(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一対の可動把持片の対向面には、複数の把持爪が、各可動把持片の幅方向全域に亘って、該可動把持片と一体的に形成されている請求項1又は2記載の医療用把持具。
前記固定把持片の、前記一対の可動把持片との対向面には、各可動把持片に向けて突出する複数の固定爪が、前記固定把持片の幅方向全域に亘って、該固定把持片と一体的に形成されている請求項4記載の医療用把持具。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る医療用把持具の一実施形態について説明する。
【0019】
図1に示すように、この医療用把持具10(以下、単に「把持具10」という)は、医療用チューブに収容されて、体内の所定位置に搬送されて、体内の組織を把持するために用いられる。
【0020】
この実施形態の場合、前記医療用チューブは、
図1及び
図2に示すように、2本のチューブ71,74からなり、これらを含めて医療用チューブ装置70(以下、単に「チューブ装置70」という)が構成されており、このチューブ装置70によって前記把持具10が搬送されると共に、体内組織の把持作業がなされるようになっている。
【0021】
まず、チューブ装置70について説明する。
図2に示すように、このチューブ装置70は、基端側に筒状のスライダ72が固着されたアウターチューブ71と、基端側にチューブ保持部75が取付けられると共に、前記アウターチューブ71内にスライド可能に挿入されるインナーチューブ74とを有している。
【0022】
前記チューブ保持部75の外周には、ワイヤ操作ハンドル76がスライド可能に装着されている。また、前記インナーチューブ74内には、把持具10を着脱可能に保持する、操作ワイヤ77がスライド可能に配置されており、その基端側がワイヤ固定部材76aを介して、前記ワイヤ操作ハンドル76に連結されている。
【0023】
更に
図2及び
図3に示すように、操作ワイヤ77の先端には、スリット78aを介して二股状に分岐した形状をなす、チャック部78が固着されている。このチャック部78の二股状部の先端内周には、スリット78a内に入り込んだ把持具10の基部20(
図2参照)を保持するための、凸部78b,78bが突設しており、これによりチャック部78に保持具10が着脱可能に取付けられるようになっている。
【0024】
上記チューブ装置70は、例えば、チューブ保持部75を保持して、スライダ72をチューブ軸方向前後にスライドさせると、インナーチューブ74に対してアウターチューブ71が相対的にスライドすると共に、チューブ保持部75を保持して、ワイヤ操作ハンドル76をチューブ軸方向前後にスライドさせると、インナーチューブ74に対して操作ワイヤ77が相対的にスライドするようになっている。なお、スライダ72を保持して、チューブ保持部75をスライドさせたり、ワイヤ操作ハンドル76を保持して、チューブ保持部75をスライドさせたりしてもよく、操作方法に特に限定はない。
【0025】
また、医療用チューブ装置の構造としては、上記構造に限定されるものではなく、少なくとも把持具を収容でき、かつ、操作ワイヤを把持具に対して着脱可能な構造であれば、特に限定はされない。
【0026】
次に、この実施実施形態における把持具10について説明する。
【0027】
図1、
図3及び
図4に示すように、この把持具10は、本体部15と、該本体部15の外周にスライド可能に装着された、枠状スライド部材50とを備えている。
【0028】
この実施形態における枠状スライド部材50は、ステンレスや、Ti、Ta等からなる円筒状をなしているが、例えば、角筒状をなしていてもよい。また、外周の一部が軸方向に接離されていて、枠状をなすように折曲された形状であってもよい。
【0029】
また、前記本体部15は、
