(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る飲用容器冷却装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係る飲用容器冷却装置10の構成を示す模式図である。
図2は、飲用容器冷却装置10の主要部の構成を示す断面図である。
図2に示すように、飲用容器12は、上方に向けて開かれた開口部14を有しており、開口部14には、飲料を飲む人の唇が触れる飲み口16が設けられている。
図1に示す飲用容器冷却装置10は、飲用容器12の飲み口16を急速冷却するものである。
【0029】
図1に示すように、飲用容器冷却装置10は、フレーム18と、冷却カバー20と、冷却管22と、2つの第1ノズル24と、第2ノズル26と、位置決め機構28と、第1冷却ガス発生装置30と、第2冷却ガス発生装置32と、収容部34とを備えている。なお、
図1では、飲用容器12、フレーム18および収容部34を二点鎖線で示している。
【0030】
図1に示すように、フレーム18は、飲用容器冷却装置10の骨格を成す部分であり、鉄等の金属からなる棒材および板材によって頑丈に構成されている。フレーム18は、高さ方向(上下方向)において、第1領域36、第2領域38および第3領域40に区分されており、上述の各構成要素は、これらの領域36,38,40のいずれかに収容されている。
【0031】
図2は、飲用容器冷却装置10の主要部の構成を示す断面図であり、
図3は、飲用容器冷却装置10の主要部の構成を示す底面図である。
図2に示すように、冷却カバー20は、飲用容器12の開口部14を覆うように構成された有底円筒状の部材であり、円筒状の外筒部42と円筒状の内筒部44とによって構成された二重円筒状の本体部46を有している。本体部46の軸方向一方端部(下端部)には、外筒部42と内筒部44との間に構成された空間S1を塞ぐための円環板状の第1閉塞板48が設けられている。本体部46の軸方向一方端部(下端部)には、内筒部44の内側空間(以下、「収容空間」という。)S2に飲用容器12の開口部14を挿し込むための挿込み口50が構成されている。一方、本体部46の軸方向他方端部(上端部)には、空間S1および収容空間S2を塞ぐための円板状の第2閉塞板52が設けられている。第2閉塞板52のうち収容空間S2を塞ぐ部分が、飲用容器12の開口部14と対向する壁部52aとなっている。本実施形態では、冷却カバー20が鉄またはアルミニウム等の金属で形成されているが、冷却カバー20は合成樹脂で形成されてもよい。また、壁部52aは、開口部14から離間する方向に膨らむように、半球状または円錐状に形成されてもよい。
【0032】
図2に示すように、冷却管22は、不凍液等の冷却液が流される管であり、本実施形態では、銅等の金属によって螺旋状に形成されている。冷却管22は、内筒部44の取り囲むようにして空間S1に配置されており、冷却管22の両端部22a,22bは、冷却カバー20に形成された貫通孔54a,54bを通って外部に引き出されている。
【0033】
図2に示すように、各第1ノズル24は、飲用容器12の開口部14が冷却カバー20で覆われた状態において、飲み口16に第1冷却ガスを吹き付けるための筒状部材である。
図3に示すように、各第1ノズル24は、冷却カバー20の中心軸(図示省略)を挟んで互いに対向して配置されている。また、
図2に示すように、各第1ノズル24は、冷却カバー20の中心軸(図示省略)に対して直交する方向から収容空間S2の中央に向けて第1冷却ガスを噴射するように配置されている。各第1ノズル24は、冷却カバー20に形成された貫通孔56a,56bに挿通されて、冷却カバー20に固定されている。
図2中の実線矢印は、第1冷却ガスの噴射方向を示している。
【0034】
なお、飲み口16の数は、2つに限定されるものではなく、第1ノズル24の数は、飲み口16の数に応じて適宜変更されてもよい。また、各第1ノズル24における第1冷却ガスの噴射方向は、適宜変更されてもよい。例えば、飲み口16の外表面に対して直交する方向から第1冷却ガスを噴射してもよいし、開口部14に向かい易いように開口部14側に傾斜した方向から第1冷却ガスを噴射してもよい。
【0035】
図2に示すように、第2ノズル26は、飲用容器12の開口部14が冷却カバー20で覆われた状態において、開口部14の内側に第2冷却ガスを噴射するものである。本実施形態の第2ノズル26は、第2冷却ガスを放射状に噴射するように構成されており、この第2ノズル26は、冷却カバー20の中心軸上に配置されるように、壁部52aの中央部に取り付けられている。したがって、第2ノズル26から放射状に噴射された第2冷却ガスは、開口部14の内周面に吹き付けられる。なお、第2ノズル26の数は、特に限定されるものではなく、2つ以上であってもよい。
