特許第6501498号(P6501498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6501498
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】ゴム用塗料
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/04 20060101AFI20190408BHJP
   C09D 129/14 20060101ALI20190408BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20190408BHJP
【FI】
   C08J7/04 ZCEQ
   C09D129/14
   C09D7/62
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-226631(P2014-226631)
(22)【出願日】2014年11月7日
(65)【公開番号】特開2016-89075(P2016-89075A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390002808
【氏名又は名称】マークテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067301
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 順一
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100173406
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 真貴子
(72)【発明者】
【氏名】北岡 司
【審査官】 飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/137147(WO,A1)
【文献】 特開2013−082859(JP,A)
【文献】 特開2013−049252(JP,A)
【文献】 特許第5469287(JP,B2)
【文献】 特開2013−100474(JP,A)
【文献】 特開2009−166332(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3152471(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/04−7/06
C09D 7/62
C09D 129/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケン化度が89〜99mol%のポリビニルアルコールのアセタール化樹脂3〜10重量%と顔料3〜10重量%とカップリング剤1〜2重量%と可塑剤1〜2重量%と水とを含有してなるゴム用塗料。
【請求項2】
前記顔料がチタン白である請求項1記載のゴム用塗料。
【請求項3】
前記カップリング剤がチタネート系またはアルミネート系である請求項1又は2記載のゴム用塗料。
【請求項4】
前記可塑剤がグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールである請求項1乃至いずれか記載のゴム用塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム材料、特にタイヤのトレッドに好適に用いることができるゴム用塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼材製造工場や自動車工場などでは、古くから鋼板や鋼材部品の表面に材質・用途等を示す文字・記号や加工位置を指示するライン等をマーキングするためにマーキング用の塗料が使用されている。
【0003】
現在ではゴム材料もマーキングの対象であり、例えば、タイヤのトレッドは、タイヤ本体に取り付ける前に当該トレッドの仕様等が未加硫状態のトレッドにマーキングされており、仕様がマーキングされた未加硫状態のトレッドをタイヤ本体に巻き付けて、成形金型に入れた後、加熱して加硫反応によりタイヤ本体と一体化させて取り付けられる。
【0004】
鋼板や鋼材部品の表面に使用するマーキング塗料は、セルロース樹脂やアクリル樹脂が溶剤として用いられるため比較的硬い塗膜が形成される。
【0005】
しかしながら、セルロース樹脂やアクリル樹脂を溶剤とした塗料を未加硫ゴム材料に使用すると、塗膜がゴム材料の伸縮に対して追従できずに亀裂や剥離が生じる場合があり、また、前記加硫反応による取り付け成形工程においては、塗膜が成形金型に付着したり、剥離したりする場合がある。
【0006】
