特許第6501461号(P6501461)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6501461メッキ膜の剥離防止方法、部品集合体および発光装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6501461
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】メッキ膜の剥離防止方法、部品集合体および発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/60 20100101AFI20190408BHJP
【FI】
   H01L33/60
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-155322(P2014-155322)
(22)【出願日】2014年7月30日
(65)【公開番号】特開2016-32082(P2016-32082A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100119987
【弁理士】
【氏名又は名称】伊坪 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100161089
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 良一
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】大森 祐治
【審査官】 島田 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−033114(JP,A)
【文献】 特開2008−172125(JP,A)
【文献】 特開2011−181825(JP,A)
【文献】 特開2002−280480(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0235272(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/102266(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/112337(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L33/00−33/64
H01L21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイシングにより切断されるメッキ部材のメッキ膜の剥離を防止する方法であって、
メッキ膜が形成される部材の上面の切断線上に、ダイシングブレードの接触幅より狭い幅の凹部を形成し、
前記凹部の側面を含めて前記部材の上面に樹脂コーティングを施し、
前記凹部の側面を含めて樹脂コーティングされた前記部材の上面にメッキを施し、
前記切断線上で、前記ダイシングブレードにより、前記部材の下面側から前記凹部の側面に達する深さまで前記部材をダイシングする、
ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
ダイシングにより切断されるメッキ部材のメッキ膜の剥離を防止する方法であって、
メッキ膜が形成される部材の上面の切断線上に、第1のダイシングブレードの接触幅より狭い幅の凸部を形成し、
前記凸部の側面を含めて前記部材の上面に全面に亘ってメッキを施し、
前記切断線上で、前記第1のダイシングブレードにより、前記部材の上面側から前記凸部の側面に達する深さまで前記部材をハーフダイシングし、
前記切断線上で、前記第1のダイシングブレードより幅の狭い第2のダイシングブレードにより前記部材をダイシングする、
ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
ダイシングにより個々に切断される複数の部品で構成され、基台の上面に樹脂コーティングが形成され、且つ樹脂コーティングの上に全面に亘ってメッキ膜が形成された部品集合体であって、
前記基台の上面の切断線上に、凹部または凸部を有し、
前記メッキ膜は前記凹部または凸部の側面を含めて前記基台の上面に形成されている、
ことを特徴とする部品集合体。
【請求項4】
