(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
略水平方向に沿って配置され、周囲の雰囲気の温度よりも高い温度の気体が連続して流れる複数のダクトおよび前記ダクト同士を接続する複数のカップリングを有する配管と、
前記配管の外周を覆うカバーと、を備え、
前記カバーは、
前記配管からリークした前記気体を当該カバーの外側へと流出させる複数の通気口を前記配管の長さ方向に間隔をおいて規定し、
前記複数の通気口として、前記カバーは、前記複数のカップリングに対応して配置される複数の第1通気口と、前記複数のダクトに対応して配置される複数の第2通気口と、を少なくとも有し、
前記複数の第1通気口の各々の位置は、
前記カバーの横断面において2時位置から6時位置を経て10時位置までの範囲に、実質的に定められているとともに、
前記複数の第2通気口の各々の位置は、前記カバーの横断面において12時位置またはその近傍に、実質的に定められている、
ことを特徴とする配管構造。
略水平方向に沿って配置される配管の外周を覆うカバーに、前記配管の長さ方向に間隔をおいて複数の通気口を規定し、前記配管からリークした前記配管の周囲の雰囲気の温度よりも高い温度である気体を前記通気口から前記カバーの外側へと流出させ、前記通気口に対応する位置での前記気体の温度または濃度を用いて、前記気体のリークを検知するにあたり、
前記複数の通気口のうち、前記配管を構成する複数のカップリングに対応する複数の第1通気口の各々の位置を、
前記カバーの横断面において2時位置から6時位置を経て10時位置までの範囲に、実質的に定めておくとともに、
前記複数の通気口のうち、前記配管を構成する複数のダクトに対応して配置される複数の第2通気口の各々の位置を、前記カバーの横断面において12時位置またはその近傍に、実質的に定めておく、
ことを特徴とするリーク検知にロバスト性を与える方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
配管の部位によってはある程度のリークが許容される場合、許容される量のリークを検知することなく、カップリングやダクトの破損等により許容量を逸脱したリークだけを検知したい。
配管から高温の抽気がリークしたことを検知するために、
図12(a)に示すように、ダクト81およびカップリング82を覆うカバー83に複数の通気孔84を形成する。そして、通気孔84から流出した抽気により昇温される線状のセンサ85を設ける。昇温すると変化するセンサ85の電気抵抗に基づいて、リークを検知することができる。
【0006】
ここで、通気孔84から流出した抽気により昇温されるセンサ85の各部位85Aの温度は、通気孔84から部位85Aまでの距離や、周囲の気体の流動や気体の温度・圧力の変動などの種々の要因により大きくバラつく。
通気孔84から流出した抽気の流量(以下、リーク流量)に対して、センサ85の部位85A毎の温度のバラツキが大きいと、相応のリーク流量に対応する温度をリークセンサに設定し、その設定温度以上の温度がセンサ85により感応されたならばリークしたことを検知するにあたり、適切な設定温度を定めることが非常に難しい。設定温度によっては、許容される少量のリークを頻繁に検知したり、許容量を逸脱したリークが検知されずに配管の周囲環境が高温になるといったことが起こりうる。
それを避けるために、リーク検知のロバスト性を具備することが重要である。
【0007】
以上より、本発明は、リーク検知にロバスト性を与える方法、当該方法を実現可能な配管構造、およびその配管構造を備えた航空機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
配管のカバーに形成されたリーク検知用の複数の通気孔の位置は、カバーの周方向においてバラバラで統一されていない。
本発明の発明者は、通気孔の周方向の位置によっては、小流量のリークが検知されたり検知されなかったりすることに着目した。
例えば、
図12(b)に示すように、通気孔84が上方に位置していると、通気孔84から孔軸方向に沿って上方へと流出するリーク流は、流量が小さい場合でも実線矢印で示すようにそのままセンサ85へと到達する。到達した高温のリーク流によりセンサ85が昇温することで、リークが検知される。
一方、
図12(c)に示すように、通気孔84が下方に位置していると、リーク流の流量が小さい場合は、浮力の影響により、破線矢印で示すようにリーク流が周囲の気体に対して浮上する。そのため、センサ85には高温の気体が到達しないので、リークが検知されない。
【0009】
上記の知見に基づいてなされた本発明の配管構造は、略水平方向に沿って配置され、周囲の雰囲気の温度よりも高い温度の気体が連続して流れる複数のダクトおよびダクト同士を接続する複数のカップリングを有する配管と、配管の外周を覆うカバーと、を備えている。
