【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ジーエルサイエンス株式会社は、平成26年7月8日に岸和田市上下水道局において、平成26年9月19日および10月31日に奈良市企業局浄水課緑ヶ丘浄水場において、本願装置の説明・据付・作動確認・水道水の揮発性有機化合物(VOC)の測定を行った。 また、ジーエルサイエンス株式会社は、平成26年9月29日に静岡市上下水道局水道部水質管理課において、本願装置の説明を行った。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を被検体である水系溶液のVOCの成分分析として、パージ・トラップ法を採用した図示の実施形態について説明すると、
図1乃至
図7において1は成分分析装置で、これはVOC成分を含む水系溶液を貯留部へ送出し、該水系溶液に後述する液状の内部標準液(以下、単に内標と呼ぶ)を自動注入する内標導入部2と、前記水系溶液と内標を導入し、不活性ガスでパージを行うことによって分析対象成分を液相から気相へ抽出させ、その気相を濃縮し、GCまたはGC/MS等の検出器を備えた分析装置へ導入する気相抽出部であるパージ・トラップ部3と、洗浄液または搬送用加圧ガスを内標導入部2へ送出するとともに、水系溶液の採取とその計量並びに搬送と洗浄の諸機構を備えたオートサンプラ−部4と、で構成されている。
【0022】
前記水系溶液は、分析対象成分を含むものと含まないものの双方を含み、前記内標導入部2は、水系溶液の送液管5の中流部に介挿した注入機構を備えた電磁弁からなる内標導入弁8と、該内標導入弁8に連通する内標導管9とで構成され、前記内標導入弁8を挟む送液管5の上流側と下流側位置に、所定容量の第1および第2貯留部6,7を設けている
実施形態の場合、前記送液管5は折曲可能で透明または半透明のフッ素樹脂製の細管を折曲して配管され、第1および第2貯留部6,7は、前述と同質の細管を所定径のループ状に捲回して所定容量に構成し、その両側の管端部を送液管5に嵌合して装着し、または送液管5の所定位置を捲回して一体に構成している。
【0023】
前記内標導入弁8は送液管5と内標導管9との交差部に回動可能に配置され、その作動をパーソナルコンピュータを駆使した制御装置(図示略)によって切換え制御され、後述する溝孔と送液管5または内標導管9との連通を切換え可能にしている。
前記内標導入弁8は、その円筒軸状の内部に軸方向と直交方向に溝孔8aが貫通して形成され、該溝孔8aは内標の注入スペースとして機能し、その回動位置によって前記送液管5または内標導管9と連通可能にされている。
前記内標導管9の一端は内標収納容器11に挿入され、該容器11に不活性ガス源に連通する加圧ガス導管12が挿入され、該導管12から導入された不活性ガスによって、前記容器11内の内標13を前記内標導管9へ押し出し、内標導入弁8へ供給可能にしている。前記不活性ガスとしてはヘリウムガスまたは窒素ガス等を使用している。
【0024】
前記内標導管9は内標導入弁8の周面に前記送液管5と直交方向に配置され、その上流部が前記不活性ガス源等の加圧部45に連絡し、その下流側端部が排出容器10に挿入され、該排出容器10に供給した内標13の余剰分を排出可能にしている。
【0025】
前記内標導入弁8は、内標注入前は
図1の実線のように閉弁し、内標導入弁8と内標導管9を遮断し、代わりに第1および第2貯留部6,7を連通させて、これらに前記水系溶液16を導入可能にしている。
すなわち、前記溝孔8aは前記制御装置を介して送液管5に連通可能に配置され、送液管5に導入した水系溶液16を内部へ導入可能にしている。この状況は
図4(a)のようである。
【0026】
次に、内標13の注入時は、内標導入弁8を
図1の破線のように切換えて開弁し、内標
導入弁8を内標導管9に連通して内標13を導入し、その余剰分を排出容器10へ排出可能にしている。
