【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度独立行政法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態で説明する寸法、材料、形状、構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構造又は様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に説明される実施形態で具体的に記載された形態に限定されるものではない。なお、以下で説明する図面で、同機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明を省略することもある。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る滅菌装置1の模式図である。滅菌装置1は、処理室10、減圧部12、排気ガス分解部13、N
2Oガス供給部14、酸素ガス供給部15、マスフローコントローラ(MFC)161及び162、配管171〜163、バルブ181〜183、制御部19、測定部20を備える。
【0012】
処理室10は、中空の箱形をなし、断熱性及び気密性を有する。処理室内部には被処理物が収容され、NO、NO
2等を含む滅菌性を有するガス(滅菌ガス)による滅菌処理が行われる。減圧部12は、真空ポンプ等で構成され、配管171を介して処理室10の内部を吸気して減圧する。排気ガス分解部13は、プラチナ、パラジウム、ロジウム、二酸化マンガンなどから構成される触媒、紫外線発光部(ランプ)、ヒータのいずれか、又はこれらの組み合わせから構成されている。排気ガス分解部13は減圧部12と処理室10とを繋ぐ配管162の途中に設けられ、処理室10の内部で発生した窒素酸化物、オゾン等を分解する。図中、排気ガス分解部13は処理室10の外部に設けられているが、処理室10の内部に設けられても良い。また、窒素酸化物を分解するための排気ガス分解部とオゾンを分解するための排気ガス分解部とが別個に設けられても良い。
【0013】
N
2Oガス供給部14は、配管172を介して処理室10に接続され、亜酸化窒素を含有する気体(N
2Oガス)を処理室10の内部に供給する。MFC161は、配管172の途中に設けられ、N
2Oガス供給部14から処理室10へ供給されるN
2Oガスの流量検出及び流量制御を行う。N
2Oガスは、笑気ガスとも呼ばれ、その鎮静効果や麻酔効果が医療分野で広く応用されている。更にN
2Oガスは、NO
2ガスと比較して健康への影響が小さく、安価であるため、より安全かつ低コストであるという利点を有する。
【0014】
酸素ガス供給部15は、配管173を介して処理室10に接続され、酸素を含有する気体(酸素ガス)を処理室10の内部に供給する。酸素ガスは、純酸素、又は酸素を含有する空気であっても良い。MFC162は、配管173の途中に設けられ、酸素ガス供給部15から処理室10へ供給される酸素ガスの流量検出及び流量制御を行う。
【0015】
バルブ181は、処理室10と減圧部12との間の配管171に設けられ、配管171の流路を開閉する。即ち、バルブ181が開状態となると、処理室10と減圧部12との間の流路が開かれ、減圧部12によって処理室10が減圧される。一方、バルブ181が閉状態となると、処理室10と減圧部12との間の流路が遮断され、減圧部12による処理室10の減圧動作が停止する。バルブ182は、処理室10とN
2Oガス供給部14との間の配管172に設けられ、配管172の流路を開閉する。即ち、バルブ182が開状態となると、処理室10とN
2Oガス供給部14との間の流路が開かれ、N
2Oガス供給部14によって処理室10へN
2Oガスが供給される。一方、バルブ182が閉状態となると、処理室10とN
2Oガス供給部14との間の流路が遮断され、N
2Oガス供給部14による処理室10へのN
