特許第6501476号(P6501476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6501476-無線タグを用いた採血管管理システム 図000002
  • 特許6501476-無線タグを用いた採血管管理システム 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6501476
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】無線タグを用いた採血管管理システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20190408BHJP
【FI】
   G01N35/02 C
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-205781(P2014-205781)
(22)【出願日】2014年10月6日
(65)【公開番号】特開2016-75565(P2016-75565A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】591086854
【氏名又は名称】株式会社テクノメデイカ
(74)【代理人】
【識別番号】100064388
【弁理士】
【氏名又は名称】浜野 孝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【弁理士】
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】中野 靖
(72)【発明者】
【氏名】伊達 督史
【審査官】 島田 保
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5348243(JP,B2)
【文献】 特開2006−006696(JP,A)
【文献】 特表2013−532999(JP,A)
【文献】 特開2012−021815(JP,A)
【文献】 特開2005−069844(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/073877(WO,A1)
【文献】 特開平10−062426(JP,A)
【文献】 特開2010−107403(JP,A)
【文献】 特許第5432816(JP,B2)
【文献】 特許第5354509(JP,B1)
【文献】 国際公開第2013/116669(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
G06Q 50/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各採血管に対して患者識別情報に関連付けした個別検体情報を付与して該個別検体情報をICチップに記憶させた無線タグを各採血管に設け、前記無線タグの情報に基づいて移動経路中の採血管の挙動を管理する採血管管理システムであって、
採血管の移動経路中に配置された複数の無線タグ用読取装置と、
前記無線タグ用読取装置で読み取った個別検体情報と、該個別検体情報を読み取った読取時間とに基づいて移動経路における採血管の動きを監視する管理装置と
を備え
前記管理装置が、
無線タグ用読取装置から読み取った情報に基づいて、前後の無線タグ用読取装置間の移動時間を算出し、
前記移動時間が、所定の閾値より大きい場合に警告を出力する
ように構成され、かつ、
前記管理装置が、
無線タグ用読取装置から読み取った情報を記憶する記憶手段を有し、記憶手段に記憶された情報に基づいて、過去の無線タグ用読取装置間の移動時間を算出し、算出した過去の移動時間に基づいて前記移動時間の前記閾値を決定又は更新する
ように構成されている
ことを特徴とする採血管管理システム。
【請求項2】
前記管理装置が、医師からの採血指示取消情報を入力し、
前記取消情報を、取り消された採血管の個別検体情報に関連付けして記憶し、
前記無線タグ用読取装置から読み取った情報に基づいて取り消された採血管が採血管の移動経路中にあるか否かを検出し、
移動経路中にある取り消された採血管を発見した場合には警告を発する
ように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の採血管管理システム。
