(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記縮径端部は、前記コッタの内径よりも大径の前記押し上げ軸の外周面に対して段差部を介して設けられ、前記コッタの内径よりも小径の小径部を備えることを特徴とする請求項5に記載のリテーナ組付装置。
前記押し上げ軸を下降させつつ、前記筒体内に押し上げ軸と同軸に、かつ、同軸上で移動可能に設けられた軸体を下降させ、前記分離状態の前記一対のコッタ片間に前記軸体を進入させ、前記分離状態を維持する分離維持工程をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載のリテーナ組付方法。
前記押し上げ軸が下降、退避した後に、前記リテーナの下端からバルブステムを進入させ、前記バルブステムに形成された係合溝に前記コッタを係合させる際に、前記押圧片が前記コッタを前記バルブステム側へ押圧して、前記コッタを前記バルブステムに装着する装着工程をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載のリテーナ組付方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、同じ参照符号は、同様の要素を示し、紙面に対する上下左右方向を、本実施形態における装置または部材の上下左右方向として、本文中の説明の際に用いることとする。
【0012】
<システムの構成>
図1は本発明の第一実施形態に係るリテーナ組付装置Aを用いたシステムの説明図である。リテーナ組付装置Aは、載置部6上に載置されることにより準備されたリテーナ5を保持し、パレット4上のシリンダヘッド3に組み付けられているバルブ1のバルブステム1aにリテーナ5を自動的に組み付ける装置である。
【0013】
リテーナ5はその拡大断面図を
図2(A)に示すように、コッタ7が挿入される貫通孔5cを有する筒体5aをなしており、その上部にバルブスプリング2の端部が当接するフランジ部5bを有する。コッタ7が挿入される貫通孔5cは、その下部から上部に向かって徐々に拡径したテーパ孔となっており、本実施形態の場合、このテーパ孔は最上部においては拡径の度合いが、より急なものとなっている。貫通孔5cの最小の内径はD3である。
【0014】
コッタ7は、バルブステム1aが挿通する孔71aを有する筒体71であり、孔71aの上縁内周にはバルブステム1aに形成された係合溝1b(
図8、
図9等参照)に係合する半球状の係合部72が形成されている。コッタ7の孔71aの内径はD1であるが、係合部72の内径はD2(<D1)となっている。
【0015】
コッタ7の外周はリテーナ5の貫通孔5cの内周壁の形状に合わせてテーパ形状となっている。このため、コッタ7はリテーナ5の上方へは挿抜可能であるが、下方へは挿抜不能となっている。コッタ7は、これを半割りした形状の一対のコッタ片71、71からなる。バルブステム1aに対するリテーナ5の装着は、広く知られるように、このコッタ7を介して行う。つまり、コッタ片71、71でバルブステム1aの係合溝1bを挟むようにして、コッタ7をバルブステム1aに装着し、続いてこのコッタ7をリテーナ5の貫通孔5cに挿入することで、バルブステム1aにリテーナ5を組み付けることができる。
【0016】
リテーナ5は、コッタ7が装着された状態で、不図示の搬送機構により順次載置部6上に供給される。バルブ1は、バルブスプリング2と共にシリンダヘッド3に組み付けられた状態でパレット4と共に所定の作業位置に供給される。バルブ1の軸方向が上下方向となるようにシリンダヘッド3の姿勢が調整される。
【0017】
<リテーナ組付装置A>
リテーナ組付装置Aは、保持ユニット10と、駆動ユニット20と、これらを支持する支持部材40と、支持部材40を昇降する昇降ユニット50と、昇降ユニット50を移動する移動ユニット51と、載置部6の下方に配置され、押し上げ軸31を昇降する昇降ユニット30とを備える。
【0018】
支持部材40は、保持ユニット10の筒体11に接続されたL字型の部材42と、部材42及び駆動ユニット20を支持する板状の部材41と、部材41を吊り下げる、上下に延びる棒状部材43とを備える。
【0019】
棒状部材43は昇降ユニット50に昇降自在に支持されており、昇降ユニット50により保持ユニット10、駆動ユニット20並びに支持部材40が全体として昇降する。昇降ユニット50は棒状部材43を昇降する不図示の駆動機構を備える。この駆動機構としては、例えば、モータ等の駆動源と、ラック−ピニオン機構等の機構の組み合わせを挙げることができる。