前記凹部または凸部の側面は、前記基台の上面に対して垂直である、請求項3に記載の部品集合体。
【請求項5】
基板と、
前記基板上に実装された発光素子と、
前記発光素子を取り囲むように前記基板上に配置され、メッキにより表面に反射膜が形成された反射部材と、を有し、
前記反射部材は、請求項3又は4に記載の部品集合体をダイシングにより切断して形成されたことを特徴とする発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッキ膜の剥離防止方法、部品集合体および発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光素子として発光ダイオード(LED)を用いた発光装置が、照明器具などに広く用いられている。LEDは指向性を有するため、LEDを用いた多くの発光装置では、基板上に実装されたLED素子の周囲に、表面に反射膜が形成されLED素子を取り囲む凹部を有する反射部材(リフレクタ)が取り付けられる。反射部材は、例えば、樹脂製の基台の表面に、メッキにより、光反射率が高いアルミニウムや銀などの金属膜が反射膜として形成された部材である。こうした基板や反射部材などの部品の製造工程では、まず、その部品が縦横に複数配列された部品集合体が作製され、その部品集合体に対してダイシングを行うことにより、個々の部品が得られる。
【0003】
しかしながら、基台上にメッキ膜が形成された部材をダイシングにより切断すると、その切断部分からメッキ膜が剥離する場合がある。こうした剥離は製品の歩留りを低下させる原因となることから、発光装置の反射部材の製造工程において、メッキ膜の剥離を防止するための様々な手法が提案されている。例えば、特許文献1には、リフレクタの集合体における個々のリフレクタの表面外周周縁部に反射膜を施さない領域を残し、その領域内のダイシングラインに沿って集合体を切断することにより、反射膜の剥離の発生を防止することが記載されている。また、特許文献2には、反射膜が形成されるリフレクタの上面に反射膜との接合面積を増大させる凹部を形成することにより、リフレクタと反射膜との接合強度を高めて、ダイシングによる反射膜の亀裂や剥離などの発生を防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−172125号公報
【特許文献2】特開2011−187552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の手法では、反射膜をメッキするときのメッキ領域がリフレクタの集合体上で個々に独立しているため、電界メッキが使えないなど、メッキ手法が限定されてしまう。また、特許文献2の手法では、リフレクタの上面に凹部を形成することにより剥離の進行は止められるものの、剥離自体は依然として発生し得る。
【0006】
図10(A)〜図10(D)は、メッキ部材の切断部分での剥離の発生について説明するための図である。図10(A)は、基台70の上面にメッキ膜80が形成されたメッキ部材の側面図であり、図10(B)は、図10(A)のXB−XB線断面図である。図10(C)は、図10(A)のメッキ部材をダイシングブレード3で紙面に垂直な方向に切断している状態を示す図であり、図10(D)は、図10(C)のXD−XD線断面図である。
【0007】
ダイシングブレード3は、矢印a方向に回転しながら矢印b方向に進んで、メッキ部材を切断する。符号73は、ダイシングにより切断された部分である。ダイシングブレード3の面は、図10(C)に一点鎖線cで示した方向であるのに対し、メッキ膜80の面は、それに直交する破線eで示した方向に広がる。すなわち、図示した例では、メッキ膜80に対し、ダイシングブレード3が垂直に入る。ダイシングブレード3は、回転中に、進行方向(矢印b方向)に対する横方向(図10(C)の左右方向)にわずかにぶれるため、進行方向に対するダイシングブレード3の後半側が、切断部分の両側にあるメッキ膜80の端部82に当たることがある。すると、端部82には、図中上側に持ち上げられて基台70から剥がれる方向に力が掛かるため、この端部82からメッキ膜80の剥離が発生し得る。
【0008】
そこで、本発明は、本構成を有しない場合と比べて、ダイシングによる切断部分におけるメッキ膜の剥離の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、ダイシングにより切断されるメッキ部材のメッキ膜の剥離を防止する方法であって、メッキ膜が形成される部材の上面の切断線上に、ダイシングブレードの接触幅より狭い幅の凹部を形成し、凹部の側面を含めて部材の上面にメッキを施し、切断線上で、ダイシングブレードにより、部材の下面側から凹部の側面に達する深さまで部材をダイシングすることを含む方法が提供される。
