(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
オートマチック・トランスミッションを搭載した自動車において、感触出しにメカ機構(カム)を利用したシフターの構造が開示されている。
【0003】
図12は、特許文献1に開示された自動変速機用シフト操作装置900を示す断面図である。自動変速機用シフト操作装置900は自動変速機付きの自動車に搭載され、走行、停止、駐車等の各運転ポジションの中から所要の運転ポジションにシフト操作するものである。シフトレバー901は、例えば金属製の棒状管で成り、上端にノブ902を固着し、下端にホルダ903を固着し、ケース940内に配置される第1軸及び第2軸により揺動自在に軸支される。シフトレバー901は、
図12に示すように上端に軟質樹脂又は皮で覆われ、擬似セレクト釦942を有するノブ902を固着している。ホルダ903は、下端部に節度ばね909及び節度体910を挿入する盲孔903gを穿設している。節度ばね909に付勢された節度体910は、ケース940の内底に形成された節度溝904に圧接して、シフトレバー901を各ポジション(P、R、N、D)に支持したり、自動復帰させたりする。節度溝904は、
図12に示すようにシフトレバー901をPレンジに支持する第1節度溝904b、シフトレバー901をRレンジに支持する第2節度溝904c、シフトレバー901をNレンジに支持する第3節度溝904d、シフトレバー901をDレンジに支持する第4節度溝904eを前後方向に形成している。
【0004】
このシフトレバー901を操作すると、節度ばね909に付勢された節度体910によってクリック感触が得られる。この操作感触は、節度ばね909の付勢力によって適度な強さに調整することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、節度ばねで節度体をカム面に当接するという構造であったため、カムの節度溝(凹部)での付勢力が最低となり操作レバーの保持力が弱く操作レバーがガタつくという問題があった。またこの保持力を強くするとカムの凸部での付勢力が必要以上に強くなり、操作レバーの操作感が悪くなったり、凸部が摩耗して装置の寿命が短くなったりするという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するもので、操作感触のよい操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の操作装置は、操作レバーと、前記操作レバーに連結された節度発生機構と、を備え、前記操作レバーの操作時のクリック感を発生する操作装置であって、前記節度発生機構は、凹部と凸部とを有するカム部材と、該カム部材に当接し、前記カム部材が相対移動する際の移動負荷を発生させる当接部材と、前記カム部材の相対移動方向と交差する方向に前記当接部材の可動方向を規制する規制部材と、前記当接部材を前記可動方向に付勢する付勢力発生手段と、を備え、該付勢力発生手段は、少なくとも一方に永久磁石を有する一対の磁性体を備え、発生する付勢力が前記一対の磁性体同士の磁気吸引力であることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、永久磁石の磁気吸引力を当接部材の付勢力としたので、カム部材の凹部での付勢力が最大となり、操作レバーのガタつきが抑えられる。また凹部が摩耗したとしてもさらに付勢力が強まる方向なので操作レバーのガタが発生せず結果として寿命が長くなる。したがって、操作感触のよい操作装置が得られる。
【0010】
また、本発明の操作装置は、前記一対の磁性体の少なくとも一方が、前記永久磁石と、前記永久磁石の磁束の経路に配置されたヨークと、を備えることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、ヨークによって磁束の経路を作ることで小さな永久磁石でも磁力を高めることができる。
【0012】
また、本発明の操作装置において、前記付勢力発生手段は、前記永久磁石と前記ヨークとを一体に保持するホルダ部材を備え、前記当接部材が前記ホルダ部材に固設されていることが好適である。
【0013】
この構成によれば、ホルダ部材に対して可動方向を規制することにより、規制部材を当接部材の位置に設けなくてもよいので、規制部材の配置が容易で小型化しやすい。
【0014】