図2中の破線矢印は、第2冷却ガスの噴射方向を示している。
【0036】
図2に示すように、位置決め機構28は、第1ノズル24に対して飲み口16を位置決めするものである。位置決め機構28は、冷却カバー20の内面から収容空間S2の中央(または冷却カバー20の中心軸)に向けて突出する複数の突起部58を有している。
図3に示すように、本実施形態では、3つの棒状の突起部58が底面視で120度の角度間隔で設けられている。したがって、飲用容器12の開口部14(
図2)が全ての突起部58に当接されることによって、第1ノズル24に対して飲み口16が位置決めされる。また、
図2に示すように、各突起部58は、冷却カバー20の壁部52aから冷却カバー20の軸方向へ離間して配置されている。したがって、第1ノズル24に対して飲み口16が位置決めされたとき、開口部14と壁部52aとの間には、第1冷却ガスが通過するための空間Wが確保される。
【0037】
図2に示すように、本実施形態では、冷却カバー20と、冷却管22と、第1ノズル24と、第2ノズル26と、位置決め機構28とが一体となって冷却ユニット60が構成されている。
図1に示すように、この冷却ユニット60は、冷却カバー20の挿込み口50が下方に向くようにして、フレーム18の第3領域40に配置されている。第3領域40における冷却ユニット60の下方には、飲用容器12を移動させるための空間Qが確保されており、空間Qの下方には、冷却ユニット60から滴下する水を受けるためのトレイ(図示省略)が配置されている。
【0038】
図1に示すように、第1冷却ガス発生装置30は、第1ノズル24から噴射される第1冷却ガスを生じさせるものであり、2つの第1ノズル24に対応して設けられた2つのエアクーラー62と、各エアクーラー62に圧縮空気を供給するための圧縮空気供給部64と、エアクーラー62に供給される圧縮空気を予め冷却するための圧縮空気冷却部66とを有している。
【0039】
図1に示す各エアクーラー62は、圧縮空気を用いて第1冷却ガスとしての低温空気を生じさせるものである。
図2に示すように、各エアクーラー62は、圧縮空気を取り込むための空気入口70と、空気入口70から取り込まれた圧縮空気を渦動理論の原理(ボルテックスチューブの原理)で高温空気と低温空気とに分離するための空気分離部72と、高温空気を排出するための高温空気排出口74と、低温空気を排出するための低温空気排出口76とを有している。低温空気排出口76は管状に形成されており、低温空気排出口76の先端部に第1ノズル24が設けられている。なお、各エアクーラー62は、導入した圧縮空気を−10℃〜−60℃の範囲で冷却して出力する。
【0040】
図1に示すように、圧縮空気供給部64は、外部から取り込んだ空気を圧縮する空気圧縮機78と、空気圧縮機78の空気出口78aと各エアクーラー62の空気入口70(
図2)とを連通させるための圧縮空気供給管80と、圧縮空気供給管80に設けられた電磁弁82とを有している。圧縮空気供給管80の途中には、圧縮空気冷却部66を構成する熱交換器86が設けられている。空気圧縮機78は、フレーム18の最下部に位置する第1領域36に配置されている。
【0041】
図1に示すように、圧縮空気冷却部66は、冷却液を貯留する冷却液貯留部84と、圧縮空気供給管80の途中に設けられた螺旋管状の熱交換器86と、冷却液生成部88と、冷却液貯留部84と冷却液生成部88との間で冷却液(不凍液等)を循環させるための第1冷却液循環路90と、冷却液貯留部84に貯留された冷却液を冷却液生成部88に供給するためのポンプ92とを有している。
【0042】
冷却液貯留部84は、冷却液を貯留するための容器である。
図1に示すように、冷却液貯留部84は、空気圧縮機78および冷却液生成部88から熱的に隔離するように、フレーム18の第2領域38に配置されている。本実施形態の冷却液貯留部84は、金属等の熱伝導率の高い材料で形成されている。したがって、冷却液で冷却液貯留部84が冷却されると、冷却液貯留部84が配置された第2領域38の空気が冷却される。圧縮空気供給管80の途中に設けられた熱交換器86は、冷却液貯留部84に貯留された冷却液中に配置されている。
【0043】
図1に示す冷却液生成部88は、不凍液等を冷却して冷却液を生成するものである。図示していないが、冷却液生成部88は、冷媒を圧縮して液化させるための圧縮機と、冷媒を気化させるための冷却器と、圧縮機と冷却器との間で冷媒を循環させるための冷媒循環路とを有している。第1冷却液循環路90は、冷却器の周囲を通過するように構成されている。したがって、ポンプ92を駆動して第1冷却液循環路90に冷却液を循環させると、冷却液は、冷却液生成部88の冷却器で熱を奪われて冷却される。
