特許第6501558号(P6501558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社あけぼの産業の特許一覧

<>
  • 特許6501558-免震改修方法 図000002
  • 特許6501558-免震改修方法 図000003
  • 特許6501558-免震改修方法 図000004
  • 特許6501558-免震改修方法 図000005
  • 特許6501558-免震改修方法 図000006
  • 特許6501558-免震改修方法 図000007
  • 特許6501558-免震改修方法 図000008
  • 特許6501558-免震改修方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6501558
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】免震改修方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20190408BHJP
【FI】
   E04G23/02 F
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-39652(P2015-39652)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-160636(P2016-160636A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502143319
【氏名又は名称】株式会社あけぼの産業
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】石田 俊久
(72)【発明者】
【氏名】永野 貴麗
(72)【発明者】
【氏名】近藤 睦
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−245451(JP,A)
【文献】 特開2001−254315(JP,A)
【文献】 特開昭58−218504(JP,A)
【文献】 特開平09−317188(JP,A)
【文献】 特開昭61−021244(JP,A)
【文献】 特開2011−179252(JP,A)
【文献】 特開2005−030107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04G 21/18
E04H 9/02
B66F 1/00
B66F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体に免震装置を設置する免震改修方法であって、
前記躯体の周囲に仮支持部材を配置して、当該仮支持部材により前記躯体を仮支持させる工程と、
前記躯体の少なくとも一部を切断して撤去し、当該躯体の上側の上部躯体と当該躯体の下側の下部躯体との間に空間を設ける工程と、
前記下部躯体の上に、免震装置を配置する工程と、
前記上部躯体と前記免震装置との間に設けられて中央部に向かうに従って間隔が狭くなる上下一対のガイドと、当該一対のガイド同士の間に配置された一対のくさび部材と、前記一対のガイドに係止されて前記一対のくさび部材を貫通して水平方向に延びる連結部材と、を備え、前記一対のガイドのそれぞれの側端縁には、側壁が形成され、当該一対のガイドのそれぞれの中央部には、中央壁が形成され、当該中央壁に前記連結部材が係止する支持部材を設置するとともに、前記くさび部材を挟んで前記連結部材の両端側に一対のジャッキを設置し、当該一対のジャッキにより前記連結部材に反力をとって前記一対のくさび部材を中央部に向かって押し込むことにより、前記免震装置に軸力を導入して、前記仮支持部材で支持していた荷重を支持部材に受け替える工程と、
前記くさび部材の位置を固定することで、前記導入した軸力を維持する工程と、
前記上部躯体と前記免震装置の上面との間にコンクリートを打設する工程と、を備えることを特徴とする免震改修方法。
【請求項2】
前記一対のくさび部材の外端を前記連結部材に係止することで、前記導入した軸力を維持することを特徴とする請求項1に記載の免震改修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、既存建物を免震化する免震改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、既存建物を基礎下で免震化する、基礎免震改修工事が知られている。