そこで、未加硫のゴム材料に使用する塗料には、生ゴムをガソリン、ゴム揮発油、灯油等の石油系溶剤に溶かし顔料を加えた塗料や、ゴムのエマルジョン(ラテックス)を使用し、ゴムの伸縮に追従できるように柔軟性を備えた塗料が使用されている。
【0007】
しかし、通常、タイヤ製造工場におけるトレッドのマーキングには、成形直後の80℃〜100℃のトレッドにマーキングが行われ、その後、すぐに冷水によって冷却されるため、トレッドに使用できるマーキング用の塗料には、ゴムの伸縮に追従できる柔軟性に加えて、高温のゴム材料でも滲まず鮮明に付着する性質、速乾性、冷水に溶解しない性質を備えることが必要である。
【0008】
また、トレッドはタイヤ本体に巻き付けられて、成形金型に入れられ、約180℃の加硫反応によってタイヤ本体と一体化させて取り付けられるため、当該加硫反応による取り付け成形工程において塗料が成形金型に付着して残留しないという性質も要求される。
【0009】
加えて、マーキングは印字装置の細いノズルから塗料を噴射してトレッドの表面に点状の塗料を付着させて行うため、作業効率上、ノズルの目詰まりを起こし難い塗料であることが好ましく、また、目詰まりを起こした場合には容易に目詰まりを解消できる性質も要求される。
【0010】
前述とおり、タイヤのトレッドに使用できるマーキング用の塗料には通常のゴム用塗料に加えて多くの性質が要求されるため、トレッドに好適に使用できる塗料の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平4−372672
【特許文献2】特開2001−2999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載のゴム系塗料は、溶剤に沸点の高い白灯油を混入した溶剤を使用いるため、80℃〜140℃でも使用できる塗料である。
しかしながら、溶剤が可燃性であるため、火災の危険性があり、また、VOC(揮発性有機溶剤)を含むので、人体や環境に悪影響を及ぼし、有機溶剤中毒予防法における規制の対象にもなっている。したがって、販売者や購入者は取り扱いに注意を払う必要があるという問題がある。
【0013】
特許文献2記載の塗料は、被膜形成成分がワックス類、シリコーンオイル、樹脂類、ゴム類、油脂、脂肪酸及びその誘導体であるので、高温のゴム材料への使用には適さず、また、マーキング用の印字装置ノズルの目詰まりが起こりやすく、目詰まりが起こった場合には界面活性剤で溶解させなければならないといった問題がある。
また、実施例に記載の溶剤は揮発性が高く人体や環境に悪影響を及ぼし、かつ、火災の危険性もあるといった問題がある。
【0014】
そこで、本発明者は、トレッドのマーキングに好適に用いることができる塗料、即ち、ゴム材料が高温でも滲まず鮮明に付着して速乾性があり、冷水によって溶解しない性質を備えると共に、ゴムの伸縮に追従する柔軟性を有して、高温の加硫反応による取り付け成形工程においても塗膜に亀裂や剥離が生じず、かつ、成形金型に塗料が付着せず、更には、印字装置のノズルの目詰まりを起こし難く、また、容易に目詰まりを解消させることができ、加えて、火災のおそれがなく、人体や環境に悪影響を及ぼさない塗料を提供することを技術的課題として鋭意研究を行った結果、ケン化度が89〜99mol%のポリビニルアルコールのアセタール化樹脂(以下「アセタール化PVA樹脂」と言うこともある)3〜10重量%と顔料とカップリング剤と可塑剤と水とを含有させた塗料とすることで、前記技術的課題を解決できるという刮目すべき知見を得て、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記技術的課題は次のとおり、本発明によって解決できる。
【0016】
本発明は、ケン化度が89〜99mol%のポリビニルアルコールのアセタール化樹脂3〜10重量%と顔料3〜10重量%とカップリング剤1〜2重量%と可塑剤1〜2重量%と水とを含有してなるゴム用塗料である。
【0020】
また本発明は、前記顔料がチタン白である前記ゴム用塗料である。
【0021】
また、本発明は、前記カップリング剤がチタネート系またはアルミネート系である前記ゴム用塗料である。
【0022】
また、本発明は、前記可塑剤がグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールである前記ゴム用塗料である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、低温のゴム材料はもちろん、80℃〜100℃の高温のゴム材料でも滲まず鮮明に付着して速乾性があり、冷水に塗料が溶解せず、ゴムの伸縮に追従する柔軟性があり、また、高温(約180℃)の加硫反応による取り付け成形工程においても塗膜に亀裂や剥離が生じることがなく、かつ、塗料は全てゴム側に付着して成形金型には付着しないゴム用塗料になる。
また、印字装置ノズルの目詰まりを起こし難く、たとえ目詰まりした場合であっても温水により容易に解消することができるため、作業効率の良いゴム用塗料になる。