【請求項3】
採血管管理システムが、移動経路中にある採血管を除去したことを表す採血管除去情報を入力可能な入力手段を有し、
前記管理装置が、前記入力手段を介して入力された採血管除去情報を個別検体情報と関連付けして記憶し、採血管除去情報が入力された採血管については、その後の挙動管理から外す
ように構成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の採血管管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者から採血をするために採血管を準備する段階から最終的に採血管を廃棄するまでの間の採血管の挙動を管理するための採血管管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の診断を行った医師は、その患者に対して何等かの検査が必要と判断した場合、検査の内容に基づいて、採血に必要な採血管の種類及び採血量を決め、採血の指示を出す。
医師から採血指示が出されると、ストックされている複数の種類の採血管の中から患者の検査に必要な採血管を選択して必要な本数取り出し、その採血管に検体情報を印字した識別ラベルを貼り付けて患者単位でトレイ等に収容する採血前準備を行い、採血作業者に受け渡される。
採血作業者は、準備されたトレイの中に入れられた採血管を使って、その採血指示に対応する患者から採血を行う。
採血後の採血管は、検査室に集められ、検査室で検査項目毎に仕分けられ、各検査項目に対応する分析装置に送られる。
各分析装置では、採血管を開栓して中の血液を取り出して、血液の成分の分析を行う。
分析装置での検査に供された後の採血管は、再び仮栓されてストッカ容器に入れられ、低温の保管庫で所定期間保管される。
所定期間保管後の採血管は、廃棄される。
上記した流れの中で、検体(血液)と患者とのマッチングは、各採血管に貼り付けたラベルにバーコードの形態で印字された検体情報に基づいて行われる(特許文献1)。検体情報は、患者ID等の識別情報及び医師からの検査及び採血指示情報と関連付けされており、採血準備後、採血及び検査の各場面で採血管のバーコードを読み取って患者の照合が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2834595号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように採血準備後の採血管は、採血作業者が採血を行う時に検体情報を使って照合され、また、分析装置で分析を行う時にも、検体情報を使って照合がされるため、採血時に患者を取り間違えることはなくなり、また、採血後の血液が異なる患者の血液と誤認されて検査結果が出されることもない。
このように、準備された採血管がすべて採血作業者に受け渡され、採血後の採血管がすべて検査室の担当者に受け渡され、さらに、検査室で分けられた採血管がすべて必要な分析装置にセットされれば、各場面における検体情報による照合により間違いが生じることはない。
しかし、病院等の医療現場においては、採血管は採血管準備段階、採血段階、検査及び分析段階並びに廃棄段階の各段階で移動及び受け渡しが行われるが、この病院内での採血管の挙動全体を管理することは行われていないため、途中で採血管が無くなることが起きている。
採血管が無くなる原因の一つとしては、採血管にラベルを貼り付けて準備をした後に医師が採血指示を取り消し、その取消指示に従って看護師等が準備された採血管を廃棄したり、採血管からラベルを剥がして採血管を採血準備室に戻したりすることが挙げられる。
また、他の原因としては、採血管が受け渡しや移動の途中に落下等して紛失してしまうことが挙げられる。
さらに、他の原因としては、間違えて採血指示が重複して出されていた場合、同じ患者に対して同じ採血管が重複して準備されることになるが、この間違いに看護師等が気付いて、事前に重複した採血管を除去したりすることも考えられる。
上記したように一度準備した採血管が、採血準備から検査にかけての一連の作業の間に行方が分からなくなる原因は様々である。