すなわち、前記制御装置を介して、内標導入弁8を内標注入前の状況から時計方向へ90°回動し、前記溝孔8aを内標導管9へ連通可能に配置して、内標13を導入可能にしている。この状況は
図4(b)のようである。
【0027】
前記内標13の注入後、内標導入弁8を
図1の実線のように切換えて閉弁し内標導入弁
8を復旧して、内標導入弁8と内標導管9を遮断し、代わりに第1および第2貯留部6,7に連通させている。
すなわち、前記制御装置を介して、内標導入弁8を内標注入時から反時計方向へ90°回動し、前記溝孔8aを送液管5に連通可能に配置して、前記溝孔8a内に導入した内標13の全量を送液管5内の水系溶液16中に注入可能にしている。この状況は
図4(c)および
図5のようで、水系溶液16中に所定量の内標13がサンドイッチ状に配置される
【0028】
実施形態では、前記内標13は水系溶液中の目的対象成分に含まれていない成分であり、物性が似ており、定量目的成分に近い位置で溶出し、高純度な成分である必要があり、実施形態ではフルオロベンゼンと1,4-ジオキサン-d8、トルエン-d8とp-
ブロモフルオロベンゼンの4成分を使用している。
このうち、フルオロベンゼン、トルエン-d8、p-
ブロモフルオロベンゼンは、検出器の感度の補正を図り、1,4-ジオキサン-d8は1,4-ジオキサンの補正を図るようにしている。
【0029】
前記送液管5の上流側に内外二重管構造のニ−ドル14が配置され、該ニ−ドル14の尖端部を常時は後述の排出容器に収容し、その外側通路(図示略)に不活性ガスを導入可能なガス導管15を接続している。
前記ニードル14の直下に、前述の水系溶液16を収容する容器17が配置され、その蓋にニードル14の尖端部を抜き差し可能にしている。
【0030】
そして、ニードル14の先端部を前記容器17内の水系溶液16に挿入し、ガス導管15に注入した不活性ガスをニードル14の外側通路に導入して、水系溶液16を内側通路(図示略)に連通する送液管5へ押し出し可能にしている。
図中、18はニードル14から排出された洗浄液を収容する排出容器、19は水系溶液16の余剰分を収容する排出容器で、送液管5の下流側端部に配置されている。
【0031】
前記送液管5の第1貯留部6より上流側に第1切換弁20が配置され、また第2貯留部7より下流側に第2切換弁21が配置され、前記第1切換弁20にパージ・トラップ導入管22が接続され、第2切換弁21に不活性ガス源に連通する加圧ガス導管23が接続されている。
前記第1および第2切換弁20,21は電磁弁で構成され、これらの作動は前記制御装置によって制御されている。
【0032】
すなわち、前記第1および第2切換弁20,21は、水系溶液16を第1および第2貯留部6,7へ導入する際、
図1の実線のように切換えられ、また内標13を含む水系溶液16をパージ・トラップ導入管22へ導入する際、第1切換弁20および第2切換弁21を
図1の破線のように切換え、更に第1および第2貯留部6,7を洗浄および乾燥する際、第1切換弁20を
図1の実線のように、第2切換弁21を
図1の破線のようにそれぞれ切換え可能にしている。
【0033】
前記パージ・トラップ部3は、パージ・トラップ導入管22から導入される水系溶液16の所定成分をパ−ジするパージ管24と、パージしたガス状のVOCをトラップするトラップ管25と、トラップしたVOCの成分を分析する分析装置26、とを備えている。
このうち、前記パージ管24は略U字管状に形成され、その両側の施栓した閉塞端を上側に配置し、その一方の閉塞端にパージ・トラップ導入管22の端部を挿入して、内標13を注入した水系溶液16を導入し、パージ管24の上部にパージ導管27の一端を挿入している。
【0034】
また、パージ管24の他方の閉塞端に、不活性ガス源に連通する加圧ガス導管28が接続され、この不活性ガスをパージガスとしてパージ管24へ導入し、前記水系溶液16と内標13に含まれるVOCを水中から分離し、上方に滞留する分離ガスをパージ導管27へ押し出し可能にしている。図中、29は水系溶液16と内標13が混在している溶液である。
