(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
微生物の集団から脂質を回収する、湿式の溶媒なしの方法が本明細書において記載される。脂質を回収する方法は、微生物の破砕を引き起こす条件下で1つまたは複数の酵素と微生物の集団を接触させることと、破砕した微生物を濃縮することと、破砕した微生物から脂質を抽出することとを含む。細胞破砕は湿式である。抽出は、塩の存在下及び溶媒の非存在下において高温で遂行される。同じ容器内で微生物による油の産生及び細胞破砕を遂行して、油を随意に放出することができるので、本明細書において記述される方法は、「ワンポット」または「一体化」プロセスと称することができる。したがって、下流のプロセッシング工程(例えば油の抽出及び回収)は、上流プロセッシング工程(例えば発酵)の末端で一体化することができる。
【0016】
I.微生物
本明細書において記述される方法は微生物の集団から脂質を回収することを含む。本明細書において記述される微生物の集団は、藻類(例えば微細藻類)、菌類(酵母が含まれる)、細菌または原生生物であり得る。随意に、微生物には、Thraustochytriales目のThraustochytrid類、より具体的にはThraustochytriales目のThraustochytrium属及びSchizochytrium属が含まれる。随意に、微生物の集団には、米国特許第5,340,594号及び第5,340,742(それらの全体は参照により本明細書に援用される)中で記述されているようなThraustochytriales目が含まれる。微生物は、Thraustochytrium属の種(ATCCアクセッション番号PTA−6245として寄託されたThraustochytrium属の種(すなわちONC−T18)等)であり得る。
【0017】
本明細書において記述される方法における使用のための微生物は、多様な脂質化合物を産生することができる。本明細書において使用される時、脂質という用語には、リン脂質、遊離脂肪酸、脂肪酸のエステル、トリアシルグリセロール、ステロール及びステロールエステル、カロテノイド、キサントフィル(例えばオキシカロチノイド)、炭化水素、ならびに当業者に公知の他の脂質が含まれる。
【0018】
随意に、脂質化合物には、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸及び/または多価不飽和脂肪酸が含まれる。
【0019】
随意に、脂質化合物には不飽和脂質が含まれる。不飽和脂質には、多価不飽和脂質(すなわち少なくとも2つの不飽和炭素−炭素結合(例えば二重結合)を含有する脂質)または高度不飽和脂質(すなわち4つ以上の不飽和炭素−炭素結合を含有する脂質)が含まれ得る。不飽和脂質の例には、オメガ−3多価不飽和脂肪酸及び/またはオメガ−6多価不飽和脂肪酸(ドコサヘキサエン酸(すなわちDHA)、エイコサペンタエン酸(すなわちEPA)ならびに他の天然に存在する不飽和化合物及び多価不飽和化合物等)が含まれる。
【0020】
II.プロセス
発酵
本明細書において記述される微生物は当技術分野において公知の方法に従って培養することができる。例えば、Thraustochytrid(例えばThraustochytrium属の種)は、米国特許US2009/0117194またはUS2012/0244584(それらの全体は参照により本明細書に援用される)中で記述される方法に従って培養することができる。微生物は増殖培地(「培養培地」としても公知)中で増殖される。多様な培地のうちの任意ものは本明細書において記述される微生物の培養における使用のために適切であり得る。随意に、培地は微生物のための様々な栄養成分(炭素源及び窒素源が含まれる)を供給する。
【0021】
随意に、本明細書において提供される微生物は、対象となる化合物のバイオマス及び/または産生(例えば油または総脂肪酸(TFA)の含有量)を増加させる条件下で培養される。Thraustochytrid類は、典型的には例えば生理食塩水培地中で培養される。随意に、Thraustochytrid類は、約2.0g/L〜約50.0g/Lの塩濃度を有する培地中で培養され得る。随意に、Thraustochytrid類は、約2g/L〜約35g/L(例えば約18g/L〜約35g/L)の塩濃度を有する培地中で培養される。随意に、本明細書において記述されるThraustochytrid類は、低い塩条件において増殖させることができる。例えば、Thraustochytrid類は、約5g/L〜約20g/L(例えば約5g/L〜約15g/L)の塩濃度を有する培地中で培養され得る。培養培地は随意にNaClを含む。随意に、培地は、天然または人工的な海塩及び/または人工海水を含む。
【0022】
従来の方法と比較して、培養培地中の塩素濃度は低減させることができる(すなわちより低い量で)。培養培地は、ナトリウム源として塩化物非含有ナトリウム塩(例えば硫酸ナトリウム)を含むことができる。例えば、培養培地中の総ナトリウムの約100%、75%、50%または25%未満が、塩化ナトリウムによって供給されるように、総ナトリウムの大部分は非塩化物塩によって供給することができる。
【0023】
随意に、培養培地は、約3g/L、500mg/L、250mg/Lまたは120mg/L未満の塩素濃度を有する。例えば、培養培地は、約60mg/L〜120mg/L以内の塩素濃度を有する。本方法に従う使用のための適切な非塩化物ナトリウム塩の例には、ソーダ灰(炭酸ナトリウム及び酸化ナトリウムの混合物)、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム及びその混合物が含まれるが、これらに限定されない。例えば米国特許第5,340,742号及び第6,607,900号(その各々の全体の内容は参照により本明細書に援用される)を参照されたい。
【0024】
