【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、総務省、「ワイヤレス電力伝送による漏えい電波の環境解析技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記相互変換部は、電磁波の波長により規定される所定の離隔距離を境にして、前記減衰特性情報で規定される距離減衰特性を変化させることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれかに記載の電磁界模擬装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、ワイヤレス電力伝送システムから漏えいする電磁界を模擬して発生する電磁界模擬装置であって、交流信号を発生する信号発生部と、この信号発生部の出力信号を増幅する増幅部と、この増幅部の出力信号を電磁波として空間に放射する放射部と、ワイヤレス電力伝送システムから漏えいする電磁界に関する各種の規制ごとに定められた規制内容、および前記信号発生部および前記増幅部の動作条件が、相互に対応づけられて格納された情報格納部と、ユーザの入力操作に応じて、前記規制内容を特定する情報が入力される入力部と、この入力部に入力された情報、および前記情報格納部に格納された情報に基づいて、前記信号発生部および前記増幅部を制御する制御部と、を備えた構成とする。
【0014】
これによると、ワイヤレス電力伝送システムから漏えいする電磁界に関する各種の規制に定められた規制内容を特定する情報をユーザが入力すると、その規制内容に対応するように動作条件が設定される。このため、ユーザは、規制内容を特定する情報を入力するだけで済み、規制内容にしたがって動作条件を設定する作業を簡便に行うことができる。これにより、ユーザの利便性を高めるとともに、本電磁界模擬装置が誤った動作条件で動作することを避けることができる。
【0015】
また、第2の発明は、さらに、前記制御部で生成した情報を出力する出力部を備え、前記情報格納部は、前記規制内容を基準にして設定された、
前記放射部と評価対象機器との間の距離である離隔距離に応じた電磁界レベルを表す減衰特性情報を格納し、前記制御部は、前記減衰特性情報に基づいて、
前記評価対象機器が受ける電磁界レベルと、評価対象機器が配置される離隔距離とを相互変換する相互変換部を備え、前記入力部では、ユーザの入力操作に応じて、電磁界レベルに関する情報が入力され、前記相互変換部は、前記入力部に入力された電磁界レベルに対応する離隔距離を取得し、前記出力部は、前記相互変換部で取得した離隔距離に関する情報を出力する構成とする。
【0016】
これによると、電磁界レベルと離隔距離との相互変換をユーザが手計算により行う手間を省くことができる。そして、放射部から放射される電磁波の出力レベルを大きくすることなく、評価対象機器が受ける電磁界レベルを高くした影響評価を定量的に行うことができる。このため、電磁界レベルを規制値より高く設定して、規制値に対するマージンを確認する場合に、周辺の電磁界レベルが規制値を超えて意図しない電波障害を引き起こすおそれがなくなり、規制値を大きく超える電磁界レベルでの影響評価を安全にかつ簡便に実施することができる。
【0017】
また、第3の発明は、前記出力部は、評価対象機器の離隔距離を調整する位置調整装置に、前記離隔距離に関する情報を出力する構成とする。
【0018】
これによると、所要の離隔距離となるように評価対象機器の位置が自動で調整されるため、ユーザの利便性を高めることができる。
【0019】
また、第4の発明は、前記出力部は、前記離隔距離に関する情報を表示装置に出力する構成とする。
【0020】
これによると、表示装置に表示された離隔距離に関する情報をユーザが見て、評価対象機器の位置をユーザが手動で調整することができるため、システム構成を簡素化することができ、ワイヤレス電力伝送システムの漏えい電磁波の影響評価を低コストに実施することができる。
【0021】
また、第5の発明は、前記情報格納部は、前記規制内容を基準にして設定された、
