特許第6501424号(P6501424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6501424
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】ノイズ除去フィルタ
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20190408BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   H01F17/00 B
   H01F17/00 D
   H01F27/28 K
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-181152(P2017-181152)
(22)【出願日】2017年9月21日
(62)【分割の表示】特願2013-164883(P2013-164883)の分割
【原出願日】2013年8月8日
(65)【公開番号】特開2017-220686(P2017-220686A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2017年9月21日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0086756
(32)【優先日】2012年8月8日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アン・ヨン・ギュ
(72)【発明者】
【氏名】ウィ・スン・グォン
(72)【発明者】
【氏名】パク・ドン・ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム・ヨン・スク
(72)【発明者】
【氏名】パク・イル・キョ
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ヨン・スク
(72)【発明者】
【氏名】パク・サン・ス
【審査官】 堀 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−277354(JP,A)
【文献】 特開平09−270323(JP,A)
【文献】 特開平02−094013(JP,A)
【文献】 特開2008−306007(JP,A)
【文献】 特開2007−227566(JP,A)
【文献】 特開2009−212229(JP,A)
【文献】 特開平04−363006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
17/04
27/28
41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部磁性体と、
前記下部磁性体上に、複数の巻線数の単位で交互に配置されて、螺旋形態で設けられる1次及び2次下部パターンと、
前記1次及び2次下部パターンの各々に電気的に接続され、複数の巻線数の単位で交互に配置されて、前記1次及び2次下部パターン上に該1次及び2次下部パターンに対応するように、螺旋形態で設けられる1次及び2次上部パターンと、
前記1次及び2次下部パターンと前記1次及び2次上部パターンとを覆う絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられる上部磁性体とを含み、
前記1次下部パターン上には、前記2次上部パターンが位置するように配列され、前記2次下部パターン上には、前記1次上部パターンが位置するように配列される、ノイズ除去フィルタ。
【請求項2】
前記下部磁性体上において、前記1次下部パターンが2以上の巻線数の単位で連続して配置され、前記1次下部パターンの内側で前記2次下部パターンが2以上の巻線数の単位で連続して配置され、
前記1次及び2次下部パターン上において、前記2次上部パターンが2以上の巻線数の単位で連続して配置され、前記2次上部パターンの内側で前記1次上部パターンが2以上の巻線数の単位で連続して配置される、
請求項1に記載のノイズ除去フィルタ。
【請求項3】
前記下部磁性体上において、前記1次下部パターンの単位をなす巻線数は、前記2次下部パターンの単位をなす巻線数と同じであり、
前記1次下部パターンの単位を成す巻線数は、前記2次上部パターンの単位をなす巻線数と同じであり、
前記2次下部パターンの単位を成す巻線数は、前記1次上部パターンの単位をなす巻線数と同じである、
請求項2に記載のノイズ除去フィルタ。
【請求項4】
前記下部磁性体上において、前記1次下部パターンの単位をなす巻線数は、前記2次下部パターンの単位をなす巻線数と異なり、
前記1次下部パターンの単位を成す巻線数は、前記2次上部パターンの単位をなす巻線数と同じであり、