この基礎免震改修工事は、既存建物の基礎の直下を掘削し、この掘削した部分に支保工を架設して、掘削した部分の底面に反力をとって基礎を仮支持する。その後、積層ゴムなどの免震装置を基礎の直下に取り付けて、その後、ジャッキを取り外す。これにより、ジャッキで仮支持した建物荷重を既存基礎下に設置した免震装置に受け替える。このようにして、免震装置で基礎を支持して、既存建物を免震化する。
【0003】
しかしながら、このような方法では、免震装置によって設置時期が異なるので、積層ゴムの縮み量にばらつきが生じてしまい、既存建物が不等沈下するおそれがあった。
【0004】
この問題を解決するため、積層ゴムに予め圧縮方向に強制的に荷重をかけておき(以下、プレロードと呼ぶ)、この状態で、積層ゴムを設置することが提案されている。
このようにすれば、プレロードにより予め積層ゴムに圧縮力が作用しているので、積層ゴムの縮み量のばらつきを抑えて、既存建物が不等沈下するのを防止できる。
【0005】
例えば、特許文献1では、積層ゴムの上下フランジプレート間に油圧ジャッキを設置して、この油圧ジャッキにより上下のフランジプレート同士を接近させて、積層ゴムにプレロードを導入する。
また、特許文献2では、積層ゴムの上側のフランジプレートと既存建物の躯体との間に、十文字状にくさび装置を配置する。各くさび装置は、上下に密着して配置された固定側くさび板および可動側くさび板と、固定側くさび板に係止した反力座金に反力をとって、可動側くさび板を固定側くさび板に対して水平方向に相対移動させるジャッキと、を備える。このくさび装置によれば、ジャッキにより、可動側くさび板を固定側くさび板に対して相対移動させて、積層ゴムにプレロードを導入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−280705号公報
【特許文献2】特許第5437113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法では、免震装置を設置してから所定期間に亘ってプレロードを維持する必要があるが、油圧ジャッキでは、構造上、ジャッキ内部の油を長期間に亘って高圧に保持することは難しい。また、建物荷重を油圧ジャッキから免震装置に受け替える際、積層ゴムが弾性変形して建物が沈下するため、油圧ジャッキを取り外して除荷できない場合があった。
また、特許文献2の方法では、4台のジャッキが必要となるため、コスト高となっていた。また、各くさび装置において、反力座金を介してジャッキの反力を固定側くさび板にとっているので、反力座金に過大な力がかかって変形し、反力をとることができない場合があった。
【0008】
本発明は、プレロードを確実に導入して、さらに長期間に亘って容易にプレロードを保持し、または、プレロードを確実に除荷できる免震改修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の免震改修方法は、躯体に免震装置を設置する免震改修方法であって、前記躯体の周囲に仮支持部材(例えば、後述の仮受支柱50)を配置して、当該仮支持部材により前記躯体を仮支持させる工程(例えば、後述のステップS1)と、前記躯体の少なくとも一部を切断して撤去し、当該躯体の上側の上部躯体(例えば、後述の上部躯体10B)と当該躯体の下側の下部躯体(例えば、後述の下部躯体10A)との間に空間を設ける工程(例えば、後述のステップS2)と、前記下部躯体の上に、免震装置を配置する工程(例えば、後述のステップS3、S4)と、前記上部躯体と前記免震装置との間に設けられて中央部に向かうに従って間隔が狭くなる上下一対のガイド(例えば、後述の下側ガイド61および上側ガイド62)と、当該一対のガイド同士の間に配置された一対のくさび部材(例えば、後述のテーパプレート63A、63B)と、前記一対のガイドに係止されて前記一対のくさび部材を貫通して水平方向に延びる連結部材(例えば、後述のPC鋼棒64)と、を備える支持部材(例えば、後述の支持部材60)を設置するとともに、前記くさび部材を挟んで前記連結部材の両端側に一対のジャッキ(例えば、後述の油圧ジャッキ65)を設置し、当該一対のジャッキにより、前記連結部材に反力をとって前記一対のくさび部材を中央部に向かって押し込むことにより、前記免震装置に軸力を導入して、前記仮支持部材で支持していた荷重を支持部材に受け替える工程(例えば、後述のステップS5〜S7)と、前記くさび部材の位置を固定することで、前記導入した軸力を維持する工程(例えば、後述のステップS8)と、前記上部躯体と前記免震装置の上面との間にコンクリートを打設する工程(例えば、後述のステップS9、S10)と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の免震改修方法は、前記一対のくさび部材の後端を前記連結部材に係止することで、前記導入した軸力を維持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上部躯体と免震装置の上面との間にくさび部材を打ち込んで、上部躯体と免震装置の上面との間隔を押し拡げることで、免震装置に軸力を導入する。そして、くさび部材の位置を固定することで、この導入した軸力を維持する。