採血前に採血管が無くなったことに気付いた場合には採血前又は採血時に採血管が補充され、採血後に採血管が無くなったことに気付いた場合には採血のし直しが行われることになるが、上記したように病院内での採血管の挙動全体が管理されているわけではないので、必ずしも採血管が無くなっていることが早期に発見されるとは限らず、例えば、採血後の採血管が紛失してしまった場合には検査結果が出る時期が遅れるという問題がある。さらに、無くなった採血管がどこでどのように処理されているのかを追跡することができないことも問題である。
本発明は、上記した問題点を解決し、病院等の施設内での採血管の挙動を追跡管理することができる採血管管理システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した目的を達成するために、本発明に係る採血管管理システムは、各採血管に対して患者識別情報に関連付けした個別検体情報を付与して該個別検体情報をICチップに記憶させた無線タグを各採血管に設け、前記無線タグの情報に基づいて移動経路中の採血管の挙動を管理する採血管管理システムであって、採血管の移動経路中に配置された複数の無線タグ用読取装置と、前記無線タグ用読取装置で読み取った個別検体情報と、該個別検体情報を読み取った読取時間とに基づいて移動経路における採血管の動きを監視する管理装置とを備えていることを特徴とする。
好ましくは、前記管理装置は、無線タグ用読取装置から読み取った情報に基づいて、前後の無線タグ用読取装置間の移動時間を算出するように構成され得、かつ、前記移動時間が、所定の閾値より大きい場合に警告を出力するように構成され得る。
また、前記管理装置は、無線タグ用読取装置から読み取った情報を記憶する記憶手段を有し得、記憶手段に記憶された情報に基づいて、過去の無線タグ用読取装置間の移動時間を算出し、算出した過去の移動時間に基づいて前記移動時間の閾値を決定又は更新するように構成され得る。
さらにまた、前記管理装置は、医師からの採血指示取消情報を入力し、前記取消情報を、取り消された採血管の個別検体情報に関連付けして記憶し、前記無線タグ用読取装置から読み取った情報に基づいて取り消された採血管が採血管の移動経路中にあるか否かを検出し、移動経路中にある取り消された採血管を発見した場合には警告を発するように構成され得る。
また、採血管管理システムに、移動経路中にある採血管を除去したことを表す採血管除去情報を入力可能な入力手段を設け、前記管理装置を、前記入力手段を介して入力された採血管除去情報を個別検体情報と関連付けして記憶し、採血管除去情報が入力された採血管については、その後の挙動管理から外すように構成してもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る採血管管理システムは、本発明に係る採血管管理システムは、各採血管に対して患者識別情報に関連付けした個別検体情報を付与して該個別検体情報をICチップに記憶させた無線タグを各採血管に設け、前記無線タグの情報に基づいて移動経路中の採血管の挙動を管理する採血管管理システムであって、採血管の移動経路中に配置された複数の無線タグ用読取装置と、前記無線タグ用読取装置で読み取った個別検体情報と、該個別検体情報を読み取った読取時間とに基づいて移動経路における採血管の動きを監視する管理装置とを備えているので、採血管が施設内のどこを何時、通過したか管理することができるので、採血管の施設内での挙動を正確に追跡管理することが可能になり、例えば、採血管が途中で紛失した場合でも、どの場所からどの場所に移動する間に何時に紛失したかを特定することが可能になる。
前記管理装置を、無線タグ用読取装置から読み取った情報に基づいて、前後の無線タグ用読取装置間の移動時間を算出するように構成し、かつ、前記移動時間が、所定の閾値より大きい場合に警告を出力するように構成することにより、想定以上に移動に時間がかかっている採血管を早期に発見することができるようになる。これにより、採血管の紛失等も早期に発見することができるようになり、その後の対応を早めることができるようになる。
また、前記管理装置に、無線タグ用読取装置から読み取った情報を記憶する記憶手段を設け、記憶手段に記憶された情報に基づいて、過去の無線タグ用読取装置間の移動時間を算出し、算出した過去の移動時間に基づいて前記移動時間の閾値を決定又は更新するように構成することにより、当該システムを導入した施設の状況に応じて最適な採血管の管理を行うことが可能になる。
