特許第6501540号(P6501540)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6501540
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】メタルガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/08 20060101AFI20190408BHJP
   F02F 11/00 20060101ALI20190408BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20190408BHJP
【FI】
   F16J15/08 H
   F16J15/08 B
   F02F11/00 L
   F02F11/00 J
   F01N13/08 E
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-20363(P2015-20363)
(22)【出願日】2015年2月4日
(65)【公開番号】特開2016-142387(P2016-142387A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2018年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000230261
【氏名又は名称】日本メタルガスケット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 孝大
(72)【発明者】
【氏名】田渕 太郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 淳史
(72)【発明者】
【氏名】永野 勲
(72)【発明者】
【氏名】小林 信秀
(72)【発明者】
【氏名】十文字 英隆
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−336791(JP,A)
【文献】 実開平06−053859(JP,U)
【文献】 特開2015−014242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00−1/24
5/00−5/04
13/00−99/00
F02F 5/00
11/00
F16J 15/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部材の締結面間に介装されるメタルガスケットであって、
前記締結面に開口した通路に対応して形成された通路孔と、
前記通路孔を無端状に囲むように形成されたビードと、
前記部材どうしを締結する締結ボルトが通過可能に、前記ビードの外方に形成された少なくとも3つのボルト孔と、
前記ボルト孔の周囲に前記締結ボルトの頭部に対応して形成されたボルト受圧領域と、
隣り合う前記ボルト受圧領域どうしを直線状に結ぶように延び、前記ボルト受圧領域の直径と等しい幅を有する第1領域における前記ビードの外方の領域である第2領域に形成された貫通孔とを有し、
当該メタルガスケットは、互いに積層された複数の金属板を含み、
前記複数の金属板は、前記部材の締結面間から外方に突出した突出部を有し、前記突出部において互いに結合され、
前記貫通孔は、前記第2領域において、前記突出部に近接した位置に配置されていることを特徴とするメタルガスケット。
【請求項2】
複数の部材の締結面間に介装されるメタルガスケットであって、
前記締結面に開口した通路に対応して形成された通路孔と、
前記通路孔を無端状に囲むように形成されたビードと、
前記部材どうしを締結する締結ボルトが通過可能に、前記ビードの外方に形成された少なくとも3つのボルト孔と、
前記ボルト孔の周囲に前記締結ボルトの頭部に対応して形成されたボルト受圧領域と、
隣り合う前記ボルト受圧領域どうしを直線状に結ぶように延び、前記ボルト受圧領域の直径と等しい幅を有する第1領域における前記ビードの外方の領域である第2領域に形成された貫通孔とを有し、
前記貫通孔は、少なくとも3つの前記ボルト孔の内で、隣り合う前記ボルト孔間の距離が最も長くなる2つの前記ボルト孔に対応した前記第2領域に形成されていることを特徴とするメタルガスケット。
【請求項3】
複数の部材の締結面間に介装されるメタルガスケットであって、
前記締結面に開口した通路に対応して形成された通路孔と、
前記通路孔を無端状に囲むように形成されたビードと、
前記部材どうしを締結する締結ボルトが通過可能に、前記ビードの外方に形成された少なくとも3つのボルト孔と、
前記ボルト孔の周囲に前記締結ボルトの頭部に対応して形成されたボルト受圧領域と、
隣り合う前記ボルト受圧領域どうしを直線状に結ぶように延び、前記ボルト受圧領域の直径と等しい幅を有する第1領域における前記ビードの外方の領域である第2領域に形成された貫通孔とを有し、