2Oガスの供給動作が停止する。同様に、バルブ183は、処理室10と酸素ガス供給部15との間の配管173に設けられ、配管173の流路を開閉する。即ち、バルブ183が開状態となると、処理室10と酸素ガス供給部15との間の流路が開かれ、酸素ガス供給部15によって処理室10へ酸素ガスが供給される。一方、バルブ183が閉状態となると、処理室10と酸素ガス供給部15との間の流路が遮断され、酸素ガス供給部15による処理室10への酸素ガスの供給動作が停止する。
【0016】
制御部19は、プログラム等を記録するROM、ワーク用の記憶領域のRAM、プログラムを実行するマイクロプロセッサ、制御信号を出力するポートを含み得る。なお、必ずしも制御部をつかさどる電子機器がここになくとも、公知の通信手段(有線または無線)を介して外部で同様の信号処理を行い、その処理情報としての制御情報を受信し、同様に制御しても構わない。制御信号は、処理室10の内部の温度、圧力、湿度を制御し、またバルブ181〜183の開閉、減圧部12、N
2Oガス供給部14、酸素ガス供給部15の動作を制御するための信号である。制御部19は、制御信号を送信することで処理室10、バルブ181〜184、減圧部12、N
2Oガス供給部14、酸素ガス供給部15の動作を制御する。
【0017】
測定部20は、温度計、圧力計、湿度計、窒素酸化物濃度計、オゾン濃度計等のセンサ、センサからの信号を出力する出力部から構成される。センサは、処理室10の内部に設けられ、出力部はセンサによって検出された処理室10の内部の温度や圧力等の検出データを、制御部19、または図示されていないモニタに出力する。制御部19は、測定部20から受信した検出データに基づいて、バルブ181〜183、及び後述する送風ファン102、バルブ184に制御信号を出力し、処理室10の内部の温度、圧力、湿度を制御する。
【0018】
図2は、本発明の第1実施形態に係る処理室10の断面図である。処理室10は、処理台101、送風ファン102、紫外線発光部(ランプ)103、流体入出力口111〜113を備える。処理台101上には、滅菌袋122に収容された被処理物121が載置される。送風ファン102は、制御部19からの制御信号により作動又は停止し、ファンの回転により処理室10の内部を撹拌し、また処理室10の内部を冷却する。
【0019】
紫外線発光部(ランプ)103は、発光管内に水銀を封入した水銀灯から構成される。水銀灯は、点灯中の水銀の蒸気圧が1〜10Pa程度の低圧水銀灯であって、主として185nm、194nm、254nm近傍の波長の紫外線を出力する。上記の波長の紫外線を処理室10の内部に照射することにより、以下に示すような種々の反応過程により、反応性が高く、強い殺菌力を有する滅菌ガスを発生させることができる。なお、このランプの代わりに同様の波長を発光する発光部、例えばLED光源やレーザ等を利用しても構わない。
【0020】
本発明の実施形態に係る滅菌装置内では、種々の化学反応により、滅菌ガスを発生させることができる。表1に、本発明の実施形態に係る滅菌装置内で発生し得る化学反応とその化学反応による主要な生成物を示す。
【0022】
即ち、(1)194nm波長の紫外線は、処理室10の内部に導入されたN
2O分子に吸収され、N
2O分子は窒素分子と励起一重項酸素原子(励起状態酸素)に分解される。(2)励起状態酸素は、N
2O分子と反応し、NOを発生させる。(3)NOは、処理室10の内部に導入された酸素分子と反応し、NO
2を発生させる。(4)185nm波長の紫外線は、処理室10の内部に導入された酸素分子に吸収され、基底状態酸素原子に分解される。(5)基底状態酸素原子は、処理室10の内部に導入された酸素分子と反応し、オゾンを発生させる。(6)254nm波長の紫外線は、オゾンに吸収され、励起状態酸素と酸素分子とに分解される。(7)NOは、オゾンと反応し、NO
2を発生させる。(8)NO
2は、オゾンと反応し、三酸化窒素を発生させる。(9)三酸化窒素は、NO
2と反応し、五酸化二窒素を発生させる。(10)五酸化二窒素は、後述する処理室10の内部に導入された水分子と反応し、硝酸を発生させる。(11)硝酸は、光エネルギ又は熱エネルギを吸収し、NO
2を発生させる。このような反応過程によって、紫外線発光部(ランプ)103からの紫外線照射により、処理室10の内部に種々の窒素酸化物、オゾン、活性酸素が生成される。