前記放射部と評価対象機器との間の距離である離隔距離に応じた電磁界レベルを表す減衰特性情報を格納し、前記制御部は、前記減衰特性情報に基づいて、
前記評価対象機器が受ける電磁界レベルと、評価対象機器が配置される離隔距離とを相互変換する相互変換部を備え、前記入力部では、ユーザの入力操作に応じて、離隔距離に関する情報が入力され、前記相互変換部は、前記入力部に入力された離隔距離に対応する電磁界レベルを取得し、前記制御部は、前記相互変換部で取得した電磁界レベルに基づいて、前記信号発生部および前記増幅部を制御する構成とする。
【0022】
これによると、電磁界レベルと離隔距離との相互変換をユーザが手計算により行う手間を省くことができる。そして、ユーザが実際の離隔距離とは異なる所望の離隔距離を指定することで、評価対象機器が受ける電磁界レベルを所望の離隔距離の場合と同等の状態として、所望の離隔距離での影響評価を行うことができる。このため、規制内容にしたがった影響評価を、規則に定められた離隔距離より短い離隔距離で行うことができ、スペースが限られた環境の下で、規制内容にしたがった影響評価を簡便に実施することができる。また、評価対象機器を移動させる手間を省くことができることから、影響評価時のユーザの作業性を高めることができる。特に、離隔距離を段階的に変化させながら電磁干渉の発生状況を確認する段階的な影響評価の際の手間を大幅に削減することができ、段階的な影響評価を簡便に実施することが可能になる。
【0023】
また、第6の発明は、前記相互変換部は、本電磁界模擬装置および評価対象機器
それぞれの
地面からの高さである設置高さに応じて、前記減衰特性情報で規定される距離減衰特性を補正する構成とする。
【0024】
これによると、設置高さに応じて変化する電磁界の減衰特性が、減衰特性情報に反映されるため、電磁界レベルと離隔距離とを相互変換する処理の精度を向上させることができる。
【0025】
また、第7の発明は、前記相互変換部は、電磁波の波長により規定される所定の離隔距離を境にして、前記減衰特性情報で規定される距離減衰特性を変化させる構成とする。
【0026】
これによると、離隔距離に応じて変化する電磁界の減衰特性が、減衰特性情報に反映されるため、電磁界レベルと離隔距離とを相互変換する処理の精度を向上させることができる。
【0027】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る電磁界模擬装置1の概略構成図である。
【0029】
この電磁界模擬装置1は、信号発生部11と、増幅部12と、整合部13と、放射部14と、制御部15と、情報格納部16と、入力部17と、出力部18と、を備えている。
【0030】
信号発生部11は、任意の周波数の高周波信号(交流信号)を発生するものであり、アナログ式またはディジタル式の発振回路を備えた周波数可変型の発振器である。本実施形態では、放射妨害波の周波数に設定される。放射妨害波の周波数は評価対象機器が影響を受ける周波数であり、模擬対象となるWPTシステムの利用周波数(駆動周波数)と略同一の周波数または利用周波数の高調波となる周波数に設定されてもよいし、その他利用周波数以外の任意の周波数に設定されてもよい。
【0031】
増幅部12は、信号発生部11の出力信号を増幅するものであり、例えば、入力した信号をトランジスタやFET等のスイッチング動作を用いて増幅する増幅器やリニア増幅器である。
【0032】
整合部13は、放射部14のインピーダンスを増幅部12の出力に整合させるものである。この整合部13により増幅部12と放射部14との間のインピーダンス整合を行うことで、増幅部12の出力における反射による損失を小さくすることができ、増幅部12の出力信号が効率よく放射部14に入力される。
【0033】
放射部14は、整合部13を介して増幅部12から入力される高周波信号を電磁波として空間に放射するものである。この放射部14は、入力した電気信号を電磁波として空間に放射する放射素子で構成され、所望の電磁波を空間へ放射することができるものであればよく、例えば、コイル、ループアンテナ、モノポールアンテナ、電界アンテナなどを使用することができる。