【0035】
前記トラップ管25は、内部に前記分離ガスをトラップ可能な吸着剤30を収容してトラップ導管31に介挿され、その外周面にヒータ(図示略)を装着し、該ヒータを加熱して吸着剤30にトラップした分離ガスを脱着し、分析導管32を介して分析装置26へ導入可能にしている。
前記分析装置26は検出器を備えたGCまたはGC/MSからなり、トランスファーライン33を介して分析導管32を所定温度に加温し、コールドスポットを作らず分析精度を確保させている。
【0036】
前記パージ導管27の下流側に第3切換弁34が介挿され、該切換弁34は電磁弁で構成され、前記水系溶液のパージ・トラップ時にパージ導管27との連通と遮断を可能にし、その作動を前記制御装置によって制御している。また、前記第3切換弁34に不活性ガス源に連通する加圧ガス導管35が接続され、この不活性ガスを第3切換弁34へ導入可能にしている。
【0037】
すなわち、前記第3切換弁34は前記水系溶液のパージ・トラップ時に、
図1の実線のように切換えられてパージ導管27と連通し、分離ガスをトラップ管25へ移動可能にしている。
また、前記第3切換弁34はトラップ管25の除湿・乾燥時に
図1の破線のように切換えられて、加圧ガス導管35とパージ導管27の上流側への連通を遮断し、加圧ガス導管35をパージ導管27の下流側へ連通させて、不活性ガスをトラップ管25へ導入可能にしている。
【0038】
前記トラップ導管31の一端に第4切換弁36が接続され、該切換弁36は電磁弁で構成され、前記水系溶液16のパージ・トラップ時に
図1の実線のように切換えてパージ導管27と連通し、該導管27を移動する分離ガスを吸着剤30に吸着し、吸着後の分離ガスを外部へ排出可能にしている。
前記第4切換弁36に不活性ガス源に連通する加圧ガス導管37が接続され、該切換弁36は分析時に破線のように切換えられ、不活性ガスによって吸着剤30から脱着した分離ガスを分析装置26へ移送可能にしている。
【0039】
前記パージ導管27の下流側端部と、トラップ導管31の一端と、分析導管32の一端とが第5切換弁38の各ポートに接続され、該切換弁38は電磁弁で構成され、その作動を前記制御装置によって制御している。
前記第5切換弁38は、パージ・トラップ時に
図1の実線のように切換えてパージ導管27をトラップ導管31に連通し、該パージ導管27を移動する分離ガスをトラップ管25へ移送可能にしている。
また、不活性ガス源に連通する加圧ガス導管39を第5切換弁38に接続し、該導管39をパージ・トラップ時に
図1の実線のように切換えて分析導管32に連通させ、不活性ガスを分析装置26へ導入可能にしている。
【0040】
一方、前記加圧ガス導管23の上流側に第6切換弁40と第7切換弁41とが離間して配置され、これらは電磁弁で構成され、その作動を前記制御装置によって制御している。
このうち、第6および第7切換弁40,41は水系溶液16を第1および第2貯留部6,7へ導入する際、
図1の実線のように切換えられて連通し、第7切換弁41に接続した前記ガス通路15へ不活性ガスを供給可能にしている。
そして、水系溶液16をパージ・トラップ部へ導入する際、第6および第7切換弁40,41は
図3の実線のように切換えられて連通し、不活性ガスを送液管5およびパージ・トラップ導入管22へ移送可能にしている。
【0041】
また、第1および第2貯留部6,7の洗浄時は、第6および第7切換弁40,41を
図7の実線のように切換え、不活性ガス源に連通する加圧ガス導管42から不活性ガスを洗浄容器43へ導入し、該容器43に収容した洗浄液44を加圧ガス導管23へ送り出し、これを第1および第2貯留部6,7と送液管5へ移動して洗浄し、洗浄後の洗浄液44を排出容器18へ排出させている。
【0042】