【0020】
昇降ユニット50は移動ユニット51に支持されている。移動ユニット51はレール部材52に案内されて水平方向に移動する。移動ユニット51は水平方向移動のための駆動機構を備え、このような駆動機構としては、例えば、モータ等の駆動源と、ボールねじ機構等の機構の組み合わせを挙げることができる。
【0021】
移動ユニット51は、保持ユニット10、駆動ユニット20、支持部材40並びに昇降ユニット50の全体をレール部材52に沿って水平方向に移動し、特に、保持ユニット10を、
図1に実線で示す押し上げ軸31上の位置と、
図1に二点鎖線で示すバルブステム1a上の位置とで移動する。
【0022】
駆動ユニット20は、プランジャ21を上下に移動するアクチュエータであり、例えば、電動シリンダや流体シリンダである。プランジャ21は、アーム部材22を介して後述する保持ユニット10のカムスライダ13と連結されており、駆動ユニット20によるプランジャ21の移動により、カムスライダ13を上下に移動させることができる。
【0023】
昇降ユニット30は押し上げ軸31を上下に移動するアクチュエータである。昇降ユニット30は、例えば電動シリンダや流体シリンダである。
図2(B)に部分拡大断面図として示す押し上げ軸31は、その軸方向が上下方向に配置される軸であり、一対のコッタ片71からなるコッタ7が装着されたリテーナ5に対して、コッタ7の孔71aの下端から進入され、コッタ7を上方へ押し上げる。
【0024】
<押し上げ軸31>
押し上げ軸31は、その上端部(先端部)に一対のコッタ片71、71間の内部空間(孔71a)に挿通可能な挿通部である縮径端部32を備える。つまり、縮径端部32は、押し上げ軸31の本体の先端側に設けられ、一対のコッタ片71、71間に挿通可能である。縮径端部32は、押し上げ軸31の外周面31aに対して段差部31bを介して設けられ、コッタ7の内径(係合部72の内径D2)よりも小径の小径部となる。押し上げ軸31の外周面31aは、コッタ7の内径(例えば、コッタ7の孔71aの径D1)よりも大径に形成される。したがって、押し上げ軸31にてコッタ7を押し上げる際には、縮径端部32はコッタ7の孔71aおよび係合部72内を挿通するが、押し上げ軸31の段差部31bはコッタ7の底面に引っかかる。その結果、コッタ片71、71同士は閉じ合わさったまま、コッタ7の底面が押し上げ軸31の段差部31bに載置された状態で、コッタ7は押し上げ軸31によって持ち上げられる。
【0025】
また、押し上げ軸31は、縮径端部32(挿通部)に対して後述するエアを給気、排気するエア給排気部33を備える。エア給排気部33は、コンプレッサ、真空ポンプ、エアポンプ等のエア給排気装置34に接続され、エアの給気や排気が行われる(
図2(C)参照)。また、エア給排気部33は、押し上げ軸31本体の内部に軸方向へ延びて設けられ、給気、排気されるエアが通過する通気路33aと、通気路33aと縮径端部32の表面とを連通する開口33bとを有する。
【0026】
開口33bは、縮径端部32の周面に複数形成され、本実施形態では、縮径端部32の外周面の周方向に対して90度の角度で等間隔に合計4か所配置される。なお、開口33bの数や外周面31aに対する配置は、上記実施形態の数、配置に限定されるものではなく、縮径端部32の形状、コッタ7の形状等に応じて適宜設定されてもよい。例えば、二つの開口33b、33bが、一対のコッタ片に正対する位置に対向配置(周方向で180度ずれて配置)されてもよい。また、本実施形態においてエア給排気部33は、エア給排気装置34からエアの給気及び排気が行われる形態を例示したが、これに限定されるものではなく、エアの給気のみが行われる形態としてもよい。
【0027】
<保持ユニット10>
図1及び
図2を参照して保持ユニット10について説明する。
図2(C)には、保持ユニット10全体の断面図と、載置部6と、昇降ユニット30とを示し、
図2(D)には、保持ユニット10の一部拡大断面図を示す。保持ユニット10は、そのハウジングを構成する筒体11を備える。筒体11には、上下方向に延びる断面円形の貫通孔11aがその内部に形成されている。この貫通孔11aは、その上部においてカムスライダ13の案内孔を形成し、その下部においてバルブステム1a、押し上げ軸31、コッタ7、及び押圧部材17(後述)の進入可能な空間を形成する。具体的には、筒体11はその下端にリング状の底部11dを有する(