したがって、従来のように油圧ジャッキで軸力を維持する必要がないから、長期間に亘ってプレロードを維持できる。
【0012】
また、油圧ジャッキによりくさび部材を水平移動して軸力を導入するので、従来のように油圧ジャッキを上部躯体と免震装置の上面との間に設置する構成ではないから、油圧ジャッキを容易に取り外して、導入したプレロードを確実に除荷できる。
また、連結部材の両端側にジャッキを配置して、連結部材に反力をとってジャッキを駆動したので、ジャッキの反力が互いに打ち消されるから、反力を確実にとることができ、プレロードを確実に導入できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る免震改修方法により免震装置が設置された既存柱の断面図である。
図2】前記実施形態に係る免震装置の断面図である。
図3】前記実施形態に係る免震装置を設置する手順のフローチャートである。
図4】前記実施形態に係る免震装置を設置する手順の説明図(その1)である。
図5】前記実施形態に係る免震装置を設置する手順の説明図(その2)である。
図6】前記実施形態に係る免震装置を設置する手順の説明図(その3)である。
図7図6のA−A断面図である。
図8図6のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る免震改修方法により免震装置20が設置された既存柱10の断面図である。図2は、免震装置20の断面図である。
具体的には、既存建物2の躯体としての既存柱10に免震装置20を設置することで、免震構造1を構築し、既存建物2の1階床レベルから上の部分を免震化する。
【0015】
既存柱10は、例えば、既存建物2の地下1階の柱である。この既存柱10の柱脚部は、地下1階床11に接合されており、この既存柱10の柱頭部は、1階梁12および1階床13に接合されている。
免震装置20は、既存柱10の中間高さに設置され、1階梁12の下面には、補強躯体14が構築されている。
【0016】
免震構造1は、上述の免震装置20と、下部柱躯体10Aを含んで構築された下部免震基礎30と、上部柱躯体10Bを含んで構築された上部免震基礎40と、を備える。
下部免震基礎30の上面には、下部ベースプレート31が打ち込まれる。下部ベースプレート31には、複数の雌ねじ部32が円環状に配置されている。
上部免震基礎40の下面には、上部ベースプレート41が打ち込まれる。上部ベースプレート41には、複数の雌ねじ部42が円環状に配置されている。また、この上部免震基礎40には、後述の支持部材60が打ち込まれている。
【0017】
免震装置20は、下部フランジ21と、この下部フランジ21の上に設けられた積層ゴム22と、この積層ゴム22の上に設けられた上部フランジ23と、を備える。
下部フランジ21は、下部免震基礎30の下部ベースプレート31の雌ねじ部32にボルト24で固定される。
上部フランジ23は、上部免震基礎40の上部ベースプレート41の雌ねじ部42にボルト24で固定される。
【0018】
図3に示す免震装置20の設置手順に従い、ステップS1では、図4に示すように、仮支持部材としての仮受支柱50を設置する。まず、1階梁12の下面に補強躯体14を構築する。次に、免震装置20を設置する既存柱10の近傍に、仮支持部材としての仮受支柱50を配置して、この仮受支柱50により、1階梁12を地下1階床11から仮支持させる。
【0019】
ステップS2では、図4に示すように、既存柱10をワイヤーソーなどで切断して、既存柱10の中間部分のコンクリート躯体を撤去し、上側の既存柱10と下側の既存柱10との間に空間を設ける。ここで、この既存柱10の免震装置20を設置する部分より下側を下部躯体としての下部柱躯体10Aとし、免震装置を設置する部分より上側を上部躯体としての上部柱躯体10Bとする。
【0020】
ステップS3では、図5に示すように、下部免震基礎30を構築する。具体的には、下部ベースプレート31を下部柱躯体10Aの上に取り付けて、配筋して型枠を建て込んで、この型枠内にコンクリートを打設する。
【0021】