前記貫通孔は、少なくとも3つの前記ボルト孔の内で、前記通路孔と当該メタルガスケットの外縁との距離が最も小さくなる部分の両側に配置された2つの前記ボルト孔に対応した前記第2領域に形成されていることを特徴とするメタルガスケット。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記第2領域において、前記通路孔を中心とした径方向において外側にオフセットして配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つの項に記載のメタルガスケット。
【請求項5】
前記貫通孔は、前記第2領域において、前記第1領域の長手方向において前記ボルト受圧領域側にオフセットして配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つの項に記載のメタルガスケット。
【請求項6】
前記通路孔は2つの隣接する前記ボルト孔の間を延びる接線を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つの項に記載のメタルガスケット。
【請求項7】
前記接線は、前記貫通孔と接する又は重なることとを特徴とする請求項6に記載のメタルガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温部において使用されるメタルガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関のシリンダブロックとシリンダヘッドとの締結面間や、シリンダヘッドと排気マニホールドの締結面間等の高温環境におけるシール構造としてメタルガスケットが使用されている。
【0003】
メタルガスケットは高温環境下においては熱膨張するため、メタルガスケットを挟持する部材との間に熱膨張率に差がある場合、メタルガスケットに応力が生じて変形等が生じ、シール性能が損なわれるという問題がある。この問題に対して、シリンダヘッドと排気マニホールドとの間に介装されるメタルガスケットにおいて、各排気ポートに対応したシール板部どうしを連結する接続板部に通孔を形成し、メタルガスケットに引張応力が生じたときに、接続板部を破断させるものがある(例えば、特許文献1)。このメタルガスケットは、装着時には1つの連続した部材であるため装着が容易であり、装着後は応力が生じた場合に破断して個々に独立したシール板部となり、隣のシール板部から引張荷重を受けないようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−167812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係るメタルガスケットは、破断して個々に独立した後のシール板部において生じる応力を緩和することができない。破断して各シール板部に分離した後も、各シール板部はボルトによって一部がシリンダヘッド及び排気マニホールドに固定されているため、シリンダヘッド及び排気マニホールドとの熱膨張率の差によって、各シール板部に応力が生じる。これにより、場合によっては、シール板部のビードに変形や破断が生じ、シールが保てなくなる虞がある。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑み、メタルガスケットにおいて、局所的な応力集中を緩和することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、複数の部材(3、4)の締結面(8A、16E)間に介装されるメタルガスケット(1)であって、前記締結面に開口した通路(11、18)に対応して形成された通路孔(34)と、前記通路孔を無端状に囲むように形成されたビード(38)と、前記部材どうしを締結する締結ボルト(40)が通過可能に、前記ビードの外方に形成された少なくとも3つのボルト孔(35)と、前記ボルト孔の周囲に前記締結ボルトの頭部(40A)に対応して形成されたボルト受圧領域(41)と、隣り合う前記ボルト受圧領域どうしを直線状に結ぶように延び、前記ボルト受圧領域の直径と等しい幅を有する第1領域(42)における前記ビードの外方の領域である第2領域(43)に形成された貫通孔(36)とを有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、メタルガスケットとこれを挟持する部材との間に熱膨張率の差があり、メタルガスケットに応力が生じる場合に、局所的な応力集中が緩和される。応力は、ボルトによって拘束されるボルト受圧領域の間の部分である第1領域の低剛性部に集中し易いため、第2領域に貫通孔を設け、剛性を低下させることによって、応力が貫通孔の周囲に分散され、第1領域の低剛性部への局所的な応力集中が抑制される。これにより、メタルガスケットの変形や破断が抑制される。
【0009】
