】
[36]第1の電極層と第2の電極層を有するリチウムイオン二次電池の製造方法において、
前記第1の電極層を請求項33乃至35のいずれか一項に記載の電極層の製造方法により製造し、
前記第2の電極層を請求項33乃至35のいずれか一項に記載の電極層の製造方法により製造することを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様によれば、少なくとも表面にLiPON層を有するLiイオン伝導性微粒子またはその製造方法を提供することにある。
また、本発明の一態様によれば、アモルファスLiPON微粒子またはその製造方法を提供することにある。
また、本発明の一態様によれば、Liイオン伝導性を有する固体状の電解質層または電極層の製造方法を提供することにある。
また、本発明の一態様によれば、固体状の電解質層を有するリチウムイオン二次電池またはその製造方法を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】(A)、(B)、(C)は、本発明の一態様に係るLiイオン伝導性微粒子の製造方法を説明するための断面図である。
図2】(A)は図1に示すLiイオン伝導性微粒子及びアモルファスLiPON微粒子の作製、及びLiイオン伝導性微粒子、アモルファスLiPON微粒子への電子伝導性を付与する際に用いるプラズマ表面改質法とスパッタリング法を併用できるプラズマ装置の概略を示す断面図、(B)は(A)に示す8B−8B線に沿った断面図である。
図3】(A)、(B)は本発明の一態様に係る電子伝導性を有するLiイオン伝導性微粒子及びアモルファスLiPON微粒子の製造方法を説明するための断面図である。
図4】本発明の一態様に係るリチウムイオン二次電池を説明するための断面図である。
図5】未処理のLi3PO4微粒子、及びLi3PO4微粒子を100 WでN2プラズマ処理した試料の外観写真である。
図6】(I)(A)未処理、及び(B)N2プラズマ処理試料(処理時間:90分)のXPSサーベイスペクトルを示し、 (II) N2プラズマ処理試料のN1sスペクトルを示す図である。
図7】(A)は未処理試料の断面TEM像と電子線回折像、(B)はN2プラズマ処理試料(100 W、90分処理)の断面TEM像と電子線回折像である。
図8】LiPONの膜厚の処理時間依存性を示す図である。
図9】(A)はプレス圧を変えて測定した未処理試料のコールコールプロット(測定周波数:5 Hz〜1 MHz)とそれらのフィッティングカーブを示す図、(B)はN2プラズマ処理試料(処理条件:100 W、60分)のコールコールプロット(測定周波数:5 Hz〜1 MHz)とそれらのフィッティングカーブを示す図である。
図10】未処理試料(●)、及びN2プラズマ処理試料(処理時間:60分)(○)のイオン導電率のプレス圧依存性を示す図である。
図11】60、90、120分間N2プラズマ処理した試料のコールコールプロット(測定周波数:5 Hz〜1 MHz)とフィッティングカーブを示す図である。
図12】プラズマ処理時間とイオン伝導度の関係を示す図である。
図13】N2プラズマ処理試料(処理時間:90分)にスパッタリング法でCuを修飾(Arガス圧:5 Pa、出力:50 W、スパッタリング時間:90分)した試料表面のTEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、本発明の実施形態及び実施例について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施形態の記載内容及び実施例に限定して解釈されるものではない。
【0027】
[実施の形態1]
図1(A)、(B)、(C)は、本発明の一態様に係るLiイオン伝導性微粒子及びアモルファスLiPON微粒子の製造方法を説明するための断面図である。
【0028】
図1(A)に示す結晶質のLi3PO4微粒子11を準備する。次に、Li3PO4微粒子11を窒素プラズマで処理することにより、Li3PO4微粒子11表面に窒素が導入される。このようにして図1(B)に示すように、Li3PO4微粒子11の表面にアモルファスのLiPON層12を形成する。また、処理条件によっては、Li3PO4微粒子11は内部まで窒化され、図1(C)のようなアモルファスLiPON微粒子14が作製できる。
【0029】