図6参照)。底部11dは、その中央に孔11eを備える(
図6参照)。この孔11eは、コッタ7は進入(通過)可能に、リテーナ5及び押圧部材17(後述)は進入不能な大きさに設けられる。
【0028】
本実施形態の場合、筒体11の上部が2部材構成となっており、別体の筒体11b1、11b2を有しているが、一体としてもよい。筒体11b1は貫通孔11aの上部(カムスライダ13の案内孔)を形成している。筒体11の下部側部には、少なくとも2か所にスリット11c、11cが形成されている。2か所のスリット11c、11cは対向配置(周方向で180度ずれて配置)されている。スリット11c、11cには、それぞれ、保持部材15が挿入されている。保持部材15は、その下部が爪状の保持部15aとなっており、後述するように筒体11の下端に当接されるリテーナ5を保持する。なお、保持部15aがリテーナ5を保持する際に、保持部15aが載置部6と衝突しないように、載置部6の上面には保持部15aの開閉移動を許容するための凹部6aが形成されている。また、本実施形態においては、図示省略するが、保持ユニット10の周方向に対して90度の角度で等間隔に合計4か所に保持部材15が配置される。このとき、スリット11cも同様に保持ユニット10の周方向に対して90度の角度で等間隔に合計4か所配置される。
【0029】
<保持部材15>
保持部材15の上部は軸(ピン)15bを介して筒体11に対して回動自在(
図2(D)中の矢印A方向)に支持されており、後述するカムスライダ13によって軸15b周りに両保持部材15を回動させることで、保持部15aが開閉される(
図2(D)中の矢印B方向)。保持部材15は、カムスライダ13と隣接する側部に、保持ユニット10の軸方向下方に向かうにつれて、径方向内側から外側に向けて傾斜する傾斜部15cと、傾斜部15cの上端と接続され、カムスライダ13と平行に延びる平行部15dとを備える。後述するカムスライダ13のカム突起13fが、保持部材15の傾斜部15cまたは平行部15dと当接することで、保持部材15は、保持部15aが互いに近接する閉位置、または保持部15aが互いに離間する開位置をとる。具体的には、カムスライダ13が下方向に移動し、カム突起13fの当接位置が平行部15dから傾斜部15cに推移し始めると、保持部15aが筒体11の中心に近付く方向に移動する(開位置から閉位置へ)。一方、カムスライダ13が上方向に移動し、カム突起13fの当接位置が傾斜部15cから平行部15dに推移し始めると、保持部15aが筒体11の中心から離れる方向に移動する(閉位置から開位置へ)。
【0030】
なお、
図2(C)及び
図2(D)は保持部材15が閉位置にある状態を示しており、これは一対の保持部15a、15aがリテーナ5を保持する位置である。同図の閉位置から保持部15aが保持ユニット10の径方向外側に回動することで、両保持部材15が開き、リテーナ5が解放される。保持ユニット10の下部には、保持部材15の外周にリング状の弾性部材10aを複数嵌合させており、弾性部材10aは保持部材15を常時閉位置に付勢している。本実施形態では保持部材15を回動自在とすることで、リテーナ5の保持及び解放のための開閉動作を行うようにしたが、保持部15aを弾性部材で構成し、その弾性変形によりリテーナ5の保持及び解除を行う等、種々の構成を採用可能である。
【0031】
<カムスライダ13>
カムスライダ13は、長尺部材であり、中実な円柱ロッド部材の下部に下向きに開口した穴である挿入穴13aを備える筒体である。カムスライダ13は筒体11の貫通孔11aに案内されて貫通孔11aと同軸上で移動可能となっている。カムスライダ13の周面における上部には、筒状のブラケット14が挿通して設けられている。ブラケット14はカムスライダ13の軸方向に沿って移動可能であると共に、アーム部材22に接続されている。カムスライダ13の最上部にはブラケット14の脱落を防止するストッパ12が固定されている。カムスライダ13の下方への移動は、筒体11に固定して設けられた規制部材(例えば規制ピン)13rにより下端位置が規制される。
【0032】