さらにまた、前記管理装置を、医師からの採血指示取消情報を入力し、前記取消情報を、取り消された採血管の個別検体情報に関連付けして記憶し、前記無線タグ用読取装置から読み取った情報に基づいて取り消された採血管が採血管の移動経路中にあるか否かを検出し、移動経路中にある取り消された採血管を発見した場合には警告を発するように構成することにより、医師が取消た不要な採血管を使って間違って採血をすることがなくなるので、患者への負担が軽減する。
また、採血管管理システムに、移動経路中にある採血管を除去したことを表す採血管除去情報を入力可能な入力手段を設け、前記管理装置を、前記入力手段を介して入力された採血管除去情報を個別検体情報と関連付けして記憶し、採血管除去情報が入力された採血管については、その後の挙動管理から外すように構成することにより、何等かの問題で移動経路から外された採血管も管理することが可能になるため無駄な経費を極端に抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る採血管管理システムの概略ブロック図である。
図2】採血管の別の移動経路を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面に示した実施例を参照しながら本発明に係る採血管管理システムの実施の形態を説明していく。
図1は本発明に係るシステムの概略構成図を示している。
本発明に係るシステムは、
採血管の移動経路中に設けられた複数の無線タグ用読取装置Sと、
該無線タグ用読取装置Sからの情報に基づいて採血管の移動経路における採血管の挙動を管理する管理装置1と
を備えている。
図1に示した実施例では、採血管は、採血管準備室A、採血場B、病棟C、検査室D及び使用済採血管保管室Eの間で受け渡しが行われる。具体的には、採血管の移動経路は、「採血管準備室A、採血場B、検査室D及び使用済採血管保管室E」又は「採血管準備室A、病棟C、検査室D及び使用済採血管保管室E」である。
採血管準備室A、採血場B、病棟C、検査室D及び使用済採血管保管室Eの各室の出入口には、それぞれ無線タグ用読取装置S1〜S5が設けられており、採血管が各室から出し入れされる時には必ず、その室に設けられた読取装置S1〜S5によって各採血管に貼り付けられた無線タグから、各採血管の個別検体情報が読み取られる。
管理装置1は、各読取装置S1〜S5から送られてくる個別検体情報を「読み取った時間」と関連付けして記憶する。
ここで「読み取った時間」は、各読取装置S1〜S5が実際に個別検体情報を読み取った時間でもよいし、各読取装置S1〜S5を管理装置1が受信した時間でもよい。
この「読み取った時間」は、各採血管が、処置室A〜Dから払い出された時間、又は処置室B〜Eに受け取られた時間である。
【0009】
図中符号2は医師が使用するパソコンを示しており、医師はこのパソコン2を用いて、管理装置1に患者の検査のために必要な検査情報を送る。
管理装置1は、医師から送られてきた検査情報に基づいて、患者の検査に必要な採血管を決め、採血管毎に個別検体情報を付与する。
管理装置1は、前記個別検体情報を含む検査情報を採血管準備室Aにある採血管自動準備装置3に送る。
前記検査情報は、その患者の患者識別情報と、その患者の検査に必要な採血管の種類と、各採血管に付された個別検体情報とが含まれており、これらの情報は関連付けされている。
また、管理装置1は、検査を受けるべき患者に関する情報に基づいて、準備した採血管の移動経路を判別して、移動経路情報を採血管の個別検体情報に関連付けして記憶する。
具体的には、例えば、
検査を受けるべき患者が外来で診察を受けにきた患者である場合には、その採血管は経路X(採血管準備室A、採血場B、検査室D及び使用済採血管保管室E)を通ると判別し、
検査を受けるべき患者が入院中の患者である場合には、その採血管は経路Y(採血管準備室A、病棟C、検査室D及び使用済採血管保管室E)を通ると判別する。入院中の患者の検査の場合には、具体的には、病棟にある看護師室に準備した採血管が入れられ、看護師室から各病室へ採血管を運んで採血を行い、採血後の採血管は再び看護師室に集められた後、看護師室から検査室Dに送られるが、この実施例では、これらの流れ全体を含めて病棟Cとして説明する。限定するわけではないが、病棟Cの場合、読取装置S3は看護師室に設けることができる。
【0010】
採血管自動準備装置3は、
複数の種類の採血管を採血管の種類毎に分けて採血管収容部に収容し、