Liイオン伝導性微粒子13及びアモルファスLiPON微粒子14の外径は、0.01 μm以上1000 μm以下であるとよい。ここでいう外径はLiイオン伝導性微粒子13及びアモルファスLiPON微粒子14の最長の外径を意味する。また、Li3PO4微粒子11、Liイオン伝導性微粒子13、及びアモルファスLiPON微粒子14それぞれは、球形状に限定されるものではなく、いかなる形状であってもよい。
【0030】
本実施の形態によれば、高いLiイオン伝導性を有する微粒子13、14を作製することが可能となる。また、Liイオン伝導性を有する微粒子13、14は固体電解質として使用できるだけでなく、電極層に添加することで電極内に良好なLiイオン伝導パスを構築できる。
【0031】
なお、本実施の形態では、Li3PO4微粒子11の表面にアモルファスのLiPON層12を有していれば、内部にLi3PO4微粒子11が残存してもよいし、Li3PO4微粒子11のすべてがアモルファスのLiPON層になってもよい。
【0032】
[実施の形態2]
図2(A)は、図1に示すLiイオン伝導性微粒子を製造する際に用いるプラズマ表面改質法とスパッタリング法を併用できるプラズマ装置の概略を示す断面図であり、図2(B)は、図2(A)に示す8B−8B線に沿った断面図である。
【0033】
プラズマ装置は円筒形状の真空チャンバー3を有している。この真空チャンバー3の両端はチャンバー蓋20によって閉じられている。真空チャンバー3の内部には容器30が配置されている。この容器30は、図2(B)に示すようにその断面が六角形のバレル形状(六角型バレル形状)を有している。そして、容器30の内部には窒化する対象物であるLi3PO4微粒子1(Li3PO4微粒子の粉体)が収容されるようになっている。また、容器30は、電極としても機能し、プラズマ電源31または接地電位に接続されるようになっており、両者はスイッチ32により切り替え可能に構成されている。図2(B)で示す断面は、重力方向に対して略平行な断面である。なお、本実施の形態では、六角型バレル形状の容器30を用いているが、これに限定されるものではなく、六角形以外の多角形のバレル形状の容器を用いることも可能である。
【0034】
容器30には振り子動作または回転させる駆動機構(図示せず)が設けられている。この駆動機構により容器30を矢印のように振り子動作または回転させることで該容器30内のLi3PO4微粒子1を攪拌あるいは回転させながら窒素プラズマ処理を行うものである。前記駆動機構により容器30を振り子動作または回転させる際の回転軸は、略水平方向(重力方向に対して垂直方向)に平行な軸である。また、真空チャンバー3内の気密性は、容器30の回転時においても保持されている。
【0035】
また、プラズマ装置は、真空チャンバー3内にガスを導入するガス導入機構を備えている。このガス導入機構は筒状のガスシャワー電極24を有しており、このガスシャワー電極24は容器30内に配置されている。即ち、容器30の一方側には開口部が形成されており、この開口部からガスシャワー電極24が挿入されている。ガスシャワー電極24には、単数または複数のガスをシャワー状に吹き出すガス吹き出し口が複数形成されている。このガス吹き出し口は容器に収容されたLi3PO4微粒子1と対向するように配置されている。ガス吹き出し口は、重力方向に対して容器30の回転方向に1°〜90°程度の方向に配置されている。
【0036】
ガスシャワー電極24は、真空バルブ、マスフローコントローラ(MFC)、真空バルブ、フィルター、ガス導入源に接続されている(図示せず)。このガス導入源は、窒素ガス又は窒素を含むガスの導入源である。
【0037】
また、プラズマ装置はプラズマパワー供給機構を備えており、このプラズマパワー供給機構はガスシャワー電極24にスイッチ33を介して接続されたプラズマ電源25を有している。プラズマ電源25、31それぞれは、50 kHz以上500 kHz以下の高周波電力(RF出力)を供給する高周波電源であり、図示せぬインピーダンス整合器(マッチングボックス)を高周波電源とガスシャワー電極24との間に配置することが好ましい。つまり、この場合、ガスシャワー電極24はマッチングボックスに接続されており、マッチングボックスは同軸ケーブルを介して高周波電源(RF電源)に接続されている。
尚、ガスシャワー電極24及び容器30のいずれか一方にプラズマ電源が接続され、他方に接地電位が接続されていても良いし、ガスシャワー電極24及び容器30の両方にプラズマ電源が接続されていても良い。
【0038】