【0024】
本発明のゴム用塗料には、ケン化度が89〜99mol%のポリビニルアルコールのアセタール化樹脂を使用するので、低温はもちろんのこと、80℃〜100℃の高温のゴム材料であっても表面に滲まず鮮明に付着し、素早く乾燥塗膜になって速乾性があり、冷水によって塗料が溶解することがない。
【0025】
また、アセタール化PVA樹脂を使用しているので、冷水には溶解しないが、60℃以上の温水には溶解するから、たとえ印字装置のノズルが目詰まりした場合であっても温水で溶解させることで容易に目詰まりを解消することができる。
【0026】
また、溶剤が水なので、火災の心配や、人体や環境へ悪影響を及ぼすことがなく簡便に使用することができる。
【0027】
さらに、顔料をチタン白とすることで、白色度の高い塗料にすることができる。
【0028】
また、カップリング剤がチタネート系又はアルミネート系であれば、ポットライフが十分に確保できるため、マーキング用の塗料として適した性質となり、また、塗料とゴム材料との密着性を増加させることもできる。
【0029】
また、可塑剤がグリセリン、エチレングリコール及びプロピレングリコールであれば、乾燥塗膜が固くなり過ぎず柔軟性のある塗料となり、塗膜の亀裂や剥離を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明におけるゴム用塗料に使用できるケン化度が89〜99mol%のポリビニルアルコールのアセタール化樹脂は特に限定されるものではないが、好適に使用できるものとしてゴーゼネックス(登録商標)Z−100(日本合成化学株式会社製)を挙げることができる。
【0031】
本発明におけるアセタール化PVA樹脂の含有量は、3〜10重量%が好ましい。3重量%より少なければ、塗膜の強度が弱くなり、冷水で塗料が剥離する虞があり、10重量%を超えると粘性が上がって作業効率が悪くなると共に、塗膜が固くなって、高温の加硫反応による成形工程において塗膜が剥離する虞があるからである。
【0032】
本発明に使用できる顔料としては、チタン白、亜鉛華、硫酸バリウムを挙げることができるが、特にチタン白が好ましい。
【0033】
本発明における顔料の含有量は3〜10重量%が好ましい。3重量%より少なければ白色度が低下するので識別性が低下する虞があり、10重量%を超えれば塗膜が固くなって、高温の加硫反応による成形工程において塗膜が剥離する虞があるからである。
【0034】
本発明に使用できるカップリング剤としては、チタネート系、アルミネート系及びシランカップリング剤を用いることができるがチタネート系、アルミネート系のカップリング剤が好ましい。
【0035】
アミン、アルデヒド等の架橋剤は架橋反応がすぐに始まるので、ポットライフが短く、マーキング用のゴム用塗料に使用するのは好ましくない。
【0036】
カップリング剤の含有量としては1〜2重量%が好ましい。1重量%より少なければ塗料が成形金型に付着する虞があり、2重量%を超えれば、冷水によって塗料が溶解する虞があるからである。
【0037】
本発明における可塑剤は、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールが好ましい。
【0038】
可塑剤の含有量は、1〜2重量%が好ましい。1重量%より少なければ塗膜が剥離する虞があり、2重量%を超えると冷水に溶解する虞があるからである。
【実施例】
【0039】
(実施例1)
ケン化度が89〜99mol%のポリビニルアルコールのアセタール化樹脂としてゴーセネックス(登録商標)Z-100(日本合成化学株式会社製)20重量%を水に分散させ撹拌しながら90℃まで加熱して溶解させる。(以下この水溶液を「アセタール化PVA樹脂水溶液」と言う。)
【0040】
アセタール化PVA樹脂水溶液25重量%(樹脂量5%)とチタン白5重量%を水に投入し混合分散させ、1.5重量%のオルガチックス(登録商標)TC−310(マツモトファインケミカル株式会社製)(以下の実施例、比較例においては「チタネート系カップリング剤」と言う)と2重量%のグリセリンを添加して均一にした塗料を作成した。この塗料を印字装置PJ−1B(マークテック株式会社社製)で80℃に加熱した未加硫トレッド材(50mm×50mm)にマーキングを行い、直後に水を噴霧して塗膜の状態を目視で観察した。
その後、鋼製成形金型で未加硫トレッド材(50mm×50mm)を挟んで圧力をかけて180℃で20分加熱して加硫反応を行った後、金型への付着の有無を目視により確認した。
【0041】
(実施例2)
アセタール化PVA樹脂水溶液25重量%(樹脂量5%)とチタン白10重量%を水に投入し混合分散させ、1.5重量%のチタネート系カップリング剤と2重量%のエチレングリコールを添加して均一にした塗料を作成した。
この塗料を印字装置PJ−1Bで80℃に加熱した未加硫トレッド材(50mm×50mm)にマーキングを行い、直後に水を噴霧して塗膜の状態を目視で観察した。