カムスライダ13のブラケット14から所定距離離れた位置には、円環状の受け部材13bが固定されている。受け部材13bとブラケット14との間には弾性部材13cが装着されている。本実施形態の場合、弾性部材13cはコイルスプリングである。駆動ユニット20の作動によりアーム部材22を下降させるとブラケット14も下降され、弾性部材13cを介してカムスライダ13に下向きの力が作用する。この結果、カムスライダ13を下降させることができる。
【0033】
また、駆動ユニット20の作動によりアーム部材22を上昇させるとブラケット14も上昇されるが、ストッパ12と干渉するため、その上昇は制限される。その干渉後、ブラケット14を引き続き上昇させると、カムスライダ13に対して上方へ移動する力として作用する。この結果、カムスライダ13を上昇させることができる。このように本実施形態では、昇降ユニット50による保持ユニット10全体の昇降に加えて、カムスライダ13単独の昇降も可能な構成となっている。なお、本実施形態では、衝撃吸収用に弾性部材13cを設けたが、アーム部材22とカムスライダ13とを固定する構成も採用可能である。
【0034】
カムスライダ13の挿入穴13aは筒体11の貫通孔11aと同軸上に形成され、この挿入穴13aに軸体16が同軸に、かつ、軸方向に移動可能に内挿される。保持ユニット10を押し上げ軸31上の位置(
図1の実線位置)に位置させたときに、軸体16は押し上げ軸31と同軸上に位置することになる。
【0035】
軸体16の上部には、径方向に貫通した長孔16aが形成される。長孔16aにはカムスライダ13に固定された軸(ピン)13dが挿入されており、軸体16の移動範囲を規制する。軸体16の下部は中実の軸部16bとなっており、その直径は上記の直径D2よりも大きく、直径D1よりも小さい。挿入穴13aの底部13a1(
図2(D)中では天蓋部)と軸体16との間には弾性部材16cが設けられている。本実施形態の場合、弾性部材16cはコイルスプリングであり、軸体16をその軸方向下方側へ常時付勢する。
【0036】
カムスライダ13の下部における挿通穴13aの開口近傍には、挿入穴13aと同軸に、かつ、挿入穴13aよりも大径の拡径部13eが形成される。拡径部13e内には、コッタ7を上方向から押さえて支持する押圧部材17が軸方向移動可能に挿通される。押圧部材17は、その内部に軸体16が軸方向に移動可能に挿通された筒体で、上部に拡径部13e内に挿通される小径筒部17aと、下部に下面がコッタ7の上面と当接する大径筒部17bとを備える。押圧部材17は、保持ユニット10内で、筒体11の下部の所定位置に設けられる。押圧部材17は、軸体16及びカムスライダ13に対して軸方向に移動自在である。押圧部材17の上方への移動は、小径筒部17aと大径筒部17bとの段差部が規制部材13rに当接することによって上端位置が規制される。したがって、カムスライダ13は、筒体11に対して相対移動する際に、押圧部材17に対しても相対移動することになる。このとき、軸体16の軸部16bは、押圧部材17の下面から出没自在に移動する。
【0037】
カムスライダ13の外周面上で拡径部13eの上方には、保持部材15と対向する位置にカム突起13fが形成される。カム突起13fは、カムスライダ13の外周面から円弧を描くように突出した突起で、上記した保持部材15の平行部15dまたは傾斜部15cの一部と摺接する。本実施形態において、少なくとも一対のカム突起13fが対向配置(周方向で180度ずれて配置)されている。平行部15d及び傾斜部15cがカム面を、カム突起13fがカムフォロワを構成する。
【0038】
カムスライダ13の外周面上で、カム突起13fと拡径部13eとの間には、後述する押圧片18(突起部18b)を作動させるカム凹部13gが形成されている。カム凹部13gは、カムスライダ13の外周面から、緩やかな円弧を描くようにカムスライダ13の径方向内方へ窪む凹部である。本実施形態において、少なくとも一対のカム凹部13gが対向配置(周方向で180度ずれて配置)されている。カム凹部13gがカム面を、突起部18bがカムフォロワを構成する。
【0039】
筒体11の下方には、カムスライダ13に隣接して、軸方向におけるカム凹部13gから押圧部材17の下面(大径筒部17bの下端)よりも下方の位置までへと延びる長さを有する、押圧片18が配置される。押圧片18は、保持ユニット10の径方向において保持部材15の内側に配置される。
【0040】