前記2次下部パターンの単位を成す巻線数は、前記1次上部パターンの単位をなす巻線数と同じである、
請求項2に記載のノイズ除去フィルタ。
【請求項5】
前記1次及び2次下部パターン間の水平間隔S及び前記1次及び2次上部パターン間の水平間隔Sは、3.5μm≦S≦12.5μmの範囲を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のノイズ除去フィルタ。
【請求項6】
前記絶縁層は、
前記1次及び2次下部パターンを覆う1次コーティング層と、前記1次コーティング層の上面を平坦化するための2次コーティング層とを含んで構成される、請求項1から5のいずれか一項に記載のノイズ除去フィルタ。
【請求項7】
前記1次及び2次下部パターンの幅は、前記1次及び2次上部パターンの幅より大きい、請求項1から6のいずれか一項に記載のノイズ除去フィルタ。
【請求項8】
前記1次及び2次下部パターンのうち最内郭パターンと最外郭パターンとの幅は、前記最内郭パターンと前記最外郭パターンとの間に位置するパターンの幅より大きい、請求項に記載のノイズ除去フィルタ。
【請求項9】
前記1次及び2次下部パターンのうち長さの長いパターンの最外郭パターンの一部分から拡大形成される抵抗同調部をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のノイズ除去フィルタ。
【請求項10】
前記1次及び2次上部パターンと前記1次及び2次下部パターンとは、ビアを介して電気的に接続される、請求項1から9のいずれか一項に記載のノイズ除去フィルタ。
【請求項11】
前記上部磁性体は、前記1次及び2次上部パターンと前記1次及び2次下部パターンとの中心まで延在する、請求項1から10のいずれか一項に記載のノイズ除去フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズ除去フィルタに関し、特に、同じ周波数で高コモンモードインピーダンスを具現可能で、挿入損失を改善して性能及び容量を向上すると共に、構造及び工程を単純化して製造費用を節減し、生産性を向上することができるノイズ除去フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルTV、スマートフォン、ノートパソコンなどの電子製品は、高周波帯域でのデータ送受信の機能が広く使われている。今後にも、そのようなIT電子製品は一つの機器だけではなく、機器相互間のUSB、その他通信ポートを接続して、多機能及び複合化への活用頻度が高くなると予想される。
【0003】
該データの送受信を早く行うためには、MHz帯域の周波数帯域からGHz帯域の高周波数帯域に移動し、より多量の内部信号ラインを介してデータをやりとるようになる。
【0004】
このように多量のデータをやりとるためにメイン機器と周辺器機との間でGHzの高周波数帯域の信号を送受信するとき、該信号の遅延やその他ノイズによって円滑なデータ処理が難しくなるという不都合がある。
【0005】
そのため、ITと周辺器機との接続部寄りにEMI対策部品を設けている。ところで、既存のEMI対策部品は巻回型または積層型タイプであって、チップ部品のサイズが大きく、電気的特性が悪く、特定の部位や大面積の回路基板など限定された領域のみに使用可能であった。これによって、電子製品のスリム化、小型化、複合化、多機能化への転換に応じるEMI対策部品が要求されている。
【0006】
以下、添付図1図2を参照して、従来技術によるEMI対策コイル部品、すなわちノイズ除去フィルタのうちのコモンモードフィルタについて詳記する。
【0007】
図1に示すように、従来のコモンモードフィルタは、第1の磁性体基板1と、この磁性体基板1上に設けられ、内部に第1のコイルパターン2aと第2のコイルパターン2bとが上下対称に形成される絶縁層2と、この絶縁層2上に設けられる第2の磁性体基板3とを含んで構成される。
【0008】
絶縁層2は、前記第1の磁性体基板1上に、薄膜工程によって、第1のコイルパターン2a及び第2のコイルパターン2bがその内部に形成されるように設けられる。該薄膜工程の一例が、特許文献1に示されている。
【0009】
第2の磁性体基板3は、絶縁層2に接着層4を介して接合方式によって設けられる。
【0010】
第1の磁性体基板1、絶縁層2及び第2の磁性体基板3を含む積層体の両端を囲むように外部電極5が設けられる。この外部電極5は、第1のコイルパターン2a及び第2のコイルパターン2bに引出線(図示せず)を介して電気的に接続される。
【0011】
このように構成された従来のコモンモードフィルタは、コモンモード(Common Mode)のノイズを除去し、差動モード(Diffrential Mode)の信号を円滑に通過させるため、第1のコイルパターン2aと第2のコイルパターン2bとが上下対向するような形態で構成されている。