また、上記の発明において、前記貫通孔は、前記第2領域において、前記通路孔を中心とした径方向において外側にオフセットして配置されているとよい。
【0010】
この構成によれば、貫通孔がビードから離れた位置に配置されるため、貫通孔によってその周囲の剛性が低下する場合にもビード近傍の剛性が保たれ、ビードに変形や破断が生じる虞が低減される。
【0011】
また、上記の発明において、前記貫通孔は、前記第2領域において、前記第1領域の長手方向において前記ボルト受圧領域側にオフセットして配置されているとよい。
【0012】
この構成によれば、メタルガスケットとこれを挟持する部材との熱膨張率差に起因してメタルガスケットに生じる応力は、第1領域の低剛性部に集中するので、剛性が他の部分に対して高くなるボルトに近い部分の剛性を低くすることにより効果的に応力を分散することができ、ビードの変形や破断を抑制することができる。
【0013】
また、上記の発明において、当該メタルガスケットは、互いに積層された複数の金属板(30)を含み、前記複数の金属板は、前記部材の締結面間から外方に突出した突出部(32)を有し、前記突出部において互いに結合され、前記貫通孔は、前記第2領域において、前記突出部に近接した位置に配置されているとよい。
【0014】
この構成によれば、突出部によってメタルガスケットの幅が広く、剛性が高くなる部分に貫通孔が設けられるため、剛性の偏りが緩和され、低剛性部分への応力集中が緩和される。また、貫通孔の周囲の部分に応力が加わっても、その部分に変形が生じ難くなる。
【0015】
また、上記の発明において、前記貫通孔は、少なくとも3つの前記ボルト孔の内で、隣り合う前記ボルト孔間の距離が最も長くなる2つの前記ボルト孔に対応した前記第2領域に少なくとも形成されているとよい。
【0016】
この構成によれば、部材に対して膨張又は収縮による変化量の差が大きいことに起因して局所的な応力集中が生じやすい部分に対応して貫通孔が形成されるため、メタルガスケットの応力集中が緩和される。
【0017】
また、上記の発明において、前記貫通孔は、少なくとも3つの前記ボルト孔の内で、前記通路孔と当該メタルガスケットの外縁(39)との距離が最も小さくなる部分の両側に配置された2つの前記ボルト孔に対応した前記第2領域に少なくとも形成されているとよい。
【0018】
この構成によれば、メタルガスケットの幅が小さく、剛性が低いことに起因して局所的な応力集中が生じやすい部分に対応して貫通孔が形成されるため、メタルガスケットの応力集中が緩和される。
【発明の効果】
【0019】
以上の構成によれば、メタルガスケットにおいて、応力の局所的な集中を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る内燃機関の排気装置の分解斜視図
図2】実施形態に係るメタルガスケットの平面図
図3図2のIII−III断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明のメタルガスケットを内燃機関の排気装置に適用した一実施形態について説明する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係るメタルガスケット1は、内燃機関の排気装置2に使用される。排気装置2は、内燃機関のシリンダヘッドに結合される排気マニホールド3と、排気マニホールド3の下流端に結合されるターボチャージャ4とを有する。
【0023】
排気マニホールド3は、シリンダヘッドに形成された複数の排気ポートにそれぞれ連通する分岐管部6と、分岐管部6の下流側に設けられ、各分岐管部6が集合した集合管部7とを有する。集合管部7の下流端には、集合管部7の外方に張り出したマニホールド側フランジ8が形成されている。マニホールド側フランジ8の端面は、集合管部7の軸線方向と略直交する面をなし、マニホールド側締結面8Aを形成している。マニホールド側締結面8Aには、横断面が円形をなす集合通路11と、集合通路11の周囲に周方向に略等間隔に配置された3つの雌ねじ孔12とが開口している。マニホールド側締結面8Aは、略三角形に形成され、その中央に集合通路11が形成され、その各角部(隅部)に雌ねじ孔12が形成されている。
【0024】
ターボチャージャ4は、タービン14とコンプレッサ15と有する。タービン14は、タービンハウジング16と、タービンハウジング16内に回転可能に配置されたタービンブレード(不図示)とを有する。タービンハウジング16は、円盤状に形成され、内部にタービンブレードを回転可能に受容する本体部16Aと、本体部16Aの外周部に設けられ、接線方向に延びるタービン入口部16Bと、本体部16Aの中央部に設けられ、本体部16Aの軸線方向に延びるタービン出口部16Cとを有し、一連の排気通路を画定する。
【0025】