カバーは、配管からリークした気体を当該カバーの外側へと流出させる複数の通気口を配管の長さ方向に間隔をおいて規定している。
複数の通気口として、カバーは、複数のカップリング(「接続部」)に対応して配置される複数の第1通気口と、複数のダクトに対応して配置される複数の第2通気口と、を少なくとも有する。すなわち、本発明の配管構造において、接続部には第1通気口、複数のダクトに対応する一般部には第2通気口が存在する。
そして、本発明は、
(i)複数
の第1通気口の各々の位置は、カバーの横断面において2時位置から6時位置を経て10時位置までの範囲に、実質的に定められていること
、および、(ii)複数の第2通気口の各々の位置は、カバーの横断面において12時位置またはその近傍に、実質的に定められていることを特徴とする。
【0010】
本発明の配管構造は、気体のリークを検知するリークセンサを具備することができる。リークセンサは、複数の通気口の各々に対応する位置を通り、カバーの外側の気体の温度または濃度に感応する感応部と、感応部の状態を用いて、リークを検知する検知部と、を有するように構成することができる。
【0012】
本発明の配管構造において、リークセンサは、第1通気口以外の通気口である複数の第2通気口に対応する位置で、カバーの周方向に沿って上方へと立ち上がるように配置されていることが好ましい。
【0013】
本発明の配管構造は、第1通気口の近傍に、気体の上昇を規制する屋根を備え、屋根は、第1通気口を規定するカバーに対して間隔をおいて、第1通気口の上方に配置され、感応部は、屋根の下方に配置されていることが好ましい。
なお、屋根を備える場合には、第1通気口は、6時位置およびその付近を除いた残りの範囲内に設けられていることが前提となる。
【0014】
屋根は、当該屋根とカバーとを繋ぐ支持部によりカバーに支持させることも、感応部を挟持するクリップにより感応部に支持させることもできる。
【0015】
本発明の配管構造は、第1通気口または第2通気口の近傍に、当該通気口から流出した気体の流れに影響するカバーの外側の気体の流れを遮蔽する防風壁を備えることが好ましい。
【0016】
本発明の航空機は、上述の配管構造を備えることを特徴とする。
航空機の動力源であるエンジンまたは補助動力装置からの抽気が流れる配管構造に本発明を適用可能である。
【0017】
本発明のリーク検知にロバスト性を与える方法は、略水平方向に沿って配置される配管の外周を覆うカバーに、配管の長さ方向に間隔をおいて複数の通気口を規定し、配管からリークした配管の周囲の雰囲気の温度よりも高い温度である気体を通気口からカバーの外側へと流出させ、通気口に対応する位置での気体の温度または濃度を用いて、気体のリークを検知するにあたり、
(i)複数の通気口のうち
、配管を構成する複数のカップリングに対応する
複数の第1通気口の
各々の位置を、カバーの横断面において2時位置から6時位置を経て10時位置までの範囲に、実質的に定めておくこと
、および、(ii)複数の通気口のうち、配管を構成する複数のダクトに対応して配置される複数の第2通気口の各々の位置を、カバーの横断面において12時位置またはその近傍に、実質的に定めておくことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、略水平に配置される配管を覆うカバーに形成されたリーク検知用の第1通気口の位置がカバーの横断面における下部および下部に近い上記範囲内に位置しているので、配管内からリークし、第1通気口から流出した気体の流量が小さい場合に、気体の流れが浮力によりリークセンサの感応部から逸れて上昇する。第1通気口の位置が上記の範囲内に実質的に統一されていると、浮力による流れの操作によりリーク検知にロバスト性が与えられるので、リークの誤検知を避けながら配管構造の信頼性を確保することができる。
また、第1通気口の近傍に屋根を備えていると、第1通気口から流出した流れが許容されるリーク量よりも増加した際に、屋根の下でリークセンサの感応部に集中することで感応部が急激に反応する。それによってロバスト性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
図1および
図2に示す配管構造10は、航空機のエンジンからの抽気を空調装置や防氷装置等に供給する。
配管構造10は、航空機の主翼の長さ方向にほぼ沿って延びており、主翼の内部に用意されたスペースに、略水平方向に沿って配置されている。「水平方向」は、地上に駐機された状態の航空機における水平方向に該当する。
配管構造10は、主翼を構成するリブやスパー、ストリンガ等の構造部材により支持されている。
本明細書において、「上」は鉛直方向の上方をいい、「下」は鉛直方向の下方をいうものとする。
【0021】