【0012】
詳しくは、図2に示すように、コモンモードのノイズの場合、前記第1のコイルパターン2aと前記第2のコイルパターン2bとの電流流れによって生じる磁束(Magnetic Flux)が互いに補強され、大きいインピーダンスによって通過されず、差動モード信号の場合は、磁束が互いに相殺され、円滑に通過される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平8-203737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、従来のコモンモードフィルタは、周波数が増加するにつれ、差動モードの場合もインピーダンスが増加し、挿入損失が発生するという問題点があった。
【0015】
すなわち、前記第1のコイルパターン2aと前記第2のコイルパターン2bとの問で流れる磁束が互いに補強され、周波数の増加によって差動モードでもインピーダンスが増加するようになり、挿入損失も増加するようになる。
【0016】
とりわけ、前記第1のコイルパターン2aと前記第2のコイルパターン2bとの間の間隔が大きいほど、差動モードでのインピーダンスが大きくなり、挿入損失もさらに増加し、コモンモードフィルタの特性がもっと低下する。
【0017】
また、従来のコモンモードフィルタは、前記第2の磁性体基板3が前記絶縁層2に接着層4を介して接合されるため、前記接着層4の非磁性特性によって磁束流れの遮断がもっと増大し、急速な特性低下をもたらすという問題点があった。
【0018】
上記問題点を改善するため、前記第1のコイルパターン2aと前記第2のコイルパターン2bとの長さを伸ばすことが行われているが、これには、ノイズ除去フィルタの製造費用を増加させ、該ノイズ除去フィルタのサイズが大きくなるという不都合がある。
【0019】
本発明は上記の問題点に鑑みて成されたものであって、同じ周波数で高コモンモードインピーダンスを具現可能で、差動モードでのインピーダンスを減少させ、挿入損失を改善することによって、特性や性能を高めることができるノイズ除去フィルタを提供することに、その目的がある。
【0020】
本発明の他の目的は、性能や容量の増加時に伴う製品サイズの増加を最小化することができる、ノイズ除去フィルタを提供することにある。本発明のさらに他の目的は、構造及び工程の単純化によって製造費用を節減すると共に生産性を向上することができる、ノイズ除去フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を解決するために、本発明の一実施形態によれば、下部磁性体と、前記下部磁性体上に互いに並んで螺旋形態で設けられる1次及び2次パターンと、前記1次及び2次パターンを覆う絶縁層と、前記絶縁層上に設けられる上部磁性体とを含み、前記1次及び2次パターンは、垂直方向の厚さTの水平方向の幅Wに対する割合が0.27≦T/W≦2.4の範囲を有して形成される、ノイズ除去フィルタが提供される。
【0022】
一実施形態によれば、前記1次パターンと前記2次パターンとの間の水平間隔Sは、3.5μm≦S≦12.5μmの範囲を有する。
【0023】
一実施形態によれば、前記ノイズ除去フィルタは、前記1次及び2次パターンのうち長さの長いパターンの最外郭パターンの一部分から拡大形成される抵抗同調部をさらに含む。
【0024】
一実施形態によれば、前記上部磁性体は、前記1次及び2次パターンの中心まで延在される。
【0025】
また、上記目的を解決するために、本発明の他の実施形態によれば、下部磁性体と、前記下部磁性体上に互いに並んで螺旋形態で設けられる1次及び2次パターンと、前記1次及び2次パターンを覆う絶縁層と、前記絶縁層上に設けられる上部磁性体とを含み、前記1次パターンと前記2次パターンとの間の水平間隔Sは3.5μm≦S≦12.5μmの範囲を有する、ノイズ除去フィルタが提供される。
【0026】
また、上記目的を解決するために、本発明のさらに他の実施形態によれば、下部磁性体と、前記下部磁性体上に互いに並んで螺旋形態で設けられる1次及び2次下部パターンと、前記1次及び2次下部パターンの各々に電気的に接続され、前記1次及び2次下部パターン上に該1次及び2次下部パターンに対応するように互いに並んで螺旋形態で設けられる1次及び2次上部パターンと、前記1次及び2次下部パターンと前記1次及び2次上部パターンとを覆う絶縁層と、前記絶縁層上に設けられる上部磁性体とを含み、前記1次及び2次下部パターンと前記1次及び2次上部パターンとは、垂直方向の厚さTの水平方向の幅Wに対する割合が0.27≦T/W≦2.4の範囲を有して形成される、ノイズ除去フィルタが提供される。
【0027】
一実施形態によれば、前記1次及び2次下部パターン間の水平間隔S及び前記1次及び2次上部パターン間の水平間隔Sは各々、3.5μm≦S≦12.5μmの範囲を有する。