【0023】
紫外線発光部(ランプ)103の発光管としては、185nm、194nm、254nmの波長の紫外線を透過させる合成石英ガラス等が用いられる。また、処理室10の内部に設けられる紫外線発光部(ランプ)103の数は、処理室10の大きさ等に応じて任意の数に変更できる。また、エキシマランプを用いて紫外線発光部(ランプ)103を構成できる。エキシマランプとしては、例えば172nmの波長の紫外線を発生させるキセノンエキシマランプを用いることができる。紫外線発光部(ランプ)103は、低圧水銀灯とエキシマランプを組み合わせることにより構成することもできる。また、滅菌対象の領域が小さい場合、GaN系やダイヤモンド形の紫外線LEDを紫外線発光部(ランプ)103として用いることもできる。
【0024】
接続部111〜113は、処理室10の内部にN
2Oガス、酸素ガスを供給し、また処理室10の内部を減圧するための外部装置との連絡口である。接続部111〜113のそれぞれは、配管171〜173のいずれか1つと接続される。本実施形態では、接続部111は、配管171と接続され、バルブ181を介して減圧部12と接続される。また、接続部112は、配管172と接続され、バルブ182を介してN
2Oガス供給部14と接続される。また、接続部113は、配管173と接続され、バルブ183を介して酸素ガス供給部15と接続される。しかしながら、接続部111〜113のそれぞれを配管171〜173のいずれと接続するかは、装置寸法や被処理物の載置位置等の条件により適宜変更できる。
【0025】
図3は、本発明の第1実施形態に係る滅菌装置による滅菌処理を示す流れ図である。ステップS301において、滅菌袋122に収容された被処理物121を処理室10の内部の処理台101に載置する。ステップS302において、制御部19は、紫外線発光部(ランプ)103を点灯させ、処理室10の内部に185nm、194nm、254nmの波長の紫外線を照射させる。ステップS303において、制御部19は、送風ファン102を作動させ、処理室10の内部の雰囲気を撹拌する。ステップS304において、制御部19は、バルブ181を開状態にするよう制御信号を送信する。バルブ181は制御信号を受信し、開状態となり、減圧部12が処理室10の内部を吸気することで処理室10の内部を減圧する。次いで、制御部19は、所定の時間の経過後、又は処理室10の内部が所定の圧力(例えば、500Pa以下)まで減圧された後、バルブ181を閉状態にするよう制御信号を送信し、減圧部12の減圧動作を停止させる。なお、ステップS302〜S304は、その実行手順を変更することができ、またこれらのステップは同時に実行されることもできる。
【0026】
ステップS305において、制御部19は、バルブ182を開状態にするよう制御信号を送信する。バルブ182が制御信号を受信し、開状態となり、N2Oガス供給部14が処理室10の内部にN2Oガスの供給を行う。N2Oガスが処理室10の内部に導入されると、紫外線発光部(ランプ)103から照射される紫外線と反応して
表1の(1)及び(2)に示す反応が起こり、NOが生成される。生成されたNOは、減圧下の処理室10の内部で急速に拡散する。その結果、生成されたNOは、滅菌袋122内に効率よく浸透し、被処理物121に対して高い殺菌作用をもたらす。
【0027】
ステップS306において、制御部19は、所定の時間の経過後、又は処理室10の内部が所定の圧力(例えば、50kPa程度)まで上昇した後、バルブ182を閉状態にするよう制御信号を送信する。バルブ182が制御信号を受信し、閉状態となり、N
2Oガス供給部14が処理室10の内部へのN
2Oガスの供給を停止する。
【0028】
ステップS307において、制御部19は、バルブ183を開状態にするよう制御信号を送信する。バルブ183が制御信号を受信し、開状態となり、酸素ガス供給部15が処理室10の内部に酸素ガスの供給を行う。酸素ガスが処理室10の内部に導入されると、紫外線発光部(ランプ)103から照射される紫外線と反応して
