【実施例1】
【0025】
<原子力発電プラント>
本発明による実施例に係る廃液処理システムを、原子力発電プラントに適用した場合について、図面を参照して説明する。原子力発電プラントの原子炉は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、一次系全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って二次冷却材と熱交換させることにより蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電する加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。なお、本実施例は、PWRに限らず、これを改良した改良型加圧水型原子炉(APWR:Advanced Pressurized Water Reactor)または沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Rector)に適用することができる。また、放射線取扱い施設にも適用可能である。
【0026】
図8は、本発明の実施例に係る廃液処理システムが適用される原子力発電プラントの一例を模式的に表した概略構成図である。
図8に示すように、原子力発電プラント100は、原子炉111を含む原子炉冷却系(以下、一次系ともいう)112と、原子炉冷却系112と熱交換するタービン系(以下、二次系ともいう)113とを有する。原子炉冷却系112には、原子炉冷却材(一次冷却水)が流通し、タービン系113には、二次冷却材(二次冷却水)が流通している。
【0027】
原子炉冷却系(一次系)112は、原子炉111と、コールドレグ115a及びホットレグ115bを介して原子炉111に接続された蒸気発生器116とを有している。また、ホットレグ115bには、加圧器117が介設され、コールドレグ115aには、原子炉冷却材ポンプ118が介設されている。そして、原子炉111、コールドレグ115a、ホットレグ115b、蒸気発生器116、加圧器117及び原子炉冷却材ポンプ118は、原子炉格納容器119に収容されている。
【0028】
原子炉111は、上記したように加圧水型原子炉であり、その内部は原子炉冷却材(一次冷却水)で満たされている。そして、原子炉111内は、多数の燃料集合体121を収容すると共に、燃料集合体121の燃料棒内の核燃料の核分裂を制御する多数の制御棒122が、各燃料集合体121に対し挿入可能に設けられている。
【0029】
制御棒122により核分裂反応を制御しながら燃料集合体121の燃料棒内の核燃料を核分裂させると、この核分裂により熱エネルギーが発生する。発生した熱エネルギーは原子炉冷却材を加熱し、加熱された原子炉冷却材は、ホットレグ115bを介して蒸気発生器116へ送られる。一方、コールドレグ115aを介して各蒸気発生器116から送られてきた原子炉冷却材は、原子炉111内に流入して、原子炉111内を冷却する。
【0030】
ホットレグ115bに介設された加圧器117は、高温となった原子炉冷却材を加圧することにより、原子炉冷却材の沸騰を抑制している。また、蒸気発生器116は、高温高圧となった原子炉冷却材(一次冷却水)を二次冷却材(二次冷却水)と熱交換させることにより、二次冷却材を蒸発させて蒸気を発生させ、かつ、高温高圧となった原子炉冷却材を冷却している。原子炉冷却材ポンプ118は、原子炉冷却系112において原子炉冷却材を循環させており、原子炉冷却材を蒸気発生器116からコールドレグ115aを介して原子炉111へ送り込むと共に、原子炉冷却材を原子炉111からホットレグ115bを介して蒸気発生器116へ送り込んでいる。
【0031】
原子炉冷却材は、原子炉111と蒸気発生器116との間を循環している。なお、原子炉冷却材は、冷却材及び中性子減速材として用いられる軽水である。
【0032】
タービン系(二次系)113は、蒸気管124を介して各蒸気発生器116に接続されたタービン125と、タービン125に接続された復水器126と、復水器126と各蒸気発生器116とを接続する給水管127に介設された給水ポンプ128と、を有している。そして、上記のタービン125には、発電機129が接続されている。
【0033】