【0028】
一実施形態によれば、前記1次及び2次上部パターンは、前記1次及び2次下部パターンの配列と行き違うように配列される。
【0029】
一実施形態によれば、前記1次及び2次下部パターンの幅は、前記1次及び2次上部パターンの幅より大きく形成される。
【0030】
一実施形態によれば、前記1次及び2次下部パターンのうち最内郭パターンと最外郭パターンの幅は、前記最内郭パターンと前言己最外郭パターンとの間に位置するパターンの幅より大きく形成される。
【0031】
また、一実施形態によれば、前記1次及び2次上部パターンは、前記1次及び2次下部パターンから連続し同じ巻回数を有する螺旋形態で設けられる。
【0032】
一実施形態によれば、前記1次及び2次上部パターンは、異なる巻回数を有し、前記1次及び2次下部パターンは異なる巻回数を有する。望ましくは、前記1次上部パターン及び前記1次下部パターンの総巻回数と、前記2次上部パターン及び前記2次下部パターンの総巻回数とは等しい。
【0033】
一実施形態によれば、前記1次及び2次上部パターンと前記1次及び2次下部パターンとはビアを介して電気的に接続される。
【0034】
一実施形態によれば、前記ノイズフィルタは、前記1次及び2次下部パターンのうち長さの長いパターンの最外郭パターンの一部分から拡大形成される抵抗同調部をさらに含む。
【0035】
一実施形態によれば、前記絶縁層は、前記1次及び2次下部パターンを覆う1次コーティング層と、前記1次コーティング層の上面を平坦化するための2次コーティング層とを含んで構成される。
【0036】
また、一実施形態によれば、前記上部磁性体は、前記1次及び2次上部パターンと前記1次及び2次下部パターンとの中心まで延在される。
【0037】
また、上記目的を解決するために、本発明のさらに他の実施形態によれば、下部磁性体と、前記下部磁性体上に互いに並んで螺旋形態で設けられる1次及び2次下部パターンと、前記1次及び2次下部パターンの各々に電気的に接続され、前記1次及び2次下部パターン上に該1次及び2次下部パターンに対応するように互いに並んで螺旋形態で設けられる1次及び2次上部パターンと、前記1次及び2次下部パターンと前記1次及び2次上部パターンとを覆う絶縁層と、前記絶縁層上に設けられる上部磁性体とを含み、前記1次及び2次下部パターン間の水平間隔S及び前記1次及び2次上部パターン間の水平間隔Sは、3.5μm≦S≦12.5μmの範囲を有する、ノイズ除去フィルタが提供される。
【発明の効果】
【0038】
前述のように、本発明によるノイズ除去フィルタによれば、同じ周波数で高コモンモードインピーダンスを具現可能で、差動モードでのインピーダンスを減少させると共にノイズ除去フィルタの特性及び性能を高めることができるという効果を奏する。
【0039】
また、本発明のノイズ除去フィルタによれば、ノイズ除去フィルタの容量を向上することができるという効果を奏する。
【0040】
また、本発明のノイズ除去フィルタによれば、構造及び工程の単純化によって、ノイズ除去フィルタの製造費用を節減すると共に生産性を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】従来技術によるノイズ除去フィルタのうちのコモンモードフィルタを概略的に示す断面図である。
図2図1の1次コイルパターン及び2次コイルパターンによる磁束を概略的に示す構成図である。
図3】本発明の一実施形態によるノイズ除去フィルタを概略的に示す斜視図である。
図4図3の横断面図である。
図5図4のI−I'線に沿う断面図である。
図6a図3の1次及び2次下部パターンを概略的に示す平面図である。
図6b図3の1次及び2次上部パターンを概略的に示す平面図である。
図7】本発明によるノイズ除去フィルタに適用される、1次及び2次下部パターンと1次及び2次上部パターンとによる磁束を概略的に示す構成図である。
図8a】本発明の一実施形態によるノイズ除去フィルタと従来のコモンモードフィルタのインピーダンス特性とを比較して示すグラフである。
図8b】本発明の一実施形態によるノイズ除去フィルタと従来のコモンモードフィルタの挿入損失特性とを比較して示すグラフである。
図9a図7の1次及び2次下部パターンと1次及び2次上部パターンとの変形された配列構造が示す構成図であって、1次及び2次下部パターンと1次及び2次上部パターンとの上下配列が同じ形態を示す図である。
図9b図7の1次及び2次下部パターンと1次及び2次上部パターンとの変形された配列構造が示す構成図であって、1次及び2次下部パターンと1次及び2次上部パターンとの上下配列が反対になる形態を示す図である。
図9c図7の1次及び2次下部パターンと1次及び2次上部パターンとの変形された配列構造が示す構成図であって、1次及び2次下部パターンと1次及び2次上部パターンとの上下配列が非対称である形態を示す図である。
