特許第6501478号(P6501478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6501478
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】防水シート固定具
(51)【国際特許分類】
   E04D 5/14 20060101AFI20190408BHJP
   E04D 11/00 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   E04D5/14 J
   E04D5/14 F
   E04D11/00 J
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-207395(P2014-207395)
(22)【出願日】2014年10月8日
(65)【公開番号】特開2016-75109(P2016-75109A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000178619
【氏名又は名称】アーキヤマデ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雅史
【審査官】 五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−136892(JP,A)
【文献】 特開昭57−107417(JP,A)
【文献】 特開2013−177737(JP,A)
【文献】 米国特許第04862664(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 5/00− 5/14
E04D 11/00−11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水下地の上に敷設した板状の断熱部材に沿って設けられる防水シートを、前記防水下地に固定する防水シート固定具であって、
前記断熱部材に挿入された状態で前記防水下地に固定される第1部材と、
前記第1部材の上端部に対して前記防水下地に直交する軸芯周りに相対回転自在に連結されると共に、前記断熱部材の上面に沿って配置されて前記防水シートが固定される第2部材とを備え、
前記第1部材は、前記第1部材を前記防水下地に固定するネジ部材を挿通可能な筒状部材で構成してあり、
前記第1部材の筒内部の下端部に、前記ネジ部材の拡径頭部をネジ軸芯周りに回転自在に受け止めるネジ支持部が設けてあり、
前記第1部材は、前記第1部材の筒内部に挿入した前記ネジ部材の螺進によって前記断熱部材内に進入させられるように構成され、且つ、前記第1部材と前記ネジ部材との供回りを防止する供回り防止手段が設けてあり、
前記供回り防止手段は、前記第1部材の外周部から径方向外側に向かって突出する状態に設けられた翼部であり、
前記翼部は、前記第1部材を前記防水下地へ取り付けた状態において、前記防水下地に当接するように形成してある防水シート固定具。
【請求項2】
前記第1部材の下端部は、下端側ほど小径となる砲弾形状に形成してあり、前記翼部は、砲弾形状部分の外周部に設けてある請求項に記載の防水シート固定具。
【請求項3】
前記翼部は、前記第1部材の周方向に間隔をあけた複数個所に形成してある請求項1又は2に記載の防水シート固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水下地の上に敷設した板状の断熱部材に沿って設けられる防水シートを、前記防水下地に固定する防水シート固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の防水シート固定具としては、防水下地の上に敷設した板状の断熱部材に上方から挿入された状態で防水下地に固定される第1部材と、断熱部材の上面に沿って配置される防水シートを固定すると共に、第1部材の上端部に対して係合自在な第2部材とを備えたものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
第1部材は、第1部材を防水下地に固定する金属製のネジ部材を挿通可能な合成樹脂製の筒状部材で構成してあり、その筒内部の下端部に、ネジ部材の拡径頭部をネジ軸芯周りに回転自在に受け止めるネジ支持部が設けてある。また、筒外部の上端部は、拡径頭部として形成してある。