この原子力発電プラント100のタービン系113における一連の動作について説明する。蒸気管124を介して蒸気発生器116から蒸気がタービン125に流入すると、タービン125は回転する。タービン125が回転すると、タービン125に接続された発電機129は、発電を行う。この後、タービン125から排出した蒸気は復水器126に流入する。復水器126は、その内部に冷却管130が配設されており、冷却管130の一方には冷却水(例えば、海水)を供給するための取水管131が接続され、冷却管130の他方には冷却水を排水するための排水管132が接続されている。そして、復水器126は、タービン125から流入した蒸気を冷却管130により冷却することで、蒸気を液体に戻している。液体となった二次冷却材は、給水ポンプ128により給水管127を介して蒸気発生器116に送られる。蒸気発生器116に送られた二次冷却材は、蒸気発生器116において原子炉冷却材と熱交換を行うことにより再び蒸気となる。
【0034】
このような原子力発電プラント100においては、原子炉機器や各種配管など原子炉設備を構成する部材は一般にステンレス鋼や炭素鋼などの鉄鋼材料で製作されている。これら原子炉設備を構成する部材は使用した際に原子炉機器や各種配管など原子炉設備を構成する部材内の表面は高温水(一次冷却水)との接触によって腐食作用を受け、酸化物の皮膜が形成される。皮膜は、放射性同位体(RI)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)などの少なくとも1種類の金属又は酸化物などである。
【0035】
高温水(一次冷却水)に晒される原子炉機器や配管内表面の接液部位に形成される皮膜に炉水中の放射能が取り込まれ、被ばく線源となっている。このような原子炉機器や各種配管など原子炉設備の除染対象物は、本発明の実施例に係る廃液処理システムを用いて除染される。なお、除染とは、原子炉設備の除染対象系統の配管や機器などの除染対象物に付着した放射性物質を除去することをいう。
なお、以下の実施例でも同様の除染対象物であるので、これらの説明は省略する。
【0036】
<第1の除染処理システム>
図1は、実施例1に係る除染処理システムの概略図である。
図1に示すように、本実施例に係る除染処理システム10Aは、除染対象物11を浸漬させた除染槽12に、酸化剤13aと還元剤14aとを順次添加した除染処理水を用い、酸化剤13aによる一次処理水W
1及び還元剤14aによる二次処理水W
2を生成しつつ、前記除染槽12に両端が接続された一次ラインL
1を介して循環処理する除染装置15と、一次ラインL
1から分岐され、二次処理水W
2を導入し、再び一次ラインL
1に戻る二次ラインL
2と、二次ラインL
2に介装され、除染廃水である二次処理水W
2中に溶出した金属イオン放射性核種を除去して、三次処理水W
3を得る除去装置であるカチオン樹脂塔31と、カチオン樹脂塔31通過後の還元剤が残留する三次処理水W
3に、過マンガン酸を供給する過マンガン酸供給部である酸化剤供給部13と、過マンガン酸が供給された三次処理水W
3中の分解生成物の固形物(二酸化マンガン)を分離する分離部41と、を備えるものである。
【0037】
除染槽12には、その内部に除染対象物11が配設されている。
【0038】
酸化剤供給部13は、例えば過マンガン酸水溶液等の酸化剤13aを供給する酸化剤供給ラインL
11と、該酸化剤供給ラインL
11に設けられた酸化剤供給弁V
11とを有している。
【0039】
この酸化剤13aとしては、過マンガン酸(HMnO
4)を用いる以外に、例えば過マンガン酸塩、過鉄酸塩、過酸化水素(H
2O
2)、硝酸とフッ酸との硝フッ酸混合液などの何れか1つ以上含んでいるものが用いられる。過マンガン酸塩としては、具体的には、過マンガン酸カリウム(KMnO
4)が挙げられる。
【0040】
また、酸化剤供給ラインL
11の下流側は、合流ラインL
10に接続されている。この合流ラインL
10には合流ライン弁V
10が設けられており、該合流ラインL
10の下流側は一次ラインL
1に接続されている。
【0041】
この酸化剤供給部13は、例えば過マンガン酸水溶液の酸化剤13aを酸化剤供給ラインL
11、合流ラインL
10及び一次ラインL