Thraustochytridの培養のための培地には、多様な炭素源のうちの任意のものが含まれ得る。炭素源の例には、脂肪酸;脂質;グリセロール;トリグリセロール;炭水化物(グルコース、デンプン、セルロース、ヘミセルロース、フルクトース、デキストロース、キシロース、ラクツロース、ガラクトース、マルトトリオース、マルトース、ラクトース、グリコーゲン、ゼラチン、デンプン(トウモロコシまたは小麦)、アセテート、m−イノシトール(コーンスティープ液に由来する)、ガラクツロン酸(ペクチンに由来する)、L−フコース(ガラクトースに由来する)、ゲンチオビオース、グルコサミン、α−D−グルコース−1−リン酸(グルコースに由来する)、セロビオース、デキストリン、及びα−シクロデキストリン(デンプンに由来する)等);ショ糖(糖蜜から);ポリオール(マルチトール、エリトリトール、アドニトール及びオレイン酸(グリセロール及びツイーン80等)等);アミノ糖(N−アセチル−D−ガラクトサミン、N−アセチル−D−グルコサミン及びN−アセチル−β−D−マンノサミン等);ならびに任意の種類のバイオマスまたは廃液ストリームが含まれる。
【0025】
随意に、培地は約5g/L〜約200g/Lの濃度で炭素源を含む。培地は約1:1〜約40:1の間のC:N(炭素対窒素)の比を有することができる。二相培養を使用する場合、培地は、第1の相のために約1:1〜約5:1、次いで第2の相において約1:1〜約1:ほぼ0(すなわち窒素なしまたは最小)以内のC:N比を有することができる。本明細書において使用される時、最小という用語は、約10%未満(例えば、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.9%未満、約0.8%未満、約0.7%未満、約0.6%未満、0.2%約未満、0.3%約未満、0.4%約未満、0.5%約未満、または0.1%約未満)を指す。例えば、培地中の最小の窒素は、約10%未満(例えば、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.9%未満、約0.8%未満、約0.7%未満、約0.6%未満、0.2%約未満、0.3%約未満、0.4%約未満、0.5%約未満、または0.1%約未満)の培地中の窒素を指すことができる。
【0026】
Thraustochytrid類の培養のための培地には、多様な窒素源のうちの任意のものが含まれ得る。例示的な窒素源には、アンモニウム溶液(例えばH
2O中のNH
4)、アンモニウム塩またはアミン塩(例えば(NH
4)
2SO
4、(NH
4)
3PO
4、NH
4NO
3、NH
4OOCH
2CH
3(NH
4Ac))、ペプトン、トリプトン、酵母抽出物、麦芽抽出物、魚粉、グルタミン酸ナトリウム、ダイズ抽出物、カザミノ酸及び穀物粕が含まれる。適切な培地中の窒素源の濃度は、典型的には約1g/L〜約25g/L以内の範囲である。
【0027】
培地は随意にリン酸塩(リン酸カリウムまたはリン酸ナトリウム等)を含む。培地中の無機塩及び微量栄養素には、硫酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、オルトバナジウム酸ナトリウム、クロム酸カリウム、モリブデン酸ナトリウム、亜セレン酸、硫酸ニッケル、硫酸銅、硫酸亜鉛、塩化コバルト、塩化鉄、塩化マンガン、塩化カルシウム及びEDTAが含まれ得る。ビタミン(塩酸ピリドキシン、塩酸チアミン、パントテン酸カルシウム、パラアミノ安息香酸、リボフラビン、ニコチン酸、ビオチン、葉酸及びビタミンB12等)を含むことができる。
【0028】
培地のpHは、酸または塩基を使用して、及び/または必要に応じて窒素源を使用して、3.0〜10.0以内へ調整され得る。随意に、培地は4.0〜6.5のpHへ包括的に調整される。培地は滅菌することができる。
【0029】
一般的には、微生物の培養のために使用される培地は液体培地である。しかしながら、微生物の培養のために使用される培地は固形培地であり得る。本明細書において論じられるような炭素源及び窒素源に加えて、固形培地は、構造的支持を提供する及び/または培地が固体形状であることを可能にする、1つまたは複数の構成要素(例えばアガーまたはアガロース)を含有することができる。
【0030】
細胞は1日〜60日間のいつでも培養することができる。随意に、培養は、14日以下、13日以下、12日以下、11日以下、10日以下、9日以下、8日以下、7日以下、6日以下、5日以下、4日以下、3日以下、2日以下、または1日以下の間実行される。培養は約4℃〜約30℃(例えば約18℃〜約28℃)の温度で随意に実行される。培養には、通気−振盪培養、振盪培養、静置培養、バッチ培養、準連続培養、連続培養、ローリングバッチ培養、ウェーブ培養、または同種のものが含まれ得る。培養は、従来型の撹拌発酵槽、気泡塔発酵槽(バッチ溶媒または連続培養)、ウェーブ発酵槽などを使用して遂行され得る。
【0031】
培養は、振盪が含まれる多様な方法のうちの1つまたは複数によってエアレーションされ得る。随意に、振盪は、約100rpm〜約1000rpm(例えば約350rpm〜約600rpmまたは約100〜約450rpm)の範囲である。随意に、培養は、バイオマス産生相の間に及び脂質産生相の間に異なる振盪スピードを使用してエアレーションされる。あるいはまたは追加で、振盪スピードは、培養容器のタイプ(例えばフラスコの形またはサイズ)に依存して変動し得る。
【0032】
随意に、溶存酸素(DO)のレベルは、脂質産生相の間にあるよりもバイオマス産生相の間により高い。したがって、DOレベルは脂質産生相の間に低減する(すなわちDOレベルはバイオマス産生相中の溶存酸素の量よりも少ない)。随意に、溶存酸素のレベルは飽和未満に低減される。例えば、溶存酸素のレベルは非常に低いかまたは場合によっては検出不能なレベルへ低減され得る。
【0033】