【0044】
図1に示すように、冷却液貯留部84には、上述の第1冷却液循環路90を構成する管路90a,90bが接続されている。また、冷却液貯留部84には、冷却管22との間で冷却液を循環させるための第2冷却液循環路94を構成する管路94a,94bが接続されている。第2冷却液循環路94の管路94aには、冷却液貯留部84に貯留された冷却液を冷却管22に供給するためのポンプ96が設けられている。つまり、本実施形態では、管路94aおよびポンプ96が、冷却管22に冷却液(冷媒)を供給するための「冷媒供給手段」として機能する。なお、圧縮空気冷却部66は、導入した圧縮空気を−10℃〜−30℃の範囲で冷却して出力する。また、冷却液貯留部84は、第2領域38とは別の領域に設けることができ、この場合、第2領域38には第1冷却液循環路90を配置して第2領域38内を冷却することもできる。
【0045】
図1に示すように、第2冷却ガス発生装置32は、第2ノズル26から噴射される第2冷却ガスを生じさせるものであり、液化炭酸ガス等の第2冷却ガスを収容する冷却ガス容器98と、冷却ガス容器98のガス出口98aと第2ノズル26とを連通させるための冷却ガス供給管100と、冷却ガス供給管100に設けられた電磁弁102とを有している。冷却ガス容器98は、フレーム18の最下部に位置する第1領域36に配置されている。
【0046】
図1に示すように、収容部34は、飲用容器12等の「冷却対象物」を収容する収容空間Uを構成するものであり、扉によって開閉される開口部(図示省略)を有する密閉箱状に形成されている。収容部34は、空気圧縮機78および冷却液生成部88から熱的に隔離するように、フレーム18の第2領域38に配置されており、上述の冷却液貯留部84は、収容部34の内側の収容空間Uに配置されている。したがって、収容部34に収容された「冷却対象物」は、冷却液貯留部84に貯留された冷却液で冷却される。
【0047】
以下には、
図1に示す飲用容器冷却装置10を用いて飲用容器12の飲み口16を冷却する方法について説明する。なお、
図1に示す飲用容器12は、持ち手を有しないコップであり、使用時には、コップの本体部分が側方から手で握られる。なお、飲用容器12としては、
図4に示すような持ち手を有するビールジョッキが用いられてもよい。ビールジョッキ等の持ち手を有する飲用容器12では、2つの飲み口16が、持ち手に対して直交する方向において互いに対向するように設けられる。また、この飲用容器冷却装置10は、屋内または屋外に設置されて使用される。
【0048】
飲用容器12の飲み口16を冷却する際には、まず、
図2に示すように、飲用容器12の開口部14を挿込み口50から冷却カバー20の内側の収容空間S2に挿し込んで、開口部14を位置決め機構28の各突起部58に当接させる。すると、開口部14が3点で支持され、第1ノズル24に対して飲み口16が位置決めされるとともに、第2ノズル26に対して開口部14が位置決めされる。
【0049】
続いて、電磁弁82および電磁弁102(
図1)を同時に開くように開閉スイッチ(図示省略)を操作する。すると、各第1ノズル24から各飲み口16に向けて第1冷却ガスが噴射されるとともに、第2ノズル26から開口部14に向けて第2冷却ガスが噴射される。この場合、飲用容器冷却装置10は、各エアクーラー62および圧縮空気冷却部66をそれぞれ作動させることによって空気圧縮機78が取り込んだ空気の温度に対して−20℃〜−90℃の範囲で冷却することができる。この場合、飲用容器冷却装置10のユーザは、各エアクーラー62および圧縮空気冷却部66の各出力を適宜調整して第1冷却ガスの温度を調節することができる。また、飲用容器冷却装置10は、各エアクーラー62および圧縮空気冷却部66のうちの一方を作動させることによって作動させた各エアクーラー62または圧縮空気冷却部66に応じて空気圧縮機78が取り込んだ空気を冷却することができる。
【0050】
各飲み口16を冷却するために必要と考えられる所定時間(例えば5秒)が経過すると、電磁弁82および電磁弁102を閉じるように開閉スイッチ(図示省略)を操作し、収容空間S2から飲用容器12(開口部14)を取り出す。なお、電磁弁82および電磁弁102を開閉させるために用いるスイッチの種類は、特に限定されるものではない。例えば、使用者により操作されるスイッチを用いてもよいし、開口部14が突起部58に当接されていることを自動検知して動作するスイッチを用いてもよい。また、開口部14が突起部58に当接されたときにオンとなり、その後、予め設定された所定時間(例えば5秒)が経過したときにオフとなるスイッチを用いてもよい。また、飲用容器冷却装置10は、第1ガス発生装置30、第2冷却ガス発生装置32、電磁弁82および電磁弁102を総合的に制御する制御装置を備えることにより、これらの各作動をユーザの操作に応じてそれぞれ制御することができる。