管理装置1から送られてくる検査情報に基づいて採血管収容部から必要な採血管を取出し、かつ、無線タグ付ラベルに患者識別情報及び個別検体情報を印字し、かつ、無線タグにこれらの情報を書き込んだ後、対応する採血管に当該ラベルを貼り付け、
ラベル貼付後の採血管を患者毎にトレイや袋等に収容するように構成されている。
採血管自動準備装置3で準備された採血管は、その患者が外来の患者である場合には採血場のある採血室Bへ、その患者が入院患者である場合には病棟Cへ送られるのであるが、採血管準備室Aを出る時に採血管準備室Aに設けられた読取装置S1によって、各採血管に貼り付けられたラベルの無線タグに記憶された個別検体情報が読み取られる。
読取装置S1は、各採血管の無線タグから読み取った個別検体情報を管理装置1に送り、管理装置1では、当該個別検体情報に対応する採血管が、何時、採血管準備室Aから出されたかを記憶する。
【0011】
採血管が次の処置室(この実施例の場合には、採血場B又は病棟C)で受け取られる時に、処置室B又はCに設置された読取装置S2又はS3によって、再び、各採血管に貼り付けられたラベルの無線タグに記憶された個別検体情報が読み取られる。
読取装置S2又はS3は、各採血管の無線タグから読み取った個別検体情報を管理装置1に送る。
管理装置1は、読取装置S2又はS3から受け取った個別検体情報に基づいて、当該個別検体情報に対応する採血管が、何時、採血場B又は病棟Cに入ったかを記憶する。
【0012】
採血場B又は病棟Cでは、受け取った採血管を利用して採血が行われる。採血を行う時に採血作業者は、各採血管が、実際に採血すべき患者に対応するものであるか否かの照合を行うが、好ましくは、この照合情報も管理装置1に送られる。
これにより、管理装置1は、どの採血管が何時、採血に供されたかを記憶することができる。
採血後の採血管は採血場B又は病棟Cから検査室Dに送られるが、採血場B又は病棟Cから出る時に、処置室B又はCに設置された読取装置S2又はS3によって、各採血管に貼り付けられたラベルの無線タグに記憶された個別検体情報が読み取られる。
読取装置S2又はS3は、各採血管の無線タグから読み取った個別検体情報を管理装置1に送る。
管理装置1は、読取装置S2又はS3から受け取った個別検体情報に基づいて、当該個別検体情報に対応する採血管が、何時、採血場B又は病棟Cを出たかを記憶する。
【0013】
採血管が次の処置室(この実施例の場合には、検査室D)で受け取られる時に、処置室Dに設置された読取装置S4によって、再び、各採血管に貼り付けられたラベルの無線タグに記憶された個別検体情報が読み取られる。
読取装置S4は、各採血管の無線タグから読み取った個別検体情報を管理装置1に送る。
管理装置1は、読取装置S4から受け取った個別検体情報に基づいて、当該個別検体情報に対応する採血管が、何時、検査室Dに入ったかを記憶する。
【0014】
検査室Dで検査後の採血管は、検査室Dから使用済採血管保管室Eに送られる。
この時も、検査室Dから出される時に読取装置S4によって採血管の無線タグから個別検体情報が読み取られ、使用済採血管保管室Eに入れられる時も、同室Eに設けられた読取装置S5によって採血管の無線タグから個別検体情報が読み取られる。
読み取られた個別検体情報は管理装置1に送られ、これにより、管理装置1は、何時、採血管が検査室Dから出され、使用済採血管保管室Eに入れられたかを記憶する。
【0015】
上記したように管理装置1には、採血管が移動経路中で移動する度に、採血管の移動経路中に設置された読取装置S1〜S5によって読み取られた採血管の個別検体情報が送られてくるので、管理装置1では、移動経路中の採血管の挙動を逐一把握することが可能になり、例えば、移動経路中のどこかで何等かの理由で採血管が紛失又は除かれた場合には、何時、どこで、どのような状態にある採血管が紛失又は除かれたかを確認することが可能になる。
【0016】
(キャンセル管理)
また、管理装置1には、医師からの各採血管に対する取消情報が入力され得る。管理装置1は取消情報が入力された場合は、当該取消情報を対応する採血管の個別検体情報と関連付けして記憶する。
管理装置1は、上記したように移動経路中の採血管の挙動を採血管毎に把握することができるので、医師によって取り消された採血管が、移動経路中で移動している場合には、それを検知することができる。