より高い量の所望される化合物を得るために、所望される脂質の産生は、1つまたは複数の培養条件のシフトを含む方法に従って細胞を培養することによって促進され得る。随意に、細胞は最初にバイオマスを最大化する条件下で培養され、続いて1つまたは複数の培養条件は脂質産生性を支援する条件へシフトされる。シフトされる条件には、酸素濃度、C:N比、温度及びその組み合わせが含まれ得る。随意に、2ステージ培養が遂行され、第1のステージはバイオマス産生を支援し(例えば、高酸素(例えば一般的にはまたは第2のステージと比較して)、低C:N比、及び周囲温度の条件を使用して)、続いて第2のステージは脂質産生を支援する(例えば酸素は減少され、C:N比は増加され、温度は減少される)。
【0034】
低温殺菌
随意に、もたらされたバイオマスを低温殺菌して、細胞を死滅させてバイオマス中に存在する所望されない物質を不活性化する。例えば、バイオマスを低温殺菌して、物質を分解する化合物を不活性化することができる。バイオマスは発酵培地中に存在することができるか、または低温殺菌工程のために発酵培地から単離することができる。低温殺菌工程は、バイオマス及び/または発酵培地を高温へ加熱することによって遂行することができる。例えば、バイオマス及び/または発酵培地は、約55℃〜約121℃(例えば約55℃〜約90℃、または約65℃〜約80℃)の温度で加熱することができる。随意に、バイオマス及び/または発酵培地は、約4分間〜約120分間(例えば約30分間〜約120分間、約45分間〜約90分間、または約55分間〜約75分間)で加熱することができる。低温殺菌は、当業者に公知であるような適切な加熱手段を使用して(直接的な蒸気噴射によって等)遂行することができる。
【0035】
随意に、低温殺菌工程は遂行されない(すなわち方法は低温殺菌工程を欠く)。
【0036】
採取及び洗浄
随意に、バイオマスは当業者に公知の方法に従って採取することができる。例えば、バイオマスは、随意に様々な従来の方法(遠心分離(例えば固体排出遠心分離機)または濾過(例えばクロスフロー濾過)等)を使用して、発酵培地から収集することができ、細胞バイオマスの収集の加速のために沈殿剤(例えばリン酸ナトリウムまたは塩化カルシウム)の使用も含むことができる。
【0037】
随意に、バイオマスは水により洗浄される。随意に、バイオマスは約30%の固体まで濃縮することができる。例えば、バイオマスは約5%〜約30%の固体、約7.5%〜約15%の固体、もしくは約15%の固体〜約20%の固体、または列挙された範囲内の任意のパーセンテージへ濃縮することができる。随意に、バイオマスは、約30%以下の固体、約29%以下の固体、約28%以下の固体、約27%以下の固体、約26%以下の固体、約25%以下の固体、約24%以下の固体、約23%以下の固体、約22%以下の固体、約21%以下の固体、約20%以下の固体、約19%以下の固体、約18%以下の固体、約17%以下の固体、約16%以下の固体、約15%以下の固体、約14%以下の固体、約13%以下の固体、約12%以下の固体、約11%以下の固体、約10%以下の固体、約9%以下の固体、約8%以下の固体、約7%以下の固体、約6%以下の固体、約5%以下の固体、約4%以下の固体、約3%以下の固体、約2%以下の固体、または約1%以下の固体へ濃縮することができる。
【0038】
加水分解
細胞の加水分解(すなわち細胞破砕)は、化学的、酵素的、及び/または機械的な方法を使用して遂行され得る。随意に、本明細書において記述される方法は乾燥工程を欠く。例えば、バイオマスは、随意に細胞加水分解の前に乾燥されない。随意に、バイオマスは、発酵が完了した後及び接触工程の前に濃縮されない。
【0039】
細胞の加水分解のための化学的方法は細胞への酸の添加を含むことができ、本明細書において酸加水分解と称される。酸加水分解法において、バイオマスは例えば遠心分離を使用して水により洗浄され、細胞の加水分解の前に上述のように濃縮され得る。随意に、バイオマスは水により約15%の固体へ濃縮される。
【0040】
次いで酸は洗浄された湿潤バイオマスへ添加される。随意に、バイオマスは酸の添加の前に乾燥されない。酸加水分解工程における使用のために適切な酸には、硫酸、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硝酸、過塩素酸、及び当業者に公知であるような他の強酸が含まれる。適切な量の酸を洗浄された湿潤バイオマスへ添加して、約100mM〜約200mM(例えば約120mM〜約180mM、または約140mM〜約160mM)の最終濃度を達成することができる。硫酸は洗浄された湿潤バイオマスへ160mMの最終濃度で添加され得る。
【0041】
次いで水、バイオマス及び酸を含む、もたらされた混合物を、一定の期間でインキュベーションして、細胞を加水分解することができる。随意に、混合物は、約30℃〜約200℃の温度でインキュベーションされ得る。例えば、混合物は、約45℃〜約180℃、約60℃〜約150℃、または約80℃〜約130℃の温度でインキュベーションされ得る。随意に、混合物は121℃の温度でオートクレーブ中でインキュベーションされる。混合物は、細胞の少なくとも50%(例えば細胞の少なくとも60%、細胞の少なくとも70%、細胞の少なくとも80%、細胞の少なくとも90%、細胞の少なくとも95%、または細胞の100%)を加水分解するのに適切な一定の期間でインキュベーションされ得る。細胞のインキュベーションのための期間は培養温度に依存する。混合物をより高い温度でインキュベーションすることは、より速い速度で進む加水分解をもたらすことができる(すなわち加水分解のためにより短い期間が要求される)。いくつかの例において、細胞は60℃で1時間インキュベーションされ得る。
【0042】
上述のように、細胞加水分解(すなわち細胞破砕)は、酵素的方法を使用して遂行され得る。具体的には、微生物の集団は、微生物の破砕を引き起こす条件下で1つまたは複数の酵素と接触させることができる。随意に、酵素はプロテアーゼである。適切なプロテアーゼの例はアルカラーゼ2.4L FG(Novozymes;Franklinton、North Carolina)である。随意に、細胞は酵素的加水分解の前に水により洗浄されない。随意に、微生物の集団は、酵素的加水分解の前に濃縮されない。