タービン入口部16Bの端部には、タービン入口部16Bの外方に張り出したタービン側フランジ16Dが形成されている。タービン側フランジ16Dの端面は、タービン入口部16Bの軸線方向と略直交する面をなし、タービン側締結面16Eを形成している。タービン側締結面16Eは、マニホールド側締結面8Aと略同形の外形、すなわち略三角形に形成されている。タービン側締結面16Eには、横断面が円形をなすタービン入口通路18と、タービン入口通路18の周囲に周方向に略等間隔に配置された3つのタービン側ボルト孔19とが開口している。各タービン側ボルト孔19は、タービン側フランジ16Dを貫通している。タービン入口通路18は略三角形に形成されたタービン側締結面16Eの中央部に配置され、3つのタービン側ボルト孔19は略三角形に形成されたタービン側締結面16Eの各角部(隅部)に形成されている。タービン側締結面16Eはメタルガスケット1を介してマニホールド側締結面8Aと対向し、この状態で集合通路11とタービン入口通路18とは互いに連通し、各雌ねじ孔12と各タービン側ボルト孔19とは互いに連通する。
【0026】
コンプレッサ15は、コンプレッサハウジング15Aと、コンプレッサハウジング15A内に回転可能に配置されたコンプレッサブレード(不図示)とを有する。コンプレッサハウジング15Aは、一連の通路を画定し、吸気ポートに連通する吸気通路の一部を構成する。コンプレッサブレードは、連結軸(不図示)を介してタービンブレードと連結され、タービンブレードと一体に回転する。
【0027】
図2及び図3に示すように、メタルガスケット1は、少なくとも1枚の金属板30から形成されている。本実施形態では、メタルガスケット1は、6枚の金属板30を積層して形成されている。金属板30は、厚み方向における一側から第1板30A、第2板30B、第3板30C、第4板30D、第5板30E、第6板30Fとする。各金属板30は、略同一の外形を有する。各金属板30は、マニホールド側締結面8A及びタービン側締結面16Eと略同形である略三角形の基部31と、基部31の外縁39から外方に突出した突出部32とを有する。各金属板30は、突出部32において互いに結合されている。突出部32における結合には、例えばかしめ接合や溶接等の公知の結合方法を適用できる。
【0028】
メタルガスケット1は、各金属板30を厚み方向に貫通する1つの通路孔34と、3つのボルト孔35と、1つの貫通孔36とを有する。通路孔34は、集合通路11及びタービン入口通路18と対応する形状に形成され、横断面が円形に形成されている。
【0029】
通路孔34の周囲には、通路孔34を無端状に囲むように、円環状のビード38が形成されている。ビード38は、複数の金属板30の少なくとも1つを厚み方向に屈曲させることによって形成され、メタルガスケット1とマニホールド側締結面8A及びタービン側締結面16Eとの接触圧を高める機能を有する。本実施形態では、各金属板30が屈曲されることによってビード38が形成されている。第1板30Aは、通路孔34の周縁部がその周囲の部分に対して第2板30Bから離れる方向に、環状に押し出された第1ハーフビード38Aを有する。第2板30Bは、通路孔34の周縁部がその周囲の部分に対して第1板30Aから離れる方向に、環状に押し出された第2ハーフビード38Bを有する。第3板30Cは、通路孔34の周縁部がその周囲の部分に対して第4板30Dから離れる方向に、環状に押し出された第3ハーフビード38Cを有する。第4板30Dは、通路孔34の周縁部がその周囲の部分に対して第3板30Cから離れる方向に、環状に押し出された第4ハーフビード38Dを有する。第5板30Eは、通路孔34の周縁部がその周囲の部分に対して第6板30Fから離れる方向に、環状に押し出された第5ハーフビード38Eを有する。第6板30Fは、通路孔34の周縁部がその周囲の部分に対して第5板30Eから離れる方向に、環状に押し出された第6ハーフビード38Fを有する。第1〜第6ハーフビード38A〜38Fは、メタルガスケット1の厚み方向において互いに対応するように配置され、協働してビード38を形成する。メタルガスケット1は、環状のビード38においてマニホールド側締結面8A及びタービン側締結面16Eと確実に接触し、集合通路11及びタービン入口通路18を気密に接続する。
【0030】
図2に示すように、3つボルト孔35は、ビード38の外方(径方向外方)に、周方向に互いに略等間隔に配置されている。また、3つのボルト孔35は、雌ねじ孔12及びタービン側ボルト孔19と対応する位置に配置されている。タービン側ボルト孔19及びボルト孔35を通過して雌ねじ孔12に螺着する締結ボルト40によって、メタルガスケット1が介装された状態でタービン14と排気マニホールド3とが締結される。メタルガスケット1は、ボルト孔35の周囲に締結ボルト40の頭部40Aに対応した円環状のボルト受圧領域41を有する。ボルト受圧領域41は、締結ボルト40の頭部40Aによってメタルガスケット1の厚み方向に圧力を受ける領域である。本実施形態では、締結ボルト40は、フランジボルトであり、頭部40Aの接触面は円形に形成されている。ボルト受圧領域41はマニホールド側締結面8A及びタービン側締結面16Eに拘束され、マニホールド側締結面8A及びタービン側締結面16Eと一体に変位する。