また、本発明の操作装置は、前記ホルダ部材が前記永久磁石を保持するための第1保持部と前記ヨークを保持するための第2保持部とを有し、前記第1保持部は前記永久磁石を挿入する第1開口部を有し、前記第2保持部は前記ヨークを挿入する第2開口部を有しており、前記ホルダ部材は前記第1開口部と前記第2開口部とが互いに異なる方向を向いて配置されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、永久磁石とヨークを別々の方向から挿入するので、途中でくっついたり落ちたりすることがなく組立が容易になる。組立後は磁力で固定されるので、接着材等も不要である。
【0016】
また、本発明の操作装置において、前記節度発生機構は、前記カム部材が回転可能に配置され、回転の仮想中心軸から見て点対称となるように前記凹部及び前記凸部が点対称で配置され、前記当接部材は、前記凹部及び前記凸部に対応して前記仮想中心軸から見て点対称となる2箇所にそれぞれ1個ずつ配置され、前記付勢力発生手段は、前記一対の磁性体が、2個の前記当接部材を別々に付勢する2箇所に分かれ、前記仮想中心軸の近傍で対向配置され、前記当接部材同士を近づける方向に磁気吸引力を発生させていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、回転動作に対して点対称で配置されているのでバランスよく強い保持力を発生することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、永久磁石の磁気吸引力を当接部材の付勢力としたので、カム部材の凹部での付勢力が最大となり、操作レバーのガタつきが抑えられる。また凹部が摩耗したとしてもさらに付勢力が強まる方向なので操作レバーのガタが発生せず結果として寿命が長くなる。したがって、操作感触のよい操作装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、分かりやすいように、図面は寸法を適宜変更している。
【0021】
図1は、本発明の実施形態の操作装置100を示すブロック図である。
図2は、本発明の実施形態の操作装置100における節度発生機構1を示す正面図である。
図3は、節度発生機構1を示す斜視図である。
図4は、節度発生機構1を示す分解斜視図である。
図5は、カム部材40を示す外観図であり、X2側から見た側面図である。
図6は、付勢力発生手段10を示す外観図であり、
図6(a)はX2側から見た側面図であり、
図6(b)はその平面図であり、
図6(c)はその底面図である。
図7は、
図4の反対側から見た規制部材61を示す斜視図である。
図8は、規制部材61を示す外観図であり、
図8(a)は平面図であり、
図8(b)はX1側から見た側面図である。
【0022】
本実施形態の操作装置100は、
図1に示すように、操作レバー50と、操作レバーの操作時に信号を発生する信号出力機構70と、操作レバー50に連結された節度発生機構1と、を備え、操作レバー50の操作時のクリック感を発生することができる。
【0023】
信号出力機構70は、例えば、操作レバー50の位置を検出する位置センサと、位置センサの情報から信号を出力する電子回路とを備えている。
【0024】
節度発生機構1は、
図1に示すように、カム部材40と、当接部材30と、付勢力発生手段10と、規制部材61と、を備えている。本実施形態における付勢力発生手段10は、一対の磁性体11、21を備えている。本実施形態では、カム部材40に操作レバー50が連結され、操作レバー50の操作時にカム部材40が相対移動するように構成される。
【0025】
本実施形態の操作装置100は、節度発生機構1が
図2〜
図8に示すものであるとして、以下に、その具体的な構成を説明する。なお、操作装置100には、
図2〜
図8に示す節度発生機構1以外にも操作感触を付与するための機構を必要に応じて付加することが可能であるが、本明細書では他の部分については説明を割愛する。また、操作レバー50の形状や、操作レバー50とカム部材40との連結機構についても説明を割愛する。
【0026】
本実施形態では、操作レバー50の操作時にカム部材40が回動するように構成されている。カム部材40は、合成樹脂から形成され、
図4に示すように、回動可能に形成された環状部45と、環状部45から突出形成された連結部46とを備えている。連結部46は、
図1の操作レバー50に連結される。環状部45には、凹部40a(41a、42a)及び凸部40b(41b、42b)が形成されている。本実施形態では、
図4及び
図5に示す回転の仮想中心軸1aから見て点対称となるように凹部41a、42aがそれぞれ4個ずつ配置され、凸部41b、42bがそれぞれ3個ずつ配置される。また、
図4に示すように、環状部45の凹部40a(41a、42a)及び凸部40b(41b、42b)のX1−X2方向の中央部分に、開口45aが設けられている。