【0043】
1つまたは複数の酵素と微生物を接触させる前に、発酵培地のpHは、随意に約5〜8.5、例えば約5.5〜8.0もしくは約6.5〜7.5、または列挙された範囲内の任意の値に調製され得る。例えば、発酵培地のpHは、随意に5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4または8.5へ調整され得る。pHは、例えば塩基(水酸化ナトリウム(例えば1NのNaOH)、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムまたは水酸化カリウム等)を使用して調整され得る。発酵培地のpHは接触工程の間にも調整され得る。随意に、pHは、接触工程の前または間に約8.0のpHへ調整される。
【0044】
微生物の集団が発酵培地中にあるときに、微生物は1つまたは複数の酵素と接触させることができる(すなわち接触工程は発酵培地中で起こる)。随意に、発酵培地は、発酵後及び接触工程の前に濃縮される。随意に、発酵培地は、発酵後及び接触工程の前に希釈される。随意に、発酵培地へ添加される酵素は約0.001%〜約0.4%の体積/体積(v/v)の濃度である。例えば、発酵培地へ添加される酵素は、0.05%(v/v)〜0.4%(v/v)、0.05%〜0.2%(v/v)、または0.1%〜0.2(v/v)からの濃度であり得る。いくつかの実施例において、発酵培地へ添加される酵素は、0.05%(v/v)、0.1%(v/v)、0.15%(v/v)、0.2%(v/v)、0.25%(v/v)、0.30%(v/v)、0.35%(v/v)または0.4%(v/v)の濃度である。
【0045】
接触工程は、少なくとも約45℃の温度で遂行され得る。随意に、接触工程は、約45℃〜約70℃、約50℃〜約70℃、約55℃〜約70℃、または55℃の温度で遂行される。接触工程を適切な期間で遂行して、微生物の破砕をもたらす。例えば、接触工程は、約1時間〜約20時間、例えば1時間〜18時間、1時間〜6時間、4時間〜6時間、または列挙された範囲内の任意の時間枠で遂行され得る。随意に、接触工程は約4時間遂行され得る。
【0046】
最適温度、時間、pH及び酵素濃度は具体的な酵素に依存し、与えられた酵素に適切であるように、当業者は温度、時間、pH及び酵素濃度を修飾することができるだろう。
【0047】
随意に、接触工程は、約0.05%(v/v)または約0.2%(v/v)の酵素のいずれかの存在下において約55℃で約1〜6時間遂行される。例えば、接触工程は、0.1%(v/v)の酵素の存在下において55℃で4時間遂行され得る。随意に、接触工程は、界面活性剤の非存在下において(すなわち界面活性剤は存在しないで)遂行される。
【0048】
随意に、細胞破砕は、当業者に公知であるような他の化学的方法及び機械的方法を使用して遂行され得る。例えば、細胞破砕は、アルカリ加水分解、ビーズ粉砕、超音波処理、界面活性剤加水分解、溶媒抽出、急速減圧(すなわち細胞爆弾法)、もしくは高剪断機械的方法、化学物質との接触、ホモジナイゼーション、超音波、粉砕、剪断力、フレンチプレス、コールドプレス、加熱、乾燥、浸透圧衝撃、圧力振動、自己分解遺伝子の発現、またはこれらの組み合わせを使用して遂行され得る。
【0049】
方法は前処理工程を更に含むことができ、前処理工程は接触工程の前に細胞を破砕することを含む。前処理工程は、化学的、機械的、または酵素的な細胞破砕方法を使用して遂行され得る。言いかえれば、細胞破砕は、本明細書において記述される化学的、酵素的及び/または機械的な方法のうちの2つ以上の組み合わせ(例えばビーズ粉砕と組み合わせた酵素的加水分解)を使用して遂行され得る。細胞破砕方法は、連続して(例えばビーズ粉砕に続いて酵素的加水分解)遂行され得る。随意に、化学的方法または機械的方法は第1の加水分解工程として、続いて酵素的細胞破砕は第2の加水分解工程として遂行され得る。これらの例において、1つの細胞破砕方法のみが遂行される場合に使用される酵素の量と比較して、より低量の酵素を酵素的細胞破砕工程において使用することができる。
【0050】
濃縮
酵素的加水分解からもたらされる破砕した微生物は、発酵培地の分離及び除去によって濃縮することができ、後続の工程のために所望される濃度の破砕した微生物を提供する。随意に、破砕した微生物を遠心分離及び1つまたは複数の物質の除去によって濃縮して、所望される濃度を提供する。遠心分離が使用される場合、随意に、遠心分離は重い層及び軽い層を含む2つ以上の層を提供することができる。重い層は可溶性発酵培地構成要素及び水を含み、軽い層は破砕した微生物を脂質及び廃バイオマスの形態で含む。軽い層はある程度の水を更に含み得る。軽い層は、少なくとも脂質及びバイオマスの一部ならびに水をエマルションの形態で含み得る。
【0051】
濃縮工程は、接触工程中に存在する1つまたは複数の物質を除去することを含む。例えば、濃縮工程は水の除去を含み得る。随意に、濃縮工程は、体積で約25%〜約95%の水の除去(例えば約85%の水の除去)を含む。随意に、濃縮工程は、例えば弁を介して重い層を排出することによって、または重い層の吸引もしくはデカントによって、重い層の少なくとも一部を除去することを含む。
【0052】
随意に、濃縮した破砕微生物は、下記の抽出工程に従って破砕した微生物から油を回収する前の一定の期間の間放置することが可能である。濃縮した破砕微生物は、24時間まで(例えば1時間、2時間、5時間、10時間、15時間、20時間または24時間)放置することが可能である。
【0053】
抽出
上述のように、脂質は、塩の存在下及び有機溶媒の非存在下において破砕した微生物から高温で抽出される。
【0054】
抽出工程は高温で遂行され得る。本明細書において使用される時、高温は、少なくとも約55℃の温度(例えば約55℃〜約95℃の温度)を指す。例えば、脂質及びバイオマスの混合物は、約65℃以上、約70℃以上、約75℃以上、約80℃以上、約85℃以上、約90℃以上または約95℃以上の温度で、塩、油またはバイオ燃料と接触させることができる。