押圧片18は、その下部にコッタ7の側面に対応した傾斜面を備えた押圧部18aを備えており、後述するようにリテーナ5の上面で開いたコッタ片71の側面を押圧して、コッタ片71をバルブステム1aに装着する。押圧片18は、その上部にカムスライダ13のカム凹部13gと当接する突起部18bを備える。突起部18bは、押圧片18から隣接するカムスライダ13の外周面に向けて突出する突起である。押圧片18は、押圧片18の押圧部18aと突起部18bとの中間位置において、筒体11に固定された軸(ピン)18cにより、筒体11に対して揺動自在とされる。
【0041】
押圧片18は、軸18cを介して筒体11に揺動自在に支持されることで、後述するカムスライダ13の移動によってカム凹部13gと突起部18bとが相対移動し、軸18c周りに押圧部18aが
図2(D)中の矢印Cの方向に開閉される。本実施形態において、少なくとも一対の押圧片18、18が、カムスライダ13を挟んで対向配置(周方向で180度ずれて配置)されている。また、カム凹部13gの凹部中央部分(上下方向における中央部分)に突起部18bが位置する際には、一対の押圧片18の押圧部18aが互いにもっとも離れた位置(開位置)にある。一方、突起部18bが、カム凹部13gの凹部両端部付近(上下方向における上端近傍及び下端近傍)に位置している場合には、一対の押圧部18aが互いに近づいた位置(閉位置)となる。さらに、本実施形態においては、一対の押圧片18、18を例示したが、保持ユニット10の周方向に対して90度の角度で等間隔に合計4か所に押圧片18を配置してもよい。
【0042】
図2(C)及び
図2(D)は一対の押圧片18、18が開位置にある状態を示しており、押圧片18、18が分割されたコッタ7を保持して、バルブステム1aに装着する前の位置である。同図の開位置から押圧片18の押圧部18aが筒体11の中心に近付く方向に回動することで、両押圧部18a、18aが閉じて、分割されたコッタ7がバルブステム1aに装着されるように移動する。なお、押圧片18の外周側にも、保持部材15と同様にリング状の弾性部材10bを嵌合させており、弾性部材10bは押圧片18を常時開位置に付勢している。
【0043】
<組み付け動作>
次に、リテーナ組付装置Aによるバルブステム1aに対するリテーナ5の組み付け手順について
図3乃至
図9を参照して説明する。概説すると、組み付けは、保持ユニット10によるリテーナ5の保持、コッタ7の筒体11内への押し上げ、バルブステム1aへのリテーナ5の装着、という手順となる。このため、まず、
図1に示したように移動ユニット51により保持ユニット10を押し上げ軸31上の位置(
図1の実線の位置)に移動する。
【0044】
図3の状態ST1はこのときの保持ユニット10と載置部6上のリテーナ5並びに押し上げ軸31との位置関係を示している。なお、以下に説明で用いる
図3乃至
図9では、保持ユニット10の全体の移動を説明するための保持ユニット10の断面図と、リテーナ5及びコッタ7に対する保持ユニット10の動作の詳細を説明するための一部拡大断面図を示す。
図3の状態ST1を参照して、押し上げ軸31、リテーナ5、軸体16、カムスライダ13等は、互いに同軸上(上下方向の軸上)に位置することになる。またこの状態では、リテーナ5付近における保持ユニット10の拡大図を参照して、保持部材15はリテーナ5を保持していない開位置をとっている。
【0045】
昇降ユニット50により、保持ユニット10全体を下方へ移動させると筒体11の下端がリテーナ5の上面に当接され、保持ユニット10の下方位置が規制される(
図3の状態ST1)。その後、
図3の状態ST2に示すように、筒体11の上下方向位置は保持したままで、駆動ユニット20によりアーム部材22を下方へ移動させることで、カムスライダ13が下方へ移動される。このとき、カムスライダ13と共に軸体16も下方へ移動する。下方へ移動されたカムスライダ13は、規制部材13rと当接することでその移動を阻止される。このとき、カムスライダ13の移動にともなって、保持部材15の平行部15dと当接していたカム突起13fが保持部材15の傾斜部15cの方へ移動する。すると、弾性部材10aによって保持ユニット10の径方向内側へ押圧され、保持部材15の保持部15aが筒体11の中心に近付く方向へ移動して、リテーナ5のフランジ部を保持する(保持工程)。更にカムスライダ13が移動すると、カム突起13fは、保持部材15の傾斜部15cから離間する。リテーナ5の上面は、筒体11の下端に当接されている。そして、保持部15aが載置部6の凹部6aに収容されてリテーナ5のフランジ部を保持している状態をST2の拡大図に示す。なお状態ST1から状態ST2へカムスライダ13が移動した距離をM1とする。