また、本発明では、ダイシングにより切断されるメッキ部材のメッキ膜の剥離を防止する方法であって、メッキ膜が形成される部材の上面の切断線上に、第1のダイシングブレードの接触幅より狭い幅の凸部を形成し、凸部の側面を含めて部材の上面にメッキを施し、切断線上で、第1のダイシングブレードにより、部材の上面側から凸部の側面に達する深さまで部材をハーフダイシングし、切断線上で、第1のダイシングブレードより幅の狭い第2のダイシングブレードにより部材をダイシングすることを含む方法が提供される。
【0010】
また、本発明では、ダイシングにより個々に切断される複数の部品で構成され、基台の上面にメッキ膜が形成された部品集合体であって、基台の上面の切断線上に、ダイシングブレードの接触幅より狭い幅の凹部または凸部を有し、メッキ膜は凹部または凸部の側面を含めて基台の上面に形成されていることを特徴とする部品集合体が提供される。
上記の部品集合体では、凹部または凸部の側面は、基台の上面に対して垂直であることが好ましい。
上記の部品集合体では、凹部または凸部の側面は、切断時のダイシングブレードの面と平行であることが好ましい。
【0011】
また、本発明では、基板と、基板上に実装された発光素子と、発光素子を取り囲むように基板上に配置され、メッキにより表面に反射膜が形成された反射部材とを有し、反射部材は、上記のいずれかの部品集合体をダイシングにより切断して形成されたことを特徴とする発光装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、本構成を有しない場合と比べて、ダイシングによる切断部分におけるメッキ膜の剥離の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】部品集合体1の斜視図である。
図2】部品集合体1の断面図である。
図3】部品集合体1の切断工程を示したフロー図である。
図4】部品集合体1のメッキ膜の剥離防止構造について説明するための図である。
図5】部品集合体2の斜視図である。
図6】部品集合体2の断面図である。
図7】部品集合体2の切断工程を示したフロー図である。
図8】部品集合体2のメッキ膜の剥離防止構造について説明するための図である。
図9】発光装置50の斜視図である。
図10】メッキ部材の切断部分での剥離の発生について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は図面または以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。
【0015】
以下では、ダイシングにより切断されるメッキ部材における切断部分のメッキ膜の剥離を防止する構造および方法について説明する。この構造および方法は、メッキ膜が形成された基板などの部品が縦横に複数配列され、ダイシングにより個々の部品に切断される部品集合体に適用可能である。以下の説明では、樹脂製の基台の上に反射メッキ膜が形成された発光装置の反射部材の例を用いるが、この構造および方法は、発光装置の部品に限らず、樹脂などの基台に金属層がメッキされた部材に対して広く適用可能である。また、メッキ膜は、基台の表面上に一様に形成されている必要はなく、例えば基板上に形成された配線パターンなどであってもよい。なお、「メッキ」とは、電気メッキ、化学メッキなどの湿式メッキでもよいし、あるいは、真空蒸着、化学蒸着(CVD)、スパッタリングなどの乾式メッキでもよく、特に限定されない。
【0016】
図1(A)〜図1(C)は、部品集合体1の斜視図である。また、図2(A)〜図2(C)は、それぞれ、図1(A)〜図1(C)に示すIIA−IIA線、IIB−IIB線およびIIC−IIC線に沿った部品集合体1の断面図である。部品集合体1は、メッキ部材の一例である。
【0017】
図1(A)は、樹脂製の基台10により形成された反射部材の部品集合体1を示す。個々の部品(反射部材)5は、矩形の枠体であり、中央に円形の開口部5Aを有する。図示した例では、計9個の部品5が縦横に一体となって配列されており、縦横の切断線L上で部品集合体1が切断されることにより、個々の部品5が得られる。なお、部品集合体1内の部品5の個数は、図示した9個より多くてもよいし、少なくてもよい。