本実施形態の配管構造10は、胴体の後端に設けられた補助動力装置からの抽気を空調装置や防氷装置等に供給するものにも適合する。その場合も、配管構造10は、機体に用意されたスペースに略水平方向に沿って配置され、機体の構造部材により支持されている。
【0022】
配管構造10は、
図2(a)および(b)に示すように、複数のダクト21および複数のカップリング22を有する配管20と、配管20の外周を覆うカバー23および断熱材24と、配管20内からの抽気のリークを検知するリークセンサ30(
図1)とを備えている。
配管20は、ステンレス鋼等の金属材料から形成されている。配管20は、カップリング22およびダクト21の端部である接続部201と、ダクト21の一般部202とに区分されている。一般部202は、ダクト21の端部を除いたダクト21の本体部をいう。
【0023】
複数のダクト21は、内部が互いに連通しており、これらのダクト21の内部をエンジンから取り出された高温の抽気が連続して流れる。ダクト21の各々の外周は、断熱材24(
図2(b))により包囲されている。
断熱材24としては、例えば、グラスウール、ウレタンフォーム等、種々のものを用いることができる。
ダクト21の両端には、フランジ21A(
図2(b))が形成されている。隣り合うダクト21同士のフランジ21A,21Aは互いに突き当てられる。
カップリング22は、フランジ21A,21Aを挟み込むことでダクト21同士を接続する。
【0024】
カバー23は、接続部201の外周を覆う複数の接続部カバー11と、一般部202および断熱材24の外周を覆う複数の一般部カバー12とを備えている。
接続部カバー11は、突き当てられたフランジ21A,21Aに沿って接続部201に装着される。接続部カバー11の内側に断熱材24を配置することもできる。
一般部カバー12および接続部カバー11は、配管20内をある程度は保温し、外力から配管20を保護する。接続部カバー11および一般部カバー12としては、例えば、樹脂の繊維織物から形成されたものを用いることができる。これらのカバー11,12が断面リング状に形成されていると、配管20に装着し易い。
【0025】
典型的な配管構造であれば、突き当てられたフランジ間や、フランジおよびカップリングの間にシールゴムを介装したり、フランジ同士をボルトで締め付けることなどにより、ダクトの気密が確保されている。
しかし、本実施形態の配管構造10では、航空機の重量低減、整備性などの理由から、接続部201の気密を確保する措置がとられていない。配管構造10では、フランジ21A,21Aの間から配管構造10の外部へと少量の抽気がリークすることが許容されている。
【0026】
接続部201に小流量のリークは許容されるものの、カップリング22が緩んだりフランジ21Aやカップリング22が破損したことで許容量を逸脱したリークについては検知する必要がある。
また、一般部202においては、リーク量にかかわらず、発生したリークを確実に検知する必要がある。
【0027】
配管20から高温の抽気がリークしたことを検知するために、
図2(a)に示すように、一般部カバー12および接続部カバー11に、リーク検知用の通気孔31,32を形成するとともに、通気孔31,32の近傍にリークセンサ30のセンサ部33を配置し、通気孔31,32に対向する部位33Aが昇温すると変化するセンサ部33の電気抵抗に基づいてリークを検知している。
【0028】
リークセンサ30(
図1)は、接続部201については、許容される量を逸脱したリークだけを検知するとともに、一般部202については、小流量のリークも含めてリーク全般を検知する。リークセンサ30は、各通気孔31,32を経由する線状のセンサ部33の電気抵抗に基づいて、接続部201および一般部202のリークを一括して検知する。リークセンサ30には、リーク検知の閾値としての設定温度が与えられる。
【0029】
リークセンサ30(
図1)は、温度に感応する温度センサに相当するセンサ部33と、センサ部33の電気抵抗を用いて、検知すべきリークを検知するコントローラ34とを有している。
センサ部33は、冗長性を確保するために2重化されている。
センサ部33の幅(径)は、通気孔31,32の孔径よりも小さく、例えば数mmである。
センサ部33としては、昇温されると電気的特性が変化して電気抵抗が変化するものを適宜に用いることができる。
センサ部33は、長さ方向に適宜な間隔をおいて配置される図示しないブラケットにより、カバー23の外周部との間に少し間隔をあけて支持される。ブラケットは、機体構造や機体に設置された装備品に固定されている。
【0030】
接続部カバー11(
図2)には、当該カバー11を厚み方向に貫通する円形の第1通気孔31が形成されている。
第1通気孔31は、接続部カバー11の周上の1箇所に形成されている(
図3)。