図6に示すように、ステンレスや、Ti、Ni−Tiなどの形状記憶合金等からなる一定肉厚の一枚の金属板5を切断加工することで製造されるものであって(この製造方法については後述する)、前記チューブ装置70に設けられた操作ワイヤ77に着脱可能に取付けられる基部20と、該基部20に開閉可能に連結された一対の可動把持片30,30とを有している。
【0030】
また、
図3に示すように、本体部15は、基部20及び一対の可動把持片30,30が、
図6に示す金属板5の板厚Tと同一幅Hでもって、一体的に形成されている。なお、本体部15の幅H及び金属板5の板厚Tは、0.5〜10.0mmであることが好ましく、1.0〜3.0mmであることがより好ましい。また、本体部15の幅Hは、本体部15の側面視、すなわち、一対の可動把持片30,30の拡開方向C(
図4参照)側から、本体部15を見たときの幅である。
【0031】
図4に示すように、前記基部20は、基端側が幅広で先端側に向けて次第に幅狭となる「しずく」のような形状をなしている。そのため、
図2,3に示すように、チャック部78のスリット開口側から基部20が押し込まれると、基部20がチャック部78のスリット78a内に入り込んで凸部78b,78bに保持される。また、その状態で操作ワイヤ77を手元側に引っ張って、基部20から離れる方向にチャック部78に引き抜き力を作用させると、基部20がスリット78a内から抜け出て、チャック部78から基部20が外れるようになっている。なお、基部20の形状としては、例えば、球状等をなしていてもよく、操作ワイヤに着脱可能な形状であれば、特に限定はされない。
【0032】
一方、
図3及び
図4に示すように、基部20に開閉可能に連結された前記一対の可動把持片30,30は、その基端側が前記基部20に連結されており、外力が付与されてない通常の状態で、先端側が互いに離れる方向に拡開するように、略ハの字状に延出されている。
【0033】
これらの一対の可動把持片30,30は、枠状スライド部材50が、前記基部20の外周に位置するときに開き(
図4参照)、同枠状スライド部材50を先端側に移動させると、その外周が押え込まれて、弾性的に閉じるように構成されている(
図5参照)。
【0034】
上記可動把持片30についてより具体的に説明すると、この実施形態においては、
図4及び
図5に示すように、一対の可動把持片30,30は、基部20の先端から延出して、可動把持片30の拡開方向C(一対の可動把持片30,30が互いに離れように開く方向)に向けて、所定曲率で湾曲する部分31(以下、単に「湾曲部分31」という)と、該湾曲部分31の端部から互いにほぼ平行に伸び、その外側に山状の突部32a,32aを設けた仮保持部32,32と、これらの仮保持部32,32の先端から、互いに離れる方向に斜め外方に向けて、緩やかにカーブしつつ延出する延出部33,33とを有している。
【0035】
図4に示すように、仮保持部32,32の突部32a,32aは、基部20の外周に配置された枠状スライド部材50が把持片先端側に移動しようとするときに当接して、枠状スライド部材50を仮保持する部分である。なお、枠状スライド部材50を把持片先端側に向けて押し込むと、枠状スライド部材50の内周により突部32a,32aが押圧されて、一対の可動把持片30,30を撓ませて、枠状スライド部材50が突部32a,32aを乗り越えて把持片先端側に移動可能となっている。
【0036】
また、前記延出部33,33の先端側からは、把持片先端側に向けて次第に肉厚となる除変部34,34が伸びている。これら除変部34,34の先端からは、一定肉厚のスライド部材配置部分35,35が延出しており、更に、これらのスライド部材配置部分35,35の先端側には、把持片外側に向けて、スライド部材配置部分35に対して直角に屈曲した段状の移動規制部36,36が設けられている。
【0037】
なお、前記移動規制部36,36は、枠状スライド部材50の、可動把持片30の先端側への最大移動位置を規制する部分となっており(
図5参照)、前記スライド部材配置部分35,35は、枠状スライド部材50を移動規制部36,36に当接するまで移動させた位置における、枠状スライド部材50の内面に対向する部分となっている。