【0046】
図4の状態ST3では、コッタ7の下方から押し上げ軸31が上昇して、その先端の縮径端部32がコッタ7の孔71aに挿通された状態を示している。状態ST3の拡大図で示されるように、押し上げ軸31の縮径端部32と外周面31aとを接続する段差部31bにコッタ7の下面が載置される(押し上げ準備工程)。また、このとき、縮径端部32の上端面は、軸体16の軸部16bの下端と当接した状態となり、軸体16は弾性部材16cの付勢力に抗して僅かに上昇する。
【0047】
図4の状態ST4は、押し上げ軸31がさらに上昇して、コッタ7を筒体11の内部の押圧部材17の下面に当接する位置まで持ち上げた状態を示す(押し上げ工程)。すなわち、上昇されたコッタ7は、筒体11内の押圧部材17の下面と押し上げ軸31の段差部31bとで挟持された状態で保持される。コッタ7の押し上げの際、押圧部材17はコッタ7によって僅かに持ち上げられる。すなわち、押圧部材17は、その自重によってコッタ7を上から押さえつけるように挟持する。このため、コッタ7の姿勢にズレがあったとしても、この挟持によって、コッタ7の姿勢のズレを矯正し、確実にコッタ7を保持できる。押し上げ軸31の上端面と当接していた軸体16は、カムスライダ13内の弾性部材16cの付勢力に抗してさらに上昇され、押し上げ軸31の停止と共に停止する。
【0048】
図5の状態ST5は、押し上げ軸31の開口33bから噴き出させたエアによって、コッタ片71、71同士が分割された状態を示す。なお、コッタ片71,71のそれぞれが、エアの圧力で分離される様子を詳細に示した拡大図を
図6で示す。
図6において、縮径端部32の開口33bからコッタ7の孔(内部空間)71aに向けてエアを噴き出させ(
図6中矢印D方向)、エアの圧力で両コッタ片71、71を互いに離れる方向へ吹き飛ばし(
図6中矢印E方向)、両コッタ片71、71の側面を押圧部材17とリテーナ5との間に配置された押圧片18の押圧部18aに押し付けて保持させる(分離保持工程)。この時、コッタ片71、71の挟持力は押圧部材17の自重のみであるため、エアの圧力は自重による挟持力を上回る程度であれば良い。これにより、エアの圧力を特段に高くしなくとも、容易にコッタ7の分離保持が可能となる。また、自重による挟持力を上回る程度の圧力でエアを噴き出させることで、コッタ分離保持空間が陽圧となり、押圧部材17を僅かに浮上させることができる。これにより、コッタ片71、71の移動空間、分離保持位置の空間を確実に確保できる。エアの圧力がなくなると押圧部材17は下降するため、確実にコッタ片71、71を挟持することができる。
【0049】
開口33bから噴き出させるエアの噴き出し方向は水平方向でなくとも良い。例えば、各コッタ片71、71が分離保持位置へ移動する際にそれらの姿勢が崩れないよう、コッタ片71、71の重心位置を考慮し、斜め上方向に噴き出すようにしても良い。
【0050】
図5の状態ST6は、押し上げ軸31の下降に伴って下降した軸体16の軸部16bが分離されたコッタ片71、71間へ進入した状態を示す。つまり、押し上げ軸31を下降させつつ、筒体11内に押し上げ軸31と同軸に、かつ、同軸上で移動可能に設けられた軸体16を下降させ、分離状態の一対のコッタ片71、71間に軸体16を進入させ、分離状態を維持する(分離維持工程)。状態ST4において説明したように軸体16は、押し上げ軸31の上昇に伴い、弾性部材16cの付勢力に抗して移動されていることから、状態ST6示すように押し上げ軸31の下降に伴って、弾性部材16cに付勢された軸体16は、下降することになる。
【0051】
このとき、軸体16の軸部16bは分離されたコッタ片71、71間に挿通され、以降保持ユニット10が移動する際に、再びコッタ片71、71同士が互いに近づかないようにその移動を阻止している。なお、この状態で、保持ユニット10に装着されたリテーナ5及び、リテーナ5から取り外されたコッタ7は、保持ユニット10と共に載置部6から離れることができる。
【0052】
次いで、
図1の二点鎖線で示す位置まで保持ユニット10が移動され、保持ユニット10内のリテーナ5とコッタ7とがバルブステム1aに装着される。
【0053】
図7の状態ST7は、保持ユニット10と共に移送されたリテーナ5とコッタ7とが、バルブステム1aの上方に配置された状態を示す。このとき、軸体16の軸部16bの下端は、バルブステム1aの状態と当接した状態となる。