【0034】
情報格納部16には、制御部15で行われる制御に要する情報が格納される。制御部15では、情報格納部16に格納された情報に基づいて、本電磁界模擬装置1の各部、特に、信号発生部11および増幅部12を制御する。
【0035】
入力部17では、入力装置2を用いて行われるユーザの入力操作による情報が入力される。出力部18では、制御部15で生成した情報、特に、本電磁界模擬装置1の動作状態に関する情報が表示装置3に出力される。なお、入力装置2および表示装置3は、特に限定されるものではないが、本電磁界模擬装置1に接続したPCのキーボードおよびディスプレイで構成したり、タブレット端末で構成したりしてもよい。
【0036】
さて、WPTシステムから漏えいする電磁界に関する法規や自主規制などの各種の規制では、電磁界レベル(磁界強度および電界強度など)に関する規制値(電磁界レベルの上限値)が、その規制値が適用される条件、すなわち、WPTシステムの種別(方式)、WPTシステムで利用される周波数などの条件ごとに規定されており、規制に基づいて評価対象機器の影響評価を行う際には、各種の規制ごとに定められた規制内容にしたがって本電磁界模擬装置1の動作条件を設定する必要がある。
【0037】
そこで、本実施形態では、情報格納部16において、WPTシステムの漏えい電磁界に関する法規などの各種の規制ごとに定められた規制内容、および本電磁界模擬装置1の動作条件、特に信号発生部11および増幅部12の動作条件(周波数およびゲイン)が相互に対応づけられて格納されている。具体的には、各種の規制ごとに定められた規制内容と、これに対応する本電磁界模擬装置1の動作条件が、規制値テーブル(マップ)として情報格納部16に格納されている。
【0038】
入力部17では、ユーザにより、各種の規制ごとに定められた規制内容を特定する情報が入力される。具体的には、規制の種別(法規の条項など)、WPTシステムの種別(方式)、WPTシステムで利用される周波数などの情報が入力される。
【0039】
制御部15では、ユーザにより入力された規制内容を特定する情報を入力部17から取得し、この入力情報と、情報格納部16に格納された規制内容と動作条件とを対応づけた情報とに基づいて、規制内容に対応する動作条件、すなわち、各種の動作パラメータが設定される。本実施形態では、信号発生部11の周波数が、模擬対象としたWPTシステムで利用される値に設定され、また、増幅部12の利得(電力)が、規制値となる電磁界レベル(磁界強度および電界強度)に対応する値に設定される。
【0040】
出力部18では、本電磁界模擬装置1の動作状態に関する情報、特に、規制値などの規制内容、すなわち、本電磁界模擬装置1がどのような規制に基づいて動作しているかに関する情報や、動作条件の設定内容、すなわち、本電磁界模擬装置1がどのような条件で動作しているかに関する情報が出力される。これにより、本電磁界模擬装置1の動作状態をユーザが確認することができる。
【0041】
以上のように、本実施形態では、交流信号を発生する信号発生部11と、この信号発生部11の出力信号を増幅する増幅部12と、この増幅部12の出力信号を電磁波として空間に放射する放射部14と、WPTシステムから漏えいする電磁界に関する各種の規制ごとに定められた規制内容、および信号発生部11および増幅部12の動作条件が相互に対応づけられて格納された情報格納部16と、ユーザの入力操作に応じて、規制内容を特定する情報が入力される入力部17と、この入力部17に入力された情報、および情報格納部16に格納された情報に基づいて、信号発生部11および増幅部12を制御する制御部15と、を備えたものとした。
【0042】
これにより、WPTシステムから漏えいする電磁界に関する各種の規制に定められた規制内容を特定する情報をユーザが入力すると、その規制内容に対応するように動作条件が設定される。このため、ユーザは、規制内容を特定する情報を入力するだけで済み、規制内容にしたがって動作条件を設定する作業を簡便に行うことができる。これにより、ユーザの利便性を高めるとともに、本電磁界模擬装置が誤った動作条件で動作することを避けることができる。