表1の(3)〜(9)に示す反応が起こり、NO2などの種々の窒素酸化物を含む滅菌ガスが生成される。NO2は褐色の気体であるため、その発生を目視で確認できる。生成された滅菌ガスは、減圧下の処理室10の内部で急速に拡散する。その結果、生成された滅菌ガスは、滅菌袋122内に効率よく浸透し、被処理物121に対して高い殺菌作用をもたらす。なお、この時点で紫外線発光部(ランプ)103を消灯した場合でも、生成されたガス同士の反応は進行し、従って処理室10の内部での滅菌ガスの発生は継続する。
【0029】
ステップS308において、制御部19は、所定の時間の経過後、又は処理室10の内部が所定の圧力(例えば、95kPa程度)まで上昇した後、バルブ183を閉状態にするよう制御信号を送信する。バルブ183が制御信号を受信し、閉状態となり、酸素ガス供給部15が処理室10の内部への酸素ガスの供給を停止する。このとき、処理室10の内部の圧力が大気圧以上になると、処理室10の内部のガスが外部に漏出するおそれがある。そのため、処理室10の内部の圧力が大気圧よりも若干低い程度であることが望ましい。
【0030】
ステップS315において、制御部19は、所定の時間(例えば、5分〜4時間程度の範囲)だけ、バルブ181〜183の閉状態を維持する。一方で、制御部19は、送風ファン102の回転動作及び紫外線発光部(ランプ)103の紫外線照射を維持する。この間に、処理室内に閉じ込められた亜酸化窒素分子及び酸素分子の紫外線吸収反応とその結果生成されたガス同士の反応は継続し、かつ生成された滅菌ガスは処理室10の内部で撹拌される。その結果、滅菌袋122内に浸透した活性酸素の被処理物121に対する殺菌作用は継続する。
【0031】
ステップS319において、制御部19は、バルブ181を開状態にするよう制御信号を送信する。制御信号を受信すると、バルブ181が開状態となり、減圧部12が処理室10の内部を吸気する。このとき、処理室10の内部の雰囲気には滅菌ガスやオゾンが含まれている。滅菌ガス及びオゾンには毒性があり、特にオゾンはその強い酸化力によって減圧部12の構成部材を劣化させる可能性がある。そのため、制御部19は、排気ガス分解部13を介して処理室10の内部を吸気することが望ましい。
【0032】
ステップS321において、制御部19は、送風ファン102の回転動作、紫外線発光部(ランプ)103の紫外線照射を停止させる。次いで、ステップS322において,制御部19は、バルブ183を開状態にするよう制御信号を送信する。バルブ183が制御信号を受信し、開状態となり、酸素ガス供給部15が処理室10の内部に酸素ガスの供給を行う。制御部19は、処理室10の内部が大気圧まで達した後に、バルブ183を閉状態にするよう制御信号を送信する。なお、制御部19は、酸素ガスの代わりに空気を処理室10の内部に供給しても良い。ステップS323において、被処理物を取り出して、滅菌処理を終了する。
【0033】
以上の滅菌工程により、市販の過酸化水素水滅菌装置用のセルフコンテンド型バイオロジカルインジケータ(V241、芽胞型成菌、G.Stearo、初発菌数:2.1×10
6、ステリス)を用いて滅菌作用を確認するための実験を行った。その際、ステップS315における保持時間は2時間とした。その結果、インジケータは陰性を示し、本発明による滅菌効果を確認できた。
【0034】
なお、本実施形態では、最初に紫外線発光部(ランプ)103を点灯させ、次いでN
2Oガスを処理室10の内部に導入し、最後に酸素ガスを処理室10の内部に導入する、としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、酸素ガスを導入後にN
2Oガスを導入しても同様の効果が得られる。また、N
2Oガス及び酸素ガスを導入後に紫外線発光部(ランプ)103を点灯させるようにしても同様の効果が得られる。また、本実施形態では、N