【0027】
付勢力発生手段10は、
図4に示すように、一対の磁性体11、21を備える構成である。付勢力発生手段10は、磁性体11を構成する永久磁石12とヨーク13とを一体に保持するホルダ部材15、及び、磁性体21を構成する永久磁石22とヨーク23とを一体に保持するホルダ部材25を備えている。永久磁石12はX1−X2方向に異なる磁極が配置されるように保持されている。
【0028】
ホルダ部材15は、合成樹脂から形成され、
図4に示すように、永久磁石12を保持するための第1保持部15aと、ヨーク13(13a、13b)を保持するための第2保持部15bと、当接部材31を支持する支持部15eとを有している。
【0029】
本実施形態では、
図6に示すように、ホルダ部材15の第1保持部15aは、Z2側の面に永久磁石12を挿入する第1開口部15cを有している。また、第1保持部15aのZ1側はホルダ部材15の壁面で塞がれている。これにより、第1開口部15cに永久磁石12を挿入する際、Z1側の壁面に当接するまで押し込めばよい。
【0030】
さらに、ホルダ部材15の第2保持部15bは、Z1側の面にヨーク13(13a、13b)を挿入する第2開口部15dを有しており、ホルダ部材15は第1開口部15cと第2開口部15dとが互いに異なる方向を向いて配置されている。なお、Z1側から見てヨーク13(13a、13b)及び第2開口部15dはL字形状を有しており、Y2方向への抜け止めを兼ねている。また、第2保持部15bのZ2側はホルダ部材15の壁面で塞がれている。これにより、第2開口部15dにヨーク13(13a、13b)を挿入する際、Z2側の壁面に当接するまで押し込めばよい。また、第2保持部15bにヨーク13(13a、13b)を挿入してから第1保持部15aに永久磁石12を挿入するときに、ヨーク13(13a、13b)が第2開口部15dから抜け出てしまったり、永久磁石12に吸着してしまったりする心配がなく、きわめて取り扱いしやすいものとなる。
【0031】
本実施形態では、ホルダ部材15に挿入された永久磁石12とヨーク13(13a、13b)とが接するように、ホルダ部材15は第1保持部15aのX1−X2方向に開口が設けられた形状になっている。第1保持部15aに挿入された永久磁石12が、第2保持部15bに挿入されたヨーク13(13a、13b)を引き寄せるように作用するので、組立後は磁力で固定される。したがって、接着材等を用いることなく、ホルダ部材15に永久磁石12とヨーク13(13a、13b)とが一体に保持される。このため、小型化する場合でも製造が容易である。
【0032】
なお、第2開口部15dの向きは、
図6に示す向きに限定されず、第1開口部15cの向き及び磁性体21と対向する面の向きで以外であればよい。本実施形態のホルダ部材15は、第1開口部15cと第2開口部15dとが逆方向を向くように配置されているので、それぞれを区画する壁面がリブとしての補強を兼ねている。このため、本実施形態のホルダ部材15は、より変形しにくいものとなっている。
【0033】
付勢力発生手段10は、前述したように、磁性体21を構成する永久磁石22とヨーク23とを一体に保持するホルダ部材25を備えている。ホルダ部材25は、
図6に示すように、永久磁石22を保持するための第1保持部25aとヨーク23(23a、23b)を保持するための第2保持部25bとを有している。ホルダ部材25の第1保持部25aは、Z2側の面に永久磁石22を挿入する第1開口部25cを有している。また、第1保持部25aのZ1側はホルダ部材25の壁面で塞がれている。ホルダ部材25の第2保持部25bは、Z1側の面にヨーク23(23a、23b)を挿入する第2開口部25dを有しており、ホルダ部材25は第1開口部25cと第2開口部25dとが互いに異なる方向を向いて配置されている。また、永久磁石22はX1−X2方向に異なる磁極が配置されるように保持されている。
【0034】
本実施形態では、
図6に示すように、磁性体21を構成する永久磁石22とヨーク23とを一体に保持するホルダ部材25が、ホルダ部材15とまったく同じ構造になっている。すなわち、永久磁石12とヨーク13(13a、13b)とが一体に保持されたホルダ部材15を、Z1−Z2方向を軸として180度回転させたものである。このように、まったく同じ構成の永久磁石とヨークを2組用意して対向する向きに配置すれば、磁気吸引力を発生させるように配置されることになる。付勢力発生手段10は、発生する付勢力が一対の磁性体11、21同士の磁気吸引力である。一対の磁性体11、21は、永久磁石12の磁極配置と永久磁石22の磁極配置とが逆向きで対向し、ヨーク13(13a、13b)及びヨーク23(23a、23b)を介して磁力線が閉ループとなるため、磁気回路としても効率的に配置される。したがって、小さな永久磁石12、22でも磁力を高めることができる。