【0043】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
図2は、第2実施形態に係る電磁界模擬装置21の概略構成図である。
【0044】
この電磁界模擬装置21は、第1実施形態と同様に、信号発生部11と、増幅部12と、整合部13と、放射部14と、制御部15と、情報格納部16と、入力部17と、出力部18と、を備えているが、特にこの第2実施形態では、制御部15が相互変換部22を備えている。また、出力部18がポジショナ5に接続されている。
【0045】
ポジショナ(位置調整装置)5は、所定の離隔距離(本電磁界模擬装置21の放射部14からの距離)となるように評価対象機器の位置を調整するものであり、所要の長さのガイドレールに沿って評価対象機器の保持部を直線的に移動させることができるように構成されており、例えばステッピングモータにより評価対象機器の保持部を動作させる。つまり、本開示において、離隔距離とは、電磁界の発生源から評価対象機器までの距離に関する情報を意味する。本実施形態では、制御部15から出力される離隔距離に関する情報が出力部18を介してポジショナ5に出力され、この情報に基づいて、ポジショナ5において評価対象機器が所定の離隔距離に位置決めされる。
【0046】
相互変換部22では、離隔距離に応じた電磁界レベルを表す減衰特性情報に基づいて、評価対象機器が受ける電磁界レベルと、評価対象機器が配置される離隔距離とを相互変換する処理が行われる。すなわち、ユーザの入力操作に応じて、電磁界レベルに関する評価条件、すなわち、評価したい電磁界レベルが入力部17から相互変換部22に入力されると、それに対応する離隔距離が出力され、離隔距離に関する評価条件、すなわち、評価したい離隔距離が入力部17から相互変換部22に入力されると、それに対応する電磁界レベルが出力される。
【0047】
この相互変換部22で用いられる減衰特性情報は情報格納部16に格納されており、相互変換部22では、減衰特性情報は情報格納部16から読み出して相互変換の処理を行う。
【0048】
相互変換部22では、減衰特性情報として、次の相互変換式を用いて、相互変換の処理が行われる。
H
x=60a×log
10(L
reg/L
x)+H
reg (式1)
この相互変換式は、3次減衰、具体的には、−60dB/dec、すなわち、距離が10倍になるごとに60dBずつ下がる減衰特性に基づいて設定されている。ここで、H
regは磁界強度の規制値であり、L
regは規制値が定義されている離隔距離である。つまり、この相互変換式では、ある法規が、L
regの離隔距離においては磁界強度がH
regに納まるよう規制することを想定する。また、H
xは目標とする磁界強度であり、L
xは目標とする磁界強度が実現される離隔距離である。また、aは補正係数であり、この補正係数を増減することにより磁界減衰曲線の傾きを変化させることができる。なお、減衰特性情報は磁界減衰特性に限られない。減衰特性の他の一例としては電界減衰特性などが挙げられる。
【0049】
さて、本実施形態では、以下に説明するように、第1および第2の2つの動作モードが設けられており、ユーザが適宜に選択することができる。第1の動作モードは、放射部14から放射される電磁波の実際の出力レベルを変えずに、評価対象機器が受ける電磁界レベルを目標の値に変化させるものである。第2の動作モードは、実際の離隔距離を変えずに、評価対象機器が受ける電磁界レベルを目標の値に変化させるものである。
【0050】
次に、本電磁界模擬装置21の第1の動作モードについて説明する。
図3は、第1の動作モードにおける本電磁界模擬装置21および評価対象機器の状況を示す説明図である。
図4は、第1の動作モードにおいて相互変換部22で行われる処理の概要を説明するグラフである。なお、
図4では、離隔距離の軸を対数目盛で示しており、離隔距離に応じた磁界強度を表す磁界減衰曲線は直線状になる。
【0051】