【0038】
そして、
図4に示すように、本体部15を平面的に見たときに、すなわち、一対の可動把持片30,30の拡開方向Cに対して直交した方向から、一対の可動把持片30,30を見たときに、各可動把持片30の前記湾曲部分31の厚さをAとし、各可動把持片30の前記スライド部材配置部分35の厚さをBとしたとき、厚さAよりも厚さBが厚く形成されている。
【0039】
なお、前記湾曲部分31の厚さAは、0.10〜0.40mmであることが好ましく、0.15〜0.25mmであることがより好ましい。また、前記スライド部材配置部分35の厚さBは、0.15〜0.60mmであることが好ましく、0.20〜0.40mmであることがより好ましい。また、前記厚さAを1としたとき、A:Bは、1:1.2〜3.0であることが好ましく、1:1.3〜1.5であることがより好ましい。
【0040】
また、一対の可動把持片30,30の、段状をなした移動規制部36の端部からは、一定肉厚で長板状をなした把持部37,37がそれぞれ延出している。
図5に示すように、これらの把持部37,37は、前記枠状スライド部材50を前記移動規制部36,36に当接するまで移動させて、一対の可動把持片30,30を閉じたときに、互いにほぼ平行となるように設けられている。
【0041】
更に
図3に示すように、一対の把持部37,37の対向面には、複数の把持爪38が、各可動把持片30の幅方向全域に亘って、該可動把持片30と一体的に形成されている。この実施形態では、把持部37の先端と、先端から等間隔をあけた2箇所の、合計3箇所に把持爪38がそれぞれ突設されており、また、
図4に示すように、把持具10を平面的に見たときに、各把持爪38は、把持部37に対してほぼ直角となるように突出している(
図4参照)。
【0042】
そして、前記枠状スライド部材50を、各可動把持片30の移動規制部36,36に当接するまで、把持片先端側に移動させると、弾性力に抗して一対の可動把持片30,30が閉じて、可動把持片30,30に対向配置された把持爪38,38によって、体内の組織、例えば、
図7に示すような傷口1の切片2,3を、
図10に示す如く把持できるようになっている。なお、把持爪38の個数や形状等については、特に限定はない。
【0043】
ところで、この実施形態における各可動把持片30は、湾曲部分31が厚さAで形成され、突部32aを除く仮保持部32、及び、延出部33が、湾曲部分31とほぼ同じ厚さで形成されている。また、除変部34が次第に肉厚に形成され、該除変部34よりもスライド部材配置部分35が厚さBで厚く形成されており、更に、把持部37はスライド部材配置部分35とほぼ同じ厚さで形成されている。すなわち、一対の可動把持片30,30は、全体的に見て、その基端側から先端側に向けて次第に厚くなるように形成されている。
【0044】
なお、上記実施形態の可動把持片30としては、突部32aや把持爪38を設けなくてもよく、また、上記のような次第に肉厚とされた除変部34を設けなくともよく、可動把持片30の、湾曲部分31の厚さに対して、スライド部材配置部分35の厚さが厚くなる形状であれば特に限定はされない。
【0045】
以上説明した把持具10は、次のような、本発明における医療用把持具の製造方法(以下、単に「製造方法」という)によって、製造されるようになっている。
【0046】
図6に示すように、この製造方法は、上述したステンレスや、Ti、Ni−Tiなどの形状記憶合金等からなる金属板5の、板厚方向に沿って切断刃7を配置し、この切断刃7を、形成すべき本体部15の外周形状に沿って移動させて、一定板厚Tの一枚の金属板5を板厚方向に切断加工することで、金属板5の板厚Tと同一幅Hで、基部20や一対の可動把持片30,30からなる本体部15を、一体的に形成するものである。すなわち、この製造方法は、金属板を打ち抜いた後、プレス等で曲げ加工して形成する、従来の製造方法とは異なっている。
【0047】