【0018】
図1(A)に示すように、部品集合体1の基台10の上面11には、それぞれの切断線Lと重なるように、凹部12が形成される。凹部12は、後述するように、部品集合体1のダイシングに使用されるダイシングブレードの接触幅より狭い幅を有する。凹部12の底面は、基台10の上面11に平行である必要はなく湾曲した面であってもよいが、凹部12の側面は、図2(A)に示すように上面11に対して垂直であることが好ましい。
【0019】
図1(B)は、図1(A)に示す基台10にメッキ膜30が形成された状態の部品集合体1を示す。メッキ膜30は、基台10の上面11だけでなく、図2(B)に示すように凹部12の表面にも形成される。メッキ膜30は、凹部12を埋め尽くさずに、凹部12の側面および底面を覆うように形成される。なお、メッキ膜30の厚さは一様でなくてもよく、凹部12の底面にはメッキ膜30が形成されていない部分があってもよい。
【0020】
図1(C)は、メッキ膜30の形成後に、切断線Lに沿ってダイシングを行うことにより、1個の部品5が切断された状態の部品集合体1を示す。部品集合体1に対するダイシングでは、図2(C)に示すように、部品集合体1の下面側(上面11とは反対側)から凹部12の途中の深さまで基台10が削り取られる。こうして形成された切断部13と凹部12により、隣接する部品5が分離されて1個の部品5が得られる。図2(C)に示すように、このダイシングにより形成される切断部13の幅は、凹部12の幅より広い。
【0021】
図3は、部品集合体1の切断工程を示したフロー図である。まず、基台10の上面11の切断線L上に、ダイシングブレードの接触幅より狭い幅の凹部12を形成する(S11)。次に、基台10の上面11と凹部12の内面に対してメッキを施し、金属膜を形成する(S12)。次に、凹部12よりも幅広のダイシングブレードを用いて、切断線L上で、基台10の下面側から凹部12の側面に達する深さまで(すなわち、凹部12の底面より深く)、基台10をダイシングする(S13)。S13のダイシングを部品集合体1の縦横方向の切断線Lに対して行うことで、個々の部品5が得られる。以上で、部品集合体1の切断工程は終了する。
【0022】
図4(A)〜図4(D)は、部品集合体1のメッキ膜の剥離防止構造について説明するための図である。図4(A)は、基台10の上面にメッキ膜30が形成された部品集合体1の一部を示す側面図(断面図)であり、図4(B)は、図4(A)のIVB−IVB線断面図である。図4(C)は、図4(A)の部品集合体1をダイシングブレード3で紙面に垂直な方向に切断している状態を示す図であり、図4(D)は、図4(C)のIVD−IVD線断面図である。
【0023】
ダイシングブレード3は、矢印a方向に回転しながら矢印b方向に進んで、部品集合体1を切断する。また、部品集合体1の凹部12の幅d1は、ダイシングブレード3の接触幅d3より狭い。さらに、凹部12の側面121は基台10の上面11に対して垂直であるため、メッキ膜30のうち側面121上に形成された側面部分31も、上面11に対して垂直である。このため、ダイシングブレード3は、基台10の下面側から凹部12の側面121まで達したときに、ダイシングブレード3の面に平行に広がる側面部分31でメッキ膜30に接触する。すなわち、部品集合体1では、ダイシングブレード3の面は一点鎖線cの方向であるのに対し、ダイシングブレード3に接触するメッキ膜30の面も、ダイシングブレード3に平行な破線dの方向に広がる。
【0024】
したがって、進行方向(矢印b方向)に対するダイシングブレード3の後半側がメッキ膜30の側面部分31の端部32に当たったとしても、端部32には、基台10から剥がれる方向(水平面内で凹部12の中心に向かう方向)への力は掛からない。このように、部品集合体1では、ダイシングブレード3が凹部12においてメッキ膜30に平行に入るため、メッキ膜30を剥がす方向には力が掛らず、端部32におけるメッキ膜30の剥離の発生が抑制される。また、予め基台10に凹部12を形成しておけば、単に切断線Lに沿って縦横に2回ダイシングするだけで個々の部品5が得られるので、部品集合体1では、剥離の発生を防止するために製造工程が増えることもない。
【0025】
図5(A)〜図5(D)は、部品集合体2の斜視図である。また、図6(A)〜図6(D)は、それぞれ、図5(A)〜図5(D)に示すVIA−VIA線、VIB−VIB線、VIC−VIC線およびVID−VID線に沿った部品集合体2の断面図である。部品集合体2は、メッキ部材の一例である。