【0055】
抽出工程は塩の存在下において遂行される。塩は例えば硫酸ナトリウムであり得る。抽出工程の間に添加される塩の濃度は、抽出混合物の体積に基づいて約1%〜約5%(v/v)(例えば約3%〜約5%(v/v))であり得る。例えば、抽出工程の間に添加される塩の濃度は、約1%、約2%、約3%、約4%または約5%であり得る。
【0056】
脂質は、有機溶媒(例えばC
5−C
12アルカン、塩素化C
1−C
6アルカン、C
1−C
6アルコールまたは超臨界二酸化炭素)の非存在下において、破砕した微生物から抽出される。本明細書において使用される時、有機溶媒の非存在下においてとは、破砕した微生物の重量に基づいて約0.5%未満(例えば、約0.4%未満、約0.3%未満、約0.2%未満、約0.1%未満、約0.05%未満、約0.01%未満、約0.005%未満、または0%)の溶媒を意味する。
【0057】
随意に、脂質は、油(例えばココナッツ油)またはバイオ燃料の添加によって破砕した微生物から抽出することができる。
【0058】
随意に、抽出工程の間に添加される油は、栄養油(例えば栄養源に由来するかまたはそれから得られた油)であり得る。本明細書において記述される方法における使用のために適切な栄養油の例には、ココナッツ油、ヤシ油、キャノーラ油、ヒマワリ油、大豆油、トウモロコシ油、オリーブ油、サフラワー油、パーム核油、綿実油、及びその組み合わせが含まれる。アルキル化誘導体(例えばメチル化油またはエチル化油)等のそれらの油の任意の誘導体も使用することができる。
【0059】
本明細書において使用される時、バイオ燃料は、任意の燃料、燃料添加剤、バイオマス出発材料に由来する芳香族化合物及び/または脂肪族化合物を指す。例えば、本明細書において記述される方法における使用のために適切なバイオ燃料は、植物源または藻類源に由来し得る。バイオ燃料のために適切な源の例には、藻類、トウモロコシ、スイッチグラス、サトウキビ、テンサイ、ナタネ、大豆、及び同種のものが含まれる。
【0060】
随意に、バイオ燃料は、生物源から油を採取し、油をバイオ燃料に転換することによって得ることができる。生物源から得られる油(例えば植物源及び/または藻類源から得られる油)を転換する方法は、当業者に公知である。随意に、バイオ燃料を得る方法は、油産生バイオマス(例えば藻類)を培養し、油(例えば藻類油)を抽出し、油(例えば藻類油)を転換してバイオ燃料を形成することを含み得る。随意に、油はエステル交換反応を使用してバイオ燃料に転換することができる。本明細書において使用される時、エステル交換反応は、別のアルコールによってエステルのアルコキシ基を交換するプロセスを指す。例えば、本明細書において記述される方法における使用のためのエステル交換反応プロセスは、藻類油(例えばトリグリセリド)をバイオディーゼル(例えば脂肪酸アルキルエステル及びグリセロール)へ転換することを含み得る。エステル交換反応は、従来の化学プロセス(酸触媒反応または塩基触媒反応等)の使用によって、または酵素触媒反応の使用によって遂行され得る。
【0061】
本明細書において使用される時、有機溶媒という用語が、本明細書において、栄養油(ココナッツ油、ヤシ油、キャノーラ油、ヒマワリ油、大豆油、トウモロコシ油、オリーブ油、サフラワー油、パーム核油、綿実油、またはそのアルキル化(例えばメチル化またはエチル化)誘導体等)は含まれないと定義されるので、その用語にはバイオ燃料は含まれない。
【0062】
随意に、破砕した微生物からの脂質の抽出に使用される油またはバイオ燃料は、抽出された脂質から後続して除去されない。抽出された油の後続の分画(添加される油またはバイオ燃料は油画分のうちのただ1つと共にとどまる)は、抽出された脂質から油またはバイオ燃料を除去するとは判断されない。例えば、回収後に、本明細書において記述される油は、本明細書において記述される製品のうちの1つもしくは複数のとしての使用のために他の油と組み合わせることができるか、または本明細書において記述される製品のうちの1つもしくは複数の中に取り込むことができる。それらの他の油または製品(バイオ燃料等)のうちの任意の1つは、回収プロセスの結論後に回収された油との組み合わせに対する代替として、またはそれに加えて、抽出工程の間に脂質及びバイオマスの混合物へ添加され得る。抽出工程の間に他の油を添加することは、使用済みバイオマスから脂質の解乳化及び分離を支援することができる。
【0063】
バイオマスから脂質を分離する有機溶媒抽出に依存する従来の方法において、回収後に脂質から有機溶媒を除去しなければならないが、典型的には少なくとも微量の溶媒が後に残される。本明細書において記述される方法において、しかしながら、随意に、抽出工程の間に添加される油またはバイオ燃料が最終製品として使用されるかまたは最終製品の中に取り込まれる場合、そのうちの約80%を超えるものが回収された油中にとどまる。すなわち、随意に、抽出工程の間に添加される油またはバイオ燃料のうちの約20%未満が、最終製品としての使用または最終製品の中への取り込みの前に、回収された油から除去される。例えば、随意に、抽出工程の間に添加される油またはバイオ燃料のうちの約15%未満、約10%未満、約5%未満、約2%未満、または0%は、最終製品としての使用または最終製品の中への取り込みの前に、回収された油から除去される。
【0064】
破砕した微生物またはバイオマスは、破砕した微生物またはバイオマスからの脂質の抽出に適切な一定の期間で塩、油及び/またはバイオ燃料と混合することができる。例えば、塩、油及び/または破砕した微生物もしくはバイオマスは、約10分間以上、20分間以上、30分間以上、40分間以上、50分間以上、1時間以上、または2時間以上混合することができる。続いて、脂質は、溶液を遠心分離することによって混合物の残りの構成要素から分離することができる。
【0065】