WPTシステムの漏えい電磁波の影響評価では、規制値に対するマージン評価、すなわち、電磁界レベルを規制値より高くした場合に、評価対象機器に実際に電磁干渉による不具合が発生するまでにどの程度のマージン(余裕)があるかを確認したい場合がある。この場合、放射部14から放射される電磁波の出力レベルを大きくすると、周辺の電磁界レベルが規制値を超えることは、望ましくない。
【0052】
そこで、第1の動作モードでは、評価対象機器を本電磁界模擬装置21に近づけることで、放射部14から放射される電磁波の出力レベルを大きくすることなく、評価対象機器が受ける電磁界レベルを高くする制御が行われる。また、第1の動作モードでは、電磁波の出力レベルを変化させることなく、評価対象機器が受ける電磁界レベルを低くする制御も行うことができる。このように、第1の動作モードでは、離隔距離を調整することで、電磁波の出力レベルを一定とした場合でも、評価対象機器が受ける電磁界レベルを任意に変化させることができる。
【0053】
この第1の動作モードでは、
図3に示すように、評価したい電磁界レベルに関する情報が、ユーザの入力操作に応じて、入力部17に入力され、相互変換部22において、磁界減衰特性に基づいて、入力された電磁界レベルを実現可能な離隔距離を求める処理が行われ、この離隔距離に関する情報が出力部18から出力される。本実施形態では、離隔距離に関する情報がポジショナ5に出力され、ポジショナ5において、所要の離隔距離となるように評価対象機器の位置が調整される。これにより、評価対象機器が受ける電磁界レベルを評価したい電磁界レベルとすることができる。
【0054】
図4に示した例は、磁界強度を規制値より+20dB高くしたときの評価対象機器の影響を評価する場合である。ここで採用された規制内容は、離隔距離が10mで磁界強度の規制値が−122dBA/mとなっており、この規制値より+20dB高くした−102dBA/mの磁界強度を実現する。なお、磁界減衰特性は−60dB/decとしている。
【0055】
この場合、離隔距離が10mから4,7mとなるように評価対象機器を本電磁界模擬装置21に近付けると、放射部14から放射される電磁波の出力レベルを一定としたままで、磁界強度を−122dBA/mから−102(dBA/m)まで20dB高めることができる。
【0056】
このように、本実施形態では、評価したい電磁界レベルを実現可能な離隔距離に関する情報をポジショナ5に出力して、ポジショナ5を動作させることで、目標となる電磁界レベルを自動で実現するようにしており、本電磁界模擬装置21と、ポジショナ5とにより、漏えい電磁波評価システムが構成される。
【0057】
一方、離隔距離に関する情報を出力部18から表示装置3に出力して、その離隔距離となるように評価対象機器の位置をユーザに調整させるようにしてもよい。この場合、本電磁界模擬装置21と、表示装置3とにより、漏えい電磁波評価システムが構成される。また、本電磁界模擬装置21に距離センサを設けて離隔距離を計測し、その計測結果を表示装置3に表示するようにしてもよい。このようにすると、評価対象機器の位置調整をユーザが簡便にかつ精度よく行うことができる。
【0058】
なお、第1の動作モードでは、ユーザの入力操作に応じて、電磁界レベルに関する情報が入力部17に入力されるが、この情報は、電磁界レベルの絶対値および相対値(電磁界レベルを変化させる量)のいずれでもよい。また、離隔距離に関する情報が出力部18から出力されるが、この情報は、離隔距離の絶対値および相対値(移動距離)のいずれでもよい。
【0059】
以上のように、本実施形態では、第1の動作モードにおいて、入力部17において、ユーザの入力操作に応じて、評価条件として電磁界レベルに関する情報が入力され、相互変換部22において、入力部17に入力された電磁界レベルに対応する離隔距離を取得し、出力部18においては、相互変換部22で取得した離隔距離に関する情報を出力するものとした。
【0060】
これにより、電磁界レベルと離隔距離との相互変換をユーザが手計算により行う手間を省くことができる。そして、放射部14から放射される電磁波の出力レベルを大きくすることなく、評価対象機器が受ける電磁界レベルを高くした影響評価を定量的に行うことができる。このため、電磁界レベルを規制値より高く設定して、規制値に対するマージンを確認する場合に、周辺の電磁界レベルが規制値を超えて意図しない電波障害を引き起こすおそれがなくなり、規制値を大きく超える電磁界レベルでの影響評価を安全にかつ簡便に実施することができる。