また、上記製造方法に用いられる切断加工方法としては、例えば、周知のワイヤーカットによる放電加工や、レーザーカットによる切断加工、その他、プラズマ加工などによる溶断加工、鋸・砥石による切断加工等を採用することができ、特に限定はされない。なお、上記切断刃7は、ワイヤーカットの場合にはワイヤーであり、レーザーカットの場合には照射されるレーザーそのものである。
【0048】
上記のように、この製造方法によれば、一枚の金属板5を板厚方向に切断加工して、本体部15を、金属板5の板厚Tと同一幅Hで一体的に形成するので、一対の可動把持片30の、厚さAや厚さBの厚さ違いの形状を容易に形成することができると共に、複数の把持爪38や、
図11に示すような他の実施形態における複数の固定爪41を、可動把持片30や固定把持片40(
図11参照)の全幅Hでもって、容易に一体的に形成することでき、総じて把持具を容易かつ効率的に製造することができる。
【0049】
次に、上記構成からなる本発明に係る把持具10の使用方法の一例について説明する。まず、チューブ装置70のアウターチューブ71内に把持具10を収容する。
【0050】
すなわち、
図4に示すように、把持具10を構成する本体部15の、基部20の外周に枠状スライド部材50を配置し、仮保持部32,32の突部32a,32aに当接させて、枠状スライド部材50を仮保持しておくと共に、一対の可動把持片30,30を拡開させた状態とする。
【0051】
また、チューブ装置70のチューブ保持部75を保持して、スライダ72を、チューブ保持部75の先端から離れる方向、すなわち、チューブ先端側に向けてスライドさせて、
図2に示すように、アウターチューブ71の先端部を、インナーチューブ74の先端部よりも突出させておく。更に、チューブ保持部75を保持して、ワイヤ操作ハンドル76を、チューブ先端側にスライドさせて操作ワイヤ77を押し出して、アウターチューブ71の先端開口からチャック部78を挿出させておく。
【0052】
そして、把持具10の基部20を、操作ワイヤ77のチャック部78に嵌合させて、この状態で、チューブ保持部75を保持して、ワイヤ操作ハンドル76を、チューブ保持部75の基端側に近づく方向、すなわち、操作者の手元側に引っ張る。すると、操作ワイヤ77が引っ張られて、チャック部78を介して本体部15の基部20が引っ張られるので、拡開した一対の可動把持片30,30が、アウターチューブ71内に引き込まれて、その内周面に押圧されて、弾性力に抗して閉じて、
図2に示すように、アウターチューブ71の先端部内周に収容される。
【0053】
また、この状態では、インナーチューブ74の先端部が、把持具10の枠状スライド部材50に当接すると共に、枠状スライド部材50が、本体部15の突部32a,32aに当接して、基部20の外周に位置決め保持された状態となっている(
図2参照)。
【0054】
上記状態で図示しない内視鏡のルーメンを通じて、チューブ装置70全体を移動させていき、
図8に示すように、その先端部を、ポリーブや癌等を切除したことにより生じる傷口1(本発明における「体内の組織」)のやや手前に至る位置まで移動させる。
【0055】
次いで、チューブ装置70のチューブ保持部75を保持して、スライダ72を、チューブ保持部75の先端に近づく方向、すなわち、操作者の手元側にスライドさせると、アウターチューブ71の先端開口から把持具10が開放されて、
図8に示すように、一対の可動把持片30,30が開く。
【0056】
その後、拡開した一対の可動把持片30,30で、傷口両側の切片2,3を挟み込むように配置して、把持片先端側の把持爪38,38を切片2,3に当接させ、その状態で、ワイヤ操作ハンドル76を保持して、チューブ保持部75を介してインナーチューブ74を先端側に押し出す。
【0057】
すると、
図9に示すように、操作ワイヤ77を介して本体部15の基部20が保持された状態で、インナーチューブ74先端に当接した枠状スライド部材50が、本体部15の突部32a,32aを押圧して、一対の可動把持片30を内側に撓ませながら把持片先端側に移動していく。
【0058】