【0035】
規制部材61は、合成樹脂から形成され、
図4に示すように、カバー62と固定部材65とともにケース60を構成している。規制部材61には、
図7及び
図8に示すように円筒壁面61cと、規制部61a、61bとが形成されている。規制部材61の円筒壁面61cは、カム部材40の環状部45の外周と摺接するように形成されており、回転の仮想中心軸1aを中心とする円筒面になっている。一方、規制部材61の規制部61a、61bは、一対の磁性体11、21を保持しているホルダ部材15、25と摺接するように形成されている。規制部61a、61bは、X1側に突出する突出部分を2箇所ずつ備えている。
【0036】
当接部材30は、金属材から円柱状に形成され、本実施形態では、
図4に示すように、ホルダ部材15の支持部15eに固設される当接部材31と、ホルダ部材25の支持部25eに固設される当接部材32とに分かれている。支持部15e、25eには、当接部材31、32が挿入される孔が形成されており、この孔に当接部材31、32を圧入することによって当接部材31、32が固設される。なお、当接部材31、32を当該位置で回動可能に軸支する構成としてもよい。
【0037】
本実施形態の操作装置100では、節度発生機構1が以下のようにして組み立てられる。
【0038】
永久磁石12とヨーク13a、13bとが保持されたホルダ部材15と、永久磁石22とヨーク23a、23bとが保持されたホルダ部材25とを、カム部材40の開口45aに支持部15e、25eが突出するようにカム部材40に挿入する。なお、両者が引き合う磁力を有しているので、スペーサ―冶具を配置して次の作業をしやすくしておくことが好ましい。
【0039】
続いて、ホルダ部材15の支持部15eに当接部材31が固設され、ホルダ部材25の支持部25eに当接部材32が固設される。このとき、回転の仮想中心軸1aから見て点対称となる凹部41a、42aに当接部材31、32が配置されるように位置決めしておく。
【0040】
次に、スペーサ―冶具を外して、これらの部材を規制部材61の円筒壁面61cに収容する。このとき、ホルダ部材15、25は規制部材61の規制部61a、61bの突出部分にガイドされるようにして、所望の位置に配置される。規制部61a、61bは、ホルダ部材15、25がY1−Y2方向のみに移動可能とするようにZ1−Z2方向の動きを規制している。ホルダ部材15、25に対して可動方向を規制することにより、規制部材61を当接部材31、32の位置に設けなくてもよいので、規制部材61の規制部61a、61bの配置が容易で小型化しやすい。
【0041】
最後に、カバー62を固定部材65で規制部材61に固定し、カム部材40を回動可能に保持する。操作装置100は、以上のようにして組み立てられた節度発生機構1が、操作レバー50や他の構成部材とともに配設されて組み立てられる。
【0042】
なお、本実施形態の操作装置100では、カム部材40の連結部46に設けられている開口部分から、規制部材61の円筒壁面61cのZ2側に設けられている開口部分まで、節度発生機構1のZ1−Z2方向に沿って貫通孔が形成されている。これにより、この貫通孔に他の操作機構を配置することができ、必要に応じて他の操作機構を付加することが可能である。
【0043】
次に、本実施形態における節度発生機構1の動作について、
図9〜
図11を参照して説明する。
図9は、付勢力発生手段10の動作を示す説明図であり、当接部材30がカム部材40の凹部40aに収容された安定状態を示す説明図である。なお、
図9は、
図2のIX−IX線で切断した断面をX1側から見た断面図である。
図10は、付勢力発生手段10の動作を示す説明図であり、当接部材30がカム部材40の凸部40bに位置する過渡状態を示す説明図である。
図11は、
図10の状態における一対の磁性体の磁力線を平面視で示す説明図である。
【0044】
図9に示すように、当接部材31がカム部材40の凹部41aに当接し、当接部材32がカム部材40の凹部42aに当接して配置される。これにより、一対の磁性体11、21が、2個の当接部材31、32を別々に付勢する2箇所に分かれて配置され、仮想中心軸1aの近傍で対向配置される。一対の磁性体11、21は当接部材31、32同士を近づける方向に磁気吸引力を発生させているので、カム部材40の凹部41a、42aに当接部材31、32が収容された安定状態となっている。このため、カム部材40の連結部46を回動動作させようとしても、当接部材31、32が凹部41a、42aのそれぞれの両側にある凸部41b、42bを乗り越えるまでは、