【0031】
各ボルト受圧領域41は、ビード38と重ならないように、ビード38の外方に形成されている。また、基部31の外縁39は、各ボルト受圧領域41と重ならないように形成されている。3つのボルト受圧領域41及びボルト孔35は、略三角形に形成された基部31の各角部(隅部)に配置されている。
【0032】
基部31は、外形が略三角形に形成され、中央部に通路孔34が形成されているため、外縁39をなす3つの各辺の中央部において通路孔34と外縁39との距離が短くなっている。すなわち、メタルガスケット1の通路孔34を中心とした径方向における幅は、外縁39をなす3つの各辺の中央部において最も狭くなっている。
【0033】
隣り合うボルト受圧領域41間に延在する領域を第1領域42とする。第1領域42は、隣り合うボルト受圧領域41を直線状に結び、ボルト受圧領域41の直径と同じ大きさの幅を有する。なお、第1領域42はボルト受圧領域41と重ならない領域をいい、長手方向における両端部においてボルト受圧領域41と接しているものとする。また、第1領域42は、通路孔34、ビード38、及び基部31の外縁39のいずれかと重なり合っていてもよい。図2には、例として任意の2つのボルト孔35に対応して設定される第1領域42が図示されている。3つのボルト孔35から任意に選択した隣り合う2つのボルト孔35間の距離は、図2中において上方に配置された2つのボルト孔35間の距離が最も長く設定されている。また、通路孔34と基部31(メタルガスケット1)の外縁39との距離(すなわち、メタルガスケット1の幅)は、図2中において上方に配置された2つのボルト孔35間において最も短くなっている。
【0034】
突出部32は、2つのボルト受圧領域41の間であって、一方のボルト受圧領域41側にオフセットした位置に配置されている。換言すると、第1領域42の外側方であって、第1領域42の一方の端部側にオフセットした位置に配置されている。
【0035】
貫通孔36は、第1領域42における前記ビード38の外方(径方向外方)の領域である第2領域43内に形成されている。また、貫通孔36は、第2領域43において、通路孔34を中心とした径方向における内側よりも外側にオフセットして配置されていることが好ましい。また、貫通孔36は、第2領域43において、第1領域42の長手方向における中央部側よりもボルト受圧領域41側にオフセットして配置されていることが好ましい。また、貫通孔36は、第2領域43において、突出部32に近接した位置に配置されていることが好ましい。
【0036】
貫通孔36の横断面は、任意の形状であってよく、円形や、楕円形、長円形、三角形や四角形等の角形等であってよい。本実施形態では、貫通孔36の横断面は円形に形成されている。
【0037】
以下、本実施形態に係るメタルガスケット1の作用及び効果について説明する。メタルガスケット1は、締結ボルト40が雌ねじ孔12に螺着されることによって、基部31においてマニホールド側締結面8Aとタービン側締結面16Eとに挟持される。一方、突出部32は、マニホールド側締結面8A及びタービン側締結面16Eの外方に配置される。メタルガスケット1は、ビード38においてマニホールド側締結面8A及びタービン側締結面16Eに線接触し、通路孔34を介して集合通路11及びタービン入口通路18を気密に接続する。
【0038】
内燃機関の駆動時には、排気マニホールド3及びタービン14に高温の排気が流れ、排気マニホールド3、メタルガスケット1、及びタービン14が昇温される。メタルガスケット1、排気マニホールド3、及びタービン14の線熱膨張係数の間に差異がある場合、ボルト受圧領域41がマニホールド側締結面8A及びタービン側締結面16Eに拘束されているため、メタルガスケット1には引張又は圧縮の応力が生じる。この応力は、拘束された隣り合うボルト受圧領域41の間、すなわち第1領域42に主に生じる。特に、第1領域42の長手方向における中央部では、メタルガスケット1の幅(通路孔34の縁から外縁39までの距離)が他の部分に対して小さくなり、剛性が低下するため、この部分に応力が集中し易くなる。
【0039】
本実施形態に係るメタルガスケット1は、第1領域42におけるビード38の外方の領域である第2領域43に貫通孔36を有するため、貫通孔36の周囲の剛性が低下し、貫通孔36の周囲に応力が分散される。そのため、第1領域42の長手方向における中央部への局所的な応力集中が緩和され、この部分の変形や圧潰、破断が抑制される。また、貫通孔36はビード38の外方に配置されるため、ビード38のシール性能を低下させることもない。
【0040】