ステップS4では、図5に示すように、下部ベースプレート31の上に免震装置20を取り付けて、さらに、この免震装置20の上に上部ベースプレート41を取り付ける。この上部ベースプレート41の上には、スタッド43が溶接固定されている。この状態では、免震装置20と上部柱躯体10Bとの間に、空間が形成されている。
【0022】
ステップS5では、図6図8に示すように、支持部材60を、上部柱躯体10Bと免震装置20の上面との間に設置する。
支持部材60は、上部ベースプレート41と上部柱躯体10Bとの間に設けられて中央部に向かうに従って上下の間隔が狭くなる上下一対のガイド61、62と、これら一対のガイド61、62同士の間に水平方向に対向配置された一対のくさび状のくさび部材としてのテーパプレート63A、63Bと、一対のガイド61、62に係止されて一対のテーパプレート63A、63Bを貫通して水平方向に延びるPC鋼棒64と、を備える。
【0023】
一対のガイド61、62は、上部ベースプレート41の上に設けられた下側ガイド61と、上部柱躯体10Bの下に設けられた上側ガイド62と、で構成される。
【0024】
下側ガイド61は、上部ベースプレート41の上に構築されたコンクリート体70と、このコンクリート体70の上面に打ち込まれた下側ガイド板71と、を備える。
下側ガイド板71の上面の側端縁には、一対の側壁72が形成されており、上面の中央部には、一対の側壁72同士を連結する中央壁73が形成されている。ここで、下側ガイド板71の上面のうち中央壁73を挟んだ両側の部分をガイド面74A、74Bとする。これらガイド面74A、74Bは、傾斜面であり、中央壁73に向かうに従って高くなっている。
【0025】
上側ガイド62は、下側ガイド61と同様の構造であり、上部柱躯体10Bの下に構築されたコンクリート体80と、このコンクリート体80の下面に打ち込まれた上側ガイド板81と、を備える。
上側ガイド板81の下面の側端縁には、一対の側壁82が形成されており、上面の中央部には、一対の側壁82同士を連結する中央壁83が形成されている。ここで、上側ガイド板81の下面のうち中央壁83を挟んだ両側の部分をガイド面84A、84Bとする。これらガイド面84A、84Bは、傾斜面であり、中央壁83に向かうに従って低くなっている。
【0026】
ここで、上側ガイド板81の中央壁83は、下側ガイド板71の中央壁73に対向して配置されており、上側ガイド板81のガイド面84A、84Bも、下側ガイド板71のガイド面74A、74Bに対向して配置されている。
これにより、ガイド面74A、74Bとガイド面84A、84Bとの間隔は、中央部である中央壁73、83に向かうに従って狭くなっている。
【0027】
一対のテーパプレート63A、63Bは、略直方体形状である。これら一対のテーパプレート63A、63Bの下面および上面は、傾斜面であり、これら下面から上面までの距離は、中央壁73、83に向かうに従って狭くなっている。
【0028】
PC鋼棒64は、一対の支圧板90およびナット91を介して、上側ガイド板81および下側ガイド板71の中央壁73、83に係止している。
すなわち、一対の支圧板90は、中央壁73、83を挟んで配置されており、PC鋼棒64は、これら一対の支圧板90を貫通している。PC鋼棒64は、外周面に雌ねじが形成されており、PC鋼棒64の一対の支圧板90の外側にナット91を螺合し、このナット91を締め付けることで、PC鋼棒64が中央壁73、83に係止する。
【0029】
また、テーパプレート63A、63Bの外端面は、一対の支圧板92およびナット93を介して、PC鋼棒64に係止している。
すなわち、一対の支圧板92は、テーパプレート63A、63Bの外端面に配置されており、PC鋼棒64は、これらテーパプレート63A、63Bおよび支圧板92を貫通している。ナット93は、PC鋼棒64の一対の支圧板92の外側に螺合されている。
【0030】
ステップS6では、図6図8に示すように、軸力導入手段としての一対の油圧ジャッキ65を取り付ける。すなわち、油圧ジャッキ65は、PC鋼棒64に反力をとって一対のテーパプレート63A、63Bを互いに接近する方向に押し込むものであり、支持部材60のテーパプレート63A、63Bを挟んでPC鋼棒64の両端側に配置される。
この油圧ジャッキ65の先端面は、一対のテーパプレート63A、63Bの外端面に当接している。
【0031】
PC鋼棒64は、一対の支圧板94およびナット95を介して、各油圧ジャッキ65の基端面に係止している。
すなわち、一対の支圧板94は、各油圧ジャッキ65の外端面に配置されており、PC鋼棒64は、これら油圧ジャッキ65および支圧板94を貫通している。PC鋼棒64の一対の支圧板94の外側にナット95を螺合し、このナット95を締め付けることで、PC鋼棒64がテーパプレート63A、63Bの外端面に係止する。