そして、枠状スライド部材50が、仮保持部32,32の突部32a,32aを乗り越えて、延出部33,33や、除変部34,34、スライド部材配置部分35,35の外周をスライドしていき、
図10に示すように、移動規制部36,36に当接すると、それ以上の移動が規制されると共に、一対の可動把持片30,30が押え込まれて閉じる。その結果、一対の可動把持片30,30の複数の把持爪38によって、傷口1の切片2,3が把持されて、傷口1を閉じた状態に保持することができる。
【0059】
その後、インナーチューブ74を押し当てて、枠状スライド部材50の移動を規制しつつ、ワイヤ操作ハンドル76を手元側に引っ張ることで、チャック部78のスリット78aから、基部20が抜け出て、本体部15が操作ワイヤ77から取り外されて、
図10に示すように、把持具10のみを体内に残して、チューブ装置70を体内から引き抜くことができる。
【0060】
そして、この把持具10によれば、
図4に示すように、一対の可動把持片30,30のの基端側の湾曲部分31の厚さAは、前記スライド部材配置部分35の厚さBよりも薄いので、
図2に示すように、医療用チューブを構成するアウターチューブ71の先端部内周に、一対の可動把持片30,30を閉じた状態で収容しても、一対の可動把持片30,30をへたりにくくすることができ、閉じた状態の可動把持片30が拡開するときの弾性復元力を維持して、一対の可動把持片30,30をしっかりと拡開させることができる。また、可動把持片30における前記厚さBが、前記厚さAよりも厚いことで、
図5に示すように、枠状スライド部材50を移動規制部36まで移動させ、一対の可動把持片30,30を閉じた状態における、各可動把持片30のスライド部材配置部分35の剛性を高めることができ、把持具10の把持力を向上させることができる。
【0061】
更にこの実施形態においては、
図4に示すように、各可動把持片30は、湾曲部分31、突部32aを除く仮保持部32、延出部33がほぼ同じ厚さで形成され、除変部34が次第に肉厚に形成され、スライド部材配置部分35が最も厚く形成され、基端側から先端側に向けて次第に厚くなるように形成されている。したがって、枠状スライド部材50を、可動把持片30の移動規制部36に至る位置まで移動させやすくすることができると共に、可動把持片30の応力集中を緩和してキンクしにくくすることができる。
【0062】
更にこの実施形態においては、
図3に示すように、一対の把持部37,37の対向面には、複数の把持爪38が、各可動把持片30の幅方向全域に亘って、同可動把持片30と一体的に形成されているので、枠状スライド部材50を把持片先端側に移動させて、一対の可動把持片30,30を閉じたときの、把持力をより高めることができる。
【0063】
図11〜21には、本発明に係る医療用把持具の、他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0064】
この実施形態の医療用把持具10A(以下、単に「把持具10A」という)は、本体部15が、一対の可動把持片30,30Aと、それらの間に設けられた固定把持片40とを有しており、略3つ又構造をなしている。
【0065】
図12に示すように、本体部15を構成する基部20Aは、この実施形態の場合、幅広の剛性部21と、その基端側に設けられたツマミ部22と、剛性部21の先端側から、同剛性部21よりも肉薄となるように突出した突出部23とから構成されている。前記ツマミ部22は、前記実施形態の把持具10の基部20と同様の形状で且つ同様の機能を有しており、チューブ装置70を構成する操作ワイヤ77の先端に固着されたチャック部78に、本体部15を着脱可能に取付けるためのものである。
【0066】
前記剛性部21の先端側から突出した突出部23の先端から、該突出部23と同一厚さで且つ一定厚さでもって、長板状をなした固定把持片40が延出されている。この固定把持片40の、一対の可動把持片30,30Aとの対向面には、各可動把持片30に向けて突出する複数の固定爪41が、固定把持片40の幅方向全域に亘って、該固定把持片40と一体的に形成されている。