また、プラズマ装置は、真空チャンバー3内を真空排気する真空排気機構を備えている。例えば、ガスシャワー電極24には真空チャンバー3内を排気する排気口(図示せず)が設けられており、排気口は真空ポンプ(図示せず)に接続されている。
【0039】
次に、上記プラズマ装置を用いて、Li3PO4微粒子の表面にアモルファスのLiPON層を形成したLiイオン伝導性微粒子、あるいはアモルファスLiPON微粒子の製造方法について説明する。
【0040】
まず、結晶質のLi3PO4微粒子1を準備する。Li3PO4微粒子の粒径は0.01 μm以上1000 μm以下である。
【0041】
次いで、Li3PO4微粒子1を容器30内に収容する。この後、真空ポンプを作動させることにより真空チャンバー3内を所定の圧力(例えば6 Pa以下)まで排気する。これと共に、駆動機構により容器30を振り子動作または回転させることで、その内部に収容されたLi3PO4微粒子1が容器内面において重力方向とそれに対して回転方向に90°の間を転がりながら動く。
【0042】
次いで、ガス導入源においてN2ガスをマスフローコントローラに導入させ、このマスフローコントローラによって流量制御し、例えば10〜20 sccmの流量のN2ガスをガスシャワー電極24の内側に導入する。そして、ガスシャワー電極のガス吹き出し口からN2ガスを吹き出させる。これにより、容器30内を転がりながら動いているLi3PO4微粒子1にガスが吹き付けられ、制御されたガス流量と排気能力のバランスによって、所定の圧力に保たれる。
【0043】
この後、ガスシャワー電極24に、例えばマッチングボックスを介してプラズマ電源25の一例である高周波電源(RF電源)から例えば380 kHzのRF出力が供給される。この際、容器30は接地電位に接続されている。これにより、ガスシャワー電極24と容器30との間にプラズマを着火する。このとき、マッチングボックスは、容器30とガスシャワー電極24のインピーダンスに、インダクタンスL、キャパシタンスCによって合わせている。これによって、容器30内にプラズマが発生し、プラズマを形成する際の直流電圧成分を-500 V以下(好ましくは-900〜-1300 V)とし、Li3PO4微粒子1の表面を均一性よく且つ強力な窒素プラズマ処理を行う。
【0044】
このようにして少なくともLi3PO4微粒子1の表面にアモルファスのLiPON層を形成したLiイオン伝導性微粒子(LiPON層のN含有量は2.0重量%以上(好ましくは3.5重量%以上))、あるいはLi3PO4微粒子1の内部まで窒化したアモルファスLiPON微粒子を作製することができる。
【0045】
LiPON層のN含有量を2.0重量%以上(好ましくは3.5重量%以上)にできる理由やLi3PO4微粒子1の内部まで窒化できる理由を以下に説明する。
プラズマを形成する際の直流電圧成分を-500 V以下として高い直流バイアスをかけることで、Li3PO4微粒子1の表面を強力に窒素プラズマ処理することができるからである。従って、多量の窒素をLi3PO4微粒子1に導入することができる。
【0046】
また、容器30を振り子動作または回転させることによってLi3PO4微粒子1を転がしているため、Li3PO4微粒子1の表面全体に均一性よく窒化プラズマ処理を行うことができる。従って、多量の窒素をLi3PO4微粒子1の表面から内部まで均質に導入することができる。
【0047】
また、本実施の形態では、ガスシャワー電極のガス吹き出し口からN2ガスを吹き出させているが、これに限定されるものではなくガスシャワー電極のガス吹き出し口からN2を含むガスを吹き出させてもよい。
【0048】
[実施の形態3]
図3は、本発明の一態様に係る電子伝導性を有するLiイオン伝導性微粒子及びアモルファスLiPON微粒子の製造方法を説明するための断面図である。
【0049】
Li3PO4微粒子11の表面でのアモルファスLiPON層12の形成やアモルファスLiPON微粒子14を製造する工程までは実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0050】
Li3PO4微粒子11の表面でアモルファスのLiPON層12を形成、あるいはアモルファスLiPON微粒子14を作製した後に、それらの表面上に金属粒子15(または金属膜17)を部分的に形成する。これにより、表面LiPON層12及びアモルファスLiPON微粒子14表面は金属粒子15(または金属膜17)から露出する。
【0051】