【0032】
ステップS7では、図6図8に示すように、油圧ジャッキ65により、上側ガイド板81および下側ガイド板71に反力をとって一対のテーパプレート63A、63Bを互いに接近する方向に押し込むことで、免震装置20に軸力を導入する(プレロード)。
つまり、PC鋼棒64は、上側ガイド板81および下側ガイド板71に係止しており、油圧ジャッキ65の基端面は、このPC鋼棒64に係止しているので、油圧ジャッキ65は、上側ガイド板81および下側ガイド板71に反力をとることができる。
【0033】
そして、油圧ジャッキ65の先端面で、一対のテーパプレート63A、63Bの外端面を押圧する。
すると、テーパプレート63Aは、下側ガイド板71のガイド面74Aおよび上側ガイド板81のガイド面84Aを摺動して、これらガイド面同士の間隔を押し拡げる。また、テーパプレート63Bは、下側ガイド板71のガイド面74Bおよび上側ガイド板81のガイド面84Bを摺動して、これらガイド面同士の間隔を押し拡げる。
【0034】
これにより、上部柱躯体10Bと免震装置20の上面との間に軸力が導入されて、仮受支柱50で支持していた既存建物2の荷重を支持部材60に受け替える。
このとき、中央壁73、83は、テーパプレート63A、63Bの行き過ぎを防止するエンドストッパとなる。
【0035】
ステップS8では、この導入した軸力を維持する。つまり、ナット93を締め付けることで、テーパプレート63A、63Bの上側ガイド板81および下側ガイド板71に対する相対位置を固定する。これにより、支持部材60を、上部柱躯体10Bと上部ベースプレート41つまり免震装置20との間で突っ張った状態とする。
【0036】
ステップS9では、図2に示すように、油圧ジャッキ65を除荷して撤去する。
ステップS10では、図2に示すように、上部免震基礎40を構築する。すなわち、配筋して型枠を建て込んで、型枠内にコンクリートを打設する。
【0037】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)上部柱躯体10Bと免震装置20の上面との間に、テーパプレート63A、63Bを打ち込んで、上部柱躯体10Bと免震装置20との間隔を押し拡げることで、免震装置20に軸力を導入する(プレロード)。そして、このテーパプレート63A、63Bの位置を固定することで、この導入した軸力を維持する。
したがって、従来のように油圧ジャッキで軸力を維持する必要がないから、長期間に亘ってプレロードを維持できる。
【0038】
また、油圧ジャッキ65によりテーパプレート63A、63Bを水平移動して軸力を導入するので、従来のように油圧ジャッキを上部躯体と免震装置の上面との間に設置する構成ではないから、油圧ジャッキ65を容易に取り外して、導入したプレロードを確実に除荷できる。
また、PC鋼棒64の両端側に油圧ジャッキ65を配置し、これら油圧ジャッキ65を、PC鋼棒64に反力をとって駆動したので、油圧ジャッキ65の反力が互いに打ち消されるから、反力を確実にとることができ、プレロードを確実に導入できる。
【0039】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、本実施形態では、既存柱に免震装置を設けたが、これに限らず、既存基礎の直下に新設基礎を構築し、この新設基礎と既存基礎との間に免震装置を設けてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…免震構造 2…既存建物
10…既存柱 10A…下部柱躯体(下部躯体) 10B…上部柱躯体(上部躯体)
11…地下1階床 12…1階梁 13…1階床 14…補強躯体
20…免震装置 21…下部フランジ 22…積層ゴム 23…上部フランジ 24…ボルト
30…下部免震基礎 31…下部ベースプレート 32…雌ねじ部
40…上部免震基礎 41…上部ベースプレート 42…雌ねじ部 43…スタッド
50…仮受支柱(仮支持部材) 60…支持部材 61…下側ガイド 62…上側ガイド
63A、63B…テーパプレート(くさび部材) 64…PC鋼棒(連結部材) 65…油圧ジャッキ
70…コンクリート体 71…下側ガイド板
72…側壁 73…中央壁 74A、74B…ガイド面
80…コンクリート体 81…上側ガイド板
82…側壁 83…中央壁 84A、84B…ガイド面
90…支圧板 91…ナット 92…支圧板 93…ナット
94…支圧板 95…ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8