【0067】
図11及び
図12に示すように、この実施形態においては、固定把持片40の先端両側面から固定爪41,41が突出しており、該先端側の固定爪41に対して等間隔をあけて把持片両側面に固定爪41が3つずつ突出しており、固定把持片40の片面に4つずつ、合計で8つの固定爪41が設けられている。また、
図12に示すように、把持具10Aを平面的に見たときに、各固定爪41は、固定把持片40に対してほぼ直角となるように突出している。なお、固定把持片40の先端側の固定爪41,41は、それ以外の固定爪41よりも若干長く突出している。また、固定爪41の形状や個数は特に限定されない。
【0068】
一方、
図12に示すように、一対の可動把持片のうち、一方の可動把持片30は前記実施形態と同様の形状をなしていると共に、その湾曲部分31の厚さAに対してスライド部材配置部分35の厚さBが厚く形成されている。また、一対の可動把持片のうち、他方の可動把持片30Aは、前記一方の可動把持片30に比べて、除変部34から延出したスライド部材配置部分35が、直線状に長く伸びる形状をなしていると共に、湾曲部分31の厚さAに対して、スライド部材配置部分35の厚さBが、厚く形成されている(
図12参照)。
【0069】
そして、一対の可動把持片30,30Aのうち、一方の可動把持片30の基端側が、基部20Aの突出部23の、先端側の一側面に連結され、他方の可動把持片30Aの基端側が、基部20Aの剛性部21の、基端側の他側面(可動把持片30とは反対側の面)に連結されている。すなわち、この実施形態においては、非対称な形状をなした一対の可動把持片30,30Aが、固定把持片40を挟んで、その基端側が基部20Aに対して軸方向に位置をずらして連結された構造をなしている。なお、
図13に示すように、各可動把持片30,30Aの移動規制部36,36は、一対の可動把持片30,30Aを閉じたときに、軸方向に整合する位置となるように設けられている。
【0070】
したがって、枠状スライド部材50を把持片先端側に移動させると、固定把持片40に対して、一対の可動把持片30,30Aがタイミングをずらして閉じるようになっている。
【0071】
そして、この実施形態においては、各可動把持片30,30Aの複数の把持爪38、及び、固定把持片40の複数の固定爪41は、枠状スライド部材50を移動規制部36に規制されるまで把持片先端側に移動させて、一対の可動把持片30,30Aが閉じたときに、複数の把持爪38が複数の固定爪41の間にそれぞれ入り込んで、軸方向に互いにずれて噛み合う位置となるように形成されている(
図13参照)。
【0072】
なお、固定把持片の固定爪及び各可動把持片の把持爪は、上記形状に限定されるものではなく、例えば、
図19〜21に示すような形状としてもよい。
【0073】
図19(a),(b)に示す形状では、固定把持片40の先端両側から、円弧状に突出した固定爪41A,41Aが突出していると共に、所定間隔をあけて固定把持片40に対してほぼ直角に固定爪41B,41Bが突出している。一方、各可動把持片30の先端側からは、可動把持片30の基端側に向けて鋭角状に屈曲した把持爪38Aが突出している。
【0074】
そして、
図19(b)に示すように、固定把持片40に対して一対の可動把持片30,30Aを閉じたときに、固定爪41A,41Bに対して把持爪38Aが入り込むようになっている。この形状では、把持爪38Aが基端側に向けて鋭角状に屈曲しているので、傷口1の切片2,3に食い込みやすく、把持爪38Aが抜けにくくなる。
【0075】
図20(a),(b)に示す形状では、
図19に示す形状に対して、可動把持片30,30Aの把持爪が異なっている。すなわち、この場合の可動把持片30,30Aの把持爪38Bは、可動把持片30,30Aの先端から突出すると共に、更にその先端側が、可動把持片30,30Aの基端側に向けて折り返されて、略コ字状をなしている。
【0076】
そして、