図9の安定位置に引き戻されることになる。
【0045】
一対の磁性体11、21による磁気吸引力より強い力を加えて、カム部材40の連結部46を回動動作させることによって、
図10に示すように、当接部材31、32がカム部材40の凸部41b、42bに位置する過渡状態まで相対移動する。このとき、一対の磁性体11、21は、規制部61a、61bに摺接するホルダ部材15とホルダ部材25とが、Y1−Y2方向の互いに離れる向きに移動することになる。このため、
図11に示すように、一対の磁性体11、21の磁力線は、閉ループが広げられる方向になり、相対的に弱まることになる。
図10及び
図11に示す過渡状態での磁気吸引力F11、F21は、互いの位置が離れるほど小さくなるので、当接部材31、32がカム部材40の凸部41b、42bを削る力も弱められる。なお、この作用は節度ばねの伸縮を利用した付勢力の場合には得られないものであり、本実施形態のように磁性体を配置したことによる特徴的な作用効果である。
【0046】
一方、
図9に示すように、一対の磁性体11、21が近接した状態では磁気吸引力が大きくなるので、節度ばねの伸縮を利用した付勢力の場合に比べて、より強い付勢力を得ることが可能である。この状態での付勢力が強いほど、ガタつきが少ないものにすることができる。本実施形態では、カム部材40の凹部40aでの付勢力が最大となり、操作レバー50のガタつきが抑えられる。また凹部40aが摩耗したとしてもさらに付勢力が強まる方向なので操作レバー50のガタが発生せず結果として寿命が長くなる。また、上述のように、節度ばねで付勢力を強くしようとすると、カム山を削る力も強くなるので好ましくない。本実施形態のように磁性体の磁気吸引力で節度ばねと同じ強さの付勢力を得る場合、節度ばねで得られる状態に比べて、より好ましい状態が得られると言える。
【0047】
本実施形態では、カム部材40には凹部41a、42aがそれぞれ4個ずつ形成され、その4箇所で安定状態を得ることができる。すなわち、本実施形態の操作装置100は、操作レバー50の操作時のクリック感を回動方向で3回発生させて、4箇所の操作状態に対応させることができる。また、凹部41a、42aの個数を増やせば、より多くの操作状態に対応させることができる。
【0048】
本実施形態では、節度発生機構1の回転の仮想中心軸1aから見て点対称となるように凹部40a(41a、42a)及び凸部40b(41b、42b)が配置されているので、仮想中心軸1aから偏った方向に付勢することがない。したがって、操作レバー50に余計な付勢力を生じないため、操作感触がよい。
【0049】
また、本実施形態では、節度発生機構1の付勢力発生手段10が回転動作に対して点対称で配置されているのでバランスよく強い保持力を発生することができる。さらに、一対の磁性体11、21の磁気吸引力を利用した付勢力発生手段10が、規制部材61の内部に収容されているので、可動範囲を大きくする場合であっても小型化することが容易である。したがって、従来の構成に比べ、節度発生機構1としての小型化が可能である。
【0050】
以下、本実施形態としたことによる効果について説明する。
【0051】
本実施形態の操作装置100は、操作レバー50と、操作レバー50に連結された節度発生機構1とを備え、操作レバー50の操作時のクリック感を発生するものである。節度発生機構1は、凹部40aと凸部40bとを有するカム部材40と、該カム部材40に当接し、カム部材40が相対移動する際の移動負荷を発生させる当接部材30と、カム部材40の相対移動方向と交差する方向に当接部材30の可動方向を規制する規制部材61と、当接部材30を可動方向に付勢する付勢力発生手段10とを備える。そして、付勢力発生手段10は、永久磁石12、22を有する一対の磁性体11、21を備え、発生する付勢力が一対の磁性体11、21同士の磁気吸引力である。
【0052】
この構成によれば、永久磁石12、22の磁気吸引力を当接部材30の付勢力としたので、カム部材40の凹部40aでの付勢力が最大となり、操作レバー50のガタつきが抑えられる。また凹部40aが摩耗したとしてもさらに付勢力が強まる方向なので操作レバー50のガタが発生せず結果として寿命が長くなる。
【0053】
また、本実施形態の操作装置100は、一対の磁性体11、21が、永久磁石12、22と、永久磁石12、22の磁束の経路に配置されたヨーク13、23とを備える。
【0054】