なお、この実施形態では第1および第2貯留部6,7をループ状に捲回して構成しているが、これに限らず直管状の導管を大径に形成して所定容量に構成したものでも良い。
【0043】
このように構成した内部標準液の移送方法およびその移送装置は、水系溶液16を導入可能な送液管5にパージ・トラップ部3を連通および遮断可能に配置し、該送液管5に第1および第2貯留部6,7を離間して配置する。
実施形態の第1および第2貯留部6,7は、細管を捲回して所定容量のループ状に構成し、それらの両端部を送液管5の中流部に嵌合して装着し、または細管を捲回して一体に構成し、それらの間に内標導入弁8を開閉可能に配置する。
【0044】
前記内標導入弁8は制御装置によって開閉制御され、この内標導入弁8に内標導管9を連通および遮断可能に配置する。
すなわち、前記内標導入弁8を送液管5と内標導管9に回動可能に介挿し、その作動をパーソナルコンピュータを駆使した制御装置(図示略)によって切換え制御し、その溝孔8aと送液管5または内標導管9との連通を切換え可能にしている。
前記内標導入弁8は、その円筒軸状の内部に内標13の注入スペースとして、溝孔8aを軸方向と直交方向に貫通して形成しており、該溝孔8aが内標13の計量手段として機能し、従来のような複雑で高価な計量機構を要しない。
【0045】
前記内標導管9の一端を内標収納容器11に挿入し、該容器11に不活性ガス源に連通する加圧ガス導管12を挿入し、該導管12から導入された不活性ガスによって、前記容器11内の内標13を前記内標導管9へ押し出し、内標導入弁8へ供給可能にする。
前記内標導管9を内標導入弁8の周面に前記送液管5と直交方向に配置し、その上流部を前記不活性ガス源等の加圧部45に連絡し、その下流側端部を排出容器10に挿入し、該排出容器10に供給した内標13の余剰分を排出可能にする。
【0046】
前記水系溶液16はVOC成分を含む水等を使用し、内標13としては水系溶液中の目的対象成分に含まれていない成分であり、物性が似ており、分析対象成分に近い位置で溶出し、高純度な成分である必要があり、実施形態ではフルオロベンゼン、1,4-ジオキ
サン-d8、トルエン-d8、p-
ブロモフルオロベンゼン等を使用する。
このうち、フルオロベンゼン、トルエン-d8、p-
ブロモフルオロベンゼンは、検出器の感度の補正を図り、1,4-ジオキサン-d8は1,4-ジオキサンの補正を図るようにする。
【0047】
前記フルオロベンゼン、p-
ブロモフルオロベンゼン、トルエン-d8は回収率が高い成分で、パージを行なうことによって略全量が揮発しトラップ管25へ吸着される一方、1,4-ジオキサン-d8は親水性が高く回収率が低い成分であるため、パージを行なってもトラップ管25へ吸着される割合が低い。
【0048】
このように実施形態の内部標準液の移送装置は、既設装置の一部を改変して容易に対応でき、内標13の特別な計量手段や制御機構を要しないから、従来のように内部標準ガスの流量を自動制御するマスフローコントローラや、開閉時間を制御する三方弁を要せず、その分構成が簡単で、容易かつ安価に製作することができる。
しかも、この実施形態では後述のように内標13の前後に水系溶液16を配置し、内標13をサンドイッチ状に挟み込んでパージ・トラップ部3へ送り込んでいるから、内標13が水系溶液16に容易かつ速やかに馴染んで、これらが均一かつ精密に分布する。
したがって、例えば内標13の背後に水系溶液16を配置し、水系溶液16によって内標を押し出す方法に比べ、内標13が水系溶液16に速やかで、かつ均一に分布する。
【0049】
次に、前記移送装置を使用して内標13を水系溶液に注入する場合は、ニードル14を排出容器18から引き上げ、その尖端を容器17の蓋に刺し込んで内部の水系溶液16に挿入する。
そして、第1,2,6,7切換弁20,21,40,41と、内標導入弁8を