接続部201の周方向の任意の箇所からリークした抽気は、第1通気孔31から接続部カバー11の外側へと流出する。
【0031】
一般部カバー12(
図2)には、当該カバー12を厚み方向に貫通する円形の第2通気孔32が形成されている。第1通気孔31および第2通気孔32の各々の径は、同じであってもよいし、相違していてもよい。また、第1通気孔31および第2通気孔32の各々の形状は円形に限らず、他の形状であってもよい。
第2通気孔32は、長さ方向に所定の間隔をおいて複数形成されている。第2通気孔32は、第1通気孔31と同様に、一般部カバー12の与えられた位置における周上の1箇所に形成されている。
一般部202の長さ方向の任意の部位でかつ周方向の任意の箇所に生じた亀裂等からリークした抽気は、断熱材24を通過し、亀裂等に近い第2通気孔32から一般部カバー12の外側へと流出する。
【0032】
リークセンサ30のセンサ部33は、第1通気孔31の各々の近傍と、第2通気孔32の各々の近傍とを通るように、カバー23に沿って取り回される。
【0033】
配管構造10は、接続部201に関し、外乱に際しても、許容される量のリークを検知せずに、許容量を逸脱したリークだけを検知する第1のロバスト性を具備している。第1のロバスト性は、接続部201にそれぞれ対応する第1通気孔31の位置を、接続部カバー11を上部11Uと下部11Lとに区分したときの下部11Lに一律的に定めることにより与えられている。下部11Lは、接続部カバー11の横断面において、3時位置から6時位置を経て9時位置までの領域に該当し、上部11Uは下部11Lの残りの領域に該当する。第1通気孔31の位置は、第1通気孔31の向き、すなわち、第1通気孔31の孔軸がカバー23の基準位置(例えば
図4(b)のA)に対してなす角度(ローテーション)のことを意味しており、本明細書においては、カバー23の横断面を時計の文字盤と見立てたときの時刻に対応している。第2通気孔32の位置についても同様である。
図1〜
図3には、下部11Lに位置する第1通気孔31の一例として、接続部カバー11の横断面において3時の位置に規定された第1通気孔31を示している。
【0034】
さらに、配管構造10には、一般部202に関し、外乱に際しても、発生したリークを確実に検知する第2のロバスト性をも具備している。第2のロバスト性は、一般部202に対応するの第2通気孔32の位置を、一般部カバー12の横断面において12時位置またはその近傍に一律的に定めることにより与えられている。
【0035】
外乱因子としては、センサ部33の周囲の雰囲気(以下、気体)の流動やその気体の温度・圧力の変動、振動や航空機の姿勢によるセンサ部33と通気孔31,32との距離のバラツキ等がある。そういった外乱に対するロバスト性が与えられている配管構造10においては、接続部201および一般部202のそれぞれにおいて狙いとするリークが正しく検知される。
【0036】
次に、本実施形態の配管構造10による作用について説明する。
以下では、第1通気孔31あるいは第2通気孔32から流出した抽気の流れのことをリーク流といい、リーク流の流量のことをリーク流量というものとする。
リーク流の温度は、配管構造10の周囲の気体の温度よりも高いので、リーク流と周囲の気体との密度差に基づく浮力がリーク流に働く。リーク流の流量が小さいほど、浮力がリーク流に及ぼす影響が大きい。このことを利用して、第1のロバスト性および第2のロバスト性を実現している。
【0037】
まず、接続部201に関する第1のロバスト性について説明する。
図3(a)は、第1通気孔31からのリーク流の流量が小さい場合に対応し、
図3(b)は、第1通気孔31からのリーク流の流量が大きい場合に対応する。
上述したように、接続部201に対応する第1通気孔31は、接続部カバー11の下部11Lに位置している。そして、センサ部33は、第1通気孔31の近傍で、かつ、接続部カバー11の外周部から少し離れた位置に配置されている。
リーク流の流量が小さい場合は、
図3(a)に破線の矢印F1で示すように、第1通気孔31から孔軸方向に流出したリーク流が、浮力の影響を受けて、周囲の気体に対して接続部カバー11の外周部に沿って上昇する。このリーク流により、破線の矢印F2で示すように周囲の気体がリーク流に向けて連行される。
上記のように、リーク流がセンサ部33から逸れて上昇し、リーク流に伴って周囲の気体がセンサ部33の付近を流動することから、温度Thで高温のリーク流が流出していてもセンサ部33の付近の気体温度Tcの昇温が抑制されている。温度Thは、第1通気孔31から流出する時点のリーク流の温度に相当する。
【0038】
一方、リーク流の流量が大きい場合は、
図3(b)に実線の矢印F3で示すように、第1通気孔31から流出したリーク流が浮力に打ち勝ち、センサ部33へと到達する。すると、高温のリーク流によりセンサ部33が昇温する。