【0026】
図5(A)は、樹脂製の基台20により形成された反射部材の部品集合体2を示す。個々の部品(反射部材)6は、矩形の枠体であり、中央に円形の開口部6Aを有する。図示した例では、計9個の部品6が縦横に一体となって配列されており、縦横の切断線L上で部品集合体2が切断されることにより、個々の部品6が得られる。なお、部品集合体2内の部品6の個数は、図示した9個より多くてもよいし、少なくてもよい。
【0027】
図5(A)に示すように、部品集合体2の基台20の上面21には、それぞれの切断線Lと重なるように、凸部22が形成される。凸部22は、後述するように、部品集合体2のハーフダイシングに使用されるダイシングブレードの接触幅より狭い幅を有する。凸部22の上面は、基台20の上面21に平行である必要はなく湾曲した面であってもよいが、凸部22の側面は、図6(A)に示すように上面21に対して垂直であることが好ましい。
【0028】
図5(B)は、図5(A)に示す基台20にメッキ膜40が形成された状態の部品集合体2を示す。メッキ膜40は、基台20の上面21だけでなく、図6(B)に示すように、それぞれの凸部22の側面および底面にも形成される。
【0029】
図5(C)は、メッキ膜40の形成後に切断線Lに沿って凸部22の上部がハーフダイシングされた状態の部品集合体2を示す。部品集合体2に対するハーフダイシングでは、図6(C)に示すように、部品集合体2の上面21側から凸部22の途中の深さまで基台20が削り取られる。こうして、それぞれの凸部22の上面には、メッキ膜40と基台20の一部が取り除かれた切断部23が形成される。
【0030】
図5(D)は、ハーフダイシングの後に、さらに切断線Lに沿ってダイシングを行うことにより、1個の部品6が切断された状態の部品集合体2を示す。このダイシングでは、図6(D)に示すように、部品集合体2の上面21側または下面側から、凸部22の上面における基台20の露出部分(切断部23)の幅より狭い幅で基台20を貫通するように、基台20が削り取られる。こうして形成された切断部24により、隣接する部品6が分離されて1個の部品6が得られる。
【0031】
図7は、部品集合体2の切断工程を示したフロー図である。まず、基台20の上面21の切断線L上に、第1のダイシングブレードの接触幅より狭い幅の凸部22を形成する(S21)。次に、基台20の上面21と凸部22の表面に対してメッキを施し、金属膜を形成する(S22)。次に、凸部22よりも幅広の第1のダイシングブレードを用いて、切断線L上で、基台20の上面21側から凸部22の側面に達する深さまで(すなわち、上面21までは達しないように)、基台20をハーフダイシングする(S23)。その後で、凸部22より幅の狭い(第1のダイシングブレードより幅の狭い)第2のダイシングブレードを用いて、切断線L上で、基台20をダイシングする(S24)。S24のダイシングを部品集合体2の縦横方向の切断線Lに対して行うことで、個々の部品6が得られる。以上で、部品集合体2の切断工程は終了する。
【0032】
図8(A)〜図8(D)は、部品集合体2のメッキ膜の剥離防止構造について説明するための図である。図8(A)は、基台20の上面にメッキ膜40が形成された部品集合体2の一部を示す側面図(断面図)であり、図8(B)は、図8(A)のVIIIB−VIIIB線断面図である。図8(C)は、図8(A)の部品集合体2をダイシングブレード3(第1のダイシングブレード)で紙面に垂直な方向に切断している状態を示す図であり、図8(D)は、図8(C)のVIIID−VIIID線断面図である。
【0033】
ダイシングブレード3は、矢印a方向に回転しながら矢印b方向に進んで、部品集合体2を切断する。また、部品集合体2の凸部22の幅d2は、ダイシングブレード3の接触幅d3より狭い。さらに、凸部22の側面221は基台20の上面21に対して垂直であるため、メッキ膜40のうち側面221上に形成された側面部分41も、上面21に対して垂直である。このため、ダイシングブレード3は、基台20の上面21側から凸部22の側面221まで達したときに、ダイシングブレード3の面に平行に広がる側面部分41でメッキ膜40に接触する。すなわち、部品集合体2では、ダイシングブレード3の面は一点鎖線cの方向であるのに対し、ダイシングブレード3に接触するメッキ膜40の面も、ダイシングブレード3に平行な破線dの方向に広がる。