管理装置1は、取消情報が入力された採血管の個別検体情報が読取装置S1〜S5から入力された場合には、不要な採血管が移動経路中を移動していると判断して、警告情報を出力することができるように構成されている。
この警告情報は、読取装置S1〜S5に対して出力するように構成され得る。この場合、読取装置S1〜S5は、何等かの表示手段を有し、該表示手段を介して、警告情報に基づいて不要な採血管が含まれていることを使用者に表示するように構成され得る。前記表示手段は、読取装置S1〜S5とは別体であってもよいが、使用者が読取装置S1〜S5で採血管から個別検体情報を読み取っている時に、使用者が視認することができる位置に設けられていることが望ましい。また、表示手段は、好ましくは、単に不要な採血管が含まれていることを表示だけではなく、使用者が不要な採血管を識別することができる個別検体番号等を表示するように構成され得る。
【0017】
さらに、各処置室A〜Eには、不要な採血管を取り除いた時に、採血管除去情報を入力することができる除去情報入力手段が設けられ得る。この除去情報入力手段は、医師からの取消情報等に基づいて、又は、看護師等の経験に基づいて発見した間違いに基づいて、看護師等が準備された採血管を除去した時に、除去した採血管の個別検体情報と関連付けして採血管除去情報を入力することができるように構成され得る。
入力された採血管除去情報は管理装置1に送られ、管理装置1は、当該採血管除去情報を対応する採血管の個別検体情報と関連付けして記憶する。
管理装置1は、採血管除去情報が入力された時に、対応する個別検体情報に対して、医師からの取消情報を入力されているか否かを照合し、医師からの取消情報が入力されていない採血管に対して採血管除去情報が入力された場合には、その旨を医師及び/又は看護師等に表示することができるように構成され得る。これにより、必要な採血管が除去されてしまうことを防止し、かつ、必要に応じて医師が採血指示を再度入力することが可能になる。
【0018】
上記したように取消情報及び採血管除去情報を入力することにより管理装置1は、移動経路中での採血管の挙動を完全に把握することが可能になる。
即ち、採血管除去情報が入力されていないにも拘わらず、途中で個別検体情報が入力されなくなった採血管は、何等かの原因で処置室に止まっているか、又は紛失されたということになる。
【0019】
(移動経路に基づく採血管の挙動管理)
管理装置1は、医師からの検査情報、読取装置S1〜S5から入力される検知情報(個別検体情報及び検知時間を含む)、移動経路情報、取消情報及び採血管除去情報に基づいて、採血管の挙動管理を行う。
即ち、管理装置1は、読取装置S1〜S5から入力される検知情報に基づいて、医師から検査情報に基づいて準備された採血管が、その移動経路を順当に移動しているか否かを検知し、必要に応じて警告等を出力する。
具体的には、移動経路情報に応じた読取装置S1〜S5の順番及び順番が前後する読取装置間の移動時間の初期値を予め入力しておき、
採血管が決められた順に動いていない時、例えば、移動経路がS1、S2、S3及びS5である採血管の個別検体情報が、読取装置S1で読み取られた後に、読取装置S2で読み取られずに、読取装置S3で読み取られた場合等に警告を出力し、
また、採血管が決められた時間を超えても次の処理室に移動しない時、例えば、読取装置S1で読み取られた個別検体情報が、所定の時間経過しても読取装置S2で読み取られない場合等に警告を出力し得る。
前記管理装置1からの警告情報は、管理装置1内でログとして記憶され得、また、前記した適当な表示手段を介して使用者に表示され得る。
【0020】
(学習)
管理装置1は、日々の検体の移動時間データを蓄積して、定期的に蓄積したデータに基づいて導入された施設における検体の最適な移動時間を算出して、読取装置間の移動時間の値を更新するように構成され得る。
これにより、導入された施設に応じた検体の挙動管理が可能になる。
【0021】
本実施例では、管理装置が、検体の挙動管理のために移動経路情報を使用しているが、この情報は必須ではない。導入する施設に応じて、必要に応じて使用され得る。
上記した実施例では、医師からの取消情報及び看護師等による採血管除去情報が使用されているが、この情報は必須ではなく、導入する施設に応じて必要に応じて使用され得る。