【0039】
昇温することでセンサ部33の電気抵抗が変化する。リークセンサ30のコントローラ34(
図1)は、センサ部33の電気抵抗に基づいて、センサ部33の温度が設定温度に到達しているか否かを判定し、設定温度に到達していると判定したならばリークを検知する。
【0040】
ここで、接続部201の各々を覆う接続部カバー11における第1通気孔31の位置(角度、ローテーション)が下部11Lに統一されていると、いずれの第1通気孔31から流出したリーク流についても、流量が同等であれば浮力による影響が同等となり、センサ部33の各部位33Aの温度も同等となる。第1通気孔31の各々におけるリーク流量とセンサ部温度との関係は、例えば、
図4(a)のグラフ中の太い実線101により表される。
太い実線101上においてセンサ部温度が周囲の気体温度Tcと同等に低い領域Aは、浮力が支配的な影響を及ぼすリーク流量の範囲を示している。
一方、太い実線101上においてセンサ部温度がリーク流の温度Thと同様に高い領域Bは、浮力による影響を脱したリーク流量の範囲を示している。
接続部201に関しては、上述したリーク流の向きの相違(F1,F3)の如く、センサ部温度が、リーク流量に応じてリーク流の温度Th側の領域Bと、それよりも温度が低い、接続部カバー11の外側の気体温度Tc側の領域Aとに峻別されている。
【0041】
仮に、第1通気孔31の各々の位置(角度、ローテーション)が統一されていないとすると、例えば、
図4(a)に斜線を付した領域102で示すように、リーク流量とセンサ部温度との関係が角度によってバラつく。
【0042】
リーク流量とセンサ部温度との関係のバラつきが大きいと、すなわち、あるセンサ部温度に対してリーク流量の幅Wが大きいと、許容リーク流量に対応してリークセンサ30に適切な設定温度を与えることが難しいが、本実施形態では、幅Wが小さくなるため、領域Aに対応する接続部カバー11外側の気体温度Tcと、領域Bに対応するリーク流温度Thとの間の温度をリークセンサ30の設定温度Tsとして容易に定めることができる。
この設定温度Tsを基準として、許容流量のリークを誤検知することなく、許容流量を逸脱したリークだけを検知することができる。
本実施形態によれば、接続部201に関して、許容流量のリークの誤検知を防いで航空機のスムーズな運用に寄与するとともに、許容流量を逸脱したリークを確実に検知して航空機の安全にも寄与することができる。
【0043】
第1通気孔31が位置する下部11Lの範囲は、拡張することができる。
図4(b)に示すように、2時位置から6時位置を経由して10時位置までの孔位置範囲210に第1通気孔31が位置していれば、流量が小さい場合はリーク流の少なくとも一部がセンサ部33から逸れて上昇し、リーク流に伴って、接続部カバー11外側におけるセンサ部33の周囲の気体の流動も生じる。それによってセンサ部33の周囲の気体温度Tcの昇温が抑制されるので、第1通気孔31の位置として孔位置範囲210が許容される。
なお、3時位置や9時位置に第1通気孔31が位置していると、配管設置スペースの側方に存在するスパーやストリンガ等にセンサ部33を取り付け易い。センサ部33は、図示しないブラケットを用いて、配線方向に沿ったスパーやストリンガ等に取り付けることができる。
【0044】
次に、一般部202に関する第2のロバスト性について説明する。
上述のように、一般部202を覆う一般部カバー12に形成された第2通気孔32(
図2(a))の各々は、一般部カバー12の12時位置またはその近傍(一般部カバー12の上部)に位置している。
そうすると、
図5に矢印で示すリーク流の流量が大きい場合は勿論のこと、流量が小さい場合であっても、リーク流が上昇してセンサ部33へと到達する。小さい流量のリーク流は、浮力により上方へと誘導されるため、第2通気孔32とセンサ部33とが多少離れていてもセンサ部33に到達する。それによってセンサ部33が昇温すると、リークセンサ30のコントローラ34(
図1)は、センサ部33の電気抵抗に基づいて、センサ部33の温度が設定温度に到達しているか否かを判定し、設定温度に到達していると判定したならばリークを検知する。
【0045】
一般部202に対応する第2通気孔32の各々の位置が一般部カバー12の上部に統一されていると、いずれの第2通気孔32から流出したリーク流でも、流量の如何によらず、対向するセンサ部33の部位33Aに到達する。
そうすると、第2通気孔32の各々において、設定温度Tsを基準として、リーク流量の如何を問わず、発生したリークを確実に検知するとともに、接続部201に関しては、前述の通り、許容流量を逸脱したリークだけを検知することができる。
【0046】