【0054】
図7の状態ST8は、筒体11を下降させてバルブスプリング2の上端部をリテーナ5によって押し付け、保持ユニット10内のコッタ7の係合部72がバルブステム1aの係合溝1bと同じ位置になるまで移動させた状態を示す。このとき、リテーナ5は、圧縮されたバルブスプリング2の付勢力に抗してバルブスプリング2を押圧した状態となる。上記した状態ST4と同様に、軸体16は、バルブステム1aの上端によってコッタ7内から押し出されて上昇し、コッタ7内には、軸部16bの代わりにバルブステム1aの上端部が挿入される。なお状態ST7から状態ST8へ筒体11を含む保持ユニット10全体が移動した距離をM2とする。
【0055】
図8の状態ST9は、アーム部材22によってカムスライダ13が上昇され、押圧片18によってコッタ片71、71がバルブステム1aに装着された状態を示す。つまり、押し上げ軸31が下降、退避した後に、リテーナ5の下端からバルブステム1aを進入させ、バルブステム1aに形成された係合溝1bにコッタ片71、71を係合させる際に、押圧片18がコッタ片71、71をバルブステム1a側へ押圧して、コッタ7をバルブステム1aに装着する(装着工程)。この時、コッタ片71、71の挾持力は押圧部材17の自重のみであるため、押圧片18の押圧力は押圧部材17の自重を上回る程度であればよい。
【0056】
具体的な動作としては、筒体11の位置は固定した状態でアーム部材22によってカムスライダ13が上昇されることで、カムスライダ13と保持部材15及び押圧片18とが相対移動する。このとき、カムスライダ13のカム突起13fは、保持部材15の傾斜部15cと対向した位置から上昇して保持部材15の平行部15dと当接するようになる。こうして、保持部材15は、カム突起13fによって筒体11の中心から離れる方向に押されることになり、軸15bを中心として回動する(状態ST9の拡大図矢印B参照)。すると、保持部材15の保持部15aとリテーナ5との係合が解除され、リテーナ5は保持ユニット10から解放される。
【0057】
保持部材15によるリテーナ5の保持解除と平行して、カムスライダ13の移動によって押圧片18が移動される。カムスライダ13の上昇により、押圧片18の突起部18bは、カムスライダ13のカム凹部13gとの当接から下方の拡径部13eの外周面と当接する方向へと移動する。このとき、押圧片18の突起部18bは筒体11の中心から離れる方向へ移動されることになり、押圧片18の押圧部18aは、筒体11の中心に近付く方向へ移動される。すると押圧部18aと当接していたコッタ片71、71がバルブステム1a側へ押されることで、コッタ7の係合部72とバルブステム1aの係合溝1bとが互いに係合する。
【0058】
図8の状態ST10は、筒体11を固定した状態で、アーム部材22によってカムスライダ13を下降させ、押圧片18のコッタ7への押圧を解除した状態を示す。アーム部材22によってわずかに移動されたカムスライダ13によって、押圧片18の突起部18bはカムスライダ13のカム凹部13gの下側端と当接した状態となる。このとき押圧片18の押圧部18aは、コッタ片71、71の側部を押圧した状態から筒体11の中心から離れる方向へ僅かに移動され、コッタ7への押圧を解除した状態となる。なお、保持部材15は、カムスライダ13のカム突起13fが、保持部材15の平行部15dと当接しているため、リテーナ5の保持を解除した状態を継続している。なお状態ST9から状態ST10へカムスライダ13が移動した距離をM3とする。距離M3は、距離M1よりも短い。
【0059】
図9の状態ST11では、筒体11を含む保持ユニット10全体を上昇させて、バルブスプリング2の付勢力によって、保持ユニット10の上昇に伴ってリテーナ5がバルブステム1aに対して上昇して、バルブステム1aに装着されたコッタ7がリテーナ5内に収容された状態を示す。このとき拡大図に示すように、リテーナ5の内周面は上方に向かうにつれて拡径する貫通孔5cであり、リテーナ5が上方に押圧されることで、バルブステム1aに固定されたコッタ7の外周面とのくさび作用によって互いの移動が阻止される。したがって、バルブステム1aにコッタ7を介してリテーナ5を装着することによって、リテーナ5がバルブステム1aの上方に抜け出ることがない。
【0060】