その後、鋼製成形金型で未加硫トレッド材(50mm×50mm)を挟んで圧力をかけて180℃で20分加熱して加硫反応を行った後、金型への付着の有無を目視により確認した。
【0042】
(実施例3)
アセタール化PVA樹脂水溶液25重量%(樹脂量5%)とチタン白10重量%を水に投入し混合分散させ、1.5重量%のプレンアクト(登録商標)AL−M(味の素ファインテクノ株式会社製)(以下の実施例、比較例においては「アルミネート系カップリング剤」と言う)と2重量%のグリセリンを添加して均一にした塗料を作成した。
この塗料を印字装置PJ−1Bで80℃に加熱した未加硫トレッド材(50mm×50mm)にマーキングを行い、直後に水を噴霧して塗膜の状態を目視で観察した。
その後、鋼製成形金型で未加硫トレッド材(50mm×50mm)を挟んで圧力をかけて180℃で20分加熱して加硫反応を行った後、金型への付着の有無を目視により確認した。
【0043】
(比較例1)
アセタール化PVA樹脂水溶液10重量%(樹脂量2%)とチタン白5重量%を水に投入し混合分散させ、1.5重量%のチタネート系カップリング剤と2重量%のグリセリンを添加して均一にした塗料を作成した。この塗料を印字装置PJ−1Bで80℃に加熱した未加硫トレッド材(50mm×50mm)にマーキングを行い、直後に水を噴霧して塗膜の状態を目視で観察した。
その後、鋼製成形金型で未加硫トレッド材(50mm×50mm)を挟んで圧力をかけて180℃で20分加熱して加硫反応を行った後、金型への付着の有無を目視により確認した。
【0044】
(比較例2)
アセタール化PVA樹脂水溶液60重量%(樹脂量12%)とチタン白5重量%を水に投入し混合分散させ、1.5重量%のチタネート系カップリング剤と2重量%のグリセリンを添加して均一にした塗料を作成した。
この塗料を印字装置PJ−1Bで80℃に加熱した未加硫トレッド材(50mm×50mm)にマーキングを行ったが粘度が高いためマーキングができなかった。
そこで刷毛でマーキングを行い、直後に水を噴霧して塗膜の状態を目視で観察した。
その後、鋼製成形金型で未加硫トレッド材(50mm×50mm)を挟んで圧力をかけて180℃で20分加熱して加硫反応を行った後、金型への付着の有無を目視により確認した。
【0045】
(比較例3)
アセタール化PVA樹脂水溶液25重量%(樹脂量5%)とチタン白15重量%を水に投入し混合分散させ、1.5重量%のチタネート系カップリング剤と2重量%のグリセリンを添加して均一にした塗料を作成した。
この塗料を印字装置PJ−1Bで80℃に加熱した未加硫トレッド材(50mm×50mm)にマーキングを行い、直後に水を噴霧して塗膜の状態を目視で観察した。
その後、鋼製成形金型で未加硫トレッド材(50mm×50mm)を挟んで圧力をかけて180℃で20分加熱して加硫反応を行った後、金型への付着の有無を目視により確認した。
【0046】
(比較例4)
アセタール化PVA樹脂水溶液25重量%(樹脂量5%)とチタン白10重量%を水に投入し混合分散させ、2重量%のプロピレングリコールを添加し均一にした塗料を作成した。
この塗料を印字装置PJ−1Bで80℃に加熱した未加硫トレッド材(50mm×50mm)にマーキングを行い、直後に水を噴霧して塗膜の状態を目視で観察した。
その後、鋼製成形金型で未加硫トレッド材(50mm×50mm)を挟んで圧力をかけて180℃で20分加熱して加硫反応を行った後、金型への付着の有無を目視により確認した。
【0047】
(比較例5)
アセタール化PVA樹脂水溶液25重量%(樹脂量5%)とチタン白10重量%を水に投入し混合分散させ、1.5重量%のアルミネート系カップリング剤を添加して均一にした塗料を作成した。この塗料を印字装置PJ−1B(マークテック社製)で80℃に加熱した未加硫トレッド材(50mm×50mm)にマーキングを行い、直後に水を噴霧して塗膜の状態を観察した。
その後、鋼製成形金型で未加硫トレッド材(50mm×50mm)を挟んで圧力をかけて180℃で20分加熱して加硫反応を行った後、金型への付着の有無を目視により確認した。
【0048】
(比較例6)
アセタール化PVA樹脂水溶液25重量%(樹脂量5%)とチタン白2重量%を水に投入し混合分散させ、1.5重量%のチタネート系カップリング剤と2重量%のグリセリンを添加して均一にした塗料を作成した。
この塗料を印字装置PJ−1Bで80℃に加熱した未加硫トレッド材(50mm×50mm)にマーキングを行い、直後に水を噴霧して塗膜の状態を目視で観察した。
その後、鋼製成形金型で未加硫トレッド材(50mm×50mm)を挟んで圧力をかけて180℃で20分加熱して加硫反応を行った後、金型への付着の有無を目視により確認した。
【0049】
(比較例7)