【0051】
本実施形態によれば、上記構成により以下の各効果を奏することができる。すなわち、
図2に示すように、位置決め機構28によって、開口部14の飲み口16を第1ノズル24に対して位置決めできるので、飲み口16を第1冷却ガスで集中的に冷却でき、飲用容器12を効率的に急速冷却できる。
図3に示すように、位置決め機構28が棒状の突起部58で構成されているので、位置決め機構28を簡単かつ安価に形成できる。
【0052】
図2に示すように、第1ノズル24から飲み口16に第1冷却ガスが吹き付けられると、第1冷却ガスは、飲み口16に当たって拡散し、開口部14と壁部52aとの間に確保された空間を通って開口部14の内側に流入するので、飲み口16を中心とした広い範囲を冷却できる。また、飲み口16を冷却するための第1ノズル24に加えて、開口部14を冷却するための第2ノズル26を設けているので、飲用容器12を効率的に急速冷却できる。
【0053】
図2に示すように、第1冷却ガス発生装置30では、圧縮空気を用いて第1冷却ガスを簡単に発生させることができるので、ランニングコストを低減できる。また、
図1に示すように、冷却液貯留部84に貯留された冷却液で空気入口70(
図2)に供給される圧縮空気を予め冷却できるので、圧縮空気を予め冷却しない場合に比べて、より低温の第1冷却ガスを発生させることができる。
【0054】
図1に示すように、冷却管22に冷却液を流すことによって冷却カバー20を冷却でき、冷却カバー20の内側にある収容空間S2(
図2)の気温を下げることができるので、飲用容器12を効率的に冷却できる。また、
図2に示すように、冷却液貯留部84に貯留された冷却液で収容部34に収容された「冷却対象物」を冷却できるので、「冷却対象物」が飲用容器12であれば、飲用容器12を効率的に冷却できる。
【0055】
なお、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されず、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上述の実施形態の位置決め機構28(
図2)は、
図5に示す位置決め機構106に変更されてもよい。
【0056】
図5に示す他の実施形態に係る飲用容器冷却装置108において、位置決め機構106は、飲用容器12が載置される載置台110と、載置台110を昇降させるための昇降機構112とを有している。昇降機構112による載置台110の上昇高さは、飲用容器12の飲み口16が第1ノズル24に対して位置決めされるように調整されている。つまり、飲用容器12が載置された載置台110が昇降機構112で上昇されたとき、第1ノズル24に対して飲み口16が位置決めされる。この実施形態では、飲用容器12が載置台110に載置されて、昇降機構112で昇降されるので、飲用容器12を手で持つ必要がなく、第1ノズル24に対して飲み口16を位置決めするための作業をより簡単に行うことができる。なお、昇降機構112は、電動式および手動式のいずれであってもよい。
【0057】
図1に示すように、上述の実施形態では、冷却カバー20に設けられた冷却管22に冷却液を供給しているが、この冷却液に代えて液化炭酸ガス等の冷却ガスを供給してもよい。つまり、冷却管22に供給する「冷媒」は、冷却液および冷却ガスのいずれであってもよい。「冷媒」として冷却ガスを用いる場合には、冷却ガスを収容する冷却ガス容器等が「冷媒供給手段」として機能する。
【0058】
図6に示す他の実施形態に係る飲用容器冷却装置114のように、挿込み口50は上方に向けて開かれてもよい。この実施形態によれば、冷気を収容空間S2に留めておくことができるので、冷気の拡散を抑制して冷却効率を高めることができる。なお、この実施形態では、収容空間S2に溜まった水を排出するために、冷却カバー20の底部に排水管116を設けることが望ましい。
【0059】
図7に示す他の実施形態に係る飲用容器冷却装置118のように、挿込み口50は側方に向けて開かれてもよい。この実施形態によれば、冷気の拡散を抑制して冷却効率を高めることができる。また、側方に向けて開かれた挿込み口50から開口部14を挿し込み易く、冷却作業の作業性を高めることができる。なお、この実施形態では、収容空間S2に溜まった水を排出するために、冷却カバー20の底部120を挿込み口50に向けて低くなるように水平面Lに対して傾斜させることが望ましい。