図9の状態ST12では、保持ユニット10がさらに上昇して、リテーナ5から離れた状態を示す。こうして、リテーナ5のバルブステム1aへの組み付け工程が終了する。
【0061】
本実施形態によれば、コッタ片71、71を適切にリテーナ5の上面で筒体11の中心から離れる方向へ移動させることができる。つまり、従来のコッタ片のように両側に倒れ込ませながら移動させるのではなく、コッタ7の孔71aの内側から筒体11の中心から離れる方向に向けて所定の圧力でエアを噴き出させ、コッタ片71、71を押圧部18aに向けて移動させることで、コッタ片71、71の姿勢を維持したままリテーナ5の上面で移動させることができる。したがって、コッタ片71、71を適切にリテーナ5の上面で筒体11の中心から離れる方向へ移動させ、下降してくる軸体16との噛み込みを防止することができ、リテーナ5の組付工程において、組み付けの失敗を低減することができる。また、コッタ7を段差部31bに載置した状態で押し上げ軸31を上昇させているので、コッタ7を安定して持ち上げることができる。
【0062】
図10に第二実施形態態に係る押し上げ軸31の部分断面図を示す。本実施形態における押し上げ軸31は、上記した実施形態における押し上げ軸31と同様の構成を有しているが、縮径端部32にエア給排気部33の開口33bから給排気されるエアによって膨張、収縮されるダイヤフラム部35をさらに備える点で、上記した実施形態と異なる。
図10(A)に示すように、押し上げ軸31の縮径端部32には、縮径端部32全体を覆うように配置されたゴム等の樹脂製のダイヤフラム部35が配置される。
図10(A)に示す状態は、ダイヤフラム部35が収縮された状態で、ダイヤフラム部35と共に縮径端部32が一対のコッタ片71、71内に挿通された状態である。次いでエア吸排気部33の通気路33aにエアを供給することで開口33bを介してエアがダイヤフラム部35と縮径端部32の外周面との間に供給される。すると、ダイヤフラム部35が膨張し、膨張したダイヤフラム部35によってコッタ片71、71が押し広げられる。
【0063】
上記した第一実施形態においては、エア給排気部33の開口33bから供給されるエアの圧力によってコッタ7を分離して広げるのに対して、本実施形態においては、開口33bから供給されるエアの圧力によって膨張するダイヤフラム部35によってコッタ7を分離して広げている。本実施形態によれば、開口33bから供給されたエアによって装置のコッタ7周辺の環境に影響を与えることなく、コッタ7を適切に移動させることができる。
【0064】
本実施形態においては、縮径端部32と外周面31aとの間の段差部31bにコッタ7の底面を当接させてこれを押し上げることで保持するとしていたが、例えば、押し上げ軸31がコッタ7を保持する際に、縮径端部32がコッタ7の係合部72の内周面に当接し、係合部72を押し上げることで、コッタ7を保持して上昇させるようにしてもよい。こうすることで、押し上げ軸31に段差部31bを形成する必要がない。さらに、縮径端部32は、外周面31aと段差部31bを介して接続される構成を例示したが、これに限定されず、縮径端部32を円錐形状として、縮径端部32は、その外周面が、押し上げ軸31の外周面31aに連続するテーパ状に形成される構成としてもよい。
【0065】
また、押し上げ軸31がコッタ7を保持して上昇させる際に、エア給排気部33内のエアを吸引して、縮径端部32にコッタ7を吸着させてコッタ7の姿勢を保持するようにしてもよい。
【0066】
また、開口33bを周方向に4か所設ける構成を例示したが、これに限定されず、周方向に等間隔で4か所設けた構成を上下二段に配置して、互いの開口33bが上下方向で重ならないように(例えば、45度位相をずらして)配置して、合計8か所に開口33bを設けた構成としてもよい。こうすることで、コッタ7の分割位置に関係なく、コッタ7の内周面に適切にエアを噴き出させることができる。
【0067】
さらに、通気路33aと開口33bとの間を押し上げ軸31の軸方向に対してらせん状に形成して、開口33bからエアをらせん状に噴き出させる構成としてもよい。こうすることで、上記合計8か所に開口33bを設けることなく、少ない開口33bの数でコッタ7の分割位置に関係なくエアをコッタ7の内周面に噴き出させることができる。
【0068】
なお、開口の形状、押圧部材の形状、軸体及び軸部の形状は、上記実施形態に示した構成に限定されることなく、コッタの数、形状に応じて適宜設定されてもよい。