図1の実線のように切換え、内標導入弁8と内標導管9を遮断して、不活性ガスを加圧ガス導管23へ送り込み、該ガスをガス導管15を介してニードル14の外側通路(図示略)へ導入し、容器17内の水系溶液16をニ−ドル14の内側通路(図示略)から送液管5へ押し出す。
【0050】
前記押し出された水系溶液16は、送液管5に導かれて第1貯留部6へ移動し、該貯留部6を充填後、内標導入弁8内を貫流して第2貯留部7に導かれ、該貯留部7を充填後、その余剰分を排出容器19へ排出する。
この状況は
図1のようで、第1および第2貯留部6,7と、それらの間を含む送液管5に水系溶液16が充填される。
この場合、第1および第2貯留部6,7に分析対象成分を含む水系溶液16を導入しているが、その何れか一方の貯留部に分析対象成分を含む水系溶液16を導入し、他方の貯留部に分析対象成分を含まない水系溶液16を導入して、測定することも可能である。
その際、分析対象成分を含まない水系溶液16を先に第2貯留部7へ導入し、この後に分析対象成分を含む水系溶液16を第1貯留部6へ導入することも可能であり、この反対であっても良い。
【0051】
この後、ニードル14を容器17から引き抜いて排出容器18内へ移動し、第1,2,7切換弁20,21,41と内標導入弁8を
図2の実線のように切換え、内標導入弁8と内標導管9を連通する。
そして、不活性ガスを加圧ガス導管12へ送り込み、該ガスを内標収納容器11へ導入して内標13を内標導管9へ押し出し、これを内標導入弁8へ導いて溝孔8aに導入し、導入後の余剰分を排出容器10へ排出する。この状況は
図2のようである。
【0052】
すなわち、内標13を内標導入弁8へ注入する際、前記制御装置を介して、内標導入弁
8を内標注入前の状況から時計方向へ90°回動し、前記溝孔8aを内標導管9へ連通させて、内部に内標13を導入する。この状況は
図4(b)のようである。
【0053】
そして、前記制御装置を介して、内標導入弁8を内標注入時から反時計方向へ90°回
動し、前記溝孔8aを送液管5に連通可能に配置し、前記溝孔8a内に導入した内標13の全量を送液管5内の水系溶液16中に注入する。この状況は
図4(c)および
図5のようで、水系溶液16中に所定量の内標13がサンドイッチ状に配置される。
したがって、液相の水系溶液16の間に液相の内標13が密接に3層に配置され、内標13が両側の水系溶液16に親水して馴染み拡散する。
実施形態では、本発明の所期の効果を得るために、内標13が1μLのとき、その前後に0.5mL以上の水系溶液16を配置しているが、これに限定されるものではない。
【0054】
こうして水系溶液16に内標13を注入後、これをパージ・トラップ部3へ導入する際は、第1〜7切換弁20,21,34,36,38,40,41を
図3の実線のように切換え、加圧導管23と送液管5の中流部と、パージ・トラップ導入管22を連通し、またパージ導管27をトラップ導管31に連通する。
そして、加圧導管23の上流側から不活性ガスを送り込み、該ガスを送液管5へ移動して、該導入管5に充填した水系溶液16と内標13をパージ・トラップ導入管22側へ送り出す。
【0055】
このうち、第2貯留部7内の水系溶液16は前記ガスに押圧されて、該貯留部7のループに沿って回流し、内標導入弁8側へ移動して、第2貯留部7のループ内の水系溶液16に遠心力が働く。
その際、流速の大きい導管中央部では、水系溶液16部に作用する遠心力が、管内壁面付近の流速の小さい水系溶液16部に働くそれよりも大きいため、前記中央部の水系溶液16はループ管の外側へ押しやられ、管内壁付近の水系溶液16は内壁に沿ってループ管の内側に回り込む。
【0056】
一方、第2貯留部7の断面内の圧力分布は一様ではなく、ループ管の外側の内壁で高く、内側の内壁で低くなるため、第2貯留部7の管軸に垂直な断面内に、一対の循環流である二次流れが生じる。
すなわち、この一対の二次流れの一方は、ループ管の内側から外側へ循環し、他方はループ管の外側から内側へ循環する。