図10a】1次及び2次下部パターンに絶縁層を形成する過程を概略的に示す工程図であって、1次及び2次下部パターンに1次コーティング層を形成した状態を示す図である。
図10b】1次及び2次下部パターンに絶縁層を形成する過程を概略的に示す工程図であって、図10aの1次コーティング層に2次コーティング層を形成した状態を示す図である。
図11】本発明によるノイズ除去フィルタに適用される1次及び2次下部パターンの他の形態を概略的に示す断面図である。
図12】本発明の一実施形態によるノイズ除去フィルタにおいて、1次及び2次下部パターンの長さ差による抵抗差を合わせるために1次及び2次下部パターンの変更された形状を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の好適な実施の形態は図面を参考にして詳細に説明する。次に示される各実施の形態は当業者にとって本発明の思想が十分に伝達されることができるようにするために例として挙げられるものである。従って、本発明は以下示している各実施の形態に限定されることなく他の形態で具体化されることができる。そして、図面において、装置の大きさ及び厚さなどは便宜上誇張して表現されることができる。明細書全体に渡って同一の参照符号は同一の構成要素を示している。
【0043】
本明細書で使われた用語は、実施形態を説明するためのものであって、本発明を制限しようとするものではない。本明細書において、単数形は特別に言及しない限り複数形も含む。明細書で使われる「含む」とは、言及された構成要素、ステップ、動作及び/又は素子は、一つ以上の他の構成要素、ステップ、動作及び/又は素子の存在または追加を排除しないことに理解されたい。
【0044】
以下、添付図3図12を参照して、本発明の一実施形態によるノイズ除去フィルタについて詳記する。
【0045】
図3は、本発明の一実施形態によるノイズ除去フィルタを概略的に示す斜視図で、図4図3の横断面図で、図5図4のI-I'線に沿う断面図で、図6aは図3の1次及び2次下部パターンを概略的に示す平面図で、図6bは、図3の1次及び2次上部パターンを概略的に示す平面図で、図7は本発明によるノイズ除去フィルタに適用される、1次及び2次下部パターンと1次及び2次上部パターンとによる磁束を概略的に示す構成図で、図8aは本発明の一実施形態によるノイズ除去フィルタと従来のコモンモードフィルタのインピーダンス特性とを比較して示すグラフで、図8bは本発明の一実施形態によるノイズ除去フィルタと従来のコモンモードフィルタの挿入損失特性とを比較して示すグラフである。
【0046】
また、図9a〜図9cは、図7の1次及び2次下部パターンと1次及び2次上部パターンとの変形された配列構造が示す構成図であって、図9aは、1次及び2次下部パターンと1次及び2次上部パターンとの上下配列が同じ形態を示す図面で、図9bは、1次及び2次下部パターンと1次及び2次上部パターンとの上下配列が反対になる形態を示す図面であり、図9cは、1次及び2次下部パターンと1次及び2次上部パターンとの上下配列が非対称である形態を示す図面である。
【0047】
また、図10a及び図10bは、1次及び2次下部パターンに絶縁層を形成する過程を概略的に示す工程図であって、図10aは1次及び2次下部パターンに1次コーティング層を形成した状態を示す図面で、図10bは図10aの1次コーティング層に2次コーティング層を形成した状態を示す図面である。
【0048】
また、図11は本発明によるノイズ除去フィルタに適用される、1次及び2次下部パターンの他の形態を概略的に示す断面図であり、図12は、本発明の一実施形態によるノイズ除去フィルタにおいて、1次及び2次下部パターンの長さ差による抵抗差を合わせるために1次及び2次下部パターンの変更された形状を示す平面図である。
【0049】
図3図6bを参照して、本発明の一実施形態によるノイズ除去フィルタ10Oは大きく、下部磁性体110と、前記下部磁性体110上に設けられる1次及び2次下部パターン121、122と、前記1次及び2次下部パターン121、122上に設けられる1次及び2次上部パターン141、142と、前記1次及び2次下部パターン121、122と前記1次及び2次上部パターン141、142とを覆う絶縁層130と、前記絶縁層130上に設けられる上部磁性体150とを含んで構成される。
【0050】
前記下部磁性体110は、フェライト系列の磁性材料から成る基板形態で形成される。
【0051】
前記1次及び2次下部パターン121、122は、前記下部磁性体110上に薄膜工程によって形成され、互いに並んで螺旋形態で設けられる。前記1次及び2次上部パターン141、142は、前記1次及び2次下部パターン121、122と各々電気的に接続され、前記1次及び2次下部パターン121、122上に1次及び2次下部パターン121、122と対応するように互いに並んで螺旋形態で設けられる。