1を経由して除染槽12に供給することで、除染対象物11に付着したクロム(Cr)を酸化溶出させて、該クロムが酸化溶出した酸化剤処理水である一次処理水W
1を生成する。
【0042】
還元剤供給部14は、例えば有機酸等の還元剤14aを供給する還元剤供給ラインL
12と、該還元剤供給ラインL
12に設けられた還元剤供給弁V
12とを有している。
【0043】
この還元剤14aとしては、還元作用があり、金属イオンとキレート結合する有機酸などが用いられる。有機酸としては、例えば、シュウ酸(H
2C
2O
4)、クエン酸(C
6H
8O
7)等が挙げられる。なお、硝フッ酸混合液を用いてもよい。また、シュウ酸とクエン酸、または、シュウ酸とピコリン酸(C
6H
5NO
2)等の何れか1つ以上含んでいるものを用いてもよい。
【0044】
この還元剤供給部14は、除染槽12に満たされた一次処理水W
1に、例えばシュウ酸の水溶液を還元剤14aとして還元剤供給ラインL
12、合流ラインL
10及び一次ラインL
1を経由して供給(添加)することで、除染対象物11に付着した鉄を還元溶出させて、該鉄が還元溶出した二次処理水W
2を生成する。
【0045】
一次ラインL
1は、その両端が除染槽12に接続され、該除染槽12中の処理水(過マンガン酸水溶液、一次処理水W
1又は二次処理水W
2)を循環させている。この一次ラインL
1には、上流側から第一弁V
21と、第一ポンプP
1とが設けられている。なお、一次ラインL
1にヒーター(図示せず)を設け、一次ラインL
1を循環する処理水を加熱して、該処理水を高温状態にするようにしてもよい。
【0046】
第一ポンプP
1は、一次ラインL
1内に処理水を循環させるとともに、除染槽12に対して該処理水を供給可能としている。また、一次ラインL
1には、第一ポンプP
1と除染槽12との間に合流ラインL
10が接続されている。
【0047】
二次ラインL
2は、両端が一次ラインL
1に接続され、一次ラインL
1を一部バイパスするように接続されており、除染槽12中の処理水(例えば、二次処理水W
2)を循環させている。この二次ラインL
2には、上流側から第二弁V
22と、第二ポンプP
2とが設けられている。
【0048】
また、二次ラインL
2には、カチオン樹脂を充填したカチオン樹脂塔31が設けられ、一次ラインL
1の一部を経由して二次ラインL
2を流れる二次処理水W
2から、上記のクロムや鉄等の金属イオンの溶出とともに溶出した放射性核種をイオン交換により除去して、該放射性核種が除去された三次処理水W
3を生成する。
【0049】
三次ラインL
3は、カチオン樹脂塔31を配置する二次ラインL
2の上流側において、両端が二次ラインL
2に接続され、該二次ラインL
2を一時バイパスするように接続されており、該除染槽12中の処理水(例えば、三次処理水W
3)を循環させている。この三次ラインL
3には、第四弁V
24が設けられている。
【0050】
また、三次ラインL
3には、分離部41が設けられている。この分離部41は、三次処理水W
3に酸化剤13aとして過マンガン酸(HMnO
4)を供給した際に発生する沈降物である二酸化マンガン(MnO
2)を除去して、該沈降物が除去された四次処理水W
4を生成する。
【0051】
また、二次ラインL
2には、カチオン樹脂塔31の前後において、二次処理水W
2中のMn量等を計測する分析部32A、32Bが配置されている。
【0052】
次に、上記のように構成された除染処理システム10Aを用いた除染処理方法について説明する。
図2は、実施例1に係る除染処理方法の工程図である。
図3−1〜
図3−4は、工程毎に対応した
図1に示す除染処理システム10A−1〜10A−4の液流れ図である。
除染処理方法は、
図2に示すように、酸化工程S11と、還元工程S12と、除去工程S13と、除染水分解工程S14とを備えている。
【0053】
まず、前準備として、除染槽12に除染対象物11を配設する。
【0054】
次に、酸化工程S11を実行する。
図3−1は、酸化工程S11を実行する液流れ図である。
ここで、本実施例では、酸化剤13aとして過マンガン酸水溶液を用いた。
すなわち、酸化剤13aとして酸化剤供給部13に貯留された過マンガン酸水溶液を、酸化剤供給弁V
11を開き、酸化剤供給ラインL
11に導入する。そして、合流ライン弁V
10を開いて、該酸化剤供給ラインL