この構成によれば、ヨーク13、23によって磁束の経路を作ることで小さな永久磁石12、22でも磁力を高めることができる。
【0055】
また、本実施形態の操作装置100において、付勢力発生手段10は、永久磁石12とヨーク13とを一体に保持するホルダ部材15を備え、当接部材31がホルダ部材15に固設されている。また、永久磁石22とヨーク23とを一体に保持するホルダ部材25を備え、当接部材32がホルダ部材25に固設されている。
【0056】
この構成によれば、ホルダ部材15、25に対して可動方向を規制することにより、規制部材61を当接部材31、32の位置に設けなくてもよいので、規制部材61の配置が容易で小型化しやすい。
【0057】
また、本実施形態の操作装置100は、ホルダ部材15が永久磁石12を保持するための第1保持部15aとヨーク13を保持するための第2保持部15bとを有している。そして、第1保持部15aは永久磁石12を挿入する第1開口部15cを有し、第2保持部15bはヨーク13を挿入する第2開口部15dを有しており、ホルダ部材15は第1開口部15cと第2開口部15dとが互いに異なる方向を向いて配置されている。また、ホルダ部材25が永久磁石22を保持するための第1保持部25aとヨーク23を保持するための第2保持部25bとを有している。そして、第1保持部25aは永久磁石22を挿入する第1開口部25cを有し、第2保持部25bはヨーク23を挿入する第2開口部25dを有しており、ホルダ部材25は第1開口部25cと第2開口部25dとが互いに異なる方向を向いて配置されている。
【0058】
この構成によれば、永久磁石12とヨーク13を別々の方向から挿入し、永久磁石22とヨーク23を別々の方向から挿入するので、それぞれ、途中でくっついたり落ちたりすることがなく組立が容易になる。組立後は磁力で固定されるので、接着材等も不要である。
【0059】
また、本実施形態の操作装置100において、節度発生機構1は、カム部材40が回転可能に配置され、回転の仮想中心軸1aから見て点対称となるように凹部40a(41a、42a)及び凸部40b(41b、42b)が点対称で配置される。そして、当接部材30(31、32)は、凹部40a(41a、42a)及び凸部40b(41b、42b)に対応して仮想中心軸1aから見て点対称となる2箇所にそれぞれ1個ずつ配置される。さらに、付勢力発生手段10は、一対の磁性体11、21が、2個の当接部材30(31、32)を別々に付勢する2箇所に分かれ、仮想中心軸1aの近傍で対向配置され、当接部材30(31、32)同士を近づける方向に磁気吸引力を発生させている。
【0060】
この構成によれば、回転動作に対して点対称で配置されているのでバランスよく強い保持力を発生することができる。
【0061】
以上のように、本発明の実施形態の操作装置100を具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能である。例えば次のように変形して実施することができ、これらも本発明の技術的範囲に属する。
【0062】
(1)本実施形態において、操作レバー50の操作時にカム部材40が回動するように、カム部材40に操作レバー50が連結されているとしたが、カム部材40が固定されて、他の部材側が回動するように変更してもよい。
【0063】
(2)本実施形態において、付勢力発生手段10は一対の磁性体11、21として同一構造のものを用いているが、磁性体11、21の一方が、永久磁石と、永久磁石の磁束の経路に配置されたヨークと、を備え、他方がヨークだけを備えるように変更してもよい。また、磁力線の閉ループを構成するように、ヨークを対向配置させて配置しているが、ヨークの無い構成であってもよい。
【0064】
(3)本実施形態において、カム部材40の回転の仮想中心軸1aから見て点対称となるように凹部40a及び凸部40bが配置されるように構成したが、いずれか一方だけに凹部40a及び凸部40bが配置されていればよい。例えば、カム部材40の回転の仮想中心軸1aから見て連結部46と対称となる側に凹部40a及び凸部40bが配置されるようにしてもよい。この場合、一対の磁性体をZ1−Z2方向に沿って配置して、回転の仮想中心軸1aから見て近づく方向又は遠ざかる方向に付勢力を発生させればよい。
【0065】
(4)本実施形態において、操作レバー50の操作時にカム部材40が回動するように構成しているが、付勢力発生手段10は回動以外の動作にも適用することができる。例えば、直線的にスライド動作を行う操作レバーを備える操作装置において、スライド方向と直交する方向に沿って一対の磁性体を配置して、カム部材のスライド動作時に付勢力が変化するように構成することができる。