第2部材は、中央部に第1部材を挿通自在な挿通孔を形成した円板状部材で構成してあり、挿通孔の周囲は、第1部材の拡径頭部が納まる座繰り部として構成してある。
【0004】
従って、第2部材の座繰り部に、第1部材の拡径頭部が重なることで両者は係合でき、、例えば、第2部材に上向きの力が作用しても、第1部材が防水下地に固定されてさえいれば、両者の係合力によって第2部材の浮き上がりを阻止することができる。
因みに、第2部材に作用する上向きの力は、例えば、第2部材に固定された防水シートが、風等によって揚力を受けた場合に作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−136892号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の防水シート固定具を、防水下地に取り付ける方法の一例としては、断熱部材に第1部材を挿入する為の挿通穴を予め形成しておき、その上に円板状の第2部材を置いた状態で、第2部材の挿通孔を通して第1部材を断熱部材の挿通穴に挿入し、第1部材の筒内部にネジ部材を挿通して締め込むことで防水下地に固定する方法が例として挙げられる。
この設置方法によれば、断熱部材に予め挿通孔を形成しておく工程と、挿通孔に第1部材を建て込んでネジ部材で防水下地に締結する工程との二工程に分かれ、設置作業に手間がかかり易かった。
【0007】
そこで、この方法の設置手間の軽減を図るために、ネジ部材を予め第1部材に挿通しておき、そのままネジ部材を断熱部材から防水下地に向けて螺進させることで、第1部材とネジ部材とを一工程で断熱部材の中へ進入させながら防水下地に固定する設置方法が考えられる。
【0008】
しかし、この設置方法を採用した場合、ネジ部材の螺進に伴って、その拡径頭部と、拡径頭部を回転自在に受け止める第1部材のネジ支持部との間に大きな摩擦力が作用し、その摩擦熱によって樹脂製の第1部材が変形したり変質してしまう虞がある。
従って、この設置方法では安定した状態に設置することが困難となり、結果的には、手間が掛かっても、上述の二工程に分かれた設置方法を採用せざるを得ない。
【0009】
次に、第1部材とネジ部材とを一工程で断熱部材に進入させる上述の設置方法によって、ネジ部材とネジ支持部との間に大きな摩擦力が作用し易くなることに関して説明する。
即ち、第1部材は、ネジ部材を回転させることで、互いの当接面間に作用する静止摩擦力によって、一緒に回転しようとする。また、それと同時に、第1部材は、断熱部材との当接面間に作用する動摩擦力によって回転が阻止される。
そして、これらの静止摩擦力と動摩擦力との大小関係が変化するに伴って、第1部材は、回転と停止とを繰り返すような動きとなることがある。
このような状況下においては、ネジ部材とネジ支持部との両当接面間には、最大静止摩擦力が頻繁に作用することになる。
【0010】
静止摩擦力と動摩擦力とは、次のような関係式が成り立ち、
静止摩擦力(F)=静止摩擦係数(μ)×垂直抗力(N)
動摩擦力(F’)=動摩擦係数(μ’)×垂直抗力(N)
一般的には、当接面間どうしが面に沿ってずれる直前に、最大静止摩擦力が作用し、この値は、動摩擦力よりも大きな値となる。また、摩擦力が大きいほど、発生する摩擦熱量も大きくなる。
【0011】
よって、ネジ部材とネジ支持部との両当接面間は、繰り返し作用する最大静止摩擦力による大きな摩擦熱に曝されることになり、第1部材の合成樹脂部分が溶融し、変形したり変質することになる。
【0012】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、設置手間の軽減を図れながら、第1部材のネジ支持部とネジ部材との両当接面間に最大静止摩擦力が発生するのを抑制できる防水シート固定具を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の特徴は、防水下地の上に敷設した板状の断熱部材に沿って設けられる防水シートを、前記防水下地に固定する防水シート固定具であって、前記断熱部材に挿入された状態で前記防水下地に固定される第1部材と、前記第1部材の上端部に対して前記防水下地に直交する軸芯周りに相対回転自在に連結されると共に、前記断熱部材の上面に沿って配置されて前記防水シートが固定される第2部材とを備え、前記第1部材は、前記第1部材を前記防水下地に固定するネジ部材を挿通可能な筒状部材で構成してあり、前記第1部材の筒内部の下端部に、前記ネジ部材の拡径頭部をネジ軸芯周りに回転自在に受け止めるネジ支持部が設けてあり、前記第1部材は、前記第1部材の筒内部に挿入した前記ネジ部材の螺進によって前記断熱部材内に進入させられるように構成され、且つ、前記第1部材と前記ネジ部材との供回りを防止する供回り防止手段が設けてあり、前記供回り防止手段は、前記第1部材の外周部から径方向外側に向かって突出する状態に設けられた翼部であり、前記翼部は、前記第1部材を前記防水下地へ取り付けた状態において、前記防水下地に当接するように形成してあるところにある。
【0014】
本発明によれば、ネジ部材を第1部材の筒内部に挿入して螺進させ、ネジ部材と第1部材とを一緒に断熱部材内に進入させて、防水下地に固定することができる。
また、供回り防止手段を設けてあるから、ネジ部材と第1部材とを断熱部材内に進入させる際、第1部材とネジ部材との供回りを防止できる。即ち、ネジ部材を螺進させても、第1部材は回転しない状態で断熱部材内に進入させることができる。
【0015】
従って、ネジ部材の螺進中においては、第1部材のネジ支持部とネジ部材の拡径頭部との当接面間には動摩擦力が作用し続けることになる。よって、大きな摩擦熱を伴う最大静止摩擦力が、ネジ支持部とネジ部材との両当接面間に作用することを抑制できる。
以上の結果、第1部材とネジ部材とを一工程で断熱部材に進入させて設置する能率的な設置方法を採用できながら、ネジ部材とネジ支持部との当接面間に発生する摩擦熱を抑制でき、第1部材が熱で変形したり変質しない状態に設置できるようになる。
【0016】
【0017】
また、本構成によれば、第1部材に翼部を設けたことによって、断熱部材の中へ第1部材が進入した状態での互いの当接面積を、より大きく確保することができる。
断面部材に対する第1部材の当接面積をより大きく確保できると、互いの当接面間に作用する抗力や摩擦力等も大きくなり、それらの力が、第1部材の回転に対する抵抗力となり、ネジ部材との供回りを、より強力に防止することができる。
【0018】
更には、翼部は、第1部材の外周部から径方向外側に向かって突出する状態に設けられているから、回転に対する抵抗モーメントを、翼部によって最大限に確保することができ、より確実に、供回りを防止することができる。
その結果、ネジ部材の螺進に伴って、第1部材とネジ部材との間には、動摩擦力は作用するものの、最大静止摩擦力は作用し難くなる。
【0019】
本発明においては、前記第1部材の下端部は、下端側ほど小径となる砲弾形状に形成してあり、前記翼部は、砲弾形状部分の外周部に設けてあると好適である。
【0020】
本構成によれば、第1部材の下端部を砲弾形状に形成してあるから、第1部材とネジ部材とを断熱部材に進入させる時に作用する先端抵抗を少なくでき、よりスムーズに進入させることができる。
また、翼部を砲弾形状部分の外周部に設けてあるから、小径の部分を有効に利用して翼部を設けることができ、第1部材が必要以上に大径化するのを防止できる。そして、翼部は第1部材の下端側に位置するから、第1部材を断熱部材に進入させる初期の段階から、翼部が断熱部材中に進入して供回り防止作用を発揮させることができる。
【0021】
本発明においては、前記翼部は、前記第1部材の周方向に間隔をあけた複数個所に形成してあると好適である。
【0022】
本構成によれば、第1部材の周方向に間隔をあけた複数個所にそれぞれ翼部を設けてあるから、一個所のみに設けてあるものに比べて、より高い供回り防止力を発揮することができる。
また、一個所のみに翼部を設けてあるものに比べて、複数の翼部それぞれをコンパクトに形成しても同様の供回り防止力を発揮することが可能であるから、第1部材全体として嵩張らないように設計できる。その結果、ネジ部材と共に断熱部材に進入させる時の抵抗を少なくでき、スムースに設置することができるようになる。
【0023】
また、第1部材を防水下地へ取り付けた状態においては、翼部が防水下地に当接しているから、第1部材の設置姿勢が安定したものとなる。即ち、当該防水シート固定具そのものを安定した状態に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】防水シート固定具の設置状況を示す一部切欠斜視図である。