11に導入された過マンガン酸水溶液の酸化剤13aを合流ラインL
10により一次ラインL
1に導入する。
次に、一次ラインL
1における第一弁V
21を開いて、該一次ラインL
1に設けられた第一ポンプP
1を駆動することで過マンガン酸水溶液を一次ラインL
1と除染槽12との間で循環させる。なお、この際、図示しないヒーターにより過マンガン酸水溶液を加熱し、高温状態として循環させるようにしてもよい。
【0055】
ここで、除染槽12では、除染対象物11を浸漬した過マンガン酸水溶液に、該除染対象物11に付着した酸化被膜中にCr
2O
3やFeCr
2O
4等として存在するCr
3+が、Cr
6+となって水溶液中に溶出する。つまり、酸化皮膜中のクロム(Cr)が酸化溶出して、該クロム(Cr)が酸化溶出した過マンガン酸水溶液である一次処理水(含むCr
6+)W
1が生成される。
【0056】
次に、還元工程S12を実行する。
図3−2は、還元工程S12を実行する液流れ図である。
本実施例では、還元剤14aとしてシュウ酸水溶液を用いた。
すなわち、酸化剤供給ラインL
11の酸化剤供給弁V
11を閉じ、酸化剤13aの導入を停止し、還元剤供給部14のシュウ酸水溶液を、還元剤供給弁V
12を開き、還元剤供給ラインL
12に導入する。該還元剤供給ラインL
12に導入されたシュウ酸水溶液の還元剤14aを合流ラインL
10により一次ラインL
1に導入する。
そして、第一ポンプP
1を駆動することで該シュウ酸水溶液と過マンガン酸水溶液とが混合された水溶液(以下、「混合水溶液」と称する。)を、一次ラインL
1と除染槽12との間で循環させる。この際、図示しないヒーターで混合水溶液を加熱して、高温状態として循環させるようにしてもよい。
【0057】
なお、混合水溶液中のシュウ酸濃度は、例えば2000ppmになる程度に設定する。また、このシュウ酸水溶液の温度は常温(20℃)〜100℃未満(水溶液が沸騰しない温度限界)が好ましい。
【0058】
ここで、除染槽12では、除染対象物11を浸漬した混合水溶液に、該除染対象物11に付着した酸化皮膜中のFe
3O
4等として存在するFe
2+が、Fe
3+となって水溶液中に溶出する。つまり、酸化皮膜中の鉄Feが還元溶出して、該鉄が還元溶出した混合水溶液である二次処理水W
2が生成される。また、二次処理水W
2中には、酸化工程S11におけるクロムの酸化溶出及び還元工程S12における鉄の還元溶出による金属イオンと、放射性核種とが溶出されている。
【0059】
ここで、還元工程S12において除染対象物11に付着した酸化被膜が十分に除去されているかを判断する。除去が不十分であれば酸化工程S11と還元工程S12とを「一除染サイクル」として、該「一除染サイクル」を複数回実行する。そして、酸化被膜が十分に除去されれば、次の除染廃液を処理する除去工程S13に進む。
【0060】
次に、除去工程S13を実行する。
図3−3は、除去工程S13を実行する液流れ図である。
除去工程S13では、まず、合流ラインL
10の合流ライン弁V
10及び一次ラインL
1の第一弁V
21を閉じて、二次ラインL
2の第二弁V
22を開く。そして、第二ポンプP
2を駆動することで、除染槽12から導出した除染廃液である二次処理水W
2を、一次ラインL
1の一部を経由して二次ラインL
2に導入し、カチオン樹脂塔31を通過し、一次ラインL
1を経由して再び除染槽12に戻して、該除染槽12と二次ラインL
2との間を循環可能とすることができる。
【0061】
ここで、カチオン樹脂塔31では、還元工程S12の二次処理水W
2に溶出している金属イオン及び放射性核種を除去して三次処理水W
3を生成する。そして、三次処理水W
3は、二次ラインL
2から一次ラインL
1を経由して除染槽12に戻される。よって、カチオン樹脂塔31を所望の時間通水することで、二次ラインL
2と除染槽12との間を循環する二次処理水W
2は、金属イオンが除去された三次処理水W
3となる。
【0062】
金属イオン及び放射性核種を除去する除去工程S13の終了は、分析部32A、32Bにより、処理液中の金属イオン(例えばMn、Ni等)量が所定値以下となっていることにより、判断する。
【0063】
次に、除染水分解工程S14を実行する。
図3−4は、除染水分解工程S14を実行する液流れ図である。