図20(b)に示すように、固定把持片40に対して一対の可動把持片30,30Aを閉じたときに、固定爪41A,41Bに対して把持爪38Bが入り込むようになっている。この形状では、把持爪38Bが、可動把持片30の基端側に向けて折り返された略コ字状をなしているので、傷口1の切片2,3の周縁を比較的広い範囲で挟みつつ、食い込みやすくすることができる。
【0077】
図21(a),(b)に示す形状では、固定把持片40の先端両側から、板状の固定爪41Cが突出していると共に、該固定爪41Cに連設して、鋸刃状に突出した3つの固定爪41Dが設けられている。一方、可動把持片30,30Aには、その先端側から鋸刃状をなした3つの把持爪38Cが突出している。
【0078】
そして、
図21(b)に示すように、固定把持片40に対して一対の可動把持片30,30Aを閉じたときに、固定爪41C及び固定爪41Dの隙間に、複数の把持爪38Cが歯合するように入り込むようになっている。この形状では、鋸刃状をなした複数の把持爪38Cが、同じく鋸刃状をなした固定爪41C及び固定爪41Dの隙間に入り込むので、各爪どうしの隙間を小さくすることでき、傷口1の切片2,3を波状をなすようにしっかりと把持することができる。
【0079】
次に、上記構成からなる把持具10Aの使用方法の一例について説明する。この略3つ又構造なした把持具10Aにおいては、
図14に示すような、比較的傷口が広い場合にも、傷口1をしっかりと把持できるものである。
【0080】
まず、前記実施形態と同様の手順で、チューブ装置70のアウターチューブ71内に把持具10Aを収容し、図示しない内視鏡のルーメンを通じて、チューブ装置70全体を移動させて、
図14に示すように、傷口1のやや手前に至る位置まで移動させる。
【0081】
その後、チューブ保持部75を保持して、スライダ72を手元側にスライドさせて、アウターチューブ71の先端開口から把持具10Aを開放させ、一対の可動把持片30,30Aを開かせる(
図15参照)。
【0082】
その後、可動把持片30Aと固定把持片40との間に、傷口1の一方の切片2を挟み込むように配置して、その状態で、ワイヤ操作ハンドル76を保持して、チューブ保持部75を介してインナーチューブ74を先端側に押し出す。
【0083】
すると、操作ワイヤ77を介して本体部15の基部20が保持された状態で、インナーチューブ74により枠状スライド部材50が把持片先端側に移動して、可動把持片30Aが内側に撓んで、固定把持片40に対して閉じるので、
図16に示すように、把持爪38と固定爪41とによって切片2が把持される。
【0084】
次いで上記把持状態を維持しながら、一方の切片2を他方の切片3に向けて引き寄せつつ(
図16の矢印参照)、可動把持片30の把持爪38を、傷口1の他方の切片3に引っ掛ける。その状態で、上述したのと同様に、ワイヤ操作ハンドル76を保持して、チューブ保持部75を介してインナーチューブ74を先端側に押し出すことで、インナーチューブ74により枠状スライド部材50が把持片先端側に移動して、可動把持片30が内側に撓んで、固定把持片40に対して閉じていくので、他方の切片3側に一方の切片2側が引き寄せられる(
図17参照)。
【0085】
更に枠状スライド部材50を、移動規制部36,36に当接するまで、把持片先端側に移動させると、それ以上の移動が規制されると共に、一対の可動把持片30,30Aが固定把持片40に対して完全に閉じて、複数の把持爪38及び複数の固定爪41が軸方向に互いにずれて噛み合って、傷口1の両切片2,3が把持されて、傷口1を閉じた状態に保持することができる(
図18参照)。その後、前記実施形態と同様の手順で、操作ワイヤ77のチャック部78から本体部15を取外すことにより、
図18に示すように、把持具10Aのみを体内に残して、チューブ装置70を体内から引き抜くことができる。
【0086】