2Oガス及び酸素ガスの導入及び減圧は処理室10の側面部から行うこととしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ガスの供給及び減圧は処理室10の上面部又は下面部から行っても良い。これらガス供給系統及び減圧系統の数や接続位置は、処理室の寸法や被処理物の位置によって適宜変更できる。さらに、各ガスを導入する前に若干の水分を処理室10の内部に導入してから滅菌処理を行うようにしても良い。ガス滅菌において処理対象物を加湿することが滅菌効果を向上させることは周知の事実である。
【0035】
本発明によれば、紫外線と亜酸化窒素分子及び酸素分子との光化学反応を利用して滅菌ガスを生成している。光化学反応を利用した滅菌ガスの生成には、反応させるガスの量や滅菌処理中の処理室10の内部の圧力に依存せず、瞬時に所望の濃度の滅菌ガスを安定的に得ることができる、という利点がある。本発明と比較して、薬剤を利用した生成方法の場合、得られる滅菌ガスの濃度は当該薬剤の組成によって制限されてしまう。また、プラズマ放電を利用した生成方法の場合、プラズマ放電を発生及び維持できる圧力範囲や滅菌ガスの原料となるガスの組成比について予め条件出しをしておく必要がある。そのため、処理室が大きくなると滅菌ガスの生成が困難となり得る。また、プラズマ放電を利用した場合、処理室の内部のガスとの反応が数ミリ秒〜数十ミリ秒程度で進行するため、生成される滅菌ガスの量が安定せず時間的に変動してしまう、という原理的な問題がある。即ち、プラズマ放電による生成方法では、所望濃度の滅菌ガスを得ること自体が困難であり、よって安定的な滅菌作用の提供が難しい。従って、本発明による滅菌装置は、短時間で安定した滅菌処理を行える点で従来の滅菌装置よりも有利である。また本発明による滅菌装置は、滅菌ガスの原料としてNO
2ガスよりも毒性が低くかつ安価なN
2Oガスを用いているため、従来の滅菌装置よりも安全かつ低コストで滅菌処理を行うことができる。
【0036】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る加湿部21を備える滅菌装置5について説明する。
【0037】
図4は、本発明の第2実施形態に係る滅菌装置5の模式図である。本実施形態に係る滅菌装置5は、加湿部21、配管174、バルブ184を備える。加湿部21は、水を貯留する容器と、容器内の水を霧状化させ、霧状化した水分を含んだガス(加湿ガス)を噴射する噴射器とを備え、その上部が配管174を介して処理室10と接続されている。バルブ184は、処理室10と加湿部21との間に設けられ、配管174の流路を開閉する。バルブ184は、制御部19からの制御信号を受信し、開状態となり、加湿部21が処理室10の内部へ加湿ガスを供給する。その他の構成は第1実施形態と同一である。従って、重複する箇所についての説明を省略する。
【0038】
図5は、本発明の第2実施形態に係る滅菌装置による滅菌処理を示す流れ図である。酸素ガスの供給を停止(ステップS308)した後に、ステップS309において、制御部19は、バルブ184を開状態にするよう制御信号を送信する。バルブ184が制御信号を受信し、開状態となり、加湿部21が処理室10の内部に加湿ガスの供給を行う。加湿ガスが処理室10の内部に導入されると、
表1の(10)及び(11)に示す反応が起こり、NO2を含む滅菌ガスが生成される。また、被処理物の近傍に加湿ガスを供給することで、滅菌ガスの被処理物への浸透性を高めることができる。
【0039】
ステップS310において、制御部19は、所定の時間の経過後、又は処理室10の内部が所定の圧力まで上昇した後、バルブ184を閉状態にするよう制御信号を送信する。バルブ184が制御信号を受信し、閉状態となり、加湿部21が処理室10の内部への加湿ガスの供給を停止する。このとき、処理室10の内部の圧力が大気圧以上になると、処理室10の内部のガスが外部に漏出するおそれがある。そのため、処理室10の内部の圧力が大気圧よりも若干低い程度であることが望ましい。本実施形態では、加湿ガスの供給(ステップS309)を、酸素ガスの供給を停止(ステップS308)した後としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、N