【0061】
次に、本電磁界模擬装置21の第2の動作モードについて説明する。
図5は、第2の動作モードにおける本電磁界模擬装置21および評価対象機器の状況を示す説明図である。
図6は、第2の動作モードにおいて相互変換部22で行われる処理の概要を説明するグラフである。なお、
図6では、
図4と同様に離隔距離の軸を対数目盛で示している。
【0062】
WPTシステムの漏えい電磁波に関する各種の規制では、規制値(電磁界レベルの上限値)が規定されるとともに、この規制値が適用される条件として、例えば30mや10mといった離隔距離が定められている。一方、漏えい電磁波の影響評価は電波暗室や住宅内で行われるが、規制で定められた離隔距離を確保することがスペースの関係で難しい場合があり、規制で定められた離隔距離より短い距離、例えば3mや5m程度の距離で簡易的に影響評価を行うこともしばしば望まれる。また、離隔距離を段階的に変化させて電磁干渉の発生状況を確認したい場合があるが、この場合、評価対象機器を所定の間隔で逐次移動させる手間が必要となり、作業が非常に面倒である。
【0063】
そこで、第2の動作モードでは、評価対象機器の位置を一定としたままで、評価対象機器の離隔距離が変化した場合と同等の電磁界レベルの変化が実現されるように、放射部14から放射される電磁波の出力レベルを変化させる制御が行われる。これにより、評価対象機器を移動させることなく、離隔距離を変化させた場合と同じ影響評価を行うことができる。
【0064】
この第2の動作モードでは、
図5に示すように、評価したい離隔距離に関する情報が、ユーザの入力操作に応じて、入力部17に入力され、相互変換部22において、磁界減衰特性に基づいて、入力された離隔距離に対応する電磁界レベルを求める処理が行われ、制御部15において、相互変換部22で求められた電磁界レベルが評価対象機器の現在の位置で実現されるように、放射部14から放射される電磁波の出力レベルを変化させる制御が行われる。本実施形態では、増幅部12が制御され、増幅部12の利得(出力電力)を変化させることで、放射部14から放射される電磁波の出力レベルを変化させる。これにより、評価対象機器が受ける電磁界レベルを、評価したい離隔距離における電磁界レベルと同等の電磁界レベルとすることができる。
【0065】
図6に示した例は、離隔距離を1mから10mまで変化させたときの評価対象機器の影響を評価する場合である。ここで採用された規制内容は、離隔距離が10mで磁界強度の規制値が−122dBA/mとなっており、評価対象機器を離隔距離が3mとなる位置に固定したままで、評価対象機器を離隔距離が1mから10mまで移動させた場合と同等の影響評価を行う。なお、磁界減衰特性は−60dB/decとしている。
【0066】
この場合、離隔距離が3mとなる位置に固定された評価対象機器が受ける磁界強度が、離隔距離が3mとなるときの磁界強度から凡そ±30dB(+28.6dB、−31.4dB)変化するように、放射部14から放射される電磁波の出力レベルを変化させることで、離隔距離を1mから10mまで変化させた場合と同等の磁界強度の変化を実現することができる。
【0067】
このように、本実施形態では、第2の動作モードにおいて、入力部17において、ユーザの入力操作に応じて、評価条件として離隔距離に関する情報が入力され、相互変換部22において、入力部17に入力された離隔距離に対応する電磁界レベルを取得し、制御部15において、相互変換部22で取得した電磁界レベルに基づいて、信号発生部11および増幅部12を制御するものとした。
【0068】