貫通孔36が、第2領域43において、通路孔34を中心とした径方向における内側よりも外側にオフセットして配置されているため、貫通孔36とビード38との間に距離が確保される。これにより、貫通孔36に起因する応力がビード38に発生し難くなり、ビード38に変形が抑制され、シール性能の低下が抑制される。
【0041】
貫通孔36が、第2領域43において、第1領域42の長手方向における中央側よりもボルト受圧領域41側にオフセットして配置されているため、第1領域42における剛性差が緩和され、第1領域42の長手方向における中央部への応力集中が緩和される。ボルト受圧領域41が設けられた部分は、メタルガスケット1の幅が広く、剛性が高くなる一方、第1領域42の長手方向における中央部はメタルガスケット1の幅が狭く、剛性が低くなる。そのため、応力は、第1領域42の長手方向における中央部に集中し易くなるが、貫通孔36が形成されたことによって剛性差が緩和され、応力集中が緩和される。また、貫通孔36が形成される部分は、比較的剛性が高いため、貫通孔36の周囲の部分に応力が生じても、この部分が変形することが抑制される。
【0042】
貫通孔36が、第2領域43において、突出部32に近接した位置に配置されているため、第1領域42における剛性差が緩和され、第1領域42の長手方向における中央部への応力集中が緩和される。突出部32が設けられた部分は、メタルガスケット1の幅が広く、剛性が高くなる一方、第1領域42の長手方向における中央部はメタルガスケット1の幅が狭く、剛性が低くなる。そのため、応力は、第1領域42の長手方向における中央部に集中し易くなるが、貫通孔36が形成されたことによって剛性差が緩和され、応力集中が緩和される。
【0043】
貫通孔36は、ボルト孔35の内で、隣り合うボルト孔35間の距離が最も長くなる2つのボルト孔35(図2中の上方の2つのボルト孔35)に対応した第2領域43に形成されている。メタルガスケット1において、隣り合うボルト孔35間の距離が最も長くなる部分は、昇温されたときにマニホールド側締結面8A及びタービン側締結面16Eに対して膨張又は収縮による変化量の差が最も大きくなり、局所的な応力集中が生じやすい。そのため、この部分に貫通孔36が形成されることによって、局所的な応力集中が緩和される。
【0044】
貫通孔36は、ボルト孔35の内で、通路孔34と外縁39との距離(メタルガスケット1の幅)が最も小さくなる部分の両側に配置された2つのボルト孔35(図2中の上方の2つのボルト孔35)に対応した第2領域43に形成されている。メタルガスケット1において、幅が小さい部分は剛性が低いため、局所的な応力集中が生じやすい。そのため、この部分に貫通孔36が形成されることによって、局所的な応力集中が緩和される。
【0045】
また、貫通孔36が円孔であるため、貫通孔36の周囲の応力分布が均一化され、局所的な変形が抑制される。
【0046】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、3つのボルト孔35を有するメタルガスケット1において、任意の2つのボルト孔35間に1つの貫通孔36を設けた例を示したが貫通孔36の数は1つ以上であればよく、複数設けてもよい。また、他のボルト孔35との間に設定される第2領域43に貫通孔36を少なくとも1つの貫通孔36を形成してもよい。
【0047】
また、他の実施形態では、ボルト孔35を4つ以上設け、そのうちの任意の隣り合う2つのボルト孔35間の第2領域43に1つ以上の貫通孔36を設けてもよい。
【0048】
また、上記の実施形態では、締結ボルト40にフランジボルトを使用したが、締結ボルト40には六角ボルト等の公知のボルトを使用してもよい。この場合、頭部40Aとタービン側フランジ16Dとの間に円形の座金を介装してもよい。
【0049】
また、上記の実施形態では、排気マニホールド3とターボチャージャ4のタービン14との締結部に介装されるメタルガスケット1の例を示したが、本発明に係るメタルガスケット1は高温環境下で使用される様々なガスケットに適用することができる。例えば、本発明に係るメタルガスケットは、シリンダブロックとシリンダヘッドとの締結部や、シリンダヘッドと排気マニホールドとの締結部、排気マニホールドと触媒コンバータとの締結部等に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 :メタルガスケット
3 :排気マニホールド
4 :ターボチャージャ
8A :マニホールド側締結面
11 :集合通路
12 :雌ねじ孔
14 :タービン
16B :タービン入口部
16E :タービン側締結面
18 :タービン入口通路
19 :タービン側ボルト孔
30A〜30F :第1〜第6板
31 :基部
32 :突出部
34 :通路孔
35 :ボルト孔
36 :貫通孔
38 :ビード
38A〜38F :第1〜第6ハーフビード
39 :外縁
40 :締結ボルト
40A :頭部
41 :ボルト受圧領域
42 :第1領域
43 :第2領域
図1
図2
図3