本実施形態において、検知対象とするリークの流量とセンサ部温度との関係が若干バラついていたとしても、そのバラツキの度合いは、第1通気孔31の各々の位置および第2通気孔32の各々の位置が統一されていない場合に比べて小さいので、センサ部33の検出感度を通気孔に対応する各位置で揃える調整作業により対処できる。例えば、第1通気孔31および第2通気孔32からの噴流が妥当な位置にまで到達するように各通気孔の孔径を数段階から選定する調整作業が可能である。その他にも、許容される範囲内でカバー23の周方向における第1通気孔31および第2通気孔32の位置を変更したり、センサ部33を取り付けるブラケットの交換によりセンサ部33と通気孔31,32との距離を変えるなどの調整作業が可能である。
【0047】
いずれの第1通気孔31の位置も、極力、所定の孔位置範囲210(
図4(b))内に一律的に定められることが好ましいが、センサ部33を取り付けるブラケットと配管20の周囲の部材や機器との干渉や、第1通気孔31から流出する高温のリーク流との接触を避けるべき機器との位置関係、といった事情により、一部の第1通気孔31を孔位置範囲210から外れた位置に形成せざるを得ない場合もある。その場合でも、他の大部分の第1通気孔31の位置が孔位置範囲210内に統一されていれば、第1通気孔31の各々の位置が孔位置範囲210内に実質的に定められているので、本発明に含める。
上記は、第2通気孔32に関しても同様であり、すべての第2通気孔32でなくても、大部分の第2通気孔32の位置が一般部カバー12の12時位置またはその近傍に統一されていれば、第2通気孔32の各々の位置が12時位置またはその近傍に実質的に定められているものとして本発明に含める。
【0048】
〔第1実施形態の変形例〕
図6(a)および(b)に示す第2通気孔35は、第1実施形態の第2通気孔32とは異なり、位置が一般部カバー12の上部には統一されていない。これらの第2通気孔35の各々の位置で、センサ部33が一般部カバー12の周方向に沿って上方へと立ち上がっている。センサ部33は、第2通気孔35の各々の位置でダクト21の軸線に対してほぼ直交している。第2通気孔35は、孔位置範囲210から6時位置およびその近傍を除いた残りの範囲内の適宜な位置に設けることができる。
図6(a)および(b)には、第2通気孔35の一例として、3時位置に規定された第2通気孔35を示している。
一般部カバー12の長手方向に第2通気孔35が並んでいる箇所では、センサ部33を一般部カバー12の周りに螺旋状に配置することができる。
【0049】
センサ部33が第2通気孔35の位置で上方に立ち上がっていると、
図6(b)に破線の矢印で示す流量が小さいリーク流が浮力により上昇し、センサ部33を昇温させる。
図6(b)に実線の矢印で示す流量が大きいリーク流は、浮力に打ち勝ち、第2通気孔35の孔軸方向にそのまま進んでセンサ部33を昇温させる。
つまり、第2通気孔32の位置を上部に統一した第1実施形態と同様に、流量が小さいリーク流をも逃さずにセンサ部33により捕捉することができるので、流量の如何によらず、発生したリークを確実に検知することができる。
【0050】
〔第2実施形態〕
次に、
図7を参照し、本発明の第2実施形態について説明する。
以下では、第1実施形態と相違する点を中心に説明する。第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付している。
第2実施形態の配管構造40では、配管20の接続部201および一般部202の双方において少量のリークが許容される。
【0051】
接続部カバー11および一般部カバー12のいずれにも、厚み方向に貫通する第1通気孔31が形成されている。
接続部カバー11には、第1通気孔31が1つずつ形成されている。
一般部カバー12には、所定の間隔をおいて複数の第1通気孔31が形成されている。
一般部カバー12および接続部カバー11に形成された複数の第1通気孔31は、いずれも2時から6時を経由して10時までの孔位置範囲210内(
図4(b))に位置している。
図7には、孔位置範囲210内に位置する第1通気孔31の一例として、カバー23の横断面において3時の位置に規定された第1通気孔31を示している。
センサ部33は、それらの第1通気孔31を順次経由するようにカバー23の長手方向に沿って延びている。
【0052】
第1通気孔31の位置が下方に統一されていることによる作用は、第1実施形態と同様である。簡単に説明する。
一般部202あるいは接続部201において抽気のリークが発生すると、第1通気孔31から孔軸方向に沿って流出したリーク流が、浮力に対して流量が小さい場合に、
図3(a)に示すように、センサ部33から逸れて上昇し、それに伴ってセンサ部33の周囲の気体が流動する。そのため、センサ部33の温度が周囲の気体温度Tcと同等に維持される。
一方、あるリーク量を超えて浮力による影響を脱した場合は、