上記した実施例では、処置室として採血管準備室A、採血場B、病棟C、検査室D及び使用済採血管保管室Eが挙げられているが、処置室の種類や数は本実施例に限定されることなく、使用する施設に応じて任意に設定され得る。具体的には、入院施設がない病院では病棟はなく、また、採血管準備室と採血場とが同じ室内にある施設では、これらの処置室は一つにまとめられ、さらに、血液検査を外部の検査機関が行う施設の場合には検査室はなく、さらにまた、採用済採血管保管室がない施設では処置室Eはない。
本実施例では、採血管に無線タグ付ラベルを貼り付け、そのラベルの無線タグを用いて情報の書き込む及び読み取りが行われているが、これは本実施例に限定されることなく、例えば、採血管に直接無線タグが設けられている場合には、その無線タグを用いて情報の書き込み及び読み取りを行うことができる。
本実施例では、各処置室に読取装置を設けているが、読取装置を設ける場所は導入する施設に応じて任意に決めることができる。
本実施例では、無線タグタグを用いて各採血管の個別検体情報を読み取っているので、バーコードのように一本ずつデータを読み取る必要がないため、データ管理が容易である。
上記した実施例では、各室A〜Eの出入口に無線タグ読取装置S1〜S5を設け、採血管を採血管が各室から出し入れされる時には必ず、その室に設けられた読取装置S1〜S5によって各採血管に貼り付けられた無線タグから、各採血管の個別検体情報を読み取るように構成しているが、無線タグ読取装置を設ける位置は本実施例に限定されることなく、採血管の移動経路中であれば任意の位置でよく、例えば、一つの処置室内に複数設けてもよく、また、各室間の通路等に設置してもよい。
また、本発明に係る無線タグ用読取装置は、読取専用の装置である必要はない。例えば、採血時に採血管と患者とを照合する場合には、その照合装置において採血管の無線タグから個別検体情報の読み取りを行う。管理装置1は、このような場合でも、照合装置で読み取った無線タグの個別検体情報を受信し、移動経路中における採血管の動きを監視する情報として使用する。従って、この場合には照合装置が本発明に係る無線タグ用読取装置として機能する。また、例えば、採血後の採血管を自動的に仕分けする仕分け装置を使用する場合、仕分け装置は、採血管を仕分けるために無線タグから個別検体情報の読み取りを行う。この場合も、仕分け装置によって読み取られた個別検体情報は管理装置1にも送られる。従って、この場合は仕分け装置が本発明に係る無線タグ読取装置として機能する。このように本発明に係る無線タグ用読取装置は、読取専用の装置である必要はなく、仕分けや照合のために用いる装置であっても、無線タグから情報を読み取る装置であれば、本発明に係る無線タグ用読取装置として機能し得る。
上記した実施例では、採血管準備室A内に採血管自動準備装置3が設置されているが、これは本実施例に限定されることなく、情報が書き込まれた無線タグ付ラベルを看護師等が採血管に手張りして採血管を準備してもよい。
上記した実施例では、「採血管準備室A、採血場B、検査室D及び使用済採血管保管室E」又は「採血管準備室A、病棟C、検査室D及び使用済採血管保管室E」の二つの経路が挙げられているが、採血管の移動経路は本実施例に限定されることなく、施設毎に異なり、例えば、「検診センターFから検査室D」へ受け渡される経路、「臨床検査室センターGから検査室D」に受け渡される経路、又は、「化学療法室Hから検査室D」に受け渡される経路等、様々な経路が考えられる(図2参照)。この場合、各処置室F〜Hにおいて、採血管自動準備装置3を用いて、又は看護師等による手張りで採血管が準備されて採血が行われる。また、各処理室F〜Hには、各々無線タグ用読取装置S6〜S8が設けられ得る。
【符号の説明】
【0022】
A 採血管準備室
B 採血場
C 病棟
D 検査室
E 使用済採血管保管室
S1 採血管準備室Aに設けられた読取装置
S2 採血場Bに設けられた読取装置
S3 病棟Cに設けられた読取装置
S4 検査室Dに設けられた読取装置
S5 使用済採血管保管室Eに設けられた読取装置
X 採血管移動経路(外来患者 A−B−D−E)
Y 採血管移動経路(入院患者 A−C−D−E)

1 管理装置
2 パソコン(医師)
3 採血管自動準備装置

検査情報
患者識別情報
患者の検査に必要な採血管の種類
個別検体情報

取消情報(医師が取消)
採血管除去情報(移動経路中に看護師等が除去)

図1
図2