したがって、第2貯留部7内では、水系溶液16の流速と圧力が不規則に変動して乱流に似た流れを呈し、大小様々な渦運動が形成されて、水系溶液16の混合ないし攪拌が活発に行なわれる。
【0057】
この後、前記水系溶液16は、第2貯留部7を流出して内標導入弁8へ導かれるが、水系溶液16の前述した乱流に似た流れは、介在する水系溶液16に伝播して注入された内標13の一端に波及し、それらの混合ないし攪拌を促す。
この後、前記内標13は前記ガスに押圧されて水系溶液16と一緒に第1貯留部6側へ移動し、該貯留部6のループ内を移動する。
その際、第1貯留部6内のループでは、前述と同様に水系溶液16の流速と圧力が不規則に変動して乱流に似た流れを呈し、大小様々な渦運動が形成されて、水系溶液16と内標13の混合ないし攪拌が活発に行なわれ、内標13が水系溶液16に均一に分布する。
【0058】
こうして内標13を注入された水系溶液16は、第1切換弁20からパージ・トラップ導入管22を経てパージ管24に導入され、導入後、パージ管24の他端の加圧導管28から不活性ガスを送り込み、水系溶液16と内標13が混在した溶液を強制的にパージし、このパ−ジ成分をパージ導管27へ送り出す。
この場合、前述のように内標13が水系溶液16に均一に分布してパージ管24に導入されるから、内標13の分布状況によってパージ効率、つまり水溶液中にパージガスを流して気液平衡を作り、揮発性成分を回収する効率、が相違し、回収率が異なる不具合を解消し得る。
【0059】
したがって、水系溶液16内での内標13の不均一な分布によって、パージ効率がばらつき変化する事態を抑制し得る。特に、水系溶液16と内標13中の回収率の低い成分である1,4-ジオキサンと1,4-ジオキサン-d8に同様のパージ効率を得られるから、回収率のばらつきが小さくなる。
【0060】
前記パージ成分を第3切換弁34を経て第5切換弁38へ導入し、該切換弁38からトラップ導管31へ移動して、該導管31に介挿したトラップ管25の吸着剤30にトラップし、余剰分を第4切換弁36から外部へ排出する。この状況は
図3のようである。
この後、前記トラップ成分を分析する場合は、第4および第5切換弁36,38を
図6の実線のように切換え、トラップ導管31を分析導管32に連通し、前記トラップ管25を加熱して吸着剤30にトラップしたトラップ成分を脱着する。
【0061】
そして、加圧導管37から不活性ガスを送り込み、これをトラップ管25に導いて脱着成分を第5切換弁38を介し分析導管32へ送り出し、更に分析装置26へ導入して前記脱着成分を検出し分析する。
その際、前述のように内標13が水系溶液16に均一に分布され、該水系溶液16と内標13中の各成分に対し同様なパージ効率を得られるから、回収率の低い成分である1,4-ジオキサンと内標13の1,4-ジオキサン-d8も同様のパージ効率を得られ、回収率のばらつきが小さくなるため、分析精度の信頼性を得られる。
【0062】
こうして水系溶液16の各成分を分析後、例えば第1および第2貯留部6,7を洗浄する場合は、第1,2,6,7切換弁20,21,40,41と、内標導入弁8を
図7の実線のように切換え、加圧導管42に不活性ガスを送り込み、これを洗浄容器43へ導入する。
このようにすると、洗浄液44が洗浄容器43から押し出され、第6切換弁40を介し加圧導管23へ送り出され、第7,2切換弁41,21を経て第2貯留部7へ移動し、次いで内標導入弁8から第1貯留部6へ移動して、それらを洗浄する。
そして、洗浄液44を送液管5の端部側へ移動してノズル14へ導入し、該ノズル14を洗浄後に洗浄液44を排出容器18に排出する。この状況は
図7のようである。
【0063】
このように本発明はVOC成分を含む水系溶液16をパージ・トラップする際、水系溶液16に液体の内標13を注入し、これらをサンドイッチ状に配置してパージ・トラップ部3へ導入しているから、内標13が水系溶液16に馴染み易く均一に分布し、水系溶液16中の目的成分と内標13のパージ効率を同一にして、分析精度の信頼性を得るようにしたものである。