これにより、電磁界レベルと離隔距離との相互変換をユーザが手計算により行う手間を省くことができる。そして、ユーザが実際の離隔距離とは異なる所望の離隔距離を指定することで、評価対象機器が受ける電磁界レベルを所望の離隔距離の場合と同等の状態として、所望の離隔距離での影響評価を行うことができる。このため、規制内容にしたがった影響評価を、規則に定められた離隔距離より短い離隔距離で行うことができ、スペースが限られた環境の元で、規制内容にしたがった影響評価を簡便に実施することができる。また、評価対象機器を移動させる手間を省くことができることから、ユーザの利便性を高めることができる。特に、離隔距離を段階的に変化させながら電磁干渉の発生状況を確認する段階的な影響評価の際の手間を大幅に削減することができ、段階的な影響評価を簡便に実施することが可能になる。
【0069】
なお、第2の動作モードでは、ユーザの入力操作に応じて、離隔距離に関する情報が入力部17に入力されるが、この情報は、離隔距離の絶対値および相対値(移動距離)のいずれでもよい。
【0070】
また、第2の動作モードでは、評価対象機器を移動させる必要がないため、評価対象機器を移動させるポジショナ5は必ずしも必要ではない。また、第2の動作モードでは、評価対象機器の現在の離隔距離を取得する必要があり、これはユーザが測定するようにすればよいが、本電磁界模擬装置21に距離センサを設けて離隔距離を計測するようにしてもよい。
【0071】
次に、
図2に示した相互変換部22で行われる、設置高さに応じて変化する電磁界の減衰特性の補正について説明する。
図7は、設置高さhに応じた補正係数a(磁界減衰曲線の傾き)の変化状況の一例を示すグラフである。なお、
図7では、設置高さの軸を対数目盛で示している。
【0072】
WPTシステムから漏えいする電磁界は離隔距離が大きくなるのに応じて減衰するが、この漏えい電磁界の減衰特性は、WPTシステムおよび評価対象機器の設置高さ(地上高、すなわち地面からの高さ)に応じて変化する。具体的には、設置高さが低いと、設置高さが高い場合に比べて、地面の影響を大きく受けるため、磁界減衰曲線の傾きが大きくなる。そこで、本実施形態では、設置高さに応じて変化する電磁界の減衰特性の補正が行われる。
【0073】
相互変換部22では、前記のように、磁界強度と離隔距離とを相互変換するために、次の相互変換式が用いられる。
H
x=60a×log
10(L
reg/L
x)+H
reg (式1)
ここで、補正係数aは、磁界減衰曲線の傾きを規定するものであり、
図7に示すように、設置高さhに応じて変化し、設置高さhが大きくなると、補正係数aが小さくなるように設定されている。これにより、設置高さhが大きくなると、磁界減衰曲線の傾きが小さくなるように補正される。
【0074】
このように、本実施形態では、相互変換部22において、本電磁界模擬装置21および評価対象機器の設置高さに応じて、減衰特性情報で規定される距離減衰特性、具体的には、磁界減衰曲線の傾きを規定する相互変換式の補正係数を補正するようにしている。これにより、設置高さに応じて変化する電磁界の減衰特性が、減衰特性情報に反映されるため、電磁界レベルと離隔距離とを相互変換する処理の精度を向上させることができる。
【0075】
なお、
図7に示した例は、本電磁界模擬装置21および評価対象機器の各々の設置高さが同一である場合であるが、本電磁界模擬装置21および評価対象機器が異なる高さに設置される場合もあり、この場合、本電磁界模擬装置21および評価対象機器の各々に別の補正値(係数)を設定して磁界減衰曲線の傾きを補正するようにすればよい。
【0076】
次に、
図2に示した相互変換部22で用いられる減衰特性曲線(減衰特性情報)の変形例について説明する。
図8は、相互変換部22で用いられる磁界減衰曲線の傾きの変化状況の一例を示すグラフである。なお、
図8では、
図4と同様に離隔距離の軸を対数目盛で示している。
【0077】
微小磁界波源による理想磁界減衰特性では、離隔距離d=λ/(2π)(λ:波長,π:円周率)の付近で、距離3乗減衰から1乗減衰に変化する。すなわち、d>λ/(2π)で、理想的には1次減衰(−20dB/dec)になり、d<λ/(2π)で、理想的には3次減衰(−60dB/dec)になり、磁界減衰曲線の傾きが変化する。
【0078】