随意に、微生物によって理論的に産生された脂質のうちの少なくとも65%は、この方法を使用して破砕した微生物から抽出される(すなわち、方法は少なくとも約65%の収率を提供する)。例えば、破砕した微生物から抽出された脂質の収率は、少なくとも約70%、少なくとも75%、少なくとも80%または少なくとも85%であり得る。
【0066】
あるいは、抽出工程は油またはバイオ燃料の非存在下において遂行され得る。例えば、脂質は機械的方法を使用して抽出することができる。加水分解されたバイオマス及び微生物は遠心分離することができ、脂質は構成要素の残りから分離することができる。遠心分離による油の分離は、バイオマスエマルションへ硫酸ナトリウムを添加する工程を随意に含み得る。随意に、遠心分離は本明細書において記述されるような高温(例えば約55℃以上、約80℃等)で遂行され得る。随意に、脂質は遠心分離された材料の上部層中に含有され、例えば吸引またはデカントによって他の材料から取り出すことができる。
【0067】
随意に、微生物によって産生された脂質のうちの少なくとも約65%は、この方法を使用して破砕した微生物から抽出される(すなわち、方法は少なくとも65%の収率を提供する)。例えば、破砕した微生物から抽出された脂質の収率は、産生された総量のうちの少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%である。
【0068】
III.製品
本明細書において記述される方法に従って産生された多価不飽和脂肪酸(PUFA)(例えばDHA、EPA)及び他の脂質は、例えばそれらの生物学的特性または栄養特性を利用して、任意の多様な適用において利用することができる。随意に、化合物は、医薬品、栄養油(例えば栄養油サプリメント)、食品サプリメント、動物用飼料添加剤、化粧品、バイオ燃料、及び同種のものにおいて使用することができる。本明細書において記述される方法に従って産生された脂質は、他の化合物の産生における中間体としても使用することができる。随意に、本明細書において記述される方法に従って産生された脂質は、最終製品(例えば食品または飼料のサプリメント、乳児用調合乳、医薬品、燃料(例えばバイオ燃料)など)の中へ取り込むことができる。
【0069】
本明細書において記述される脂質が取り込まれ得る適切な食品または飼料サプリメントには、飲料(牛乳、水、スポーツドリンク、エナジードリンク、茶及びジュース等);糖菓(ゼリー及びビスケット等);脂肪を含有する食品及び飲料(乳製品等);加工食品製品(軟質の米(または粥)等);乳児用調合乳;朝食用シリアル;または同種のものが含まれる。随意に、1つまたは複数の産生された脂質は、食品サプリメント(例えばマルチビタミン剤等)の中へ取り込むことができる。随意に、本明細書において記述される方法に従って産生された脂質を、食物サプリメント中に含めることができ、随意に食品または飼料の構成要素(例えば食品サプリメント)の中へ直接取り込むことができる。
【0070】
本明細書において記述される方法によって産生された脂質が取り込まれ得る飼料原料の例には、ペットフード(キャットフード;ドッグフード及び同種のもの;観賞魚、養殖魚または甲殻類のための飼料など等);農場で飼育される動物(家畜及び水産養殖において飼育される魚類または甲殻類が含まれる)のための飼料が含まれる。本明細書において記述される方法に従って産生された脂質が取り込まれ得る食品または飼料材料は、好ましくは意図されるレシピエントである生物体へ快いものである。この食品または飼料材料は、食品材料について現在公知の任意の物理的特性(例えば固体、液体、軟質)を有し得る。
【0071】
随意に、産生された化合物(例えばPUFA)のうちの1つまたは複数を医薬品の中へ取り込むことができる。かかる医薬品の例には、様々なタイプの錠剤、カプセル、飲用薬剤などが含まれる。随意に、医薬品は局所適用のために適切である。投薬量形状には、例えばカプセル、油、粒子、細粒、散剤、錠剤、丸薬、トローチ剤、または同種のものが含まれ得る。
【0072】
随意に、産生された化合物のうちの1つまたは複数は、バイオ燃料として使用することができるか、またはバイオ燃料の中に取り込むことができる。例えば、バイオ燃料は、産生された化合物のうちの1つまたは複数をエステル交換反応することによって産生することができる。バイオ燃料は、産生された油の塩基触媒エステル交換反応、油の酸触媒エステル交換反応、または油のその脂肪酸次いでバイオ燃料への転換によって産生することができる。
【0073】
本明細書において記述される方法に従って産生された脂質を、多様な薬剤の任意のものとの組み合わせによって本明細書において記述されるような製品の中へ取り込むことができる。例えば、かかる化合物は1つまたは複数の結合剤または充填剤と組み合わせることができる。いくつかの実施形態において、製品は、1つまたは複数のキレート剤、色素、塩、界面活性剤、保湿剤、粘度調整剤、増粘剤、皮膚軟化剤、香料、防腐剤など、及びその組み合わせを含むことができる。
【0074】
以下の実施例は、本明細書において記載される方法及び組成物の特定の態様を更に例示することを意図し、特許請求の範囲を限定するようには意図されない。
【実施例】
【0075】
実施例1。低温殺菌、採取及び洗浄、ならびに化学的加水分解
低温殺菌
T18バイオマスを60℃で1時間撹拌しながら加熱して細胞を低温殺菌した。
【0076】
採取及び洗浄
低温殺菌されたT18バイオマスを周囲温度で20分間4150rpmで遠心分離して、細胞ペーストから最終培地を分離した。培地を除去し、同等の質量の水を細胞ペーストへ添加して細胞を洗浄した。細胞ペースト−水混合物を1分間振盪し、再遠心分離し、水相を除去した。
【0077】
化学的加水分解
水洗浄T18細胞ペーストを水により150g/Lへ調整した。サブサンプル(10mL)を取り出し、50mL遠心分離チューブへ添加した。各々のサブサンプルを表1に従って最終濃度へ酸または塩基により処理した。混合物を121℃で15分間オートクレーブして細胞を加水分解した。加水分解後に、サンプルをヘキサン抽出して、回収された油のパーセンテージを物質収支によって決定した(
図1)。160mMのHCl及びH