除染水分解工程S14では、合流ラインL
10の合流ライン弁V
10及び酸化剤供給弁V
11を開き、一次ラインL
1に酸化剤供給部13から酸化剤13aの過マンガン酸を酸化剤供給ラインL
11及び合流ラインL
10により供給する。
この過マンガン酸の供給により、除染液中の三次処理水W
3中に残存するシュウ酸を分解する。
【0064】
ここで、本実施例では、除染装置15において、酸化剤13aとして過マンガン酸を用いているので、酸化剤供給部13から、過マンガン酸を供給しているが、酸化剤として過マンガン酸以外の酸化剤を用いる場合には、別途過マンガン酸を供給するマンガン酸供給部を設置し、これにより一次ラインL
1に過マンガン酸を供給するようにしてもよい。
【0065】
この過マンガン酸水溶液の供給の際、第三弁V
23を閉じ、第四弁V
24及び第五弁V
25を開いて、過マンガン酸水溶液が添加された三次処理水W
3を、三次ラインL
3に導入する。
【0066】
そして、過マンガン酸が添加された三次処理水W
3を三次ラインL
3に介装された分離部41に通過させ、過マンガン酸の添加によって、シュウ酸が分解される際に発生する分解生成物であるマンガンイオンの固形物(例えば二酸化マンガン(MnO
2)、酸化マンガン(MnO)等)を、この分離部41で分離・除去する。
このシュウ酸が分解除去された処理水は四次処理水W
4となる。
【0067】
ここで、過マンガン酸の供給量は、還元剤である残留シュウ酸、クエン酸と等量または、小過剰(1.1当量程度)添加するのが好ましい。
【0068】
この除染水分解工程S14においては、過マンガン酸の供給によりシュウ酸が分解するため、下記式(1)、(2)のように、二酸化マンガン(MnO
2)または水酸化マンガン(Mn(OH)
2)としてマンガンイオンが固体(沈降物)として析出する。
(COOH)
2→CO
2 ; 2H
+ + 2e
- ・・・(1)
HMnO
4 + 3e
- → MnO
2↓ ・・・(2)
【0069】
ここで、除染水分解工程S14でのシュウ酸の分解の完了は、二次ラインL
2のカチオン樹脂塔31の入口側及び出口側に各々設けた分析部32A、32Bにより、処理水中のMn量を計測し、所定値以下となっていることにより、判断する。
【0070】
分解生成物を分離除去する分離部41としては、フィルタ等の捕集部材により捕集する捕集分離方法、分解生成物を沈降させて分離する沈降分離方法を例示することができる。また、液体サイクロン等による分離方法を例示することもできる。
【0071】
次に、分離部41としてフィルタを用いた場合の従来のイオン交換樹脂による処理と較べた有利な点について説明する。
【0072】
除染処理後の除染処理水中に残留する還元剤14aである有機酸(例えばシュウ酸、クエン酸)を過マンガン酸により分解し、分解生成物のマンガンイオンは固体を分離部であるフィルタで捕集分離するので廃棄物量の大幅の低減が可能となる。
【0073】
これは、二酸化マンガン((MnO
2)=86.94g)1モルを、シュウ酸換算すると、シュウ酸との反応は1:1.5であるので、シュウ酸60gに相当する。
従来において、アニオン樹脂を用いてシュウ酸を吸着処理する際、60gのシュウ酸を処理するには、約1Lのアニオン吸着樹脂を必要としている。
【0074】
これに対して、本実施例のように、シュウ酸を過マンガン酸により反応させて二酸化マンガンとして沈殿処理する場合、二酸化マンガンの含水率及び使用するフィルタ重量を考慮しても1モルの二酸化マンガンあたり、約350gとなる。ここで、二酸化マンガンの密度が5.026g/cm
3であるので、二酸化マンガンの沈殿処理容積は約69mLとなる。
よって、シュウ酸60gをアニオン樹脂の吸着によって処理しようとする場合には、アニオン樹脂が1L必要となるので、沈殿処理容積を比較すると、(69mL/1000mL)=0.06(約1/16)となる。
【0075】
このように、本実施例の場合には、シュウ酸を過マンガン酸により反応させて二酸化マンガンとして沈殿処理することで、二酸化マンガンをフィルタで吸着させての固体処理となることにより、廃棄物の処理量は、約1/16の処理量で済むこととなる。
この結果、本実施例によれば、廃棄物量がイオン交換樹脂を用いて処理する場合に較べて、廃棄物の処理量が大幅に低減する。