金属粒子15または金属膜17は、電子が伝導する導電助剤として機能するものであれば種々の材料を用いることができ、例えばPt、Au、Al、Cu、Ti、Ag、Fe、Co、Mn、W等からなる粒子または膜であるとよい。また、表面LiPON層12を金属粒子15(または金属膜17)から露出させる理由は、金属粒子等で表面LiPON層12やアモルファスLiPON微粒子14表面を全て覆ってしまうとLiイオンが伝導できなくなるからである。
【0052】
本実施の形態においては実施の形態1の効果に加え、電子伝導性を付与できる。
【0053】
次に、表面LiPON層12及びアモルファスLiPON微粒子14上に金属粒子15(または金属膜17)を部分的に形成する方法について説明する。
【0054】
図2に示すプラズマ装置において、ガスシャワー電極24を、金属粒子15、あるいは金属膜17と同じ金属からなるスパッタリングターゲットに変更し、Arガスを導入するガス導入機構を追加する。この装置の容器30内にLi3PO4微粒子11の表面にアモルファスのLiPON層12を形成したLiイオン伝導性微粒子13やアモルファスLiPON微粒子14を収容する。次いで、容器30内に前記ガス導入機構によってArガスを導入し、真空排気機構によって容器30内を真空排気し、容器30を接地し、プラズマ電源25によってスパッタリングターゲットに電力を供給して容器30内にプラズマを形成し、駆動機構によって容器30を振り子動作または回転させる。これにより、容器30内のLiイオン伝導性微粒子13、あるいはアモルファスLiPON微粒子14を攪拌あるいは回転させながら微粒子表面の一部に金属粒子15、または金属膜17を形成する。
【0055】
[実施の形態4]
図4は、本発明の一態様に係るリチウムイオン二次電池を説明するための断面図である。
【0056】
リチウムイオン二次電池は、第1の電極層22、第2の電極層23及び電解質層21を有しており、電解質層21は第1の電極層22と第2の電極層23との間に配置されている。第1の電極層22はリチウム金属酸化物(例えばLiCoO2)を有する電極であり、第2の電極層23は炭素材料(例えばアモルファスカーボン)を有する電極である。
【0057】
電解質層21は、実施の形態1及び形態2のいずれかに記載のLiイオン伝導性微粒子またはアモルファスLiPON微粒子と、バインダー(例えばポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンラテックス+カルボキシメチルセルロースなど)とを混合して固めたものである。
【0058】
電極層22、23は、実施の形態1及び形態2のいずれかに記載のLiイオン伝導性微粒子またはアモルファスLiPON微粒子、あるいは実施の形態3のいずれかに記載した金属粒子(または金属膜)を部分的に修飾したLiイオン伝導性微粒子またはアモルファスLiPON微粒子と、電子が伝導する導電助剤(例えばカーボン助剤)とを混合して固めたものである(バインダーを含んでもよい)。
【0059】
次に、リチウムイオン二次電池の製造方法について説明する。
実施の形態1及び形態2のLiイオン伝導性微粒子やアモルファスLiPON微粒子と、バインダーとを混合する。これにより、ペースト状の電解質材料を作製できる。
【0060】
次いで、このペースト状の電解質材料を第1の電極22と第2の電極23との間に配置し、加熱して固めることで、全固体のリチウムイオン二次電池を作製することができる。
【0061】
本実施の形態によれば、第1の電極層22と第2の電極層23との間に固体状の電解質層21を形成し、電解質層21がLiイオン伝導性微粒子やアモルファスLiPON微粒子を有するため、良好なLiイオン伝導性パスを構築することが可能となる。
また、Liイオン伝導性微粒子表面のLiPON層やLiPON微粒子はアモルファスであるため、結晶化されたLiPON層に比べて柔らかい。そのため、Liイオン伝導性微粒子同士の良好な粒子間接触を実現できる。その結果、Liイオン伝導性を高めることができる。
【0062】
また実施形態1、2によるLiイオン伝導性微粒子及びアモルファスLiPON微粒子を電極層に添加すれば、電極層内に良好なイオン伝導パスを構築することが可能となり、イオン伝導性を高めることができる。
【0063】