【0052】
前記1次下部パターン121と前記1次上部パターン141とは、ビアを介して互いに電気的に接続される。同様に、前記2次下部パターン122と前記2次上部パターン142とは、ビアを介して互いに電気的に接続される。
【0053】
これによって、本実施形態のノイズ除去フィルタ100は、1次パターン及び2次パターン、すなわち二つのコイルパターンが同一層上に設けられることによって、性能を向上することができる。
【0054】
一例として、前記1次及び2次下部パターン121、122または前記1次及び2次上部パターン141、142を含む絶縁層130を単一のコイル層としてノイズ除去フィルタの特性を具現することができるが、本実施形態によるノイズ除去フィルタ100は、前記1次及び2次下部パターン121、122と前記1次及び2次上部パターン141、142とが上下対応に設けられた複数層の絶縁層130をコイル層として具現する。そのため、ノイズ除去フィルタの電磁気力の発生をより一層極大化することによって、より優秀な性能及び特性を奏すると共に容量をさらに高めることができる。
【0055】
本実施形態のノイズ除去フィルタ100では、望ましくは、前記1次及び2次下部パターン121、122と前記1次及び2次上部パターン141、142との各々に対して、垂直方向の厚さTの水平方向の幅Wに対する割合が0.27≦T/W≦2.4の範囲を有する。
【0056】
詳しくは、本実施形態のノイズ除去フィルタ100において、前記1次及び2次下部パターン121、122と前記1次及び2次上部パターン141、142との各々における垂直方向の厚さTの水平方向の幅Wに対する割合による特性変化、すなわち、直流抵抗(Rdc)、コモンモード(CM)インピーダンス及び挿入損失を調べた結果、下記のような表1が得られた。前記1次及び2次下部パターン121、122間の水平間隔と前記1次及び2次上部パターン141、142間の水平間隔とは全て5μmで、前記下部パターン121、122と前記上部パターン141、142との間の上下間隔は5μmであった。
【0057】
【表1】
【0058】
上記表1のように、前記1次及び2次下部パターン121、122と前記1次及び2次上部パターン141、142との各々における垂直方向の厚さTの水平方向の幅Wに対する割合T/Wが0.27未満、または2.4超の場合、コモンモードインピーダンスが非常に低下し、挿入損失(Cutoff Frequency)が急減することが認められる。
【0059】
詳しくは、割合T/Wが0.27未満の場合、前記1及び2次下部パターン121、122と前記1次及び2次上部パターン141、142の各々における断面積が水平方向に長い四角形の形態を有することになる。そのため、磁束経路が長く、内部面積が減少し、コモンモードインピーダンスが低下することになる。また、前記下部パターン121、122と前記上部パターン141、142とが上下方向に重なる面積が増加し、各パターン間のキャパシタンスが増加することによって、挿入損失が低下することが分かる。
【0060】
また、割合T/Wが2.4超の場合、前記1次及び2次下部パターン121、122と前記1次及び2次上部パターン141、142の各々における断面積が垂直方向に長い四角形の形態を有することになる。そのため、磁束経路が長く、アンペアの周回路の法則(Ampere's circuital law)によってコモンモードインピーダンスが低下し、前記1次及び2次下部パターン121、122間で水平方向に重なる面積及び前記1次及び2次上部パターン141、142間で水平方向に重なる面積が増加することになる。そのため、各パターン間のキャパシタンスが増加することによって、挿入損失が低下することが分かる。
【0061】
また、本実施形態のノイズ除去フィルタ100では、前記1次及び2次下部パターン121、122と前記1次及び2次上部パターン141、142との各々における水平方向の間隔Sが3.5μm≦S≦12.5μmの範囲を有することによって、ノイズ除去フィルタの特性及び性能を向上することができる。
【0062】
詳しくは、本実施形態のノイズ除去フィルタ100では、前記下部パターン121、122と前記上部パターン141、142との間の一定な垂直方向の間隔Gによって、前記1次及び2次下部パターン121、122間の水平方向の間隔Sと前記1次及び2次上部パターン141、142間の水平方向の間隔Sとを変化させ、ノイズ除去フィルタの特性変化、すなわち、直流抵抗(Rdc)、コモンモードインピーダンス及び挿入損失を調べた結果、下記のような表2が得られた。前記1次及び2次下部パターン121、122の水平方向の幅と前記1次及び2次上部パターン141、142の水平方向の幅とは全て10μmで、前記1次及び2次下部パターン121、122の垂直方向の厚さと前記1次及び2次上部パターン141、142の垂直方向の厚さとは、6μmであった。