【0034】
したがって、進行方向(矢印b方向)に対するダイシングブレード3の後半側がメッキ膜40の側面部分41の端部42に当たったとしても、端部42には、基台20から剥がれる方向(水平面内で凸部22から離れる方向)への力は掛からない。このように、部品集合体2では、ダイシングブレード3が凸部22においてメッキ膜40に平行に入るため、メッキ膜40を剥がす方向には力が掛らず、端部42におけるメッキ膜40の剥離の発生が抑制される。
【0035】
図9は、発光装置50の斜視図である。発光装置50は、主要な構成要素として、基板51、発光体52および反射部材53を有する。
【0036】
基板51は、その上面の中央に発光体52が配置される矩形の基板である。基板51は、例えば、耐熱性および放熱性に優れたアルミニウム材などで構成され、発光体52により発生する熱の放熱を促進させる金属部材と、金属部材の上に固定され、発光体52を外部電源に接続するための接続電極や配線パターンが形成された絶縁性の回路基板との2層構造を有する。
【0037】
発光体52は、1つまたは複数のLED素子と、円板形状にモールド成型され、LED素子を一体に被覆し保護するエポキシ樹脂またはシリコン樹脂などの透光性の樹脂とで構成される。LED素子は、発光素子の一例であり、基板51の上面に実装される。
【0038】
反射部材53は円形の開口部531を有する樹脂体であり、反射部材53の表面には、アルミニウムや銀などの光反射率が高い金属による反射膜がメッキにより形成される。反射部材53は、開口部531内に発光体52を収納し、開口部531の内面で発光体52を取り囲むように、基板51上に配置される。
【0039】
また、反射部材53は、上記した部品集合体1,2のいずれかの形態で製造される。図9には示していないが、反射部材53は、反射膜が形成された上面532の四方の端部533に、上記した凹部12または凸部22による剥離防止構造を有する。すなわち、部品集合体1として製造された場合には、反射部材53は、四方の端部533から上面532に沿って水平方向に突出する突出部(図2(C)の符号fを参照)を有し、反射膜は、その突出部の表面に沿って上面532から下方に折れ曲がるように広がる。また、部品集合体2として製造された場合には、反射部材53は、四方の端部533において上面532から鉛直方向に突出する突出部(図6(D)の符号gを参照)を有し、反射部材53の反射膜は、その突出部の表面に沿って上面532から上方に折れ曲がるように広がる。部品集合体1,2のいずれかの形態で製造されることで、反射部材53上の反射膜における剥離の発生が抑制される。
【0040】
なお、発光装置50を製造する際は、例えば、発光体52が実装された基板集合体と反射部材集合体とを別個に作製し、それらを接着剤などにより互いに貼り合わせて固定した後で、ダイシングにより個々の装置に切断する。あるいは、発光体52が実装された基板集合体と反射部材集合体とを作製し、それぞれをダイシングにより個々の部品に切断した後で、個々の基板と反射部材を貼り合せてもよい。ただし、基板集合体と反射部材集合体の段階で両者を貼り合わせる方が、製造コストが安くなるため好ましい。
【0041】
なお、上記では、樹脂製の基台の上に反射メッキ膜が形成された発光装置の反射部材の例を説明してきたが、こうした反射部材などの部品集合体では、樹脂製の基台の上にさらに樹脂コーティングを形成し、その上に反射メッキ膜を形成してもよい。樹脂コーティングにより、樹脂製の基台の表面の平坦性が改善し、かつ基台とメッキ膜との密着性が向上する効果がある。しかしながら、この樹脂コーティングも、メッキ膜と同様にダイシング時に基台から剥がれることがある。そこで、樹脂コーティングを形成する場合にも、上記の部品集合体1,2のように、基台の上面の切断線上にダイシングブレードの接触幅より狭い幅の凹部または凸部を形成した上で、その凹部または凸部の側面を含めて基台の上面に樹脂コーティングとメッキ膜を形成するとよい。これにより、メッキ膜の剥離だけでなく、樹脂コーティングの剥離の発生も同様に抑制することが可能になる。
【符号の説明】
【0042】
1,2 部品集合体
3 ダイシングブレード
10,20 基台
12 凹部
22 凸部
30,40 メッキ膜
50 発光装置
52 反射部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10