図2】防水シート固定具の分解斜視図である。
図3】防水シート固定具の設置状況を示す断面図である。
図4】防水シート固定具の設置状況を示す断面図である。
図5】防水シート固定具の作用状況を示す断面図である。
図6】別実施形態の防水シート固定具の設置状況を示す断面図である。
図7】別実施形態の防水シート固定具の設置状況を示す断面図である。
図8】別実施形態の防水シート固定具の要部を示す斜視図である。
図9】別実施形態の防水シート固定具の要部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1は、本発明の防水シート固定具の一実施形態品(以後、単にシート固定具という)Pを使用して、屋根下地(防水下地の一例)1の上の断熱板(断熱部材の一例)14に沿って設けられた防水シート2を固定している状況を示している。
【0027】
屋根下地1は、折半屋根等の金属製屋根で構成してあり、その上に、発泡樹脂製の断熱板14が配設され、屋根の断熱化が図られている。
【0028】
防水シート2は、例えば、塩化ビニル系等の合成樹脂製シートで構成されている。
【0029】
シート固定具Pは、図2図3に示すように、外形形状が円板状に形成してあり、屋根下地1の上に、横間隔をあけて点在させてあり、それぞれは、ネジ部材3で屋根下地1に固定されている。
また、シート固定具Pの上面には、屋根一面に配置される防水シート2の下面が接着される。
【0030】
シート固定具Pは、図2に示すように、断熱板14に挿入された状態で屋根下地1に固定自在な第1部材P1を設け、第1部材P1の上端部に対して連結されると共に、断熱板14の上面に沿って配置されて防水シート2が固定される第2部材P2とを備えて構成してある。
また、第1部材P1と第2部材P2とは、屋根下地1に直交する方向(当該実施形態では上下方向)に沿う軸芯(ネジ軸芯に相当)X周りに相対回転自在に連結されている。
【0031】
第1部材P1は、本体部分を、筒部材(筒状部材に相当)18によって形成してあり(図2参照)、且つ、断熱板14を上下に貫通する状態に設置できるように構成されている。また、第1部材P1は、筒部材18の筒内部に挿通させたネジ部材3を屋根下地1に螺進させることで固定できるように構成されている。
筒部材18は、設置された状態で断熱板14より上方に位置する金属筒部18Aと、その金属筒部18Aに上端が内嵌して下方に延びる樹脂筒部18Bとを備えて構成してある。
【0032】
金属筒部18Aは、金属によって構成してあることで、高い強度や耐摩耗性を期待することができ、第2部材P2との当接部分やその近傍での部材の変形や消耗等を防止し易い。樹脂筒部18Bは、合成樹脂によって構成してあることで、金属よりも熱伝導率が低い特徴を生かして、屋根上と屋根下地1との間のヒートパスの抑制効果を期待できる(図3参照)。その結果、屋根下地1下方側における空調効率の低下防止を図れるようになる。
また、金属筒部18Aと樹脂筒部18Bとは、軸芯X周りに相対回転しない状態に一体に組み付けられている。
【0033】
金属筒部18Aは、上端部が、後述する第2部材P2の座繰り部16上に当接自在な上縁鍔部17として構成してある。また上縁鍔部に隣接して、下端側に二箇所の段差部19が設けられている(図3参照)。
【0034】
上端側の段差部19aには、金属リング部材20が外嵌させてある。この構成により、第1部材P1に対して第2部材P2が、軸芯X周りに回転する際に、第2部材P2の座繰り部16の内周縁部を、金属リング部材20の僅かな外周面で摺接支持することで、低摩擦状態で滑らかに回転を許容しながら偏心防止を図ることが可能となっている。
【0035】
下端側の段差部19bには、合成樹脂製の環状板13が外嵌させてある。
この環状板13を設けてあることで、第1部材P1と第2部材P2との外れ止めとなるほか、断熱板14の表面に付着物等による突起があっても、その突起の上に環状板13が乗り上げた状態に位置するから、突起と第2部材P2とが直接的に当接して回転の障害になるのを防止できる。
【0036】
尚、環状板13は、図2図3に示す例では、その外径寸法を、第2部材P2の外径より僅かに小さく設定してある。