【0063】
【表2】
【0064】
上記表2のように、前記1次及び2次下部パターン121、122と前記1次及び2次上部パターン141、142との各々における水平方向の間隔Sが3.5μm未満の場合、挿入損失が非常に低下し、12.5超の場合は、コモンモードインピーダンスが非常に低下することが分かる。
【0065】
言い換えれば、前記1次及び2次下部パターン121、122と前記1次及び2次上部パターン141、142との各々における水平方向の間隔Sが3.5μm未満の場合、すなわちパターン間の水平方向の間隔が非常に小さいと、パターン間のキャパシタンスの増加によって挿入損失が増加することになる。前記1次及び2次下部パターン121、122と前記1次及び2次上部パターン141、142との各々における水平方向の間隔Sが12.5μm超の場合、すなわちパターン間の水平方向の間隔が非常に大きいと、各パターンの内部面積が減少し、コモンモードインピーダンスが減少することが分かる。
【0066】
一方、前述のように、本実施形態のノイズ除去フィルタ100は、1次パターン及び2次パターン、すなわち二つのコイルパターンが同一層上に設けられる。そのため、前記1次及び2次下部パターン121、122の形成される層上に、前記1次及び2次下部パターン121、122の入力側リード、パターン121a、122aを共に形成することができ、前記1次及び2次上部パターン141、142の形成される層上に、前記1次及び2次上部パターン141、142の出力側リードパターン141b、142bを共に形成することができる。これによって、従来のコモンモードフィルタと比べて、出力側リードパターンを形成するための別途の追加層が不要で、前記1次及び2次下部パターン121、122と前記1次及び2次上部パターン141、142とを覆う絶縁層130の厚さを減らすことができる。そのため、絶縁層130を含むノイズ除去フィルタにおける上下方向の高さの縮小による小型化を具現することができる。
【0067】
また、本実施形態のノイズ除去フィルタ100は、前記1次パターン及び2次パターンが同一の水平層上に設けられる。すなわち、1次下部パターン121と2次下部パターン122とが同一の水平層上に交互に設けられ、1次上部パターン141及び2次上部パターン142が同一の水平層上に交互に設けられることによって、図7に示すように、前記1次及び2次下部パターン121、122と前記1次及び2次上部パターン141、142との間で流れる磁束が互いに相殺され、差動モードでのインピーダンスを低め、挿入損失が低減することになる。その結果、ノイズ除去フィルタの特性を改善することができる。
【0068】
詳しくは、図8a及び図8bに示すように、従来のコモンモードフィルタと本実施形態のノイズ除去フィルタ100との特性をシミュレーションした結果、従来と比べて、本実施形態の場合、差動モードのインピーダンスが低くなり、挿入損失が改善されることが認められる。
【0069】
本実施形態のノイズ除去フィルタ100は、前記1次及び2次上部パターン141、142の曲線部位で前記1次及び2次下部パターン121、122と平面上交差する部位を有する。
【0070】
詳しくは、前記1次上部パターン141は、前記1次下部パターン121の上で該1次下部パターンと平面上交差する部位を有する。前記2次上部パターン142は、前記2次下部パターン122の上で2次下部パターンと平面上交差する部位を有する。
【0071】
これによって、示されていないが、前記1次及び2次上部パターン141、142は、該交差部位で前記1次及び2次下部パターン121、122のパターン間の空間、すなわち1次下部パターン121と2次下部パターン122との間に位置するように配列される。
【0072】
また、前記1次及び2次上部パターン141、142は、該交差部分を除いて、すなわち直線部位で前記1次及び2次下部パターン121、122上に位置するように配列される。
【0073】
前記1次及び2次上部パターン141、142は、前記1次及び2次下部パターン121、122の配列と行き違うように配列される。
【0074】
すなわち、前記1次下部パターン121上には、前記2次上部パターン142が位置するように配列され、前記2次下部パターン122上には、前記1次上部パターン141が位置するように配列される。
【0075】
また、図9aに示すように、前記1次及び2次上部パターン141、142は、前記1次及び2次下部パターン121、122の配列と同じく配列されてもよい。
【0076】
詳しくは、前記1次下部パターン121上には前記1次上部パターン141が位置し、前記2次下部パターン122上には前記2次上部パターン142が位置するようになる。
【0077】