ここで、本実施形態では、相互変換部22において、相互変換式(式1)を用いて磁界強度と離隔距離とを相互変換するが、前記のように、離隔距離d=(λ/2π)の付近で磁界減衰特性が変化することを考慮して、相互変換式により規定される磁界減衰曲線の傾き、すなわち、相互変換式中の傾きを表す係数(60a)を、離隔距離d=(λ/2π)を境にして変化させる。
【0079】
このように、本実施形態では、相互変換部22において、電磁波の波長により規定される所定の離隔距離を境にして、減衰特性情報で規定される距離減衰特性、具体的には、磁界減衰曲線の傾きを変化させるようにした。これにより、離隔距離に応じて変化する電磁界の減衰特性が、減衰特性情報に反映されるため、電磁界レベルと離隔距離とを相互変換する処理の精度を向上させることができる。
【0080】
次に、本電磁界模擬装置21における第1および第2の各動作モードでの処理の手順について説明する。
図9は、第1の動作モードの手順の一例を示すフロー図である。
図10は、第2の動作モードの手順の一例を示すフロー図である。
【0081】
図9に示すように、第1の動作モードでは、評価したい電磁界レベルに関する情報が、ユーザの入力操作に応じて、入力部17に入力され(ST101)、入力された電磁界レベルに関する情報に該当する規制値テーブルが読み出され(ST102)、設置高さに応じた係数補正が必要に応じて実施され(ST103,104)、また、磁界減衰曲線の傾きを2段階に設定する処理が必要に応じて実施され(ST105〜107)、ついで、規制値に基づく動作が実施された後に(ST108,109)、規制値+20dBとした動作に移行する(ST110〜114)。なお、ST101においては図示したように、具体的に、WPTシステムで利用される周波数などの情報を全て入力してもよいし、また、規制の種別(法規の条項など)、WPTシステムの種別(方式)のみを入力することで他の情報の入力の一部を省略することができる場合がある。
【0082】
また、
図10に示すように、第2の動作モードでは、評価したい電磁界レベルに関する情報が、ユーザの入力操作に応じて、入力部17に入力され(ST201)、入力された電磁界レベルに関する情報に該当する規制値テーブルが読み出され(ST202)、設置高さに応じた係数補正が必要に応じて実施され(ST203,204)、また、磁界減衰曲線の傾きを2段階に設定する処理が必要に応じて実施され(ST205〜207)、離隔距離が3mとなる位置に評価対象機器を固定したままで(ST208)、評価対象機器を1m〜10mまで動かした場合と同等の影響評価が行われる(ST209〜214)。このとき、離隔距離を所定の間隔(0.5m)で段階的に疑似変化させて、電磁干渉の発生状況を確認するようにしている。なお、ST201においては図示したように、具体的に、WPTシステムで利用される周波数などの情報を全て入力してもよいし、また、規制の種別(法規の条項など)、WPTシステムの種別(方式)のみを入力することで他の情報の入力の一部を省略することができる場合がある。
【0083】
以上、本発明を特定の実施形態に基づいて説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。また、上記実施形態に示した本発明に係る電磁界模擬装置の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【0084】
例えば、前記の実施形態では、相互変換部22において、電磁界レベル(磁界強度および電界強度など)と離隔距離との相互変換を、相互変換式(式1)を用いて行うようにしており、この相互変換式は減衰特性情報として情報格納部16に格納されているが、この相互変換式や式中の係数は、適宜に入れ替えおよび書き換えができるようにするとよい。また、相互変換式や式中の係数は、複数を格納し、適宜にユーザが選択できるように構成してもよい。
【0085】
また、前記の実施形態では、相互変換部22において、電磁界レベルと離隔距離との相互変換を、数式に基づく演算で行うようにしたが、事前にシミュレーションなどを行うことで、電磁界レベルと離隔距離との相関関係を表すテーブル(マップ)を作成しておき、このテーブルに基づいて相互変換を行うようにしてもよい。