また、実施の形態3による電子伝導性を付与したLiイオン伝導性微粒子やアモルファスLiPON微粒子を用いた場合、図3に示すようにLiイオン伝導性微粒子13、あるいはアモルファスLiPON微粒子14の表面に金属粒子15(または金属膜17)が形成されている。この金属粒子15や金属膜17は電子が伝導する導電助剤として機能する。そのため、これらの微粒子材料16、18、19、20aのいずれかを電極層22、23に添加すれば、イオン伝導性に加え、電子伝導性も付与できるため、カーボン助剤等の導電助剤の含有量を少なくできる。従って、LiCoO2やアモルファスカーボンのような電極材の含有量を相対的に多くすることが可能となり、その結果、より充放電容量の高いリチウムイオン二次電池を実現することが可能となる。
【実施例】
【0064】
<試料の準備>
試料の調製には豊島製作所製のLi3PO4微粒子材料を使用し、物性評価用には平均粒子径29 μm、イオン伝導性評価用には77 nmのものを用いた。これらのLi3PO4微粒子(0.5 g)内径が200 mmで幅が29 mm の6角バレル(図2に示す容器に相当)に導入し、バレルを多角バレルプラズマ表面改質装置内の真空チャンバーに取り付けた。ロータリーポンプ、油拡散ポンプにより1 × 10-3 Paまでゆっくり真空排気した後、N2ガスを導入した。続いて、N2プラズマ処理を高周波出力:100 W、N2ガス圧:10 Pa、加熱なしの条件で5〜180分間行った。この時、バレルは機械的振動を与えながら、モーターにより速度:5 rpm、角度:±75°で振り子動作させた。処理後、チャンバー内にN2ガスをゆっくり導入し、大気圧に戻してから試料を取り出した。得られた試料はグローブボックス(1ADB-3KP-TS、美和製作所)を用いてAr雰囲気下で保管した。
【0065】
<準備した試料の評価>
試料表面の化学結合状態は光電子分光法(XPS:ESCALAB 250X, Thermo Fisher Scientific)で評価した。この測定では25 Wで単色化したAl Kαの励起し、得られたスペクトルはC1sピーク(285 eV)で規格化した。
【0066】
試料の断面観察は透過電子顕微鏡(TEM; JEM-2100、JEOL)を用いて行った。TEM観察用試料は以下のように作製した。カーボンテープを用いてNi板に張り付けた試料にPtをコーティングし(JEOL; JSM-7000F)、カーボンインクを滴下・乾燥後、再度Ptをコーティングし、表面保護層を形成した。続いて、収束イオンビーム(FIB:FB-2100、日立ハイテク)により3 × 13 × 7 mmの小片を取り出し、TEM観察用のモリブデングリッド上に固定した後、この小片の中心の厚さが100 nm程度になるまで削った。
【0067】
<電気化学測定>
調製試料のイオン伝導度(25℃)測定は、ケミカルインピーダンス装置(3582-30、日置電機)を用いて測定したコールコールプロット(測定周波数範囲:5 Hz〜1 MHz)から求めた。測定は、集電体である真鍮板(直径:15 mm)に挟みこんだ試料をミックラボ、及びケミックスから購入した電気化学セルに入れ、プレス機を用いて0.2〜1 MPaで圧縮しながら行った。測定後、試料の厚みもデジタルマイクロメータ(MDE-25MJ、ミツトヨ)を用いて見積もった。得られた結果から、イオン伝導度(δ、S cm-1)を以下の式(1)から求めた。
δ = l/AR (1)
ここで、lとAは試料の厚み(cm)、及び測定面積(2.01 cm2)であり、Rはコールコールプロットのフィッティングカーブから得られた抵抗値(Ω)を表す。
【0068】
<結果と考察>
1. N2プラズマで処理したLi3PO4微粒子の特性評価
種々の時間でN2プラズマ処理した Li3PO4微粒子の外観写真を図5に示す。白色のLi3PO4微粒子は60分間のプラズマ処理により、薄い灰色に変化した。この色相は処理時間の増加とともに濃くなり、180分処理では褐色に変化した。
【0069】
この色相変化の要因を明らかにするために、XPS測定を行った。図6(I)は、(A)未処理、及び(B)処理試料(処理時間:90分)のXPSサーベイスペクトルを示す。いずれの試料でも得られたピークは測定雰囲気、あるいは測定に使用したカーボンテープ由来のC1sとLi3PO4に含まれるLi、P、O元素由来のシグナルに帰属できる。しかし、処理試料には398 eV付近にN1sに帰属できる微小ピークが認められた。処理試料のN1sピークのナロースキャンスペクトルを図6(II)に示す。スペクトルには、1本のブロードなピークが現れ、このピークは398.1と399.2 eVにピークトップを持つ2本のピークに分離された。これらの分離ピークは-N=と-N<結合に帰属され、N2プラズマ処理によりLiPONが生成したことがわかった。
【0070】