2SO
4による加水分解は85%を超える油回収をもたらした。
【表1】
【0078】
実施例2。酵素的加水分解
水洗浄T18細胞ペーストを水により220g/Lへ調整した。pHを1NのNaOHにより7.5へ調整した。サブサンプル(10mL)を取り出し、50mL遠心分離チューブへ添加した。各々のサブサンプルを表2に従って酵素により処理した。混合物を50℃で22時間振盪しながらインキュベーションして細胞を加水分解した。加水分解後に、サンプルをヘキサン抽出して、回収された油のパーセンテージを物質収支によって決定した(
図2)。アルカラーゼ単独または別の酵素と組み合わせた加水分解は85%を超える油回収をもたらした。
【表2】
【0079】
実施例3。酸加水分解及び酵素的加水分解、洗浄の効果
低温殺菌非洗浄T18バイオマス(10mL)のサブサンプルを50mL遠心分離チューブへ添加した。対照を水洗浄し、水で170g/Lへ調整し、50mL遠心分離チューブの中へサブサンプルをとった。各々のサブサンプルを表3に従って酸または酵素により処理した。酸加水分解サンプルを121℃で15分間オートクレーブして細胞を加水分解した。酵素的に加水分解したサンプルを1NのNaOHによりpH7.5へ調整し、50℃で26時間振盪しながらインキュベーションして細胞を加水分解した。酸加水分解または酵素的加水分解後に、サンプルをヘキサン抽出して、回収された油のパーセンテージを物質収支によって決定した(
図3)。洗浄した油の回収に同等な洗浄していない油の回収は、0.2%のアルカラーゼ加水分解で達成された。
【表3】
【0080】
実施例4。酵素的加水分解、温度/時間の効果
水洗浄T18細胞ペーストを水により210g/Lへ調整した。pHを1NのNaOHにより7.5へ調整した。サブサンプル(10mL)を50mL遠心分離チューブの中へ添加した。各々のサブサンプルを0.2%のv/vアルカラーゼにより処理した。混合物を70℃で4時間振盪しながらインキュベーションして細胞を加水分解した。対照を55℃で18時間振盪ながらインキュベーションした。加水分解後に、サンプルをヘキサン抽出して、回収された油のパーセンテージを物質収支によって決定した(
図4)。70℃へ温度を増加させることによって、55℃で18時間の加水分解に同等な油の回収は、4時間で達成された。
【0081】
実施例5。酵素的加水分解、バイオ燃料による抽出
水洗浄T18細胞ペーストを水により200g/Lへ調整し、pHを1NのNaOHにより7.5へ調整した。サブサンプル(10mL)を取り出し、50mL遠心分離チューブへ添加した。各々のサブサンプルを0.2%のv/vアルカラーゼにより処理した。混合物を55℃で18時間振盪しながらインキュベーションして細胞を加水分解した。加水分解後に、各々のサブサンプルを表5に従ってバイオ燃料により抽出し、油のパーセンテージを物質収支によって決定し、純粋な油の脂質クラスプロファイルに基づかせた(
図5及び表5)。1:0.4(湿潤バイオマス:バイオ燃料)による抽出は、脂質クラスプロファイルに基づいて、85%を超える油回収をもたらした。トリグリセリド(TG)藻類油をエチル化し(EE)、親TG油に加えて、油抽出のために使用した(表6)。湿潤バイオマス:EE藻類油のすべての比は、脂質クラスプロファイルに基づいて、85%を超える油回収をもたらした。
【表4】
【表5】
【0082】
実施例6。酵素的加水分解、溶媒なしの油抽出
200mLの224g/Lの固形物濃度(159g/Lのバイオマス濃度)の洗浄されないT18バイオマスを、55℃へ加熱し、1NのNaOHによりpH8へ調整した。サンプルを0.4%(v/v)のアルカラーゼにより処理し、55℃で18時間振盪しながらインキュベーションして細胞を加水分解した。加水分解後に、サンプルを40℃で20分間4600rpmで遠心分離して、濃縮した加水分解されたバイオマスから培地を分離した。培地の85%を除去した。水の除去後に、残りのサンプルを40℃で20分間4600rpmで遠心分離して、廃バイオマスから油を分離した。油を回収し、回収された油の%を物質収支によって決定した。加水分解後の水の濃度を低減させることによって、90%を超える油回収は、溶媒なしの油抽出によって達成された。
【0083】
実施例7。溶媒なしの油抽出、大スケール
151,400kgの111g/Lのバイオマス濃度の洗浄されないT18バイオマスを、55℃へ加熱し、50NのNaOHによりpH8へ調整した。606Lのアルカラーゼを添加し、pHを8へ戻すように調整し、混合物を2つの容器の間で再循環させて、加水分解のために55℃で18時間混合した。加水分解後に、ブロスの重量は160,400kgであった。加水分解されたバイオマスを遠心分離のために55℃で保持して、濃縮した加水分解されたバイオマスから培地を分離した(
図6)。134,400kgの培地を除去し、26,000kgの濃縮した加水分解されたバイオマスを回収した。濃縮した加水分解されたバイオマスを1300kgのNa
2SO
4により処理し、90℃で混合ながら加熱し、その後遠心分離して廃バイオマスから油を分離した(
図7)。7606kgの油は82%の合計の油回収で回収された。回収された油の過酸化物価(PV)及び酸価(AV)は、それぞれ0.4meq/kg及び0.38mg KOH/gであった。
【0084】
実施例8。至適化された酵素濃度/時間(0.1%酵素)
143g/Lのバイオマス濃度の洗浄されないT18バイオマスを、55℃へ加熱し、1NのNaOHによりpH8.0へ調整した。25mLサブサンプルを50mL遠心分離チューブの中へ取り出した。各々のサブサンプルを表7に従って処理した。混合物を55℃で振盪しながらインキュベーションして細胞を加水分解した。加水分解後に、サンプルを100℃の槽中に20分間置いて酵素を失活させた。酵素の失活後に、サンプルを40℃で20分間4600rpmで遠心分離して、濃縮した加水分解されたバイオマスから培地を分離した。培地のおよそ80%を除去した。培地を0.25μmフィルターを介して通過させ、加水分解度をo−フタルジアルデヒド(OPA)法によって決定した(Spellman,D.,McEvoy,E.,O’Cuinn,G.,and Fitz, G.R.J.2003.Proteinase and exopeptidase hydrolysis of whey protein:Comparison of the TNBS, OPA and pH stat methods for quantification of degree of hydrolysis.International Dairy Journal,13:447−453)。表7を参照されたい。