また、図6に示すように、環状板13の外径寸法を、第2部材P2の外径寸法以上に設定してあってもよい。この場合は、第2部材P2の全域を、環状板13によって保護することができ、第1部材P1に対する第2部材P2の軸芯X周りの回転をスムーズにサポートすることができる。
この環状板13の上面を滑らかに仕上げておくことで、上に重なる第2部材P2との摩擦抵抗を低減することができ、第2部材P2の回転を、よりスムーズにサポートできるようになる。環状板13の素材としては、合成樹脂製をはじめ、金属製であってもよい。
【0037】
樹脂筒部18Bは、筒上端から筒内部にネジ部材3の一例である皿ビスを挿通させて締め付けることで、筒底部(ネジ支持部に相当)4がネジ部材3の拡径頭部3aの下面と屋根下地1とに挟まれる状態となって固定できるように構成されている。
ネジ部材3と樹脂筒部18Bとの関係は、筒底部4の上面にネジ部材の拡径頭部3aの下面が当接した状態では、ネジ部材3は、軸芯X周りに回転自在な状態で筒底部4に支持されている。
【0038】
因みに、筒底部4の上面4aは、ネジ部材3の拡径頭部3aの下面3bの皿形状に沿うように、すり鉢形状に形成してあると共に、ネジ部材3の螺進時に作用する摩擦力を低減できるように、滑らかに仕上げてある(図3参照)。
【0039】
また、樹脂筒部18Bの外形は、筒の上下中間部から下端部にかけて、下端側ほど小径となる砲弾形状に形成してある。更には、その砲弾形状部18Baの外周部には、筒長手方向に沿うと共に径方向外側に向かって突出する翼部(供回り防止手段Tの一例)18Bbが、周方向に間隔をあけて複数設けてある。当該実施形態においては、周方向に等間隔で三箇所に設けてある。
【0040】
ネジ部材3を屋根下地1に向けて螺進させるに伴って、図4図5に示すように、ネジ部材3の前記下面3bの当接力が筒底部4の前記上面4aに伝わり、第1部材P1が、樹脂筒部18Bの下端部から断熱板14に食い込みながら進入する。その際、砲弾形状部18Baが設けてあるから先端抵抗の少ない状態で進入させることができる。また、翼部18Bbが設けてあるから、第1部材P1がネジ部材3の回転に伴って軸芯X周りに供回りしようとするのを、断熱板14に食い込んだ翼部18Bbの回転阻止力によって防止することができる。更には、翼部18Bbの誘導作用によって、第1部材P1を軸芯X方向に真直ぐの状態で断熱板14内に進入させることができる。
【0041】
このように、ネジ部材3を螺進させても、第1部材P1は回転しないから、筒底部4の上面4aの上で、ネジ部材3は、回転自在に支持されながら屋根下地1に進入していく。
よって、拡径頭部3aの下面3bと、前記上面4aとの間には動摩擦力が作用するだけで、摩擦熱量が大きな最大静止摩擦力が作用するのを未然に防止することができる。従って、発生熱で樹脂筒部18Bが熱変形したり熱変質するのを防止し易くなる。
当該実施形態においては、前記翼部18Bbによって、供回り防止手段Tが構成されている。
【0042】
第2部材P2は、図2に示すように、平面視中央部に円形穴15を備えた環状板として構成してあり、その円形穴15に面する内周縁部は、第1部材P1の上縁鍔部17を回転自在に支持する座繰り部16として一段低く形成してある。
第2部材P2の外周部は、屋根下地1側へ屈曲させてある。
第2部材P2の上面部は、防水シート2を接着するための接着部9として構成されている。
具体的な接着部9の一例を示すと、ポリエステル系、エチレン酢酸ビニル系、合成ゴム系、オレフィン系等の接着剤からなるホットメルト接着層によって構成することができる。このホットメルト接着層としては、融点が70〜160℃のものが施工的に好ましい。
【0043】
接着部9をホットメルト接着層で構成する場合は、上に防水シート2を配置した状態で、その上から電磁誘導加熱装置等によって第2部材P2を加熱してホットメルト接着層を溶融させることで防水シート2を第2部材P2に接着することができる。
【0044】
次に、当該シート固定具Pを使用した防水シート2の設置について説明する。
[1]屋根下地1の上に、断熱板14を敷設しておく。
【0045】
[2]第1部材P1と第2部材P2とが一体に組み付けられた当該シート固定具Pを、断熱板14上の所定位置に直立状態に配置して、筒内部にネジ部材3を使用して屋根下地1に固定する。
その際、第1部材P1の筒上端から筒内部にネジ部材3を挿通させて締め付ける。