図3(b)に示すように、第1通気孔31に対向するセンサ部33にリーク流が到達するので、センサ部33の温度がリーク流の温度Thと同等の温度にまで昇温される。
図3(a)と
図3(b)に示すリーク流の向きが相違するように(F1,F3)、リーク流量に応じてセンサ部温度が気体温度Tc側とリーク流の温度Th側とに律せられる(
図4(a)参照)。
したがって、気体温度Tcとリーク流温度Thとの間に設定する設定温度Tsを基準として、小流量のリークは許容するが流量が増えるとリークを確実に検知するロバスト性を備えることができる。
【0053】
一般部202において許容されるリーク流量と、接続部201において許容されるリーク流量とが相違する場合は、第1通気孔31の孔径について一般部カバー12と接続部カバー11とで異ならせることにより、一般部202および接続部201のそれぞれにおいて所望流量のリークを検知することができる。
【0054】
〔第3実施形態〕
次に、
図8および
図9を参照し、本発明の第3実施形態について説明する。
第3実施形態と、続く第4実施形態で示す配管構造は、許容される量を逸脱したリークだけを検知することに関する第1のロバスト性をより高めるための構成を備えている。
【0055】
第3実施形態の配管構造は、
図8(a)〜(c)に示すように、第1通気孔31の近傍に、屋根13を備えている。屋根13は、孔位置範囲210(
図4(b))から6時位置およびその付近を除いた残りの範囲内に位置する第1通気孔31の近傍に配置することができる。屋根13は、第1実施形態で示した第1通気孔31、および第2実施形態で示した第1通気孔31のいずれにも適用することができる。
【0056】
板状に形成された屋根13は、第1通気孔31を規定するカバー23に対して間隔をおき、第1通気孔31よりも上方で水平に配置されている。屋根13は、気体の上昇を規制し、屋根13の下方に気体を留める。この屋根13の下方に、センサ部33が配置されている。
【0057】
屋根13は、カバー23側に位置する屋根13の端縁部からカバー23の外周部に向けて延びる一対の支持部14(
図8(b))を有しており、それらの支持部14によりカバー23に支持されている。支持部14はカバー23の外周部に取り付けられている。
屋根13とカバー23との間が支持部14により区画されることで、矩形状の開口15(
図8(b))が形成されている。
支持部14は屋根13と一体でも別体でもよい。本実施形態では、切欠(開口15)を板に形成することで屋根13と支持部14とを一体に形成している。
【0058】
屋根13があることによる作用を説明する。
図9(a)は、第1通気孔31からのリーク流の流量が小さい場合に対応し、
図9(b)は、第1通気孔31からのリーク流の流量が大きい場合に対応する。
リーク流の流量が小さい場合は、
図9(a)に破線の矢印F1で示すように、第1通気孔31から孔軸方向に流出したリーク流が浮力の影響を受ける。リーク流は、屋根13とカバー23との間の開口15(
図8(b))を通り上昇するためセンサ部33には到達せず、さらに、リーク流に伴い、破線の矢印F2で示すように屋根13の下方の気体が開口15からリーク流に向けて吸い出される。 上記のように、リーク流がセンサ部33には到達せず、センサ部33の周囲の気体が流動することにより、センサ部33の周りの温度が維持される。
【0059】
一方、あるリーク流量を超えると、
図9(b)に実線の矢印F3で示すように、第1通気孔31から流出したリーク流が浮力に打ち勝ち、開口15を通り抜けずに屋根13の下方へと吹き込む。吹き込んだリーク流の上昇が屋根13により規制されるため、センサ部33が高温の空気に包まれる。これによってセンサ部33は急激に昇温する。センサ部33の周囲に高温の空気を十分に留めるために、屋根13の寸法L(
図8(c))を第1通気孔31の孔径よりも大きく設定するとよい。
【0060】
上述のように、リーク流の流量が小さいときにはセンサ部33の周囲を低温の気体が流れ、リーク流の流量が大きいときにはセンサ部33の周囲に高温のリーク流が集まる。このように流れの状態が急に切り替わることで、
図9(c)に実線で示すように、ある流量を境にセンサ部温度が立ち上がる急峻な流量−温度特性を得ることができる。二点鎖線は、第1実施形態における流量−温度特性の例を示している。
急峻な流量−温度特性によりセンサ部温度がほぼ二値化されていると、大きな外乱時にも、設定温度Tsを基準として、逸脱した流量のリークだけを間違いなく検知することができる。
【0061】
支持部14の形態は特に限定されず、浮力によりリーク流が通り抜ける屋根13とカバー23との間を塞がずに屋根13とカバー23とを繋ぐものであれば任意の形態を採用することができる。
【0062】
屋根13に代えて、
図9(d)に示す屋根13´を好ましく採用することができる。