また、図9b及び図9cに示すように、前記1次及び2次下部パターン121、122と前記1次及び2次上部パターン141、142とは、複数のターン(turn)、すなわち複数の巻線数の単位で交互に配列されてもよい。
【0078】
詳しくは、図9bに示すように、前記1次下部パターン121が2以上のターン単位で連続して配列され、前記1次下部パターン121の内側で前記2次下部パターン122が2以上のターン単位で連続して配列され、前記2次上部パターン142が2以上のターン単位で連続して配列され、前記2次上部パターン142の内側で前記1次上部パターン141が2以上のターン単位で連続して配列される。
【0079】
また、図9cに示すように、前記1次及び2次下部パターン121、122と前記1次及び2次上部パターン141、142とは、複数のターン、すなわち複数の巻線数の単位で交互に配列されるが、前記1次及び2次下部パターン121、122と前記1次及び2次上部パターン141、142との上下配列が非対称になるような形態で配列されてもよい。
【0080】
次に、図10a及び図10bに示すように、本実施形態のノイズ除去フィルタにおいて、前記1次及び2次下部パターン121、122を覆う絶縁層130は、1次コーティング層131と、前記1次コーテイング層131の上面を平坦化するための2次コーティング層132とを含んで構成される。
【0081】
詳しくは、前記1次及び2次下部パターン121、122を覆うための絶縁層130を一回のコーティングで形成する場合、図10aのように、絶縁層130の上面に凹凸が形成され、これによって、前記1次及び2次下部パターン121、122の上面に前記1次及び2次上部パターンを正確な位置に正確な形態で形成しにくくなる。
【0082】
そのため、図10bに示すように、上面に凹凸を有する1次コーティング層131上に2次コーティング層132を形成することによって、前記1次及び2次下部パターン121、122を覆う絶縁層130の上面を平坦化する。これによって、前記1次及び2次下部パターン121、122上に1次及び2次上部パターンを正確に形成することができる。
【0083】
一方、前記1次及び2次下部パターン121、122を覆う絶縁層130を二回のコーティング工程によって形成しても、前記1次及び2次下部パターン121、122の形成されない領域、すなわち前記絶縁層130の最内郭及び最外郭の上面にはコーテイングされない領域が生じることがある。これによって、前記コーティングされない領域に位置する前記1次及び2次上部パターンの配列が捻れることがある。
【0084】
そのため、図11に示すように、前記1次及び2次下部パターン121、122の幅を前記1次及び2次上部パターン141、142の幅より大きく形成する。
【0085】
特に、前記1次及び2次下部パターン121、122のうち、最内郭パターン及び最外郭パターンの幅を前記最内郭パターンと前記最外郭パターンとの間に位置するパターンの幅より大きく形成する。
【0086】
次に、図12に示すように、本実施形態のノイズ除去フィルタ100は、前記1次及び2次下部パターン121、122のうち、長さの長いパターンの最外郭パターンの一部分から拡大形成される抵抗同調部122cをさらに含んで構成される。
【0087】
本実施形態において、長さの長いパターンは2次下部パターン122で、これによって、前記2次下部パターン122は最外郭パターンの一部分から拡大形成される抵抗同調部122cを有する。
【0088】
したがって、本実施形態によるノイズ除去フィルタ100は、前記抵抗同調部122dこよって前記1次及び2次下部パターン121、122間の長さ差による抵抗差を合わせることができ、抵抗差による性能の低下を防止することができる。
【0089】
一方、前記上部磁性体150は、前記1次及び2次上部パターン141、142上にフェライト系列の磁性材料を充填して形成される。ここでは示されていないが、前記上部磁性体150の中心部位は、前記1及び2次下部パターン121、122の中心まで延在する。
【0090】
したがって、前記上部磁性体150の延設による磁束密度の向上によって、本実施形態のノイズ除去フィルタ100の性能及び特性をより一層高めることができる。
【0091】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、前記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0092】
100 ノイズ除去フィルタ
110 下部磁性体
121 1次下部パターン
122 2次下部パターン
130 絶縁層
141 1次上部パターン
142 2次上部パターン
150 上部磁性体
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8a
図8b
図9a
図9b
図9c
図10a
図10b
図11
図12