アセタール化PVA樹脂水溶液25重量%(樹脂量5%)とチタン白10重量%を水に投入し混合分散させ、0.5重量%のチタネート系カップリング剤と2重量%のグリセリンを添加して均一にした塗料を作成した。
この塗料を印字装置PJ−1Bで80℃に加熱した未加硫トレッド材(50mm×50mm)にマーキングを行い、直後に水を噴霧して塗膜の状態を目視で観察した。
その後、鋼製成形金型で未加硫トレッド材(50mm×50mm)を挟んで圧力をかけて180℃で20分加熱して加硫反応を行った後、金型への付着の有無を目視により確認した。
【0050】
(比較例8)
アセタール化PVA樹脂水溶液25重量%(樹脂量5%)とチタン白10重量%を水に投入し混合分散させ、3重量%のチタネート系カップリング剤と2重量%のグリセリンを添加して均一にした塗料を作成した。
この塗料を印字装置PJ−1Bで80℃に加熱した未加硫トレッド材(50mm×50mm)にマーキングを行い、直後に水を噴霧して塗膜の状態を目視で観察した。
その後、鋼製成形金型で未加硫トレッド材(50mm×50mm)を挟んで圧力をかけて180℃で20分加熱して加硫反応を行った後、金型への付着の有無を目視により確認した。
【0051】
(比較例9)
アセタール化PVA樹脂水溶液25重量%(樹脂量5%)とチタン白10重量%を水に投入し混合分散させ、1.5重量%のチタネート系カップリング剤と0.5重量%のエチレングリコールを添加して均一にした塗料を作成した。
この塗料を印字装置PJ−1Bで80℃に加熱した未加硫トレッド材(50mm×50mm)にマーキングを行い、直後に水を噴霧して塗膜の状態を目視で観察した。
その後、鋼製成形金型で未加硫トレッド材(50mm×50mm)を挟んで圧力をかけて180℃で20分加熱して加硫反応を行った後、金型への付着の有無を目視により確認した。
【0052】
(比較例10)
アセタール化PVA樹脂水溶液25重量%(樹脂量5%)とチタン白10重量%を水に投入し混合分散させ、1.5重量%のチタネート系カップリング剤と3重量%のエチレングリコールを添加して均一にした塗料を作成した。
この塗料を印字装置PJ−1Bで80℃に加熱した未加硫トレッド材(50mm×50mm)にマーキングを行い、直後に水を噴霧して塗膜の状態を目視で観察した。
その後、鋼製成形金型で未加硫トレッド材(50mm×50mm)を挟んで圧力をかけて180℃で20分加熱して加硫反応を行った後、金型への付着の有無を目視により確認した。
【0053】
(比較例11)
ケン化度が86.5〜89mol%未満のポリビニールアルコールのアセタール化樹脂として、ゴーセノール(登録商標)GL−05(日本合成化学株式会社製)を20%、水に分散させ撹拌しながら90℃まで加熱して溶解させる(以下この水溶液を「アセタール化PVA樹脂2水溶液」という)。
【0054】
アセタール化PVA樹脂2水溶液25重量%(樹脂量5%)とチタン白5重量%を水に投入し混合分散させ、1.5重量%のチタネート系カップリング剤と2重量%のグリセリンを添加して均一にした塗料を作成した。
この塗料を印字装置PJ−1Bで80℃に加熱した未加硫トレッド材(50mm×50mm)にマーキングを行い、直後に水を噴霧して塗膜の状態を目視で観察した。
その後、鋼製成形金型で未加硫トレッド材(50mm×50mm)を挟んで圧力をかけて180℃で20分加熱して加硫反応を行った後、金型への付着の有無を目視により確認した。
【0055】
実施例1〜3及び比較例1〜11の配合比率を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
実施例1〜3及び比較例1〜11の水冷時の状態及び加硫反応後の金型への塗料の付着の有無について目視によって評価した結果を表2に示す。
【0058】
表2の水冷時の状態は、塗料が溶解しない場合には○、一部溶解する場合には△、溶解する場合には×で表わす。
また、金型への塗料の付着は、付着がない場合には○、付着がある場合には×で表わす。
なお、その他の評価は備考に記載した。
【0059】
【表2】
【0060】
表2に示したとおり、本発明のゴム用塗料は80℃のゴム材料でも表面に付着して速乾性があり、冷水によっても溶解せず、かつ、180℃で20分間の加硫反応による成形工程においても塗料が成形金型に付着しない塗料である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明におけるゴム用塗料は、高温のゴム材料であっても滲まず鮮明に付着し、速乾性があり、冷水によって溶解せず、かつ、高温の加硫反応による成形工程においても成形金型に塗料が付着しない塗料であり、タイヤのトレッドに好適に用いることができる。
また、冷水には溶解しないが、60℃以上の温水には溶解するため、たとえ印字装置のノズルが目詰まりしたとしても温水により容易に目詰まりを解消でき、加えて、石油系溶剤やVOCを含有しないため人体及び環境に悪影響を及ぼさないゴム用塗料であるから、本発明は産業上の利用可能性が高い発明である。