【0085】
濃縮した加水分解されたバイオマスを5%(w/v)のNa
2SO
4により処理し、70℃で60分間振盪しながら加熱した。処理後に、サンプルを40℃で20分間4600rpmで遠心分離して、廃バイオマスから油を分離した。油を回収し、回収された油の%を物質収支によって決定した(
図8)。0.1%のアルカラーゼによる加水分解は4時間後に完了した。
【表6】
【0086】
実施例9:至適化された酵素濃度/時間(0.05%酵素)
143g/Lのバイオマス濃度の洗浄されないT18バイオマスを、55℃へ加熱し、1NのNaOHによりpH8.0へ調整した。25mLサブサンプルを50mL遠心分離チューブの中へ取り出した。各々のサブサンプルを表8に従って処理した。混合物を55℃で振盪しながらインキュベーションして細胞を加水分解した。加水分解後に、サンプルを100℃の槽中に20分間置いて酵素を失活させた。酵素の失活後に、サンプルを40℃で20分間4600rpmで遠心分離して、濃縮した加水分解されたバイオマスから培地を分離した。培地のおよそ80%を除去した。培地を0.25μmフィルターを介して通過させ、加水分解度をOPA法によって決定した(表B)。
【0087】
濃縮した加水分解されたバイオマスを5%(w/v)のNa
2SO
4により処理し、70℃で60分間振盪しながら加熱した。処理後に、サンプルを40℃で20分間4600rpmで遠心分離して、廃バイオマスから油を分離した。油を回収し、回収された油の%を物質収支によって決定した(
図9)。0.05%のアルカラーゼによる加水分解は6時間後に完了した。
【表7】
【0088】
実施例10。酵素的加水分解、低pH
150mLの洗浄されないT18のサブサンプルを250mLビーカーへ取り出した。各々のサブサンプルを1MのHClまたはNaOHにより処理して、表9に従って所望されるpHへ調整した。各々のpH条件の30mLのサブサンプルを50mL遠心分離チューブへ取り出した。各々のサブサンプルを0.5%のv/vアルカラーゼにより処理した。混合物を55℃で16時間振盪しながらインキュベーションして細胞を加水分解した。加水分解後に、サンプルを40℃で20分間4600rpmで遠心分離して、濃縮した加水分解されたバイオマスから培地を分離した。およそ60%の培地を除去した。濃縮した加水分解されたバイオマスを5%(w/v)のNa
2SO
4により処理し、70℃で60分間振盪しながら加熱して、廃バイオマスから油を分離した。油を回収し、溶媒なしに回収された油の%を物質収支によって決定した。
図10。同等な油回収はpH5.5及び8で達成された。
【表8】
【0089】
実施例11。酵素的加水分解、代替酵素
30mLの洗浄されないT18バイオマスのサブサンプルを50mL遠心分離チューブへ取り出した。各々のサブサンプルを、0.5%(v/v)の酵素により及び表9に従って処理した。混合物を55℃で振盪しながらインキュベーションして細胞を加水分解した。加水分解後に、サンプルを40℃で20分間4600rpmで遠心分離して、濃縮した加水分解されたバイオマスから培地を分離した。およそ50%の培地を除去した。濃縮した加水分解されたバイオマスを5%(w/v)のNa
2SO
4により処理し、70℃で60分間振盪しながら加熱した。処理後に、サンプルをヘキサン抽出して、物質収支によって回収された油の%を決定した。代替の酵素は加水分解についてアルカラーゼほど効率的であるとは同定されなかったが、必要であるならば、アルカラーゼの代わりに、選択された酵素(プロテアーゼ『M』、Savinase Ultra、Blaze Evity、またはポーラーザイム(Polarzyme))を使用できるだろう。
【表9】
【0090】
実施例12。機械的加水分解
180g/Lのバイオマス濃度の洗浄されないT18バイオマスサンプルを、0.6〜0.8mmの酸化ジルコニウム粉砕媒体(80%(v/v)のビーズ体積)をロードした300mLのDyno−Mill Multi Labステンレス鋼チャンバーの中へ供給した。連続モードにおいて、ビーズ粉砕機を、10m/秒のインペラーチップ速度及び80mL/分間の供給フロー率で操作した。部分的に破砕したバイオマススラリーのサブサンプルを、第2の通過のために破砕チャンバーを介して戻して通過させた。バイオマススラリーを40℃で20分間4600rpmで遠心分離して、廃バイオマスから油を分離した。油を回収し、回収された油の%を物質収支によって決定した。1つの通過及び2つの通過は70%の油回収をもたらした。
【0091】
添付の請求項の組成物及び方法は、本明細書において記述される具体的な組成物及び方法によって範囲を限定されず、それらは請求項の少数の態様の例証として意図され、機能的に等価な任意の組成物及び方法はこの開示の範囲内である。本明細書において示され記述されるものに加えて組成物及び方法の様々な修飾は、添付の請求項の範囲内に入ることが意図される。更に、特定の代表的な組成物、方法、ならびにこれらの組成物及び方法の態様のみが具体的に記述されているが、他の組成物及び方法、ならびに組成物及び方法の様々な特色の組み合わせは、具体的に列挙されなかったとしても、添付の請求項の範囲内に入ることが意図される。したがって、工程、要素、構成要素または成分の組み合わせは、本明細書において明示的に述べることができるが、明瞭に明示されなかったとしても、工程、要素、構成要素及び成分の他のすべての組み合わせが含まれる。