LiPONの形成状態はTEM観察で評価した。図7は、(A)未処理と(B)90分間処理した試料の断面TEM像と電子線回折像を示す。未処理試料の場合、試料断面は一様であり、電子線回折像にはLi3PO4構造に起因するスポットが観察された。一方、処理試料の断面TEM像には微粒子表面に約600 nmの均一な厚みを有する変質層が認められた。下部層の電子線回折像は未処理試料と一致し、Li3PO4層と見なすことができるのに対し、変質層の電子線回折像にはハローが現れ、この結果は変質層がアモルファスのLiPON層であることを明示している。
【0071】
LiPON層の厚みと処理時間の関係を図8に示す。0〜90分の処理時間ではLiPON層の厚みは直線的に増加し、その後、膜厚は緩やかに増加した。
【0072】
2. N2プラズマで処理したLi3PO4微粒子のイオン伝導性評価
N2プラズマ処理試料のイオン伝導性はインピーダンス測定結果から評価した。図9は、プレス圧を変えて測定した(A)未処理、及び(B)処理試料(処理条件:100 W、60分)のコールコールプロットとそれらのフィッティングカーブを示す。未処理試料の場合、いずれのプレス圧でも半円弧のプロットが現れた。半円弧の大きさは、プレス圧が0.4 MPaから0.8、1 MPaに増加すると小さくなった。同様の結果は処理試料でも得られたが、半円弧の大きさは未処理試料の1/10以下である。
【0073】
コールコールプロットのフィッティングカーブから求めたイオン伝導度(δ)とプレス圧の関係を図10に示す(未処理:●、60分で処理した試料:○)。処理試料において、イオン伝導度はプレス圧とともに増加し、0.8 MPa以上でほぼ一定となった。同様の傾向は未処理試料でも認められるが、プレス圧に対するイオン伝導度変化は処理試料に比べ小さい。また、1 MPaのプレス圧で得られた処理試料のイオン伝導度(1.33 × 10-6 S cm-2)は未処理試料(2.76 × 10-8 S cm-2)より約100倍高く、典型的なLiPON薄膜の値(2.6〜6.4 × 10-6 S cm-1、非特許文献2、3)に匹敵した。
【0074】
イオン伝導性に及ぼすN2プラズマ処理時間の影響もインピーダンス測定で評価した。図11には、60、90、120分間処理した試料のコールコールプロットを示した。挿入図に示すように、処理時間を60分から90分に延ばすと、半円弧の大きさは減少した。しかし、120分処理試料における半円弧の大きさは90分処理試料に比べ、劇的に大きくなった。
【0075】
図12は、プラズマ処理時間とイオン伝導度の関係を示す。イオン伝導度は処理時間の増加とともに指数関数的に増加し、90分のイオン伝導度(1.75 × 10-5 ± 1.25 × 10-5 S cm-1)は非特許文献2、3に記載されているLiPON薄膜の報告値(2.6〜6.4 × 10-6 S cm-1 )より2〜5倍高い。しかし、90分より処理時間が長くなると、イオン伝導度は急激に減少した。
【0076】
図13は、CuをスパッタリングしたN2プラズマ処理した試料(処理時間:90分)のTEM像を示す(スパッタリング条件 高周波出力:50 W、スパッタリング時間:90分、Arガス圧:5 Pa、バレル動作:振り子(±75°、3.5 rpm))。プラズマ処理試料表面には数ナノメートルのCuナノ粒子(黒点)が均一に修飾されているが、LiPON層から成る微粒子表面の一部は露出している。
【0077】
<結論>
本実施例では、バルク型全固体リチウムイオン二次電池におけるリチウムイオン伝導パス構築に寄与するLiPON微粒子の調製を多角バレルプラズマ表面改質法を用いて行った。その結果、本法によりLiPON層を表面に有するLi3PO4微粒子を作製でき、そのイオン伝導性はLiPON薄膜より高いことがわかった。なお、N2プラズマ処理後にスパッタリング操作を行うことで表面LiPON層が露出した状態でCuのような金属を微粒子表面に均一に修飾できる。
【符号の説明】
【0078】
1 Li3PO4微粒子
3 真空チャンバー
11 Li3PO4微粒子
12 アモルファスLIPON層
13 Liイオン伝導性微粒子
14 アモルファスLiPON微粒子
15 金属粒子
16 微粒子
17 金属膜
18 微粒子
19 微粒子
20a 微粒子
20 チャンバー蓋
21 電解質層
22 第1の電極層
23 第2の電極層
24 ガスシャワー電極
25 プラズマ電源
30 容器
31 プラズマ電源
32,33 スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13