上記のように、この実施形態においては、一対の可動把持片30,30Aの間に固定把持片40を有し、かつ、一対の可動把持片30,30Aの基端側が基部20Aに対して軸方向に位置をずらして連結されているので、枠状スライド部材50を把持片先端側に移動させると、固定把持片40に対して一対の可動把持片30,30Aをタイミングをずらして閉じることができる。そのため、アウターチューブ71から把持具10Aを開放した後、傷口1の一方の切片2を、可動把持片30Aと固定把持片40との間に位置させ、枠状スライド部材50を把持片先端側に移動させることで、可動把持片30Aを固定把持片40に向けて閉じさせて、一方の切片2を把持でき、この状態で、傷口1の一方の切片2を、他方の切片3に寄せつつ、可動把持片30と固定把持片40との間に位置させ、枠状スライド部材50を更に把持片先端側に移動させることによって、可動把持片30を固定把持片40に向けて閉じさせて、傷口1の他方の切片3も把持することでき、広い傷口1であっても閉じやすくすることができる。
【0087】
更に、この実施形態においては、固定把持片40の、一対の可動把持片30,30Aとの対向面には、各可動把持片30,30Aに向けて突出する複数の固定爪41が、固定把持片40の幅方向全域に亘って、固定把持片40と一体的に形成されているので、枠状スライド部材50を把持片先端側に移動させて、一対の可動把持片30,30Aをタイミングをずらして閉じたときに、その把持力をより高めることができ、広い傷口であってもしっかりと閉じた状態に維持することができる。
【0088】
また、この実施形態においては、一対の可動把持片30,30Aの複数の把持爪38、及び、固定把持片40の複数の固定爪41は、枠状スライド部材50を、可動把持片30の移動規制部36に規制されるまで把持片先端側に移動させて、一対の可動把持片30,30Aが閉じたときに、軸方向に互いにずれて噛み合う位置となるように形成されているので、傷口1の切片2,3を、波状をなすように把持することができ、傷口1に対する把持力を、より向上させることができる。
【0089】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【実施例】
【0090】
可動把持片における、基部の先端から可動把持片の拡開方向に向けて湾曲した「湾曲部分」の肉厚を変化させたときに、可動把持片がどの程度へたるかどうかを試験した(へたり具合確認試験)。
【0091】
(試験例1)
図22に示すように、
図11及び12に示す実施形態とほぼ同様の、医療用把持具の本体部を製造した。この本体部は、板厚が1.0mmのステンレスの金属板を、ワイヤーカット放電加工で切断加工して、固定把持片及び一対の可動把持片を一体形成で製造した。また、各可動把持片の湾曲部分の厚さは、0.20mmである。
【0092】
(試験例2)
図23に示す形態の、医療用把持具の本体部を、可動把持片の湾曲部分の厚さを0.15mmとした以外は、上記試験例1と同様の条件で製造した。
【0093】
(へたり具合確認試験)
内径が2.2mmの医療用チューブを用意し、該医療用チューブ内に、上記試験例1及び試験例2の各本体部を挿入して、一対の可動把持片を閉じた状態で収容した。その後、医療用チューブから試験例1及び試験例2の各本体部を開放して、一対の可動把持片を開かせた。このときの、固定把持片に対する各可動把持片の開き角度(チューブ収納後角度)を測定した。これを試験例1及び試験例2について、それぞれ5本ずつ行った。
【0094】
その結果を下記表1、及び、
図22(b)、
図23(b)に示す。なお、表1には、チューブ収納前における、固定把持片に対する各可動把持片の開き角度(チューブ収納前角度)、及び、チューブ収納前後での、固定把持片に対する各可動把持片の開き角度の差(角度変形量)も併記した。
【0095】
【表1】
【0096】
上記表1に示すように、可動把持片の湾曲部分の厚さが薄い方が、可動把持片の角度変形量が少ないことが判明した。したがって、本発明に係る把持具10,10Aのように、可動把持片30の湾曲部分31の厚さAが、スライド部材配置部分35の厚さBよりも薄いと、可動把持片30がへたりにくいことが分かった。