屋根13´は、上述の屋根13に相当する水平部13Aと、水平部13Aの先端から下方へと延びた垂下部13Bとを有している。水平部13Aの下方へと吹き込んだリーク流が垂下部13Bによりその場に留まり、センサ部33の昇温が促進されるため、より急峻な流量−温度特性を得ることができる。したがって、ロバスト性をより向上させることができる。
【0063】
〔第4実施形態〕
次に、
図10を参照し、本発明の第4実施形態について説明する。
第4実施形態では、屋根13がセンサ部33により支持されている。この点を除いて、第4実施形態は、基本的な構成や作用が第3実施形態と同様である。
【0064】
図10(a)に示すように、屋根13は、センサ部33を挟持するクリップ16に一体化されている。
クリップ16は、カバー23との間に間隔をおいて配置される矩形状の屋根13(
図10(b))と、屋根13を下側から支持する挟持部17とを有している。挟持部17は、配管20の長さ方向における屋根13の両端にそれぞれ設けられている。
挟持部17は、
図10(c)に示すように、二重化されているセンサ部33,33の両方を挟み込んで保持する。挟持部17はセンサ部33に対して着脱可能である。
このクリップ16を介して屋根13はセンサ部33に支持されている。屋根13とセンサ部33とは一体に形成することもできる。
【0065】
本実施形態によれば、クリップ16をセンサ部33に装着するだけで、屋根13を容易にセンサ部33に支持させることができる。センサ部33の感度を調整するために屋根13のサイズが異なるクリップ16への付け替えも容易である。
センサ部33がカバー23よりも剛性が高い場合には、屋根13を安定して支持するためにも、本実施形態のようにセンサ部33に屋根13を取り付けることが好ましい。
【0066】
〔第5実施形態〕
次に、
図11を参照し、本発明の第5実施形態について説明する。
第5実施形態に係る配管構造は、周囲の風F4によるロバスト性の低下を避けるため、防風壁18を備えている。
風F4は、例えば、配管設置スペースの換気や、当該スペース内の温度勾配や圧力勾配などによる気体の流動であり、リーク流の当初の向きを規定する第1通気孔31の孔軸方向に対して交差する向きに流れている。
【0067】
防風壁18は、少なくとも、第1通気孔31が位置するカバー23の表面からセンサ部33まで延在し、風F4を遮蔽することで、リーク流が風F4の向きに従って流されてしまうことを抑制する。
防風壁18は、カバー23の表面に接触するか近づけて配置されており、防風壁18にはセンサ部33が通される切欠180が形成されている(
図11(b))。防風壁18は第1通気孔31よりも下方の位置にまで延在している。
【0068】
本実施形態の防風壁18は、第4実施形態のクリップ16(
図10)および屋根13と一体化されている。センサ部33にクリップ16を装着すると、挟持部17と向きが一致する切欠180の内側にセンサ部33が配置される。
なお、防風壁18は、クリップ16および屋根13と一体化されていなくてもよい。防風壁18を単独でカバー23やセンサ部33に設けることができる。
【0069】
防風壁18により風F4が遮られると、第1通気孔31から流出したリーク流が小流量であっても安定して上昇する。そうしてこそ、ある流量でリーク流の向きが切り替わり、その前後でセンサ部33の温度も切り替わるので、ロバスト性を担保することができる。
【0070】
防風壁18は、少量のリークをも許容しない一般部202に対応する第2通気孔32に関しても適用することができる。その場合も、風F4を遮蔽することにより、小流量のリーク流がセンサ部33へと安定して上昇するので、発生したリークを確実に検知することができる。
【0071】
防風壁18は、2以上の壁面を備えるものであってもよい。
例えば、
図11(c)に示すように、防風壁18が上面18Aと2つの側面18B,18Cとを備えていれば、これらの壁面により三方から流れる風を遮蔽することができる。防風壁18の上面18Aは屋根13としても機能する。第1通気孔31から上面18Aの下方へと吹き込んだリーク流が側面18B,18Cにより防風壁18の内側に留まることでセンサ部33がより十分に高温空気に包まれるので、リークの検知感度が向上する。
【0072】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
本発明の配管構造は、エンジンや補助動力装置からの抽気が流れるものに限定されない。他の高温ガスが流れる配管構造にも本発明を適用することができる。
また、本発明は、航空機に限らず、各種の産業プラントに装備される配管構造に適用することもできる。
【0073】
さらに、リーク検知のために用いる感応部は、リーク先の空間の気体の温度に感応する温度センサには限らず、気体の濃度に感応する濃度センサであってもよい。