2Oガスの供給(ステップS305)の前に加湿ガスを導入しても同様の効果が得られる。また、酸素ガスの供給(ステップS307)の前に加湿ガスを導入しても同様の効果が得られる。なお、その他の構成は第1実施形態と同一である。従って、重複する箇所についての説明を省略する。
【0040】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係る滅菌装置1について説明する。
【0041】
図6は、本発明の第3実施形態に係る滅菌装置による滅菌処理を示す流れ図である。処理室10の内部を再度減圧(ステップS319)した後に、ステップS320において、制御部19は、ステップS305〜S315の滅菌工程のサイクル数が設定された所定の回数に到達したか否かを判断する。制御部19は、サイクル数がまだ設定された所定の回数に到達していないと判断した場合、ステップS305に戻り、N
2Oガスを再び処理室内に供給させるよう制御信号を送信する。制御部19は、サイクル数が設定された所定の回数に到達するまで、ステップS305〜S315の滅菌工程を繰り返すようバルブ181〜183を制御する。制御部19は、サイクル数が設定された所定の回数に到達したと判断した場合、S305〜S315の滅菌工程を終了させ、ステップS321に進む。その他の構成は第1実施形態と同一である。従って、重複する箇所についての説明を省略する。なお、本実施形態は加湿部21を含む第2実施形態にも適用できる。このように滅菌工程を複数回繰り返すことにより、被処理物121に対する滅菌ガスの浸透性を高めることができる。特に、被処理物121が試験管の様な中空形状やデッドエンド部を有する場合に効果的である。
【0042】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態に係る処理室81及び82を備える滅菌装置8について説明する。
【0043】
図7は、本発明の第4実施形態に係る滅菌装置8の模式図である。本実施形態に係る滅菌装置8は、処理室81、82、配管175〜177、バルブ185〜187を備える。処理室81は、紫外線発光部(ランプ)103を有し、N
2Oガス供給部14及び酸素ガス供給部15からN
2Oガス及び酸素ガスが供給される。これらのガスと紫外線発光部(ランプ)103から照射される紫外線とが反応し、処理室81には滅菌ガスが生成される。処理室82は、処理台101、送風ファン102を備え、処理室81と配管175を介して接続され、減圧部12と配管176を介して接続され、酸素ガス供給部15と配管177を介して接続されている。
【0044】
バルブ185は、処理室81と処理室82との間に設けられ、配管175の流路を開閉する。バルブ185は、制御部19からの制御信号を受信し、開状態となり、処理室81において生成された滅菌ガスが処理室82に供給される。バルブ186は、処理室82と減圧部12との間に設けられ、配管176の流路を開閉する。バルブ186は、制御部19からの制御信号を受信し、開状態となり、処理室82の内部を減圧する。バルブ187は、処理室82と酸素ガス供給部15との間に設けられ、配管177の流路を開閉する。バルブ187は、制御部19からの制御信号を受信し、開状態となり、処理室82の内部に酸素ガスを供給する。その他の構成は第1実施形態と同一である。従って、重複する箇所についての説明を省略する。なお、本実施形態は加湿部21を含む第2実施形態及び滅菌工程を繰り返す第3実施形態にも適用できる。
【0045】
このように構成することで、滅菌ガスを被処理物121の載置されている処理室82とは別の処理室81に貯留させることができる。即ち、減圧部12は滅菌処理の間に処理室82のみを減圧し、一方処理室81内では滅菌ガスを継続的に生成及び貯留することができ、更に効率的に滅菌処理を行うことができる。また、滅菌処理後の被処理物121を取り出す際でも、処理室81内で生成した滅菌ガスを排気する必要が無く貯留させておくことができる。即ち、排気する必要のある滅菌ガスは処理室82の内部に存在するガスのみであり、生成した全ての滅菌ガスを排気する必要が無くなる。従って、有毒である滅菌ガスの排出が削減され、使用されるN
2Oガス及び酸素ガスの量も削減されるため、より低コストで滅菌処理を実現できる。