【0064】
図8乃至
図10は本発明の
応用形態と他の実施形態を示し、前述の実施形態と対応する構成部分に同一の符号を用いている。このうち、
図8は本発明の
前記実施形態の応用形態を示し、この
応用形態は水系溶液16に内標13を注入後、これらを更に攪拌して内標13の均一な分布状態を得られる二つの形態を示している。
このうち(a)は、第1切換弁20とパージ管24との間のパージ・トラップ導入管22にミキサー46を配置し、該ミキサー46はフッ素樹脂製の細管を所定径のループ状に捲回して所定容量に構成し、その両側の管端部を前記導入管22に嵌合して装着している
【0065】
そして、内標13を水系溶液16に注入後、これらをパージ・トラップ部3に導入する際、内標13を注入した水系溶液16を前記ミキサー46へ導入し、該ミキサー46では前述と同様に、水系溶液16の流速と圧力が不規則に変動して乱流に似た流れを呈し、大小様々な渦運動が形成されて、水系溶液16と内標13の混合ないし攪拌が活発に行なわれ、内標13と水系溶液16の分布状態が更に均一化されてパージ管24に導入され、各成分に対し同様なパ−ジ効率を得られるようにしている。
【0066】
図8(b)は前記ミキサー46の別の形態として、所定長さの直管状のミキシング管47を介挿し、該管47に多数のガラスビ−ズ48を収容し、該ビ−ズ48に水系溶液16と内標13を接触させ、かつそれらの接触面積を増大させて、攪拌精度の向上と内標13と水系溶液16の分布状態を更に均一化してパージ管24に導入し、各成分に対し同様なパージ効率を得られるようにしている。
【0067】
図9および
図10は本発明の第
2の実施形態を示し、この実施形態は内標導管9の内標導入弁8よりも下流側または上流側、実施形態では下流側に抵抗部49を配置し、前記抵抗部49によって注入機構における内標量を調量可能にしている。
すなわち、前記抵抗部49は、当該部の導管の内径を内標導管9よりも増減し、または当該部の導管の長さを長尺若しくは縮小して管路抵抗を加減し、内標導入弁8に対する内標13の注入量を調量可能にしている。
前記実施形態の抵抗部49は、導管の内径を内標導管9よりも縮径し、および/または当該部の導管の長さを長尺にして管路抵抗を増大し、内標導入弁8に対する内標13の注入量ないし導入量を抑制している。
【0068】
前記抵抗部49による内標導入弁8の内標13の注入状況は
図10のようで、内標13の注入前は前記溝孔8aは前記制御装置を介して送液管5に連通可能に配置され、送液管5に導入した水系溶液16を内部へ導入可能にしている。この状況は
図10(a)のようである。
次に、内標13の注入時は、内標導入弁8を内標注入前から時計方向へ90°回動し、前記溝孔8aを内標導管9へ連通可能に配置して、内部に内標13を導入可能にする。
その際、抵抗部49による管路抵抗によって、内標13の導入速度が減速され注入量が減少する。実施形態では、内標13の注入量が溝孔8aの容積相当分の約1/2に調量されている。この状況は
図10(b)のようである。
【0069】
前記内標13の注入後、内標導入弁8を切換えて閉弁し、内標導入弁8と内標導管9を遮断し、代わりに第1および第2貯留部6,7を連通させて、内標導入弁8を復旧する。
すなわち、前記制御装置を介して、内標導入弁8を内標注入時から反時計方向へ90°回動し、前記溝孔8aを送液管5に連通させて、前記溝孔8a内に導入した内標13の先端部を送液管5内の水系溶液16に密接させて注入する。この状況は
図10(c)のようである。
このようにこの実施形態では、抵抗部49によって内標導入弁8に対する内標13の注入量を調整し、この調量した内標13を水系溶液16に導入して、水系溶液16の分析条件に応じた最適量の内標13の注入を実現し、内標13の適確な使用と有効利用を図るようにしている。