ネジ部材3は、断熱板14内を下降し、屋根下地1に食い込んで更に下降する。
螺進を進めると、やがて拡径頭部3aが筒底部4に当接して、シート固定具Pを断熱板14内に食い込ませる(図4参照)。
筒底部4が屋根下地1に達するまでネジ部材3を螺進させるとシート固定具Pの設置が完了する(図5参照)。
【0046】
[3]同様に、他の箇所にもシート固定具Pを設置する。
【0047】
[4]各シート固定具Pの上から防水シート2を被せ、防水シート2の上方から、電磁誘導加熱装置等によってシート固定具Pの第2部材P2を加熱することで接着部9のホットメルト接着層を溶融させて接着固定する(図3参照)。
【0048】
以上のような防水シート固定状態においては、屋根下地1に固定された第1部材P1に対して、第2部材P2が軸芯X周りに回転自在であるから、例えば、風の揚力で防水シート2が持ち上げられて波立つような場合でも、シート固定具Pにおける第2部材P2の回転によって、防水シート2の動きに追従して無理なく支持することができる(図3参照)。また、第2部材P2に作用する回転力は、第1部材P1や、それを固定しているネジ部材3に伝わり難いから、ネジ部材3を緩ませることも未然に防止できる。
【0049】
また、当該実施形態のシート固定具Pによれば、第1部材P1とネジ部材3とを一工程で断熱板14に進入させて設置する能率的な設置方法を採用できながら、ネジ部材3の回転に伴う第1部材P1の供回りを防止して、互いの当接面間に最大静止摩擦力が作用するのを回避した状態で設置することが可能となる。
従って、当該シート固定具Pを安定した状態に、且つ、効率的に設置することができる。
【0050】
〔別実施形態〕
〈1〉 屋根下地1は、先の実施形態で説明した屋根下地に限るものではなく、例えば、傾斜屋根や、壁等であってもよく、また、それらの構造は、例えば、木造や、鉄骨、デッキプレート等、特に限定されるものではない。
【0051】
〈2〉 防水シート2は、先の実施形態で説明した塩化ビニル系等の合成樹脂製シート材に限るものではなく、公知の他の材料を使用したものであってもよい。
【0052】
〈3〉 接着部9は、先の実施形態で説明したホットメルト接着層で構成することに限るものではなく、公知の他の接着材で構成するものであってもよい。
【0053】
〈4〉 第1部材P1と第2部材P2との軸芯X周りに回転自在な連結機構は、先の実施形態で説明したものに限るものではなく、例えば、ベアリング等を介在させたものであってもよい。
【0054】
〈5〉 第1部材P1、第2部材P2は、先の実施形態で説明した第1部材、第2部材に限るものではなく、形状や寸法等は、適宜、変更することが可能である。
例えば、図7に示すように、第1部材P1は、設置状態で下端部が防水下地1に達しない長さ設定のものであってもよい。このように、第1部材P1と防水下地1との間に間隔を持たせてあることで、例えば、防水シート2の上から防水シート固定具Pの設置部の外周側近傍を踏んでも、防水シート2と防水シート固定具Pとが共に沈み込むことが許容される。従って、断熱部材14が厚み方向に変形し易い素材で構成してある様な場合でも、防水シート固定具Pによって防水シート2を突き上げてしまうことを防止できる。
【0055】
〈6〉 供回り防止手段Tは、先の実施形態で説明した翼部18Bbに限るものではなく、例えば、図8に示すように、筒状部材18の下端面から下方へ突出した複数の突起21で構成してあってもよい。
また、図9に示すように、筒状部材18の外周面に、筒長手方向に沿った突条22を、周方向に間隔をあけて複数設けてあってもよい。
【0056】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
当該防水シート固定具は、防水シートの新設に限らず、改修工事にも利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 屋根下地(防水下地の一例)
2 防水シート
3 ネジ部材
3a 拡径頭部
4 筒底部(ネジ支持部に相当)
14 断熱板(断熱部材の一例)
18 筒部材(筒状部材に相当)
18Bb 翼部(供回り防止手段Tの一例)
P1 第1部材
P2 第2部材
T 供回り防止手段
X 軸芯(ネジ軸芯に相当)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9